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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) W37
管理番号 1372960 
判定請求番号 判定2020-600022 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 判定 
2020-09-02 
確定日 2021-04-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5766072号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「トイレの水漏れ・詰まりの修理」等に使用するイ号標章は、登録第5766072号の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求に係る商標権
本件登録第5766072号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年1月23日に登録出願され、第37類「トイレ・洗面所・浴室・キッチン等の水まわりのリフォーム工事に関する助言,その他の建築工事に関する助言,ポンプの修理又は保守,貯水槽の修理又は保守,その他の貯蔵槽類の修理又は保守,トイレ・洗面所・浴室・キッチン等の下水排水管の修理又は保守,その他の水質汚濁防止装置の修理又は保守,水道用栓の修理又は保守,給水・給湯管の修理又は保守,その他の浄水装置の修理又は保守,トイレ・洗面所・浴室・キッチン等の下水排水管の清掃,汚水槽の清掃,その他のし尿処理槽の清掃,給水・給湯管の清掃,貯水槽の清掃,その他の貯蔵槽類の清掃」を指定役務として、同年5月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
請求人が判定を求める標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、その使用役務を「トイレの水漏れ・詰まりの修理」等とするものである。

第3 請求人の主張
請求人は、被請求人が、「水まわりのトラブル解決事業,緊急修理・給排水工事,トイレの水漏れ工事,溢れ・悪臭の解消,トイレタンク内器具交換,改修工事,トイレリフォーム,下水清掃,桝交換,パイプ交換工事,給水・排水設備工事全般」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
(1)判定の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人がホームページ等でイ号標章を使用していることについて、平成28年9月16日、同年12月7日及び同29年12月25日に、被請求人に対し、本件商標の商標権を侵害するものである旨の警告を発したところ(甲1?甲3)、被請求人は先使用権に基づく法定使用権を有しているため商標権侵害はない旨回答した(甲4、甲5)。
しかしながら、被請求人の先使用権に関する主張は真偽不明であったため、請求人は被請求人に対して、令和2年5月29日、先使用権を裏付ける客観証拠の提出を求めたところ(甲6)、その後書面や電話で再三督促したものの、いまだ先使用権に関する証拠の提出はない。
この点、被請求人の代理人から、令和2年7月9日に「7月20日頃までに資料を送付する予定である」、同年8月5日に「今週中に資料を送付する」旨の連絡があったため、請求人は資料の送付を待っていたが、その後も現在に至るまで、被請求人から連絡も資料の送付もない。
よって、本件判定を求める次第である。
(2)イ号標章の説明
被請求人は、請求人が知る限り、平成28年9月15日頃には既に、インターネットの広告やホームページ等で「トイレ110番」の文字とトイレの図形からなるイ号標章を使用しており、現在もイ号標章を使用して、関東地区・近畿地区・東北地区において、「水まわりのトラブル解決事業,緊急修理・給排水工事,トイレ・水漏れ工事,溢れ・悪臭の解消,トイレタンク内器具交換,改修工事,トイレリフォーム,下水清掃,桝交換,パイプ交換工事,給水・排水設備工事全般」に関する役務を提供している(甲7、甲8)。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標とイ号標章は、冒頭の図形は異なるものの「トイレ110番」の呼称が全く同じであり、役務の提供者について混同を生じさせるおそれがあるから、同一又は類似の標章というべきである。
そして、本件商標の指定役務と、イ号標章の使用役務である「水まわりのトラブル解決事業,緊急修理・給排水工事,トイレ・水漏れ,溢れ・悪臭の解消,トイレタンク内器具交換,水漏れ点検調査,改修工事,トイレリフォーム,下水清掃,桝交換,パイプ交換工事,給水・排水設備工事全般」は、同一又は類似の役務である。
以上のとおり、イ号標章は本件商標と同一又は類似する標章であり、その使用役務も同一又は類似する役務であるから、被請求人が使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
(4)まとめ
よって、請求の趣旨のとおりの判定を求める。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証に関して
被請求人は、乙第1号証を根拠に、「平成23年11月5日から平成27年1月23日までの間で、合計16,753件の受注を受けている」、「受注件数は年々倍増から1.5倍に増加している」などと主張するが、不知ないし否認する。
乙第1号証を見ても、これが被請求人の売上を示すデータなのか否か不明である。乙第1号証は、被請求人が作成したデータにすぎず、いくらでも改ざんが可能であり、客観性・信頼性に欠けるため、乙第1号証の記載内容をそのまま先使用権の判断の基礎とすることは許されない。
また、被請求人は「toilet110.com」のドメインを親会社から譲り受けたと主張しているところ、いつ譲り受けたのか証拠による裏付けがなく不明であり、乙第1号証の売上には、被請求人の親会社や関連会社の売上が含まれている可能性がある。
請求人は被請求人に対し、客観性の担保されている税務署の収受印の押されている会社の決算書類に基づき、乙第1号証の売上データが、被請求人の税務申告した売上と整合するか否か、明らかにするよう求める。具体的には、平成23年11月から同27年1月までの期間の被請求人の決算報告書のうち、貸借対照表、損益計算書、法人事業概況説明書の提出を求める。
(2)周知性に関して
被請求人は、平成23年10月ころから、日本国内において、イ号標章を使用してインターネット広告活動を行っていたと主張するが、客観証拠による裏付けがなく、不知ないし否認する。
乙第4号証は、「toiret110.com」(判定注:「toilet110.com」の誤記と認める。)のドメインの作成日(creation date)が平成23年8月30日ということしか分からず、誰が、いつから、どのような広告をしていたのか、全く不明である。
(3)結語
以上のとおり、イ号標章が被請求人の業務にかかる役務を表すものとして需要者の間に広く認識されていたことや、被請求人が継続して自己の役務についてイ号標章を使用していたことの証明がないため、被請求人の先使用に基づく法定使用権の主張は認められない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件判定請求は成り立たない、との判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 先使用に基づく法定使用権
(1)被請求人は、本件商標の登録出願日(平成27年1月23日)の3年以上前である同23年10月ころから、日本国内において、イ号標章を使用して、「トイレの水漏れ・詰まりの修理」等の役務の提供についてインターネット広告、印刷物配布広告によって、広告活動を行っていた(甲7、甲8)。
その結果、被請求人は、平成23年11月5日から本件商標の登録出願日の同27年1月23日までの間で、合計16,753件の受注を受けている(乙1)。
以上のように、被請求人は、請求人が本件商標登録出願以前より、イ号標章を使用して役務を提供しているもので、当然、不正な競争の目的は有していない。
(2)周知性・継続的使用
ア 被請求人は、平成23年10月から企業努力を重ね、イ号標章を使用して広告活動を行った結果、同年11月5日から同年12月31日までの間で231件、同24年1月1日から同年12月31日までの間で2,396件、同25年1月1日から同年12月31日までの間で5,571件、同26年1月1日から同年12月31日までの間で8,130件、同27年1月1日から請求人が本件商標を出願する同月23日までのわずか23日間で425件の受注を受けている(乙1)。
このように、受注件数は年々倍増から1.5倍に増加しており、イ号標章が被請求人の業務に関わる役務を表示するものとして、請求人の本件商標登録出願当時、需要者に広く認知されていることは、明らかである。
イ また、実際に受注を受けた地域も、東京都が8,238件、神奈川県が2,834件、埼玉県が1,918件、千葉県1,933件と東京都及び近郊3県合計で13,005件となっており、その他にも宮城県1,547件、大阪府173件、兵庫県72件、茨城県23件、京都府8件、奈良県6件、福島県1件と、被請求人の本店所在地が東京であることから、地域差は当然に出てしまうが、全国にわたり広く需要者に認知されている(乙1)。
ウ このように被請求人のイ号標章が、被請求人の業務に関わる役務を表示するものとして、請求人の本件商標登録出願当時、需要者に広く認知されていることは、明らかであるが、その証拠となるイ号標章使用による広告の結果の被請求人の受注記録(乙1)について述べる。
この受注記録は、受注を受ける毎に被請求人の職員が打ち込みシステム化されたデータをそのままプリンアウトしたもので、かつ、請求人が本件商標を登録出願した平成27年1月23日までの間で、16,000件を超す個々の受注に関するデータであり、当然であるが、これだけの量の件数を、虚偽・改ざん等することはできるものではない。
また、上記のデータを裏付ける資料として受注を受けた工事の完了後の被請求人職員が作成した報告書であって、平成23年11月の受注当初からのものを被請求人は、保管している(なお、この報告書は、複写式で、写しを顧客に渡している。)。この点、当初の受注からこの報告書をすべて書面で提出すると1万枚を超える書面を提出することになり、現実的ではないことから、請求人の本件商標登録出願日である平成27年1月23日から遡って、工事済みの報告書100件分を提出する(乙2)。上記提出の報告書は、受注記録(乙1)の右端「証」の欄に該当する乙第2号証の報告書の枝番が記載されている。
最後に、被請求人が平成23年11月当初からイ号標章を使用して広告を行い、その広告に基づき需要者に認知され、受注を受けたことを表す証拠として、平成23年当時の報告書(乙3)を提出する。当該報告書の記載事項から、平成23年当時において、被請求人は、同年10月ころから、イ号標章を使用して、トイレ修理等の役務の提供のインターネット広告等の広告活動を行い、その結果、被請求人が受注記録(乙1)記載のとおりの受注を受けたことも明らかである。
以上のとおり、受注記録(乙1)は、被請求人のイ号標章を使用した広告活動に基づく、平成23年11月5日から同27年1月23日までの、被請求人の受注事実を明らかにしたものである。
加えて、被請求人のインターネットホームページ(甲8)の広告であるが、同ホームページのドメインである「toilet110.com」は、被請求人の親会社である株式会社ライフサポートが2011年(平成23年)8月30日に取得して、被請求会社(判定注:「被請求人」の誤記と認める。)が設立し、イ号標章を使用して営業活動、広告活動をするにあたり、譲り受けたものである(乙4)。
したがって、この点からも、被請求人が、平成23年10月ころから、イ号標章を使用して、インターネット広告活動を行っていたことが明らかである。
エ 以上、受注記録(乙1)及び報告書(乙2、乙3)から、被請求人が、請求人の本件商標登録の際、イ号標章を使用した広告活動をし、被請求人の業務に係る役務であるトイレ修理等を表示するものとして需要者の間に広く認識され、被請求人が継続して上記標章を使用していたことは明らかである。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件商標に対して、先使用に基づく法定使用権を有していることから、請求人の本件判定請求には、理由がない。

第5 当審の判断
1 本件商標は、別掲1のとおり、内部に円形及び滴型の切り抜き部分を有する濃い青色の円図形(以下「本件円図形」という。)の右側に、「トイレ110番」の文字を影付きの青色の濃淡で彩色した書体をもって横書きしてなるものである。
2 イ号標章は、別掲2のとおり、白い便器とおぼしき図と赤色の回転灯とおぼしき図を組み合わせた図形(以下「イ号図形」という。)の右側に、ややレタリングを施した「トイレ110番」の文字を横書きしてなるものである。
3 本件商標及びイ号標章は、いずれもその構成中に「トイレ110番」の文字を有するものであるところ、「トイレ」の文字は、「化粧室。手洗所。便所。」(「広辞苑第7版」株式会社岩波書店発行)の意味を、「110番」の文字は、「警察に事件などを通報する時の電話番号。警察緊急通報用電話。比喩的に、電話での相談・要請に応ずる組織を表す接尾語としても使う。」(前掲書)の意味をそれぞれ有する親しまれた語であることから、「トイレ110番」の文字は、「トイレに関する電話での相談・要請に応ずる組織」の意味合いを容易に認識させるものといえる。
また、以下(1)ないし(10)のように、トイレの水漏れ・詰まりの修理等の事業の業界において、「トイレ110番」の文字や、「トイレ」の文字及び「110番」の文字の組合せ、あるいは「110番」の文字は、トイレに関する緊急の相談・要請に応じ、トイレに関する緊急のトラブル等を解決する等の役務の特徴を簡潔に表す宣伝文句として、一般に使用されていることが認められる。
(1)「熊本トイレ110番」のウェブサイトにおいて、「トイレのトラブルは『熊本トイレ110番』におまかせください!キッチン、お風呂、水回りのトラブルは何でも解決!!まずはお電話ください!・・・『熊本トイレ110番』は熊本県を中心に、トイレやキッチン・お風呂など水廻りのトラブル解消や、快適な水廻り環境にするためのリフォーム工事を行っております。」の記載がある。
(http://kumamoto-water.com/info.html)
(2)「トイレレスキュー110番」のウェブサイトにおいて、「大阪のトイレのつまりや水のトラブルはトイレレスキュー110番にお任せ!/水のトラブル・トイレのつまりなどに困ったらすぐ電話/・・・深夜の緊急トラブルも対応!スピード解決致します!」の記載がある。
(https://kansai-reiwa.com/contents/)
(3)「gooタウンページ」のウェブサイトにおいて、「トイレ詰まり救急車110番」の見出しの下、電話番号の記載の下に「配水管つまり清掃」の記載がある。
(https://townpage.goo.ne.jp/shopdetail.php?matomeid=140622728028080080)
(4)「東大阪 水漏れ修理110番」のウェブサイトにおいて、「プロの技術で水漏れ、つまりをその日に解決!/トイレがつまった、水が出ない等、水まわりのトラブルはなんでもお任せください!」の記載がある。
(https://www.higashiosaka-mizumore110.com/)
(5)「株式会社 日栄工業」のウェブサイトにおいて、「苫小牧の水道トラブル・水道修理の110番の日栄工業 水道工事・水漏れ・水廻りリフォーム・トイレつまり(詰まり)お任せ下さい!/水道修理110番 水道トラブルでお困りの方!」の記載がある。
(http://www.sunprosper.com/)
(6)「全国の水道屋さん徹底比較」のウェブサイトにおいて「水のトラブル110番」の見出しの下、「お薦めポイント/京都・大阪・滋賀など近畿一円の水のトラブルを解決!水のトラブル110番。トイレの水漏れ、つまり(詰まり)、台所、お風呂のトラブルを解決」の記載がある。
(https://xn--k9j9bsbi0jzdpgwh7dpgg2291go1jz7fyw7br31cka272kmk0kdbza.com/%E6%B0%B4%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%AB%EF%BC%91%EF%BC%91%EF%BC%90%E7%95%AA)
(7)「株式会社まえだ住宅設備」のウェブサイトにおいて、「水回り修理の110番」の見出しの下、「こんな水回りの困り事は、ご連絡ください。すぐに駆けつけ修理いたします!/トイレの故障/・便器のつまり・和式便所の詰まり・タンクのレバーを押しても水が流れない・トイレタンクの水が溜まらない・トイレタンクから水漏れ・床の水漏れ・トイレタンクの水が止まらない・給水管や洗浄管からの水漏れ・ウォシュレットの交換・便器の交換」の記載がある。
(http://maedajutaku.co.jp/water.html)
(8)「水道110番24時間」のウェブサイトにおいて、「トイレ修理サービスのご案内/トイレのつまり・水漏れ/最短1分でスッキリ解決!・・・今から最短5分で到着!/突然のトイレのトラブルに今すぐ駆けつけます!/トイレのつまり水漏れ等、どんなことでもご相談ください!・・・トイレのトラブルのことなら水道110番にお任せください!」の記載がある。
(https://xn--110-db4g760b4k3b.jp/toilet/)
(9)「みらいお水の110番」のウェブサイトにおいて、「トイレの水漏れ詰まり修理なら、みらいお水の110番にお任せ下さい/家電の取り付け・水漏れつまり修理/みらいお水の110番」の見出しの下、「カテゴリー:トイレ水漏れつまり」の記載がある。
(http://miraisetsubi.com/blog/category/toilet/)
(10)「東京大学」のウェブサイトにおける「学生生活110番チラシ」のページにおいて、「キャンパスライフを24時間365日サポート/学生の皆様の様々な悩み・トラブルに対して、相談・各機関の窓口紹介・緊急駆けつけサービスを24時間・365日提供しています。・・・」の見出しの下、「安心をサポートする『学生生活110番』」の項には、「例えばこんなトラブルの時に!(1)予期せぬトラブルが発生!トイレがつまった!!(2)あわてずにコールセンターにお電話を(3)作業員が駆けつけます!(4)作業完了!スムーズにトラブルを解消します」の記載がある。
(https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400044797.pdf)
以上からすると、「トイレ110番」の文字は、トイレの緊急トラブルに対応する役務であることを簡潔に示す宣伝文句を表すものと容易に認識されるものであるから、これを普通に用いられる方法で表したときは、当該文字からは、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであって、役務の出所識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当である。
4 本件商標とイ号標章の類否について
(1)本件商標
本件商標は、上記1の構成からなるところ、その構成中の「トイレ110番」の文字は、上記3のとおり、その構成文字から「トイレに関する電話での相談・要請に応ずる組織」の意味合いを容易に認識させるものであり、かつ、トイレの水漏れ・詰まりの修理等の事業の業界における「トイレ110番」の文字や、「トイレ」の文字及び「110番」の文字の組合せ、あるいは「110番」の文字の使用例からすれば、その指定役務との関係において、トイレの緊急トラブルに対応する役務であることを簡潔に示す宣伝文句を表すものと容易に認識されるものであって、当該文字からは、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであり、本件商標の文字部分が影付きの青色の濃淡で彩色した書体をもって表されていても、その表示方法は普通に用いられる方法の域を脱しない程度といえ、結局、役務の出所識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いものというのが相当である。
また、本件商標の構成中の本件円図形は、我が国において特定の事物を表したもの又は何らかの意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、本件円図形部分からは、直ちに特定の称呼及び観念は生じないものであって、本件商標の指定役務との関係において、出所識別標識としての機能がないか又は極めて弱いといった事情は認められないものである。
そうすると、本件商標は、その構成中「トイレ110番」の文字のみが要部として分離抽出されるものではなく、その構成全体をもって認識されるか、あるいは、本件円図形部分のみをもって認識されるというのが相当であるから、本件商標からは、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。
(2)イ号標章
イ号標章は、上記2の構成からなるところ、その構成中の「トイレ110番」の文字は、上記3のとおり、その構成文字から「トイレに関する電話での相談・要請に応ずる組織」の意味合いを容易に認識させるものであり、かつ、トイレの水漏れ・詰まりの修理等の事業の業界における「トイレ110番」の文字や、「トイレ」の文字及び「110番」の文字の組合せ、あるいは「110番」の文字の使用例からすれば、その指定役務との関係において、トイレの緊急トラブルに対応する役務であることを簡潔に示す宣伝文句を表すものと容易に認識されるものであって、当該文字からは、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであり、イ号標章の文字部分がややレタリングを施した態様で表されていても、その表示方法は普通に用いられる方法の域を脱しない程度といえ、結局、役務の出所識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いものというのが相当である。
また、イ号標章の構成中のイ号図形は、白い便器とおぼしき図と赤色の回転灯と思しき赤い図を組み合わせたものと看取されるものの、イ号図形部分からは、直ちに特定の称呼及び観念は生じないものであって、イ号標章の使用役務との関係において、出所識別標識としての機能がないか又は極めて弱いといった事情は認められないものである。
そうすると、イ号標章は、その構成中「トイレ110番」の文字のみが要部として分離抽出されるものではなく、その構成全体をもって認識されるか、あるいは、イ号図形部分のみをもって認識されるというのが相当であるから、イ号標章からは、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。
(3)本件商標とイ号標章の類否
本件商標とイ号標章の外観を対比すると、両者は、それぞれの図形要素や色彩等の構成が明らかに異なることから、外観上、判然と区別し得るものである。
また、本件商標及びイ号標章からは、出所識別標識としての特定の称呼及び観念は生じないものであるから、両者は、称呼及び観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において顕著に相違するものであるから、両者の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は互いに紛れるおそれのない非類似のものと判断するのが相当である。
その他、本件商標とイ号標章が類似するというべき特段の事情も見いだせない。
5 先使用権について
イ号標章は、上記4(3)のとおり、本件商標とは非類似のものであるから、先使用による商標の使用をする権利(商標法第32条)の要件を欠いているものであるので、先使用権の有無については、判定の対象となし得ないものである。
なお、請求人は、被請求人に対し、平成23年11月から同27年1月までの期間の被請求人の決算報告書のうち、貸借対照表、損益計算書、法人事業概況説明書の提出を求めると述べているが、上記と同様の理由から、その提出を求めないこととした。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは、非類似のものであるから、本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務との類否について検討するまでもなく、イ号標章は、本件商標の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。

別掲
別掲1 本件商標(色彩については、原本を参照。)




別掲2 イ号標章(色彩については、原本を参照。)



判定日 2021-03-26 
出願番号 商願2015-5203(T2015-5203) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (W37)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小俣 克巳 
特許庁審判長 小松 里美
特許庁審判官 渡邉 あおい
豊田 純一
登録日 2015-05-22 
登録番号 商標登録第5766072号(T5766072) 
商標の称呼 トイレヒャクトーバン、トイレヒャクジューバン、トイレイチイチゼロバン、ヒャクトーバン、ヒャクジューバン、イチイチゼロバン 
代理人 荒井 裕己 
代理人 熊澤 宏哉 

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