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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X42 |
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管理番号 | 1374020 |
審判番号 | 取消2018-300973 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2018-12-21 |
確定日 | 2021-05-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5264665号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5264665号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成21年3月24日に登録出願、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供,コンピューターソフトウェアの設計・作成又は保守,コンピュータソフトウェアの提供,家庭用テレビゲームのゲームプログラム・業務用ゲーム機のゲームプログラムの設計・作成又は保守,娯楽用電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,娯楽用電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として、同年8月26日に登録査定、同年9月11日に設定登録されたものであり、その後、令和元年11月26日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。 なお、本件審判の請求の登録は、平成31年1月17日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年1月17日ないし同31年1月16日である(以下「要証期間」という。)。 第2 請求人の主張 請求人は、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピューターソフトウェアの設計・作成又は保守,家庭用テレビゲームのゲームプログラム・業務用ゲーム機のゲームプログラムの設計・作成又は保守,娯楽用電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」(以下「請求に係る指定役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者により使用されている事実は発見することができず、本件商標について、専用使用権者、通常使用権者による使用の事実もないことから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)第1弁駁書(令和元年6月19日付け) ア 乙第1号証ないし乙第3号証について (ア)乙第1号証ないし乙第3号証は、被請求人が顧客から受注した業務委託の契約書の写しであるが、乙第1号証契約書第12条、乙第2号証契約書第10条、乙第3号証契約書第12条に秘密保持(機密保持)条項があり、この条項の中身から察するに、当事者以外に契約内容を公開するものでなく、契約違反にあたる行為とも考えられるため、証拠能力のないものと考える。 仮に、証拠能力が認められるとしても、同契約書は、当事者間の債権債務を記したものであって、実際に商標が付された商品や役務が流通したことを示すものではないため、商標法第2条第3項第8号の取引書類には該当しない。 (イ)同契約書中に、「株式会社ビットスター」の文字が記載されているが、これは被請求人が契約当事者であることを記載した商号の表示にすぎず、請求に係る役務に係る登録商標の使用とはいえない。 イ 乙第4号証及び乙第5号証について (ア)乙第4号証及び乙第5号証は、被請求人の顧客が発行した成果物検収書の写しであるが、同検収書中に、「株式会社ビットスター」が記載されているが、これは被請求人名称の表示として記載されているものであり、請求役務に係る指定役務の登録商標の使用とはいえない。 (イ)同検収書は、納品物の検収結果を通知する内容だが、納品物の内容は不明である。 (ウ)乙第4号証は「5月度運営開発」、乙第5号証は「■作成業務委託」(「■」は、マスキングされている部分を表す。以下同じ。)と記載されているが、この記載から具体的な商品役務を特定することができない。 ウ 乙第6号証について 乙第6号証は、被請求人の公式ウェブサイトのホームページ及び企業情報のプリント画面と説明されているが、乙第6号証は、プリントアウトの日付がなく、いつの時点でのウェブサイトの情報であるか不明であり、日付が特定されていないことから、要証期間内の証拠として認められない。当該ウェブサイトの画面には、更新情報として<2019/1/10更新>の記載があるが、データの更新はプログラム上で任意に選ぶことが可能であり、この日付がこのサイトに客観的に存在していたという証拠とはならない。 仮に、乙第6号証が更新日である2019年1月10日に存在していたとしても、本件の場合、請求人は被請求人に対し、2018年10月9日に被請求人代理人を通じメールにより本件商標権の譲渡及び再譲渡を依頼する文書を送付している(甲2、甲3)ことから、2018年10月9日時点で本件審判の請求される可能性があったことを知っていたといえる。 (2)第2弁駁書(令和2年12月14日付け) ア 乙第1号証ないし乙第6号証について 被請求人は、要証期間内に存在していたことを示す証拠として、デジタルアーカイブであるWaybackMachineに保存されていた被請求人の公式ウェブサイトのホームページ及び企業情報のプリント画面を提出している(乙6の2、乙3)が、乙第6号証の2及び乙第6号証の3に記載されている内容と乙第6号証に記載されている内容は一致していないから、乙第6号証は要証期間内に存在した証拠として認められるべきではない。 イ 乙第6号証の2及び乙第6号証の3について (ア)乙第6号証の2及び乙第6号証の3は、要証期間内に存在していた被請求人の公式ウェブサイトのホームページ及び企業情報のプリント画面と説明され、乙第6号証の2には、「ビットスターは東京都新宿区でゲーム開発をしている会社です。スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」と記載されているが、当該文章からは、被請求人が自社のためのゲームの開発を行っているのか、第三者から依頼を受け、ゲームの受託開発を行っているのか不明である。乙第6号証の2にある4つの画面の左の「SELECTBOAT」を紹介している画面にはBITSTERの文字が確認できるところ、自分でゲームを作成して提供しているように見ることができ、これは、第41類の「ゲームの提供」あるいは第9類の「ゲームソフトウェア」であって、本件取消審判の対象となる役務ではない。 商標法における「役務」とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものと解されるから、請求に係る指定役務は、他人の委託に基づいて行うサービスを指すものである。 (イ)乙第6号証の3には、事業内容として「ゲームコンテンツ企画・開発」と記載されているが、乙第6号証の3は、被請求人による自社の事業内容を掲載したものであり、他人のために行う労務又は便益としての広告媒体とは認められない。 仮に認められたとしても、例えば、ゲームソフトの自社開発を行う株式会社コーエーテクモゲームスの事業概要をみると、「オンラインゲーム・モバイルコンテンツの企画・開発・運営」と乙第6号証の3と同趣旨の内容が記載されている(甲4の1)。また、株式会社セガは、主要事業として「家庭用ゲーム機、PC、スマートデバイスに向けたゲーム、アーケードゲーム、プライズやデジタルサービスの企画・開発・販売・運営」と記載し(甲4の2)、ゲームアプリの開発を行う株式会社Cygamesは、事業内容として、「ゲームの企画・開発・運営アニメーション製作投資支援」と記載している(甲4の3)。 これらの会社は、自社の商品として、ゲームの開発を行っている会社であり、これらの会社と同様の業務内容を記載している被請求人は、自社の商品として、ゲームの開発を行っているとみるのが適当である。 また、「ゲームコンテンツ企画・開発」では、ゲームのストーリーの企画を行っているとも理解でき、ゲームプログラムの設計を行っていると直ちに判断することはできないから、乙第6号証の2及び乙第6号証の3からは、被請求人が、登録商標を請求に係る指定役務について使用しているとはいえない。 ウ 乙第7号証について 乙第7号証も、要証期間内に存在していた被請求人の公式ウェブサイトのホームページのプリント画面と説明されており、「株式会社ビットスターは、アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発をしている会社です。開発受託を承っております。ゲーム以外のコンテンツ開発や共同開発のご提案なども大歓迎です。」と記載されているが、「開発受託を承っております。」のみでは、被請求人が何についての開発受託を承っているのか不明であり、「ゲーム以外のコンテンツ開発や共同開発のご提案なども大歓迎です。」との記載から、被請求人はゲーム以外のコンテンツの開発も行っている。 そもそも、「コンテンツ」とは、「放送やインターネットで提供されるテキスト・音声・動画などの情報の内容」を意味するから、ゲーム以外のコンテンツ開発としては、テキスト、画像、音声、動画などの開発が考えられるが、これらの受託開発は、「デザインの考案(42P01)、コンピュータグラフィックデザインの考案(42P01)、電子出版物の制作(41D01)」等に該当する役務であり、請求に係る指定役務には該当しないから、乙第7号証からは、被請求人が、「アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発」についての開発受託を行っていると理解することはできず、請求に係る指定役務についての使用を証明するには不十分である。 したがって、乙第7号証からは、被請求人が、登録商標を請求に係る指定役務について使用しているとは証明できない。 エ 乙第8号証について 乙第8号証は、被請求人が、「BITSTER.JP」に係るドメインを保有していることを示しているが、ドメインの取得と登録商標の使用には関連性はないばかりか、乙第8号証からは、具体的な商品役務を特定することができないから、乙第8号証は本件の使用証拠として関連がなく採用されるものではない。 オ 乙第9号証及び乙第10号証について 乙第9号証及び乙第10号証は、被請求人の公式ウェブサイトに掲載されたFacebookアカウントの記事であり、被請求人は、クライアントから開発を受託し成果物を提供した業務の内容であると説明されており、乙第9号証の記事は、2018年10月5日及び2018年10月7日付で、乙第10号証の記事は、2019年1月18日付であるが、Facebookアカウントの記事は、投稿日を変更することや投稿日付を変えずに記事の修正が可能である(甲5)。 また、乙第9号証及び乙第10号証では、登録商標がアカウントのプロフィール画像として使用されているが、アカウントのプロフィール画像はいつでも変更が可能であり、Facebookアカウントの記事は、常時修正が可能であることから、証拠として信ぴょう性を欠くものであり、乙第9号証及び乙第10号証は、使用証拠として採用されてはならないものである。 3 まとめ 被請求人が提出した証拠によっては、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を、請求に係る指定役務のいずれの指定役務にも使用したとはいえないから、本件商標の使用の証明にはならない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書及び弁駁に対する回答書において、その理由を要旨次以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 (1)第1答弁書(平成31年4月5日付け) 被請求人は、本件商標を、その指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,コンピューターソフトウェアの設計・作成又は保守,家庭用テレビゲームのゲームプログラム・業務用ゲーム機のゲームプログラムの設計・作成又は保守,娯楽用電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」について創業以来継続して日本国内にて使用している。 被請求人の主な業務であるゲームソフトウェアの開発は、家庭用ゲーム機や業務用ゲーム機のソフトウェアだけではなく、タブレット型コンピューター端末用などのコンピューター機器向けのゲームアプリも多いが、ゲームソフトウェアやゲームアプリはコンピューターソフトウェアである。 (2)弁駁に対する意見(令和2年9月8日付け) ア 要証期間における指定役務についての使用 被請求人が行う業務の性格上、具体的な役務の内容はクライアントとの機密保持契約によって公開できないことが基本であるが、例外もあり、クライアントから情報公開の許可を経て一般に向け公開することもある。 要証期間内に行った役務のうち、被請求人は、株式会社セガ・インタラクティブ(現株式会社セガ)から公開の許可を得て2018年10月5日にインターネット上にて一般に公開しているところ、役務内容は「業務用ゲーム機のゲームプログラムの設計・作成又は保守」及び「コンピューターソフトウェアの提供」と合致する(乙9)。 また、被請求人は株式会社スクウェア・エニックスから公開の許可を得て2019年1月18日にインターネット上にて一般に公開しているところ、役務内容は「家庭用テレビゲーム機のゲームプログラムの設計・作成又は保守」及び「コンピューターソフトウェアの提供」と合致し、上記クライアントに提供している成果物はプログラム及びビジュアルデータなどから構成されるソフトウェアである(乙10)。 イ 要証期間における自社ウェブサイトでの商標の使用 デジタルアーカイブ(Wayback Machine)に保存されていたページ及び要証期間内の複数のアーカイブにより、被請求人のウェブサイトは以前より存在していることが当該アーカイブの日付から証明できるため、請求人の「駆け込み使用に該当する」(甲2、甲3)旨の主張は誤りである。 また、2017年9月17日時点のアーカイブ(乙7)で「アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発をしている会社です。開発受託を承っております。」との記述があり、本件商標のもと指定役務の業務を行っていることを明記している。 (3)第2答弁書(令和3年1月28日差出) ア 登録商標の使用 商標法第50条第2項に規定する商標の使用というための要件は、要証期間内での使用であること、日本国内における使用であること、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかの使用であること、登録商標の使用であること、商標法第2条第3項各号のいずれかの使用であること、である。 イ 本件使用行為 (ア)本件使用行為1 被請求人は、平成30年4月19日、自社のホームページにおいて、「Bitster」(以下「使用商標1」という。)を付して「ビットスターは東京都新宿区でゲーム開発をしている会社です。スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」と掲載していた(乙6の2)。 (イ)本件使用行為2 被請求人は、平成29年9月17日、自社のホームページにおいて、使用商標1を付して「株式会社ビットスターは、アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発をしている会社です。開発受託を承っております。」と掲載していた(乙7)。 (ウ)本件使用行為3 被請求人は、平成30年10月5日、自社のFacebookアカウントにおいて、使用商標1を付して自社が作成したゲームプログラム等を紹介した(乙9)。 (エ)本件使用行為4 被請求人は、平成30年8月30日、自社のホームページにおいて、「Bitster」(以下「使用商標2」という。)を付して「ビットスターは受託開発だけではなく、オリジナルタイトルや試作ソフトの開発もしています。その一部をご紹介!」と掲載していた(乙11)。 ウ 商標法第50条第2項にいう商標の使用に該当すること (ア)要証期間内での使用、日本国内における使用及び商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかの使用であることについて 本件使用行為1ないし本件使用行為4は(以下、本件使用行為1ないし本件使用行為4をあわせて「本件使用行為」という。)は、いずれも要証期間内に行われているから、要証期間の要件を満たす。 (イ)請求に係る指定役務のいずれかについての使用であること 本件使用行為は、ゲームの開発等を内容とするものであり、請求に係る指定役務の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」等についての使用である。 (ウ)登録商標の使用であること 本件使用行為は、ウェブサイトにおいてローマ字の「Bitster」を付して行われており、これは本件商標と社会通念上同一といえるから、登録商標の使用といえる。 (エ)商標法第2条第3項各号のいずれかの使用であること 本件使用行為は、同条項8号に該当する。 エ 商標法第2条第3項第8号に該当すること (ア)本件使用行為1について 「幅広く対応しています。」という文言から、自社が扱っている役務の内容を紹介し、ゲーム開発等の依頼を募集するもので、同号にいう「広告」にあたる。また、その広告は、ゲーム開発という取消請求役務に関するものであるから、「役務」に関する広告である。そして、当該役務に関する広告を内容とする情報に使用商標1を付して被請求人のホームページ上に掲載しているから、役務に関する広告を「内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供」したといえ、本件使用行為1は、同号に該当する。 (イ)本件使用行為2について 本件使用行為2は、請求に係る指定役務を含む被請求人が扱っている役務を紹介し、その開発受託を募集するものであり、同号にいう「役務に関する広告」にあたり、本件使用行為2は、本件使用行為1と同様に同号に該当する。 (ウ)本件使用行為3について 被請求人は、自社のFacebookアカウントにおいて、使用商標1を付して、自社が作成したゲームプログラム等を紹介した。株式会社は、営利を目的とする法人であるところ、株式会社がFacebookやTwitterに代表されるSNSを利用する行為は、営利を目的として行われているといえ、そのような行為は、単に役務内容を紹介するにとどまらず、自社の成果を紹介し顧客に関心を抱かせ仕事の依頼を受けるという広告としての機能を果たしているといえる。 そうすると、Facebookにおける本件投稿は、自社が行ったゲーム開発という役務及び成果物を紹介し、当該役務に関し顧客に関心を抱かせ仕事の依頼を受けるためのものであるから、「役務に関する広告」といえ、本件使用行為3は、本件使用行為1と同様に同号に該当する。 (エ)本件使用行為4について 本件使用行為4は、自社が行ったゲーム開発という役務及び成果物を紹介し、当該役務に関し顧客に関心を抱かせ仕事の依頼を受けるためのものであるから、「役務に関する広告」といえ、本件使用行為4は、本件使用行為1と同様に同号に該当する。 (オ)小括 本件使用行為は、いずれも商標法第2条第3項第8号に該当する。 2 まとめ 被請求人は、要証期間内の本件商標の使用を証明しており、本件審判の請求は成り立たない。 第4 当審の判断 1 認定事実 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)乙第1号証は、「業務委託契約書」の写しとするものであり、第1頁に、「株式会社ゲームアディクト(以下『甲』という)と株式会社ビットスター(以下『乙』という)は、甲から乙への業務の委託に関し、以下のとおり合意する。」、「第1条(業務委託)甲は乙に対し、iOS又はAndroidを搭載した携帯端末向けゲームアプリ『■(仮称)』(審決注:■はマスキングされていることを示す。以下、同じ。)(以下「本件ゲーム」という)の■版開発業務(以下『本件業務』という)を委託するものとし、乙はこれを受託する。」の記載があり、第4頁の下段に「2017年9月1日」の日付とともに、「甲」として「株式会社ゲームアディクト」の住所、名称及び代表取締役社長の氏名の記名押印、「乙」として「株式会社ビットスター」の住所、名称及び代表取締役の氏名の記名押印がある。 (2)乙第2号証は、「業務委託契約書」の写しとするものであり、第1頁に、「株式会社スクウェア・エニックス(以下『甲』という)と株式会社ビットスター(以下『乙』という)とは、甲の指定するプラットフォーム用ゲームソフト■(仮称。以下『本ソフト』という)に関して、以下のとおり契約(以下『本契約』という)を締結する。」、「第1条(業務委託) 甲は乙に対して、本契約に定める条件にて、本ソフトの■リソース制作業務(以下『本業務』という)を請負の形態にて委託し、乙はこれを受託する。」の記載があり、第5頁の下段に、「平成29年4月1日」の日付とともに、「甲」として「株式会社スクウェア・エニックス」の住所、名称及び代表取締役社長の氏名の記名押印と「乙」として「株式会社ビットスター」の住所、名称及び代表取締役の氏名の記名押印がある。 (3)乙第3号証は 、「業務委託契約書」の写しとするものであり、第1頁に、「株式会社セガ・インタラクティブ(以下『甲』という)と株式会社ビットスター(以下『乙』という)とは、別添1に記載の業務(以下『本件業務』という)を、甲が乙に委託するにあたり、以下の通り契約(以下『本契約』という)を締結する。」、「<業務委託事項> 第1条(委託) 1.甲は乙に対し本件業務を委託し、乙はこれを受託し誠実に履行するものとする。2.本件業務履行の成果として乙が甲に提出すべきもの(以下『本件成果物』という)は、別添2に記載の通りとする。4.乙は、別添3に定めるスケジュールに従って、本件成果物を別添4に記載する場所に提出するものとする。」の記載があり、第2頁に、「第5条(検収) 1.甲は、第1条第4項の規定により乙から本件成果物の提出を受けたときは、甲の独自の基準に基づき、別添5に記載する期間内に当該本件成果物を検査及び評価し、甲の満足のいくものと認められたときは、合格の旨を文書により乙に通知するものとする。」の記載があり、第5頁の下段に、「2018年3月28日」の日付とともに、「甲」として「株式会社セガ・インタラクティブ」の住所、名称及び代表取締役社長の氏名の記名押印と「乙」として「株式会社ビットスター」の住所、名称及び代表取締役の氏名の記名押印がある。 また、第6頁に、「別添」として、「1.本件業務の内容(前文)甲の開発するゲーム機『■』(以下『本件ゲーム機』という)に収録する■データの作成業務で以下に掲げるもの、及びこれに付随する一切の業務・・・■データ作成・・・UnrealEngine4■データ作成・・・2.本件成果物(第1条第2項)・本件成果物2(審決注:囲み文字の丸2、以下同じ。)UE4■データ」(レイアウトが比較できるデータ)2コース」、・・・3.納期(第1条第4項)・・・・本件成果物2:2018年4月13日・・・4.納品(第1条第4項)東京都大田区羽田1-2-12 株式会社セガ・インタラクティブ 第一研究開発本部・・・5.検査及び評価(検収)に要する期間(第5条第1項)5 営業日以内」の記載がある。 (4)乙第4号証は、株式会社スクウェア・エニックス作成の「成果物検収書」の写しとするものであり、「2017年5月31日」、「株式会社 ビットスター 御中」、「株式会社スクウェア・エニックス 東京都新宿区新宿6-27-30」、「納品日 2017年5月30日の成果物を検収し、合格とした事を、本書を以って通知致します。」、「検収日:2017年5月31日」の記載がある。 (5)乙第5号証は、株式会社セガ・インタラクティブ作成の「検収報告書」の写しとするものであり、「発行日:2018/04/17」、「株式会社 ビットスター 御中」、「東京都大田区羽田1丁目2番12号 株式会社セガ・インタラクティブ」の名称及び押印、「下記納品物を当社規定の仕様基準に基づき検収した結果、仕様を満たしているものと認めます。」の記載、件名の欄に「■作成業務委託 成果物2」、納品日及び検収日の欄に「2018/04/13」、補足事項の欄に「本件成果物2について、問題なく納品、内容も問題ありませんでした。検収合格といたします。本件成果物2UE4ツール■データ(レイアウトが比較出来るデータ)2コース」の記載がある。 (6)乙第6号証は、被請求人の公式ウェブサイトの写しとするものであり、「事業内容」として、「各種ソフトウェア設計・開発」の記載があり、左上には、使用商標1の表示がある。 (7)乙第6号証の2ないし乙第7号証は、被請求人の公式ウェブサイトのアーカイブデータとするものであり、乙第6号証の2の右上に、「2018年4月19日」の日付の表示があり、「ビットスターは東京都新宿区でゲーム開発をしている会社です。スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」の記載がある。 また、乙第6号証の3の右上に、「2018年8月30日」の日付の表示があり、事業内容として「ゲームコンテンツ企画・開発」、「CGデータ・アセット等の制作」の記載がある。 さらに、乙第7号証の右上に「2017年9月17日」の日付の表示があり、中央に「株式会社ビットスターは、アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発をしている会社です。開発受託を承っております。」の記載がある。 そして、乙第6号証の2ないし乙第7号証の左上には、使用商標1の表示がある。 (8)乙第9号証及び乙第10号証は、被請求人のFacebookのアカウントの記事とするものであり、乙第9号証の第1頁の中央に、投稿として、「株式会社ビットスター」、「2018年10月5日 セガ様のアーケード・レースゲーム『SWDC』に登場するサーキットの一部制作を担当させていただきました!」、「ビギナーの方が走りやすく、エキスパートの方は熱くレースが出来る高速コースをイメージしてレイアウトしました。」の記載があり、当該アーケード・レースゲームとおぼしき写真が掲載されている。また、同頁に「Our Story」として「家庭用・業務用ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯電話向けコンテンツなどの企画およびソフトウェア開発、コンサルティング」の記載がある。 さらに、乙第10号証の第1頁の中央に、投稿として、「株式会社ビットスター」、「2019年1月18日 スクエア・エニックス様のオンラインゲーム『ドラゴンクエストXバージョン3および4』のデータ制作の一部を担当させていただきました。」の記載がある。 そして、乙第9号証の第1頁及び乙第10号証の第1頁の左上には、使用商標1の表示がある。 (9)乙第11号証は、被請求人の公式ウェブサイトのギャラリー画面とするものであり、乙第11号証の右上に、「2018年8月30日」の日付の表示があり、当該ウェブサイトの中央に「ビットスターは受託開発だけではなく、オリジナルタイトルや試作ソフトの開発もしています。その一部をご紹介!」の記載、「ハードウェアメーカーとタッグを組んで開発した海外マーケット向け大型体感ゲーム。」の記載があり、当該ゲームとおぼしき写真が掲載されている。また、「ビットスターに在籍しているスタッフはこれまでに数多くのレースゲームタイトルを開発しています。基礎研究を重ね、次世代のレースゲームタイトル開発に備えています。(Unreal Engine使用)」の記載があり、乙第11号証の第1頁の左上には、使用商標2の表示がある。 2 判断 上記1の認定事実に基づき、以下判断する。 (1)本件商標と使用商標の同一性について ア 本件商標と使用商標1及び使用商標2の同一性について 被請求人(商標権者)のウェブサイトとする乙第6号証及び当該ウェブサイトのアーカイブデータとする乙第6号証の2及び乙第7号証、被請求人(商標権者)のFacebookのアカウントの記事とする乙第9号証及び乙第10号証には、本件商標とは、色彩のみが相違する使用商標1の表示がある。 また、被請求人(商標権者)の公式ウェブサイトのギャラリー画面とする乙第11号証には、本件商標と同一の商標である使用商標2の表示がある。 したがって、使用商標1は、色彩を本件商標と同一にするものとすれば本件商標と同一の商標であると認められ、使用商標2は、本件商標と同一の商標であると認められるから、使用商標1及び使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標というべきである。 (2)使用役務について 使用商標1又は使用商標2が表示された被請求人(商標権者)のウェブサイトが要証期間である、2017年(平成29年)9月17日、2018年(平成30年)4月19日、同年8月30日及び同年10月5日に存在し、当該ウェブサイトにおいて、それぞれ「ビットスター・・・スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」(乙6の2)、「株式会社ビットスターは、アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発をしている会社です。開発受託を承っております。」(乙7)の記載、被請求人の業務の紹介として「家庭用・業務用ゲーム機、パーソナルコンピュータ、携帯電話向けコンテンツなどの企画およびソフトウェア開発、コンサルティング」(乙9)の記載及び「ビットスターは受託開発だけではなく、オリジナルタイトルや試作ソフトの開発もしています。その一部をご紹介!」(乙11)の記載があり、当該記載内容から、被請求人は、アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどのソフトウェア開発に関する業務を行っている企業であり、ゲーム開発等の受託の募集や自社の開発したゲーム用プログラムの成果を紹介することにより、顧客である他人に対して広告を行っていることが推認できるものであり、当該「アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどのソフトウェア開発」の役務は、請求に係る指定役務の範ちゅうの役務と判断できるものである。 また、被請求人(商標権者)は、要証期間である2018年(平成30年)3月28日に株式会社セガ・インタラクティブとの間で業務用ゲーム機に収録するデータの作成に係る業務において、「UE4■データ」(レイアウトが比較出来るデータ)2コース」を成果物とする業務委託契約をし(乙3)、同年4月13日に、当該業務委託契約の成果物と同じ名称の「本件成果物2」という成果物が被請求人(商標権者)により株式会社セガ・インタラクティブに納品され、同日付の「本件成果物2UE4ツール■データ(レイアウトが比較出来るデータ)2コース」という成果物の検収報告が、株式会社セガ・インタラクティブから被請求人(商標権者)にされていること(乙5)、当該業務委託契約の契約日、成果物の納品日、検収日及び成果物の紹介記事のそれぞれの日付の点においても不自然な点がないことからすれば、被請求人(商標権者)は、要証期間に、業務用ゲーム機用のデータの作成の業務を実際に行っていたことがうかがえるものであり、当該「業務用ゲーム機用のデータの作成」は、請求に係る指定役務に含まれる役務と推認できるものである。 さらに、被請求人(商標権者)は、要証期間である2017年(平成29年)4月1日、同年9月1日に、他の顧客とも携帯端末向けゲームアプリケーションの開発業務(乙1)やプラットフォーム用ゲームソフトウェアの制作業務」(乙2)に係る業務委託契約をしていたことから、被請求人(商標権者)は、要証期間に、携帯端末向けゲームアプリケーションの開発、プラットフォーム用ゲームソフトウェアの制作の業務を実際に行っていたことが推認できるものであり、「携帯端末向けゲームアプリケーションの開発、プラットフォーム用ゲームソフトウェアの制作」は、請求に係る指定役務に含まれる役務と推認できるものである。 したがって、被請求人(商標権者)は、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されたウェブサイトにおいて、請求に係る指定役務に含まれる「アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどのソフトウェア開発」に関する情報を内容とする広告を行っていたものと推認して差し支えない。 (3)使用者及び使用時期について 被請求人(商標権者)は、要証期間に存在していた、被請求人(商標権者)のウェブサイト(乙6の2、乙7、乙9及び乙11)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことが推認できることから、商標の使用者は、被請求人(商標権者)であるといえる。 そうすると、被請求人(商標権者)は、要証期間に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたものといえる。 (4)小括 上記(1)ないし(3)によれば、本件商標の商標権者は、要証期間に、「アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどのソフトウェア開発」に関する情報を内容とする広告が記載されたウェブサイトに、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたということができ、当該使用行為は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 3 請求人の主張について (1)請求人は、被請求人に対し、2018年10月9日に被請求人代理人を通じメールにより本件商標権の譲渡及び再譲渡を依頼する文書を送付している(甲2、甲3)ことから、被請求人は、2018年10月9日時点で本件審判の請求される可能性があったことを知っていたといえ、その後の使用は、駆け込み使用に該当し、乙第6号証は、使用証拠として認められない旨主張している。 また、請求人は、乙第6号証の2及び乙6号証の3の記載内容と乙第6号証の記載内容が一致していないため、乙第6号証が要証期間内に存在した証拠として認められるべきではない旨主張している。 しかしながら、商標法第50条3項は「その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したとき」と規定しているのであって、商標の使用が審判請求をされることを知った後であることを請求人が証明する必要があるところ、請求人は、被請求人に対し、本件商標権の譲渡を依頼する文書を2018年10月9日付けで送った(甲2、甲3)ことは確認できるものの、当該文書において請求人が審判請求を行う意思表示をした事実はないことからすれば、本件商標の使用が審判の請求がされることを知った後であるということはできず、請求人はその点を証明したとはいえない。 そして、乙第6号証のみによって、本件商標の使用の事実を立証する場合であればともかく、本件においては、他に本件商標の使用の事実を推認できる証拠が提出されているものであるから、提出された証拠を総合すれば、証拠の記載内容の一部が一致していないとしても、本件商標の使用の判断に影響を与えるものではない。 (2)請求人は、商標法における「役務」とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものと解されるから、請求に係る指定役務は、他人の委託に基づいて行うサービスを指すものであるところ、乙第6号証の2、乙第6号証の3及び乙第7号証の記載内容からは、請求に係る指定役務について使用しているとはいえない旨主張している。 しかしながら、乙第6号証の2及び乙第7号証に、それぞれ「スマホ用アプリから大型のアーケードゲームまで幅広く対応しています。」、「アーケードゲームや家庭用ゲームソフト、スマホ用アプリなどの企画および開発をしている会社です。開発受託を承っております。」の記載があり、本件商標の請求に係る指定役務に属する役務を提供していることが推認できる説明がされているところ、上記役務の提供を受ける需要者は、アーケードゲームや家庭用ゲームソフトを一般の消費者に提供する事業者といえるから、これらの記載をもって、請求に係る指定役務に関連する役務の広告であると理解するとみるのが相当である。 また、被請求人は、上記2(2)のとおり、業務委託契約に基づき、業務用ゲーム機に収録するデータの作成に係る業務を受託し(乙3)、当該業務委託契約に基づくものと推認できる成果物が被請求人により顧客に納品され、当該成果物の検収報告が、顧客から被請求人にされ(乙5)、成果物に関する記事が紹介されている(乙9)ところ、上記の一連の取引の流れから、アーケードゲーム等のアプリケーションの開発受託を提供する被請求人が、他人の委託に基づき、業務用ゲーム機に収録するプログラムデータの開発に係る役務を行っていたことが把握できることから、被請求人は、請求に係る指定役務についての取引を実際に行っていたと推認できることも併せ考慮すれば、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を請求に係る指定役務について使用しているといえる。 (3)請求人は、乙第9号証について、Facebookアカウントの記事は、投稿日を変更することや投稿日付を変えずに記事の修正が可能であり(甲5)、アカウントのプロフィール画像もいつでも変更が可能であるから、証拠として信ぴょう性を欠くものであり、証拠能力がない旨主張している。 しかしながら、乙第9号証をみる限り、改ざんの疑義を抱くことができないものであり、乙第9号証の記載内容、投稿日等について、改ざんされたものであると認めるに足りる証拠の提出もないことから、乙第9号証が証拠能力がないとはいえないものである。 (4)以上のとおり、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。 4 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により登録を取り消すことができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標:色彩については、原本を参照。) 別掲2(使用商標1) 別掲3(使用商標2:色彩については、乙11を参照。) |
審理終結日 | 2021-03-04 |
結審通知日 | 2021-03-09 |
審決日 | 2021-03-25 |
出願番号 | 商願2009-21079(T2009-21079) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(X42)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
齋藤 貴博 小田 昌子 |
登録日 | 2009-09-11 |
登録番号 | 商標登録第5264665号(T5264665) |
商標の称呼 | ビットスター、ビッツター |
代理人 | 田中 康平 |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |
代理人 | 平林 尚人 |
代理人 | 谷口 琢哉 |