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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1368389 
異議申立番号 異議2019-900316 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-31 
確定日 2020-07-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第6170960号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6170960号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6170960号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示すとおりの構成よりなり,平成30年8月1日に登録出願,令和元年7月18日に登録査定され,第14類「宝飾品用チャーム,ネックレス,宝飾品,ブレスレット,指輪,かんらん石(宝石),腕時計,貴金属製インゴット,宝石箱,時計バンド」を指定商品として,同年8月9日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の2件の登録商標(以下,これらの商標をまとめて「引用商標」という場合がある。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第956246号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「OLAY」
登録出願日:昭和41年9月2日
設定登録日:昭和47年3月28日
書換登録日:平成16年7月28日
指定商品 :第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(2)登録第4494719号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「OLAY」(標準文字)
登録出願日:平成12年1月4日
設定登録日:平成13年7月27日
指定商品 :第3類及び第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 申立人は、米国を拠点とし、洗剤やおむつ等の日用品、ヘアケア製品、化粧品等、多岐にわたる日用消費財を、世界180カ国で提供している、世界最大の日用消費財メーカーである(甲3)。申立人が展開する商品のブランドには、我が国のみならず、世界的に周知、著名性を獲得したブランドが多数含まれている(甲4)。
イ 「OLAY」ブランドは、1952年、南アフリカの科学者、グラハム・ウルフ氏が、美容液を作ったことから始まり、その後も研究、商品開発が行われてきた(甲5)。
ウ 「OLAY」ブランドのスキンケア製品は、米国を中心に発行されている世界的有名雑誌においてビューティーアワードを500以上受賞し、毎年世界で8000万人の女性が愛用しているスキンケアに関する化粧品ブランドとなった(甲5)。2006年から2019年5月までの間、毎年コンスタントに「OLAY」ブランドのスキンケア製品が、各種アワードを受賞している(甲6)。
エ 申立人は、「OLAY」に関する商標を、我が国のみならず、世界中で商標登録している(甲7の1?5)。
オ 我が国において、「OLAY」ブランドの先端肌研究により生み出されたプレステージライン「OLAY(オレイ)リジェネリスト」が、2019年3月から、申立人の子会社により、複数のオンラインショップのサイトにおいて販売開始された(甲5、甲8、甲9)。商品ラインナップは、美容液を中心とした、洗顔料、化粧品、美容クリームの4アイテムである(甲8)。
なお、本件商標の出願日以前から、申立人の「OLAY」ブランドに係るスキンケア製品の平行輸入品が、オンライン通販等において販売されており、我が国の需要者も購入可能であった(甲10の1?3)。
カ 以上のような、永年にわたる世界的ブランド展開に鑑みれば、申立人に係る引用商標は、遅くとも本件商標の出願日までに、商品「化粧品、せっけん類」に関し、我が国において周知、著名となっていた。
また、少なくとも同日までに、アメリカ合衆国において、引用商標は周知、著名性を獲得していた。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 本件商標の構成中「OLAY」の欧文字は、「O」には横線が書され、かつ中間部分が分離する態様で、一定程度図案化されているものの、外観上は容易に欧文字の「O」であると認識されるから、これより「オレイ」又は「オーレイ」の称呼が生じる。
他方、引用商標は、「OLAY」の欧文字のみからなり、「オレイ」の称呼が生じる。
本件商標と引用商標を比較すると、外観については「OLAY」の欧文字を含む点で共通し、相紛らわしい。称呼については、「オレイ」の称呼が共通し、本件商標の「オーレイ」の称呼とも第2音の長音の有無という差異があるが、全体としての語調、語感は近似したものとなるから、相紛らわしい。さらに、観念について、引用商標はもともと造語であり特定の観念は生じないが、現在では申立人に係るスキンケアブランド「OLAY」の観念が生じ得るもので、本件商標からも同様の観念が生じ得るから、観念が共通する。
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、外観、称呼及び観念において相紛らわしい類似の商標であり、類似性は極めて高い。
イ 引用商標の周知、著名性は、上記(1)で述べたとおりであり、周知、著名となっているのは、「(スキンケア製品や香水を含む)化粧品」、「せっけん類」である。
ウ 本件商標の指定商品である宝飾品等の商品は、身につける人を装飾し、美しく見せるといった効果がある一方で、引用商標に係る香水や化粧品、せっけん類も、同様の効果を有するから、両商品は使用目的や効果が共通する。また、本件商標の指定商品であるアクセサリー類と引用商標に係る化粧品やスキンケア製品は、需要者層が一定程度一致する。
さらに、本件商標の指定商品に含まれる宝飾品を取り扱う高級ブランドが、スキンケア製品や香水等の化粧品も同時に製造、販売している例がある(甲11?甲17)。
以上のとおり、本件商標の指定商品は、引用商標に係る商品とは、その使用目的や効果が共通し、需要者は一定程度共通し、かつ企業の多角経営下において同一企業(ブランド)により展開されている関係にあるから、それぞれの関連性は極めて高い。
ウ 以上を総合的に判断すると、本件商標がその指定商品に使用された場合、需要者は、本件商標の構成中、強く支配的な印象を与える「OLAY」の文字に着目するもので、申立人に係るスキンケア製品(化粧品)、又は申立人らと密接な営業上の関係やグループ関係のある営業主の業務に係る商品であると誤認するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、上記(2)アのとおり、引用商標と類似する。また、引用商標は、日本国内のみならず、少なくとも本件商標の出願日までに、「化粧品、せっけん類」について、米国等の外国において周知、著名になっていた。
本件商標の商標権者は米国法人であるから、スキンケアブランドとして米国を含む全世界で周知、著名となっている引用商標に係る「OLAY」ブランドを、当然知っていたと考えられる。
以上のとおり、本件商標は、申立人の「OLAY」ブランドや、引用商標の顧客吸引力へのただ乗り希釈化といった不正の目的をもって出願されたものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 証拠及び申立人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、世界各国で製品を提供している日用消費財メーカーで(甲3)、1952年に作られた美容液からはじまったスキンケアブランド「OLAY」を手掛けている(甲5)。
(イ)同ブランドの商品の包装には、引用商標と構成文字を共通にする「OLAY」の文字が表示され、同ブランドの商品ラインナップとして「美容液、洗顔料、化粧水及び美容クリーム」(以下「申立人商品」という。)が設けられ、我が国においては2019年3月に販売開始されている(甲8)。
(ウ)申立人商品の我が国における販売実績や広告宣伝実績は明らかではないが、海外においては、申立人商品は発売以来の出荷本数が35万本超(2019年8月時点)(甲5)、2006年から2019年の間継続して、同ブランドの商品が、雑誌における各種賞を受賞しているとされる(甲6)。
イ 上記によれば、引用商標に係るブランドの商品である申立人商品は、我が国における本格的な販売開始は2019年3月以降であるから、本件商標の登録出願時(平成30年(2018年)8月1日)には発売すらされておらず、登録査定時(令和元年(2019年)7月18日)までの販売期間も半年にも満たないもので、同期間やそれ以前の我が国おける販売実績や広告宣伝実績も不明であるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で引用商標が周知著名なものとなっていたとは考え難い。
また、海外においては、引用商標に係る申立人のブランドは、60年以上の長期にわたる販売実績や各種賞の受賞歴があるとしても、個別の国(例えばアメリカ合衆国)における販売実績や広告宣伝実績の子細や規模が必ずしも明らかではないから、提出された証拠によっては、外国の需要者の間における引用商標の周知性の程度を把握することは困難である。
そうすると、引用商標は、我が国において周知著名な商標ではなく、外国(アメリカ)における需要者の間において高い周知著名性を獲得していたと認めることもできないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内又は外国における需要者の間において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、広く知られるに至っていたものとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、上記(1)イのとおり、我が国の需要者の間において周知著名な商標ではない。
また、本件商標の指定商品は、貴金属製造業者や時計製造業者により製造され、ジュエリー製品小売業者や時計小売業者などにより販売される宝飾品や時計などである一方で、申立人商品は、化粧品製造業者により製造され、ドラッグストアや化粧品小売業者などにより販売される化粧品であるから、両商品は、互いにファッションと関連した商品という漠然とした共通点があるとしても、一般的な製造部門や販売部門は異なっているため、互いの商品の関連性の程度は低い。
さらに、本件商標は、別掲のとおり、図形の下部に「OLAY」(「O」の欧文字の左右には空白を設けて、上部には短い横棒を配置してなる。)の文字を表してなるもので、引用商標は「OLAY」の欧文字を表してなるところ、両商標は構成文字が共通するとしても、図形部分の有無や表記方法には差異があるため、全体の構成が同一ものではない。
そうすると、本件商標は、その指定商品に使用しても、その商標登録出願時及び登録査定時において、我が国において周知著名でもない引用商標と関連して、本件商標と申立人商品との商品分野の関連性の程度も低く、本件商標と引用商標の構成も同一とはいえないから、引用商標やそれを取り扱う申立人との関連を連想、想起させたり、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 本件商標は、上記(1)イのとおり、その商標登録出願時及び登録査定時において、申立人又はその業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国(アメリカを含む。)における需要者の間に広く認識されている商標とは認められない。
イ 申立人は、本件商標の商標権者は米国法人であるから、スキンケアブランドとして米国を含む全世界で周知、著名となっている引用商標に係る「OLAY」ブランドを、当然知っていたと考えられる旨を主張する。
しかしながら、申立人の主張は単なる憶測にすぎないばかりか、仮に本件の商標権者が他人(申立人)の商標の存在を知っていたとしても、それが必ずしも不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的)に結びつくものではないこと明らかで、その他に本件商標が不正の目的をもって使用をするものであることを具体的に示す証拠は、申立人から提出されていない。
よって、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものとは認められない。
ウ したがって、本件商標は、引用商標と同一又は類似するか否かに関わらず、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


別掲 別掲(本件商標)




異議決定日 2020-07-01 
出願番号 商願2018-98679(T2018-98679) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W14)
T 1 651・ 222- Y (W14)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白鳥 幹周 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
阿曾 裕樹
登録日 2019-08-09 
登録番号 商標登録第6170960号(T6170960) 
権利者 オーレイウォッチジュエリー インコーポレイテッド
商標の称呼 オオレイ、オーレー、レイ、レー、エルエイワイ 
代理人 富所 英子 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 

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