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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W42
管理番号 1370939 
審判番号 取消2017-300389 
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-06-07 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5639879号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成31年2月27日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成31年(行ケ)第10035号、令和元年9月18日判決言渡)があったので、さらに審理の上、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5639879号商標(以下「本件商標」という。)は、「アンドホーム」の文字を標準文字により表してなり、平成25年7月9日に登録出願、第37類「建設工事,建築工事に関する助言,建築物の施工管理,建築設備の運転・点検・整備」及び第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究」を指定役務として、同年12月27日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成29年6月22日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、同26年6月22日ないし同29年6月21日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務中、第42類「建築物の設計,デザインの考案」についての商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第42類「建築物の設計,デザインの考案」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人と請求人との間の通常使用権の許諾契約の不存在
本件商標の権利者である被請求人と請求人である「紀州住機建設株式会社」との間には、本件商標の通常使用権の許諾契約は存在しない。被請求人は、「被請求人及び株式会社コラボハウスが、請求人に対して、本件商標の使用の許諾及びコンサルティング契約を債務不履行解除した」というが(以下「株式会社コラボハウス」を「コラボハウス」という。)、このような「本件商標の使用の許諾契約」が存在したのであれば、その契約書が証拠として提示されていてしかるべきであり、契約書が提示されていないことから、被請求人による請求人への本件商標の通常使用権の許諾がないことは明らかである。
してみれば、請求人による標章「アンドホーム」の使用は、本件商標の通常使用権者による商標の使用ではない。
なお、請求人は、その代表取締役が独自に考案した標章「アンドホーム」を、被請求人が標章「アンドホーム」について商標登録を獲得した事実を知らずに使用を続けていたものである。被請求人は、請求人が標章「アンドホーム」を使用していることを知っていて、商標登録を有していることを請求人にいわずに、請求人の事業の発展を見てから、請求人に対し費用の請求をしているのであり(乙1)、このようなことは、許されることではない。
したがって、請求人による標章「アンドホーム」の使用は、本件商標の使用にはなり得ない。
(2)被請求人とK氏との間の通常使用権の許諾契約の不存在
ア 被請求人は、「被請求人は、また、K氏に本件商標を許諾して使用させていた(乙7)」というが、K氏への本件商標の通常使用権の許諾契約の契約書は提示されていない(以下「K氏」を「K」という。)。
イ 被請求人は、Kによる陳述書(乙7)及び工事請負契約書(乙8?乙10)を提出して、これらにより、本件商標の通常使用権の許諾の存在を証明しようとしているようであるが、これらの証拠によっても「本件商標の通常使用権の許諾の存在」は、証明されない。
ウ Kの陳述書(乙7)には、本件商標の登録番号の記載すらなく、Kは、本件商標の存在を認識していない。登録商標の存在を認識していないものの行為は、仮にそれが標章「アンドホーム」の役務である取消請求役務についての使用であったとしても、「登録商標の使用」、「通常使用権者による商標の使用」にはなり得ない。
エ 陳述書(乙7)においてKは、「なお、アンドホームという屋号については、事業を法人化するにあたり、被請求人が他にアンドホームの商標を許諾していた会社(請求人注:請求人のことであると考えられる。)との事情を考慮して、シンプルハウスという商号で平成28年6月9日に法人化することにした。」旨述べている。
そうすると、Kは、請求人が「アンドホーム」を使用していることを知っていたことになるから、仮に工事請負契約書(乙8?乙10)が真正のものであるとしたら、請求人が和歌山県において使用をして周知とした標章「アンドホーム」を不正の利益を得る目的で使用したものといえる。
しかも、そもそも、工事請負契約書(乙8?乙10)は、契約相手が消されているために原本を確認しない限り真正のものとは認められず、Kが法人化した際の名称及び時期関係もあいまって、真正に存在する契約書か非常に疑わしいものである。
また、屋号は、商標と同様、反復使用して初めてその屋号、商標に顧客吸引力が化体してその価値が向上していくものであり、Kのように屋号「アンドホーム」の使用が前記3件の工事請負契約書の契約を締結する際の使用のみで、以降は「アンドホーム」の使用をやめているのであれば、「前記3件」での屋号の使用は、名目的な使用にすぎず、Kに、本件商標の存在に意識がないこと、本件商標の通常使用権の許諾の認識がないことともあいまって、商標法上の「商標の使用」であるといい得るものではなく、被請求人がKによる陳述書(乙7)及び工事請負契約書(乙8?乙10)を提出してきたのは、単に、不使用取消審判を免れるための急ごしらえのものである。
このように、被請求人の主張する、Kの陳述書でいう同人による「アンドホーム」の使用は、本件商標の「使用」ではない。
オ さらに、工事請負契約書(乙8?乙10)は、取消請求役務についての使用を示すものでもない。
Kは、陳述書(乙7)において、「3 アンドホームの事業を具体的にお話すると次のようになります。」として、6項目((1)?(6))を挙げ、さらに、「アンドホームという屋号では、少なくとも3人の方と建築請負契約を締結しました。契約主のうち平成28年4月7日付けで契約した注文主の方の件(請求人注:乙第8号証を意味する。)に関しましては、平成28年6月9日に建築確認がなされている記録があることから、少なくともアンドホームの屋号で建築確認の申請の段階までは事業を行っていたと思います。」と述べて、これをもって取消請求役務について、商標を使用していることを述べようとしているようである。
しかるに、「平成28年6月9日の建築確認」を証明するものは、提示されていない。また、工事請負契約書(乙8)による契約が真に成立していたとしても、その際に、Kは、標章「アンドホーム」をどの役務について使用していたかは、陳述書において明示しておらず、答弁書においても明確に述べられてはいない。この点は、乙第9号証及び乙第10号証の契約時に標章「アンドホーム」がどの役務について使用されたかについても同様である。
したがって、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求役務についての本件商標の使用をしていることを証明できていない。
このように、Kによる標章「アンドホーム」の使用は、仮に工事請負契約書(乙8?乙10)の請負契約が、真正に存在するものであったとしても、本件商標の通常使用権者による取消請求役務についての使用ではない。
(3)結論
以上のように、被請求人が、本件商標の使用であると主張する「請求人による標章『アンドホーム』の使用」は、本件商標の通常使用権者による取消請求役務への商標の使用ではない。
また、被請求人が、本件商標の使用であると主張する「Kによる標章『アンドホーム』の使用」も、仮に工事請負契約書(乙8?乙10)に示される請負契約が真正にされたものであったとしても、本件商標の通常使用権者による取消請求役務への商標の使用ではない。
したがって、本件商標は、取消請求役務について、要証期間において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実はない。
3 口頭審理陳述要領書(平成30年7月9日付け)
(1)被請求人と請求人との間に、本件商標の使用許諾を含む契約を締結した事実は存在しない。
(2)Kは、要証期間に、本件商標を使用して取消請求役務を提供しておらず、提供していたという事実も示されていない。また、工事請負契約書(乙8)と資金計画表(乙18、乙19、乙21?乙23、乙26、乙31、乙33)、及び工事請負契約書(乙8)と建築図面(乙17、乙20、乙24、乙25、乙28)は、いずれも整合性がない。
(3)被請求人又は同人が使用許諾した者が、要証期間に、本件商標を使用して取消請求役務を提供していないことは、被請求人が、平成29年3月9日に「受任のご連絡兼警告書」(乙1)を送付した後である同年5月23日に、本件商標の存続期間が同35年12月27日まで残存しているにもかかわらず、本件商標の取消しを警戒して、本件商標と同一の商標を同一の指定役務に登録出願(商願2017-69571:甲2)していることからも明らかである。
4 上申書(平成30年8月10日付け)
(1)乙第10号証の工事請負契約書がねつ造されたものであることについて
乙第10号証の工事請負契約書に係る注文主の住所の不動産登記簿謄本には、同契約書に示された注文主の姓はどこにも確認されず、同契約書における工事請負契約の契約日である平成28年4月24日の前後に、土地の所有者が変更された経歴も建物が変更された経歴もない。
したがって、乙第10号証の工事請負契約書は、事実に反してねつ造された文書であって、違法に作成された証拠として証拠能力がなく、仮に証拠能力が認められたとしても証明力は存しない。
(2)Kの証言が偽証であることについて
Kの証言によると、工事請負契約書(乙8?乙10)は、それぞれ注文主がおり、注文主の要望に従って打合せを重ね、建築完了したとのことであった。
しかしながら、乙第10号証の工事請負契約書の住所についての建物の不動産登記簿謄本(甲4、甲6)によると、それぞれ、平成4年10月22日(甲4)及び同13年7月12日(甲6)に建物が登記されているから、Kが起業したという同28年1月(反対尋問におけるKの証言)から、乙第10号証の工事請負契約書の工事請負契約日である同年4月24日の間で造成前の土地であったということはあり得ない。
したがって、乙第10号証についてのKの証言は、事実に反しており、何一つ信ぴょう性がない。
また、反対尋問において、建築中の垂れ幕を「アンドホーム」の名称で建てたのかという質問に対して、わからない、たぶん「アンドホーム」であったといいながら、後で「シンプルハウス」であったといい直した。起業したばかりの者が自社名の垂れ幕を作成して建てたかどうかすらを覚えていないということは考え難いことから、Kの証言は、真実を述べたものではないと判断せざるを得ない。
したがって、Kの証言は、何一つ真実とはいえないと考えざるを得ず、偽証と判断せざるを得ないものであり、証拠能力がなく、仮に証拠能力が認められたとしても一連の矛盾した証言内容からして証明力が存しない。
(3)Kの陳述(乙7、乙37)が偽証であることについて
Kによる乙第7号証の陳述書には、「私は設計士ですので、私自身が建築物の設計等を行っていました。」と述べ、Kによる乙第37号証の陳述書には「何度も建物の図面を作成して提案をすることになります。」と述べている。
しかしながら、反対尋問においては、Kは、「設計士はですね、コラボハウスの設計の方にお手伝いしてもらって、間取りを作ってもらったり協力してもらいました」、また「設計の提案をコラボハウスの設計士の方にちょっとお手伝いしてもらって」などと述べた。すなわち、設計及び建築図面の作成をしているのはコラボハウスの設計士であってKは設計及び建築図面の作成をしていない。
したがって、Kの陳述(乙7、乙37)は、真実を述べたものではなく、偽証と判断せざるを得ないから証拠能力がなく、仮に証拠能力が認められたとしても証明力が存しない。
(4)被請求人がKによる使用に関して提出した証拠について
被請求人がKの使用を主張する証拠として提出した乙第8号証、乙第9号証、乙第16号証ないし乙第34号証及び乙第38号証は、ねつ造が容易な写しによって提出され、唯一原本が提示された乙第10号証さえも真実を示すものではなかったことから、被請求人が提出したこれらの証拠は、ねつ造されたものと判断せざるを得ず、証拠能力がないものであり、仮に証拠能力があったとしても証明力が存しないものである。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人は、代理人、復代理人及び証人と結託し、被請求人の都合の良いように証拠をねつ造し証人に偽証させて、請求人から不当に利益を得ようとしていると考えざるを得ず、被請求人の主張及び証拠に真実性はないといわざるを得ない。
被請求人が提出した証拠は、すべて証拠能力がなく、仮に証拠能力が認められたとしても証明力が存しないものである。
すなわち、要証期間において被請求人及び同人が使用許諾した者によって本件商標が取消請求役務に使用された証拠は何一つ示されていない。
5 上申書(平成30年9月28日付け)
(1)被請求人による請求人への登録商標の使用許諾について
口頭審理陳述要領書に記載のとおり、被請求人と請求人との間に、本件商標の使用許諾を含む契約を締結した事実は存在しない。
なお、被請求人は、平成30年8月20日付け上申書において、乙第4号証及び乙第14号証に対する請求人の反論が特になく、何ら契約がなく不動産の取得や1,246万円が振り込まれることがないから、許諾及び使用についての契約関係があったことを主張するが、不動産取得と商標の使用許諾には何ら関連性がなく、商標権者による使用がされておらず、業務上の信用の化体していない登録商標の使用許諾料として、前記金額が支払われるようなことがないことは、常識的にも明らかである。
(2)被請求人の本件商標「アンドホーム」使用のKへの許諾について
被請求人は、Kが被請求人からアンドホームの商標を使用してもよいとの許諾を受けた(乙7、K証言)と主張する。
しかしながら、Kの陳述(乙7、乙37)及び証言は偽証である。
(3)Kによる本件商標の取消請求役務に係る使用について
工事請負契約書(乙8)の注文主、資金計画表(乙18、乙19、乙21?乙23)の宛先及び建築図面(乙17、乙20、乙24、乙25、乙28)の宛先は証拠として提出されておらず、これらは証拠として関連付けされていない。
そして、被請求人による主張及び提出された証拠からは、Kが要証期間に本件商標を使用して取消請求役務を提供した事実は立証されていない。
(4)証拠のねつ造と偽証
ア 乙第8号証ないし乙第10号証、乙第16号証ないし乙第34号証及び乙第38号証について
被請求人は、乙第42号証及び乙第43号証の全部事項証明書を根拠に、乙第10号証をねつ造である旨の請求人の主張が根拠を欠き理由がない旨主張し、前記乙各号証は偽造不可能であると主張しているところ、請求人が調査した「調査地住所」が「住所」ではなく「地番」ということであれば、乙第42号証及び乙第43号証の登記情報となる。
そこで、当該地番の建築計画概要書(甲9)を確認したところ、証言によると「コラボハウスの設計士の方に依頼」したはずが「有限会社 山蔭建設二級建築士事務所」のY氏が「設計者」であった(甲9)。すなわち、証言は偽証でありKは設計やデザインの考案を行っていない。
また、株式会社シンプルハウスではなく、Kが工事施工者であることが記載されている(甲9)。
そして、【6.工事施工者】の営業所名には、株式会社シンプルハウスではなく、「シンプルハウス」と記載されている。このことは、Kが法人設立前に「アンドホーム」ではなく「シンプルハウス」を屋号として用いていたことを示す公的書類に他ならない。
乙第10号証より先に進行していた乙第8号証において、その記載のとおり2016年5月下旬に着手したのであれば、それ以前(すなわち株式会社シンプルハウスの設立以前)に建築確認申請が提出されたはずであり、その建築計画概要書に工事施工者が記載されているはずである。乙第8号証及び乙第9号証の建築計画概要書が示されず、唯一請求人が所在地を取得できた乙第10号証の建築計画概要書さえも「シンプルハウス」と記載されていたことから、Kによる「アンドホーム」の使用事実が存在しないことは疑いようがない。
イ 被請求人が屋号として「アンドホーム」を使用していた事実を確認するべく調査したところ、そのような事実は一切存在しなかった。
(ア)一般社団法人愛媛県建築士事務所協会において、建築士事務所の登録を確認したところ、「株式会社シンプルハウス二級建築事務所」(甲10)が平成29年2月21日に登録されていた。しかし、「アンドホーム」を用いた登録は、それを名称の一部に含む第三者の登録が存在するものの(甲11)、それ以外に登録された経歴は存在しなかった。
(イ)愛媛県の土木部土木管理課により発行される建設業許可業者名簿には、「株式会社シンプルハウス」(甲12)が登録されているものの、「アンドホーム」は登録されていなかった。なお、建設業の廃業届を提出すると愛媛県報に掲載されるが、要証期間及びそれ以降現在までに「アンドホーム」の廃業届も存在しなかった。
(ウ)このように、「アンドホーム」が使用された事実を示す公的書類は、一切確認されなかった。
また、原本が示された乙第10号証については、印鑑登録証明書が添付されておらず、真の契約書であることが示されていない。
そして、被請求人は、乙第42号証及び乙第43号証が偽造不可能な証拠であると強く主張しながら、乙第10号証が偽造やねつ造ではないとは主張しなかった。
(エ)以上説明したように、乙第10号証が真正の契約であることを証明する公的書類が存在しない上に、「アンドホーム」が用いられていた公的事実が存在せず、その一方で「シンプルハウス」が屋号として使用されていた公的事実が存在する以上、「アンドホーム」を用いたとされる乙第8号証ないし乙第10号証、乙第16号証ないし乙第34号証及び乙第38号証は、ねつ造されたものと判断せざるを得ないから、これら乙各号証は、証拠能力がないものであり、仮に証拠能力があったとしても証明力が存しないものである。
ウ Kの陳述(乙7、乙37)及び証言が偽証であることについて
(ア)被請求人は、乙第10号証のねつ造以外の請求人の主張について、「請求人独自の見解であり、理由がないことは明らかである。」と述べるのみであり、請求人が示したKの陳述と証言における明らかな矛盾について釈明をしなかった。
(イ)Kの陳述と証言は矛盾が存在し、公的書類に現れた事実と異なるところも存在している。
乙第7号証の陳述書には、「私は設計士ですので、私自身が建築物の設計等を行っていました。」と述べ、乙第37号証の陳述書には、「何度も建物の図面を作成して提案をすることになります。」と述べ、証人尋問におけるKの証言によると、「設計図面をつくらしてもらって」と証言した。また、反対尋問では、「図面を入力まではしないですよ・・・僕のほうが・・・ラフな図面を描いて、それをコラボハウスの設計士の方に依頼してつくってもらって、・・・」と証言した。このように、はじめは設計をしているといい、あとでは設計をしていないといい、証言が矛盾している。さらに、実際には「コラボハウスの設計士」ではなく「有限会社 山蔭建設二級建築士事務所」のY氏が「設計者」(甲9)であるから、事実とも矛盾する。建築士法第23条には、「一級建築士、二級建築士若しくは木造建築士又はこれらの者を使用する者は、他人の求めに応じ報酬を得て、設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築物の建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理(木造建築士又は木造建築士を使用する者(木造建築士のほかに、一級建築士又は二級建築士を使用する者を除く。)にあつては、木造の建築物に関する業務に限る。以下「設計等」という。)を業として行おうとするときは、一級建築士事務所、二級建築士事務所又は木造建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事の登録を受けなければならない。」と定められている。
そうすると、Kは、そもそも平成29年2月21日(甲10:登録事務所情報)まで建築物の設計を業として行うことができないものであり、建築士法に違反して違法に設計をしたのでなければ、設計をしたとする陳述及び証言は偽証である。
以上のように、Kの陳述及び証言は、矛盾があり、しかも確認した事実(要証期間には建築士事務所の登録がされておらずKは業として建築物を設計することができない)とも相違しており、偽証と判断せざるを得ない。
したがって、陳述書(乙7、乙37)及びKの証言は、真実を示すものではないから証拠能力がなく、仮に証拠能力が認められたとしても証明力が存しない。
(5)Kと被請求人の間における商標使用許諾契約の不存在
陳述書(乙7)及びKの証言は偽証であるから、使用許諾の事実は立証されていない。
また、そのほかに商標の使用許諾を示す契約書等の証拠は提出されていない。
よって、被請求人とKの間に商標の使用許諾契約が成立しておらず、被請求人の商標は要証期間に取消請求役務に使用されていない。
(6)被請求人が要証期間に本件商標を使用して取消請求役務を提供していないこと
上述したように、被請求人は、少なくとも建築確認申請より後は「シンプルハウス」の名称を用いたと主張しており、建築工事等については「アンドホーム」を使用していないことを認めている。
また、建築工事よりも前に行う役務である建築物の設計についても、建築士事務所登録をしていないKが業として請け負えないことは明らかであるから、「アンドホーム」の名称を用いて建築物の設計ができないことも明らかであると共に、Kの証言においても最終的には設計はしていないことが証言されている。
さらに、被請求人は「アンドホーム」の商標を付した資金計画書の作成を主張(乙26、乙31、乙33)するが、資金計画書の作成は取消請求役務ではない。
そのほか、被請求人は、「アンドホーム資金計画表中には、『建物設計申請費用』の項目が存在していた。」(乙26、乙31、乙33)及び「アンドホームの事務所等で建築図面を示していた。」(乙28)旨主張するが、上述のとおり、Kは、要証期間に設計ができず、また、設計はしていないと証言している上に、「アンドホームの事務所」というものの存在も立証されていない。
(7)ホームページ、パンフレット、カタログの不存在
一般的に、起業して初めてのパンフレットやカタログは記念に残しておくものであろうし、仮に残さないような人物であったとしても、2016年1月の独立(甲8)から3年弱であれば、パンフレットやカタログの発注時の資料や納品時の資料、あるいは業者からの請求書等は残っているものである。このような証拠が一切提出されていないのは、そのような事実が無かったからに他ならない。
(8)まとめ
以上のとおり、Kが要証期間に本件商標を取消請求役務に使用した事実は証明されておらず、そもそも被請求人とKの間における商標使用許諾契約の存在が証明されていない上、被請求人と請求人の間にも商標使用許諾契約は存在しないから、被請求人又は同人から使用許諾された者が要証期間に本件商標を取消請求役務に使用した事実は一切存在しない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、審判事件答弁書、審判事件回答書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第71号証(枝番号を含む。)を提出すると共に、証人尋問を申し立てた。
1 答弁の理由
本件商標は、その指定役務中、第42類「建築物の設計,デザインの考案」について、被請求人が許諾した通常使用権者が使用した事実が存在する。
(1)請求人への許諾
本件審判がなされた契機としては、被請求人及び同人が代表取締役を務めるコラボハウスが請求人に対して、本件商標の使用の許諾及びコンサルティング契約を債務不履行解除したところにあった(乙1、乙2)。
請求人は、当方からの警告に対して、(a)被請求人から集客の方法等につき一定の助言を受けたが契約を締結した事実はない、(b)本件商標については請求人が発案して使用しており警告書によって初めて商標登録がなされていたことに気付いた旨を主張する(乙3)。
しかしながら、被請求人は、コラボハウスと共に請求人との間で、本件商標のライセンスを含めたコンサルティングに関する契約を締結していた。
この点、請求人は、被請求人との間で契約関係がなかった旨を主張するが、被請求人及びコラボハウス(以下「被請求人ら」という場合がある。)は、請求人に対して、社員を派遣したり、不動産取得のために資金提供を行っており(乙4)、何らの契約関係もなく社員の派遣を行ったり、不動産取得のための援助や社員等を派遣することは考えられない。
また、被請求人は、請求人に対して、アンドホームの屋号を提案するほか、ロゴマークなど売り方に関することに関してのアドバイスを行っていた。請求人とコラボハウスのホームページがデザインやコンセプトが類似していることからも、呼称を含めたブランドデザインを被請求人らに委託していたことは明らかである(乙5、乙6)。
さらに、請求人は、自社のブランドを構築する際にどのような呼称にするかを検討するはずであり、検討している呼称について商標検索を行っているはずである。その検討の過程で、被請求人がアンドホームの商標を取得していることは気づいたはずであることから、警告書によって初めて気づいたというのは不自然であり、呼称についても許諾を得ていたというべきである。
なお、請求人としては、前記の事情を熟知しているはずであり、そのため「当社と被請求人らとのやり取り等も踏まえれば、本件商標に基づく被請求人の権利主張は、権利濫用であり許されないものである」(乙3)と予備的に主張していたものといえる。
そして、被請求人から使用の許諾を受けた請求人が、本件商標を付して取消請求役務を提供していたものであることから、請求人の主張には理由がない。
(2)Kへの許諾
被請求人は、また、Kに本件商標を許諾して使用させていた(乙7)。Kは、本件商標を付して建築工事請負契約を締結しており(乙8?乙10)、同契約の過程において取消請求役務について本件商標を付し使用していたといえる。
したがって、取消請求役務について、被請求人が許諾した通常使用権者が使用した事実が存在する。
2 審判事件回答書(平成30年1月25日付け)
(1)請求人の使用について
ア 使用許諾について
(ア)被請求人は、コラボハウスの代表者であり(乙2)、同社の関連会社であって、被請求人も取締役を務め、実質的な代表者である株式会社コラボネット(乙11)と請求人は、平成25年8月に加盟店契約を締結した(乙12)。
その後、請求人は、遅くとも前記加盟店契約とは別に、平成26年4月30日までに被請求人らと商標の使用許諾を含む契約を締結した。同契約の報酬は、増加した売上げの2%を予定していた。
なお、請求人は、当初ブルーハウスという商標を用いようとしていたが、被請求人は、それでは売上げが伸びないと考え、被請求人の方からアンドホームという商標を提案し、同商標で事業を行うこととなった。
(イ)被請求人は、ロゴマークを含む広告制作の費用を支出したり、請求人の現場へ赴く等した。また、コラボハウスは、請求人に対して、不動産の取得費用を援助するために、一度、コラボハウスが土地を取得した後に、請求人に土地の名義を変更した(乙4)。
この点、請求人による商標の使用については、平成26年8月から開始されており(乙13)、被請求人が主張する商標の使用許諾があった時期としても矛盾しない。また、請求人は、商標の使用に当たり、PR活動を行っており、通常そのような活動を行う前に商標について確認を行うはずである。
本件商標に係る商標出願は、平成25年7月9日に行われており、同年12月27日には、商標登録もされている。このような登録状況の中で、請求人が商標の存在を知らなかったというのは考え難い。
(ウ)その後、被請求人らが請求人に対して報酬の請求をしたところ、請求人が報酬の支払を拒んだ。
そのため、被請求人らと請求人の関係は悪化し、報酬を除く費用を精算してもらうこととなり、請求人より平成27年4月24日に費用の精算がなされた(乙14)。
なお、Kの事業において、途中でアンドホームからシンプルハウスに商標を変更した理由は、被請求人側から請求人に対して、商標の使用の中止を求めたものの、使用を中止しなかったことから、インターネットの検索等により請求人の事業が上位に表示されるため、事業の混同をおそれ、商標を変更したものである。
イ 「使用」について
請求人は、要証期間に商標を取消請求役務に使用していたことを自認しており(乙13)、その使用の証拠として乙第15号証を提出している。
以上からすれば、本件商標を請求人が取消請求役務について「使用」していたことは明らかである。
(2)Kによる「使用」について
ア 商標法第2条第3項第4号について
Kは、工事請負契約の前後を通じて、建築物の図面を作成して、設計やデザインの考案を行っている(乙7、乙17、乙20、乙24、乙25、乙28。なお、マスキングをしているが宛名の部分に乙第8号証の注文主の名前が記載してある。)、通常、施主が何の事前の相談もなく建物の建築を依頼することはあり得ず、施主の要望に対して、請負人が要望に応える提案を行った上で、施主が自らのニーズにあった施主に依頼を行うものである。契約後は、施主の要望に応える提案をさらに具体的にしていく。本件でも、同様の過程をたどったのであり、Kがアンドホームとしてアンドホームの事務所で行っていたことも併せて考えれば、Kがアンドホームの商標を用いて建築物の設計、デザインの考案を行ったのは明らかである。
なお、工事図面の作成、工事全体の資金計画表を作成(乙18、乙19、乙21?乙23、乙26、乙31、乙33。なお、マスキングをしているが宛名の部分に乙第8号証の注文主の名前が記載してある。)等していたことからも、Kが建築物の設計、デザインの考案を行っていたことは容易に推認できる。
イ 商標法第2条第3項第8号について
次に、Kは、同人が代表取締役を務めていた株式会社松山中央不動産(乙35)のHPにおいて、アンドホームの商標を付した広告を行っていた(乙36、現在のところ、正確な時期は不明であるが、会社を設立した平成27年12月24日からシンプルハウスを設立した平成28年6月9日までの間のいずれかの時期。シンプルハウス設立後もそのまま現在まで残っていた。)。
したがって、商標法第2条第3項第8号に該当するのは明らかである。
3 口頭審理陳述要領書(平成30年6月22日付け)
(1)合議体の暫定的見解に対して
建築図面が「建物の設計」に該当するのは明らかである。建築図面をKが作成したことはKの証人尋問による証言にて立証する。
(2)本件商標を使用して取消請求役務を提供していた事実について
平成30年1月25日付け回答書で主張及び立証した事実のほかに、Kの証人尋問において主張及び立証を補足する予定である。
4 上申書(平成30年8月20日付け)
(1)本件商標に係る被請求人から請求人への許諾及び使用について
請求人と被請求人の契約関係を示すために乙第4号証及び乙第14号証を提出しているが、請求人の口頭審理陳述要領書においても特に反論されていない。何らの契約関係もなく、不動産の取得がなされたり、1,246万円といった金銭が振り込まれることは考えられず、反論がないことからも許諾及び使用についての契約関係があったことは明らかである。
(2)本件商標に係る被請求人からKへの使用の許諾について
Kは会社を退職後、自ら事業を立ち上げるに当たって被請求人に相談することとし、事業を被請求人や同人が代表を務めるコラボハウスに協力して行うこととなった。そして、Kは、事業を行う際の協力の一つとして、被請求人から「アンドホーム」の商標を使用してもよいとの許諾を受けた(乙7、K証言)。
(3)Kによる本件商標の取消請求役務に係る使用について
ア 工事請負契約に至る経緯
Kは、契約を受ける前に修正しながら何度もアンドホームの事務所等で資金計画表や建築図面を見せ、アンドホームを選んでもらった上で、請負契約を締結する旨述べている(K証言)。この点、契約者名が記載された書面で確認されたとおり、「アンドホーム」の商標が付された各資金計画表(乙18、乙19、乙21?乙23)の宛先はいずれも工事請負契約書(乙8)で記載された注文主と一致する氏名が記載されていることからも明らかである。また、建築図面を示して建築工事をする建物の仕様を注文主と相談して請負契約を締結していることも前記注文主と一致する氏名が記載された建築図面(乙17、乙20)があることからも明らかである。
イ 工事請負契約
前記アの過程を踏まえて、Kと注文主との間では「アンドホーム」の商標を付した工事請負契約が締結された(乙8?乙10)。
資金計画表(乙26)の「建築工事費」、「建物付帯工事費」を合計し、その合計金額から別途請求することになる「建物付帯工事費」中の「建物契約印紙費用」と「アンドホーム契約値引(役員了承)」の額を減ずると工事請負契約書(乙8)の「請負代金額」となる(乙37)。
ウ 工事請負契約締結後
Kは、乙第8号証ないし乙第10号証のアンドホームの商標が付された工事請負契約書を作成することによって、法律上、各注文者に対して、建築工事を行う債務が発生していたといえる。
Kは、工事請負契約締結後も、注文主の要望に応えるため、アンドホームの商標を付した資金計画表を作成した(乙26、乙31、乙33)。同資金計画表中には、「建物設計申請費用」の項目が存在していた。また、前記債務に基づき、アンドホームの事務所等で建築図面を示していた(乙28)。
エ これらの行為は、少なくとも平成28年3月2日(乙17、乙18)から同年5月14日(乙33)の期間はなされていたものである。
オ したがって、Kは、要証期間に、本件商標を使用して取消請求役務を提供したものといえる。
また、アンドホーム資金計画表に「建物設計申請費用の項目」があることからすれば、商標法第2条第3項第8号に該当することも明らかである。
(4)乙第10号証が偽造である旨の主張について
ア 請求人から乙第10号証が偽造である旨の主張がなされているところ、その主たる根拠は、甲第3号証ないし甲第6号証と思料される。
しかしながら、そもそも、甲第3号証ないし甲第6号証は、乙第10号証とは全く関連がない登記情報であり、請求人の主張は根拠を欠き全く理由がないものといわざるを得ない。
全部事項証明書(乙42、乙43)に照らせば、乙第10号証の注文主が土地を購入し、建物を建築していることが明らかである。
全部事項証明書(乙42、乙43)は、法務局が発行している書類であり、およそ偽造等は不可能であり、かつ、内容としても正確といえる。
したがって、請求人の主張は、全部事項証明書とも矛盾する点でも理由がないといわざるを得ない。
イ なお、請求人代理人は、第1回口頭審理において、本件については、乙第1号証ないし乙第39号証まで、文書の成立を認める旨陳述している。
(5)その余の主張について
請求人独自の見解であり、理由がないことは明らかである。
5 審判事件回答書及び上申書(令和2年8月25日付け)
本件の審決取消訴訟(平成31年(行ケ)第10035号)における陳述を記載した書面並びに裁判所に提出した証拠(特許庁に提出した証拠を除く。)及びその証拠説明書を提出する(乙44?乙71)。

第4 証拠調べ(証人尋問)
当審は、平成30年7月23日に、特許庁審判廷において、両当事者出頭のもとに、口頭審理及び証拠調べ(証人尋問)を行った。

第5 当審の判断
1 認定事実
(1)被請求人が、Kによる本件商標の使用の事実に関して提出する書証の記載内容は、次のとおりである。
ア 工事請負契約書(乙58)に係る新築工事に関する書証
(ア)平成28年4月7日付け工事請負契約書の写し(乙58。これは乙8のマスキングを外した契約書の写しである。以下「工事請負契約書1」といい、同契約書に係る契約を「工事請負契約1」という。)には、その表紙に、注文者として夫婦2名の氏名(以下「注文者1」という。)及び請負業者として「アンドホーム代表 K」と記載されている。また、同契約書本文にも、請負業者である「アンドホーム」と注文者1とが、松山市内の木造ガルバリウム鋼板葺2階建の工事請負契約(着手平成28年5月下旬、完成同年9月下旬、請負代金額合計1,302万3,192円。「建物の売買代金はアンドホーム仕様によるもの」などとする記載がある。)を締結する旨の記載が存在し、末尾には、注文者1の各署名押印と「アンドホーム 代表 K」の記名押印が存在する。同契約書は、収入印紙が貼付され、契印もなされるなどしており、少なくともその写しからは、内容及び外観上不自然な点は見当たらない。
(イ)工事請負契約1の建築工事に対応する平成28年6月9日付けの確認済証及び添付書類一式の写し(乙47)には、確認申請書も含まれており、同申請書の「工事施工者」欄には、不動文字で、氏名「K」、営業所名「アンドホーム」などと記載されている。
また、かかる確認済証の確認対象とされた建物の建築計画概要書の写し(乙48)には、「工事施工者」欄に、氏名「代表取締役 K」(不動文字である「K」の前に手書きで代表取締役」と挿入されたもの。)及び営業所名「株式会社 シンプルハウス」(不動文字である「アンドホーム」との記載を手書きの二重線で削除した上で、その横に記載されたもの。)などと記載されており、備考欄には平成28年6月15日に工事施工者変更届が提出された旨が手書きで記載されている。
(ウ)工事請負契約1の経過に関する書証として、(a)平成28年3月2日付け、同月8日付け、同月28日付け、同年4月5日付け及び同月22日付けの各建築図面の写し(乙17、乙20、乙24、乙25、乙28)、(b)同年3月2日付け、同月7日付け、同月20日付け、同月23日付け、同月26日付け、同年4月8日付け、同年5月10日付け及び同月14日付けの各資金計画表の写し(乙18、乙19、乙21?乙23、乙26、乙31、乙33)、(c)名刺の写し(乙51(枝番号を含む。以下同じ。))、(d)保証書の写し(乙52)、(e)Kが注文者1に宛てたメール2通の表示画面を撮影して印刷したもの(乙53(枝番号を含む。以下同じ。))が提出されている。
(a)各建築図面は、いずれも、建物の平面図及び立面図が記載されたものであるが、「アンドホーム」との標章の記載は存在しない。
(b)各資金計画表は、いずれも、「アンドホーム資金計画表」との見出しの下に、工事代金(その内訳は、建物工事費、建物付帯工事、お客様持ち込み費用、土地代金などの不動産関連の支払費用である。)及び工事代金以外の費用(その内訳は、登記費用、銀行費用、建物オプション費用である。建物オプション費用には、地盤改良工事費用(予定費)との項目や、値引項目が含まれる。)の内訳や建築費用合計額が記載されると共に、住宅ローンの借入金額とみられる記載や頭金の記載、それを踏まえた毎月の支払金額等が記載されている。建物オプション費用の内訳部分には、「地盤改良工事費用(予定費)」40万円の項目において「◎地盤調査の結果により工事費用が変動いたします。」「(5.4万円?50万円程度の価格差があります。)」との記載があり、また、「アンドホーム契約値引き(役員承認)」(ただし、一部端が切れている記載もある。)として値引き額が記載されている。平成28年4月8日付けの資金計画表(乙26)の「建物工事費」1,355万1,192円及び「建物付帯工事」97万7,000円の合計額から「建物契約印紙費用」5,000円及び「アンドホーム契約値引き(役員承認)」150万円を控除すると、前記(ア)の契約金額と同じ1,302万3,192円となる。
(c)名刺(乙51)には、「代表K」との記載と共に、事業者又は屋号を示すものとして「アンドホーム」との記載がある。なお、日付の記載は存在しない。
(d)保証書(乙52)は、地盤総合保証の保証書であり、工事請負契約1の対象である建物につき、東昇技建株式会社(以下「東昇技建」という。)が実施した地盤調査について、地盤の不同沈下に起因する建物の不具合によって発生した損害を保証することなどを内容とするものであり、仕事発注者として「アンドホーム」と記載されている。また、かかる保証契約は、建設会社と地盤調査会社等の請負契約の成立を前提とする旨の記載がある一方で、発行日などの日付の記載は存在しない。
(e)のメールの写真(乙53)は、それぞれ「2016年3月4日」及び「2016年4月28日」に、Kから注文者1に送信したとみられる内容のメールを撮影し、印刷したものであり、いずれのメールにも、「アンドホームK」との表示が存在する。
これらの各書証につき、その内容及び外観上不自然な点は見当たらない。
(エ)陳述書(乙50)は、注文者1(夫)が、工事請負契約1の経過につきその認識を記載した書面であって、Kに対して土地探しから相談して、Kから建物の図面や見積りについて説明を受けるなどして、最終的に契約を締結したことなどが記載された上で、末尾に、注文者1(夫)の住所及び署名押印が存在する。
イ 工事請負契約書(乙9)に係る新築工事に関する書証
平成28年4月24日付け工事請負契約書の写し(乙9。ただし、注文者の住所及び氏名はマスキングされたもの。)には、その表紙に請負業者として「アンドホーム」、同契約書本文に、請負業者である「アンドホーム」が注文者と工事請負契約を締結する旨の記載が存在し、末尾には、「アンドホーム 代表 K」の記名押印が存在する。
ウ 工事請負契約書(乙59)に係る新築工事に関する書証
(ア)平成28年4月24日付け工事請負契約書の写し(乙59。これは乙10のマスキングを外した契約書の写しである。以下「工事請負契約書3」といい、同契約書に係る契約を「工事請負契約3」という。)には、その表紙に、注文者として夫婦2名の氏名(以下「注文者3」という。)及び請負業者として「アンドホーム」と記載されている。また、同契約書本文にも、請負業者である「アンドホーム」と注文者3とが、松山市内の木造ガルバリウム鋼板葺2階建の工事請負契約(着手平成28年6月下旬、完成同年10月中旬、請負代金額合計1,241万3,270円。「建物の売買代金はアンドホーム仕様によるもの」などとする記載がある。)を締結する旨の記載が存在し、末尾には、注文者3の各署名押印と「アンドホーム 代表 K」の記名押印が存在する。同契約書は、収入印紙が貼付され、契印もされるなどしており、その内容及び外観上不自然な点は見当たらない。
(イ)工事請負契約3により建築された建物の建築計画概要書の写し(乙68)には、「工事施工者」欄に、いずれも不動文字により、氏名「代表取締役 K」及び営業所名「シンプルハウス」などと記載されており、「アンドホーム」との標章の記載はない。また、確認済証交付年月日は平成28年7月14日と記載されている。
(ウ)工事請負契約3の経過に関する書証として、(f)平成28年3月30日付け及び同年5月29日付けの各資金計画表の写し(乙38、乙39)、(g)名刺2種類の写し(乙55、乙56(いずれも枝番号を含む。以下同じ。))、(h)地盤調査報告書の写し(乙44)及びその保証書の写し(乙57)が提出されている。
(f)各資金計画表の見出しや項目等の体裁は、いずれも前記ア(ウ)の(b)と同様である。ただし、「地盤改良工事費用(予定費)」の金額については、平成28年3月30日付けのものが40万(工事請負契約1の金額と同額である。)と記載されているのに対し、同年5月29日付けのものが7万9,920円と記載されている。そして、値引きについては、単に「(役員承認建物オプション値引き)」などとして値引き額の記載があるにとどまる。また、建物の仕様について「アンドホームオープン前契約」「コラボハウス注文住宅仕様」という記載が存在する。平成28年5月29日付けの資金計画表(乙39)の「建物工事費」1,244万1,276円及び「建物付帯工事」98万2,000円の合計額から「建物契約印紙費用」1万円及び「(役員承認建物オプション値引き)」100万円を控除すると、前記(ア)の契約金額とほぼ同じ1,241万3,276円となる。
(g)各名刺の写しは、両面印刷の名刺を片面ずつコピーしたものとみられるところ、乙第55号証の名刺は乙第51号証のものと同じ体裁であり、乙第56号証の名刺は、片面に、「代表 K」及び事業者又は屋号を示すものとして「アンドホーム」の記載がある。なお、日付の記載は存在しない。
(h)地盤調査報告書の写しは、東昇技建が工事請負契約3の工事に関して平成28年5月25日に実施した地盤調査の報告書であり、「ビルダー様名称」として「アンドホーム」の記載が存在する。そして、同報告書の基礎仕様審査書の考察欄では、調査地について「ベタ基礎により対応可能」とされており、これは、同報告書において地盤改良を必要としないと判断されたことを意味する。また、保証書(乙57)は、かかる報告書を受けて発行された地盤総合保証の保証書であり、注文者3の工事請負契約の対象である建物につき、前記(d)と同種の保証をすることを内容とするものである。保証書には仕事発注者として「アンドホーム」と記載されており、かかる保証契約は、建設会社と地盤調査会社等の請負契約の成立を前提とする旨の記載がある。なお、いずれも発行日の記載は存在しない。
(エ)陳述書(乙54)は、注文者3(妻)が、工事請負契約3の経過につきその認識を記載した書面であって、希望の土地を見つけた段階でKを紹介され、Kから図面や資金計画表について説明を受けるなどして、最終的に契約を締結したことなどが記載された上で、末尾に、注文者3(妻)の住所及び署名押印が存在する。
エ 各書証の作成過程について
Kは、本件審判手続の証人尋問(乙46)において、建設会社の従業員を辞めて事業を始める際に、原告に相談したところ、原告から本件商標の使用を許されたため、平成28年1月末頃から、「アンドホーム」の名称で、客から注文を受けて建物の設計と建築をする住宅の事業を始めたこと、「アンドホーム」の名称で、少なくとも3件の契約をしたこと、その3件の契約は、Kが、名刺を渡して自己紹介をした上で、その注文者らと直接やりとりをしながら、何度も資金計画表や建築図面等を修正して注文者らに提案し、最終的に契約書を交わして契約を締結したこと、上記建築図面は、K自らがラフな図面を描いた上で他の設計士に依頼して作ってもらったこと、上記資金計画表は全てKが作成したこと、資金計画表の「建物の設計申請費用」とは、建築図面を作って市の検査に出すための費用であること、同表に記載されている「地盤改良工事費用」は、地盤調査費用及びその調査の結果土地が軟らかいことが判明した場合に必要となる改良工事の費用が計上されていること、資金計画表の「建物工事費」及び消費税と、「建物付帯工事」費用の合計額から、先にもらっている「建物契約印紙費用」を引いて、「アンドホーム契約値引き(役員承認)」を引くと、契約書の請負代金額となること(なお、建物印紙の金額を足すかのような供述をするが、文脈に照らし言い間違いであることは明らかである。)、地盤調査は東昇技建に依頼して行ってもらったこと、平成28年6月9日に「アンドホーム」から「シンプルハウス」に名前を変えて法人化したこと、契約をした3件についてはいずれも建築工事を完了したことを供述する。
また、Kは、上記尋問において、建築確認申請書については、「アンドホーム」で出したか「シンプルハウス」で出したかは今手控えがないので分からないとしつつも、平成28年6月9日以降、銀行との関係では、「アンドホーム」で出した事前審査関係書類をシンプルハウス名義のものに差し替えるなどしたが、役所の関係の申請等は現場監督がしていたので分からないなどという趣旨の供述をする。
そして、Kは、陳述書(乙7、乙37)においても、概ね同趣旨の供述をしている。
(2)以上の被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア Kは、被請求人から本件商標の使用許諾を受け、平成28年1月頃から「アンドホーム」との名称を用いて、現場監督ができるもう一人の者と共に、建築等の事業を開始した(乙7、乙46)。
イ Kは、平成28年4月7日、注文者1との間で、建物の建築工事を内容とする工事請負契約1を締結し、同年9月20日頃、建物を完成させた。かかる契約の締結の際、Kは、注文者1との間で、「アンドホーム」を請負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1,302万3,192円)を作成して、注文者1に交付した(乙46、乙48、乙58)。
ウ また、Kは、工事請負契約1に関して、土地を探すところから協力し、少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて、建物のデザインや設計についても注文者1と打合せを複数回にわたって行い、金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打合せの際、Kは、「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築費用合計代金(3,300万円台から3,600万円台の金額である。)及びその内訳等を示す資金計画表や、建物の平面図や立面図が記載された建築図面を、打合せを踏まえた修正を加えつつ、複数回にわたり、注文者1に示すなどした。
前記資金計画表のうち、作成日を平成28年3月23日以降とするものについては、その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印紙代・・・をご準備下さい。」、「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+印紙代1万円・・・をご持参で当社にお越し下さい。」、「◎土地決済時に建物着手金・上棟金として、1000万円を当社にお振り込み頂きます。」、「◎最終の建物お引き渡し時に、残金を現金もしくはお振り込み頂きます。」などと記載されている(乙17?乙26、乙28、乙31、乙33、乙46、乙50)。
エ Kは、平成28年4月24日、注文者3との間で、建物の建築工事を内容とする工事請負契約3を締結し、同年10月頃、建物を完成させた。かかる契約の締結の際、Kと注文者3は、「アンドホーム」を請負業者とする工事請負契約書3(請負代金額合計1,241万3,270円)を作成して注文者3に交付した(乙43、乙46、乙59)。
オ また、Kは、工事請負契約3に関し、ある程度土地が決まっている段階で関与し始めて、少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日頃にかけて、建物のデザインや設計についても注文者3と打合せを複数回にわたって行い、金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映させた。
かかる打合せの際、Kは、「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築費用合計代金(2,600万円台から2,700万円台の金額である。)及びその内訳等を示す資金計画表や建築図面を、打合せを踏まえた修正を加えつつ、複数回にわたり、注文者3に示すなどした(乙38、乙39、乙43、乙46、乙54、乙59)。
カ Kは、工事請負契約1及び3に関して、建築図面を作成する際には、Kがラフな図面を書いて、それを別の設計士に依頼して作成した上で、注文者1及び3に提示した(乙7、乙46)。
キ Kは、平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し、「アンドホーム」との名称の使用をやめて、同月15日には工事請負契約1にかかる建築確認申請の工事施工者を、同社へと変更した(乙7、乙46?乙48)。
2 判断
(1)使用者について
前記1(1)エ及び(2)アのとおり、Kは、被請求人から本件商標の使用許諾を受けていることから、通常使用権者と認められる。
(2)使用商標について
前記1(2)イ及びウのとおり、Kは、契約の前後、「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築費用合計代金及びその内訳等を示す資金計画表等を、注文者1及び3とのやりとりを踏まえて修正しながら複数回にわたり、注文者1及び3に示すなどした上で、平成28年4月7日及び同月24日に「アンドホーム」の名称で工事請負契約1及び3を締結して、工事請負契約書1及び3を注文者1及び3に交付しているから、当該交付の時点では、契約書に表示されている「アンドホーム」との標章に対して業務上の信用が発生したといえる。
(3)使用役務について
Kは、前記1(2)カのとおり、注文者1及び3に対して建築図面を作成して示すなどしているところ、かかる建築図面は、K自身が作成したものではなく、Kがラフな図面を書いてそれを別の設計士に依頼して作成させたものである。
もっとも、前記1(2)イ及びエのとおり、Kは、「アンドホーム」の名称にて工事請負契約1及び3を締結しているところ、Kは、自ら別の設計士に依頼をして図面を作成させていることや、現実に注文者らに対応したのは主としてKであったことなどに照らすと、Kは、工事請負契約1及び3の締結とともに「建築物の設計」も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと認められる。
そうすると、Kが、別の設計士に依頼して行った建築図面の作成は、Kが注文者1及び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから、Kが「建築物の設計」を提供したと認められる。
(4)使用時期について
Kは、平成28年4月7日及び同月24日に「アンドホーム」の名称で工事請負契約1及び3を締結して、工事請負契約書1及び3を注文者1及び3に交付しており、当該交付の日付は、要証期間内である。
(5)小括
前記(1)ないし(4)によれば、本件商標の通常使用権者であるKは、要証期間に、その請求に係る指定役務に含まれる「建築物の設計」に関する取引書類に、本件商標を付して頒布したものと認められ、これは、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、工事請負契約書1及び3は、ねつ造されたものであり、Kの証言は偽証である旨主張する。
しかしながら、工事請負契約1及び3に関する各工事請負契約書(乙58、乙59)、各資金計画表(乙18、乙19、乙21?乙23、乙26、乙31、乙33、乙38、乙39)、各建築図面(乙17、乙20、乙24、乙25、乙28)、各保証書(乙52、乙57)及び地盤調査報告書(乙44)については、Kの供述又は陳述(乙7、乙37、乙46)とあいまってその信用性が認められるといえるものである。また、注文者らの陳述書(乙50、乙54)についても、Kの供述及び陳述並びに上記各書証と整合するものであるから、信用性が認められる。
(2)請求人は、Kが、「アンドホーム」との標章を使用して工事請負契約1及び3を請け負った後、実際に建築工事を開始した時点では「シンプルハウス」へと屋号を変更していたことをもって、取消対象役務を「アンドホーム」の名称にて提供していないと主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、Kは、工事請負契約1及び3の締結とともに「建築物の設計」も含む当該工事に関する一切の役務を一括して請け負ったものであるところ、工事請負契約書1及び3を注文者1及び3に交付しているから、当該交付の時点では「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発生したといえる。その後、Kが、その事業について「シンプルハウス」との名称に変更したとしても、かかる信用が、直ちに保護に値しなくなるものではない(また、建築工事が開始される前には「建築物の設計」は完了しているはずなのであるから、この点からしても、本件において、Kが「アンドホーム」の名称で「建築物の設計」という役務を提供したことは明らかであるといえる。)。
したがって、Kは「アンドホーム」との標章を取消対象役務中の「建築物の設計」について使用したといえる。
(3)請求人は、Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張する。
しかしながら、不使用取消に言及する請求人から被請求人に対する連絡は、平成29年3月24日付けであって、Kが「アンドホーム」との標章を使用した平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること(乙3)や、前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと、Kによる本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件審判の請求に係る取消対象役務中の「建築物の設計」について、本件商標を使用していたことを証明したといえる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-09-30 
結審通知日 2020-10-06 
審決日 2020-12-03 
出願番号 商願2013-53225(T2013-53225) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (W42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小俣 克巳 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
木住野 勝也
登録日 2013-12-27 
登録番号 商標登録第5639879号(T5639879) 
商標の称呼 アンドホーム 
代理人 相原 正 
復代理人 古澤 康治 
復代理人 岩本 直樹 
代理人 西原 広徳 

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