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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X43 |
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管理番号 | 1375052 |
審判番号 | 取消2018-300728 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2018-09-19 |
確定日 | 2021-05-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5298552号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5298552号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり「神戸牧場」の文字を表してなり、平成21年5月11日に登録出願、第43類「牛串焼を主材料とする飲食物の提供」を指定役務として、同22年2月5日に設定登録され、その後、本件商標に係る商標権は令和2年2月5日にその存続期間が満了し、同年10月21日にその登録は抹消され、閉鎖商標原簿に移されているものである。 本件審判の請求の登録日は、平成30年10月19日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である同27年10月19日から同30年10月18日までを、以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、弁駁書及び意見書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)乙第1号証、乙第3号証ないし乙第7号証は、証拠説明書の作成年月日及び立証趣旨を確認するも、いずれも要証期間外であり、要証期間内における本件商標の使用を立証できるものでない。 乙第2号証の写真も、写真撮影は、2017年4月28日ないし5月7日の間と記載されるのみで、撮影日時、撮影場所等が客観的に分かるものでなく、要証期間内に本件商標を本件指定役務に使用したことを客観的に立証できるものではない。 (2)乙第2号証の写真や乙第3号証の写真は、屋外において露天商のごとき店で牛串焼やペットボトル入りのジュース、缶チューハイなどの商品が販売されていることがうかがえ、その店内には調理器具や調理人、販売員が存在するのみで、客が店内で飲食することはできない。また、本件商標権者のその他の串焼の店を見ても同様の態様がとられている(甲2)。 本件商標の指定役務は、第43類「牛串焼を主材料とする飲食物の提供」であるところ、飲食物の提供とは飲食物を店内で提供するための役務であり、本件のような商品の販売に係る店舗での使用は第35類「牛串焼の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に該当するものである。 3 令和3年2月19日付け意見書 (1)乙第1号証ないし乙第11号証は、本件商標権者が要証期間内において本件商標を使用していたとする客観的な証拠ではないから、本件商標権者が要証期間内において、本件商標を使用していたとは認められない。 要証期間内の証拠は、事業内容を示す証拠を除けば、乙第2号証、乙第6号証、乙第8号証及び乙第10号証のみであり、撮影日や撮影場所が客観的に分かる写真などもなく、これらをもって、本件商標権者が本件商標を使用していたとは認められない(甲3)。 被請求人は、会社規模から十分な証拠保全ができない、商標権者保護の観点から使用を認めるべきなどと主張するが、商標権は非常に強力な権利であり、自身の商標を守るための証拠保全は商標権者の当然の義務であるし、本件商標権者の使用態様をもって、第43類の飲食物の提供まで権利を拡大解釈することは、需要者の利益や公平性の観点から妥当でない。 (2)本件商標権者が本件商標を使用しているのは、第35類「牛串焼の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であり、第43類「牛串焼を主材料とする飲食物の提供」ではない。 乙第2号証、乙第3号証の店の写真と、甲第4号証(神戸牧場の串焼商品の写真が掲載された個人ブログの写し)の商品の写真から、被請求人は、露天商のような店で、薄紙に挟まれた牛串商品を販売していることが分かる。このような店や商品の形態からして、持ち帰り用の商品を販売していることは明らかであり、第43類の飲食物の提供とは到底認められない。 被請求人は、飲食物の提供は飲食物を店内で提供する飲食店で使用するための役務と限定すべきでない、コロナ等で飲食店が持ち帰りをしている旨主張するが、甲第5号証(乙8、乙9の一部に追記した資料)を見ても、「’17食博覧会・大阪」(以下「17食博覧会」という。)というイベントでテーブルや椅子が屋外に並べられていたであろうことが分かるのみであるし、これは店内飲食でも、フードコートでもないし、「串焼き片手に気ままに散歩!/パティオ・BBQコーナー」などの文言からも、本件商標権者は串焼商品を販売しているものと見るのが相当であり、飲食物の提供とは到底認められない。 第43類の飲食物の提供とは、専ら店内で飲食させることを本質的業務とする食堂、レストラン等の事業所が、料理及び飲料を提供するサービス(役務)である。本件商標権者のような持ち帰り、いわゆるテイクアウトを目的とする料理及び飲料を販売しているとしても、それはサービス(役務)の提供といえるものでなく、販売される飲食物は「商品」である。 このことは、特許庁の審決(取消2001-30806)において、「『飲食物の提供』の役務には、食堂、レストラン、そば店、うどん店、すし店、喫茶店、料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブ、酒場及びビヤホール等が、料理及び飲料を飲食させる役務が含まれるものと解される(特許庁商標課編「商品及び役務区分解説〔国際分類第8版対応〕参照)。(中略)役務『飲食物の提供』、すなわち料理及び飲料を飲食させる役務とは、専ら店内で飲食させることを本質的業務とする上記した食堂、レストラン等の事業所が料理及び飲料を提供するサービス(役務)であるというべきであって、持ち帰りいわゆるテイクアウトを目的とする料理及び飲料を店内で販売しているとしても、それはサービス(役務)の提供といえるものでなく、販売される当該飲食物は『商品』というべきである。」と示されていることからも明らかである。 したがって、本件商標権者の本件商標の使用は、第35類の小売役務に該当し得るものであって、第43類の飲食物の提供には該当しない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書、回答書及び反論書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 (1)当事者 本件商標権者(被請求人)は、飲食店の経営などを目的とする会社であり、常設の店舗以外に、各種のイベント、催事会場においてそのイベントや催事に応じた各種類の飲食物を提供する飲食店の仮設店舗や屋台を設け、同店舗で飲食物を提供することを業務内容としている(乙1)。 (2)本件商標権者による本件商標の使用の事実 本件商標権者は、自ら本件商標を日本国内において使用しており、要証期間内に本件商標を使用していない、という要件に該当しない。 ア 本件商標権者による標章使用の経過 本件商標権者は、本件商標を平成22年2月5日に商標登録しているが(甲1)、それ以前から、年に数回、定期的にイベントや催事会場において、主催者から割り当てられた出店スペースに仮設店舗や屋台を設置して、本件商標と同一の文字デザインの「神戸牧場」という標章を使用した横断幕(以下「本件横断幕」ということがある。)を看板として店舗正面に掲示して、牛串焼を主材料とする飲食物を販売してきた。 イ 本件横断幕等の作成の事実 本件商標権者は、平成17年4月12日に本件横断幕を有限会社大路旗幕(以下「大路旗幕」という。)に発注して、同月18日にはその納品を受けて、代金68,250円を支払っている(乙4)。 飲食店の営業を業務として行うことを目的とする本件商標権者が、代金を支払って本件横断幕を発注した以上、牛串焼を販売することを目的として本件横断幕を作成し、これを店頭に看板として掲示して使用してきたことは明らかである。 本件商標権者は、本件横断幕が汚損、破損するたびに新たに同一の内容の横断幕を作り直してきたが、平成25年4月25日に横断幕を発注して作成している(乙5)。同書証には、「大至急 4/26(金)よりインテックス大阪で使用」とあり、本件横断幕をインテックス大阪で行われたイベントに出店した店頭に掲示して牛串焼を販売したことは明らかである。 このように複数回にわたり本件横断幕を発注して作成している事実も、本件商標権者が本件横断幕を掲示して牛串焼を販売してきたことを裏付けている。 ウ 本件商標の使用の事実 インテックス大阪で開催された17食博覧会の会場において、2017年(平成29年)4月28日から同年5月7日まで、本件商標を店頭に掲示して使用していた(乙2)。 「食博覧会」は、4年に一度開催されており(乙6)、2013年(平成25年)4月26日ないし同年5月6日にも、本件商標を店頭に掲示して使用している(乙3)。 その他、2014年(平成26年)9月20日ないし同月21日に京都市左京区にて開催された京都岡崎レッドカーペットB級グルメ、2015年(平成27年)9月19日ないし同月20日に開催された同イベントでも出店に当たり店頭に本件商標を掲示して使用している(乙7)。 2016年度ないし2018年度の合計18のイベントでも、被請求人は、飲食店を出店しており、記録は残っていないものの、本件商標を店頭に掲示して使用している。 2 令和2年9月30日付け回答書 (1)出展証明書(乙2)について ア 作成者及び作成の経緯 出展証明書(乙2)の作成者は、一般社団法人食博覧会協会(以下「食博覧会協会」という。)である。 乙第2号証は、本件審判請求を受けて、被請求人から、17食博覧会の当時の実行委員会常任理事である一般社団法人大阪外食産業協会(以下「大阪外食産業協会」という。)の当時の理事M氏(以下「M氏」という。)に対して、本件商標権者の出店状況の裏付け資料の照会をしたところ、M氏が食博覧会協会(M氏は当時の同協会の理事長も兼任している。)として本件商標権者の出店状況を証明するために「出展証明書」を作成した。したがって、「出展証明書」は、17食博覧会の実行委員会の常任理事が本件商標権者の出店を証明した書面であり、その内容の信用性は明らかである。M氏が17食博覧会の実行委員会常任理事であることは、同公式記録集「主催者名簿」記載のとおりである(乙8)。 イ 乙第2号証の参考資料1及び参考資料2の内容について 乙第2号証の参考資料1及び参考資料2(以下「参考資料1」、「参考資料2」という。)は、いずれも17食博覧会の実行委員会において作成、あるいは、撮影された写真である。 参考資料1は、17食博覧会開催のために全体の配置を明示するために開催当時に作成された図面であり、乙第10号証(参考資料1の2葉目を書証化したもの。)で黄色マーカーした場所に本件商標権者が出店していた場所が記載され、また、出店していた場所の前にマーカーで記載した印の部分が飲食物を食べるための椅子とテーブルである。乙第8号証は、公式記録集であるが、その中に店舗で購入した飲食物を食べるためのテーブルと椅子が設置され、そこで飲食している客が撮影されている。 参考資料2は、17食博覧会の広報や記録集を作成するために同実行委員会において撮影していた写真であり、実行委員会の指示で実行委員会として撮影している以上、その撮影内容の信用性は明らかである。撮影年月日についても実行委員会において記録するために撮影しているから開催期間中である平成29年4月28日から5月7日の間に撮影したものである。撮影場所は参考資料2及び乙第10号証の本件商標権者の出店場所である。 (2)写真(乙3)について 写真(乙3)は、「‘13 食博覧会・大阪」(以下「13食博覧会」という)に出店した際の写真であり、13食博覧会の記録集にも本件商標権者が出店している写真が掲載されているから、同写真の撮影日、撮影状況を証明するために記録集(乙9)を提出する。 3 令和2年11月9日付け反論書 (1)乙第2号証は、要証期間における本件商標権者による本件商標の使用を直接裏付け証明するものであり、その内容に信用性がある(乙8、上記回答書)。 要証期間以前の写真(乙3、乙9)、本件横断幕の作成(乙4、乙5)、出店の日報(乙7)も、本件商標権者が要証期間の直前において本件商標を継続して使用してきたことを裏付ける証拠であり、要証期間の使用を直接証明する証拠(乙2、乙8)とあいまって、本件商標権者が要証期間も継続して本件商標を使用してきた事実を推定させるものである。 なお、付言すれば、商標権者として常に将来の係争を予想して要証期間における本件商標使用に係る十全な証拠を保全しておくことを期待することは、本件商標権者のような零細な事業者にとっては酷な要求であり、商標権の権利者保護の観点からは、既に提出した証拠によって要証期間における本件商標使用の事実は優に証明されていると評価するのが商標法の趣旨にも沿った証拠評価の方法であるといわねばならない。 (2)第43類の指定役務は、飲食物を店内で提供する飲食店で使用するための役務と限定すること自体が誤りである。特に新型コロナ感染症による影響下で感染拡大を防止するために、各飲食店共に飲食物を店内で提供せずに持ち帰りで提供することが一般的になっているのであり、このような商標の使用についても第43類の指定役務として保護の対象とするのが相当である。 また、店内か否かという基準は、非常にあいまいな基準である。店の前にテラス席を用意して飲食を提供することも通常行い得る飲食の提供方法であるし、大型スーパーなどショッピングモールで見られるいわゆる「フードコート」のように各飲食提供店で購入した飲食物を共同の飲食スペースで飲食するような提供方法もある。商標の権利者保護の観点からすれば、あいまいな基準によって権利の保護対象となる指定役務か否かを区別するのは相当ではなく、被請求人の使用も本件商標の使用として保護するべきである。 請求人は、本件商標権者の飲食物提供を「露天商」のごとき店で販売すると主張しているが、本件商標権者は屋内に設置された飲食店で飲食物を販売して、客は購入した飲食物を同スペース内に設置された椅子やテーブルが設置された飲食スペースに持って来て飲食する方法での飲食物の提供も行っており(乙10)、これは露天商とは明らかに異なる。 第4 当審の判断 1 被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)会社概要(乙1の1) 本件商標権者の「会社概要」とされる書面には、「社名 株式会社 ライフェック」、「所在地 本社・事業開発本部:神戸市兵庫区上庄通2-1-5」並びに電話番号及びFAX番号等の記載があり、当該住所は、本件商標の登録原簿に記載の住所と同一のものである。 (2)17食博覧会 ア ’17食博公式記録集(乙8) 「’17食博公式記録集」(以下「17食博記録集」という。)とされる書面の2葉目には、「開催概要」として「□名称:‘17食博覧会・大阪」、「□会期:2017年4月28日(金)?5月7日(日)10日間」、「□会場:インテックス大阪(大阪国際見本市会場/南港)」、「□主催:食博覧会実行委員会、一般社団法人大阪外食産業協会、公益財団法人関西・大阪21世紀協会」、「□URL:http://www.shokuhaku.gr.jp」の記載がある。 3葉目には、「9回目の開催で、累計500万人を突破。」のタイトルの下、会場施設内スペースに設置した多数のテーブル及び椅子において来場者が飲食している様子が撮影された写真画像の掲載がある。 4葉目には、「主催者名簿」が掲載され、「【主催】」として「食博覧会実行委員会、(一社)大阪外食産業協会、(公財)関西・大阪21世紀協会」の記載があり、「実行委員会名簿」の「【常任理事】」として「(一社)大阪外食産業協会理事」のM氏の氏名の記載がある。 5葉目には、「’17食博覧会・大阪/公式記録集」、「2017年11月吉日発行」、「発行/食博覧会実行委員会」及び「事務取扱い/(一社)大阪外食産業協会」との奥付がある。 イ 現在事項全部証明書(乙11) 「現在事項全部証明書」とされる書面には、「名称」を「一般社団法人食博覧会協会」とする法人(法人成立の年月日:平成17年3月22日)についての登記情報が掲載され、第1頁には「主たる事務所」として「・・・一般社団法人大阪外食産業協会事務所内」の記載があり、第2頁には「役員に関する事項」として「理事」としてM氏の氏名の記載がある。末尾には令和2年9月28日付け大阪法務局登記官の記名及び押印がある。 ウ 出展証明書(乙2) 「出展証明書」とされる書面には、1葉目に「出展証明書」のタイトルの下、「株式会社ライフェックは、2017年4月28日(金)?5月7日(日)まで開催された『’17食博覧会・大阪』において、出展小間位置(屋-01)の箇所にて『神戸牧場』の名前で出展営業をしていたことを証明する。」旨の記載並びに「参考資料1・・・出展場所位置図」及び「参考資料2・・・記録写真」の記載があり、下部には「平成30年10月30日」付けで「一般社団法人 食博覧会協会」の「理事長」M氏の氏名の記名及び押印がある。 (ア)参考資料1 「出展証明書」(乙2)の2葉目及び3葉目は、いずれも余白に「’17食博覧会・大阪」、「ジーク株式会社/一級建築士事務所(京都府知事登録(18A)第○○○○号」(審決注:「○○○○」には数字が表示されている。)と記載された図面であって「出展場所位置図」(参考資料1)とされるものであり、「会場全体平面レイアウト図」として、会場全体の配置を表す図面及び「3号館平面レイアウト図」として上記全体図の一部を拡大した図面であるところ、同会場のほぼ中央に位置する「ステージ」の右隣に「食博肉祭り」とされる一画があり、その左上には「屋-01/ライフェック」との出展の場所の表示があり、当該出展場所の前の飲食スペースには、30卓のテーブルと120席の椅子の配置が表示されている。 (イ)参考資料2 「出展証明書」の4葉目は、会場内にある仮設店舗を撮影したとされる「記録写真」(参考資料2)の写真画像であり、当該店舗の上部には、緑色の横長長方形を背景として、黒色の「炭火焼」(波線状の円弧で囲まれている。以下同じ。)及び「牛串焼」の文字、2頭の牛の図柄と共に、枠取りを施し毛筆体風の書体で中央部に大きく表した赤色の「神戸牧場」の文字からなる横断幕が掲げられている。 また、店舗内には串焼を焼く調理台、飲み物を冷蔵するカウンター、「お会計」と表示されたカウンターと共に、串焼の準備を行う者、飲み物の準備を行う者、会計を担当するとおぼしき者が写っている。 さらに、当該横断幕の下やカウンターの前面には、「牛串焼/700円」、「生ビール/500円」、「・・・缶チューハイ/300円」、「500mlペットボトル/¥200」(ペットボトル入のソフトドリンクの画像と共に表示されている。)、「お会計」等と表示されたチラシが複数掲げられている。 (3)横断幕の加工伝票(乙5) 乙第5号証「加工伝票」とされる書面には、枠外上部に「加工伝票」の文字と共に「平成25年4月24日」の記載があり、「受注先」に「(株)ライフェック 様」、電話番号及びFAX番号が記載され、当該電話番号及びFAX番号は、上記(1)の会社概要に記載されている電話番号及びFAX番号と同一のものである。 また、中程に表示された横断幕のデザインは、横長長方形中に「炭火焼」及び「牛串焼」の文字、2頭の牛の図柄と共に、枠取りを施し毛筆体風の書体で中央部に大きく表した「神戸牧場」の文字からなるものであり、色彩指定として「キミドリ」、「赤」及び「スミ」の記載があることから、「出展証明書」(乙2)の「参考資料2」、「13食博記録集」(乙9)及び「写真」(乙3)の仮設店舗の写真画像にある横断幕の構成、色彩と同一のものである。 2 上記1によれば、以下のとおり判断することができる。 (1)提供された役務について 17食博覧会会場内の「ステージ」付近の「食博肉祭り」と称されるエリアの一画の「屋-01」とする出店場所に「株式会社ライフェック」旨の出店が認められる。 当該「株式会社ライフェック」の出店した仮設店舗内には串焼を焼く調理台、飲み物を冷蔵するカウンター、「お会計」カウンターがあり、串焼の調理を行う者、飲み物の準備を行う者等がおり、横断幕の下やカウンター前面には「牛串焼」、「生ビール」、「缶チューハイ」及び「500mlソフトドリンク」の価格の表示があることからすれば、当該「株式会社ライフェック」は当該店舗において「牛串焼」を調理し、「生ビール」、「缶チューハイ」、「ソフトドリンク」と共に提供していたことがうかがえる(乙2)。 そして、「17食博記録集」に掲載された写真画像により、17食博覧会の来場者は、会場内にある椅子とテーブルで飲食していることが確認でき(乙8)、会場内で購入した飲食物をその場で飲食可能であったとみることかできるから、本件商標権者の店舗で牛串焼や飲み物を購入した者は、店舗前に置かれた30卓のテーブル及び120席の椅子でこれらを飲食していたことが推認できる(乙2、乙8、乙10)。 そうすると当該「株式会社ライフェック」は、17食博覧会の仮設店舗において、同店舗前の飲食スペースにおいて飲食させるために「牛串焼」を調理し、「ビール」等の飲み物と共に提供していたものである。 (2)使用された商標について 17食博覧会会場内にある「株式会社ライフェック」の仮設店舗の上部に掲げられた横断幕は、緑色の横長長方形を背景として、黒色の「炭火焼」及び「牛串焼」の文字、2頭の牛の図柄と共に、枠取りを施し毛筆体風の書体で中央部に中央部に大きく表した赤色の「神戸牧場」の文字からなるところ、中央に赤色で大きく表された「神戸牧場」の文字は、色彩は異なるものの、横長長方形の背景及び枠取りを施した毛筆体風の書体において本件商標を構成する「神戸牧場」の構成態様と同一であるから、当該横断幕における「神戸牧場」の文字は、本件商標と社会通念上同一のものであると認められる。 また、当該横断幕は、店舗の看板と同視し得るものであり、かかる横断幕を掲げる行為は、「牛串焼を主材料とする飲食物の提供」に関する広告を展示する行為といえる。 (3)商標の使用時期について 「株式会社ライフェック」が17食博覧会の仮設店舗において本件商標と社会通念上同一の商標を付した横断幕を掲げて「牛串焼を取材とする飲食物の提供」を行ったのは、同博覧会が開催された2017年(平成29年)4月28日ないし同年5月7日である(乙2、乙8等)。 そうすると、「株式会社ライフェック」が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していた時期は、要証期間内であるといえる。 (4)商標の使用者について 上記(1)ないし(3)において本件商標を社会通念上同一の商標を使用して、「牛串焼を主材料とする飲食物の提供」を行った「株式会社ライフェック」は、その名称が本件商標権者と同じであること及び17食博覧会会場内において同社が掲示した横断幕と同じ構成、色彩の横断幕の加工伝票に記載されている、電話番号及びFAX番号が、本件商標権者の会社概要に記載されている電話番号及びFAX番号と同じであり、当該会社概要に記載されている住所が本件商標の登録原簿に記載されている住所と同じであるから、当該「株式会社ライフェック」は、本件商標権者と認められる。 (5)小括 上記(1)ないし(4)によれば、本件商標権者である株式会社ライフェックは、要証期間内である2017年(平成29年)4月28日ないし同年5月7日に、17食博覧会の会場において、牛串焼の提供を行う仮設店舗を広告する看板として本件商標と社会通念上同一の商標を付した横断幕を掲げていたことが認められ、当該行為は、商標法第2条第2項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告に標章を付して展示する行為」に該当する商標の使用ということができる。 3 請求人の主張について (1)請求人は、乙各号証は要証期間外のものが多く、撮影日や撮影場所が客観的に分かる写真などもなく、これらをもって本件商標を使用していたとは認められない旨主張している。 しかしながら、上記2のとおり、本件商標権者は、要証期間内に牛串焼の提供を行う仮設店舗を広告する看板として本件商標と社会通念上同一の商標を付した横断幕を掲げていたことが認められる。 また、仮設店舗の記録写真(参考資料2)が付された「出展証明書」(乙2)は、食博覧会協会の(当時の)理事長M氏の記名及び押印の下、作成されたものであって、当該食博覧会協会は、17食博覧会の主催者である大阪外食産業協会内に事務所が設置されていることから17食博覧会の主催者に関係のある法人と認められること、17食博覧会の公式記録集において、当該大阪外食産業協会の理事及び実行委員会常任理事としてM氏の氏名があることから、当該記録写真は17食博覧会の広報や記録集を作成するために17食博覧会の実行委員会が撮影したと認められるものであり、同博覧会の開催期日である平成29年4月28日ないし同年5月7日の間に、本件商標権者の出店場所で実行委員会の関係者が撮影したものであることを疑うべき合理的理由は見当たらない。 さらに、「17食博記録集」(乙8)は、大阪外食産業協会の事務取扱の下、主催者である食博覧会実行委員会が発行するものであるから、特段の事情がない限り、その掲載写真や記載内容について信用性がないということはできない。 そして、横断幕の加工伝票(乙5)は、要証期間外のものであったとしても、第三者が作成した資料に基づく証拠であり、本件商標権者が要証期間内に本件商標(本件横断幕)を指定役務に使用した事実を間接的に示すものである。 してみれば、これらの乙号証は、一部に要証期間外のものが含まれるとしても、十分な客観性を備えたものであるから採用して差し支えないものある。 (2)請求人は、被請求人の営業形態を指摘し、審決例を引用して、飲食物の提供とは飲食物を店内で提供するための役務であり、本件のような商品の販売に係る店舗での使用は「飲食物の提供」に該当しない旨主張している。 しかしながら、本件商標権者の店舗が仮設のものであったとしても、本件審判において本件商標権者により提供されたとされる役務は、上記2(1)のとおり、「牛串焼」等を食博覧会の来場者(顧客)に提供し、当該店舗に近接する会場内にある飲食スペースでこれらを飲食させるものであり、単に持ち帰り用として「牛串焼」の販売をしているにとどまるものではないことから、「飲食物の提供」に該当するというのが相当である。 (3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件商標の指定役務「牛串焼を主材料とする飲食物の提供」について本件商標の使用をしていることを証明したといえる。 したがって、本件商標の登録は、その指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。 なお、本件商標に係る商標権は、前記第1のとおり、商標権の登録が抹消されているところ、商標法第50条第1項の審判により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定したときは、商標権は、審判の請求の登録の日に消滅したものとみなされる(商標法第54条第2項)ことに鑑みれば、上記登録の抹消前に予告登録がされた本件審判にあっては、その抹消前の本件商標の使用について判断することを要するものと解するのが相当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 ![]() |
審理終結日 | 2021-03-24 |
結審通知日 | 2021-03-26 |
審決日 | 2021-04-06 |
出願番号 | 商願2009-38119(T2009-38119) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(X43)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長澤 祥子 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 大森 友子 |
登録日 | 2010-02-05 |
登録番号 | 商標登録第5298552号(T5298552) |
商標の称呼 | コーベボクジョー、コーベマキバ、ボクジョー、マキバ |
代理人 | 松山 秀樹 |
代理人 | 鳥巣 実 |