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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W25
管理番号 1375192 
異議申立番号 異議2020-900023 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-23 
確定日 2021-05-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第6197193号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6197193号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6197193号商標(以下「本件商標」という。)は、「ビヨンド・ミート・バーガー」の片仮名を標準文字で表してなり、第25類「被服」及び第29類「肉製品,加工水産物」を指定商品として平成30年7月23日に登録出願、令和元年6月28日提出の手続補正書をもって指定商品が第25類「被服」と補正され、同年9月9日に登録査定、同年11月15日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりである。
1 国際登録第1139253号((以下「引用商標1」という。)
商標 BEYOND MEAT
指定商品 第29類「Meat substitutes; vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」
2 商標登録第6131994号(以下「引用商標2」という。)
商標 ビヨンド・ミート(標準文字)
指定商品 第29類「代用肉,完全菜食主義者用及び菜食主義者用の肉製品,植物を主原料とする代用肉,肉製品」
3 国際登録第1171064号(以下「引用商標3」という。)
商標 別掲1のとおり
指定商品 第29類「Meat substitutes; vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」
4 国際登録第1389738号(以下「引用商標4」という。)
商標 別掲2のとおり
指定商品 第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」
5 国際登録第1322180号(以下「引用商標5」という。)
商標 THE BEYOND BURGER
指定商品 第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」
6 商標登録第6131993号(以下「引用商標6」という。)
商標 ザ・ビヨンド・バーガー(標準文字)
指定商品 第29類「代用肉,完全菜食主義者用及び菜食主義者用の肉製品,植物を主原料とする代用肉,肉製品」
7 国際登録第1493881号(以下「引用商標7」という。)
商標 BEYOND BURGER
指定商品 第29類「Meat substitutes; vegan and vegetarian meat products; plant-based meat substitutes.」

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第125号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
1 「BEYOND MEAT」及び「ビヨンド・ミート」の名声
(1)ビヨンド・ミート社の会社沿革及び製品
申立人であるビヨンド ミート インコーポレイテッド(以下、「申立人」又は「ビヨンド・ミート社」という。)は、植物ベースの代替肉(甲42)の開発及び製造販売を手掛ける2009年創業の米国法人であり、「BEYOND MEAT」及びその表音「ビヨンド・ミート」を営業名及びハウスマークとして現在まで継続的に使用している(甲2?甲125)。
「BEYOND MEAT」製品は、全世界50か国、総計5万8000を超える小売店及びレストラン等で販売又は提供されており、その中には、日本でも一般によく知られている大手のファストフード及びレストランチェーンのデニーズ(Denny’s)(甲36)、ダンキン・ドーナツ(Dunkin’)、サブウェイ(SUBWAY)や、日本にも出店しているレストランチェーンのTGIフライデーズ(TGIFRIDAYS)(甲32、甲33)及びハンバーガーショップチェーンのカールス・ジュニア(Carl’s Jr.)(甲34、甲35)、さらには、世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマート(Walmart)、オーガニック食品を扱う大手スーパーマーケットチェーンのホールフース・マーケット(WHOLE FOODS MARKET)などが含まれる(甲3、甲4)。
2016年に販売を開始した「BEYOND MEAT」ブランドのバーガー用パティ「The Beyond Burger」(ザ・ビヨンド・バーガー)(現製品名「Beyond Burger」(ビヨンド・バーガー))(甲6、甲10?甲12)は、発売後1300万個以上を売り上げる大ヒット商品となり、米国全土の約1万5000件のレストラン及び食料品店で販売された(甲13)。このバーガー用パティ「Beyond Burger」は、牛肉で作った挽肉と同じような外観、調理法、そして味を実現させた世界で唯一の完全植物由来(遺伝子組換作物・大豆・グルテンフリー)のハンバーガー用ミートパティであり、スーパー・食料品店等の食肉(精肉)コーナーに陳列された初めての植物性代替肉として業界で有名である(甲3、甲4)。
ビヨンド・ミート社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏、映画俳優レオナルド・ディカプリオ氏、Twitter創業者のビズ・ストーン氏及び同エヴァン・ウイリアムズ氏、クライナー・パーキンス社(米国ベンチャーキャピタル)、マクドナルド社の前CEOのドン・トンプソン氏、オネストティー社創業者のセス・ゴールドマン氏、米国動物愛護協会、世界最大の食品メーカーのタイソンフーズ社、米国最大のフードサービス企業のシスコ社などの数々の世界的に著名な実業家、投資家、大手食品メーカー等からの出資を受けており、日本からは大手総合商社の三井物産株式会社が出資していることでも知られている。
(2)第三者によるニュース記事及びテレビ放送番組等における報道
上記のビヨンド・ミート社の事業内容、世界の著名投資家・実業家による出資状況、「BEYOND MEAT」ブランドの代替肉製品、並びに、その大ヒット製品であるバーガー用パティ「BEYOND BURGER(ビヨンド・バーガー)」(旧製品名 THE BEYOND BURGER(ザ・ビヨンド・バーガー))については、本件商標の登録出願日前から査定時及びそれ以降に至るまで、国内外の有名経済誌、ビジネス誌、新聞などのネットニュース記事、ソーシャルメディア、日本貿易振興機構(JETRO)のレポートなどを通じて一般に広く報道されており、また、国内の複数の地上波全国放送の情報番組でも、本件商標の登録出願日前からたびたび取り上げられ、大きく注目されていた(甲15?甲31、甲37?甲41)。
(3)諸外国における商標登録及び出願状況
申立人は、引用商標1ないし引用商標7に示す国内登録及び出願に加えて、「BEYOND MEAT」、「THE BEYOND BURGER」及び「BEYOND BURGER」の文字を構成中に含む商標及びロゴマーク、並びに現地公用語によるこれらの文字の音訳商標について、日本を含む世界38の国及び地域において総計196件の有効な商標登録及び出願を所有している(甲57?甲125)。
これらの中には、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品について米国で登録出願された「BEYOND MEAT」も含まれる(甲78)。
(4)小括
以上の事柄を総合すれば、申立人の使用に係る「BEYOND MEAT」及びその表音「ビヨンド・ミート」(「ビヨンドミート」、「ビヨンド ミート」などの異なる音訳表記も含む。)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の商号の略称として、また、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、国内外の代替肉を含む食肉を取り扱う業界(例えば、輸入商社、スーパーマーケット、食料品店、ベジタリアン及びビーガン向け食料品店といった食品卸売又は小売業者、ハンバーガーショップ・カフェ・レストランなどの飲食サービス業者)における取引者、並びに、少なくとも米国における一般消費者を含む需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
さらには、申立人の「BEYOND MEAT」ブランドを代表する大ヒット商品となったバーガー用パティの製品名「BEYOND BURGER」及びその表音「ビヨンド・バーガー」もまた、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、上記分野の取引者、並びに少なくとも米国における一般消費者を含む需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は「ビヨンド・ミート・バーガー」と横書きしてなり、外観及び称呼が冗長であり、また、当該構成全体が既成語に相当するものでもないから、常に一体不可分の自他商品識別力として看取されるものとはいえない。
したがって、本件商標からは、一般に自他商品識別標識として看者の注意を強く惹きつける前半の「ビヨンド・ミート」の文字部分に基づいて、「ビヨンドミート」の称呼と、「ビヨンド・ミート社」及び「BEYOND MEATブランド」の観念が生じる。
よって、本件商標は、申立人の使用に係る「BEYOND MEAT」(引用商標1)及び「ビヨンド・ミート」(引用商標2)と外観、称呼及び観念のすべてにおいて類似することが明らかであり、その類似性の程度は極めて高い。
本件商標の構成文字「ビヨンド・ミート・バーガー」は、申立人の代替肉を表示するものとして広く認識されている「ビヨンド・ミート」の文字と、申立人の「BEYOND MEAT」ブランドの代表的個別製品名の「BEYOND BURGER」(ビヨンド・バーガー)の構成中の「バーガー」の文字を結合させたものとして容易に認識、理解される。
本件指定商品の最終的な需要者は一般消費者であり、申立人の取り扱う代替肉の最終的な需要者も一般消費者であるから、両者は需要者の範囲が一致する。このような一般消費者の注意力の程度は高いものとはいえない。
著名ブランドがアパレルメーカーなどに使用許諾されて、ティーシャツ、スウェットシャツ、野球帽、バンダナなどがライセンス商品として販売されることや、著名ブランドが異業種メーカーと提携していわゆるコラボレーション商品を発売することも昨今では多く見受けられる。さらに、本件指定商品に包含されるティーシャツ、スウェットシャツ、野球帽、バンダナなどは、商品・役務の販売・提供促進用グッズ、ノベルティ商品として、広告・販売促進キャンペーン等で一般消費者に配布され、あるいは、懸賞等で賞品として当選者に提供されることが少なくない。
このような事情の下で、本件商標が指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、ビヨンド・ミート社とその「BEYOND MEAT」ブランドを容易に想起連想し、当該商品が申立人又は申立人と何らかの経済的又は組織的関係を有する者(例えば、申立人からその商標の使用許諾を受けた者、申立人と商品共同開発等の提携関係を有する者)の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがあることが明らかである。
また、「BEYOND MEAT」及び「ビヨンド・ミート」の表示は、申立人が案出した創造標章であり、極めて強い自他商品識別力、出所表示機能を有する。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、申立人の業務に係る代替肉を表示するものとして広く認識されている「BEYOND MEAT」及び「ビヨンド・ミート」の出所表示力が希釈化する。
さらに、商標権者による本件商標の使用は、申立人の開発技術及び営業努力によって「BEYOND MEAT」及び「ビヨンド・ミート」に化体した名声、信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為であり、申立人に経済的、精神的損害を与えるものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、その構成中に申立人の商号の著名な略称である「ビヨンド・ミート」を含むものであり、これについて申立人の承諾を得ていない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、申立人の代替肉を表示するものとして国内外の需要者の間で広く認識されている「BEYOND MEAT」(引用商標1)及び「ビヨンド・ミート」(引用商標2)と類似のものであり、これらが本件指定商品について国内未登録であることを奇貨として先取り的に登録したものである。
本件商標は、近い将来の日本市場参入が期待されていた「BEYOND MEAT」ブランドの代替肉の国内販売開始時における販売代理店契約等を有利に展開し、あるいは、申立人自身による「BEYOND MEAT」及び「ビヨンド・ミート」の商標登録取得を阻み、本件商標の使用許諾契約や商標権買取りを迫って不正な利益を得る等の不正な目的をもって使用するものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標の登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反することが明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。」旨の取消理由を令和2年11月18日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。

第5 商標権者の意見
上記第4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号について
商標法第4条第1項は、商標登録を受けることができないものとして、同項第19号に「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(略)」と規定している。
そして、同号にいう「不正の目的をもって使用をするもの」には、「他人の商標に化体された業務上の信用や顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し、不正の利益を得る目的をもって出願されたもの」を含むものと解される。
以下、かかる観点から本件について検討する。
2 申立人が引用する商標「BEYOND MEAT」の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、2009年に創設された米国法人であり、植物ベースの代替肉(以下「申立人商品」という。)の製造販売等を行っている(甲3、甲14)。
イ 申立人商品には、「BEYOND BURGER」、「BEYOND SAUSAGE」、「BEYOND BEEF」などがあり、それらには商標「BEYOND MEAT」の文字(以下「使用商標」という。)が表示されている(甲3、甲5?甲9)。
ウ 申立人商品は、現在50か国を超える国で販売されている(甲4)。
エ 申立人商品は、2017年(平成29年)12月頃には全米で5,000以上の食料品店で販売され(甲29、甲30)、2018年(平成30年)3月頃には全米で2.5万以上の食料品店やレストランで取り扱われている(甲4、甲31)。
オ 申立人商品のバーガー用パティは、2018年(平成30年)5月頃までに全米で1,300万個以上売り上げた(甲4)。
カ 申立人に対して、ビル・ゲイツ氏、レオナルド・ディカプリオ氏などの著名人、タイソン・フーズなどの大手食品メーカーなどの他、我が国の三井物産株式会社が出資している(甲4、甲16、甲22)。
キ 申立人及び申立人商品は、少なくとも2016年(平成28年)12月から2019年(令和元年)11月までの間に我が国の新聞社などのウェブサイトに度々掲載され、そのほとんどにおいて「ビヨンド・ミート」と表記されている(甲15?甲23、甲37?甲39)。
(2)上記(1)アないしキの事実からすれば、使用商標「BEYOND MEAT」は、本件商標の登録出願の日(平成30年7月23日)前から、申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表示するものとして、米国における需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定日(令和元年9月9日)はもとより、現在まで継続しているものと判断するのが相当である。
3 本件商標と使用商標の類否について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「ビヨンド・ミート・バーガー」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成文字は13文字と比較的冗長であり、また、当該文字から生じる「ビヨンドミートバーガー」の称呼は、11音と比較的冗長であって、本件商標は、その構成態様から「ビヨンド」、「ミート」及び「バーガー」の各文字を二つの中点を介して表したものと容易に認識させるものである。
そして、本件商標は、その構成中、「ビヨンド・ミート」の文字が、申立人の業務に係る商品(植物ベースの代替肉)を表示するものとして、米国における需要者の間に広く認識されている使用商標「BEYOND MEAT」の表音を片仮名で表記し、単語間に「・」を付したものであること、及び「バーガー」の文字は「ハンバーガー」の意味を有する語として我が国で親しまれた語(コンサイスカタカナ語辞典第4版(株式会社三省堂発行))であることを勘案すれば、本件商標の語頭に位置する「ビヨンド・ミート」の文字部分が、取引者、需要者の注意を強く惹くものといえ、当該文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、当該「ビヨンド・ミート」の文字に相応して「ビヨンドミート」の称呼を生じ、当該文字は、一般の辞書等に掲載のない造語と認識されるものであるから、特定の観念を生じないものといえる。
(2)使用商標
使用商標は、上記2のとおり「BEYOND MEAT」の欧文字からなり、当該文字に相応して「ビヨンドミート」の称呼を生じ、当該文字は、一般の辞書等に掲載のない、造語と認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と使用商標の類否
本件商標と使用商標の類否を検討すると、本件商標の構成中、取引者、需要者の注意を強く惹き、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「ビヨンド・ミート」の文字部分と使用商標とは、外観における、前者は片仮名で、後者は欧文字で表されているとの差異を有し、称呼においては「ビヨンドミート」の称呼を共通にし、また、観念においては比較できないものである。
そこで、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、かつ、一般に同一の称呼を生じる範囲内で商標の構成文字を片仮名及び欧文字に相互に変更することが行われている取引の実情を考慮すれば、外観における片仮名と欧文字との差異は、造語として理解される両商標においては、その文字種が異なる関係にすぎないものであって、特段の強い印象を与えるものであるということはできず、観念において比較できないものであっても、称呼を共通にする両者は、商品の出所について混同を生じさせるおそれのある類似のものと判断すべきである。
そうすると、本件商標と使用商標は類似する商標といわなければならない。
4 不正の目的について
上記2のとおり、使用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして米国における需要者の間に広く認識されている商標であり、申立人及び申立人商品は本件商標の登録出願の日前から我が国の新聞社などのウェブサイトに「ビヨンド・ミート」と表記され度々掲載され、また、上記3のとおり、本件商標と使用商標は類似する商標というべきである。
加えて、商標権者は、本件商標の登録出願時において「肉製品」に係る業務を行っているか、行う意思があったといえること(本件商標の登録出願時の指定商品に「第29類 肉製品」が含まれている。)、肉製品と申立人商品(植物ベースの代替肉)とは関連性の程度が高いといえること、申立人にはビル・ゲイツ氏、レオナルド・ディカプリオ氏及び我が国の三井物産株式会社などが出資しており、申立人及び申立人商品は話題性を有すること、及び「BEYOND MEAT」の文字(語)が既成語でないことを併せ考慮すれば、本件商標は、商標権者が使用商標の存在を知った上で、使用商標に化体された業務上の信用や顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し、不正の利益を得る目的をもって出願されたものと判断するのが合理的である。
そうすると、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものと認められるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(引用商標3)


別掲2(引用商標4)


異議決定日 2021-03-22 
出願番号 商願2018-94205(T2018-94205) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W25)
最終処分 取消  
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 庄司 美和
中束 としえ
登録日 2019-11-15 
登録番号 商標登録第6197193号(T6197193) 
権利者 勝地 拓之
商標の称呼 ビヨンドミートバーガー、ビヨンドミート、ビヨンド 
代理人 柳田 征史 

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