ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
---|---|
管理番号 | 1375208 |
異議申立番号 | 異議2020-900329 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-12 |
確定日 | 2021-06-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6295571号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6295571号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6295571号商標(以下「本件商標」という。)は、「シーアイランドコットン」の文字を標準文字で表してなり、令和2年3月31日に登録出願、第3類「香料,薫料」を指定商品として、同年9月11日に登録査定され、同月23日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第16号及び同項第7号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第16号について 本件商標は、「シーアイランドコットン」の文字からなるものであるところ、インターネットのファッション用語辞典によれば、「シーアイランドコットンとは海島綿ともいわれる。アメリカ東南部の海岸地方および近海諸島に産出する綿。繊維が非常に細くて毛筋が長く、絹状の光沢があるのが特徴。100番手以上の細い糸が紡績できる。綿の最高級品質として知られている。」(甲2)及び「『絹のような光沢、カシミアのような肌触り』と形容される、カリブ海西インド諸島産に産出されるコットン。デリケートな性質上、非常に育ちにくく、手間が掛かるため、生産量が綿全体の10万分の1となっており、希少価値が高い。世界三大超長綿の一つで、他のコットンより繊維が長く細いため、光沢感、手触り、しなやかさが特に優れている。その品質の高さから、英国皇室御用達のコットンとしても有名であり、また、多くの富裕層からも長く愛され続けている。」(甲3)と説明されているように、「シーアイランドコットン」は、カリブ海の西インド諸島を中心に栽培されている最高級品質の綿を意味する普通名称である。 そして、西インド諸島においては、英国領となった16世紀末に「シーアイランドコットン(海島綿)」の栽培が盛んになり、20世紀に入り、英国農務省が、その品質改善を重ねて世界最良の綿質を定着させ、1932年に英国農務省の管理下で西印度諸島海島綿協会が設立されて現在に至っている。 また、「シーアイランドコットン」は、栽培管理が非常に難しいために気候風土が適したカリブ海の限られた地域でしか産出されていない極めて貴重な綿であることから極めて珍重されている(甲4?甲9)。 したがって、消費者や需要者が、本件商標を目にした場合には、本件商標を付した商品が「シーアイランドコットン(海島綿)」を使用した綿製品であると誤認を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 そして、本件商標の指定商品が、第3類「香料,薫料」であって、綿製品とは異なる商品であるとしても、商標として「シーアイランドコットン」の文字が付してあれば、「シーアイランドコットン(海島綿)」の繊維や成分などを原材料として使用している香料や薫料であるかのごとき誤認を生ずるおそれがあるので、やはり本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 さらに、商標登録出願の審査・登録に際しては、実際の取引市場での実態を考慮する必要があるところ、本件商標権者は、本件商標「シーアイランドコットン」を「mercyu(メルシーユー)」というフレグランス商品に使用しているが、その説明として、「SC(シーアイランドコットン)たぐい稀で、美しい綿花の中でも最も優れたSea island cotton(海島綿)。清潔感のある無垢な香りはすっきりと心が洗われる。※シーアイランドコットンは株式会社阪和の登録商標です。」と記載しており(甲14?甲17)、あたかもこのフレグランス商品には、「シーアイランドコットン(海島綿)」の繊維や成分などを原材料として加えてあるかのごとき誤認を生じさせるような記載となっていることからも、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 2 商標法第4条第1項第7号について 申立人は、「限りある貴重な資源を大切に、また最大限に海島綿の有する特徴を生かし、お客様に喜んでもらえる商品を作り、組合メンバーの協力のもと秩序ある展開を行う。」ことを理念として設立された協同組合であって(甲12)、200年もの間、門外不出となっていたシーアイランドコットンの原綿の日本への輸入が初めて認められた1975年の翌年に、先に述べた英国農務省管理下の西印度諸島海島綿協会とライセンス契約を結び、日本支部として発足した(甲4)。 シーアイランドコットン製品が市場において高い評価を得ているのは、その品質が最高級であることはもちろんであるが、申立人が、海島綿の良さについての消費者へのアピール方法の工夫、原綿の安定確保や商品の品質管理、組合メンバーの製品への共通のロゴマークの付与などを、組合メンバーとともに腐心してきたからこそに他ならない(甲4?甲13)。 しかるに、本件商標権者は、自社のフレグランス商品に、「SC(シーアイランドコットン)たぐい稀で、美しい綿花の中でも最も優れたSea island cotton(海島綿)。清潔感のある無垢な香りはすっきりと心が洗われる。※シーアイランドコットンは株式会社阪和の登録商標です。」(甲14?甲17)という説明を付しているが、「シーアイランドコットン」製品とは無関係の商品に「シーアイランドコットン」の最高級品としてのイメージを利用し、かつ「シーアイランドコットン」という一般名称そのものについても商標権として独占権があるかのごとき記載をする行為は、「シーアイランドコットン」に対する申立人とその組合メンバーが築き上げてきた信用や名声にフリーライドするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 まとめ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号及び同項第7号に該当するから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、「シーアイランドコットン」の文字を標準文字で表してなるところ、申立人の提出に係る証拠によれば、「シーアイランドコットン」の文字は、「シーアイランドコットンとは海島綿ともいわれる。」(甲2)や「・・・カリブ海西インド諸島産に産出されるコットン。」(甲3)の意味を有するものとして、インターネットのファッション分野の辞書に載録があり、綿の名称の一つとして使用されていることがうかがえる。 しかしながら、「香料,薫料」との関係において、「シーアイランドコットン」の文字が、商品の品質、原材料等を直接的又は具体的に表示するものとはいい難く、また、職権による調査によっても、「香料,薫料」との関係において、「シーアイランドコットン」の文字が、「香料,薫料」の品質、原材料等を表示するものとして、取引上普通に使用されている事実は発見できず、さらに、本件商標に接する取引者、需要者が、本件商標を、商品の品質、原材料等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。 そうすると、本件商標を、その指定商品「香料,薫料」について使用しても、それに接する取引者、需要者が、それを、海島綿を原材料とする商品であるなど、商品の品質の誤認を生ずるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、「シーアイランドコットン」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、本件商標は、これをその指定商品に使用することが、社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらに、その使用が他の法律によって禁止されているもの、外国の権威や尊厳を損なうおそれがあって、国際信義に反するものでもない。 加えて、申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に、社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足る具体的事実も見いだせず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第16号及び同項第7号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
|
異議決定日 | 2021-06-03 |
出願番号 | 商願2020-35377(T2020-35377) |
審決分類 |
T
1
651・
272-
Y
(W03)
T 1 651・ 22- Y (W03) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 緋呂子 |
特許庁審判長 |
齋藤 貴博 |
特許庁審判官 |
山根 まり子 小田 昌子 |
登録日 | 2020-09-23 |
登録番号 | 商標登録第6295571号(T6295571) |
権利者 | ライフオンプロダクツ株式会社 |
商標の称呼 | シーアイランドコットン、シーアイランド |
代理人 | 浜田 治雄 |
代理人 | 中尾 真一 |