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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
管理番号 1376873 
審判番号 取消2019-300163 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-03-01 
確定日 2021-07-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5825462号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5825462号商標の指定商品及び指定役務中、第35類「広告用具の貸与」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5825462号商標(以下「本件商標」という。)は、「リップス」の文字を標準文字で表してなり、平成26年12月26日に登録出願、第35類「広告用具の貸与」を含む、第3類、第8類、第21類、第35類、第41類、第42類及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同28年2月12日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成31年3月14日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年(2016年)3月14日から同31年(2019年)3月13日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第35類「広告用具の貸与」(以下「請求に係る役務」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の主張する各行為は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる本件商標の使用には該当しない
ア 被請求人は、本件商標をフランチャイジーであるO氏に使用許諾したことを主張するが、被請求人はフランチャイジー、すなわち通常使用権者であるO氏が第35類「広告用具の貸与」の役務(以下「本件役務」という。)について本件商標を使用したことの主張立証をしていないから、「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが」3年以上使用していないことに対する反証となっていない。
イ 被請求人は、乙第3号証ないし乙第8号証を根拠に、本件役務に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を使用した旨を主張するが、乙第3号証ないし乙第8号証により示される行為は、いつ行われた行為であるのかが不明であり、要証期間内の行為であることがなんら立証されていない。
ウ 乙第4号証ないし乙第6号証については、そもそも各号証に示される物は広告用具ではなく、また、各号証により示される行為は広告物の貸与でもない。顧客に渡され、返却が予定されていない物は貸与の対象物になり得ない。また、各号証には、「リップス」の文字が自他商品役務の識別標識たる商標として表されてもいない。
エ 乙第7号証及び乙第8号証についても、各号証に示される物が貸与された事実はなんら立証されていない。また、各号証に示される物に付された「LIPPS」の文字は、本件商標「リップス」と称呼を同一とし得るのみであって観念を異にするものであるから、これらは社会通念上同一の関係にはない。
オ 被請求人は、「施術カード」なる物にかかる乙第9号証の請求書を提出するものの、これは単に当該物が株式会社リップスからフランチャイジーに販売されたことを示すのみで、なんら当該物が貸与されたことを示すものではなく、また、当該物に本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が付されていたことを示すものでもない。
被請求人は、乙第9号証の請求書に「株式会社リップス」の文字が表示されていることをもって、本件商標「リップス」と社会通念上同一の商標が使用されているとも主張するが、当該請求書に普通に用いられる方法で表示された「株式会社リップス」の文字は、商号を表すものにすぎず、自他商品役務の識別標識として付されたものではないから、被請求人の主張には理由がない。
(2)被請求人による行為は、商標法上の「役務」ではない
仮に、フランチャイザーである被請求人がフランチャイジーである各ヘアサロン向けに広告用具を貸与していると解する余地があるとしても、当該行為は、商標法上の「役務」には該当しない。すなわち、我が国の商標法上、「役務」とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきもの」(甲1)と解されている。被請求人によるフランチャイジー向けの各種道具の提供は、あくまで被請求人とフランチャイズ契約をしたフランチャイジーに対してのみ提供されるものであり、フランチャイズ契約によって被請求人が行うべき経営管理業務の一環又はそれに付随するものにすぎない。フランチャイジーである各ヘアサロンは、被請求人の定める様式に従った広告宣伝を行わなければならず、被請求人が行うフランチャイジー向けの広告道具の提供それ自体を商取引の対象として選択し得るものではないのであるから、被請求人によるフランチャイジー向けの広告道具の提供は独立性を有しない。
(3)被請求人は、本件役務に関する「取引書類」を「頒布」していない
ア 被請求人は、「リップスパートナーサロン契約書」なる契約書(乙2の1)は、商標法第2条第3項第8号に定める本件役務に関する取引書類に該当し、当該取引書類はフランチャイジーであるO氏に頒布されたから、被請求人は、本件役務について、本件商標を使用したと主張する。しかしながら、同号は、「・・・役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して・・・頒布・・・する行為」であるところ、ここで「頒布」とは、「広告等が一般に閲覧可能な状態になっていること」を意味すると解される(甲2)。また、「頒布」とは、「広くゆきわたるように分かちくばること」(甲3)を意味する語である。被請求人が同号の「取引書類」に該当すると主張する前記契約書は、被請求人が、極めて限られた数のフランチャイジーとの契約において契約相手であるフランチャイジーに示したものにすぎないから、同号に定める「頒布」の対象となったものではない。実際、被請求人は、乙第2号証の1において、いくつかのマスキングをしており、明らかに「一般に閲覧可能な状態」ではない。また、前記契約書では、フランチャイジーは、契約終了後も含めてフランチャイザーから受領した情報について守秘義務を負っており、これを「一般に閲覧可能な状態」とすることは許されない。
イ フランチャイザーである被請求人は、フランチャイジーと一体となってフランチャイズシステムないしフランチャイズグループを形成しているのであり、当該フランチャイズシステムないしフランチャイズグループ内でのみ行われる書類の受け渡しは、到底「頒布」と評価し得るものではない。
ウ フランチャイザーである被請求人がフランチャイジーである各ヘアサロン向けに広告用具を貸与していると解する余地があるとしても、当該行為は、商標法上の「役務」には該当しないのであるから、前記契約書は、役務「広告用具の貸与」との関係において、商標法第2条第3項第8号規定の「役務に関する・・・取引書類」に該当する余地はない。
(4)被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していない
ア 被請求人は、乙第2号証の1の契約書の1頁に「リップスパートナーサロン契約書」の文字が付されていることをもって、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていると主張するが、「リップスパートナーサロン契約書」の文字のうち「パートナーサロン契約書」の文字を捨象して「リップス」の文字のみが出所識別標識として機能するから、これは「リップス」と社会通念上同一であるとする被請求人の主張にはなんら理由がない。
「リップスパートナーサロン契約書」の文字において、「契約書」の部分については、当該文字が契約書に付されているという取引実情に鑑みれば、これが出所識別標識として需要者に強い印象を与えるものではないと考え得るものの、称呼において淀みなく発音され、外観において片仮名でまとまりよく構成された「リップスパートナーサロン」の文字は、いずれかの部分のみが強く支配的な印象を与えるものではなく、その構成文字全体をもって需要者ないし取引者に認識される。
イ フランチャイズ契約を「パートナーサロン契約」と呼称することが一般的であるわけでもなく、被請求人自身、乙第2号証の1、2頁冒頭において「以下のとおりフランチャイズ契約(通称、『リップスパートナーサロン契約』、以下、『本契約』という)を締結する」と記載し、被請求人独自の呼称として「リップスパートナーサロン契約」の語を用いている。このような語を「リップス」と社会通念上同一と評価する理由はない。
ウ さらに、前記契約書に「リップスパートナーサロン契約書」と記載されているとおり、当該書類が契約書であることは、それを目にしたフランチャイジーにおいて明らかであり、「リップスパートナーサロン契約書」の文字はそのタイトルを単に示すものとして用いられているにすぎず、自他役務の識別標識たる商標として用いられているものではない。
(5)結語
以上のとおり、被請求人は、本件役務の提供の事実、本件商標の使用の事実などを主張するものの、被請求人の主張する各行為は、本件役務との関係における商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる本件商標の使用には該当しないことから、本件商標は、その登録の取り消しを免れない。
なお、被請求人は、乙第2号証の2(覚書)が乙第2号証の1(契約書)の第1条第1項の「別紙」に当たる旨主張するところ、当該契約書と覚書は、同一の締結日であるにも関わらず、フランチャイジーである乙の印影が異なり、被請求人の主張には、その全体において重大な疑義があることを付言する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標権者は、以下のとおり、要証期間内に、本件商標を、請求に係る役務である第35類「広告用具の貸与」について使用している。
(2)商標権者は、ヘアサロンに関するフランチャイズシステムを運営しているところ、フランチャイザーとして、フランチャイジーであるヘアサロンに広告用具の貸与を行っている。乙第2号証の1は、そのフランチャイズ契約書の写しである。また、乙第2号証の2は、乙第2号証の1のフランチャイズ契約書第1条第1項の別紙に当たる覚書の写しであり、本件商標も使用許諾した商標に含まれている。
(3)乙第2号証の1の契約書の第4条には、フランチャイジーであるヘアサロンの乙は、本件店舗に関し、ヘアサロンの営業、化粧品等商品の販売についての広告宣伝はフランチャイザーである甲の定める様式に従うこととされ、その第3項には、「甲が、本件店舗の広告宣伝のために、乙に対してヘアスタイル写真集等を提供した場合、乙は、甲が提供の際に定めた期間に限り、これを使用することができる。」としている。そこで、被請求人は、当該ヘアスタイル写真集を抜粋したものの写しを乙第3号証として提出する。当該ヘアスタイル写真集は、商標法第2条第3項第3号ないし第5号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」に該当するものと思料する。乙第3号証の1枚目には、被請求人の登録商標である「P」を内包した赤い正方形と「LIPPS」の文字からなる登録商標(第5865364号)の下に、「リップス ヘアカタログ」の文字が表示されているところ、「ヘアカタログ」の文字部分が、ヘアサロンにおいては「ヘアスタイルを集めたもの」程度に認識されるものであるため、出所識別標識としては全く機能しない部分であって、出所識別標識としての使用に係る商標は「リップス」の文字部分といえる。そうすると、その使用に係る商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標ということができる。
(4)また、乙第2号証の1の契約書の第4条第2項には、「〈3〉名刺・ショップカード等の印刷物に関する費用、〈4〉その他一切の広告媒体への掲載費用を含め、乙は、甲に対して広告宣伝費用を負担する。」(審決注:〈3〉、〈4〉は、○の中に3又は4の数字。以下、同契約書からの引用において同じ。)とある。そこで、被請求人は、当該ショップカード等の印刷物の写しとして、乙第4号証ないし乙第6号証を提出する。まず、乙第4号証は「施術カード」の写しである。被請求人のフランチャイズシステムにおける各サロンにおいては、顧客の美容の施術内容などを記載した施術カードを顧客に渡し、次回の来店時に提示して貰い、毎回の施術内容を記載することになっている。乙第5号証は「紹介カード」の写しである。顧客の紹介があった場合に、顧客に渡すカードであり、このカードを提示すると紹介された者及び紹介者の料金が割引される。乙第6号証は、いわゆるクレドカードの写しである。自分たちのサロンのポリシーや理念を記載したカードであり顧客に渡されるカードである。
さらに、各フランチャイジーのサロンの内外には、フランチャイザーの登録商標や店舗名の看板や表示(乙7)がなされているところ、これらも、各フランチャイジーが勝手に制作しているわけではなく、フランチャイザーが定めた登録商標や店舗名のデータ(乙8)や表示物を貸し出して、フランチャイジーが利用して表示しているものである。
これらは、契約の解除又は終了とともに、契約書の第28条によって登録商標や店舗名を表示したものの除却が定められていることからも明らかなとおり、契約期間内に限ってフランチャイジーに使用が認められたものである。被請求人は補足資料として、乙第4号証の「施術カード」についての、フランチャイジーに対する請求書の写しを提出する(乙9)。
このように、フランチャイザーである商標権者は、フランチャイジーに対して、「広告用具の貸与」を提供しているのであり、その契約を定めた契約書は商標法第2条第3項第8号に定める役務に関する取引書類に該当する。
(5)そして、その契約書の1頁に「リップスパートナーサロン契約書」として、「リップス」の商標が使用されている。「パートナーサロン契約書」の文字を伴ってはいるが、該文字部分が、ヘアサロンに関するフランチャイズ契約との関係においては出所識別標識としては全く機能しない部分であって、出所識別標識としての使用に係る商標は「リップス」の文字部分といえる。そうすると、その使用に係る商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標ということができる。
さらに、同契約書の末尾には「甲、乙及び丙は上記のとおり合意したので、本契約に署名、捺印をなし、3通作成のうえ、各自1通宛保有する。」とあり、契約日として「平成29年4月5日」と記載されている。そうすると、契約日である「平成29年4月5日」は要証期間内であり、しかも、同契約書は要証期間内にフランチャイジーであるヘアサロンの乙に頒布されたこと明らかといえるから、商標権者は、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標を請求に係る役務である第35類「広告用具の貸与」について使用しているといえる。
加えていうならば、乙第9号証の請求書も、取引書類ということができるものであるところ、その請求書には、「株式会社リップス」の文字が表示されており、「株式会社」の文字部分が会社法によって義務付けられた会社の種類を表す文字であって、出所識別標識といえるのは「リップス」の文字であるから、その使用に係る商標と本件商標とは社会通念上同一の商標ということができる。
(6)以上のとおり、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、商標権者又は使用権者により、請求に係る役務である第35類「広告用具の貸与」の役務について使用されていたことが明らかであるから、本件審判請求は成り立たない。
2 審尋に対する回答(令和3年2月15日付け回答書)
(1)被請求人と自由が丘店以外の店舗との関係について
乙第7号証が「表参道店」「原宿」「吉祥寺アネックス店」「梅田ロフト店」「渋谷2nd floor」「自由が丘」「吉祥寺」「原宿」(店舗の重複があるが、証拠の順に記載)に係るものであるところ、被請求人との関係を説明することを求められていると理解する。各店舗はいずれも被請求人又はその子会社等と契約関係にあるが、看板に関しては、後述のとおり、自由が丘店において説明するので、説明及び各店舗との契約関係を示す書類の提出を省略する。
(2)乙第3号証の形式及び貸与の手順について
乙第3号証はフランチャイジーに貸与されるので、簡易的な方法でまとめられており、その外観を撮影したものを新たに提出する(乙10)。当該証拠の情報については、最終ページ末尾に記載済みである。現在は休止しているが、春・夏・秋冬の区切りで年に3回、被請求人によって作成されている。
(3)乙第7号証の写真について
乙第7号証については、フランチャイジーであることが証明されている自由が丘店のものについて説明をする。7枚目が自由が丘店に関するウェブページである。受付が映っている写真内の「P」の図形の下に「LIPPS」の文字が記載されたものが広告用具である。また、新たに提出する乙第11号証において、店舗外に取り付けられた外看板(下段中央)が確認できる。
(4)新たに提出する使用証拠
以上より、本件商標が本件役務について使用されていることは明らかであるが、さらに、被請求人は、自由が丘店に対して以下のとおり「広告スペースの貸与」を行っている。自由が丘店の広告が、本件商標が表示されている被請求人が運営する公式ブログ上に掲載されており、被請求人が自由が丘店に「広告スペースの貸与」を行っていることは明らかである(乙12)。
「自由が丘店」は、被請求人「株式会社レスプリ」と「リップスパートナーサロン契約」を締結している「O氏」が代表を務める「株式会社YET」が運営する各地の店舗である。「株式会社YET」がフランチャイジーであることは、乙第2号証として提出している前記契約の権利義務の承継を合意した覚書を乙第13号証として新たに提出する。
また、新たに自由が丘店のオープン時のDMの作成依頼のメールと、参考として添付されていた銀座店出店時の挨拶状を提出する(乙14)。当該メール2ページ目の銀座店の挨拶状の文字が印刷の都合上切れるため、単体での印刷も併せて提出する(乙14の2)。
(5)以上より、本件商標が、要証期間内に、取引書類(契約書)に付されて頒布されていた(商標法2条3項8号)とともに、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に付されていたことが明らかであり、該行為は同3号の使用に該当するものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人は、ヘアサロンに関するフランチャイズシステムを運営しており、「LIPPS自由が丘店」は、平成29年4月5日付けの被請求人との「リップスパートナーサロン契約書」と称するフランチャイズ契約書(以下「本件契約書」という。)に基づいて、O氏によって運営されている店舗である(乙2の1)。
(2)本件契約書第4条第1項に「乙(フランチャイジー)は、本件店舗(LIPPS自由が丘店)に関し、独自に宣伝広告を行ってはならず、ヘアサロンの営業、化粧品等商品の販売についての広告宣伝は甲(フランチャイザー)の定める様式に従うものとする。」(審決注:括弧内の記載は合議体が付加。)、同条第2項に「甲が、本件店舗のために次の費用を支出したときは、乙は、甲に対し、その広告宣伝費用を負担する。」として、「〈3〉名刺・ショップカード等の印刷物に関する費用、〈4〉前各号のほかその他一切の広告媒体への掲載費用」の記載がある(乙2の1)。
また、同条第3項には、「甲が、本件店舗の広告宣伝のために、乙に対してヘアスタイル写真集等を提供した場合、乙は、甲が提供の際に定めた期間に限り、これを使用することができる。」の記載がある(乙2の1)。
そして、本件契約書第28条(契約終了及び解除後の措置)には、「乙は、本契約が終了したとき(期間満了、解約又は解除を含む)は、契約終了日の翌日より45日以内に次の各号のとおりの措置を行わなければならない。」として、「〈1〉店舗名、商標、商号、サービスマーク、ロゴ、パンフレット、広告の宣伝物等、甲のフランチャイズと疑わせる一切の表示、看板、パンフレット、書面を除却すること。除去費用は乙が負担する。」の記載がある(乙2の1)。
(3)ア 乙第3号証及び乙第10号証は、ヘアスタイル写真集であり、表紙には、「P」(アクサンテギュが付されている。以下同じ。)の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字の下に、「リップス ヘアカタログ」の文字が表示されている。また、乙第10号証の最終ページ末尾に、「リップス ヘアカタログ」、「株式会社レスプリ」、「2019/2/28 発行」の記載がある。
イ 顧客に渡されるものとされる乙第4号証の「施術カード」、乙第5号証の「ご紹介カード」及び乙第6号証の「クレドカード」には、「P」の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字の記載がある。そして、乙第9号証は、2018年11月30日付の「株式会社リップス」から「株式会社YET」宛の請求書であり、「請求内容」欄に「施術カード」、「備考」欄に「1,000枚」の記載があることから、当該請求書が乙第4号証の「施術カード」に係るものであることが推認され、乙第13号証によって、株式会社YETが本件契約書のO氏の権利義務を承継した者であることは確認できる。しかしながら、乙第9号証は、「施術カード」が、株式会社リップスから株式会社YETに譲渡されたことを示しており、貸与された事実は確認できない。
ウ 乙第7号証の7頁目は、美容室LIPPSの自由が丘店を紹介するウェブページとみられ、受付背後の壁面に「P」の文字を内包する正方形の図形の下に「LIPPS」の欧文字が表示されている。また、乙第11号証は、LIPPS横浜店のS氏のTwitterとみられ、「本日は自由が丘店オープンに向けての準備をしてきました」の見出しの下、「2017年4月17日」の日付とともに、自由が丘店とみられる写真が掲載されており、「P」の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字が表示された看板が、店舗外に取り付けられていることが確認できる。しかしながら、本件契約書第28条においては、契約終了及び解除後の措置として、看板等を除却する旨の規定があるが(前記(2)の認定事実)、貸与についての規定はなく、実際に看板が貸与された事実は確認できない。
エ 乙第12号証は、LIPPS公式ブログとみられるところ、「P」の文字を内包する正方形の図形の下に「LIPPS」の欧文字が表示され、2017年5月15日の記事として、「皆さんこんにちは 4月21日についにオープンした自由が丘店からお届け致します」等の記載や写真が掲載されている。
また、乙第14号証の1によると、2017年4月9日に「LIPPSプレス」から「LESPRIT/LIPPS」宛てのメールで、自由が丘店オープンのDM作成依頼がなされており、「新店舗出店のご挨拶」と題した、LIPPS銀座店がオープンする旨の挨拶状が添付されたものとみられる(乙14の2)。
2 請求に係る役務についての登録商標の使用が行われたか否かについて
(1)判断
商標法上の役務とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得べきものであるところ、「広告用具の貸与」とは、他人のために、例えば、アドバルーン、デジタルサイネージ、広告スタンド等、広告を行うための用具を貸与する役務と解される。
まず、乙第2号証の1に関し、本件契約書第4条第2項の、フランチャイジーによる名刺・ショップカード等の印刷物に関する費用負担は、当該印刷物の貸与に関する規定とはいえない。同様に、第4条第3項の、フランチャイザーによるヘアスタイル写真集等の提供は、当該写真集等の貸与に関する規定であることが明確ではない。また、当該契約書の第28条において、契約終了及び解除後の看板等の除却は、看板等の貸与に関する規定ということはできない。
次に、乙第3号証及び乙第10号証は、ヘアスタイル写真集とみられるところ、本件契約書第4条第3項の記載から、フランチャイジーに対し、ヘアスタイル写真集が提供されたであろうことは推測できる。しかしながら、前記条項は「貸与」についての条項であることが明確ではない上、一般的に、ヘアスタイル写真集は美容の役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物と考えられ、広告用具に該当するとは考え難い。
乙第4号証ないし乙第6号証の各種カードは、被請求人の説明によると、顧客に渡されるものであるから、美容の役務の提供の用に供する物、あるいは美容の役務の広告宣伝物と考えられ、貸与される広告用具に該当するとは考え難い。また、2018年11月30日付の「株式会社リップス」から「株式会社YET」宛の請求書(乙9)において、「請求内容」欄に「施術カード」、「備考」欄に「1,000枚」の記載があることから、当該請求書が乙第4号証の「施術カード」に係るものであることが推認され、当該カードは貸与されたというより、譲渡されたものとみるのが相当である。
乙第7号証の7頁目の受付背後の壁面に表示された「P」の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字や、乙第11号証の自由が丘店とみられる写真に示される「P」の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字が表示された看板は、いずれも美容室の名称を表示したものであって、当該表示は、美容室(役務「美容の提供」)に係るものというのが相当であって、役務「広告用具の貸与」に係るものとはいうことができない。また、本件契約書においても、看板の貸与についての規定はなく、実際に看板が貸与された事実は確認できないから、本件契約書に基づいて「広告用具の貸与」が行われたということもできない。
乙第12号証は、LIPPS公式ブログとみられるものに自由が丘店についての記載や写真が認められるところ、被請求人は、これをもって、被請求人が、フランチャイジーに対し「広告スペースの貸与」の役務を提供していると主張しているが、同証拠における「P」の文字を内包する正方形及び「LIPPS」の欧文字の表示は、美容室の名称を表示したものであって、当該表示は、美容室(役務「美容の提供」)に係るものというのが相当であって、役務「広告用具の貸与」又は「広告スペースの貸与」に係るものとはいうことができない。また、そもそも「広告スペースの貸与」は、本件役務に含まれる役務ではない。
乙第14号証は、自由が丘店オープンのDM作成依頼のメールと、LIPPS銀座店がオープンする旨の挨拶状であるが、DMは、美容の役務の広告宣伝物と考えられ、貸与される広告用具に該当するとはいえない。
以上のとおり、乙第3号証ないし乙第7号証、乙第10号証ないし乙第12号証及び乙第14号証は、美容の役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物、あるいは美容の役務の広告宣伝物と考えられる上、貸与された事実も確認できないから、被請求人が他人のために独立して商取引の目的たり得る広告用具の貸与を行ったものとみることはできない。
したがって、被請求人が、請求に係る役務についての本件商標の使用をしていたことを認めることはできない。
(2)被請求人の主張について
ア 被請求人は、本件契約書の第4条において、フランチャイジーであるヘアサロンの乙は、本件店舗に関し、ヘアサロンの営業、化粧品等商品の販売についての広告宣伝はフランチャイザーである甲の定める様式に従うこととされ、その第3項には、「甲が、本件店舗の広告宣伝のために、乙に対してヘアスタイル写真集等を提供した場合、乙は、甲が提供の際に定めた期間に限り、これを使用することができる。」としていることから、ヘアスタイル写真集(乙3、乙10)は、商標法第2条第3項第3号ないし第5号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)」に該当すると主張する。
しかしながら、本件契約書第4条は「貸与」についての条項であることが明確ではない上、ヘアスタイル写真集が広告用具に該当するとは考え難いことは、前記(1)のとおりであり、これらの証拠をもって、被請求人が「広告用具の貸与」を行ったとは認められないことから、同号に該当する使用であるとはいえない。
イ 被請求人は、本件契約書の表紙にある「リップスパートナーサロン契約書」の表示と本件商標とは社会通念上同一の商標ということができ、契約日である「平成29年4月5日」は要証期間内であり、本件契約書は要証期間内にフランチャイジーであるヘアサロンの乙に頒布されたこと明らかであるから、商標法第2条第3項第8号に定める役務に関する取引書類に該当すると主張する。また、乙第9号証の請求書も、取引書類ということができ、「株式会社リップス」の文字と本件商標とは社会通念上同一の商標ということができると主張する。
しかしながら、本件契約書第4条第28条の記載から、被請求人がフランチャイジーに対し「広告用具の貸与」を行っていたことは確認できず、乙第9号証は、「施術カード」が、株式会社リップスから株式会社YETに譲渡されたことを示しており、貸与されたものといえないことは、前記1(3)イのとおりであり、これらの証拠をもって、被請求人が「広告用具の貸与」を行ったとは認められない。
したがって、被請求人の前記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人が、請求に係る役務についての本件商標の使用をしていることを証明したとはいえないから、商標法第50条第2項に規定されているその他の使用の要件について論及するまでもなく、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る役務についての本件商標(本件商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る役務について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2021-05-13 
結審通知日 2021-05-18 
審決日 2021-06-10 
出願番号 商願2014-110409(T2014-110409) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 聡一 
特許庁審判長 森山 啓
特許庁審判官 板谷 玲子
綾 郁奈子
登録日 2016-02-12 
登録番号 商標登録第5825462号(T5825462) 
商標の称呼 リップス 
代理人 大谷 寛 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
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