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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W25 |
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管理番号 | 1372953 |
異議申立番号 | 異議2020-900007 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-01-14 |
確定日 | 2021-01-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6190746号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6190746号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6190746号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示したとおりの構成からなり、平成30年11月14日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、令和元年9月5日に登録査定、同年10月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下の3件の商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。 1 登録第6180370号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成 別掲2のとおり 指定商品 第18類「かばん金具,がま口口金,蹄鉄,皮革,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,愛玩動物用被服類,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」 登録出願日 平成30年10月17日 設定登録日 令和元年9月13日 2 登録第5794582号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成 別掲3のとおり 指定商品 第18類「かばん金具,がま口口金,蹄鉄,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,皮革」、第24類「織物,メリヤス生地,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製椅子カバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具」 登録出願日 平成27年4月8日 設定登録日 平成27年9月18日 3 登録第4848014号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成 別掲4のとおり 指定商品 第18類「旅行用トランク,旅行かばん,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革,皮革製包装用容器」、第25類「帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「ボール,その他の運動用具」 優先権主張:2002年7月23日 デンマーク王国 登録出願日 平成15年1月22日 設定登録日 平成17年3月18日 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。なお、申立人は商標法第4条第1項第10号について、具体的な理由についての主張及び立証はしていない。 1 申立人について 申立人は、デンマーク所在のスポーツウェアをはじめとするアパレル商品の製造・販売を行う法人であり、申立人が展開する「hummel」ブランドは、1923年にドイツ北部でサッカー・ハンドボール用品のブランドとして生まれ、その後100年近くにわたり、全世界においてその商品が販売されている。 日本においても、横浜FC(2001年?2014年)、ガイナーレ鳥取(2003年?2018年)及びノルディーア北海道(2018年?現在)等といったプロサッカーチームのオフィシャルユニフォームサプライヤーとなっている。 「hummel」ブランドの商品は「シェブロンライン」と呼ばれる平仮名「く」の字状の図柄が連なった模様のラインが入っていることが特徴となっており、申立人は、引用商標をはじめとする申立人商標を登録することにより(甲5)、申立人による自他商品等識別標識として使用される「シェブロンライン」の保護を図っている。 2 商標法第4条第1項第11号の該当性について (1)本件商標について 本件商標は、平仮名「く」の字状に中ほどでほぼ90度の角度で屈曲する線を、その線幅と同間隔で6本並行に設けて、屈曲角の各頂点を結ぶ直線が右方向に向かうように配した構成態様からなる図形商標である。 (2)本件商標と引用商標1の類否について 引用商標1は、平仮名「く」の字状に中ほどでほぼ90度の角度で屈曲する線を、その線幅と同間隔で6本並行に設けて、屈曲角の各頂点を結ぶ直線が下方向に向かうように配した構成態様からなる図形商標であり、本件商標と引用商標1の外観を比較すると、平仮名「く」の字状に中ほどでほぼ90度の角度で屈曲する線から構成される点及び上記線が線幅と同間隔で6本並行に設けた構成態様からなる点について共通する。 本件商標と引用商標1の縮尺を一致させて比較を行った場合、構成する線の長さにおいて差異がみられるものの、本件商標を右90度傾ければ、構成する線の本数、肉太の度合、角度、間隔が一致することから、引用商標1と近似する外観態様になる。 そして、上述の構成上の一致性を考慮し、両者を子細に観察すれば、細かい表現方法において差異は見られるものの、本件商標と引用商標1とは、看者に与える印象が近似したものになり、時と処を異にして両者に接するときは互いに紛れやすいというべきであり、本件商標と引用商標1とは、外観において類似する。 (3)本件商標と引用商標2及び引用商標3の類否について 引用商標2は、黒色の円形図形の内部に、白抜きで平仮名「く」の字状に中ほどでほぼ90度の角度で屈曲する線をその線幅と同間隔で2本並行に設けて、屈曲角の各頂点を結ぶ直線が下方向に向かうように配した構成態様からなる図形商標である。 また、引用商標3は、平仮名「く」の字状に中ほどでほぼ90度の角度で屈曲する線を、その線幅と同間隔で2本並行に設けて、屈曲角の各頂点を結ぶ直線が右方向に向かうように配した構成態様からなる図形商標である。 本件商標と引用商標2及び引用商標3を比較すると、構成する線の本数が相違するものの、肉太の度合、角度、間隔が一致するため、本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、看者に与える印象が近似したものになるというべきであるから、引用商標1と同様に、本件商標と引用商標2及び引用商標3との類否判断を行った場合、外観において類似する。 (4)観念上及び称呼上の類否について 本件商標と引用商標が上述のとおりの構成からなるものであることから、両者からは共通の観念及び称呼が生じる。 (5)取引の実情について 本件商標と引用商標の指定商品において抵触する第25類の指定商品については、商標がいわゆるワンポイントマークとして、商品に付されることが非常に多いといえ、実際に、申立人においても、引用商標をワンポイントマークとして使用している(甲6)。 このように使用される場合、商標は比較的小さく表示され、細部における表現方法の差異は曖昧なものとなり、印象が希薄なものとなる。また、商標は、その商標が付された商品を観察する場合、様々な位置から看取されるものであることは明らかであって、特に商標が被服等においてワンポイントマークとして使用される場合などは、天地の区別なくいずれの方向から商標が看取されるかについて特定されない場合があることは、取引の実情として自明であり、このような取引の実情を考慮すれば、本件商標と引用商標とは、彼此相紛らわしい類似商標である。 (6)以上のとおりであるから、本件商標と引用商標とは、時と所とを異にして行う離隔観察を行った場合において区別することが容易でない相紛らわしい類似の商標であるといえ、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品とは類似する。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号の該当性について (1)引用商標の周知性について 申立人による「hummel」ブランドは、1923年にドイツ北部で生まれた世界で最も古いサッカー・ハンドボールブランドの一つであり、その商品は、プロスポーツ選手を始めとして、全世界の取引者及び需要者に親しまれている。 「hummel」とは、ドイツ語で「マルハナバチ」を意味し、申立人は、自社商品に対して蜂を象ったデザインの商標を使用するとともに、最初に開発されたサッカーシューズから、両側面に「くの字」のマークを施していた。 また、申立人は、スポーツウェアに限らず、多様なアパレル商品を製造・販売しており、現在では有名ショップを含む世界で約700の販売店で販売されているほか、「ZOZOTOWN」「SHOPLIST」といった大手オンラインアパレル通販サイトでも、その商品が取り扱われている(甲7)。日本では、昭和55年頃から、大松貿易株式会社が総代理店となって申立人のサッカーシューズ等を輸入し、モンブラン株式会社が販売していたが、平成3年12月からは、株式会社エスエスケイが代理店となって、申立人の商品を我が国において輸入販売又は製造販売している(甲8)。 さらに、申立人は、我が国において、横浜FC(2001年?2014年)、ガイナーレ鳥取(2003年?2018年)、ブラウブリッツ秋田(2009年?2011年)、INAC神戸レオネッサ、福島ユナイテッドFC(2011年?現在)、V・ファーレン長崎(2014年?2019年)、ノルディーア北海道(2018年?現在)といった、日本各地のプロサッカーチームのオフィシャルユニフォームサプライヤーとなっており、加えて、静岡産業大学サッカー部のオフィシャルユニフォームや、京都ハンナリーズ、群馬クレインサンダーズといったプロバスケットボールチームのユニフォームも手掛けている(甲9)。 これらの「hummel」ブランドの商品は「シェブロンライン」と呼ばれる平仮名「く」の字状の図柄が連なった模様のラインが入っていることが特徴となっている。 我が国におけるプロサッカーリーグであるJリーグを例に挙げれば、1試合あたりの平均観客数は2万人といわれており、いわゆる「シェブロンライン」と呼ばれる申立人による商品に付された「くの字」のマークを目にする機会は、非常に多くなっているといえる。 (2)以上のような事実を考慮すれば、引用商標のうち、少なくとも引用商標2は、本件商標の出願日である2018年11月14日において、我が国の取引者及び需要者の間で周知・著名となっていたといえ、それは本件商標の登録時である2019年10月18日においても変わらない。 ゆえに、仮に引用商標1と本件商標が類似しないものと判断された場合であっても、引用商標の我が国における周知性及び現実の取引の実情等を総合的に判断すれば、本件商標と引用商標とが並存して登録された場合、需要者において品質混同の生じるおそれがあるうえ、本件商標権者が経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるとして、申立人の業務と混同を生ずるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 本件商標に対する取消理由 当審において、令和2年9月28日付け取消理由通知書をもって、商標権者に対し、本件商標は、引用商標1と類似する商標であり、かつ、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第8条第1項に該当する旨通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。 第5 本件商標権者の意見 本件商標権者は、前記第4の取消理由に対し、指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。 第6 当審の判断 1 商標法第8条第1項該当性について (1)申立人は、前記第2の1の引用商標1を引用し、本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張しているが、同号該当性の判断基準時は、本件商標の登録査定時(令和元年9月5日)であるところ、前記第2の1のとおり、引用商標1は本件商標の登録査定時において設定登録されていなかったものであり、その申立の根拠とする条項は、同法第8条第1項の誤りと認められるから、以下、同条項の該当性について判断する。 (2)商標法第8条第1項は、「同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。」と規定しているので、以下、各要件について検討する。 (3)本件商標と引用商標1の類否について 本件商標は、別掲1のとおり、各頂点が右を向いている山形の太い線を同間隔で6本並行に並べた構成からなる図形であり、特定の事物及び事象を想起させるとはいえないものであるから、特定の称呼及び観念を生じないものである。 他方、引用商標1は、別掲2のとおり、各頂点が下を向いている山形の太い線を同間隔で6本並行に並べた構成からなる図形であり、特定の事物及び事象を想起させるとはいえないものであるから、特定の称呼及び観念を生じないものである。 本件商標と引用商標1とを比較してみれば、本件商標と引用商標1とは共に、山形の太い線を同間隔で6本並行に並べた構成からなる点において共通するものであり、両商標は、本件商標の各頂点が右方向を向いているのに対し、引用商標1の各頂点は下向きである点において相違しているものの、両商標は、いずれも山形の太い線を6本並べた図形として強く印象付けられるものであるから、上記相違が大きく印象付けるものとまではいえず、また、本件商標の各山形の線が引用商標1に比べやや細く長い点において相違するものの、微差にすぎず、その違いが需要者に印象付けられ、記憶されるものではなく、商標の類否は、時と場所を異にする離隔的観察により判断されるものであることからすれば、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれがある類似の商標というべきである。 (4)本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品との類否について 前記第1に記載の本件商標の指定商品と同第2の1に記載の引用商標1の指定商品中の第18類「乗馬用具」及び第25類「全指定商品」とは、同一又は類似の商品である。 (5)最先の出願人について 本件商標は、前記第1のとおり、平成30年11月14日に登録出願されたものであり、引用商標1は、前記第2の1のとおり、平成30年10月17日に登録出願されたものであるから、引用商標1に係る商標登録出願は、本件商標に係る商標登録出願の先願になるものといわなければならない。 したがって、本件商標に係る登録出願人は、商標法第8条第1項に規定する「最先の商標登録出願人」ということはできず、引用商標1に係る商標登録出願人が同項所定の「最先の商標登録出願人」と認められる。 (6)小括 上記のとおり、本件商標は、引用商標1と類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品であるから、同一又は類似の商品について使用をする同一又は類似の商標について異なった日に二以上の商標登録出願があったときに、最先の商標登録出願人でない者(商標権者)が商標登録を受けたものといわざるを得ず、商標法第8条第1項の規定に違反して登録されたものである。 2 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標2) 別掲4(引用商標3) |
異議決定日 | 2020-12-04 |
出願番号 | 商願2018-141422(T2018-141422) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Z
(W25)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 吉岡 めぐみ |
特許庁審判長 |
木村 一弘 |
特許庁審判官 |
板谷 玲子 中束 としえ |
登録日 | 2019-10-18 |
登録番号 | 商標登録第6190746号(T6190746) |
権利者 | 株式会社アイエスアイ |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 遠山 良樹 |
代理人 | 外川 奈美 |