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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W37 審判 全部申立て 登録を維持 W37 |
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管理番号 | 1376063 |
異議申立番号 | 異議2020-900342 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-21 |
確定日 | 2021-07-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6307199号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6307199号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6307199号商標(以下「本件商標」という。)は、「ベストワーク」の片仮名を標準文字で表してなり、令和元年12月26日に登録出願、第37類「建設工事,建設工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,建築物の外壁の清掃」を指定役務として、同2年10月12日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第7号について ア 申立人と本件商標権者の関係 申立人は、かつて「株式会社山浦」という商号で塗装工事業等を行う会社として昭和56年4月7日に設立され、平成18年4月11日で「株式会社ベストワーク」(以下「ベストワーク」という。)に商号変更した(甲1)。 申立人の代表取締役T氏は、本件商標の商標権者である三優社工業株式会社(以下「三優社工業」という。)の代表取締役S氏の実弟であり、三優社工業で働いていたことがあった。 平成23年になって、T氏はS氏と袂を分かち、三優社工業を退社して、独立することを決め、協議の結果、T氏がもっていた三優社工業の株式とS氏が持っていたベストワークの株式とを、時価で等価交換し、T氏がベストワークの代表取締役に就任し、事業をしていくことで了解を得た。 その後、T氏は、ベストワークの筆頭株主となったが、株式の時価設定の都合で、三優社工業が今でもベストワークの株式を22%保有している(甲11)。 平成23年以降は、T氏がベストワークの経営者として、福井県内を中心に、塗装工事等の事業を行っており、関連する福井県内の取引業者においても「ベストワーク」の名称は申立人の商号として広く周知されている(甲1?甲20等)。 イ ベストワークの語について 福井県内の建設業等の取引業者において、「ベストワーク」の名称が申立人の商号として広く周知されている(甲3等)。 三優社工業自体が、申立人の株主であり、もともと関連会社であったことからして、そのことは良く理解しているものである。 ウ 三優社工業による商標出願の意図について 本件商標が登録査定もされていない令和2年8月19日付けで、申立人に対し、塗装工事業の停止と損害賠償請求権の行使の請求をした(甲22)。 三優社工業とベストワークとは、今も同業の関係にあり、仕事の受注においても競合することがある。 また、そもそもベストワークが現在のような形で営業をするようになったのは、三優社工業でのいさかいを原因とするものである。 以上から、本件商標の登録出願は、申立人の業務を妨害し、不当な金銭請求をするための根拠とする意図でなされたものであること明らかである。 よって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標(商標法第4条第1項第7号)として、登録が認められるべきではない。 (2)商標法第3条第1項第3号について 本件商標は、「ベストワーク」という文字のみで構成されていて、意味としては、最善の仕事というような単純な意味でしかない。また、本件商標は、普通の概念を超えない字体でそのまま表示されたものであり、これが一連の語と認識されるならば、「最良(最高)の仕事(を提供する)」という役務の質を誇張して表示する言葉にすぎない。 そのため、その構成からして、「最良(最高)の仕事」程度の意味合いを看取し得るものであり、これにより指定役務の質、効能、用途などを具体的に表すと理解される。 上記のような意味合いからか、「ベストワーク」という称呼を商号として使用している建設業等を営む会社は全国各地に存在する(甲24)。 よって、本件商標は、自他役務の識別機能はないから、商標法第3条第1項3号によっても登録が認められるべきでない。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号該当性について ア 商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会的公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(平成17年(行ケ)第10349号判決)。 しかしながら、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨などからすれば、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許さないというべきである。そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっては、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(平成19年(行ケ)第10391号判決)。 イ 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、塗装工事業等を行う会社として昭和56年4月7日に設立され、その後、平成18年4月1日に現在の商号(「株式会社ベストワーク」)に変更され(甲1)、現在においても、塗装工事等を行っている(甲2?甲20)。 (イ)平成23年になって、T氏が持っていた三優社工業の株式とS氏が持っていたベストワークの株式とを、時価で等価交換し(甲23)、T氏は、ベストワークの代表取締役に就任し、ベストワークの筆頭株主となったが、三優社工業が今でもベストワークの株式を22%保有しているものと推認することができる(甲11?甲16)。 (ウ)三優社工業は、本件商標の登録出願後の令和2年8月19日付けで、申立人に対し、塗装業等の停止と、損害賠償請求権の行使のための過去1年間の利益の開示を求めた(甲22)。 ウ 上記イからすれば、申立人は、平成18年の商号変更後、本件商標が登録出願された令和元年12月26日までの間に自己の業務に係る商標について登録出願することが十分可能であったにもかかわらず、登録出願を怠っていたといわなければならない。 してみると、申立人の上記2(1)の主張は、申立人と本件商標権者との間の商標権の帰属等をめぐる問題というべきであり、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきものであって、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合に該当するということはできない。 他に、本件商標が「公の秩序や善良な風俗を害するおそれがある商標」であるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (2)商標法第3条第1項第3号該当性について 本件商標は、「ベストワーク」の片仮名を標準文字で表してなるところ、構成中前半の「ベスト」の文字が「最良。」等の意味を、構成中後半の「ワーク」の文字が「仕事。作業。」等の意味を有する語として一般に広く知られていることから、これらを結合してなる本件商標から「最良の仕事」程の意味合いを看取し得る場合があるとしても、本件の指定役務との関係において、具体的な役務の質等を表示するものとして理解されるとはいい難い。 そして、申立人提出の証拠及び当審における職権調査において、「ベストワーク」の語が、具体的な役務の質等を表示するものとして一般に使用されている事実も見いだせない。 なお、申立人は、「ベストワーク」という称呼を商号として使用している建設業等を営む会社が全国各地に存在すると主張しているが、甲第24号証によれば、「株式会社ベストワーク」が千葉県我孫子市に1社、「有限会社ベストワーク」が石川県金沢市、東京都三鷹市、愛知県愛知郡、静岡県伊豆市及び秋田県大館市に5社、計6社が存在しているのみであり、かつ、本件商標の登録査定前の会社設立が確認できるのは、株式会社ベストワークの1件のみであるから、当該証拠をもって、本件商標の登録査定時に「ベストワーク」を商号として使用する建設業等を営む会社が全国各地に多数存在するということはできない。 そうすると、本件商標は、その指定役務について使用しても、役務の質、用途等を表示するものでなく、自他役務の識別標識としての機能を果たすものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第7号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2021-06-24 |
出願番号 | 商願2019-167644(T2019-167644) |
審決分類 |
T
1
651・
13-
Y
(W37)
T 1 651・ 22- Y (W37) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 相澤 菜菜子、渡邉 潤 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 森山 啓 |
登録日 | 2020-10-22 |
登録番号 | 商標登録第6307199号(T6307199) |
権利者 | 三優社工業株式会社 |
商標の称呼 | ベストワーク |
代理人 | 岩本 雄太 |