• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 105
管理番号 1373911 
審判番号 取消2020-300481 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-07-03 
確定日 2021-04-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第2708659号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2708659号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成2年6月28日に登録出願,第1類「薬剤」を指定商品として,同7年7月31日に設定登録され,その後,同17年5月6日に指定商品を第5類「薬剤」とする指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,令和2年7月22日であり,その請求の登録前3年とは,平成29年7月22日から令和2年7月21日の期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての商標登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証(審決注:審判事件弁駁書に添付された甲第1号証及び甲第2号証は,それぞれ甲第2号証及び甲第3号証と読み替える。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が提出した証拠においては,いずれも一段表記からなる文字が表示されており,その表示態様については「サイアス」,「Cias」又はこれらの文字に付記的な文字を付加したものとなっている。一方,本件商標は,別掲のとおり,上段に片仮名文字を下段に欧文字を表してなる二段表記からなる商標であるところ,上段の「サイアス」の称呼が下段の「CIAS」の自然な称呼であるとは認め難い(甲3)。
そのため,本件商標の上段又は下段の一方の使用は「社会通念上同一と認められる商標」とは認められるべきではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)シングルマルチ方式汎用自動分析装置用の生化学検査試薬に関するパンフレット(乙1)の,第1頁は表紙をなし,第2頁から第3頁は医薬品である商品に関する内容部分を印刷してあり,第4頁の下方部分に作成日,すなわち,印刷日の2019年5月の年月が記載されている。本件商標権者は,現在も商品販売に際して,商品説明のために必要に応じてそれぞれこのパンフレットに基づいて宣伝,広告などに使用している。
当該パンフレットの第3頁の下側部分に「サイアスシリーズ」として複数の医薬品の商品名が記載されている。本件商標は,「CIAS」と「サイアス」を二段に併記して構成したものであるが,いずれか一方のみを当該商品について使用することも,実務上,登録商標の使用であると認められている。
当該パンフレットの第3頁の「サイアスシリーズ」に記載されている商品中,「サイアス INSULIN 2(2はローマ数字)」,「サイアス ラテックス Mb」,「サイアス ラテックス PG 1(1はローマ数字)」及び「サイアス ラテックス PG 2(2はローマ数字)」は,商標「サイアス」の後部に,普通名称と欧文字又はローマ数字とで付記部分を構成し,商標「サイアス」の使用形態の一例を示している。
(2)英文パンフレット(乙2)は,上記(1)のパンフレットと略同じ内容であって,診断用薬品を示したものである。パンフレットの第3頁の下側部分に複数の医薬品の名称が記載してあり,それらの中に,商標「CIAS」の使用形態の例が示してある。パンフレットの第4頁の下部には2019年5と年月が記載してある。
(3)本件商標権者は,平成27年(2015年)及び同28年(2016年)に「サイアスMMP-3」,「サイアスH-FABP」及び「サイアスCys-C」の製造販売認証を受けた後,同28年に,それぞれの体外診断医薬品適用希望書(乙3,乙6,乙8)を提出し,受領して現在に至るまで,上記商品の製造・販売を継続して行っている。ここで「MMP-3」及び「H-FABP」はたんぱく分解酵素の略称であり,「Cys-C」は「シスタチンC」の略称として当業者が通常用いられているものであって,普通名称であるから,上記商品の使用は,商標「サイアス」の使用と同様である。
このように,本件商標権者は,「サイアスシリーズ」の種々の試薬を有している。
(4)本件商標権者は1944年(昭和19年)に創立以来,種々の医薬品,すなわち,試薬を提供しており,その製品数は60,000品種を越えている。商標「CIAS」の種類も多岐にわたっており,記号などを組み合わせてそれらを区別できるようにしている。
(5)以上のとおり,本件商標は,後部に付記部分を組みあわせて多数の医薬品である試薬に付して使用しているものである。
(6)2017年(平成29年)8月15日発行の日本臨床自動化学会会誌に「サイアスMMP-3」の広告が掲載された(乙10)。
(7)本件商標権者は,2018年(平成30年)10月に「サイアスMMP-3」のデザイン・レイアウト及びパンフレットの印刷を依頼している(乙4,乙5)

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,A4サイズの二つ折りからなる書類であり,表紙の上部に「シングルマルチ方式汎用自動分析装置用」の文字及び「生化学検査試薬」の文字が顕著に表され,それらの右下に「体外診断用医薬品」の文字が記載され,下部には「様々なニーズに合わせた包装タイプをご用意しております」等の文字と共に,「関東化学株式会社」の文字が記載されている。
また,中面右側上部に「記載以外の試薬タイプもご用意しております 詳しくはお問い合せ下さい」の文字が記載されるとともに,下部には「サイアスシリーズ」(以下「使用商標」という。)のタイトルが付された表が掲載されている。当該表には「商品名」として,「サイアス V CRP」,「サイアス MMP-3」等,全てに,「サイアス」の文字を含んだ商品が表示されている。
加えて,裏表紙の下部には,「関東化学株式会社」,「試薬事業本部 ライフサイエンス部」の文字とともに,「〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2-2-1 (03)6214-1091」,大阪府及び福岡県の住所,電話番号並びに「(2019.05)」等の文字が記載されている。
(2)乙第3号証は,平成28年1月12日付けの厚生労働省の受領印のある「体外診断用医薬品保険適用希望書」とする書類であり,当該書類には,「製品名」の欄に,「サイアス MMP-3」の文字が,「担当者連絡先(電話番号)」の欄に,「103-0022 東京都中央区日本橋室町2丁目2番1号」の文字及び担当者の氏名等が記載されている。加えて,下部には,「平成28年 1月 8日」の文字,「住 所 東京都中央区日本橋本町3丁目2番8号」の文字及び「氏 名 関東化学株式会社」の文字及び代表取締役社長の氏名等が記載されている。
2 上記1で認定した事実を総合すると,次のとおり認めることができる。
(1)使用商品について
上記1(1)の記載からすれば,「シングルマルチ方式汎用自動分析装置用生化学検査試薬」の文字が表された書類は,「体外診断用医薬品」(以下「使用商品」という。)に係るパンフレット(以下「本件パンフレット」という。)と認められる。
そうすると,使用商品は,「体外診断用医薬品」であり,本件審判の請求に係る指定商品,第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」の範ちゅうの商品である。
(2)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は,別掲のとおり「サイアス」の片仮名と「CIAS」の欧文字を上下2段に書してなるものであり,上段の「サイアス」の文字は下段の「CIAS」の欧文字の読みを特定したものと認められる。
一方,使用商標は,「サイアスシリーズ」の文字からなるところ,当該文字をタイトルとした表に掲載されている全ての商品は,「サイアス」の文字を含んでいる。そうすると,使用商標の構成中の「サイアス」の文字が当該表中の商品を表示する共通の商標として機能しているものであり,また,「シリーズ」の文字は当該表中の商品が商品群であることを表した文字であるにすぎず,自他商品の識別標識としての機能がないか弱いものである。
したがって,使用商標は,その構成中「サイアス」の文字が要部であるとみるのが相当である。
そこで,本件商標と使用商標の要部を比較するに,使用商標の要部は,本件商標の下段の片仮名と同一の文字からなり,本件商標は上段の欧文字と下段の片仮名とが同じ称呼を生じるものである。また,「サイアス」及び「CIAS」の文字自体に意味はないものであるから,使用商標は,本件商標と同じ称呼を生じ,観念においても異なるものということもできない。
そうすると,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができる。
(3)使用者について
本件パンフレットの裏表紙には,本件商標権者の名称,「試薬事業本部 ライフサイエンス部」及びその住所として「東京都中央区日本橋室町2-2-1」の文字が記載されているところ,当該住所は,「体外診断用医薬品保険適用希望書」(乙3)に記載されている本件商標権者の「担当者連絡先」の住所と一致するものであり,また,当該書証には,本件商標権者の名称及び同人の代表取締役社長の氏名と共に,本件商標の商標登録原簿と同一の住所が表示されている。
そうすると,本件パンフレット(乙1)に掲載されている住所は,本件商標権者の「試薬事業本部 ライフサイエンス部」の住所であり,また,上記の実情からすると本件パンフレットは,本件商標権者が作成したものとみるのが相当であるから,本件商標の使用者は,本件商標権者である。
(4)本件商標の使用及び使用時期について
本件パンフレットの表紙の「様々なニーズに合わせた包装タイプをご用意しております」,中面右側の「記載以外の試薬タイプもご用意しております 詳しくはお問い合せ下さい」の表示に加え,裏表紙に,連絡先として,本件商標権者の名称及び「試薬事業本部 ライフサイエンス部」並びに当該部の住所及び電話番号の表示及び「(2019.05)」の文字から,本件パンフレットは,本件商標権者によって,使用商品の顧客に頒布するために2019年(令和元年)5月に作成され,同時期に頒布されたものと推認できる。そして,当該2019年(令和元年)5月は,要証期間である。
(5)小括
以上によれば,本件商標権者は,要証期間に日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「体外診断用医薬品」のパンフレットに,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して顧客に頒布したものと認められる。
そして,当該行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布・・・する行為」に該当する。
(6)まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において本件商標権者が本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したものと認めることができる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
別掲(本件商標)





特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2020-12-22 
結審通知日 2020-12-24 
審決日 2021-03-04 
出願番号 商願平2-72801 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (105)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 藤村 浩二
大森 友子
登録日 1995-07-31 
登録番号 商標登録第2708659号(T2708659) 
商標の称呼 サイアス、シアス 
代理人 特許業務法人謝国際特許商標事務所 
代理人 田代 和夫 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ