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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1375004 
審判番号 取消2020-300180 
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-03-10 
確定日 2021-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第1035227号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1035227号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「GITAN」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年3月22日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同48年9月27日に設定登録、その後、平成16年9月22日に、指定商品を第25類「履物」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和2年3月23日であり、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成29年(2017年)3月23日ないし令和2年(2020年)3月22日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を以下のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標は本件審判請求日現在において既に登録後3年以上経過しており、しかもこの間、被請求人は、本件商標をその指定商品について使用した事実は存在しない。
したがって、本件商標は、継続して過去3年以上日本国内において上記商品について使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対し、弁駁書を提出していない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第20号証を提出した。
(1)被請求人は、1981年設立のメンズ・レディースの靴や小物等を販売する老舗の靴屋である。
(2)被請求人は、本件審判の請求登録日前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「GITAN」を、取消に係る指定商品「履物」に使用している。
(3)本件商標は、50年近く存続してきた登録商標であり、現在に至るまで、長年に亘って、被請求人に使用され、2000年代前半からは、我が国の代表的な百貨店の一つである西武そごう百貨店での販売に特化したブランドとして使用されてきた。
靴の業界においては、自社のブランドを、小売店ごとに区別して販売することで、デザインやコンセプト等において、小売店の要望を取り入れた商品を提供することを可能にする形態が採られ、こうしたブランドは、社内のみで企画・開発して販売する、いわゆるナショナルブランドとは異なる位置づけであり、プライベートブランドに近い形式であるものの、プライベートブランドとも異なり、ブランドネーム自体はメーカー側が発案・採択する。そして、在庫の管理や販売、売れ残った商品の処分等の責任も当然にメーカーが負い、小売店には広告や販売のみ任せる仕組みとなっている。
(4)被請求人は、複数の百貨店と提携し、各百貨店に特化したブランドを展開している。各百貨店の要望を取り入れた商品を開発し、デザインや木型等も各々分けて製造メーカーに製造を依頼する。
広告宣伝は、商品を直接消費者に販売する百貨店が行い、在庫や販売の管理等、商品に関する責任は被請求人が負っている。
百貨店にて売れ残った商品は、被請求人の倉庫で管理され、被請求人の指示でバーゲンに出品されたり、アウトレットモールにて被請求人自らが営業するアウトレット店舗で販売される等、被請求人の責任において処分される。
(5)「GITAN」の靴は、紳士用のみの展開で、自然の皮革で手作りされた高級感のあるビジネスシューズである(乙第1号証)。当初は、イタリアの靴メーカーに製造を依頼していたが、最近は、スペインの靴メーカーであるPACO VALIENTE,S.L.(以下「PACO社」という。)に製造を依頼している。
被請求人は、自身の企画と、株式会社そごう・西武の要望に基づき、PACO社に依頼するためのオーダーフォームを作成する。
2018年3月14日付のオーダーフォーム(乙第2号証、乙第3号証)、同年10月9日付のオーダーフォーム(乙第4号証、乙第5号証)及び2019年9月28日付のオーダーフォーム(乙第6号証)で、それぞれ合計135足、121足、108足、65足及び125足の「GITAN」の靴を注文したことが分かる。また、「DELIVERY TIME」が出荷希望日で、書類の右下には、実際に出荷されたことを確認した日を示す赤い判も押されており、それぞれ、出荷希望日は2018年8月31日、同年10月1日、2019年2月28日、同年3月31日及び2020年2月15日で、出荷済みであることを2018年9月26日、同年10月1日、2019年3月22日、同年4月2日及び2020年3月10日に確認している。
(6)被請求人からのオーダーを受け取ったPACO社は、価格と出荷予定日を回答し、靴を製造する。
2018年3月14日付のPACO社からの「GITAN」の靴135足分の請求書(乙第7号証)、同日付の同靴121足分の請求書(乙第8号証)、同年10月10日付の同靴108足分の請求書(乙第9号証)、同日付の同靴65足分の請求書(乙第10号証)及び2019年11月11日付の同靴125足分の請求書(乙第11号証)で、これらの靴は、2017年8月31日、2018年10月1日、2019年3月31日及び2020年2月15日に出荷されたことが分かる。なお、PACO社からの代金の請求は、乙第7号証の様に、靴の出荷後であることもあれば、乙第8号証の様に、靴の出荷前である場合もある。
(7)この様に、被請求人は、スペインの靴メーカーに依頼して、西武そごう百貨店に販売する「GITAN」の靴を製造している。
また、乙第12号証は、株式会社そごう・西武が、2019年7月15日に被請求人に発行した買掛金支払明細書である。これは、2019年6月において、株式会社そごう・西武が被請求人から仕入れた商品について、その代金を支払った明細書である。そして、各商品にコードが付与されており、「36913702」がこの時に仕入れた「GITAN」の商品を示すコードである。この「36913702」のうち、「3691」は紳士靴を示すコード、末尾の「02」は商品の特性を示すコードで、その間の「37」が「GITAN」のブランドコードである(乙第13号証)。この買掛金支払明細書から、株式会社そごう・西武は、2019年6月11日と同20日に、被請求人から「GITAN」の靴を仕入れたことが分かる。
(8)なお、西武そごう百貨店では、年に数回バーゲンセールが開催され、被請求人の「GITAN」の靴も、被請求人の指示、許可の下で、値下げ販売されることがある。
ア 乙第14号証は、2017年の10月27日より西武そごうの池袋本店にて始まる「冬の紳士服大バーゲン」にて、「GITAN」の靴の値下げを行うことに関する、被請求人と西武・そごうの担当者とのやりとりのメールである。
イ 乙第15号証は、その際、西武そごう百貨店において、池袋店の紳士靴売場に宛てた値下指示書である。2017年10月23日の日付が確認でき、「商品名」、「ブランド・アイテム」の欄に「GITAN」と記載され、「取引先名」の欄に「オークニジャパン」と記載されている。
ウ 乙第16号証は、2018年3月の大バーゲン時に、被請求人が、「GITAN」の旧モデルの靴の在庫処分を西武そごう百貨店に依頼した際のメール文書である。
エ 2018年10月9日付、同月22日付、同年12月14日付及び2019年4月11日付の値下指示書(乙第17号証ないし乙第20号証)は、池袋店、横浜店、千葉店に宛てたものであり、商品名「GITAN」と被請求人の名称が確認できる。
(9)この様に、被請求人は、「GITAN」というブランドの靴を製造し、西武・そごう百貨店に卸売りしており、被請求人が本件登録商標「GITAN」を「履物」について使用していることは明らかである。

4 当審の判断
(1)被請求人が提出した証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証は、紳士靴及び該包装箱の写真6枚であるところ、そのうちの3枚の写真は、包装箱上に置かれた紳士靴の写真である。そして、別の1枚の写真に写された紳士靴の中底には、GITANの文字が型押しで表示されている(以下、「紳士靴」を「本件使用商品」といい、「GITAN」の文字を「本件使用商標」という。)。なお、当該写真の撮影者、撮影日等の記載はない。
イ 乙第2号証は、被請求人から製造会社であるPACO社に対する、2018年3月14日付発注のオーダーフォーム(ORDER No.:PACO-FURU-006-1803)であるところ、「INSOLE LABEL(靴の中敷表示):GITAN」「BOX LABEL(箱の表示):GITAN」「DELIVERY TIME(納期):31/8/2018」「NOTICE(通知): SOGOU SEIBU“GITAN”」の記載と6種類の紳士靴の画像の表示があり、当該靴を合計135足発注したもので、該商品が2018年9月26日に出荷済みの印が押印されている。(なお、括弧内の訳文は、当合議体で付与した。以下、同じ。)
ウ 乙第3号証は、被請求人から製造会社であるPACO社に対する2018年3月14日付発注のオーダーフォーム(ORDER No.:PACO-FURU-007-1803)であるところ、「INSOLE LABEL(靴の中敷表示):GITAN」「BOX LABEL(箱の表示):GITAN」「DELIVERY TIME(納期):01/10/2018」「NOTICE(通知):SOGOU SEIBU“GITAN”」の記載と6種類の紳士靴の画像の表示があり、当該靴を合計121足発注し、該商品が2018年10月1日に出荷済みの印が押印されている。
エ 乙第4号証は、被請求人から製造会社であるPACO社に対する2018年10月9日付発注のオーダーフォーム(ORDER No.:PACO-FURU-009-1810)であるところ、「INSOLE LABEL(靴の中敷表示):GITAN」「BOX LABEL(箱の表示):GITAN」「DELIVERY TIME(納期):28-Feb-19」「NOTICE(通知):SOGOU SEIBU」の記載と6種類の紳士靴の画像の表示があり、当該靴を合計108足発注し、該商品が2019年3月22日に出荷済みの印が押印されている。
オ 乙第5号証は、被請求人から製造会社であるPACO社に対する2018年10月9日付発注のオーダーフォーム(ORDER No.:PACO-FURU-010-1810)であるところ、「INSOLE LABEL(靴の中敷表示):GITAN」「BOX LABEL(箱の表示):GITAN」「DELIVERY TIME(納期):31-Mar-19」「NOTICE(通知):SOGOU SEIBU」の記載と6種類の紳士靴の画像の表示があり、当該靴を合計65足発注し、該商品が2019年4月2日に出荷済みの印が押印されている。
カ 乙第6号証は、被請求人から製造会社であるPACO社に対する2019年9月28日付発注のオーダーフォーム(ORDER No.:PACO-FURU-006-1909)であるところ、「INSOLE LABEL(靴の中敷表示):GITAN」「BOX LABEL(箱の表示):GITAN」「DELIVERY TIME(納期):15/02/2020」「NOTICE(通知):SOGO SEIBU」の記載と6種類の紳士靴の画像の表示があり、当該靴を合計125足発注し、該商品が2020年3月10日に出荷済みの印が押印されている。
キ 乙第7号証ないし乙第11号証は、PACO社から被請求人に対する請求書であるところ、これらは、上記乙第2号証ないし乙第6号証の被請求人からPACO社に対するそれぞれのオーダーフォームに対応するものであり、その記載内容も一致するものである。
ク 乙第12号証は、株式会社そごう・西武(以下「そごう・西武」という。)から被請求人(オークニジャパン株式会社 経理課御中 M090956)に対する、2019年7月15日付の買掛金支払明細書(2019年6月1日?2019年6月30日締分)であり、また、乙第13号証は、株式会社そごう・西武仕入コード照会に係る書面であるところ、2019年6月11日付で「商品コード36913702」「仕入金額441,600」、また、同年6月20日付で「商品コード36913702」「仕入金額134,400」の支払いの記載があり(乙第12号証)、これらの記載については、上記仕入コード照会中の、「ブランドコード 37 ジタン」及び「代表取引先コード/名称 090956 オークニジャパン(株)」(乙第13号証)と一致する。
(2)上記(1)で認定した事実により、商標法第50条第2項で規定する被請求人が証明すべき事項については、以下のとおり判断できる。
ア 本件使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり「GITAN」の欧文字を表してなるものであるのに対し、本件使用商標は、「GITAN」の欧文字を表してなるものであるところ、本件商標と本件使用商標とは、書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものといえるから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
イ 使用商品について
本件使用商品は、「紳士靴」であるから、本件審判の請求に係る指定商品「履物」の範ちゅうに含まれる商品である。
ウ 使用時期及び使用者について
前記(1)イないしキからすれば、被請求人(商標権者)は、2018年3月14日付けないし2019年9月28日付けのオーダーフォームをもって、本件使用商標を本件使用商品の中敷きに付した商品をPACO社に発注し、これらが納品され、2018年9月26日から2020年3月10日までの間に出荷済みの確認がされたということができ、前記(1)クからすれば、当該本件使用商標を付した本件使用商品について、被請求人は、そごう・西武に対して2019年6月11日及び2019年6月20日に販売(譲渡)したことが認められる。
そして、前記販売日(2019年6月11日及び2019年6月20日)は、いずれも要証期間内であって、本件使用商標の使用者は、本件商標権者である被請求人である。
エ 小括
以上によれば、被請求人は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「紳士靴」に、本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用商標を付して本件使用商品を販売(譲渡)したものと認められる。
被請求人による上記行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間内、すなわち、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その取消請求に係る指定商品に含まれる商品「紳士靴」について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用を、商標権者がしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲(本件商標)



審理終結日 2020-11-30 
結審通知日 2020-12-02 
審決日 2020-12-21 
出願番号 商願昭46-27284 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 庄司 美和
板谷 玲子
登録日 1973-09-27 
登録番号 商標登録第1035227号(T1035227) 
商標の称呼 ギタン、ジタン 
代理人 辻野 彩子 
代理人 山尾 憲人 
代理人 勝見 元博 

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