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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W09
審判 全部無効 外観類似 無効としない W09
審判 全部無効 観念類似 無効としない W09
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W09
管理番号 1369082 
審判番号 無効2019-890082 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-12-11 
確定日 2020-11-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5725048号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5725048号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成26年7月2日に登録出願,第9類「電気通信機械器具」を指定商品として,同年10月20日に登録査定され,同年12月12日に設定登録され,その後,商標登録の取消し審判により,その指定商品について取り消すべき旨の審決がされ,令和2年4月13日にその確定審決の登録がされたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する商標は次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第1632736号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第9類「電気通信機械器具」を含む第9類,第7類及び第11類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 昭和55年12月8日
設定登録日 昭和58年11月25日
書換登録日 平成16年12月8日
2 登録第3233282号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第9類「電気通信機械器具,レコード,電子応用機械器具」
登録出願日 平成5年8月17日
設定登録日 平成8年12月25日

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効とすべきものである。
2 具体的な理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 商標の類似性
(ア)本件商標の構成
本件商標は,上段に欧文字で「Designed by」,下段に欧文字で「N.Nakamichi」の二段表記からなるものである。観念については,後述するように「ナカミチ」あるいは「Nakamichi」が音響機器のメーカー「ナカミチ株式会社」のブランドとして周知・著名であることから,「ナカミチ」という観念が生じる。あるいは,それを知らない需要者においては,「エヌ・ナカミチによってデザインされた(商品)」という観念が生じる。
称呼については,下記の理由により「エヌ・ナカミチ」あるいは「ナカミチ」という称呼が生じる。
a 本件商標の構成文字の全てを読むと「デザインド・バイ・エヌ・ナカミチ」であるが,13音からなり,極めて冗長であるため,実際の商取引においては「エヌ・ナカミチ」あるいは「ナカミチ」と称呼されること。
b 上段の「Designed by」が「によってデザインされた(商品)」という指定商品との関係で識別カのない言葉であり,識別力のある下段「N.Nakamichi」あるいは「Nakamichi」のみが称呼されること。
c 本件商標は上下2段に分離されて表示されており,かつ,下段の「N.Nakamichi」が上段より縦横3倍以上の大きさで表示されていること。
d 後述のとおり,「ナカミチ」あるいは「Nakamichi」が音態機器のメーカー「ナカミチ株式会社」のブランドとして周知・著名であること。
(イ)引用商標の構成
引用商標は,「N」様の図形(Nakamichiの「N」)を前部に配し,欧文字「Nakamichi」を後部に配する構成からなるものである。観念については,後述するように引用商標が周知・著名であることから,「ナカミチ」という観念が生じる。あるいは,それを知らない需要者においては直ちに特定の観念を生じない。称呼については,下記の理由により「ナカミチ」という称呼が生じるが,「N」様の図形と合わせて「エヌ・ナカミチ」という称呼も生じ得る。
(ウ)両商標の類否判断
a 外観について
本件商標は,2段表記からなるものであり,下段の「N.Nakamichi」が上段の縦横3倍以上の大きさで表示されている。引用商標は「N」様の図形を前部に配し,欧文字「Nakamichi」を後部に配する構成からなるものである。
両商標の外観を対比すると,本件商標の目立つ態様で表された「N.Nakamichi」と引用商標の「『N』様図形+『Nakamichi』」の部分が酷似している。
したがって,本件商標全体としても,引用商標と外観が類似する。
b 称呼について
前述のとおり,本件商標は「エヌ・ナカミチ」あるいは「ナカミチ」という称呼が生じ,引用商標は「ナカミチ」あるいは「エヌ・ナカミチ」という称呼が生じる。
両商標の称呼は,「エヌ・ナカミチ」及び「ナカミチ」の称呼を共通にし,また,「エヌ・ナカミチ」と「ナカミチ」とでは,その差異は「エヌ」の有無のみであり,類似する。
したがって,本件商標の称呼と引用商標の称呼は互い類似する。
c 観念について
前述のとおり,本件商標は「ナカミチ」又は「エヌ・ナカミチによってデザインされた(商品)」という観念が生じ,引用商標は「ナカミチ」という観念が生じるか,直ちに特定の観念を生じない。
したがって,本件商標の観念と引用商標の観念は互いに類似するか,比較することができない。
d 商標の類否のまとめ
以上により,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても互いに類似するものであり,両商標は類似する。
イ 商品の類似性
本件商標の指定商品は引用商標の指定商品に含まれるため,両商品は類似する。
ウ まとめ
したがって,本件商標は,「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって,その商標登録に係る指定商品又はこれらに類似する商品について使用をするもの」であり,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 商標の類似性
上記(1)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観・称呼・観念のいずれにおいても互いに類似するものであり,両商標は類似する。
イ 商品の類似性
本件商標の指定商品「電気通信機械器具」と,引用商標を付した商品「オーディオ機器」は類似する(甲25 ほか)。
ウ 「Nakamichi/ナカミチ」ブランドの周知性
(ア)請求人の「Nakamichi/ナカミチ」ブランド(以下「請求人ブランド」という。)は,もともと日本法人ナカミチ株式会社(1948年創業。東京都渋谷区)が創案,構築した商標・ブランドである。同社はカセット式テープレコーダーの開発に早くから取り組み,1973年発売のハイエンド(超高級)カセットデッキ「Nakamichi 1000」「Nakamichi Dragon」やアンプで有名となり,業務用CDプレーヤーやカーオーディオの分野にも進出,高性能・音質のよさから,オーディオファンなら誰もが知っている老舗ブランドの地位を確立した(甲17,甲25 ほか)。
(イ)その後,ナカミチ株式会社は(請求人と同じ)香港のザ・グランデ・ホールデングスの傘下となり,平成16年5月に請求人が同社名義の請求人ブランドの商標登録35件の譲渡を受けた。その後の譲受を含めると合計41件となる(甲2?甲14,甲31,甲32)。請求人を商標権者として現在も有効に存続している請求人ブランドの商標登録は,合計24件に及ぶ(甲15,甲16等)。
(ウ)請求人ブランドのオーディオ製品は,その優れた性能と高音質化,ユニークな発想,技術能力の高さによって独自の世界観を展開し,国内外で高い評価を受けている。
その製品は前記カセットデッキの時代からオーディオ専門誌(甲17)に取り上げられ,オーディオ機器の紹介や取引サイト(甲18?甲20)をみても,高級オーディオ機器のブランドとしてオーディオの専門家やファンの間で広く知られている。
また,特に海外での評価,人気は高く,例えば2006年(平成18年)の米国の調査会社による人気ブランド番付で3位に輝いた(甲21)。
(エ)請求人ブランドの商標は,1970年代にナカミチ株式会社が自社のブランドとして採用して以来,その高い品質や技術によって需要者らの評価と信頼を勝ち得てきた長い歴史がある(例えば,甲2)
ナカミチ株式会社及び請求人(海外を中心に展開)によって請求人ブランドの商標が継続して使用されている(甲25?甲30,甲35?甲38)。 エ 不正の目的
(ア)不正の目的の推認
上記ウに記載のとおり,本件商標は,日本国内で全国的に知られており,かつ外国においても周知な商標「ナカミチ」あるいは「Nakamichi」と極めて類似するものであり,不正の目的をもって使用するものと推認される。
(イ)本件商標登録名義人について
本件商標の登録名義人である中道仁郎氏は,前記ナカミチ株式会社の創業者である中道悦郎氏の弟で,技術者として製品開発に携わり,代表取締役社長も務めた人物である(甲17)。同氏は平成10年に中心となって「株式会社niro1.com」(旧社名メカニカルリサーチ)を設立し,「NIRO」ブランドのスピーカーやホームシアター用サラウンドシステムなどオーディオ製品の開発,製造販売を行ってきた(甲22,甲23)。
しかし,中道仁郎氏は,平成25年3月に,自身のフルネームを冠した「Niro Nakamichi株式会社」(東京都渋谷区:以下「Niro Nakamichi社」という。)を立ち上げた。同社パンフレット(甲24)によれば,「カセットデッキやCDプレーヤー,カーオーディなどで世界をリードしたナカミチ株式会社のチーフエンジニアであった中道仁郎が新会社を立ち上げ,再びオーディオの世界に戻りチャレンジしています。」と紹介,そのスピーカーシステム製品について,本件商標を使用している(甲33,甲34)。
さらに近年,本件商標の名義人である中道仁郎氏が,従来の「NIRO」ブランドから,Niro Nakamichi社の立ち上げ,本件商標の登録,使用(甲24)に移行していること,また自社のパンフレットに「ナカミチ株式会社のチーフエンジニアであった」等同社との関連を記載していることから,本件商標が付された商品に接する取引者,需要者に請求人ブランドによってデザインされた,もしくは何らかの関係がある商品であるといった印象を与える。
請求人ブランドは高性能・音質の高級オーディオ機器のブランドとしてオーディオの専門家やファンの間で広く知られている状況において,本件商標が,特に請求人ブランドと商品の性質,用途,目的,取引者及び需要者を共通とする「ハイエンドホームオーディオシステム及びカーオーディオシステム」(甲24)に使用された場合,請求人によるデザイン・設計その他請求人の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について混同を生ずる。
ナカミチ株式会社の商標権はその事業とともに請求人へ譲渡されたにも拘わらず,かつてナカミチ株式会社の代表取締役の地位にいたような者が,ナカミチ株式会社の周知・著名なブランド「ナカミチ」と類似するようなブランドを立ち上げ,同様の事業を行うというのは,周知・著名なブランド「ナカミチ」の名声にフリーライドする行為に他ならず,不正の利益を得る目的,あるいはナカミチ株式会社の商標権及びその事業の承継人(請求人)に損害を加える目的で本件商標を登録したことが推認される。
したがって,本件商標は,不正の目的をもつて使用をするものである。
オ まとめ
したがって,本件商標は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするもの」であり,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,請求人ブランドは昭和23年創業の日本法人「ナカミチ株式会社」が構築したブランドであること(甲17,甲28の8),引用商標は遅くとも昭和58年頃から平成27年頃までオーディオ機器について使用されていること(甲27の2,甲28の8),引用商標を使用したオーディオ機器(以下「請求人商品」という。)は,昭和49年頃から平成8年までオーディオ専門誌で14回程度紹介等されたこと(甲17),及び平成18年に米国の調査会社による人気ランキングで第3位になったこと(甲21)などがうかがえることから,請求人商品及び引用商標は,我が国及び外国におけるオーディオ機器の需要者の間である程度知られているものといい得るとしても,請求人商品の我が国又は外国における売上高,シェアなど販売実績を示す主張はなく,その証左も見いだせないから,我が国及び外国における需要者はもとより,オーディオ機器の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると,引用商標は,(本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,)請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また,「Nakamichi」又は「ナカミチ」の文字が請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして,我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証左も見いだせないから,それら文字も,同じく我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり「Designed by」の欧文字の下に,欧文字を筆記体で表してなるものである。
そして,上段の「Designed by」の文字は,「?によってデザインされた(商品)」の意味を認識させ,自他商品識別標識としての機能を有しないものであって,商標の類否判断における称呼及び観念を生じないものと,及び下段の筆記体で表された欧文字部分(以下「本件筆記体部分」という。)は,いかなる文字からなるのか判読困難であって,特定の称呼及び観念は生じないものと判断するのが相当である。
そうすると,本件商標は,商標の類否判断における称呼及び観念を生じないものといわなければならない。
(2)引用商標
引用商標は,別掲2及び3のとおり,いずれも半円形及び正方形を組み合わせて白色と黒色に配色した構成からなる図形(以下「引用図形部分」という。)と「Nakamichi」の文字からなるものであり,当該文字に相応し「ナカミチ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較すると,外観においては,上記(1)又(2)のとおり両者の構成態様が明らかに異なり,外観上,相紛れるおそれのないものである。
次に称呼については,上記のとおり,本件商標は,自他商品識別標識としての称呼を生じず,引用商標は「ナカミチ」の称呼を生じるものであるから,称呼上,両者は相紛れるおそれのないものといえる。
さらに観念については,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において相紛れるおそれがなく,観念において比較できないものであるから,両者の外観,称呼及び観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標いうべきものである。
イ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
引用商標の指定商品には,本件商標の指定商品「電気通信機械器具」を含有するものである。
(4)請求人の主張について
請求人は,「ナカミチ」又は「Nakamichi」が「ナカミチ株式会社」のブランドとして周知・著名である,本件商標の称呼は極めて冗長である,本件商標は下段の「N.Nakamichi」が上段より縦横3倍以上の大きさで表示されている,引用商標は「N」様の図形と欧文字「Nakamichi」からなるものであるなどから,本件商標及び引用商標は「ナカミチ」,「エヌナカミチ」の称呼,「ナカミチ」の観念を生じるなどとして,両商標は類似する旨主張している。
しかしながら,上記1のとおり,引用商標,「ナカミチ」又は「Nakamichi」の文字が請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,上記(1)のとおり本件筆記体部分は判読困難であるから,本件商標から「ナカミチ」の称呼を生じることはないと判断するのが相当であって,両商標から「ナカミチ」,「エヌナカミチ」の称呼,「ナカミチ」の観念を生じることを前提とする請求人のかかる主張は,その前提において理由がない。
(5)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であり,他に,両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,その指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似のものであるが,引用商標と非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり引用商標は,請求人の業務に係る商品であることを表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記2のとおり本件商標と引用商標は非類似の商標である。
また,本件商標者が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他不正の目的をもって本件商標を出願し,登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきでない。
よって,結論のとおり審決する。


別掲
別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標1)

別掲3(引用商標2)



審理終結日 2020-06-01 
結審通知日 2020-06-03 
審決日 2020-06-30 
出願番号 商願2014-59346(T2014-59346) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (W09)
T 1 11・ 222- Y (W09)
T 1 11・ 263- Y (W09)
T 1 11・ 261- Y (W09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 榎本 政実
小俣 克巳
登録日 2014-12-12 
登録番号 商標登録第5725048号(T5725048) 
商標の称呼 デザインドバイエヌナカミチ、エヌナカミチ、ナカミチ 
代理人 安達 友和 

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