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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1373988 
審判番号 取消2019-300812 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-10-23 
確定日 2021-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4558675号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4558675号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4558675商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成12年12月8日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体,インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター,インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・CD-ROMその他の記録媒体」を指定商品として、同14年4月12日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年11月7日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年(2016年)11月7日ないし令和元年(2019年)11月6日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
1 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 本件商標が付された商品が使用された事実
(1)本件商標に係る商品の取引の概略等
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)であるチエル株式会社(以下「チエル社」という。)は、教育用ソフトウェア、ネットワーク及びシステムの企画・研究開発を生業としており(乙3)、学校教育に特化し、パソコンやタブレット端末を活用した教務支援システム、デジタル教材などを企画・開発している(乙4の1・2)。
本件商標に係る商品は、安全な学校内のLAN環境を構築するためのセキュリティアプライアンスサーバーである(以下「本件商品」という場合がある。)(乙5の1)。
アプライアンスサーバーは、「提供する機能をあらかじめ特定用途に限定・特化したサーバー製品の総称」であり(乙6)、本件商品は、Webフィルタリングソフトやウイルス対策ソフトなどのセキュリティ対策ソフトがプリインストールされたセキュリティ機能に特化したセキュリティアプライアンスサーバーである(乙5の1)。
本件商品は、エンドユーザーである教育委員会や小学校等から各販売代理店が注文を受付けた後に、各販売代理店が注文書(乙7の1、乙8の1、乙9の1)でチエル社に対し本件商品を注文し、各販売代理店に対して、チエル社が配送業者として使用している佐川急便の久喜営業所から本件商品が出荷され(乙7の2、乙8の2、乙9の2)、本件商品の出荷後に各販売代理店に対して請求書(乙7の3、乙8の3、乙9の3)が発行される。そして、エンドユーザーである教育委員会や小学校等に対しては販売代理店から本件商品が販売され、納品される。
乙第10号証は、「eNetStar」シリーズ共通の保証書である。
本件商品には、販売代理店への商品の出荷時に、チエル社からエンドユーザーである教育委員会や小学校等に対してこの保証書が発行され、センドバック保守が、購入日から1年は無償で提供される。センドバック保守は、購入時の契約で保守期間を追加することができ、保守期間を追加する場合は、センドバック保守証書が発行され(乙7の4、乙8の4、乙9の4)、保証書と一緒にエンドユーザーに送付される。
(2)本件商標が付された商品の使用の事実の立証
ア 商品に商標が付された事実
乙第11号証の1は、本件商標の使用に係る商品であるセキュリティアプライアンスサーバーの写真である。上段の写真はシリアルナンバーがある幅面を手前にして撮影をした本件商品の写真であり、下段の写真は電源ボタンがある幅面を手前にして撮影をした本件商品の写真である。本件商品(セキュリティアプライアンスサーバー)には、コンパクト型とタワー型の2種類があり(乙5の1)、乙第11号証の1の商品写真はコンパクト型のものである。当該商品の電源ボタンのある幅面には、USBケーブルの接続端子があることからも当該商品が電子応用機械器具やインターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューターであることが推察される。本件商品の天面の左下の隅には、別掲2のとおりの商標(以下「使用商標1」という場合がある。)が付されている。使用商標1は、商標の左上の部分に、黒く縁どられた円の内部が青塗りされ、その内部に白抜き文字で「eNetStar」の語頭の文字である欧文字の小文字「e」を書した円図形と、その右下の部分に配置された黄色の星型図形と、その星型図形の上に、濃い青色の文字の周りを白く縁どられた「eNetStar」の欧文字が書されているという構成からなる結合商標であり、本件商標と同一の商標である。上段写真の幅面の右上部分には、本体のシリアルナンバー「B8w1643838001」の番号が記されている(乙11の1の上段写真)。このうち、「B8w」は、本件商品の型式で、シリアルナンバーの末尾の「001」については固定番号で、個体の識別とは関係ない部分に相当する。つまり、青枠で囲まれている「1643838」の部分が個体を特定するのに必要なシリアルナンバーとなる。
乙第11号証の2は、本件商品の製造を委託しているテックウインド株式会社(以下「テックウインド社」という。)からチエル社宛に発行された仕入伝票である。仕入伝票には、発注No.「CH161130TW」に関する注文が11行にわたって行われているが、この記載されている「CH161130TW」というのは、本件商品のサーバーに使用されている各部品に関するものであり、備考欄には、乙第11号証の1の上段に記載されている「1643838」と同じ数字を含む「0001643838」が記入されている(乙11の2)。この仕入伝票の2頁目の備考欄の「0001643838」のうち、「000」の部分については、伝票の印字形式により桁数が足りない部分には0が表示されることによるものであり、この仕入伝票は、乙第11号証の1の商品がチエル社からテックウインド社に発注された際の仕入伝票であることがわかる。そしてこの仕入伝票の出荷日は「16 12 20」となっていることから、乙第11号証の1の商品が2016年12月20日出荷時の本件商品には、使用商標1が付されていることがわかる(商標法第2条第3項第1号)。
そして、乙第11号証の3の請求書は、テックウインド社からチエル社宛に発行された請求書であり、請求書の客先POの最下段には、「CH161130TW」の表示があることから、本件商品がテックウインド社によって製造され、製造時に使用商標1が付され、チエル社に販売されたことが確認できる(商標法第2条第3項第1号)。
イ 商品の譲渡等の事実
(ア)平成30年(2018年)12月18日付の注文によりチエル社から販売代理店であるNECネッツエスアイ株式会社(以下「NECネッツエスアイ社」という。)に商品が譲渡等された事実について
a 本件商品は、平成30年(2018年)12月18日付でチエル社の販売代理店であるNECネッツエスアイ社からチエル社宛に送付された注文書により、エンドユーザーであるK教育委員会に納品するための本件商品の注文を受け付けている(乙7の1)。そして、上記注文書(乙7の1)には、行番号001と002に「eNetStar」の文字の記載があり、行番号001及び002の商品が同月27日付で納品される旨の記載があり、注文書に記載されたチエル社の住所は、履歴事項全部証明書に記載の本件商標権者の住所と一致するから本件商標権者宛になされた注文書であることが明確である。また、行番号001には、「eNetStar コンパクト型」との記載があることから、乙第11号証の1と同じ「eNetStar コンパクト型」の商品が注文されていることがわかる。
b 乙第7号証の2の平成30年(2018年)12月25日付の佐川急便の久喜営業所の出荷明細書によると、佐川急便の配送によりチエル社からNECネッツエスアイ社の指定納入先である株式会社Aに同月27日午前中に納入されている(乙7の2)。
c 乙第7号証の3の平成30年(2018年)12月25日付の請求書は、チエル社から販売代理店であるNECネッツエスアイ社に対して発行された請求書であり、同月18日付の注文書(乙7の1)の受入場所の行に記載されている発注番号と上記請求書(乙7の3)の備考欄に記載されている「貴社注文番号」に記載されている番号は、「P1-18-4661955」で一致していることから、同月18日付の注文に対し発行された請求書であることがわかる。また、当該請求書の製品名の欄の1行目と2行目には、明朝体と似た「eNetStar」の文字(以下「使用商標2」という場合がある。)があり、請求書に記載されたチエル社の住所は、履歴事項全部証明書に記載の本件商標権者の住所と一致するから本件商標権者により発行されたものであることが明確である(乙3、乙7の3)。
d 乙第7号証の4の「センドバック保守証書」は、本件商品が購入された際にチエル社からエンドユーザーに対して発行される証書である。本件商品は販売代理店に納入後にエンドユーザーに納品されるため、「センドバック保守証書」については、エンドユーザーの便宜のため、出荷した月の月末を起算点とする取り決めとなっている。このことは、乙第8号証の4及び乙第9号証の4の「センドバック保守証書」においても同様である。当該保守証書には、「保守契約期間:追加5年(保守期限 2024年12月31日)」の記載と、「ご注意:eNetStarは、ご購入日から1年間無償でセンドバック保守を申し受けます。上記保守契約期間は、保守期間を追加延長されたお客様へのサービス期間となります。」との記載があることから、本件商品がエンドユーザーであるK教育委員会に納品するために平成30年(2018年)12月中に出荷されたことが推察される。
e 乙第7号証の1の注文書の発注番号と、乙第7号証の3の請求書の備考欄に記載されている「貴社注文番号」が一致しており、乙第7号証の1の発注者の社名と乙第7号証の3の請求書の宛先の社名がNECネッツエスアイ社で一致しており、乙第7号証の2の受入場所の社名と乙第7号証の3の請求書の備考欄の納入場所の会社名は全て株式会社Aで一致しており、乙第7号証の3と乙第7号証の4のエンドユーザー名はどちらもK教育委員会であり、乙第7号証の1ないし乙第7号証の4の書面の作成日付は、いずれも平成30年(2018年)12月であることから、乙第7号証の1ないし乙第7号証の4の書面は販売代理店であるNECネッツエスアイ社から平成30年(2018年)12月18日に本件商品に関する注文を受けた際の取引書類であり、NECネッツエスアイ社からの注文によって、チエル社からNECネッツエスアイ社に対し使用商標1が付された本件商品が譲渡されたことが推認できる(商標法第2条第3項第2号)。
(イ)平成30年(2018年)7月9日付の注文によりチエル社から販売代理店であるリコージャパン株式会社(以下「リコージャパン社」という。)に商品が譲渡等された事実について
a 本件商品は、チエル社の販売代理店であるリコージャパン社からチエル社宛に送付された平成30年(2018年)7月9日付の注文書によりエンドユーザーであるF小学校向けの注文を受付けている(乙8の1)。そして、上記注文書(乙8の1)の明細の欄1行目と2行目には、ゴシック体と似た書体で「eNetStar」の文字の記載があり、本件商品に関する注文書であることがわかる。また、明細の欄1行目には、「eNetStar コンパクト型」との記載があることから、乙第11号証の1と同じ「eNetStar コンパクト型」の商品が注文されていることがわかる。
b 乙第8号証の2の平成30年(2018年)7月12日付の佐川急便の久喜営業所発行の出荷明細書によると、佐川急便の配送によりチエル社からリコージャパン社の指定納入先であるU株式会社に対し本件商品が同月13日午前中に納入されていることがわかる(乙8の2)。
c 乙第8号証の3の平成30年(2018年)7月12日付の請求書は、チエル社から販売代理店であるリコージャパン社に対して発行された請求書であり、同月9日付の注文書の注文書No.は、「202- JS306025681-001」で、当該請求書の「貴社注文番号」は「202- JS306025681-001」で一致しており、注文書に記載の納入先と請求書の備考欄に記載の納入場所社名は一致していることから、同月9日付の商品注文書に対し発行された請求書であることが推察される。また、当該請求書の製品名の欄の1行目と2行目には、使用商標2の記載があり、請求書に記載されたチエル社の住所は、履歴事項全部証明書に記載の本件商標権者の住所と一致するから本件商標権者により発行されたものであることが明確である(乙8の3)。
d 乙第8号証の4の「センドバック保守証書」は、本件商品が購入された際に発行される証書であり、当該保守証書には、「保守契約期間:追加4年(保守期限 2023年7月31日)」の記載と、「ご注意:eNetStarは、ご購入日から1年間無償でセンドバック保守を申し受けます。上記保守契約期間は、保守期間を追加延長されたお客様へのサービス期間となります。」との記載があることから、本件商品がエンドユーザーであるF小学校に納品するために平成30年(2018年)7月に販売されたことが推認される。
e 乙第8号証の1の注文書の注文書N0.は、「202-JS306025681-001」で、乙第8号証の3の請求書の「貴社注文番号」は「202-JS306025681-001」で一致しており、乙第8号証の1の発注元の社名と乙第8号証の3の請求書の宛先の社名も一致しており、注文書に記載の納入先と請求書の備考欄に記載の納入場所の社名はU株式会社で一致していて、乙第8号証の1の注文書の納入先と乙第8号証の2の出荷明細書の届け先の社名と住所はいずれもU株式会社によるもので一致していて、乙第8号証の1の注文書の備考欄には「F小学校様分」との記載があり、乙第8号証の3の請求書の備考欄には「エンドユーザー:F小学校」の記載があり、乙第8号証の4の「センドバック保守証書」には「エンドユーザー:F小学校」との記載があることから、乙第8号証の1ないし4の書面は、平成30年(2018年)7月9日付のリコージャパン社からの注文により、チエル社からリコージャパン社に対し、「エンドユーザー:F小学校」向けに本件商品が販売された際の取引書類であり、平成30年(2018年)7月にチエル社からリコージャパン社に対して使用商標1が付された本件商品が譲渡されたことが推認できる(商標法第2条第3項第2号)。
(ウ)平成30年(2018年)6月22日付の注文によりチエル社から販売代理店である富士電機ITソリューション株式会社(以下「富士電機IT社」という。)に商品が譲渡等された事実について
a 本件商品は、チエル社の販売代理店である富士電機IT社からチエル社宛に送付された平成30年(2018年)6月22日付の注文書により注文を受け付けている(乙9の1)。そして、乙第9号証の1の品名の2行目と3行目の欄には、「eNetStar」の文字の記載があり、本件商品に関する注文書であることがわかる。また、品名の3行目には、「eNetStar コンパクト型」との記載があることから、乙第11号証の1と同じ「eNetStar コンパクト型」の商品が注文されていることがわかる。
b 乙第9号証の2の平成30年(2018年)6月27日付の佐川急便の久喜営業所発行の出荷明細書によると、佐川急便の配送によりチエル社から富士電機IT社に平成30年(2018年)6月29日午前中に納入されている(乙9の2)。
c 乙第9号証の3の平成30年(2018年)6月27日付の請求書は、チエル社から販売代理店である富士電機IT社に対して発行された請求書であり、乙第9号証の1の発注番号は「7200242815-007」で、当該請求書の「貴社注文番号」は「7200242815-007」で一致しており、注文書兼出荷指示書の発行者と請求書の宛先の会社は一致しており、注文書兼出荷指示書に記載の納入先と請求書の備考欄に記載の納入場所の社名は一致していることから、平成30年(2018年)6月22日付の注文書兼出荷指示書(乙9の1)に対し発行された請求書であることが推察される。また、当該請求書の製品名の欄の1行目と3行目には、使用商標2の記載があり、請求書に記載されたチエル社の住所は、履歴事項全部証明書に記載の本件商標権者の住所と一致するから本件商標権者により発行されたものであることが明確である(乙9の3)。
d 乙第9号証の4の「センドバック保守証書」は、本件商品が購入された際に発行される証書であり、当該保守証書には、「保守契約期間:追加4年(保守期限 2023年6月30日)」の記載と、「ご注意:eNetStarは、ご購入日から1年間無償でセンドバック保守を申し受けます。上記保守契約期間は、保守期間を追加延長されたお客様へのサービス期間となります。」との記載があることから、本件商品がエンドユーザーであるM小学校に納品するために、平成30年(2018年)6月に販売されたことが推認される。
e 乙第9号証の1の注文書兼出荷指示書の発注番号は、「7200242815-007」で、乙第9号証の3の請求書の「貴社注文番号」は「7200242815-007」で一致しており、注文書兼出荷指示書に記載の発行者の社名、注文書兼出荷指示書に記載の納入場所社名と請求書の備考欄に記載の納入場所の社名は富士電機IT社で一致していて、乙第9号証の1の注文書兼出荷指示書の納入場所と乙第9証の2の出荷明細書のお届け先の住所はいずれも富士電機IT社によるもので一致していて、乙第9号証の3の請求書の備考欄には「エンドユーザー:M小学校」の記載があり、乙第9号証の4の「センドバック保守証書」には「エンドユーザー:M小学校」との記載があることから乙第9号証の1ないし乙第9号証の4の書面はチエル社から富士電機IT社に対し、「エンドユーザー:M小学校」向けに本件商品が販売された際の取引書類であり、平成30年(2018年)6月にチエル社から富士電機IT社に対して使用商標1が付された本件商品が譲渡されたことが推認できる(商標法第2条第3項第2号)。
ウ 商品に関する取引書類に商標を付して頒布する行為
(ア)上述した「センドバック保守証書」(乙7の4、乙8の4及び乙9の4)の「センドバック保守証書」の文字の上には、別掲3のとおりの商標(以下「使用商標3」という場合がある。)が付されている。使用商標3は、商標の左上の部分に、黒く縁どられた円の内部が青塗りされ、その内部に白抜き文字で「eNetStar」の語頭の文字である欧文字の小文字「e」を書した円図形と、その右下の部分に配置された黄色の星型図形と、その星型図形の上に、濃い青色の文字の周りを白く縁どられた「eNetStar」の欧文字が書されているという構成からなる商標であることが確認できる。使用商標3は、本件商標よりも色味がやや強く感じるが、これは印刷の関係による誤差であり、本件商標と使用商標3は同一の商標である。当該「センドバック保守証書」には、「※センドバック保守とは、eNetStarのハードウェア面において障害があった場合、ユーザー様からご返送いただき、メンテナンスをさせて頂くサービスです。」との記載があることから、本件商品がハードウェアに係る商品であることが確認できる。ハードウェアは、「電子応用機械器具及びその部品」に包含される商品である。当該「センドバック保守証書」には、「ご注意:eNetStarは、ご購入日から1年間無償でセンドバック保守を申し受けます。上記保守契約期間は、保守期間を追加延長されたお客様へのサービス期間となります。」、「※保証範囲は保証書に帰属します。」との記載があることから、当該「センドバック保守証書」は、本件商品の販売に付随して、商品の保証書(乙10)等とともに、チエル社からエンドユーザーに対して発行される取引書類であることが確認できる。
上述したとおり、乙第7号証の4の「センドバック保守証書」は平成30年(2018年)12月に発行されたものであり、乙第8号証の4の「センドバック保守証書」は同年7月に発行されたものであり、乙第9号証の4の「センドバック保守証書」同年6月に発行されたものであるから、本件商標権者は本件要証期間内に、エンドユーザーであるK教育委員会、F小学校及びM小学校に対し、本件商標の指定商品に含まれる商品に関する取引書類に標章を付して、頒布する行為を行っていることが推認できる(商標法第2条第3項第8号)。
(イ)また、平成30年(2018年)12月25日付の請求書(乙7の3)には「製品名」の欄の1行目と2行目に使用商標2の「eNetStar」の文字が記載され、同年7月12日付の請求書(乙8の3)の製品名の1行目と2行目にも使用商標2の「eNetStar」の文字が記載され、同年6月27日付の請求書(乙9の3)の製品名の欄の1行目と3行目にも使用商標2「eNetStar」の文字の記載がなされていて、請求書の発行者は全てチエル社である。請求書は、本件商品に関する取引書類に該当するから、本件商標権者は本件要証期間内に、販売代理店であるNECネッツエスアイ社、リコージャパン社、富士電機IT社に対し、本件商標の指定商品に含まれる商品に関する取引書類に標章を付して、頒布する行為を行っていることが確認できる(商標法第2条第3項第8号)。
(ウ)「CHIeru Catalogue 2017 SPRING SUMMER 小学中学」(乙5の1)の64頁及び65頁には、「eNetStarシリーズ」の製品紹介がされており、そのページ内に別掲4のとおりの商標(以下「使用商標4」という場合がある。)の表示が7箇所なされ、その他にゴシック体に似た使用商標2(「eNetStar」の文字)も使用されている。使用商標4の構成中の「TM」の文字は、「Trademark」、日本語で商標を意味するものであり(乙12)、使用商標4は本件商標とは同一ではないが、本件商標権者は「eNetStar」を商標として使用していることを表現するため付しているものである。そして、乙第5号証の1の64頁及び65頁には「eNetStar」がセキュリティアプライアンスサーバーであることが記載されている。「CHIeru Catalogue 2017 SPRING SUMMER 小学中学」は、「CHIeru Magazine 2017 SPRING SUMMER 小学中学」と1冊になっており、裏表のどちらからも読める仕様となっていて、「CHIeru Magazine 2017 SPRING SUMMER 小学中学」の目次のページには、「【チエル・マガジン2017 SPRING/SUMMER】2017年4月4日発行」との記載があることから、この商品カタログが、平成29年(2017年)4月4日に発行されたものであることがわかる。乙第5号証の2は、「CHIeru Magazine 2017 SPRING SUMMER 小学中学」の製本・出荷費用等に関する御見積明細書であり、この明細書によると乙第5号証の1のマガジンが13,000部ほど発行され、頒布されていることが推認できる。御見積書の書名の欄には「チエル・ドット・マガジンVol.21【小学・中学】アジロ綴じ」と記載されているが、納期が平成29年(2017年)4月5日となっており、乙第5号証の1の発行日の1日後であることから、乙第5号証の1の「CHIeru Magazine 2017 SPRING SUMMER 小学中学」に関するものであることが推認される。
また、乙第5号証の3は、「CHIeru Magazine 2017 SPRING SUMMER 小学中学」のレイアウトデザイン等に関する請求書であるが、請求書の日付が平成29年(2017年)3月24日となっていて、本件請求書のタイトルは、「『チエルマガジン2017年春夏号』制作費に関する御請求」となっていることからも「CHIeru Magazine 2017 SPRING SUMMER 小学中学」が発行されていることが推認できる。
乙第5号証の4は、「CHIeru Catalogue 2017 SPRING SUMMER 小学中学」に使用されているイラストに関する請求書であるが、請求書の日付は、平成29年(2017年)3月30日となっていて、請求書の件名は、「2017カタログ_春夏版 制作」となっていて、また内容の欄には「小中版 春夏デザイン・修正」となっていることからも、「CHIeru Catalogue 2017 SPRING SUMMER 小学中学」が発行されていることが推認できる。商品カタログは取引書類に該当するから、本件商標権者は本件要証期間内に本件商標の指定商品に含まれる商品に関する取引書類に標章を付して、頒布する行為を行っていることが確認できる(商標法第2条第3項第8号)。
エ 商品について使用されている商標
本件商標権者は、本件商品である「セキュリティアプライアンスサーバー」の本体の天面に使用商標1を使用している(乙11の1)。
そして、本件商品の請求書(7の3、乙8の3及び乙9の3)に使用商標2を使用し、本件商標の商品に係る「センドバック保守証書」(乙7の4、乙8の4及び乙9の4)に使用商標3を使用している。
さらに、商品カタログである「CHIeru Catalogue 2017 SPRING SUMMER 小学中学」(乙5の1)に使用商標4を使用している。
オ 本件商標と商品について使用されている商標の同一性
(ア)本件商標は、商標の左上の部分に、黒く縁どられた円の内部が青塗りされ、その内部に白抜き文字で「eNetStar」の語頭の文字である欧文字の小文字「e」を書した円図形と、その右下の部分に配置された黄色の星型図形と、その星型図形の上に、濃い青色の文字の周りを白く縁どられた「eNetStar」の欧文字が書されているという構成からなる。
そして、星形の図形部分については背景図形にすぎないから特段の称呼は生じず、青色の円図形の内部の白抜き文字「e」については、「eNetStar」の文字の上部に配置され、「eNetStar」の文字を強調し、装飾する意味合いで付されたものにすぎないから本件商標からは「イーネットスター」の称呼のみが生じる。
本件商標権者は、使用商標4を使用しており、このことからも「eNetStar」の部分が本件商品に関する商標の主要素であって、青色の円図形の内部の白抜き文字「e」の部分について称呼を生じさせる意図がないことは明らかである。
観念についても、黄色の星形の図形部分については背景図形にすぎず、黒縁の青色円図形の内部の白抜き文字「e」についても単なる装飾部分にすぎないから、これらの部分からは特段の観念は生じず、「eNetStar」の文字の構成からのみ観念が生じ、「e」の文字は、英単語の「electron」に由来する「電子を表す記号」(乙13)等であり、「Net」は、「ネットワークの略」(乙14)等であり、「Star」は、「星標。星印。」(乙15)等であるから、「電子ネットワークの星」の観念を生じる。
本件商標の使用に係る商品であるセキュリティアプライアンスサーバーの天面に使用されている使用商標1は本件商標と同一の商標である(乙11の1)。
そして、センドバック保守証書(乙7の4、乙8の4及び乙9の4)について使用商標3が使用されている。
使用商標3は、印刷の兼ね合いで本件商標よりも色味が濃く感じられるが、本件商標と同一の商標である。
仮に使用商標3の色味が本件商標よりも濃かったとしても、いわゆる色違い商標にあたり商標法第70条第1項により登録商標による使用となる。
(イ)確かに、使用商標2(乙7の3、乙8の3及び乙9の3)、使用商標4(乙5)については「eNetStar」の欧文字のみから構成される標章であり、本件商標(乙2)との物理的な同一性を認めることはできない。
しかしながら、商標法50条の「登録商標」には、商標法38条4項の規定と同様に「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」等、「当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」も含まれるとされている。
そして、一般に、文字と図形が結合した商標については、当該文字部分が独立して自他商品等の識別機能を有する商標の要部となり得るものである。
本件商標の図形は、比較的写実的な印象を与えるものともいえず、単純化されており、格別特徴的なものとは認められないことからすると、図形部分は、取引者、需要者に特に顕著な印象を与えるものとは認められず、むしろ、文字の後に配されていることより、該図形部分は、背景図形とみるのが相当である。
そうすると、本件商標の黒縁の青色円図形の内部に白抜き文字「e」を書した円図形部分は、「eNetStar」の語頭の文字である「e」の文字を強調し、装飾する意味合いで付されたものにすぎず、また黄色の星形の図形部分については、比較的写実的な印象を与えるものともいえず、単純化された背景図形にすぎないから、自他商品の識別標識としての機能は「eNetStar」の文字部分にあり、本件商標と使用商標2及び使用商標4は、書体はやや異なるものの「eNetStar」の文字が共通しており、同一の称呼及び観念を生ずるものであるから社会通念上同一の範囲に属する商標であることは明らかである。
したがって、本件商標権者は、本件商標と同一の商標である使用商標1及び使用商標3、本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標2及び使用商標4を使用していることが認められる。
カ 本件使用商標が使用される商品
乙第11号証の1は本件商標の使用に係る商品であるセキュリティアプライアンスサーバーの写真であり、USBケーブルの接続端子などが写真に写っていることからもこの商品がサーバーコンピューターに関するものであることが確認できる。また、平成30年(2018年)12月18日付の注文書(乙7の1)の行番号001と002には「eNetStar」の文字が記載されていて、行番号001と002には「eNetStar」、が「サーバー」である旨の記載がされていることからも本件商標の使用に係る商品が、「サーバー」であることが確認できる。さらに、「CHIeru Catalogue 2017 SPRING SUMMER」(乙5の1)の64頁及び65頁には、「eNetStarシリーズ」の製品紹介がされており、その中で「eNetStar」がセキュリティアプライアンスサーバーである旨が説明されている。「サーバー」は、本件商標の指定商品である「インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」及び「電子応用機械器具及びその部品」に包含されるものである(乙2)。
キ 本件商標が付された商品の使用事実のまとめ
以上を総合的に考慮すれば、本件商標と同一の商標である使用商標1及び使用商標3、本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標2及び使用商標4が本件商標権者によって、本件要証期間内に指定商品である「インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター,電子応用機械器具及びその部品」に対して使用されたことは明らかである。
(3)むすび
本件商標権者は、本件商標と同一の商標及び本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、商品「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」について、本件審判請求登録前3年以内に日本国内において使用しているため、本件商標は商品「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター用のプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ・CD-ROMその他の記録媒体」について、その登録を取り消されるべきではない。

第4 当審における審尋及びそれに対する被請求人の対応
当審において、令和2年10月16日付けで通知した審尋により、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人が、商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用を証明したものと認めることができない旨の見解を示し、被請求人に意見を求めた。
しかしながら、被請求人は、上記審尋に対し、何ら応答もしていない。

第5 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第5号証の1は、平成29年(2017年)4月4日発行の「CHIeru Magzine 2017 Spring/Summer」及び「CHIeru Catalogue 2017 Spring/Summer」をタイトルとする本件商標権者のカタログ(以下「カタログ2017春夏号」という。)であり、「セキュリティアプライアンスサーバー」のページ(3葉目)には、使用商標4(別掲4)又は「eNetStar」の文字のみからなる使用商標2が表示されており、また、「環境に合わせた2種類の筐体をご用意 NEW」の見出しの下、「コンパクト型/(標準モデル)」の記載とともに商品の画像も表示されているが、当該画像は不鮮明であり、かつ、当該画像において、本件商標の表示は確認できない。
(2)乙第5号証の2は、本件商標権者を宛先とする「チエル・ドット・マガジン Vol.21【小学・中学】アジロ綴じ」(書名)についての見積明細書であり、平成29年(2017年)2月27日を見積日とし、同年4月5日を納期とするものである。
乙第5号証の3は、本件商標権者を宛先とする平成29年(2017年)3月24日付けの請求書であって、「『チエルマガジン2017春夏号』制作費に関する御請求」の記載があり、乙第5号証の4は、本件商標権者を宛先とする請求書であって、「件名:2017カタログ_春夏版 制作」、「内容 小中版 春夏版デザイン・修正」の記載がある。
(3)乙第7号証の1、乙第8号証の1及び乙第9号証の1は、発注者は異なるものの本件商標権者又は「チエル株式会社札幌営業所」を宛先とする平成30年(2018年)12月18日付け及び同年7月8日付けの注文書並びに同年6月22日付け注文書兼出荷指示書であって、これらの書面の品名欄には、いずれも「eNetStar コンパクト型」及び「センドバック保守料金」の記載がある。
乙第7号証の3、乙第8号証の3及び乙第9号証の3は、平成30年(2018年)12月25日付け、同年7月12日付け及び同年6月27日付けのいずれも本件商標権者が発行した請求書であって、それぞれ上記注文書(乙7の1、乙8の1)及び注文書兼出荷指示書(乙9の1)の発注者及び製品名(eNetStar コンパクト型(UPS付))が合致するものである。
乙第7号証の2、乙第8号証の2及び乙第9号証の2は、いずれも本件商標権者に関する同じ配送業者による出荷明細書であり、発行日は上記請求書(乙7の3、乙8の3、乙9の3)と一致するものの、出荷された商品に関する記載はない。
(4)乙第7号証の4、乙第8号証の4及び乙第9号証の4は、「センドバック保守証書」を表題とする書面(以下、乙7の4、乙8の4及び乙9の4の当該書面をまとめて「センドバック保守証書」という。)であって、いずれも使用商標3(別掲3)や本件商標権者の名称が表示されており、「エンドユーザー」、「保守契約期間」、「対象シリアルNO.」の項目はあるものの、乙第7号証の3、乙第8号証の3及び乙第9号証の3に記載された製品名等の記載はない。また、「ご注意」として「eNetStarは、ご購入日から1年間無償でセンドバック保守を申し受けます。上記保守契約期間は、保守期間を追加延長されたお客様へのサービス期間となります。※センドバック保守とは、eNetStarのハードウエア面において障害があった場合、ユーザ様からご返送いただき、メンテナンスをさせていただくサービスです。」の記載がある。なお、センドバック保守証書には、発行日、保守対象商品名及び受領印等が確認できない。
(5)乙第11号証の1は、被請求人の主張によれば「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」を写した2枚の写真(上下二段に配置されている。)であり、その写真中、上段の写真には、黒色の筐体側面に接続端子のような部分と「ローカル」、「B8w1643838001 CHIeru」、「USB HDD」の文字が表示され、下段の写真には、黒色の筐体上面に使用商標1(別掲2)と側面に「SUPERMICR」の文字が表示されている。
乙第11号証の2は、本件商標権者を宛先とする平成28年(2016年)12月20日付けの仕入伝票であり、備考欄に「0001643838」の記載はあるものの、取引の対象商品を特定し得る記載はない。
乙第11号証の3は、乙第11号証の2と同一の取引先からチエル宛に発行された請求書であるが、取引の対象商品を特定し得る記載はない。
2 上記1によれば、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)被請求人は、乙第5号証の1、乙第11号証の1ないし3により、本件商標と同一の標章である使用商標1が付された商品が、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」であり(乙5の1、乙11の1)、それが、製造委託先であるテックウインド社によって製造され、平成28年(2016年)12月20日に本件商標権者宛てに出荷され(乙11の2)、その製造に関して平成29年(2017年)1月10日にテックウインド社から本件商標権者に対し請求書が発行されていること(乙11の3)から、要証期間内に、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」に本件商標を付して使用している(商標法第2条第3項第1号)と主張する。
しかしながら、乙第11号証の1の写真において、黒色の筐体に、「ローカル」、「USB HDD」、「SUPERMICR」等の文字が表示され、接続端子のような部分が確認できるとしても、これらをもっては、当該黒色の筐体が本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」であると認めるに足りない。また、乙第11号証の2及び3においても、その取引に係る商品が「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」であることを推認し得る記載は見いだせない。さらに、「カタログ2017春夏号」(乙5の1)の「セキュリティアプライアンスサーバー」の商品説明部分(乙5の1の3葉目)においても、「コンパクト型/(標準モデル)」とされる商品の画像は不鮮明であって、その商品の画像と乙第11号証の1の黒色の筐体とが同一のものであることが確認できないことから、乙第11号証の1の黒色の筐体が「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」であることを推認することもできない。
(2)被請求人は、乙第5号証の1ないし4により、要証期間内に、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」に関する取引書類(乙5の1)に本件商標と社会通念上同一と認められる標章である使用商標4を付して頒布している(商標法第2条第3項第8号)と主張する。
しかしながら、「カタログ2017春夏号」(乙5の1)の「セキュリティアプライアンスサーバー」のページ(3葉目)に表示された使用商標4は、「eNetStar」の文字のみからなるものであり、文字と文字以外の構成要素からなる本件商標の態様とは異なるものである。
また、「カタログ2017春夏号」(乙5の1)が頒布された事実を示すとされる乙第5号証の2は、「チエル・ドット・マガジン Vol.21【小学・中学】アジロ綴じ」(書名)についての見積明細書であって、「カタログ2017春夏号」に関するものとは認められない。
(3)被請求人は、乙第7号証の1ないし3、乙第8号証の1ないし3及び乙第9号証の1ないし3により、要証期間内に、本件商標権者が、乙第11号証の1の写真の商品を譲渡した(商標法第2条第3項第2号)と主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、乙第11号証の1の黒色の筐体は、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」であるとはいえず、かつ、上記各証拠(乙7の1?3、乙8の1?3、乙9の1?3)から特定される商品と、乙第11号証の1の黒色の筐体とが同一のものであることも明らかではない。
なお、乙第7号証の1及び3、乙第8号証の1及び3並びに乙第9号証の1及び3に表示された使用商標2は、「eNetStar」の文字のみからなるものであり、文字と文字以外の構成要素からなる本件商標の態様とは異なるものである。
また、配送業者による出荷明細書(乙7の2、乙8の2、乙9の2)には、それぞれ、出荷された商品に関する記載がないから、これら出荷明細書と注文書及び請求書(乙7の1・3、乙8の1・3、乙9の1・3)との関係が明らかではない。
(4)被請求人は、乙第7号証の1ないし4、乙第8号証の1ないし4及び乙第9号証の1ないし4を提出し、要証期間内に、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」に関する取引書類(センドバック保守証書)に本件商標と同一の標章である使用商標3を付して頒布している(商標法第2条第3項第8号)と主張する。
しかしながら、センドバック保守証書は、これらに記載された「ご注意・・・上記保守契約期間は、保守期間を追加延長されたお客様へのサービス期間となります。」の内容及び請求人の主張によれば、エンドユーザーが、商品の購入と同時期に、商品代金とは別の料金を支払って、1年間の無料の保証期間を経過した後に商品の保守の役務の提供を受けることに関して、追加契約したことを証する書類であるといえるから、商品の保守の役務に関する取引書類であると認め得るとしても、商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」に関する取引書類であるとは直ちには認められない。
また、センドバック保守証書には、乙第7号証の1ないし3、乙第8号証の1ないし3及び乙第9号証の1ないし3に記載された製品名等の保守対象商品に関する記載はなく、センドバック保守証書と、上記証拠(乙7の1・3、乙8の1・3、乙9の1・3)との関係が明らかではない。
さらに、センドバック保守証書には、要証期間内に、これを本件商標権者が発行したこと、及び、エンドユーザーや販売代理店がこれを受領したことが明らかとなるような発行日の記載、当事者の署名・捺印等が確認できないことから、要証期間内にこれが頒布されたものと推認することができない。
(5)上記(1)ないし(4)のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件審判の請求に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品、インターネット及びイントラネットで使用するためのサーバーコンピューター」に含まれる商品「コンパクト型のセキュリティアプライアンスサーバー」について、要証期間に、本件商標権者が本件商標の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
その他、被請求人が提出した全証拠によっては、要証期間に、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標の指定商品について本件商標の使用をしていることを証明し得る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明したものということはできない。
また、被請求人は、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1 本件商標(色彩は原本参照。以下、同じ。)



別掲2 使用商標1(乙第11号証の1から抜粋)


別掲3 使用商標3(乙第7号証の4から抜粋)



別掲4 使用商標4(乙第5号証の1から抜粋)


審理終結日 2021-02-17 
結審通知日 2021-02-19 
審決日 2021-03-17 
出願番号 商願2000-139188(T2000-139188) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 豊田 純一
渡邉 あおい
登録日 2002-04-12 
登録番号 商標登録第4558675号(T4558675) 
商標の称呼 イイ、イイネットスター、ネットスター、スター、エネットスター 
代理人 安形 雄三 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 
代理人 翠簾野 哲 
代理人 大熊 恵美 

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