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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1375197 
異議申立番号 異議2019-900345 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-27 
確定日 2021-03-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6177084号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6177084号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6177084号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成30年8月16日に登録出願、第25類「バレエシューズ,ダンスシューズ,体操用靴,舞踏場用ダンスシューズ,ダンス用被服,ダンス用被服及びダンス競技用衣服」を指定商品として、令和元年8月22日に登録査定、同年9月6日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議申立ての理由として引用する商標は、「RUSSIAN CLASS」の欧文字からなる商標(以下「引用商標」という。)であり、申立人の業務に係る商品「バレエシューズ」に使用する商標として需要者の間に広く認識されていると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第78号証を提出した。
以下、証拠の表記にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人について
申立人は、バレエシューズを制作・販売するスタジオとして、1991年に設立され、独自モデルの高品質なバレエシューズを制作する会社としてバレエ業界では広く知られた存在であって、今では世界有数のバレエ製品メーカーとして知られている(甲2)。
申立人はロシア国内のほとんどの劇場にバレエシューズを販売しているほか、ロシア国外にも展開し、主な輸出先は、日本をはじめ、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリアなど計14か国あり、各国に代理店を有している(甲3)。創業して2年後の1993年から日本にむけて申立人の製品の輸出を開始し、海外の市場としてはアメリカに次いで二番目に多い年間約1万5千足のバレエシューズを販売している(甲2)。日本でのバレエシューズの販売は、日本国内の提携会社(甲4?甲11)と提携をして行われており、これら提携会社への輸出は貿易代理店を業とするバレロ(BALERO)を介している。
加えて、申立人は自社の公式インスタグラムを開設し、そのフォロワー数は1万2千人に及び(甲12)、日本でも人気があり、申立人の製品が良質であることを説明するようなサイトは幾つもある(甲13、甲14)。
さらに、申立人は自社のブランドを守るために、各国において商標の取得を積極的に行っており、引用商標について、ロシアやアメリカ、EU等で商標出願・登録をしている(甲15、甲16)。日本においては、2018年10月22日付で「RUSSIAN CLASS」と「R CLASSロゴ」(別掲3)の商標を出願し、別掲3の商標の登録(登録第6164976号商標)が認められている(甲17)。
イ 「RUSSIAN CLASS」ブランド(引用商標)の周知性について
申立人がバレエ業界において世界的に著名であることは、前記アで説明したとおりである。
そして、「RUSSIAN CLASS」は、申立人が製造・販売するバレエシューズの代表的なブランドであり、同バレエシューズは創業当初から継続して販売されている目玉商品であって、申立人の商品カタログによれば、「RUSSIAN CLASS」ブランドのバレエシューズには、「anima」「bonbe」「celesta」「dolce」など複数の種類が存在する(甲18)。
「RUSSIAN CLASS」ブランドは、主に別掲2のロゴよって表示される「R」と「CLASS」が目立つ態様であるため、「R CLASS」ブランドとしても親しまれており、バレエ業界では「R CLASS」又は「RUSSIAN CLASS」ブランドとして広く認識されている。別掲2のロゴはバレエシューズにも直接印字されており、使用する者が「RUSSIAN CLASS」ブランドを認識していることは明らかといえる(甲19)。
「RUSSIAN CLASS」に係るバレエシューズは日本でも人気のあるブランドであり(甲21?甲23)、これが紹介・販売されているウェブサイトは多数あり(甲24?甲27)、また、「RUSSIAN CLASS」のバレエシューズは日本において数多く流通し、大量の「RUSSIAN CLASS」ブランドのバレエシューズが毎年のように日本に輸入されていることが推認される(甲28?甲36)。
加えて、各代理店に販売したバレエシューズの写真(甲37?甲39)に写されているバレエシューズの型番は、甲28?甲36のリストと整合していることから、実際にこれらのバレエシューズが輸入されたことは明らかである。
さらに、「RUSSIAN CLASS」ブランドのバレエシューズの日本のユーザーから収集したレターでは(甲40?甲42)、バレエ業界で周知著名な個人・団体が、「RUSSIAN CLASS」ブランドのバレエシューズを愛用し、日本で広く知られていることを認めており、これは引用商標が申立人の製造販売するバレエシューズとして、日本のバレエ業界において広く知られていることを証明している。
バレエの国際大会を数多く運営する団体である「INTERNATIONAL FEDERATION of BALLET COMPETITIONS(以下「IFBC」という。)も、「RUSSIAN CLASS」及び「R-CLASS」ブランドが世界及び日本のバレエ業界で広く知られていると述べており(甲48)、引用商標がバレエ業界において周知著名であることは疑う余地がない。
これらの事情を総合的に勘案すると、本件商標の登録出願日前から、引用商標が、申立人の製造販売するバレエシューズとして、日本のバレエ業界において周知・著名であることは明白である。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標は「RUSSIAN/CLASS」を二段に書してなるところ、「RUSSIANCLASS」と明確に認識できる文字構成であり、引用商標とはアルファベットのつづりが共通し、外観の違いはあるものの、「ロシアンクラス」の称呼が共通し、そのつづりから認識される「ロシアのクラス(組又は種類)」の観念も共通しているから、商標が類似していることは明白である。
そして、引用商標はバレエシューズに使用され、バレエシューズのブランドとして周知著名であるため、本件商標の指定商品中、第25類「バレエシューズ,ダンスシューズ,体操用靴,舞踏場用ダンスシューズ」と類似する。
したがって、少なくとも「バレエシューズ,ダンスシューズ,体操用靴,舞踏場用ダンスシューズ」については、本件商標と引用商標は類似している。
エ 小括
申立人がバレエ業界において世界的に著名であって日本でも広く知られ、申立人が製造販売する「RUSSIAN CLASS」ブランドのバレエシューズが、本件商標の登録出願日前から、日本のバレエ業界で周知・著名であることは明白であり、本件商標と引用商標が類似していることも明らかである。
したがって、本件商標の指定商品中、「バレエシューズ,ダンスシューズ,体操用靴,舞踏場用ダンスシューズ」について本件商標を使用した場合は、申立人の製造販売する引用商標を付した商品と出所の混同が生ずるおそれがあり、少なくとも前記の商品については、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標が申立人の製造販売するバレエシューズとしてバレエ業界において周知著名であって、「RUSSIAN CLASS」のつづりが共通している本件商標と引用商標が類似していることは明らかである。
そして、バレエシューズとバレエのダンス用被服は、類似群コード上の非類似商品であっても、需要者・取引者が共通しており、販売店等で共に取扱われることが多い商品であるため、市場においては強い関連性を有する商品といえる(甲52?甲54)。
これらの事実に鑑みれば、バレエシューズとダンス用被服等は、販売者・需要者が共通する密接に関係した商品であり、本件商標がダンス用被服等に付された場合に、それが申立人の業務に係る商品であると需要者が誤認する可能性は大きい。
加えて、本件商標と引用商標が類似すること、「RUSSIAN CLASS」ブランドが周知著名であることの事情に鑑みれば、本件商標を付した商品が市場に流通すると、バレエ用品の需要者等は周知著名である「RUSSIAN CLASS」ブランドを容易に連想し、商品が申立人の業務に係る商品であるかのごとく、出所について混同が生じるおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、その指定商品中、第25類「ダンス用被服,ダンス用被服及びダンス競技用衣服」については、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は「RUSSIAN CLASS」のつづりが同じであり、称呼や観念において共通しているから、本件商標と引用商標が類似していることは明らかである。
イ 外国における周知性について
引用商標が、日本のバレエ業界において周知著名であることは、上記のとおりであるが、引用商標はロシア発祥のブランドであり、ロシア国内やその他の国においても、申立人のブランドとして広く認識されており、ロシア国内だけで81店舗と取引し、ロシア国外でも、オーストラリア、イギリス、ベラルーシ、ブルガリア、ドイツ、オランダ、スペイン、中国、韓国、ラトビア、アメリカ合衆国、台湾、スイス、日本に販売代理店を有している(甲3)。
また、申立人は、ロシア国内で大々的に事業展開し、ロシア国内で広く宣伝広告活動を行っており、バレエ雑誌などに頻繁に掲載されている(甲55?甲68)。これらの資料から、申立人が「RUSSIAN CLASS」の広告宣伝に注力していることは明らかである。
さらに、申立人の総務部長はバレエ業界において多大な貢献をしているとして、数々の表彰を受けている(甲69、甲70)。
上記の事情から、引用商標である「RUSSIAN CLASS」が申立人の製造販売するバレエシューズとして、少なくともロシア国内で周知著名であると判断するのが相当である。
ウ 「不正の目的」について
本件商標の権利者であるダンス ワールド,エス.アール.オー.(以下「ダンス・ワールド社」という。)は、チェコのプラハで1999年8月25日に設立された会社であり、今では主にロシアで事業展開をしている(甲71)。会社の代表者はニコライ・グリシコ氏(Nikolay Grishko)(以下「グリシコ氏」という。)であり、グリシコ氏は自身の運営するGrishko社やダンス・ワールド社を通じて、グリシコ氏の名前を冠した「グリシコ(GRISHKO)」ブランドのバレエシューズを製造販売している(甲72、甲73)。
グリシコ氏は日本にも市場を広げており、トウシューズメーカー一覧に名を連ね(甲13)、カタログ(甲22)にグリシコブランドのバレエシューズが掲載されている。
ロシアのバレエ雑誌(甲55?甲61)では、「RUSSIAN CLASS」のほか、「Grishko」ブランドの広告も掲載されていることからすれば、同じロシア国内でバレエシューズを製造販売しているグリシコ氏が、RUSSIAN CLASSブランドの存在を認識していたといえ、実際に、グリシコ氏は、申立人が開催したパーティーにも出席しており(甲74)、引用商標の存在を知っていたことは明らかである。
このような事情から、ダンス・ワールド社及びグリシコ氏が申立人のライバル会社・競業者であって、ダンス・ワールド社が申立人の使用する引用商標の存在を知らないはずがないことは明白である。そうすると、申立人が「RUSSIAN CLASS」の商標を日本で出願・登録していないことを認識したうえで、申立人の日本での営業を妨害するために、意図的に本件商標を出願したものと推認できる。
加えて、申立人の製品がダンス・ワールド社に引き渡されたことはなく(甲4)、R-ClassやRussian Classの商標権をダンス・ワールド社に譲渡したというような合意も存在しない。
そうとすれば、ダンス・ワールド社が、引用商標の周知著名性を意識し、引用商標に化体した業務上の信用にフリーライドして不正に利益を得る意図、又はその信用を希釈化させる意図、若しくは申立人の日本における営業行為を妨害する意図、即ち不正の目的を持ってなされたものと判断するのが相当であり、「不正の目的」に該当することは疑う余地がない。
なお、ダンス・ワールド社はイギリスにおいても本件商標の出願/登録をしていたが、申立人が異議を申し立てたところ、その登録は不正な競争の目的をもって出願された悪意の出願であることが認められ、取り消されている(甲75)ことからも、そもそもダンス・ワールド社が不正の目的をもって本件商標を出願していることは推認できるものであり、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)引用商標及び使用商標の周知性について
ア 引用商標について
申立人は、バレエシューズを製作・販売するスタジオとして、1991年にロシアに設立され、ロシア国内外にバレエシューズを販売するとともに、日本へも提携会社を通じて1993年に輸出を開始し、年間約1万5千足のバレエシューズを我が国において販売している(甲2?甲11)とし、また、「RUSSIAN CLASS」の欧文字からなる引用商標は、申立人の業務に係る商品「バレエシューズ」(以下「申立人商品」という。)に使用する商標として需要者の間に広く認識されていると主張している。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠において、「RUSSIAN CLASS」の文字の記載が確認できるものは、申立人が我が国の取引者に宛てて作成した請求書及び納品書(甲28?甲36)のみであり、ほかに引用商標が申立人商品に使用されている実情が確認できる証拠は見いだせない。
また、申立人商品の日本の提携会社への輸出を業とする者による書面(甲4)において、「R-Class」及び「Russian Class」が、ロシア国内及び世界中のバレエシューズ製造業者やプロのバレエダンサーの間に広く知られている旨及び我が国のバレエ関係者3名が、レターとされる書面において、日本ではR-CLASSは”RUSSIAN CLASS”というブランドで広く知られ、1993年から現在に至る迄日本バレエ界で大きく使われている旨、RUSSIAN CLAS(R-CLASS)をバレエスクールで生徒に履かせている旨及び、RUSSIAN CLASS(R-CLASS)のシューズを奨励している旨述べ(甲40?甲47)、さらに、IFBCの総監督による「確認書」(甲48)において、「R-Class」及び「Russian Class」ブランドが日本及び世界のバレエ業界で非常に有名であると認めている旨記載されているが、これらの記載によっては、引用商標の使用の実情を知ることはできない。
イ 使用商標について
(ア)申立人が挙げる商品カタログにおいて、バレエシューズとともに別掲2の構成からなる標章(以下、同一視できるものを含み「使用商標」という。)が表示されているが、当該商品カタログの発行国、発行年及び発行部数は不明である(甲18)。
(イ)「季刊バレエの本No.13特大号」(1995年10月1日発行)の裏表紙に掲載された、パピヨン株式会社の広告には、「ボリショイ劇場付属工房に生まれた数々のブランドの中でも、最も高く評価されているのが、R.CLASS、・・・R.CLASSは人気があります。」の記載とともに使用商標が表示されている(甲21)。
(ウ)「Sylvia Collection 2016」のカタログには、「Toe Shoes Rクラス」の見出しの下、使用商標が表示され、「ボリショイ・シアターでダンサーからの様々な要望に応える靴を提供してきた職人達により設立されたRクラス」の記載とともに、トゥシューズが商品写真とともに紹介されているが、当該カタログの発行日、発行数等は不明である(甲22)。
また、ウェブサイトのバレエシューズの紹介記事及びショッピングサイトにおいて、使用商標が表示されている(甲24?甲27)が、その印刷日(2019年1月11日、2020年2月25日、同月27日)は、本件商標の登録出願後である。
(エ)2011年から2019年にかけて、申立人商品が約7400足、我が国に輸入され、当該商品には使用商標が靴底及び包装用袋に表示されていたことがうかがわれる(甲28?甲39)。
(オ)2011年ないし2013年に発行されたロシアのバレエ雑誌である「BALLET」(甲55、甲57?甲61)並びに「Dance Collection Prima」(甲62)、「DANCE KLONDIKE 第1号」(甲63)、「CALENDER OF DANCE EVENTS 第7号」(甲64)(いずれも発行年不明)及び「BALLET2000」(甲65)において、バレエシューズとともに使用商標が表示されていることがうかがわれる。
(カ)申立人商品の説明書には、使用商標が表示されている(甲68)。
ウ 前記ア及びイによれば、申立人は、1991年に設立されたバレエシューズを制作する会社であり、ロシア国内はもとより我が国においても、提携会社を通じて使用商標を靴底及び包装用袋に付した申立人商品が輸入され、販売されていることはうかがえるとしても、我が国における提携会社の輸入は、2011年から2019年の9年間で約7400足程度であり、また、申立人は、年間約1万5千足の申立人商品を我が国において販売(甲2)している旨主張しているが、これを裏付ける証拠の提出はなく、いずれにしても、我が国における使用商標を付した申立人商品の市場占有率(販売シェア)が明らかではないから、客観的な販売実績や市場占有率に基づいて使用商標の周知性の程度を推し量ることができない。
さらに、申立人商品が提携会社のカタログに使用商標とともに表示されていることがうかがえるものの、その発行年、発行部数は明らかでなく、加えて、ロシア国内のバレエ雑誌に使用商標がバレエシューズとともに広告されていることはうかがえるものの、その回数は、発行時期が不明のものを含めても合計11回にすぎず、ほかに宣伝広告に関する証拠の提出はない。
以上によれば、別掲2に示す使用商標が、申立人商品に使用され、我が国及びロシア国内のバレエシューズを取り扱う分野において、ある程度知られているといい得るとしても、これが本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国(ロシア等)における需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
また、「RUSSIAN CLASS」の文字からなる引用商標は、前記アのとおり、取引書類の記載、我が国のバレエ関係者3名による周知性に関して述べるレターとされるもの及びIFBCの総監督による「確認書」等によっては、引用商標が申立人商品に使用されている状況を具体的に把握することができないから、引用商標が、我が国又は外国(ロシア等)における需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
したがって、提出された証拠によっては、引用商標又は使用商標が申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第19号該当性について
引用商標及び使用商標は、前記(1)のとおり、いずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標とはいえない。
また、引用商標及び使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないことから、引用商標が需要者の間に広く認識されていたものであることを前提に、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標及び使用商標の周知性について
引用商標及び使用商標は、前記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。
イ 本件商標と引用商標及び使用商標との類似性の程度について
(ア)本件商標は、別掲1のとおり、上段に「RUSSIAN」(構成中の「R」の文字は、右側の下に伸びる線がやや長く書され、また「USSIAN」の文字は「R」の文字の半分程度の大きさである。)の文字を、下段に上段の「S」の文字の下部が語頭となるように、「CLASS」(各文字は上段の「R」の文字とほぼ同じ大きさである。)の文字を配した構成からなるものであり、視覚上、まとまりよく一体的に表されたと看取されるものであって、その構成文字に相応して「ロシアンクラス」の称呼を生じ、「ロシアのクラス(組又は種類)」ほどの観念を生じるものである。
他方、引用商標は、前記2のとおり、「RUSSIAN CLASS」の欧文字よりなるものであるから、本件商標と引用商標とは、欧文字の位置等の違いがあるものの、そのつづりを同じくするものであるから、両者は類似する商標といえ、その類似性の程度は極めて高いものである。
(イ)使用商標は、別掲2のとおり、上段に「R CLASS」(「R」の文字の右側から下に伸びる線がやや長く書されている。)の文字を、また、上段の「C」の文字の下部に「USSIAN」の文字を小さく書し、さらに、その末尾の「N」の文字から、右斜め下方に線を延伸させ、その角を丸くする四角様に上段の末尾の「S」の文字に向かって配してなるものであり、その構成文字全体に相応した「アールクラスウッシアン」の称呼を生じ、当該文字は辞書等に掲載がなく、かつ、親しまれた意味を有するものとして一般に知られているとは認められないものであるから、特定の意味合いを有しない一種の造語として理解されるものである。
また、その構成中、上段に大きく表された「R CLASS」の文字部分が看者の注意を強く惹くものといえるから、これより「アールクラス」の称呼を生じ、当該文字も上記と同様に特定の意味合いを有しない一種の造語として理解されるものである。
本件商標と使用商標とを比較すると、外観においては、本件商標は、「RUSSIAN」と「CLASS」の文字をまとまりよく一体的に表したものと看取されるものであるのに対し、使用商標は「R CLASS」の文字の下に「USSIAN」の文字を線とともに小さく書してなるものであるから、外観において異なる印象を与えるものであり、明らかに区別できるものである。また、称呼においては、本件商標から生じる「ロシアンクラス」の称呼と使用商標から生じる「アールクラスウッシアン」及び「アールクラス」の称呼とは、その構成音及び音数において異なり、明らかに聴別できるものである。さらに、本件商標からは「ロシアのクラス」の観念が生じ、使用商標は特定の観念が生じないものであるから、両者は観念において相紛れることはない。
したがって、本件商標と使用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではないから、その類似性の程度は低いものである。
ウ 出所の混同について
本件商標と引用商標は、その類似性の程度が高いとしても、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであるから、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというのが相当である。
また、本件商標と使用商標は、その類似性の程度が低いものであること、使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであることからすれば、使用商標も本件商標との関係において、その商品の出所について、混同を生じさせるおそれはないものというのが相当である。
その他、本件商標が他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、「RUSSIAN CLASS」ブランドは、主に別掲2のロゴ(使用商標)によって表示される「R」と「CLASS」が目立つ態様であるため、「R CLASS」ブランドとしても親しまれており、バレエ業界では「R CLASS」又は「RUSSIAN CLASS」ブランドとして広く認識されている旨主張している。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠によっては、使用商標が「RUSSIAN CLASS」ブランドと称されて使用され、需要者に広く認識されていることを認めるに足る証拠は見いだすことができない。
イ 申立人は、「本件商標権者及びその代表者は、申立人のライバル会社・競業者であって、申立人の使用する引用商標の存在を知らないはずがないことは明白であり、申立人が『RUSSIAN CLASS』の商標を日本で出願・登録していないことを認識したうえで、申立人の日本での営業を妨害するために、意図的に本件商標を出願したものと推認できる。また、商標権者は、イギリスにおいても本件商標と同様の出願・登録をしていたが申立人の異議申立てにより、取り消されている」旨主張している。
しかしながら、前記(1)のとおり、引用商標及び使用商標は、いずれも我が国又は外国の需要者の間において、広く認識されているとは認められないものであり、また、申立人の営業を妨害等していることを具体的に裏付ける証拠は見いだせず、さらに、外国における異議申立ての結果によって、前記判断が左右されるものではない。
ウ したがって、申立人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(使用商標)


別掲3(登録第6164976号商標 色彩は原本参照。)



異議決定日 2021-03-24 
出願番号 商願2018-104142(T2018-104142) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W25)
T 1 651・ 25- Y (W25)
T 1 651・ 222- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宗像 早穂 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 板谷 玲子
馬場 秀敏
登録日 2019-09-06 
登録番号 商標登録第6177084号(T6177084) 
権利者 ダンス ワールド,エス.アール.オー.
商標の称呼 ロシアンクラス、クラス 
代理人 土生 真之 
代理人 中村 仁 
代理人 大塚 啓生 

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