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審決分類 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない W0532
管理番号 1370129 
審判番号 無効2020-890019 
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-02-20 
確定日 2020-12-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5890695号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5890695号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成28年4月27日に登録出願,第5類「大麦若葉を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状又は液状の加工食品」及び第32類「粉末状の飲料用青汁のもと,大麦若葉を主原料とする飲料用粉末」を指定商品として,同年9月27日に登録査定,同年10月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効にすべきものである。
2 請求人適格について
請求人を被告とし,被請求人を原告とする商標権侵害行為差止請求事件が係属中であるから,請求人は,法律上の利害関係を有する。
3 商標法第3条第1項第6号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,別掲のとおり,上部の濃い緑から下部の白色への「グラデーションの背景」(最下部は濃い緑色となっている)の真ん中よりやや上に黒色縁取り白色で大書した「大麦若葉」の文字を配し,その下部中央にやや小さめの文字で黄色縁取り赤色の「100%」の文字,その隣にやや小さめの文字で黒色縁取り白色の「粉末」の文字を配し,さらにその下部中央に「緑色の飲み物の入った透明のグラス」の図形を配してなるものである。
(2)本件商標の各構成要素の識別力について
ア 「大麦若葉」の文字について
本件商標を構成する「大麦若葉」の文字は,「イネ科の植物である大麦の若い葉の部分のこと」を指し(甲2),「青汁」の原材料となることから(甲3),本件商標の指定商品との関係において,原材料そのものを表す語であり,なんら特徴的ではない書体にて白色で表している。
したがって,本件商標を構成する「大麦若葉」の文字は,指定商品との関係において,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。
イ 「100%」及び「粉末」の文字について
本件商標を構成する「100%」及び「粉末」の文字は,色彩は異なるが同じ大きさで隣同士結合して記載されている。
これらの文字は,上記「大麦若葉」の表示とともに使用されていることから,本件商標に係る商品が大麦若葉を100%使用していることと,商品が「粉末」状であるという商品の品質を直接的,かつ,具体的に表示しているにすぎない。
また,本件商標の指定商品に全て「粉末」の語が含まれていることからも,需要者は,「粉末」の文字を商品の品質表示と認識するといえる。
そして,本件商標は,商品の品質を直接的,かつ,具体的に表示する「100%」及び「粉末」の文字を,何ら特徴的でない書体にて,一般的に採択され得る色彩である赤色及び白色にて表している。
したがって,本件商標を構成する「100%」及び「粉末」の文字は,指定商品との関係において,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。
ウ 「緑色の飲み物が入った透明のグラス」の図形について
「緑色の飲み物が入った透明のグラス」の図形は,本件商標の指定商品との関係では,単に「グラスに入った青汁」を認識させるものであり,特に際立った特徴もなく,実際に商品を飲む場合の商品の状態を写実的に表したものにすぎない。
本件商標の指定商品中,第32類「粉末状の飲料用青汁のもと,大麦若葉を主原料とする飲料用粉末」については,本来的に水等に溶かして飲むことが想定されているものであり,第5類「大麦若葉を主原料とする粉末状・粒状・顆粒状・錠剤状又は液状の加工食品」についても,このような表示がある以上は,液状の商品又は液状に溶かして飲む商品であることが想定される。
また,市販されている「飲料用青汁のもと」等のパッケージにおいて,グラスに注いだ青汁を表示することは,商品の内容を表示することとして広く一般的に行われている(甲4)。
したがって,本件商標を構成する「緑色の飲み物が入った透明のグラス」の図形は,指定商品との関係において自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。
エ 「グラデーションの背景」について
本件商標の構成要素としての濃い緑から白色への「グラデーションの背景」は,全体の構成から考えると,「背景」として認識されるものであって,自他商品の識別標識として認識されるものではない。
また,本件商標の指定商品との関係で,背景色に緑色を採択することは,商品の特性上当然行われることであり(甲4),商品パッケージ等で背景色をグラデーションとする手法についても何ら新しく珍しい手法ではない(甲4の3・7・9・10)。
したがって,本件商標の「グラデーションの背景」は,指定商品との関係において,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
オ 小括
以上のとおり,本件商標を構成する要素は,全て,指定商品の関係で,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない。
(3)本件商標の識別力について
本件商標の各構成要素が,指定商品との関係において,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないことは上述のとおりである。
そして,本件商標は,その各構成要素を任意に配置したパッケージを表したものと考えられるところ,主原料である「大麦若葉」の文字を上段に白色で大書することや,下部に実際に商品を使用する状態を表す「緑色の飲み物(青汁)の入ったグラス」を配置すること,背景を緑色とすることは,普通に採択され得るありふれた手法での配置であり,細かい点は異なるが,実際に同種商品においてもこのような手法が広く採択されていることは明らかである(甲4の2?10)。
また,本件商標には,構成要素として「100%」及び「粉末」の文字も存在するが,これらについても自他商品の識別標識としての機能を発揮するような態様で表示されているものではない。
さらに,これらの構成要素が組み合わさって,自他商品の識別標識としての機能を発揮するような特徴的な商標となっているといった事情も存在しない。
したがって,本件商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない構成要素をありふれた手法により配置したにすぎないものであって,その構成全体においても自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない識別力のない商標である。
以上のとおり,本件商標は,個々の構成要素においても,本件商標をその構成全体で観察した場合であっても,識別力のない商標であって,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識し得ないものである。
(4)審査における拒絶例
飲食料品関連のパッケージと思われる商標であって,本件商標と同じように識別力がないと思われる構成要素を任意に配置してなる商標が,特許庁の審査において識別力がない商標として拒絶されている(甲5)。
以上のように,指定商品との関係で識別力のない文字や図形,色彩,背景等からなる商標については,全体として自他商品の識別標識としての機能を果たし得るような顕著な特徴がなければ,本来,審査において拒絶されて然るべきである。
(5)結論
以上のとおりであるから,本件商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であって,商標法第3条第1項第6号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第31号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
本件商標は,「大麦若葉」の文字,「100%」及び「粉末」の文字,「緑色の飲み物の入った透明なグラス」の図形,及び,「グラデーションの背景」が渾然一体となった不可分一体の識別力を具有する商標として認識されるとみるのが相当であり,その構成全体をもって印象付けられる独自の商標的特徴を有する一体の商標として需要者に認識されるものであり,その意味で十分に識別力を有し得る商標である。
請求人は,市販されている「飲食料の青汁のもと」等のパッケージにおいて,グラスに注いだ青汁を表示することは,商品の内容を表示することとして広く一般的に行われている(甲4)と主張しているが,被請求人が本件商標の使用を準備開始した平成23年8月22日時点において,「ワイングラスのような丸みを帯びたグラスに青汁を注いだ画像(図形)」が広く一般的に行われているといった事実は把握していない。
請求人が挙げた証拠(甲4)に記載の商品の販売時期は不明だが,いずれも被請求人が本件商標の使用の準備を開始した以降に被請求人の本件商標を使用した商品の顧客吸引力の価値にフリーライドしたものではないかと推測される。
また,請求人は,「グラデーションの背景」について,何ら新しく珍しい手法ではないと主張しているが,請求人が挙げた証拠において,本件商標の構成要素である「濃い緑から白色へのグラデーションの背景」を使用している事実はなく,また,「商品の特性上当然に行われること」でもなく,さらに,「何等新しく珍しい手法ではない」ということもできない。
したがって,上記の構成要素を一体化した本件商標は,指定商品との関係において,自他商品の識別標識として機能を果たし得るものであり,商標法第3条第1項第6号に該当しない。
2 本件商標の商標法第3条第2項の該当性について
被請求人は,本件商標を平成23年8月22日から使用の準備を開始し,現在まで8年以上にわたって継続的,かつ,独占的に使用を行うとともに,カタログ・新聞・雑誌及びテレビCM等を通じて宣伝活動をした結果(乙1?乙30),現在においては,本件商標を付した「大麦若葉を主原料とする青汁」は,被請求人の取扱いに係る商品であると,取引者,需要者間に認識されるところとなってきている。
したがって,本件商標は,「使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」になったものであり,商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。
3 審査における拒絶例について
請求人は,審査における拒絶例をあげ,本件商標も拒絶されるべき旨主張しているが,商標が識別力を有するか否かの判断は,登録査定時又は審決時において,取引の実情を勘案し,その指定商品の取引者,需要者の認識を基準として,商標ごとに個別具体的に判断すべきであるところ,請求人のあげた拒絶例は,いずれも本件商標とは構成等を異にし,かつ,本件商標の登録査定時又は審決時における取引の実情は上記のとおりであるから,請求人の主張は受入れられない。
このことは,飲食料品関連のパッケージと思われる商標であって,請求人があげた拒絶例と同じような構成要素を任意に配置してなる商標が登録されている(乙31)ことからも明らかである。

第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係を有するものであることについて,当事者間に争いがないから,本案について判断する。
1 本件商標
本件商標は,別掲のとおり,上部に濃い緑を,その下に緑色から白色へのグラデーションを,下部に緑色の帯状図形をそれぞれ表し(以下,これらの色彩及び帯状図形をまとめて「色彩図形部分」という。),その濃い緑を背景に大きく「大麦若葉」の文字を白抜きで,その下に「100%」の文字を赤色及び黄色で,さらにその右側に「粉末」の文字を白抜きでそれぞれ表してなり(以下,これらの文字を合わせて「文字部分」という。),文字部分の下には,薄い黄緑色で縁取りされた「緑色の液体が入ったグラス」と思しき図形(以下「グラス図形部分」という。)を配した構成からなるものである。
そして,本件商標を構成する「大麦若葉」,「100%」及び「粉末」の各文字は,特段特徴のない態様で,指定商品の原材料,含有割合,形状を表したものとしか認識されないといい得るものであることから(甲3),その指定商品との関係において自他商品を識別する機能がない又は極めて弱いというべきである。
他方,本件商標の構成中,色彩図形部分及びグラス図形部分の組合せは,請求人が提出した証拠からは,このような構成態様が,本件商標の指定商品との関係において自他商品を識別する機能を果たし得ないとまではいえないところ,これらが看者に対してそれほど強い印象を与えるものともいえない。
なお,請求人は,本件商標の指定商品との関係で,背景色に緑色を採択することは,市販されている「飲料用青汁のもと」等のパッケージにおいて,グラスに注いだ青汁を表示するものとして広く一般的に行われている(甲4)と主張している。
しかしながら,本件商標の登録査定日は,平成28年9月27日であるところ,請求人の提出に係る証拠(甲4)のうち,登録査定時前の日付が確認でき,かつ,包装箱の背景色に緑色を採択しているのは,甲第4号証の6のわずか1件のみであり,それ以外の証拠については,印刷日が登録査定日以降であって,発売日又は掲載日等の記載もないことから,本件商標の登録査定時において,提出された証拠に示されているパッケージと同様のものが使用されていたのかは明らかではない。
よって,これらの証拠をもって,本件商標と同様に,「飲料用青汁のもと」等のパッケージにおいて,背景色に緑色を採択することが,登録査定時に同業他社が広く一般的に使用していたと認めることはできない。
以上よりすれば,本件商標は,それを構成する各部分が,自他商品を識別する機能がない又は極めて弱いこと,若しくは自他商品を識別する機能を果たし得るとしても看者にそれほど強い印象を与えるものとはいえないことなどからすれば,その構成全体をもって一体のものと看取,把握されるというべきである。
2 商標法第3条第1項第6号該当性について
上記1のとおり,本件商標は,その構成全体をもって一体のものと看取,把握されるというべきであるから,その構成全体として自他商品の識別標識としての機能を果たすと判断するのが相当である。
してみれば,本件商標は,これをその指定商品に使用しても,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標とはいえない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第6号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項第6号に該当するものでないから,同法第46条第1項により,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。


別掲

別掲(本件商標 色彩については原本参照。)



特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2020-10-06 
結審通知日 2020-10-08 
審決日 2020-10-28 
出願番号 商願2016-48062(T2016-48062) 
審決分類 T 1 11・ 16- Y (W0532)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 藤村 浩二
大森 友子
登録日 2016-10-21 
登録番号 商標登録第5890695号(T5890695) 
商標の称呼 オオムギワカバヒャクパーセントフンマツ、オオムギワカバイチゼロゼロパーセントフンマツ 
代理人 網野 誠彦 
代理人 網野 友康 
代理人 福山 正寿 

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