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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1372933 
異議申立番号 異議2020-900216 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-04 
確定日 2021-04-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第6260414号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6260414号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6260414号商標(以下「本件商標」という。)は、「ステルスIDC」の文字を標準文字で表してなり、令和2年3月20日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,電気通信機械器具,電子応用機械器具,携帯情報端末,電子出版物」を指定商品として、同年6月8日に登録査定され、同月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第2598294号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成元年8月7日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同5年11月30日に設定登録され、その後、同16年4月21日に指定商品を第16類「印刷物,書画,写真,写真立て」とする書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は「ステルス」の片仮名の他に欧文字「IDC」があり、この「IDC」の部分の称呼「アイディシー」は、引用商標の欧文字部分「IDG」の称呼「アイディジー」と類似するものである。
なお、本件商標の称呼の判断において、「IDC」の部分を独立して観察することは「ステルス」の語と「IDC」の間に何の関連もなく、「IDC」の語が「ステルス」と結合して観察される理由がないこと、特に「ステルス」と「IDC」は日本語の部分と外国語の部分が容易に分離して観察されるものであり、本件商標から「アイディシー」の称呼が生じる、との判断は近似の東京高裁の判断とも一致するものである。
そして、指定商品においても、本件商標の「電子出版物」(類似群コード26A01、26D01)は、引用商標の「印刷物(26A01)、写真、写真立て(26D01)」と類似する商品である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号について
本件商標中の欧文字「IDC」は、申立人の名称の略称「IDG」及び申立人の子会社であるインターナショナルデータコーポレイションの略称「IDC」と同様であり、両者はこの略称を商標としても出版事業に使用しており、「IDG」及び「IDC」は、出版事業の分野では、日本国内においても、外国においても、申立人及び上記子会社を示すものとして需要者間に広く認識されている事実がある。
甲第2号証は、ウィキペディアで「IDG」を検索した情報の写しであり、「IDG」が申立人の略称であることが示されている。そして、申立人が世界92ヶ国において300以上のコンピュータ関連情報紙・誌を発行していること、及び「IDC」が「IDG」の子会社であることも示されている。
甲第3号証は、雑誌「日経ビジネス」を発行している日経BP(東京都)の2013年6月4日の「ニュースリリース」の写しであり、ここに「日経BP社とIDGが業務提携」と題する記事があり、申立人を略称の「IDG」として表示している。
そして、「IDGの概略」として、世界97ヶ国において「CIO」「Computerworld」などのメディアブランド展開していること、及び子会社の「IDC」は世界110ヶ国でICT(Information and Comunication Technology)関連の市場調査を行っていることが示されている。
このニュースリリースに示されている「CIO」と「Computerworld」のブランドはオンラインメディアであり、申立人が展開する海外発のニュースやコラム、解説記事を毎日(平日)発行しており、甲第4号証及び甲第5号証はそのウェブサイトである。
これら証拠に示すとおり、「IDG」及び「IDC」は申立人及びその子会社を示す略称として日本及び世界各国において実際に使用され、申立人等の発行する雑誌、情報は膨大な量であり、本件商標は「ステルス」の片仮名の他、「IDC」の欧文字を有することから、商標法第4条第1項第8号の規定に該当することは明らかであり、同様の理由で、他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあり、同項第15号にも該当するものである。
また、「IDG」及び「IDC」は世界中で周知であることから同項第19号の規定にも該当するものである。
この事実は、甲第2号証と同じウィキペディアの英語版(甲6)においても、申立人の略称として「IDG」が示されていることからも明らかである。
したがって、本件商標は、第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 「IDG」及び「IDC」の各文字の周知性について
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、1964年(昭和39年)に設立され、米国に本社を置く会社であって、2013年(平成25年)時点において、世界97ヶ国において、コンピュータ関連情報を提供する「CIO」、「Computerworld」などのメディアブランドを展開し、申立人の子会社の「IDC」は、世界110ヶ国でICT関連の市場調査を行っていた(甲3)。
イ ウィキペディアのウェブサイトの「IDG」の項に、申立人(インターナショナル・データ・グループ)の略称として、「IDG」の文字が記載され、申立人の子会社International Data Corporationの略称として、「IDC」の文字が記載された(甲2)。
ウ 日経BP社の2013年(平成25年)6月4日付け「ニュースリリース」において、「日経BP社とIDGが業務提携」との見出しの下、同社と申立人が業務提携をした旨が発表され、同社が、申立人から「CIO」及び「Computerworld」とのブランドについてライセンスを受け、日本で独占的に事業を展開する権利を得たこと、同日付けで、日経BP社が、「CIO」及び「Computerworld」というオンラインメディアのウェブサイトをオープンしたことが記載された(甲3)。なお、「CIO」及び「Computerworld」は、申立人(IDG)が展開する海外発のニュースやコラム、解説記事を、毎日(平日)発信するオンラインメディアとされている(甲3)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、申立人は世界97ヶ国において、「CIO」、「Computerworld」などのメディアブランドを用いてコンピュータ関連情報を提供し、2013年(平成25年)には、我が国において、日経BP社と業務提携し、同社が申立人からのライセンスを受け、申立人にかかる「CIO」と「Computerworld」の名称を付したオンラインメディアの運営を始めたことがうかがえるものの、これは、本件商標の登録出願時より約7年前の記事であり、本件商標の登録出願時及び登録査定時におけるそれらの運営状況は不明である。
また、申立人に関する記事において、申立人の略称として「IDG」の文字が用いられている場合があること(甲2、甲3ほか)、申立人の子会社が「IDC」であることが記載された記事があること(甲2、甲3)が認められるものの、申立人や申立人の子会社の業務にかかる商品についての売上高や市場シェアなどの販売実績や広告宣伝の程度といった、申立人や申立人の子会社の略称として「IDG」又は「IDC」の各文字が、我が国の需要者の間に広く認識されていたことを表す証拠等は何ら示しておらず、提出された証拠をもって「IDG」及び「IDC」の各文字が我が国又は外国においてどの程度知られているのか客観的に把握することができない。
よって、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願時及び登録査定時における「IDG」及び「IDC」の各文字の周知性を認めることはできない。
(3)そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「IDG」及び「IDC」の各文字が、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたということはできない。
また、「IDG」及び「IDC」の各文字が、申立人の名称の略称として、我が国の需要者の間に広く認識され、著名になっていたものということもできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、片仮名の「ステルス」と、欧文字の「IDC」とを組み合わせ、「ステルスIDC」の文字を標準文字で表してなるところ、本件商標の構成文字は、同じ書体、同じ大きさで、等間隔に、空白なく、まとまりよく表されており、視覚上一体的に看取されるものであるから、本件商標は、外観上、構成文字全体が一連一体のものとして把握、認識されるとみるのが自然である。
また、その構成文字全体から生じる「ステルスアイディーシー」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成前半の「ステルス」の片仮名は、「(忍び・内密の意)レーダーに映らないこと。」(広辞苑 第七版)の意味を有する語であるものの、本件商標の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有さないものと判断しなければならない特段の事情はない。
また、本件商標の構成後半の「IDC」の文字が、取引者、需要者に特定の者の取り扱いに係る商品を表示するものとして、広く知られている等の特別な事情はなく、また、当該文字が、特定の意味合いを生じるものと判断しなければならない特段の事情はない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「ステルス」又は「IDC」のいずれかの文字部分が本件商標の要部として認識されるものではなく、構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、「ステルスアイディーシー」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲のとおり、左側に図形を配し、右側に「IDG」の文字を横書きしてなるところ、左側の図形と右側の文字は、外観上分離して構成されている。
そして、左側の図形は、抽象的な図形であり、特定の事物を想起させるものではないから、引用商標の図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じないものである。また、引用商標を構成する図形と文字とが一体となって、何らかの称呼、観念を生じさせるというべき事情も見いだせない。
そうすると、引用商標は、その図形及び文字を、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難く、図形と文字とがそれぞれ自他商品の識別力を有する要部と把握されるとみるのが相当であるから、引用商標は、その要部の一である「IDG」の文字に相応して「アイディージー」の称呼を生じる。
さらに、「IDG」の文字は、一般の辞書等に載録されている語ではなく、上記1のとおり、取引者、需要者に特定の者の取り扱いに係る商品又は役務を表示するものとして、広く知られている等の特別な事情はなく、また、これが、特定の意味合いを生じるものと判断しなければならない特段の事情はない。
したがって、引用商標は、「IDG」の文字に相応して、「アイディージー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、これらは、構成文字数等が明らかに相違することから、両商標の外観は、明確に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「ステルスアイディーシー」の称呼と、引用商標から生じる「アイディージー」の称呼とを比較すると、両称呼は、構成音数が明らかに相違し、かつ、語頭の「ステルス」の音の有無、及び語尾の「シー」又は「ジー」の音に差異を有することから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものである。
また、観念においては、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないものであるとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は、非類似の商標というのが相当である。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と類似する商品を含むものである。
(5)小括
以上によれば、本件商標の指定商品が、引用商標の指定商品と類似する商品を含むとしても、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、その構成中に「IDC」の文字を有するとしても、上記1のとおり、「IDC」の文字が、他人(申立人の子会社)の名称の略称として、需要者の間に広く認識され、著名になっていたものと認めることはできない。
してみれば、本件商標は、その構成中に他人の名称の著名な略称を含む商標ということはできないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
なお、申立人は、「IDG」についても、申立人の著名な略称である旨を述べているが、本件商標は、その構成中に「IDG」の文字を含まないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、「IDG」及び「IDC」の各文字は、申立人又は申立人の子会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたということはできないものであり、また、上記2で認定したように構成文字全体をもって把握される本件商標とは、非類似のもので別異のものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者において、申立人又は申立人の子会社の略称である「IDG」や「IDC」の各文字を連想、想起するということはできず、よって、その商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、「IDG」及び「IDC」の各文字は、申立人又は申立人の子会社の業務に係る商品又は役務や、申立人又は申立人の子会社の著名な略称を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものであるから、「IDG」及び「IDC」の各文字が世界中で周知であることを前提として本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するとの申立人の主張は、その前提を欠くものである。
また、申立人が提出した証拠からは、本件商標を、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第8号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲 引用商標



異議決定日 2021-03-25 
出願番号 商願2020-30739(T2020-30739) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
T 1 651・ 23- Y (W09)
T 1 651・ 263- Y (W09)
T 1 651・ 222- Y (W09)
T 1 651・ 262- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 瑠美 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 山根 まり子
板谷 玲子
登録日 2020-06-16 
登録番号 商標登録第6260414号(T6260414) 
権利者 株式会社SAYコンピュータ
商標の称呼 ステルスアイデイシイ、ステルス、アイデイシイ 
代理人 稲木 次之 

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