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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W303133
審判 全部無効 外観類似 無効としない W303133
審判 全部無効 商品と役務の類否 無効としない W303133
審判 全部無効 観念類似 無効としない W303133
管理番号 1372891 
審判番号 無効2019-890028 
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-04-23 
確定日 2021-04-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第6007642号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6007642号商標(以下「本件商標」という。)は、「富富富」の漢字を横書きした構成からなり、平成29年3月8日に登録出願、第30類「茶,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,みそ,穀物の加工品,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」、第31類「あわ,きび,ごま,そば(穀物),とうもろこし(穀物),ひえ,麦,籾米,もろこし,飼料,種子類,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽」及び第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年10月26日に登録査定、同30年1月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5458965号商標(以下「引用商標」という。)は、「ふふふ」の平仮名を横書きした構成からなり、平成23年6月14日に登録出願、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同年12月22日に設定登録されたものであり、現在有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を審判請求書及び弁駁書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判請求書における主張
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
(1)本件商標及び引用商標の外観
本件商標は「富富富」の漢字を横書きしてなり、引用商標は「ふふふ」の平仮名を横書きしてなるから、両商標は外観において一応相違する。
(2)引用商標の称呼及び観念
引用商標は、「ふふふ」の平仮名から「フフフ」の称呼を生ずる。
また、「ふふふ」の語は「口を開かずに軽く笑う声」、「口を閉じぎみにして低く笑うときの笑い声の様子」等を表す語として一般的であるから、引用商標は「人が軽く笑う様子」に関する観念を生じる。
そして、「ふふふ」の語は、食品分野においては、上記の一般的観念に基づいて、「おいしさ」や「満足感」を想起させる語として取引者、需要者に浸透しており、引用商標は「おいしさ」や「満足感」に関する観念をも生ずるものである。
(3)本件商標の称呼及び観念
本件商標は、その構成文字から「トミトミトミ」の称呼は生じることはなく、「フフフ」の称呼を生ずるのであり、引用商標の称呼と共通する。
また、観念においては、本件商標は上記称呼に基づいて、引用商標と同様に、「人が軽く笑う様子」に関する観念を生じるものであり、ひいては、「おいしさ」や「満足感」に関する観念をも生ずるものである。
そもそも、本件商標は「フフフ」の称呼と「人が軽く笑う様子」、ひいては、「おいしさ」や「満足感」に関する観念を取引者、需要者が認識することを意図して考案されたものである。
(4)取引の実情
本件商標の権利者である「富山県」は、本件商標の使用態様において、取引者、需要者が本件商標の称呼を「フフフ」と認識し、「人が軽く笑う様子」、ひいては、「おいしさ」や「満足感」に関する観念を認識するように誘導している。その結果、需要者は、本件商標から上記称呼及び観念が生ずることを認識している。
(5)その他
本件商標「富富富」は、引用商標「ふふふ」の当て字商標である。引用商標のような正当に商標登録された平仮名の商標と、その後から、本件商標のような当て字により外観のみを異ならしめた商標が非類似と判断されるのであれば、平仮名の商標の権利者は、考えられる限りの当て字商標を出願せねば、同一称呼かつ同一観念の商標の第三者による使用を排除することができず、業務上の信用の維持を図ることはできないー方、取引者、需要者は商標を拠り所とした取引、購買活動をすることができなくなるため、商標制度は崩壊し、市場は混乱する。
(6)まとめ
本件商標と引用商標とは、外観において異なるものの、称呼及び観念を共通にするのは明らかである。また、本件商標の指定商品中、第30類「全指定商品」、第31類「あわ,きび,ごま,そば(穀物),とうもろこし(穀物),ひえ,麦,籾米,もろこし」及び第32類(審決注:第33類の誤記と思料する。)「全指定商品」は、引用商標の指定役務「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と同一又は類似であることは明白であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して商標登録されたものである。
2 弁駁書における主張
(1)観念について
ア 被請求人は、本件商標について「特段の意味を生じない」又は「人の笑い声に関する観念が生ずることはない」と主張するが、本件商標の考案の意図及び需要者の認識を棚に上げた強弁であり、明らかに失当である。
イ 被請求人は、引用商標について「ふふふ」という言葉自体は、広辞苑等の一般的な国語辞典に掲載されていないとの独自見解に基づく主張をしているが、「ふふふ」は一般的な国語辞典に掲載されているし、国語辞典に掲載されることと、取引者、需要者が観念を認識、把握できることとは別問題である。また、当該語が「単独で用いられても特段の意味を生じない。」と主張するが、食品分野においては、食べ物をロにしつつ笑う場合には、口を大きく開けて笑うことは、ロから食べ物が飛び出したり、マナー違反になったりすることから、「ふふふ」とロを小さく開けて笑う様子と結びつくのであり、食べ物を口にして笑うことは、その食べ物の「おいしさ」やその食べ物に対する「満足感」を暗示しているものである。
したがって、あくまで引用商標の観念といいうるものは、各種辞典に掲載され、食品分野における実際の取引者(被請求人を含む)、需要者が認識、把握している「人が軽く笑う様子」であり、ひいては「おいしさ」や「満足感」である。
(2)称呼について
被請求人は、本件商標について、「『フフフ』との称呼と『トミトミトミ』の称呼を生ずる。」と述べるが、被請求人自身の使用態様から、本件商標の称呼が「フフフ」であることに疑いはない。
また、需要者等が、本件商標に初めて接した場合、「富」の一般的な読みは訓読みの「トミ」か音読みの「フ」であることから、「トミトミトミ」と読んでみて、そのような言葉は存しないことから読み手にはピンと来ず、次に「フフフ」と読んでみて初めて、「人が軽く笑う様子」を意味する「フフフ」であることに気づいて納得するのであって、本件商標の称呼は「フフフ」である。このような「フフフ」の称呼は、当に被請求人の思惑どおりのところである。
(3)その他
被請求人は、「外観こそ重要な識別要素となっている」と、あたかも称呼や観念が要部ではないかのような主張をしているが、本件商標のような「文字商標」において、外観のみが要部となることなどあり得ず、取引者、需要者に通常の読解力がある以上、その文字から称呼や観念を想起するものであるから、称呼や観念もまた出所識別に寄与するものである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念を共通にするのは明らかであり、両者は外観において異なるものの、それは、もともと本件商標が引用商標から生ずる称呼及び観念に基づいて、引用商標に当て字して考案されたからにすぎない。加えて、取引実情を考慮すれば、本件商標と引用商標とが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等も共通するものである。してみると、本件商標と引用商標とは、商品・役務の出所について誤認混同を生じるおそれのある、類似の商標というのが相当である。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると主張し、その理由を審判事件答弁書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第31号証を提出した。
1 本件商標及び引用商標の外観
本件商標の外観は、「富富富」という文字列からなるところ、商標権者である富山県の冒頭字である「富」が3つ連なるものであり、見る人の注意を強く引くものである。これに対し、引用商標の外観は「ふふふ」との文字列からなっているため、外観は明らかに異なる。
2 本件商標及び引用商標の観念
(1)本件商標は、富山県の「富」の字を3つ並べた造語であり、それ自体は特段の意味を生じないものである。日本語においては、擬音語ないし擬態語は平仮名又は片仮名をもって表記するのが通例であり、人の笑い声に係る擬音語として、「富富富」という表記をすることはない。
したがって、本件商標から、人の笑い声に関する観念が生ずることはない。
(2)引用商標は、ひらがなの「ふ」を3つ並べたものであるところ、該文字は、広辞苑等の一般的な国語辞典に掲載されていないものであり、一般に独立した意味を有する言葉とは認識されていない。そして、擬音語ないし擬態語は、特定の文脈、特定の場面において用いられることによって、それが修飾する文に一定の意味を添えるものであるから、それが単独で用いられても特段の意味を生じないものである。
そして、「ふふふ」という言葉は多義的に用いられているから、引用商標から、「人が軽く笑う様子」ひいては「おいしさ」や「満足感」などの特定の観念を生ずることはない。
3 本件商標及び引用商標の称呼
本件商標は、造語であるから、絶対的に正しい称呼はないが、強いていえば、「フフフ」の称呼と「トミトミトミ」の称呼を生ずる。
4 類似性の有無
本件商標は、引用商標と同一の称呼が用いられる場合があるものの、特定の観念を生じさせるものではなく、かつ、外観は引用商標と大きく異なる。
そして、本件の指定商品は、他の同種商品との区別をするために袋や箱、ビンに印刷したり、商品棚の商品情報記載欄に書き入れたりして使用されるのが通常であり、外観こそが重要な識別要素となっていることは明らかである。したがって、外観が全く異なる引用商標と誤認混同が生ずるということは考え難い。
5 本件商標の指定商品と引用商標の指定役務
本件商標の指定商品と引用商標の指定役務が同一でないことは明らかである。そして、飲食料品について特定の小売ないし卸売が自社で製造元ないし販売元となることは通常ないので、何らかの飲食料品を小売又は卸売している事業者が使用している商標と同一又は類似する商標が用いられているというだけで、いかなる飲食料品に用いられてもその商品が当該小売店等が製造元ないし販売元となっている商品であると誤認混同されるということはない。
したがって、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」という役務とあらゆる飲食料品との間に類似性があると推定すること自体が不当であるというべきであり、当該推定は覆滅され、本件商標の指定商品と引用商標の指定役務は類似していないというべきである。
6 請求人の主張に対する反論
(1)請求人は、「ふふふ」の語は、食品分野においては、「おいしさ」や「満足感」を想起させる語として浸透していると主張するが、提出された証拠は、例えば、おいしいものを食べた時に思わず笑みが出る状態を「ふふふ」という擬音語で表現したにすぎず、「ふふふ」という語自体を「おいしさ」や「満足感」を想起させる言葉として使用したのではない例をはじめ、食品に関連する文脈で「ふふふ」の言葉が用いられても、当該商品の「おいしさ」や「満足感」のような特定の観念を生じるものではないことをむしろ示すものとなっている。
(2)請求人は、「本件商標が引用商標と外観が異なるのは、後知恵によって『ふふふ』を富山県の『富』で当て字をしたからにほかならない」と主張するが、実際は、富山米の新品種の名称を公募した富山県が「富富富」という提案を採用した理由として、「富山県が誇る水、大地、人の三つの『富』と、食べたら『ふふふ』と幸せな気分になるおいしさが表現されている点が評価され」たからであり、むしろ、「富富富」という外観こそが、採用の最大の理由である。
(3)請求人は、平仮名の商標と、その後から当て字により外観のみを異ならしめた商標が非類似と判断されるのであれば、商標制度は崩壊し、市場は混乱すると主張するが、平仮名で登録すれば、当該平仮名での読みが可能となる漢字標章の登録を完全に封じ込めることができるということになると、不適切である。商標権は、出所の誤認混同を防止することを離れて、特定の音素の組合せについて先行登録者に独占権を与える制度ではない。
7 まとめ
本件商標について、商標法第4条第1項第11号に該当する事由がないことは明らかであるから、答弁の趣旨記載の審決を求める。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「富富富」の漢字を横書きしてなるところ、本件商標を構成する漢字「富」の音読みに相応し「フフフ」の称呼を、又は、訓読みに相応し「トミトミトミ」の称呼を生じるものである。
そして、本件商標を構成する「富」の文字は、「とむ。物がゆたかにある。とみ。財産。」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味する極めて平易な漢字であることから、本件商標からは、「三つのとみ(富)」ほどの漠然とした意味合いを想起させる場合があるとしても、具体的な観念を有するとまではいえないものである。
したがって、本件商標は、「フフフ」又は「トミトミトミ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
2 引用商標について
引用商標は、前記第2のとおり、「ふふふ」の平仮名を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「フフフ」の称呼を生じるものである。
そして、該文字は、一般的な国語辞典や類語、擬音語・擬態語の辞典に「口を開かずに軽く笑う声を表す語」、「かすかな笑い声」などといった意味を有する語(甲3の1?5)として掲載されているものであるから、「人が軽く笑う声」の観念を生じるものである。
したがって、引用商標は、「フフフ」の称呼を生じ、「人が軽く笑う声」の観念を生じるものである。
3 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、両商標は、上記1及び2のとおりの構成からなるところ、その構成文字における漢字と平仮名という文字種の明らかな差異を有するから、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標と引用商標は、「フフフ」の称呼を共通にする場合がある。
さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「人が軽く笑う声」の観念を生じるものであるから、両者は明らかに異なり、観念上相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼を共通にする場合があるとしても、観念において相紛れるおそれはなく、外観においては明らかな差異を有するものであって、その外観における相違が顕著であることから、称呼の共通性が外観における差異を凌駕するものとはいい難く、外観、称呼及び観念を総合して考察すると、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
4 本件商標の指定商品と引用商標の指定役務との類否について
本件商標の指定商品は、前記第1のとおりであり、引用商標の指定役務は、前記第2のとおりであるところ、飲食料品の商品の製造、販売と、その商品を取り扱う小売等役務の提供とが同一の事業者によって行われることは、商取引上、しばしば見受けられるものであり、そのような場合、該商品の販売場所や需要者の範囲が、該役務の提供場所や需要者の範囲と一致することから、本件商標の指定商品中、第30類「茶,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,みそ,穀物の加工品,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類」、第31類「あわ,きび,ごま,そば(穀物),とうもろこし(穀物),ひえ,麦,籾米,もろこし」及び第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」は、引用商標の指定役務である第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、類似するものといえる。
5 小括
上記3のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、上記4のとおり、本件商標の指定商品と引用商標の指定役務が類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-12-10 
結審通知日 2019-12-12 
審決日 2019-12-25 
出願番号 商願2017-38620(T2017-38620) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W303133)
T 1 11・ 263- Y (W303133)
T 1 11・ 265- Y (W303133)
T 1 11・ 262- Y (W303133)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浜岸 愛 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 半田 正人
石塚 利恵
登録日 2018-01-05 
登録番号 商標登録第6007642号(T6007642) 
商標の称呼 フフフ、トミトミトミ 
代理人 玉井 信人 
指定代理人 津田 靖 
代理人 小倉 秀夫 
指定代理人 島田 俊之 
指定代理人 松本 智広 
代理人 小山 智弘 
代理人 橋本 勇 
代理人 三田 大智 
指定代理人 大川内 康郎 

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