• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
管理番号 1370975 
審判番号 取消2018-300555 
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-07-20 
確定日 2019-11-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5601094号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5601094号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5601094号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,第12類「自動車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,軸,軸受,軸継ぎ手,ベアリング,動力伝導装置,緩衝器,ばね,制動装置」を指定商品として,平成25年3月12日に登録出願されたものである。本件商標は,同年6月24日受付の出願人名義変更届けにより,株式会社H&Kコーポレーションから被請求人にその名義が変更,その後,同年7月26日に設定登録され,その商標権は,現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は,「商標法第53条の2の規定により,本件商標の登録を取り消す。審判請求費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 当事者について
(1)請求人は,ドイツ国法人である。
請求人は,パリ条約の加盟国であるドイツ国において商標に関する権利を有するもの,すなわち,別掲2のとおりの構成からなる商標に係る商標権(以下「独国登録商標」という。甲2)などの商標権を有する者である。
(2)被請求人は,住所を愛知県岡崎市庄司田に所在する日本国法人である。
(3)本件商標は,当初「株式会社H&Kコーポレーション」(以下「H&K社」という。)により登録出願が行われた。
そして,登録査定の通知後,登録料の納付日と同日(平成25年6月24日)付けで,被請求人(H&K社の住所と同一住所)へと名義変更されて設定登録された(甲1,甲3)。
2 当事者間の関係について
H&K社は,請求人との間で,平成13年10月12日付け「Burstner社のキャンピングトレーラー及びキャンビングカーの輸入業者のための契約書」(甲4,以下「本件契約書」という。なお,「Burstner」の文字中の「u」の文字にはウムラウトが付されている。以下「Burstner(burstner)」の文字について同じ。)によって,独国登録商標を付したキャンピングカー(以下「請求人商品」という。)を日本国内で独占的に販売する権利の契約を締結した。
そして,上記(3)のとおり,H&K社と住所を同一にする被請求人に譲渡された。
本件契約書の目的と契約当事者の記載及び本件商標の名義変更の経緯から,被請求人は,本件商標の指定商品を扱う輸出入契約において,請求人の代理人であったことが明白である。
したがって,H&K社及び被請求人は,「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人であった者」に該当する。
3 本件商標と独国登録商標の類似関係について
(1)指定商品について
本件商標権の指定商品「自動車並びにその部品及び附属品」は,独国登録商標の指定商品のうち「Caravans, Motorcaravans, Campingwagen, Nutz-lastanhanger sowie Teile der vorgenannten Waren und Zubehor zu vorgenannten Waren (soweit in Klasse 12 enthalten)」(参考訳:キャラバン(乗物),モーターキャラバン(乗物),キャンピングカー,これらの商品の付属品および部品(区分12に属するものに限る))と類似する。
(2)商標の態様について
本件商標権の商標と独国登録商標とは,別掲1及び別掲2のとおり,外観をほぼ同一とし,称呼及び観念も一致するものであるため,商標全体として同一又は類似の関係にあること明らかである。
4 正当な理由について
(1)契約の第7条
本件契約書には,(ア)輸入業者(H&K社)は,自らの会社名の一部として,「Burstner」の名称を使用することができること,(イ)「Burstner」の名称を使用する権利は,輸入業者(H&K社)と請求人との関係が終了すれば消滅すること,及び(ウ)その後,販売地域における,「Burstner」という名称に対するすべての権利は,請求人に復帰することの記載がある(甲4,甲5)。
(2)取得の意思
上記(1)(ウ)のとおり,「Burstner」という名称に対する「すべての権利」が,契約終了に伴って請求人に「復帰する」との記載は,すなわち,名称に関して使用を一度は許可する,しかし,契約が終了すれば名称に関するすべての権利が請求人に復帰する,という経過を明確にした規定である。
そうすると,請求人は,「Burstner」という名称に係る商標の取得の意思が明確であったことが明らかである。
このように,請求人とH&K社との間では,「正当な理由」の理由の一つである「その国において,審判請求人が商標権を取得する意思がないことを信じ込ませた場合」のケースには当てはまらないから,H&K社による本件商標の出願は,「正当な理由なく」,「商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで」出願されたものであることが明らかである。
5 その他の経過
請求人と被請求人との間では,その他,以下の事実が存在する。
(1)被請求人の名称でWEB検索し,検索結果のウェブサイトは,キャンピングカー販売,買取を行う「ハインツアンドカンパニー株式会社」のウェブサイトとして運営されており,ページの上欄には「このサイトはhttp://www.official-eshop.jp/に移動しました」として,自動転送が設定されている(甲6)。
なお,上記検索結果のウェブサイトのドメイン検索結果(甲7)によると,当該ドメインが,H&K社と同一の読みを有する「株式会社エイチアンドケイコーポレーション」によって取得されている。
(2)上記自動転送先のウェブサイト(以下「販売HP」という。)では,請求人商品のオーダーの受付やアフターパーツの販売を行っている(甲8の1?3)。
(3)請求人は,国際登録日を2017年2月8日とする日本を指定国に含んだ国際商標登録出願(国際登録番号:第1343140)(以下「請求人国際出願」という。)を行った(甲10)。
この請求人の国際出願に対し,2017年(平成29年)9月14日付けで日本特許庁より受けた暫定拒絶通報(甲11)において,本件商標を引用商標とした,商標法第4条第1項第11号により商標登録を受けることができない旨の通知を受けた。
請求人は,被請求人に対し,2017年(平成29年)12月19日に行ったビデオ会議において,本件商標を請求人の名義とするべく,譲渡の協力を依頼したが,本件審判の請求時点において,被請求人から依頼に応ずる旨の回答はない(甲12)。
(4)請求人は,被請求人に対し,日本での販売計画などを含めた今後の事業計画書の提出を求めているところ,再三にわたって提出期限の延期を繰り返しており,進展が見られないことから,契約の打ち切りを検討している(甲12)。
(5)以上のとおり,被請求人が請求人による本件商標の名義変更の依頼に応じず本件商標権を保有し続け,請求人国際出願の日本での登録を妨げる行為は,請求人の商標が日本国に登録されていかなかったことを奇貨として本件商標の出願を行い,請求人の使用商標に係る日本国での商標権を自ら取得して,その事実を利用して請求人の日本国内での自由な営業活動を妨げることを目的としたものである。これは国際的な取引の信義上から,また,消費者の自由な選択を阻害する点でも許されるものではない。
6 まとめ
以上のとおり,本件商標は,パリ条約の加盟国であるドイツ国において,商標に関する権利を有する者の当該権利に関する商標と同一又は類似するものであり,かつ,その指定商品は当該権利に係る商品に類似するものであり,被請求人及びH&K社には正当な理由もなく,請求人の承諾を得ないで登録されたものであるため,商標法第53条の2に規定する要件を全て満たすものであるから,同規定により取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 当事者及び本件商標と独国登録商標の類似関係ついては,異論はない。
2 正当な理由について
(1)請求人が主張する取消理由について,契約内容との矛盾が散見している。
請求人は,被請求人と請求人との契約はについて「日本へのバーストナー社製品の独占輸入のため締結された。」と述べている。そうすると,被請求人に対し請求人に係る製品の独占輸入権が与えられているのであれば,請求人の述べる貿易の不当な制限は成り立たないことになる。
(2)被請求人は,独占輸入の権利とともに請求人より日本国内での商標使用を許諾されている。これらの経緯から,被請求人は,本件商標を登録したものである。また,被請求人が本件商標の登録に及んだのは請求人に係る製品のブランド保護と濫用防止を目的としたものである。請求人は被請求人が本件商標を取得した理由を,請求人の日本国内での自由な営業活動を妨げるためと述べているが,そもそも契約上で請求人は被請求人の日本国内での独占輸入権を認めており,請求人の日本国内での自由な営業活動自体はありえないものである。
(3)本件契約書について,その真偽を確かめる必要がある。これは被請求人が前被請求人経営者より引き継いだ内容のものである。ただし,記載されているサインは被請求人が把握している前被請求人経営者のものとは類似しておらず,本証が正当なものであるかは疑わしい(乙1?乙3)。
(4)請求人は,本件契約書の第7条の内容を持って,商標の取得の意思が明確であったとしているが,本条は使用の権利を与えるとも書かれている。これは請求人が契約時に,日本国内での商標の取得の意志がなかったとも取れるものである。
したがって,本条文をもって,本件商標の取消を請求する理由とはならない。
3 その他の経過について
(1)電子メール(甲12)は,平成29年12月19日に行なわれたビデオ会議内の内容について記載されてあるものとしているが,根本として議題に誤りがある。当該会議における主な議題は請求人側から被請求人が購入した車輛(キャンピングカー)の保証についてである。請求人の提示証拠では,あたかも商標についての話合いが主であるかのように記載されているが,当案件については会議の流れの一端において簡素に提案があったのみである。
この提案に対する被請求人からの要求は,重要事項であるので一担当者からの口頭ではなく責任者ないしそれに準ずる者から書面にて説明を受けたいとしたのみである。被請求人からの要求は履行されておらず,請求人は譲渡の提案と述べているが,現時点において金額提示もない。
以上のとおり,請求人の要求は一方的でありその内容に合議的なものは存在しなかった。
(2)請求人の求める事業計画書について,被請求人は,確かに提出の同意をした。ただし,事業計画書の提出は請求人商品の購入へ直結するものであるため,被請求人は,請求人に対し,提出は目下の最重要案件である保証問題が一定の進展を見せた時に行なうとの条件を通達した。この通達は請求人から送られてくる再三の事業計画書提出要求の際に都度返送している。
(3)販売業者の欄にブランド名を記載するのは商業に携わるものであれば当然の行為といえる。被請求人が販売しているのは請求人のブランドの商品であり,販売元が前面に出て行く必要など皆無である。業者名の記載方法は,被請求人が販売促進戦略の一環として行なっているものであり,これをもって商標の取消理由の一つとするのは,明らかなこじつけといえる。
また,被請求人は,日本国内での独占権を有しており,ブランド名を冠した表記であっても何ら問題はないといえる。
4 まとめ
以上のとおり,請求人の主張は契約内容,一般的な商業手法の観点から見ても一方的なものであるといえる。
そして,被請求人は,本件商標の登録をブランドイメージの保護のために行っており,これを用いて具体的な収益を上げたことは一度もない。被請求人は,正当な理由をもって商標の登録を行なったものであるから,本件商標は取り消されるべきでない。

第4 当審の判断
1 商標法第53条の2は,「登録商標がパリ条約の同盟国,世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であつて当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり,かつ,その商標登録出願が,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であつた者によつてされたものであるときは,その商標に関する権利を有する者は,当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定し,パリ条約第6条の7の規定を実施するため,他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の保護を強化することを目的としたものであって,他の同盟国等における商標に関する権利を有する者の承認なしに,その代理人又は代表者等が我が国に当該商標と同一又は類似範囲にある商標について出願した場合であって,それが登録されたときは,商標に関する権利を有する者がその登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨を定めたものである。
そこで,本件商標の登録が上記条項の要件を満たすものであるか否かについて,以下検討する。
2 本件商標がパリ条約の同盟国,世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって,当該権利に係る商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものであるか否かについて
(1)パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者
請求人は,パリ条約の同盟国であるドイツ国において,2004年(平成16年)4月1日に登録出願し,同年5月25日に設定登録(登録第30418973号,独国登録商標)し,別掲2のとおりの構成からなる商標について,第12類「キャラバン(乗物),モーターキャラバン(乗物),キャンピングカー,これらの商品の付属品および部品(区分12に属するものに限る)」を指定商品とする商標権を有する者と認めることができる(甲2,請求人の主張)。
(2)商標及び商品の類否
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,「burstner」の文字を横書きし,当該文字の「burst」の文字部分の上下に赤色で塗りつぶされた半円状の図形を配してなるものであり,その指定商品には上記第1のとおり第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を含むものである。
イ 独国登録商標について
独国登録商標は,別掲2のとおり,「burstner」の文字を横書きし,当該文字の「burst」の文字部分の上下に赤色で塗りつぶされた半円状の図形を配してなるものである。
そして,独国登録商標の指定商品は,上記(1)のとおり,第12類「キャラバン(乗物),モーターキャラバン(乗物),キャンピングカー,これらの商品の付属品および部品(区分12に属するものに限る)」を指定商品とするものである。
ウ 商標の類否
本件商標と独国登録商標とは,上記ア及びイのとおり,ほぼ同一の商標である。
エ 商品の類否
本件商標の指定商品中,第12類「自動車並びにその部品及び附属品」は,独国登録商標の指定商品(第12類「キャラバン(乗物),モーターキャラバン(乗物),キャンピングカー,これらの商品の付属品および部品(区分12に属するものに限る)」)と同一又は類似の商品と認めることができる。
したがって,本件商標の指定商品には,独国登録商標の指定商品と同一又は類似のものが含まれる。
(3)小括
上記(1)及び(2)によれば,本件商標は,パリ条約の同盟国において商標権に相当する権利を有する者の権利に係るドイツ国に係る登録商標(独国登録商標)と類似する商標であって,その指定商品は,当該権利に係る指定商品と同一又は類似の商品というのが相当である。
3 本件商標の登録出願が,正当な理由がないのに,その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるか否かについて
(1)証拠及び両当事者の主張によれば,以下の事実を認められる。
ア 職権で調査した事項によれば,上記第1のとおり,本件商標は,H&K社(愛知県岡崎市庄司田1-12-11)によって平成25年3月12日に登録出願され,同年6月24日受付の出願人名義変更届けにより,H&K社から被請求人(愛知県岡崎市庄司田1-12-13)にその名義が変更,その後,同年7月26日に設定登録されたことが認められる。
なお,当該出願人名義変更届けに係る譲受人である被請求人と譲渡人であるH&K社に係る代表者は,同一人物であると認められる(職権調査)。
イ 本件契約書(甲4)によれば,請求人とH&K社とは,2001年(平成13年)10月12日付けで,H&K社が請求人商品について,日本への独占輸入の権利とともに日本国内での当該製品の独占的販売し,「Burstner」の文字に係る商標を使用することに関して契約した。
そして,本件契約書の第7条には,「輸入業者(審決注:H&K社)は,自らの会社名の一部としてBurstnerの名称を使用することができる。この権利は,輸入業者とBurstner社(審決注:被請求人)との関係が終了次第,消滅する。販売地域におけるBurstnerという名称に対する全ての権利が請求人に復帰する。」との記載がある。
なお,本件契約書におけるH&K社の住所は,「岡崎市庄司田1-12-13」である。
ウ H&K社のウェブサイト(平成30年7月17日印刷)には,「Burstner/バーストナー」の見出しの下,「快適な走行安定性と確かな安定性。贅沢を追求した美しいキャンピングカー。」の記載とともに,小型のバスの画像が掲載されている(乙6の2)
エ 請求人と被請求人は2017年(平成29年)4月に,被請求人が事業計画書を作成することに合意したが(当事者間に争いの無い事実),当該計画書は,被請求人が保証問題の進展がないことを理由として,提出されなかった(甲12,被請求人の主張)。
オ 請求人と被請求人は,2017年(平成29年)12月19日に,上記イに基づく取引に関連して,ビデオ会議を実施した(甲12)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば,以下のとおり判断するのが相当である。
ア 本件商標は,上記第1のとおりH&K社により,平成25年3月12日に登録出願された。
イ 本件商標は上記(1)アのとおり平成25年6月24日受付の出願人名義変更届けにより,H&K社から被請求人にその名義が変更されたが,(ア)被請求人とH&K社は同じく「愛知県岡崎市庄司田1-12」に所在し番地の末尾が「13」と「11」と異なるにすぎないこと,(イ)被請求人と譲渡人であるH&K社に係る代表者が同一人物であること,(ウ)本件契約書において,H&K社の住所が被請求人と同じ「岡崎市庄司田1-12-13」と記載されていること,(エ)請求人と被請求人は同29年4月に,被請求人が事業計画書を作成することに合意していること,(オ)請求人と被請求人は同年12月19日に取引に関連して,ビデオ会議を実施していること,(カ)同30年7月17日の時点においてもH&K社のウェブサイトが存在し,請求人商品を紹介していることを踏まえると,例えH&K社と被請求人が別法人であるとしても,被請求人は,請求人とH&K社に係る同13年10月12日付けの本件契約書に係る契約を承継し,少なくとも同29年12月19日まで継続していたものと優に推認できる。
ウ 本件契約書は,日本への独占輸入の権利とともに日本国内での請求人商品の独占的販売する契約であって,当該契約は平成29年12月19日まで被請求人により継続していたものと推認できることからすると,H&K社は,本件商標の登録出願時(同25年3月12日)において,請求人の代理人であったといえる。
エ 被請求人は,本件契約書の第7条において,被請求人が日本国内での商標使用権を認められていたことは明らかであり,当該事実は被請求人が日本国内で商標権を取得するに値する旨主張する。
しかしながら,本件契約書の第7条には,契約が終了した際には販売地域におけるBurstnerという名称に対する全ての権利が請求人に復帰(契約が終了すれば名称に関するすべての権利が請求人に復帰するとの意)する旨の記載があること,本件契約書には,被請求人が日本国内において本件商標の取得について許諾する旨の記載がないこと,本件商標の登録出願前に,H&K社又は被請求人が請求人に対し,請求人の商標登録出願の予定を確認するなどした事実はないこと,及び他に請求人がH&K社又は被請求人に対し,日本において独国登録商標と同一の態様からなる商標の権利を取得することを放棄した,または,取得する関心がないことを信じさせた場合に該当すると認めるに足る客観的な裏付ける証拠はないことからすると,H&K社の本件商標の登録出願をする行為は,正当な理由があったものと認めることはできない。
(3)小括
上記(1)及び(2)によれば,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願の日に請求人の代理人であった者によってされたものと認めることができる。
4 被請求人の主張について
被請求人は,本件契約書に記載されているサインは,前被請求人経営者のものと類似しておらず,本件契約書が正当なものであるかどうか疑わしい旨主張するとともに,前被請求人経営者に係る賃貸契約書(乙1),当座貸越契約書(乙2)及び確定申告書(乙3)を提出する。
しかしながら,被請求人が提出する契約書等(乙1?乙3)に係る前被請求人経営者のサインは,全てすべて日本語(漢字)によるサインであり,本件契約書に係るサインとは全く異なるものであること,請求人とH&K社及び被請求人とは,H&K社のウェブサイトには請求人商品が掲載されるなど請求人商品に係る取引が行われていたといえること,平成29年12月19日には,請求人と被請求人によるビデオ会議が行われていたこと等を踏まえると,請求人とH&K社及び被請求人とは本件契約書に基づいて商取引が行われていたと推認できるから,本件契約書は正当なものであるといえる。
したがって,被請求人の上記主張は,採用することができない。
5 むすび
以上のとおり,本件商標は,パリ条約の同盟国において商標権に相当する権利を有する者である請求人の当該権利に係る独国登録商標と類似する商標であって,その指定商品は,当該権利に係る指定商品と同一又は類似の商品であり,かつ,本件商標の登録出願は,正当な理由がないのに,請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願時に請求人の代理人であった者によってされたものと認めることができる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第53条の2に規定する要件をすべて満たしているものと認められるから,同規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩は,原本参照。)


別掲2 独国登録商標(色彩は,甲第2号証参照。)


審理終結日 2019-10-01 
結審通知日 2019-10-04 
審決日 2019-10-17 
出願番号 商願2013-17631(T2013-17631) 
審決分類 T 1 31・ 6- Z (W12)
最終処分 成立  
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 榎本 政実
早川 文宏
登録日 2013-07-26 
登録番号 商標登録第5601094号(T5601094) 
商標の称呼 バーストナー 
代理人 大島 信之 
代理人 山口 真二郎 
代理人 山口 朔生 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ