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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない W30
管理番号 1376851 
審判番号 取消2019-300400 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-05-29 
確定日 2021-07-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5674401号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5674401号商標(以下「本件商標」という。)は,「叶匠壽庵七福神」の文字を標準文字で表してなり,平成25年12月10日に登録出願,第30類「菓子,和菓子,洋菓子,生菓子」を指定商品として同26年5月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は,商標法第51条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
被請求人は,故意に,指定商品について登録商標に類似する商標を使用して,他人の業務に係る商品と混同を生ずるものを行っている。
したがって,本件商標は,商標法第51条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(1)被請求人などの使用している商標について
被請求人は,本件商標に類似する「叶匠壽庵」と「七福神」の文字を縦二行にして表し(「叶匠壽庵\七福神」),あるいは,横二列にして商標を,その指定商品「菓子」などに使用し,請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものを行っている。
被請求人が「菓子」について使用している商標は,次のとおりである。
・使用商標1(別掲1),商品の宣伝・予約販売等の広告票における使用
・使用商標2(別掲2),商品の販売店内のPOP(盾板,表示板,商品価格表示板等)における使用
・使用商標3(別掲3),取引書類「レシート」における使用
・使用商標4(別掲4),インターネットにおける使用
・使用商標5(別掲5),商品の包装容器における使用
使用商標1ないし使用商標5をまとめていうときは,以下「使用商標」という。
(2)被請求人の「本件商標と使用商標」との類似について(甲4号証)
被請求人の「せんべい」を含む菓子についての「使用商標1」ないし「使用商標5」は,それぞれ本件商標に類似する商標である。
ア 使用商標1(甲2号証1の1)(広告票)
商品発売日等の広告宣伝のための広告票に,被請求人が年賀菓子「せんべい,柚,松ぼっくり,栗,鯛,黒豆納豆,蓮根」について使用している「使用商標1」は,指定商品「菓子」について,販売用広告票に「叶匠壽庵」の文字を表し,その文字より二倍以上大きい文字で,「七福神」と強調して,「七福神」の文字を際立たせるように横書き,あるいは縦書き,横二列等に表したものである。
「使用商標1」の「叶匠壽庵」の文字と「七福神」の文字とが相まって,そこからは「叶匠壽庵の七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を生ずるものである。「使用商標1」に付加されている「七福神」の説明文字列は,記述的なものであり,出所の識別機能を有しないものである。
「使用商標1」は,「叶匠壽庵」の文字と「七福神」の文字とを別々に,少し間隔をとり,大きさと書体を異にして表したものであるから,本件商標と同一の商標とはいえないものであるが,全体として「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼及び「叶匠壽庵の生産・販売する七福神」の観念において類似する商標であるから,本件商標と使用商標1とは全体として類似する商標であり,商品は「菓子」であるから同一又は類似する商品である。
イ 使用商標2(POP)(甲2号証2の1)
商品「菓子」(せんべいを含む)の販売のための各デパート,被請求人直営店における,販売場所広告用大小パネル及び,又は,盾状縦に長い商品名札等に使用されている使用商標2は,広告用POPである。
「使用商標2」は,「叶匠壽庵」の文字と「七福神」の文字とを別々に,少し離しあるいは,大きさと書体を異にして表してあるから,本件商標と同一の商標とはいえないものである。
「使用商標2」の「叶匠壽庵」の文字と「七福神」の文字とが相まって,そこからは「叶匠壽庵の七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を生ずるものである。「使用商標2」に付加されている「七福神」の説明文字列は,記述的なものであり,出所の識別機能を有しないものである。
本件商標と使用商標2とは全体として類似する商標であり,商品も「菓子」であるから同一又は類似する商品である。
ウ 使用商標3(甲2号証3の1)(取引書類レシート)
レシート中の「七福神」の文字は,本件商標の使用商標とはいえず,商号・屋号等を指称する「叶匠壽庵」が販売している商品の個別商標として「七福神」と理解されるとすれば,本件商標と使用商標3は類似する商標といえなくもないと推定できる商標である。
エ 使用商標4(甲2号証4の1)(インターネットの記事)
インターネット上においては,商品「菓子」について,その広告・宣伝を内容とする情報に電磁的方法により使用されている「使用商標4」は,包装用紙箱に入れられた商品「菓子」の包装用箱に入っているものであり(「使用商標1」・甲2号証1の1と同じもの),「叶匠寿庵」の文字と「七福神」の文字との間に一文字分のスペースを取り表してあるので,本件商標と同一の商標とはいえないものである。
「叶匠寿庵」の文字と「七福神」の文字とが相まって,そこからは「叶匠寿庵の七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を生ずるものである。
他の文字列と「七福神」などの存在は,「使用商標4」から「叶匠寿庵の七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を生ずることの妨げとはならないものである。
結局,本件商標と「使用商標4」は,「叶匠寿庵の販売する七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を共通にする,全体として類似する商標である。
オ 使用商標5(甲2号証5)(商品包装用箱の原物)
商品の包装用かけ紙,包装用箱の蓋,しおり,包装用箱の蓋,商品の中袋において,「七福神」の文字がある箇所は,「七福神」の文字が前述のように強調されて表されているものである。
「使用商標5」は,「叶匠壽庵」の文字と「七福神」の文字とを別々に,少し離し,大きさと書体を異にして表されているので,本件商標と同一の商標とはいえないものである。
「使用商標5」の「叶匠壽庵」の文字と「七福神」の文字とが相まって,そこからは「叶匠壽庵の七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を生ずるものであるから,本件商標と「使用商標5」は,「叶匠壽庵の七福神」の観念及び「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼を共通にする,全体として類似する商標である。
(3)請求人が使用する商標及び請求人の販売する商品(甲4号証)
請求人は,商品「あられ」・「おかき」・「せんべい」等の製造・販売を主業務としており,商品「あられ」等について,主に以下に記載の各商標(以下,それぞれ請求人商標1,請求人商標2及び請求人商標3といい,「七福神あられ」の文字からなる商標を併せていうときは,「請求人商標」という。)を使用している。
ア 請求人商標1(甲4号証4)
「請求人商標1」は,やや大きめの中型の構え付き包装用袋(現物)に表示されたものであり,「七福神『R』あられ(「『R』」は「R」の丸囲み文字,以下同じ。)」の文字を表し,その下部に三列に並べた七福神の図形を配し,横側には,「円輪郭の中に『福』の文字を表した図形を帆印とした,『七福神が乗った宝船』」の図を配して表したものである。
イ 請求人商標2(甲4号証5)
「請求人商標2」は,小型の包装用袋(現物)に表示されたものであり,「かろやかな七つの風味」その下部「七福神『R』あられ」の文字を表し,その下部に「円輪郭の中に『福』の文字を表した図形を帆印とした,『七福神が乗った横側からの宝船』」の図形を配して表したものである。
ウ 請求人商標3(甲4号証8)
「請求人商標3」は,包装紙に表示されたものであり,「七福神」の文字と「あられ」の文字を,細い円輪郭の中に輪郭に接するようにして,上部右回りに「七福神」の文字を,下部左回りに「あられ」の文字を配した円形図形と,その円形図形の円輪郭の周りに七福神の7体の図形を360度に展開して表したものである。
(4)請求人の営業活動(甲5号証1)
ア 創業商店から「株式会社幸煎餅」(請求人)へ
請求人は,「おかき」・「あられ」及び「せんべい」などの製造・譲渡・販売業者として明治29年に東京日本橋において創業以来,同42年に群馬県前橋市へ営業拠点を移した後(甲5号証1の1の1,甲5号証1の1の2),「幸煎餅本舗」の店名で個人営業を行い,その後,有限会社幸煎餅として法人組織とし(昭和51年4月8日設立登記(甲5号証2の2の1,甲5号証2の2の2)),さらに株式会社幸煎餅として組織変更を経て(昭和60年12月12日),100有余年の間,活発に営業活動を継続してきた(甲5号証1の1の4?1の10,甲5号証2の2の1)。
イ 支店及び取扱店
現在では請求人は,群馬県前橋市千代田町四丁目19番3号所在の「本社・前橋本店」をはじめ,群馬県,東京都及び静岡県の直営店並びに子会社店の合計3店を擁している(パンフレット表裏,甲5号証2の2の1の1)。そして,取扱店常設店は,178店舗ある(平成31年1月現在)(甲5号証2の2の3)。
(5)請求人の広告・宣伝(甲6号証)
ア 請求人ホームページの映像面(甲6号証1)
(ア)幸煎餅HP https://www.7292.com/
(イ)ネット本店 https://www.7292shop.jp/(H31.4.6)請求人のHP幸煎餅ネット本店(甲6号証1の1の1)
幸煎餅ネット本店(甲6号証1の1の2)
(ウ)幸煎餅ネット本店には,「七福神『R』」商品一覧が掲載されているものである(H31.2.14現在)。
「七福神あられ」他の商品を紹介している。
あられ,せんべいにおいて「七福神 あられ」「銀座 七福神」「幸だより」を紹介。
「七福神チョコ」「おいしいハート」「銀座七福神」の広告宣伝等を行っている。
「七福神ようかん」「七福神カステラ」等の広告宣伝を行っている。
イ 新聞(甲6号証3)
上毛新聞に昭和63年5月31日から平成20年7月3日まで「七福神あられ」が25回掲載された(甲6号証3の1?21,甲7号証の10の1,甲7号証の14の1?3)。
他 東京スポーツ,菓子食品新報,桐生タイムス,スポーツ報知,スポーツニッポン(スポニチ),静岡リビング,静岡新聞,メトロガイド,日刊スポーツ,朝日新聞,毎日新聞,読売新聞,日本経済新聞,東京リビング新聞等にも掲載された(甲6号証4?13,甲7号証10?13,15)。
ウ 雑誌
月刊文藝春秋(別冊を含む)に平成7年7月1日から同23年6月1日まで「七福神あられ」が50回掲載された(甲6号証14の1?甲6号証14の50)。
他 全国招福開運寺社参り,アサヒグラフ,二人旅の宿,オール読物,週刊文春等に「七福神あられ」が掲載された(甲6号証15?23,甲7号証16?23,甲8号証1,2,4,5,7,8,10,11)。
エ ちらし等(甲6号証24?27)
プレゼントセールのチラシ等(平成元年7月15日?同年12月20日)に「七福神あられ」が19回掲載された(甲6号証24?甲6号証の25の22)。
他 高崎駅等の電飾サインボード,SUライナー(中吊り貸切電車)における広告等に「七福神あられ」が掲載された(甲6号証26,27)。
オ 歌舞伎等のプログラム
平成7年12月公演から同20年10月3日まで「七福神あられ」が広告された(甲6号証29の1?16)。
カ 請求人の「七福神」あられ関連の商品販売量
「七福神」あられ関連の商品販売量は,1995年ないし2006年にかけて,毎年2ないし3億円である(甲7号証6)。
この売上額は,商標「七福神あられ」に関する「あられ」についてのもののみであり,1997年から2006年まで10年間では,およそ26億4千6百万円を超えるものである。
キ ラジオ広告(甲7号証7)
TBS FM Shibuya 「大沢悠里のゆうゆうワイド」において「七福神あられ」の広告1989年から1年間(甲7号証7の2)
ク テレビ広告
(ア)群馬テレビ「ジャストシックス」において「七福神あられ」「モンドセレクション受賞」(甲7号証8)
(イ)「株式会社静岡第一テレビ」 静岡放送(甲7号証8の1)
「毎月曜日『every内天気予報16:35?』」における2015年5月から2016年8月まで(甲7号証8の1の1,2)
ケ カタログ(甲7号証9)
「七福神あられ 大」,「七福神あられ 中」,「七福神あられ 小」,「せんべい造り百年,幸煎餅の七福神あられ」,「七福神あられ」(包装用中型袋)等
(ア)「冬の逸品 26選」カタログ 有効期間:平成5年11月1日?12月13日まで (甲7号証9の1)
(イ)ふるさと小包 カタログ 平成7年度 全国版 (財)ポスタルサービスセンター(甲7号証9の2)
(ウ)「冬の逸品 33選」 カタログ 関東郵政局(甲7号証9の3)
申込期間:平成7年11月1日?12月14日
(エ)「お歳暮ゆうパック」1997年ないし2001年カタログ等(甲7号証9の4?17)
(6)商品の混同(商品の出所の混同)について
請求人が使用する商標「七福神」などは,上記(2)ないし(5)に説明したごとく,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,取引者及び需要者に広く認識されているものである。
そのため,被請求人が,本件商標と類似する「使用商標1」,「使用商標2」,「使用商標4」「使用商標5」を「あられ」及び「せんべい」「おかき」「カステラ」「チョコレート」「羊羹」等々の「菓子」について使用する場合には,これに接する取引者及び一般需要者に,その商品があたかも請求人の業務に係る商品であるか,または,請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生じさせ,もしくは,商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものである。
ア 以下,請求人商標と,「使用商標1」及び「使用商標2」,「使用商標4」及び「使用商標5」について,それぞれ個別に対比して考察し,説明する。
(ア)使用商標1(甲2号証1の1)について
「使用商標1」は,「七福神」の文字から,「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼が生じるものである。
「叶匠壽庵」の文字は,「七福神」の文字と別々に表されており,かつ「叶匠壽庵」は日本の代表的和菓子店の一つで法人名称の略称であり,商品の生産者又は販売者を示すものと認識されるものである。
「叶匠壽庵」の文字は「七福神」とは関係がなく結びつきが強くないものであり,また,「叶匠壽庵」と「七福神」の文字にスペースをとり,または,「叶匠壽庵」の文字が小さく表されたりもしている。
要するに,屋号,商号を表す「叶匠壽庵」の部分とペットネームとしての「七福神」として個別固有のものといえ,商品を表す要部は「七福神」であるから「使用商標1」は,請求人商標と「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にするものであり,外観の相違点を考慮しても,両商標は,全体として類似する商標である。
そして,「使用商標1」は,「せんべい」を含む商品「菓子」とされているものであるから,互いに類似する商品である。
したがって,「七福神」の文字をも要部とする「使用商標1」に接する取引者及び一般需要者は,その商品があたかも請求人の業務に係る商品であるか,または,請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生じるものである。
(イ)使用商標2(甲2号証2の1)について
「使用商標2」は,「七福神」の文字から,「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼が生じるものである。
「叶匠壽庵」の文字は,「七福神」の文字と別々に表されており,かつ,「叶匠壽庵」は和菓子店としては,比較的新しい和菓子屋の名称であり,商品の販売主体を表すものと認識されるものであり,「七福神」の文字の部分は,「使用商標2」の要部といえるものである。
そうすると,「使用商標2」は,請求人商標と「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にするものであるから,外観の相違点を考慮しても,両商標は,全体として類似する商標である。
そして,「使用商標2」は,「せんべい」を含む「菓子」について使用されているものである。
したがって,「七福神が乗った宝船の図形」及び「七福神」の文字を要部とする「使用商標2」に接する取引者及び一般需要者は,その商品があたかも請求人の業務に係る商品であるか,または,請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく,商品の出所について混同を生じるものである。
(ウ)使用商標3(甲2号証3の1)について
「使用商標3」は,「七福神」の文字から,「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼が生ずるものである。
被請求人の使用する商標中,「七福神」の文字部分は,「使用商標3」の要部の一つといえるものである。
そうすると,「使用商標3」は,請求人商標と「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にするものであるから,両商標は,全体として類似する商標である。
そして,「使用商標3」は,「せんべい」を含む和菓子の詰め合わせ,すなわち,商品「菓子」について使用されているものである。
したがって,「七福神」の文字を要部とする「使用商標3」に接する取引者及び一般需要者は,その商品があたかも請求人の業務に係る商品であるか,または,請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく,商品の出所について混同を生じるものである。
(エ)使用商標4(甲2号証4の1)について
「使用商標4」は,「七福神」の文字から,「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼が生ずるものである。
「叶匠壽庵」と「七福神」の文字は,別々に表されており,文字の大きさや態様も異なり,かつ,「叶匠壽庵」の文字が商品の販売店・商号を示すものと認識されるものであるから,「七福神」の文字は,独立して商品の出所識別機能を有するものである。
そして,その他の文字部分はいずれも独立して商品の出所識別機能を有しないものであり,それらの構成要素は,「使用商標4」から「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼が生ずる妨げとならないものである。
要するに,「七福神」の文字の部分は,「使用商標4」の要部といえるものである。
そうすると,「使用商標4」は,請求人商標と「七福神」の観念及び「シチフクジン」の称呼を共通にするものであるから,外観の相違点を考慮しても,両商標は,全体として類似する商標である。
そして,「使用商標4」は,「せんべい」に使用されているものである。
したがって,「七福神」の文字を要部とする「使用商標4」に接する取引者及び一般需要者は,その商品があたかも請求人の業務に係る商品であるか,または,請求人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのごとく,商品の出所について混同を生じるものである。
(7)被請求人の故意
ア 披請求人は,請求人の登録商標を知りながら,「使用商標1」ないし「使用商標5」を使用している。
被請求人は,請求人の商品「あられ,せんべい」等の菓子について使用する「七福神」を知った上で,「叶匠壽庵七福神」を登録したものである。
一連一体の本件商標を,「叶匠壽庵」と「七福神」に分断し,「七福神」の態様に変化を加えあるいは,二行または,二列あるいは,文字のサイズを変えて「七福神」を際立たせて使用するものである。
被請求人は,需要者が請求人の業務に係る商品と紛らわしいことを認識しながら,自己の業務に係る商品「菓子」などについて,「七福神」の文字を顕著に表した「使用商標1」ないし「使用商標5」を使用したものである。
イ 被請求人の本社・販売場所
被請求人は,滋賀県大津市大石龍門4丁目2番1号に本社を置き,「和洋菓子」の製造・販売を行っているものである(甲1号証1の3)。
被請求人は,需要者によく知られた三越,松屋,高島屋等のデパートに常設店を持ち,「東京 新丸ビルディング内に直営店」がある。
ウ 被請求人の商標出願及び登録商標
(ア)被請求人は,請求人が所有する登録商標「七福神」(登録第4004283号,甲1号証2の1)を知っているものである。
被請求人の商品販売時に,「七福神」の標章を表示していない一方で,被請求人直営店での「七福神」の使用は,「七福神」が被請求人のものでないこと間接的に示している(甲2号証3)。
(イ)被請求人は,「叶匠壽庵」に「七福神」の文字を結合したが,発音する場合に「カノウショウジュアンシチフクジン」と称呼するには無理がある。
本件商標は,16音とさらに長く,需要者・取引者は,迅速を尊ぶ商取引では,「カノウショウジュアンシチフクジン」とはいえないものである。
エ 消費者の商取引の商標使用は,商標の特徴を捉え,迅速性を必要とする。
本件商標は,旧書体漢字「壽」,一般に使用されていない特徴のある「匠壽庵」の部分とも相まって,商標全体は,一度に目に入り難いものであるから,「七福神」を強調する必然性があるものである。
商号「叶匠壽庵」と,固有の商品を表示する名称「七福神」の結合には,強弱・軽重の差がある。
オ 被請求人は請求人の登録商標を認知している。
請求人は,各種の新聞・雑誌・放送・パンフレット・カタログ・ラジオ・テレビ・東京地下鉄の全車両貸切り宣伝広告等々,多数の媒体に宣伝を行っていること,デパートでは,請求人の期限付き店舗と披請求人の常設店舗とが重なる場合もあり,業務が重なる部分もあり,被請求人の年賀菓子には「せんべい」も中心商品に含まれている。
被請求人は,請求人の使用している「七福神」及び「七福神あられ」など「七福神」を要部とする多数の商標を知っていたものである。
カ 請求人の「七福神あられ」は平成13年7月には広く知られている商標である。
請求人は審決において広く知られていると認定され,その後別件侵害裁判事件解決後,「七福神あられ」から「七福神」を主力商標と明確にするため,「七福神」が登録商標である旨をほぼ全商品に記載し啓蒙を図っている。
請求人は,永年にわたり,「七福神」及び「七福神」の文字を要部とする商標を,「あられ」及び「せんべい」などについて継続的に使用した結果,群馬県,東京都周辺の関東において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,取引者・需要者に広く認識されているものであり,被請求人も当然に知っているものである。
(8)結論
以上のとおり,被請求人が,故意に,指定商品について,本件商標に類似する商標を使用し,請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものである。
本件商標は,商標法第51条第1項の規定に該当し,同規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求人の主張に対する被請求人の反論
ア 使用商標による出所の混同について
(ア)総論
被請求人は,「被請求人の使用商標1ないし使用商標4は,全て商品の出所を表示する『叶匠壽庵』を備えるものであるから,請求人の業務に係る商品と混同を生ずることはあり得ない」とする主張について
a 被請求人が,請求人のよく知られた登録商標「七福神」を自他商品の識別標識でないとして誇大表示あるいはまた,「七福神」文字列を独立させて変更使用したものは,言葉の持つポジジティブな晴れの日のイメージ・連想,歴史的,視覚的,商取引の容易性,迅速性,離れた場所よりの記憶容易性がある。
特許庁において,「七福神あられ」が周知とされたことからみても,請求人の商標「七福神」は,よく知られており,被請求人の商品と現実的に混同を生ずるおそれがある。
両商標を並べて比較した場合には混同を生じなくとも,離隔的に判断した場合には,七福神の部分に注目して,これを「シチフクジン」と称呼し,引用商標を連想してこれと混同することがあり得るとされる。
b 被請求人は,登録商標の指定商品について登録商標の使用をする権利を有し,他の権利と抵触しない限り事実上の使用はできるが,他の権利,すなわち,請求人の登録商標が存在する場合は,使用できず,使用できない商標の使用は,商品の出所の混同を生ずるおそれがある。
c 被請求人は,一連一体の「叶匠壽庵七福神」商標が登録されたことを奇貨として,「七福神」の文字を際立たせ,強調して本件商標を変更して使用したものである(商標法第27条第1項,同法第70条,同法第73条,同法第74条参照)。
d 一般需要者は,商品に標章を表示する者の意図にかかわらず,商品に表された標章によって,商品を特定のものと認識し,商標を目印に特徴のある標章によって商品を同定しているものである。
e 被請求人は,「年賀菓子(干支せんべいを含む)」などについての使用商標又は各標章の使用している。他方,請求人は,「あられ」などについて,莫大な費用,40年の以上の永きにわたって,「七福神『R』あられ」のように雑誌,新聞,ラジオ,テレビ等に,多くの宣伝広告をして,コマーシャル効果を期待していることから,需要者は,請求人の「七福神」が記憶に残り,被請求人の「七福神」と,商品の混同を生じているおそれがある。現在もなお登録商標を「七福神」,「七福神『R』あられ」「七福神あられ」のように,テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等に宣伝広告を継続している(甲11号証の1?7,甲12号証の1,2)。
被請求人の商品「干支せんべい」と請求人の「あられ」は,実際に販売されている商品より見ると,ソフトタイプの良く似た「せんべい」と「あられ」であり,商品の品質・種類も類似性が高い。
f 被請求人が,本件商標を「使用商標」のように「菓子(年賀菓子(せんべいを含む)」等について使用することにより,請求人が「請求人商標」に使用する商品「菓子(せんべい・あられ・羊羹)」などの販売繁忙期が双方共に年末年始をピークとしており,混同が生ずるおそれが高いものである。
請求人の「七福神」は,一般に縁起の良いとされていることから,一年の中では,年末年始の売り上げが最盛期である。他方,被請求人の小型注文書においても「12月から1月」が販売期間となっている(甲2号証1の1)。「七福神」は,晴れの日用商品のため,同時期に毎年同様なことが繰り返されている。
g 被請求人が,請求人の長年使用した周知な「七福神あられ」または「七福神」を使用することにより,その周知性が薄められる,すなわちダイリューション化及びポリューション化の行為ともなる。
h 請求人の登録商標の数・種類は,「七福神」を含むものが「○○七福神」「七福神めぐり」等々のように多数あり,多数の商品を販売して「七福神」を守り育てながら使用しているため,被請求人の使用する「叶匠壽庵(小型文字)\七福神(大型文字)」は,「叶匠壽庵」が,「七福神」を品揃えして商品を取り扱っているようにも捉えられる。
請求人は,被請求人の本来的に使用できない商標の使用から,「叶匠壽庵」の文字が請求人の主張する出所表示機能とは認めない。
i 本件商標と請求人の登録商標「七福神」及び「七福神せんべい」が別々の所有者に登録されている状況において,本件の標準文字による本件登録を「前記のように数種類以上に変更して使用する商標は,標準文字の一連一体の範囲を逸脱した使用であり,本件商標の使用とは認められない。
(イ)各論について
a 使用商標1については,これを認めないものである。
被請求人の登録商標の要部に対する認識が異なり,登録商標の使用が許されないものについての使用であることにから,これを否認する。
被請求人の「叶匠壽庵」は,和菓子愛好家は別としても,「叶匠壽庵」及び,「叶匠壽庵七福神」が正確に知られていない。晴れの日のギフトとして商品を「七福神」を目当てに商品を取引きすることになる。
b 被請求人は,「故意を立証する直接的な証拠もなく」との主張について
被請求人の変更使用商標に関する証拠を,4年以上にわたり収集しているところ,被請求人が変更使用し続けることは,需要者・取引者は混同し,故意とみなされる。
c 別件,株式会社Kとの係争事件で,和解条項の1つとして「『七福神』の3文字を含む一切の標章を株式会社Kが使用しないこと,商品名を改め『彩の国ふくふく箱』『彩の国ふくふくあられ』と改める」旨の内容が,朝日新聞,食料新聞に4回にわたり掲載された(甲13号証の1,2)。
請求人の「七福神」商標権訴訟における和解報告が,主要新聞に掲載されることは極めて異例とのことである。これらにより,業界向けと一般の需要者向けとの両面から,「七福神あられ」の周知継続を図っている。
以上の理由により,被請求人の主張は,これを認めないものである。
d 使用商標5について
aと同趣旨である。現実に販売されていた商品「年賀菓子」を購入した「叶匠壽庵七福神」を「叶匠壽庵(小型文字)七福神(大型文字)」の縦書きにした包装箱を販売している証拠のコピーを添付したものであり,理由については,上記に同様である。
イ 「故意」について
(ア)総論について
被請求人は,「請求人の主張は,請求人の推測の域をでないものであり,『故意』を立証する直接的な証拠もなく失当である。」とする主張について
a 本件商標と請求人の「七福神」・「七福神あられ」(七福神を含む多数の登録商標有)が,現存する状況において,「叶匠寿庵」・「七福神」の文字の大きさの相違,色彩の相違,スペースの有無,二段書きなどは,各商標についての印象・認識・記憶・連想などに重大な影響を与えるものであり,特に「叶匠壽庵七福神」は,「叶匠壽庵」をことさら小文字で記載した場合,出所表示機能ではなく,請求人に係る周知な商標「七福神あられ」を連想させて,請求人商標とかれこれ混同するおそれがある。
また,被請求人は,「七福神」の識別機能の認識を誤っており,被請求人のみならず需要者も混同することとなる。
b 被請求人が,本件商標を「叶匠壽庵七福神」と正確に使用をするべきところを,多様に多数の変更して使用が許されないものについて,出所表示機能があると主張することは,その前提に,「叶匠壽庵七福神」を変更使用したことに既に故意がある。
c 被請求人は,「叶匠壽庵」には出所表示機能があると主張するが,商品「菓子」については「叶匠壽庵」の出願・登録商標もなされていないものである。また,被請求人のこれまでの主張よりすれば,出願時点の事前調査において,請求人の「七福神」を知りながら,「叶匠壽庵七福神」として出願して「叶匠壽庵七福神」の登録後にこれを変更使用したため,事実上の出所表示機能はない。
(イ)「叶匠壽庵」の明示について
被請求人の「故意がないことが明らかである。」とするの主張については,認められない。
a 被請求人の「『叶匠壽庵』が被請求人の会社名であり,商品の出所を示すことは,請求人も認めるところである」とする主張については,被請求人は,本件商標の使用がその前提として,本件商標の変更使用が許されないところ,本件商標は標準文字「叶匠壽庵七福神」であるから,同書体等間隔等正確な使用以外は許されてない。
b 「『叶匠壽庵』の文字を需要者が認識できるように表示している。」とする主張は否認する。
「叶匠壽庵」の文字があることは認めたとしても,「はっきり見えるように」変更された本件の使用は,許されないものである。変更使用商標中の「叶匠壽庵」の文字は,実質的に認められないから,請求人は,その明示の効果を認めないものである。加えて,請求人の周知な「七福神あられ」商標及び登録商標「七福神」他多くの七福神関係の登録商標がありこれらを使用している場合は,特に変更使用が許されない。
c 被請求人は,本件商標を,毎年のように数多くの変更使用を繰り返すことにより,故意ともみなされて許されず,本件商標の変更により,使用が許されないとする使用は,例え「叶匠壽庵」の文字表示があるとしても,「叶匠壽庵」は実質的なものでなく文字があるだけであって,実質的に認められない。
d 被請求人の「需要者にしっかりと認識させるためである」とする主張について
「叶匠壽庵」の文字について
被請求人のHPには,振り仮名があるが,「叶匠壽庵七福神」の漢字は昨今の片仮名語氾濫期,洋菓子ブーム等により,特に若い世代においては,視覚的にも馴染みがなく判読できない。
e 被請求人は,「年賀菓子の七福神」であると主張して,「七福神」の文字に,識別力がないとして登録商標を変更使用しているから,「叶匠壽庵」を明示していると主張しても,法に基づく保護はなく,被請求人の変更使用は,出所表示機能の有無の是非ではない。
f 需要者は,被請求人を既に認識した上で,年賀菓子を購入するのであって,需要者に確実に認識させたいのは,「七福神」である。被請求人「叶匠壽庵」を知らない者は,「七福神」を晴れの日商品の目印として購入する。
g 被請求人の使用する登録商標の使用については,大きさの相違,スペースの有無は,各商標についての印象・認識・記憶・連想などに重大な影響を与えるものであり,それらの相違点は,被請求人の各使用商標の認識として,強く高く評価されるものである。
(ウ)「故意」による被請求人の利益について
a 被請求人は,「被請求人に故意があったと仮定した場合であっても,被請求人には何ら利益がない。」とする主張については,次のとおり否認する。
(a)本件商標は,迅速を尊ぶ需要者・取引者にとっては,これを判読することが難しい。販売店は,「七福神」として商品の特定をすることにより,事務効率,利便性が向上するため,多くの顧客と取引きできるため利益の向上に繋がる。
(b)販売する店の人は,商品札,値札等々にあるように,当然のように「シチフクジン」として注文を聞き,商品を特定したうえで,商品が売買されている。請求人が「年賀菓子 七福神」を購入した際も,「これを1箱」。「はい」,「七福神一箱ですね」のように返答された。被請求人にとって,商品名を聞き返すことなくスムーズに繁忙期の店内の客さばきが可能となり,利益を得ることができる。種々な商取引・従業員等の行為利便のための利益がある。
(c)被請求人は,登録商標を変更して「七福神」を際立たせると,需要者・取引者の目に入りやすく,親しみやすく,「晴れの気分」を誘発する「七福神」は,短かく,記憶しやすく,リピーターも増えやすい。良い商品名は信頼を生んで商品をヒットさせる起爆剤になり,消費者購買力・利益が増大する。
b 被請求人は,「請求人は,『叶匠壽庵』は,『日本の代表的な和菓子の会社であると認める』」とする主張について
請求人が,「叶匠壽庵」が代表的な和菓子の会社であるとしたのは,現実社会上の地位的なことである。
本件の趣旨は,本件商標中の「叶匠壽庵」の文字に関するものではなく,本件商標の変更使用商標についての是非である。
c 被請求人は,「被請求人が,意図的(故意)に,請求人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせる理由がない」とする主張について
(a)「『商標権者の故意』が要件とされ,過失の場合は適用がない。当初過失であってもその後このような事態を認識しながらその使用を続けた場合は,本条に該当する。」のように解説されているところである(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕)。
(b)被請求人が,積極的な意図はないと主張しても,現実社会においては,日本を代表する会社であるところ,幾年かにわたる登録商標の変更使用の行為は,振るまい方も法的に認められないものを使用すべきではなく,これをし続けた結果としては故意となる。
(2)結論について
被請求人は,答弁書において『故意に指定商品について登録商標に類似する商標を使用して,他人の業務に係る商品と混同を生ずるものを行なった事実はない。』とする主張について,この主張は認められない。
被請求人による本件商標の変更使用は,商標権の専用使用を逸脱したものであり,さらに,請求人の登録商標「七福神」及び周知な「七福神あられ」商標があるために登録商標の正当使用義務に違反する。
本件商標を変化させたこれらの長期使用は,商標の使用が許されず,出所表示機能が実質的に認められないばかりでなく,請求人の登録商標と混同のおそがあり,故意ともみなされ,侵害に該当するおそれもあり,一般公衆の利益をも害する。
(3)最後に
被請求人の「七福神は商品の性質を表す」とする主張は認められないものであり,また,本件商標の場合は,標準文字「叶匠壽庵七福神」であるから,同書体,同じ大きさ,等間隔の一連一体の文字からなるものであり,登録商標をそのまま使用する以外に,この変更使用は許されないものである(商標法25条)。
請求人の登録商標「七福神」は,「七福神」の観念と「シチフクジン」の称呼が生じるものであり,被請求人の使用する甲第2号証すべてにみるように,「七福神」を際立たせて使用している使用商標をその指定商品「菓子」について使用することは,請求人が,「あられ」について使用する「七福神あられ」などの商標との関係で,商品の混同,商品の出所の混同あるいは商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものである。
被請求人の本件商標の使用はすべて登録商標の変更使用であって,請求人の周知商標「七福神あられ」の存在からみても,需要者に商品の混同を与えるおそがあるものである。
さらに,請求人の周知商標を知っての使用で故意があり,加えて混同のおそれある使用を幾年にもわたって使用し続けることは故意といえるものである。
(4)結論
本件商標は,商標法第51条第1項の規定に該当しその登録は取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1 被請求人の主張の概要
本件商標は,需要者において請求人の商品と区別できる使用であり,請求人の商品と出所の混同は生じておらず,被請求人が,故意に指定商品についての登録商標に類似する商標を使用して,請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものを行った事実はない。
2 本件商標について
(1)本件商標の構成
本件商標は「叶匠壽庵七福神」(標準文字)から構成され(甲1号証の1,甲1号証の2),「叶匠壽庵」という被請求人の会社名又は商号(甲1号証1の3)と「七福神」とを組み合わせた商標である。
「叶匠壽庵」が被請求人の会社名又は商号であることは,すなわち,「叶匠壽庵」という文字に商品の出所表示機能があることを意味する。
また,後述するように,被請求人の会社名は,全国的なテレビ番組及び雑誌に紹介されており,周知又は著名である。
一方,「七福神」については,一般的な国語辞典である岩波国語辞典第六版において「福の神様として信仰される,恵比寿・大黒・毘沙門・弁天・福禄寿・寿老人・布袋の総称」という説明があるように,おめでたい神様の総称として広く知られている。
(2)本件商標の指定商品
本件商標の指定商品は,第30類「菓子,和菓子,洋菓子,生菓子」であるが,後述する甲第2号証にあるように,被請求人は,菓子の中で,本件商標を専ら「年賀菓子」に使用している。
(3)本件商標の出所表示機能を有する要部
被請求人が使用する菓子は「年賀菓子」であるから,本件商標の中で,「七福神」は,年賀菓子との関係で,「おめでたい菓子」という商品の一般的な性質を示すものである。
前述のように,本件商標において,「叶匠壽庵」は,被請求人の会社名又は商号であり,商品の出所表示機能がある。
需要者は,製造販売元を確認して商品を購入するのが一般的であるから,本件商標を見れば,「叶匠壽庵」が,商品の製造販売者である被請求人の会社名又は商号であることは,需要者において容易に認識できる。
このため,本件商標に接した需要者は,「叶匠壽庵が製造販売するおめでたい商品」という印象(観念)を受け,商品の出所を容易に認識し,かつ商品の性質「おめでたいお菓子」を容易に認識することができる。
たくさんの菓子会社が製造販売する年賀菓子の中で,需要者は,年賀菓子の一般的性質を表す「七福神」よりも,特定の製造販売会社を示す「叶匠壽庵」を手掛かりに商品を選択して購入するから,本件商標の自他商品識別力がある要部は「叶匠壽庵」である。
このことは,被請求人が使用する商標(使用商標1?使用商標5)も同じである。
2 甲第2号証の各証拠の使用商標
(1)使用商標の分類
請求人は,被請求人の使用商標を5に分類している。
(2)使用商標の構成
使用商標1(甲2号証1),使用商標2(甲2号証2),使用商標3(甲2号証3),使用商標4(甲2号証4)及び使用商標5(甲2号証5)の各証拠に表示されている全ての商標は,「叶匠壽庵」と「七福神」を構成要素としている。
なお,請求人は,使用商標3(甲2号証3)において,「七福神」の文字があるレシート(甲2号証3の2,及び,甲2号証3の3)を指摘しているが,これらのレシートの上部には「叶匠壽庵」の文字が明確かつ目立つように印刷されている。
(3)使用商標を使用する商品
甲第2号証1において,「迎春おすすめ菓子」(甲2号証1の2等),「年賀菓子」(甲2号証1の3)等の記載がある。
甲第2号証2において,「年賀好適品」(甲2号証2の3の3),「お年賀好適品」(甲2号証2の4の3)等の記載がある。
甲2号証4において,「迎春のおすすめ「叶匠壽庵 七福神」販売のお知らせ(甲2号証4の1)等の記載がある。
甲2号証5において,「年賀菓子」(甲2号証5の1)等の記載がある。
これらの記載から,被請求人の使用商標1ないし使用商標5を使用する商品は,いわゆる「年賀菓子」であることは,明らかである。
(4)使用商品の要部
上記(1)ないし(3)から,被請求人の使用商標と使用している商品の関係について,「七福神」が年賀菓子の一般的性質である「おめでたい菓子」を示すことは,容易に理解でき,使用商標において,出所表示機能を持つ「叶匠壽庵」が,使用商標の要部であることは,明らかである。
(5)本件商標と使用商標との関係
使用商標は,本件商標と同一(取引上,実質的同一を含む)の商標及び本件商標と類似の商標の二種類が混在している。
3 請求人の主張に対する被請求人の反論
(1)使用商標による出所の混同について
ア 総論
請求人は,下記のように,被請求人の使用商標が本件商標に類似する商標であり,請求人の業務に係る商品と混同を生じると主張する。
被請求人は,本件商標に類似する「叶匠壽庵」と「七福神」の文字を縦二行にして表し(「叶匠壽庵/七福神」,あるいは,横二列にして商標を,その指定商品「菓子」などに使用し,請求人の業務に係る商品と混同を生じるものを行っていると主張する。
しかしながら,被請求人の使用商標1ないし使用商標4は,全て商品の出所を表示する「叶匠壽庵」を備えるものであるから,請求人の業務に係る商品と混同を生じることはありえない。
イ 各論
(ア)使用商標1について
上記2(4)で述べたように,使用商標1の要部は,商品の出所を示す「叶匠壽庵」であり,「七福神」は,年賀菓子において「おめでたい菓子」という一般的な商品の性質を表すのみであり,要部ではない。
また,請求人は,「叶匠壽庵」は,日本の代表的和菓子店の一つで法人名称の略称であり,商品の生産者又は販売者を示すものと認識されるものである。」と述べているように,「叶匠壽庵」が商品の生産者又は販売者を示す出所機能を持つことを自ら認めている。
使用商標1において,「叶匠壽庵」が需要者にしっかりと認識できる状態で表示されている以上,需要者は,使用商標1の商品である「年賀菓子」を,請求人の業務に係る商品と出所を混同することはあり得ない。
(イ)使用商標2について
上記2(4)で述べたように,使用商標2の要部は,商品の出所を示す「叶匠壽庵」であり,「七福神が乗った宝船の図形」及び「七福神」は,年賀菓子において「おめでたい菓子」という一般的な商品の性質を表すのみであり,要部ではない。
また,請求人は,「叶匠壽庵」は和菓子店としては,比較的新しい和菓子屋の名称であり,商品の販売主体を表すものと認識されるものであり,」と述べているように,「叶匠壽庵」が商品の販売者を示す出所機能を持つことを自ら認めている。
使用商標2において,「叶匠壽庵」が需要者にしっかりと認識できる状態で表示されている以上,需要者は,使用商標2の商品である「年賀菓子」を,請求人の業務に係る商品と出所を混同することはあり得ない。
(ウ)使用商標3について
上記2(4)で述べたように,使用商標3の要部は,商品の出所を示す「叶匠壽庵」であり,「七福神」は,年賀菓子において「おめでたい菓子」という一般的な商品の性質を表すのみのであり,要部ではない。
使用商標3において,「叶匠壽庵」が需要者にしっかりと認識できる状態で表示されている以上,需要者は,使用商標3の商品である「年賀菓子」を,請求人の業務に係る商品と出所を混同することはあり得ない。
(エ)使用商標4について
上記2(4)で述べたように,使用商標4の要部は,商品の出所を示す「叶匠壽庵」であり,「七福神」は,年賀菓子において「おめでたい菓子」という一般的な商品の性質を表すのみであり,要部ではない。
また,請求人は,「『叶匠壽庵』の文字が商品の販売店・商号を示すものと認識されるものである」と述べているように,「叶匠壽庵」が商品の販売者を示す出所機能を持つことを自ら認めている。
使用商標4において,「叶匠壽庵」が需要者にしっかりと認識できる状態で表示されている以上,需要者は,使用商標4の商品である「年賀菓子」を,請求人の業務に係る商品と出所を混同することはあり得ない。
(オ)使用商標5について
使用商標5については,審判請求書において,商品の出所混同に関する請求人の具体的な主張はない。
しかし,上記2(4)で述べたように,使用商標5の要部は,商品の出所を示す「叶匠壽庵」であり,「七福神」は,年賀菓子において「おめでたい菓子」という一般的な商品の性質を表すのみであり,要部ではない。
また,使用商標5において,「叶匠壽庵」が需要者にしっかりと認識できる状態で表示されている以上,需要者は,使用商標5の商品である「年賀菓子」を,請求人の業務に係る商品と出所を混同することはあり得ない。
(2)「故意」について
ア 総論
請求人は,「1.被請求人は,請求人の登録商標を知りながら,『使用商標1』から『使用商標5』を使用している。」など主張しているが,これらの請求人の主張は,請求人の推測の域をでないものであり,「故意」を立証する直接的な証拠もなく,失当である。
以下,被請求人に「故意」がなかったことを具体的に説明する。
イ 「叶匠壽庵」の明示
上記(1)イで述べたように使用商標1ないし使用商標5のいずれにおいても「叶匠壽庵」の文字を需要者がはっきりと認識できるように表示している。
「叶匠壽庵」が被請求人の会社名であり,商品の出所を示すことは,上記(1)イで述べたように,請求人も認めるところである。
このように,使用商標1ないし使用商標5のいずれにおいても「叶匠壽庵」を明確に表示していることは,被請求人が使用する商品「年賀菓子」の出所が被請求人であることを,需要者にしっかりと認識させるためである。
このため,被請求人において,「故意」がないことが明らかである。
ウ 「故意」による被請求人の利益
被請求人に「故意」があったと仮定した場合であっても,被請求人には何ら利益がない。
「故意」により,被請求人がどのような利益を得るのか,請求人は主張も立証もできていない。
乙第1号証から乙第2号証に示すように,被請求人は,全国的なテレビ番組で紹介され,かつ,乙第3号証及び乙第4号証の全国的な雑誌にも被請求人は紹介されており,これらのことは,被請求人が,日本の代表的な和菓子の会社の一つであることを示すものである。
また,被請求人が日本の代表的な和菓子の会社であることは,審判請求書において,「叶匠壽庵」は,日本の代表的和菓子店の一つで法人名称の略称であり」との記載があるように,請求人も認めるところである。
そして,乙第5号証の写真に示すように,被請求人は,その製品が特に優れているということを全国的な組織である「全国菓子工業組合連合会」から表彰されており,名誉も持っている。
このように,名誉を持つ日本の代表的な和菓子の会社である被請求人が,「故意」に請求人の業務に係る商品と混同を生じさせる利益がないばかりか,逆に不利益を被ることになる。
これらのことから,被請求人が,意図的(故意)に,請求人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせる理由が全くないことは明らかである。
なお,被請求人は,被請求人が,名誉を持つ日本の代表的な和菓子の会社であることを乙第1号証から乙第5号証で立証したが,必要があれば,多数の証拠を示すことができることを,付言しておく。
4 結論
以上のとおり,被請求人は,故意に指定商品について登録商標に類似する商標を使用して,他人の業務に係る商品と混同(商品の出所の混同)を生ずるものを行った事実はない。
したがって,本審判請求は,成り立たないとの審決がされるべきである。

第4 当審の判断
1 請求人商標「七福神あられ」の周知性及び独創性の程度について
(1)請求人は,請求人商標「七福神あられ」が請求人により使用された結果,これが請求人の業務に係る商品「あられ,せんべい」の出所を表示するものとして取引者及び需要者に広く認識されるに至った旨主張するので,以下検討する。
なお,請求人は被請求人の使用商標の使用はすべて本件商標の変更使用であって,請求人の周知商標「七福神あられ」の存在からみても,需要者に商品の混同を与えるおそれがある旨主張し,その根拠として提出した被請求人の店舗における商品の展示の写真,レシート,ウェブサイト,商品の包装容器(甲2号証1の1の1?甲2号証5の3)のうち,最も古い使用は平成26年(2014年)12月17日(甲2号証1の1の1)時点(以下「使用商標使用時点」という。)であるから,当該時点について判断する。
請求人提出の証拠によれば,請求人が使用している商標(甲4号証。枝番を含む。以下,特に断り書きがない場合は,同じく枝番を含むものとする。)は,一部を除き,「七福神あられ」の文字からなる商標及び別掲6(1)ないし(3)に示す「七福神あられ」を要部とする商標と認められるものである。
ア 請求人について
請求人は,昭和51年4月8日に菓子の製造販売を目的に「有限会社幸煎餅」として設立された後,昭和60年12月12日に「株式会社幸煎餅」に組織変更し,群馬県前橋市に本店を置き,東京,静岡,桐生,高崎に店舗を有するほか,群馬県を中心として,その周辺の近県地域に多数の取扱店があることが認められる(甲5号証1の1,甲5号証2の1,甲5号証2の2)。
イ 請求人ホームページについて
「七福神『R』」商品一覧において,「七福神 あられ」等のあられ,せんべいが紹介,販売されている(甲6号証1)。
ウ 各種新聞記事について
(ア)昭和63年5月31日ないし平成同年9月8日,平成21年7月5日の上毛新聞に,商品「あられ」の紹介として,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」詰合せの広告が22回掲載された(甲6号証3)。
(イ)平成14年6月17日ないし同15年1月13日の菓子食品新報に,「『七福神』は弊社が所有する登録商標です。」の記載と七福神を模したキャラクター(「七福神あられ」の文字を含む。)が描かれた広告が8回掲載された(甲6号証4)。
(ウ)昭和63年11月19日ないし同年12月1日及び平成元年8月7日の桐生タイムスに,商品「あられ」の紹介として,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」詰合せ又は「七福神あられ」の広告が5回掲載された(甲6号証5)。
(エ)平成18年12月11日及び同21年5月5日ないし同月31日のスポーツ報知に,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」の広告が4回掲載された(甲6号証6)。
(オ)平成18年12月11日及び同21年5月4日ないし同月20日のスポーツニッポンに,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」の広告が6回掲載された(甲6号証7)。
(カ)平成9年11月29日,同10年6月27日及び同年11月28日の静岡リビングに,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」の広告が3回掲載された(甲6号証8)。
(キ)平成19年11月24日及び同22年1月20日の静岡新聞に,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」の広告が2回掲載された(甲6号証9)。
(ク)2009年(平成21年)1月号ないし2011年(平成23年)1月号のメトロガイドに,「七福神あられ」の広告が23回掲載された(甲6号証10)。
(ケ)平成21年5月18日,同月27日及び同年7月7日の日刊スポーツに,七福神を模したキャラクターが描かれ,「七福神あられ」の広告が3回掲載され,また同23年2月2日ないし同年3月9日の朝日新聞に,「七福神あられ」の広告が6回掲載された(甲6号証11)。
(コ)平成21年6月23日の毎日新聞並びに同22年7月27日及び同年11月28日の読売新聞に,「七福神あられ」の広告が3回掲載された(甲6号証12,甲6号証13)。
エ 各種雑誌について
(ア)平成7年7月1日ないし同23年6月1日発行の文藝春秋に,「七福神あられ」の広告が50回掲載された(甲6号証14)。
(イ)平成7年1月10日発行の全国招福開運寺社参り,同8年3月22日発行のアサヒグラフ,同11年5月2日発行の二人旅の宿,同19年7月1日ないし同21年9月1日発行のオール読物及び同19年1月11日及び同20年1月10日発行の週間文春に,「七福神あられ」の広告が13回掲載された(甲6号証15)。
(ウ)平成14年5月号ないし同15年4月号の月刊ぷらざ高崎版,平成15年1月号及び同年2月号の月刊ぷらざ前橋版並びに平成16年7月号の月刊ぷらざ中央版に,「七福神あられ」の広告が14回掲載された(甲6号証16)。
(エ)平成15年6月号及び同年12月号並びに同16年7月12日発行の月刊パリッシュ及び号外パリッシュに,「七福神あられ」の広告が3回掲載された(甲6号証17)。
(オ)銀座ガイドマップ,NHKウイークリー ステラ,クロワッサン,ゆう遊倶楽部,ぐんまの逸品に,「七福神あられ」の広告が6回掲載された(甲6号証18?23)。
(カ)平成24年7月発行以降のるるぶ情報誌等において「七福神あられ」が掲載された(甲8号証11の1?20)。
オ ちらしについて
平成元年7月15日ないし平成26年12月20日を期間としたプレゼントセールのちらしに,「七福神あられ」の広告が11回掲載された(甲6号証25)。
カ 電飾サインボード及び吊り広告について
平成18年2月ないし同23年4月に,「高崎駅」「前橋駅」「地下鉄メトロ東銀座駅」において,「七福神あられ」の電飾サインボード広告が,平成22年9月及び同26年11月に,「地下鉄メトロ(銀座線,丸ノ内線,日比谷線,東西線,千代田線,有楽町線,半蔵門線,南北線,副都心線)」において,「七福神あられ」の吊り広告がされた(甲6号証26,27)。
キ 歌舞伎等のプログラム
平成7年12月公演から平成20年10月3日発行の公演プログラムに「七福神あられ」の広告が16回掲載された(甲6号証29)。
ク ラジオ広告,テレビ広告について
(ア)ラジオ広告
TBSラジオにおいて,平成元年(1989年)から1年間「七福神あられ」の広告がされた(甲7号証7)。
(イ)テレビ広告
群馬テレビにおいて,平成21年(2009年)6月から7月まで「七福神あられ」の広告がされた(甲7号証8の1)。
ケ カタログについて
平成5年(1993年)ないし平成18年(2006年)の「お歳暮ゆうパック」等のカタログに,「七福神あられ」が取扱商品として紹介された(甲7号証9)。
コ 「七福神あられ」の販売数量及び売上額について
請求人は,七福神あられ関連の商品販売量は,平成7年(1995年)ないし平成18年(2006年)にかけて 毎年2ないし3億円であり(甲7号証6),売上額は,平成9年(1997年)から平成18年(2006年)まで10年間では,およそ26億4千6百万円を超える旨主張する。
サ 請求人は,「七福神あられ」の周知性の証拠として甲第8号証1ないし11を提出するが,甲第8号証11の2012年ないし2014年出稿一覧を除き,これらの証拠は使用商標使用時点以降に作成されたものである。また,請求人は,「七福神あられ」の周知性の証拠として弁駁書において甲第11号証ないし甲第13号証及び甲第15号証を提出するが,甲第13号証を除き,これらの証拠も使用商標使用時点以降に作成されたものである。
(2)判断
昭和63年5月以降,使用商標使用時点までの間に,「七福神あられ」の文字からなる商標及び「七福神あられ」を要部とする商標を使用した商品についてみると,上記商品の広告が,新聞(甲6号証3?甲6号証13)及び雑誌(甲6号証14?甲6号証23)等に各々80回以上継続的に掲載されたこと,群馬県を中心として,ちらしに上記商品の広告が11回掲載されたこと(甲6号証25),電飾サインボード広告及び吊り広告が12か所に使用されたこと(甲6号証26?27),歌舞伎等のプログラムに上記商品の広告が16回掲載されたこと(甲6号証25),ラジオ広告が平成元年(1989年)から1年間,テレビ広告が平成21年(2009年)から平成28年(2016年)7月まで,その宣伝広告が継続的に行われたことが認められる(甲7号証8)。そして,上記の広告宣伝からすると,「七福神あられ」の文字を要部とする請求人商標を使用した商品「あられ」の売上高は,1997年から2006年までの10年間で約26億4千万円を超えることが推認されること(甲7号証6),さらに,これら商標を使用した商品について,インターネットを利用した宣伝広告や販売が行われたこと(甲6号証1),他者の作成に係るカタログ(ゆうパック等)に,「七福神あられ」が取扱商品として紹介されたこと(甲7号証9)が認められる。
以上を総合すると,「七福神あられ」の文字からなる商標及び「七福神あられ」を要部とする商標は,使用商標使用時点において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,群馬県及びその周辺地域において,需要者の間に広く認識されるに至っていたと認め得るものである。
しかしながら,一方,請求人提出の全証拠によってみても,「七福神」なる標章が使用商標使用時点において,9回使用されていることはうかがえる(甲4号証26,甲5号証2の1の2,3,甲5号証2の2の2,甲5号証2の6の1,甲5号証2の7の1,甲5号証2の8の1,甲6号証1の1の5,甲6号証1の2の1)が,当該標章が商品に使用された結果,「七福神」が請求人の業務に係る商品を表示する商標として,使用商標使用時点において,需要者の間で広く認識されるに至っていたと認め得るに足りる証左はみいだせない。また,同様に,上記「七福神あられ」を構成要素とする商標が,「七福神」の部分において,あるいは「シチフクジン」の称呼において,需要者の間で広く認識されるに至っていたと認め得る証左はない。
そして,請求人商標は,既成語の「七福神」と普通名称の「あられ」を結合したものと容易に認識されることから,独創性の程度が高いとはいうことができない。
2 本件商標と使用商標との類否について
(1)本件商標について
本件商標は,「叶匠壽庵七福神」の標準文字から構成され,同書同大の文字でまとまりよく表されている商標であり,構成中「叶匠壽庵」の文字は,辞書等に載録が認められない一種の造語と認められるものであって,被請求人のハウスマークと認められる。また,構成中「七福神」の文字は,「福をもたらす七つの神様」の意味を有するものてあり,構成全体として,「叶匠壽庵の福をもたらす七つの神様」なる意味合いを想起させるものであるから,その構成中の「七福神」の文字部分のみが独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮するものではない。
そうすると,本件商標は,その構成文字に相応して,「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼及び「叶匠壽庵の福をもたらす七つの神様」の観念が生じるものである。
(2)使用商標について
使用商標1は,別掲1のとおり,「叶匠壽庵七福神」(「叶匠壽庵」の文字はやや小さく表してなる。)の文字を横書きしてなるものである。
使用商標2は,別掲2のとおり,「叶匠壽庵七福神」(「叶匠壽庵」の文字はやや小さく表してなる。)の文字を縦書きしてなるものである。
使用商標3は,別掲3のとおり,「叶匠壽庵」の文字の下に「七福神」の文字を横書きしてなるものである。
使用商標4及び使用商標5は,「叶 匠壽庵 七福神」の文字を横書きしてなるものである。
そうすると,使用商標1ないし使用商標5は,「叶匠壽庵七福神」の文字を横書きしてなるもの,「叶匠壽庵」の文字の下に「七福神」の文字を横書きしてなるものであるから,上記のとおり構成文字から「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼及び「叶匠壽庵の福をもたらす七つの神様」の観念が生じるものである。
(3)本件商標と使用商標との対比
本件商標と使用商標とは,「叶匠壽庵」と「七福神」の文字の大きさに差異があるものの,「叶匠壽庵七福神」の構成文字の全てを共通にし,それぞれの構成文字から生じる「カノウショウジュアンシチフクジン」の称呼が同一であり,「叶匠壽庵の福をもたらす七つの神様」の観念が同一であるから,両商標は外観が類似し,称呼及び観念を同一にする類似の商標である。
(4)使用商標の使用に係る商品
上記第2の1(1)のとおり,被請求人は,使用商標1ないし使用商標5を商品の宣伝・予約販売等の広告票,商品の販売店内のPOP,レシート,ホームページ,商品の包装容器において商品「菓子」に使用していることが認められるから,その使用に係る商品は,本件商標の指定商品中の「菓子」であるといえる。
3 商品の出所の混同について
(1)使用商標と請求人商標の類否について
ア 使用商標
使用商標の構成については,上記2(2)のとおりである。
イ 請求人商標
請求人商標は,上述したとおり,「七福神あられ」の文字からなる商標並びに別掲6(1)のとおり,「七福神『R』あられ」の文字を表し,その下部に「七福神」の図形(請求人商標1),別掲6(2)のとおり,「七福神『R』あられ」の文字を表し,その下部に「七福神が乗った宝船」の図形(請求人商標2),及び別掲6(3)のとおり,円輪郭の中に「七福神」の文字と「あられ」の文字を配し,円輪郭の周りに七福神の図形(請求人商標3)からなるものである。
してみれば,請求人商標は,「七福神あられ」の文字,「七福神あられ」の文字と七福神の図形からなるものであるころ,文字部分と図形部分とは,それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというのが相当であるから,「七福神あられ」の文字が自他商品の識別標識としての機能を果たす部分と認められ,これより「シチフクジンアラレ」の称呼及び「福をもたらす七つの神様のあられ」の観念が生じるものである。
ウ 使用商標と請求人商標との対比
使用商標の外観と請求人商標の外観を対比すると,両者は,「七福神」の文字部分を共通にするが,使用商標には「叶匠壽庵」の文字が表されているのに対して,請求人商標には同文字がなく,構成文字に顕著な差異を有するから,外観上において互いに相紛れるおそれはなく判然と区別することができる。
使用商標から生ずる称呼「カノウショウジュアンシチフクジン」と請求人商標から生ずる称呼「シチフクジンアラレ」とを対比すると,両者は,「シチフクジン」の音を共通にするとしても,「カノウショウジュアン」及び「アラレ」の音の有無において相違し,著しく構成音において差異を有するから,称呼上において互いに相紛れるおそれはなく十分聴別することができる。
使用商標から生じる「叶匠壽庵の福をもたらす七つの神様」の観念と,請求人商標から生じる「福をもたらす七つの神様のあられ」の観念とは,相紛れるおそれがないこと明らかである。
そうすると,使用商標は,請求人商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても類似の商標ではなく,互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)出所の混同のおそれの有無について
使用商標は,上記(1)ウのとおり,請求人商標と類似の商標とは認められず,別異の出所を示すものとして看取されるものである。そして,請求人商標は,上記1(2)のとおり,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,群馬県及びその周辺地域において,需要者の間に広く認識されるに至っていたと認め得るものであるが,「七福神」が請求人の業務に係る商品を表示する商標として,使用商標使用時点において,需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできない。そして,請求人商標の独創性の程度は高いということはできない。
したがって,使用商標は,被請求人がこれを本件商標の指定商品「菓子,和菓子,洋菓子,生菓子」に使用したとしても,需要者をして請求人の業務に係る商品のシリーズの一つであると誤認を生じさせるおそれはなく,請求人の業務に係る商品と混同を生じるものをしたとはいえない。
4 故意について
請求人は,被請求人が「七福神」を際立たせて使用している使用商標をその指定商品「菓子」について使用することは,請求人が,「あられ」について使用する「七福神あられ」などの商標との関係で,商品の混同,商品の出所の混同あるいは商品の出所の混同を生ずるおそれがある。被請求人の本件商標の使用はすべて登録商標の変更使用であって,請求人の周知商標「七福神あられ」を知っての使用であり故意がある旨主張する。
しかしながら,上記1(2)のとおり,「七福神あられ」の文字からなる商標及び「七福神あられ」を要部とする商標は,使用商標使用時点において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,群馬県及びその周辺地域において,取引者,需要者の間に広く認識されるに至っていたと認め得るものの,「七福神」が請求人の業務に係る商品を表示する商標として,使用商標使用時点において,需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできないから,被請求人による使用商標の使用について,商標法第51条第1項所定の「故意」を認めることはできない。
5 請求人の主張について
請求人は,「『叶匠壽庵七福神』は,『叶匠壽庵』をことさら小文字で記載した場合,出所表示機能ではなく,請求人に係る周知な商標『七福神あられ』を連想させて,請求人商標とかれこれ混同するおそがある。」旨主張する。
しかしながら,本件商標の構成中「叶匠壽庵」の文字は,辞書等に載録が認められない一種の造語と認められるから,小文字で記載した場合であったとしても,自他商品の識別標識としては十分機能し得るものである。そして,使用商標と請求人商標とは,上記3(1)ウのとおり,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
したがって,請求人の主張は採用することができない。
6 むすび
以上のとおり,本件商標権者による本件商標の指定商品又はこれに類似する商品についての本件商標に類似する商標(使用商標)の使用は,故意に他人である請求人の業務に係る商品と混同を生じるものであるとはいうことができず,商品の品質の誤認を生じるものともいえないから,商標法第51条第1項の要件に該当しないものである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第51条第1項により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲1 使用商標1


別掲2 使用商標2


別掲3 使用商標3


別掲4 使用商標4


別掲5 使用商標5


別掲6(1)
請求人商標1(色彩は,甲4号証4を参照。)


別掲6(2)
請求人商標2(色彩は,甲4号証5を参照。)


別掲6(3)
請求人商標3(色彩は,甲4号証8参照。)


審理終結日 2021-04-20 
結審通知日 2021-04-23 
審決日 2021-06-01 
出願番号 商願2013-97059(T2013-97059) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (W30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2014-05-30 
登録番号 商標登録第5674401号(T5674401) 
商標の称呼 カノーショージュアンシチフクジン、カノーショージュアン、カノーショージュ、シチフクジン 
代理人 中山 ゆみ 
代理人 西村 啓一 
代理人 伊佐治 創 
代理人 辻丸 光一郎 
代理人 佐藤 久美枝 
代理人 松縄 正登 
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