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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y28
管理番号 1375101 
審判番号 取消2020-300384 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-06-05 
確定日 2021-05-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5018717号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5018717号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5018717号商標(以下「本件商標」という。)は、「SPRINGFIELD」の欧文字及び「スプリングフィールド」の片仮名を上下2段に書してなり、平成18年2月20日に登録出願、第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,釣り具,昆虫採集用具」を指定商品として、同19年1月19日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年6月30日であり、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年6月30日ないし令和2年6月29日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標の使用者について
商標使用許諾契約書(乙1)によれば、被請求人と株式会社ウエスタン・アームス(以下「WA社」という場合がある。)(住所:東京都渋谷区神宮前・・・)との間で、平成26年(2014年)4月13日付けで本件商標に関する通常使用権の許諾契約が締結されていることがうかがえる。
しかしながら、証拠資料(「コンバットマガジン」2020年6月号、2019年6月号、2018年6月号)(乙2?乙4)の各裏表紙では、該当するモデルガンの販売者は「ウエスタンアームズ渋谷店」(住所:東京都渋谷区渋谷・・・)と表示されており、商標使用許諾契約書(乙1)に記載されたWA社とは、「ウエスタン」と「アームズ」の間の「・」の有無、「アームズ」と「アームス」の相違及び「渋谷店」の有無の相違があり、住所も異なっている。
したがって、モデルガンの広告(乙2?乙4)が、通常使用権を許諾されたとされるWA社によるものであるかどうか不明である。
(2)本件商標の使用について
ア モデルガンの広告(乙2?乙4)には、銃身部分に欧文字で「SPRINGFIELD」の文字が刻印されたモデルガンの写真が掲載されており、当該モデルガンの銃身部分における商標の表示は、商標法第2条第3項第1号にいう「商品に標章を付する行為」、又は同項第8号にいう「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当するようにも思われる。
しかし、商標法第50条第1項による登録商標の取消しを免れるためには、単に形式的に商標法第2条第3項各号に該当する行為があるだけでは足らず、そのような使用が商標の本質的機能である自他商品・役務の識別機能、ひいては出所表示機能を発揮し得るものでなければならない(甲2?甲10)。
イ 被請求人提出に係る広告(乙2?乙4)をみるに、確かに銃身部分に「SPRINGFIELD」の文字が刻印されたモデルガンの写真が掲載されているが、モデルガンは、実銃から殺傷能力を除去した外観のみを縮尺又は原寸で忠実に再現するところにそのデザイン上の特徴があり、実銃の本体に刻印された表示も含めて忠実に再現されるのが一般的であるから、仮にモデルガンに商標が付されていても、当該商標が実銃に付された商標を再現したものである以上は、それはモデルガンとしての性質上必然的に備わっているものにすぎないのであって、当該商標がモデルガン自体の出所を表示するものでないことは明らかである。
すなわち、当該商標は専らモデルガンの精巧さや忠実再現性を需要者に印象付けることを目的として、装飾的又は意匠的効果を狙って表示されているにすぎず、当該モデルガンの製造源あるいは出所を確認するための「目印」として表示されているわけではない。
モデルガン業界では、同一の実銃を参考に外観上同一のモデルガンが複数の異なる製作者により製作され得ることからも、モデルガンに付された表示が自他商品等識別標識として、また出所表示として使用されているわけではないことは明らかである。
実際のところモデルガンの取引者・需要者は、実銃に付された表示と同一の表示を有する多数のモデルガンの中から、その包装や、広告を含む取引書類等に付された当該モデルガンの製作者を示す表示を契機に各商品を識別し、モデルガンの品質・性能を比較して、選択・購入するのであり、モデルガンに付された表示がモデルガン自体の出所を表示しないことは、不正競争防止法に基づく差止・損害賠償請求事件に関するものであるが、東京地判平成10年(ワ)21507号、平成10年(ワ)21508号、平成10年(ワ)23338号においても明確に指摘された(甲8?甲10)。
さらに、モデルガンヘの商標の表示が出所表示機能を発揮し得る使用方法と評されるなら、実銃を指定する同一商標の商標権者の事業との関係で、あたかも日本における商品化事業を承諾した等、何らかの営業上の関係があるかのごとくに需要者間に混同を生じさせるおそれが生じ得る。
したがって、モデルガンヘの実銃の商標の表示は、そもそも出所を表示する効果を期待して用いられているのではないはずであり、また、そのような理解を前提に日本のモデルガン市場は成立していると考えられる。
改めて広告(乙2)を見れば、その裏表紙では銃身部分に「SPRINGFIELD」の文字が刻印されたモデルガンの写真が掲載され、その下方には「ウエスタンアームズ渋谷店」の表示とともに、その電話番号、住所、オンラインショップのURL、営業時間が明示されている。
また、上記広告の4ページ目以降のモデルガンの商品説明からも、当該広告(乙2)に示されたモデルガンの銃身における「SPRINGFIELD」の表示は当該モデルガンの出所を表示せず、むしろ当該モデルガンの出所はウエスタンアームズ渋谷店にあることが客観的に明らかであり、乙第3号証及び乙第4号証の広告においても同様である。
したがって、広告(乙2?乙4)に掲載されたモデルガンが「SPRINGFIELD」の表示を有していたとしても、当該表示は出所表示機能や自他商品等識別機能を発揮する態様で使用されているとは到底いえず、結局のところ、これらの各表示は、当該モデルガンが「SPRINGFIELD」の表示により表される実銃製作者の手にかかる実銃を精巧に模造したものであることを説明するために使用されているにすぎないというべきである。
以上のとおり、広告(乙2?乙4)は、いずれも本件商標のモデルガンヘの使用を証明するものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 本件商標は、被請求人である商標権者から通常使用権の許諾を受けたWA社によって「おもちゃの拳銃(モデルガン)」に使用されている。
2 本件商標の使用者について
被請求人は、平成26年4月13日にWA社と商標使用許諾契約を締結しており、契約書(乙1)によれば、WA社は、本件の被請求人(商標権者)から通常使用権の許諾を受け、本件商標を「おもちゃ」等に使用することが認められている。
なお、通常使用権者であるWA社は、「東京都渋谷区神宮前・・・」に所在の、「おもちゃの拳銃(モデルガン)」等の製造販売を行う周知・著名な玩具メーカーである。
3 本件商標の使用について
(1)平成30年4月27日、平成31年4月27日及び令和2年4月27日に発売された雑誌「コンバットマガジン(2018年6月号)」、「コンバットマガジン(2019年6月号)」及び「コンバットマガジン(2020年6月号)」(乙2?乙4)には、裏表紙等に銃身部分表面に「SPRINGFIELD」の文字が表示されたWA社製のモデルガンの写真とWA社の住所・電話番号(渋谷にある直営店)やURL等が掲載されており、上記各雑誌に掲載されたWA社が製造販売するモデルガンは、実店舗のみならず、電話注文、オンラインショップで購入することもできる。
(2)したがって、上記証拠資料から、本件商標が上記指定商品において要証期間内に使用されていることは明らかである。
また、本件商標は、ローマ字と片仮名の2段書きで表示されているところ、実際に使用している商標「SPRINGFIELD」とは異なっているが、両者は同一の称呼及び観念が生じるので、社会通念上同一と認められるものである。
よって、本件商標は、通常使用権者によって「おもちゃの拳銃(モデルガン)」に適法に使用されている。

第4 審尋
当審において平成2年12月14日付けで送付した審尋において、合議体が示した暫定的見解の内容は、要旨以下のとおりである。
1 雑誌の広告(乙2?乙4)に掲載されている「おもちゃの拳銃(モデルガン)」(以下「使用商品」という。)の写真に表示されている「SPRINGFIELD ARMORY」の文字(以下「使用商標」という。)と、「SPRINGFIELD」の欧文字及び「スプリングフィールド」の片仮名を上下2段に書してなる本件商標とは、社会通念上同一の商標とは認められない。
2 被請求人が本件商標の商標使用許諾契約を結んだ株式会社ウエスタン・アームス(住所:東京都渋谷区神宮前・・・)と雑誌の広告(乙2?乙4)に記載の「ウエスタン アームズ 渋谷店」(住所:東京都渋谷区渋谷・・・)とは、両者の名称及び住所が相違しているため、使用商品の広告が株式会社ウエスタン・アームスに係るものであることが確認できない。

第5 審尋に対する被請求人の回答
上記第4の審尋に対し、被請求人からの回答はない。

第6 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標の商標権者(被請求人)である「J-Armory株式会社」を甲とし、株式会社ウエスタン・アームス(住所:東京都渋谷区神宮前・・・)を乙とする平成26年4月13日付けの商標使用許諾契約書(乙1)には、甲は、乙に対し、甲が所有する本件商標に関し、通常使用権を許諾する旨、及びその契約期間は、原則本件商標が存続する限り有効である旨の記載がある。
(2)平成30年4月27日、平成31年4月27日及び令和2年4月27日に発売された雑誌「コンバットマガジン(2018年6月号)」、「コンバットマガジン(2019年6月号)」及び「コンバットマガジン(2020年6月号)」(いずれも出版社:株式会社ワールドフォトプレス)(乙2?乙4)には、裏表紙等に銃身部分表面に「SPRINGFIELD ARMORY」の文字(使用商標)が表示されたモデルガン(使用商品)の写真とともに「ウエスタン アームズ 渋谷店」(住所:東京都渋谷区渋谷・・・)及び電話番号並びにURL等が掲載されている。
2 判断
(1)本件商標と使用商標との社会通念上同一性について
使用商標は、「SPRINGFIELD ARMORY」の文字からなるところ、その構成は、「SPRINGFIELD」と「ARMORY」の文字との間にやや空白があるとしても、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表されており、その構成全体から生じる「スプリングフィールドアーモリー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、使用商標の構成中の「SPRINGFIELD」の文字は「イリノイ州州都」「オハイオ州の工業都市」「オレゴン州西部」「ケンタッキー州中部」「バージニア州北東部」「ペンシルベニア州南東部」「マサチューセッツ州南部」「ミズーリ州南西部」「バーモント州南東部」の米国の都市名等(外国地名レファレンス事典 2006年 日外アソシエーツ株式会社)として、地名の事典に載録されているとしても、当該文字は、我が国において、特定の地名を表示するものとして広く親しまれているとは認められないものであり、また、構成中の「ARMORY」の文字は、当該文字が「兵器庫。」(ジーニアス英和辞典 第5版 株式会社大修館書店)の意味を有する英語であるとしても、我が国においてその意味が広く親しまれている語とは認められないものであって、使用商品との関係においても、商品の品質等を表す語として普通に使用されているとはいい難いものである。
そうすると、「SPRINGFIELD ARMORY」の文字からなる使用商標は、いずれかの文字のみが着目され、当該文字部分のみをもって、取引に当たるという事情も見いだせないことから、使用商標に接する取引者、需要者は、その構成全体をもって一体のものと認識、把握するとみるべきものであり、当該文字は、辞書等に載録のない語であって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものであるから、特定の観念を生じるとはいえないものである。
してみれば、使用商標は、その構成文字全体から「スプリングフィールドアーモリー」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものであり、使用商標が「スプリングフィールドアーモリー」と称されていることは、乙第3号証の「068」の表示があるページ及び乙第4号証の「094」の表示があるページの商品紹介の文章中に「スプリングフィールドアーモリー」と記載されていることからも裏付けられるものである。
一方、本件商標は、上記第1のとおり、「SPRINGFIELD」の欧文字と「スプリングフィールド」の片仮名を上下2段に書してなるものであり、これより、「スプリングフィールド」の称呼を生じ、「SPRINGFIELD」の文字は、上記に記載のとおり、特定の地名を表示するものとして広く親しまれているとは認められないものであるから、直ちに特定の観念を生じるとはいえないものである。
したがって、使用商標は、本件商標とその構成文字を異にするものであり、称呼及び観念を同一にするとはいえないものであるから、社会通念上同一の商標と認めることができないものである。
以上のとおり、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができない商標であるから、使用商品に表示された使用商標が、出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているか否かにかかわらず、当該表示によっては、本件商標の使用商品への使用を証明するものと認めることができない。
(2)商標の使用者について
上記1(1)によれば、被請求人が株式会社ウエスタン・アームス(住所:東京都渋谷区神宮前・・・)と本件商標の使用許諾についての契約を締結したことは認められるものの、使用商標が表示されている雑誌の広告(乙2?乙4)には、「ウエスタン アームズ 渋谷店」(住所:東京都渋谷区渋谷・・・)と記載されており、両者は、「ウエスタン」と「アームス(ズ)」の間の「・」の有無、「アームス」と「アームズ」の相違及び「渋谷店」の有無の相違並びに両者の住所も相違しているため、使用商標の広告が上記株式会社ウエスタン・アームスに係るものであると認めることができない。
(3)小括
上記のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、通常使用権者が、要証期間内に、本件商標を請求に係る指定商品中のいずれかの商品について使用した事実を認めることができない。
その他、本件商標が、商標権者等によって、その指定商品について、商標法第2条第3項にいう使用をされた事実を示す証拠は見いだせない。
3 むすび
以上からすれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、請求に係る商品のいずれかについて、本件商標を使用していることを証明したものということができず、かつ、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2021-03-22 
結審通知日 2021-03-24 
審決日 2021-04-12 
出願番号 商願2006-14418(T2006-14418) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y28)
最終処分 成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 杉本 克治
中束 としえ
登録日 2007-01-19 
登録番号 商標登録第5018717号(T5018717) 
商標の称呼 スプリングフィールド、スプリング 
代理人 浅賀 一樹 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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