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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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異議2020900181 | 審決 | 商標 |
無効2018890005 | 審決 | 商標 |
異議2020900117 | 審決 | 商標 |
異議2016900226 | 審決 | 商標 |
異議2021900137 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W29 審判 全部申立て 登録を維持 W29 審判 全部申立て 登録を維持 W29 審判 全部申立て 登録を維持 W29 |
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管理番号 | 1368387 |
異議申立番号 | 異議2020-900163 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-06-22 |
確定日 | 2020-11-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6244603号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6244603号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6244603号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成30年11月21日に登録出願,第29類「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」を指定商品として,令和2年3月9日に登録査定,同年4月10日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおり(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)であり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第2556501号の1商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:「キリン」の片仮名を縦書きしてなるもの 登録出願日:昭和57年4月28日 設定登録日:平成5年7月30日 指定商品:第29類「冷凍野菜,冷凍果実」,第30類「コーヒー豆」及び第31類「野菜(「茶の葉」を除く。),茶の葉,糖料作物,果実」 (2)登録第4433606号の2商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成11年12月20日 設定登録日:平成12年11月17日 指定商品:第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 (3)登録第4486902号の2商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成12年8月1日 設定登録日:平成13年6月29日 指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,乳製品,食用油脂,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」,第30類「コーヒー及びココア,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),食用グルテン,穀物の加工品,菓子及びパン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (4)登録第4498171号の2商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲4のとおり 登録出願日:平成12年8月1日 設定登録日:平成13年8月10日 指定商品:第29類「加工野菜及び加工果実,乳製品,食用油脂,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」,第30類「コーヒー及びココア,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),食用グルテン,穀物の加工品,菓子及びパン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤」並びに第26類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (5)登録第4505207号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成12年10月20日 設定登録日:平成13年9月7日 指定商品:第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,卵殻カルシウム・ビタミン・ミネラル・乾燥ビール酵母粉末等を含む粉末状・顆粒状・粒状・液状の加工食品,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」 (6)登録第5240430号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成19年6月25日 設定登録日:平成21年6月19日 指定役務:第35類「加工野菜及び加工果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 (7)登録第6041308号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:麒麟(標準文字) 登録出願日 平成27年2月20日 設定登録日 平成30年5月11日 指定商品:第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」並びに第30類,第32類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (8)登録第6200172号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:キリン(標準文字) 登録出願日:平成27年12月10日 設定登録日:令和元年11月22日 指定商品及び指定役務:第29類「食用油脂,乳製品,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと」並びに第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類,第5類,第7類,第9類,第14類,第16類,第18類,第21類,第24類,第25類,第28類,第30類,第32類,第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (9)登録第6200173号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:麒麟(標準文字) 登録出願日:平成27年12月10日 設定登録日:令和元年11月22日 指定商品及び指定役務: 第29類「容器入りの加工野菜及び加工果実」を含む第29類,第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類,第5類,第7類,第9類,第14類,第16類,第18類,第21類,第24類,第25類,第28類ないし第30類,第32類,第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (10)登録第6200174号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:きりん(標準文字) 登録出願日:平成28年11月22日 設定登録日:令和元年11月22日 指定商品及び指定役務:第29類「食用油脂,乳製品,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと」並びに第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類,第5類,第7類,第9類,第14類,第16類,第18類,第21類,第24類,第25類,第28類,第30類,第32類,第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (11)登録第6200176号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成29年7月7日 設定登録日:令和元年11月22日 指定商品及び指定役務:第29類「食用油脂,乳製品,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと」並びに第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類,第5類,第7類,第9類,第14類,第16類,第18類,第21類,第24類,第25類,第28類,第30類ないし第33類及び第36類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号に該当すること ア 本件商標について 本件商標は,指定商品を第29類「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」とするもので,その構成は,デフォルメされたキリン(ウシ目キリン科の哺乳類)が描かれた図形内において,右から順に「キリンの」及び「なが?いポテト」の文字を縦書きしてなるものである。 本件商標において,「キリン」の文字部分と他の構成との間には,本件指定商品との関係で,商品の出所識別標識としての機能の点で明らかに主従,軽重の差があるといえる。 それゆえ,本件商標の構成中,「キリン」の文字と他の構成文字とは,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているといえず,本件商標から「キリン」の文字部分を要部として観察することは許されるというべきである。 本件商標から要部である「キリン」の文字部分を抽出した場合,同部分からは「キリン」の称呼が生じるとともに,デフォルメされたキリン(ウシ目キリン科の哺乳類)が描かれた図形が表されていることとも相まって,「ウシ目キリン科の哺乳類」の観念が生じる。 また,本件商標は,上記観念のほかに,「キリン」の文字から,「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」の観念が生じる。 イ 引用各商標について 引用商標1は,「キリン」の文字を縦書きしてなり,引用商標2・5・6・11は,「KIRIN」の文字を横書きしてなり,引用商標3・7・9は,「麒麟」の文字を横書きしてなり,引用商標4・8は,「キリン」の文字を横書きしてなり,引用商標10は,「きりん」の文字を横書きしてなるところ,引用各商標は,その構成文字に相応して,「キリン」の称呼が生じ,「ウシ目キリン科の哺乳類」又は「中国で型人の出る前に現れると称する想像上の動物」の観念が生じる(甲15?甲17)。 ウ 本件商標と引用各商標との類否について 本件商標は,引用各商標と同じ「キリン」の称呼が生じる上,引用各商標と同じ「ウシ目キリン科の哺乳類」又は「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物」の観念が生じるから,両商標は,称呼及び観念において区別できない。 他方で,本件商標と引用各商標とは,外観において区別できるものの,本件商標の構成中,「キリン」の文字部分は,取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,離隔的観察においては,本件商標の外観よりも,「キリン」の文字を含むという点が強く印象付けられるものであり,「キリン」の文字より生ずる称呼及び観念が強く記憶されるものといえる。 加えて,本件指定商品は,比較的安価な日常消費物資である食品であることからすると,本件指定商品の取引者,需要者には,広く一般消費者も含まれるのであり,これらの者は,商品の包装などに商品の出所識別標識として商品の名称が付されている場合,その商品の名称に着目して取引にあたるのが通常である上,一般消費者が注意深く観察せずに,本件商標の一部の文字部分から生ずる称呼,観念を手掛かりに,商品を購入することも一般的にあり得るものといえる。 それゆえ,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,外観上の差異点を称呼及び観念の共通点に比して重視しなければならない理由はない。 さらに,後述のとおり,引用各商標は,キリングループの商品又は役務を示すものとして周知著名なものであることからすると,本件商標が,デフォルメされたキリン(ウシ目キリン科の哺乳類)が描かれた図形内において,右から順に「キリンの」及び「なが?いポテト」の文字を縦書きしてなるものであるとしても,本件商標を本件指定商品に使用するときには,具体的に,引用各商標の商標権者と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について混同を生じさせるおそれが高いものといえる。 また,周知著名な引用各商標が付されたキリングループの商品又は役務は至る所で提供されており,故に,本件商標が付された商品が,キリングループの商品又は役務と一緒にあるいは近接して提供される蓋然性は高く,そのことで更に一般消費者に当該誤認混同を生じさせやすいといえる。 そうすると,本件商標と引用各商標とは,外観の相違よりも,称呼及び観念の共通性が,より強い印象を取引者,需要者に与えているといえるものであり,両商標を同一又は類似の商品に使用した場合には,取引者,需要者がその出所について誤認混同するおそれがあるというべきである。 したがって,本件商標と引用各商標とは,その外観,観念及び称呼並びに取引の実情を総合的に判断した場合,互いに類似の商標であるというべきである。 エ 指定商品の類否 本件指定商品は,第29類「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」であるところ,「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト」は,じゃがいも(野菜)を加工したものであり,「冷凍ポテト」は,じゃがいも(野菜)を冷凍したものである。 そして,引用各商標の登録に係る指定商品・指定役務中,第29類「冷凍野菜」には,「冷凍ポテト」が含まれ,第29類「加工野菜」には,「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト」が含まれ,第35類「飲食料品(「工業用粉類・食用粉類」を除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」には,「フライドポテト・フレンチフライポテト・ポテトフライ・冷凍したフレンチフライポテト及び冷凍ポテトの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が含まれる。 したがって,本件指定商品と,引用各商標の登録に係る指定商品は,同一又は類似のものである。 オ 小括 以上のとおり,本件商標は,引用各商標と類似の商標であり,本件指定商品は,引用各商標の登録に係る指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品であるから,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 (2)商標法第4条第1項第15号に該当すること ア 引用各商標の周知・著名性等 (ア)申立人について 申立人は,「麒麟麦酒株式会社」,「キリンビバレッジ株式会社」,「協和キリン株式会社」等の親会社であり,キリンホールディングス株式会社の連結子会社は,181期有価証券報告書(平成31年1月1日?令和1年12月31日)によれば,152社であり,キリンホールディングス株式会社の持分法適用関連会社は,同報告書によれば,32社であり,181期の連結売上収益は,約1兆9413億円(国際会計基準)である(甲21)。 (イ)防護標章登録について 「KIRIN」の文字を横書きしてなる標章,「麒麟」の文字を横書きしてなる標章,「キリン」の文字を横書きしてなる標章については,第29類「冷凍野菜」及び第29類「加工野菜」を指定商品として防護標章登録されている(甲22?甲25)。 (ウ)最近の知財高裁判決について 審決取消請求事件知財高裁判決では,「KIRIN」の文字商標につき,「キリングループの商品又は役務を示すものとして取引者及び需要者の間で周知著名になっていると認められる」と判断されている(甲25?甲29)。 (エ)周知・著名性 上記によれば,前記登録防護標章とほぼ同じくする引用各商標は,キリングループの業務に係る商品又は役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び査定時において需要者の間に広く認識されている周知・著名な商標といえ,また,第29類「冷凍野菜,加工野菜」に関し,商品の出所の混同を来す程の強い識別力を備えており,そのような程度に至るまでの著名性を有しているといえる。 イ 本件商標と引用各商標との類似性 本件商標と引用各商標とは,前述のとおり,称呼及び観念を共通にし,外観の相違を考慮しても,なお全体としても近似した印象を与えるから,本件商標と引用各商標は,類似しているといえる。 ウ 商品の関連性等 本件指定商品は,第29類「フライドボテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」であり,キリングループは,多角経営企業であるものの,キリングループの中核をなす事業が食品事業であることは,広く知られた事実である。 なお,キリングループは,例えばポテトチップス製造会社に対する原材料の供給など,他の食品メーカーとの共同開発も積極的に行っている(甲30,甲31)。 そうすると,両商品の関連性の程度は高い。 また,両商品の購入者等は,共に特別な専門的知識経験を有しない一般消費者であることからすると,当該商品を購入するに際して払われる注意力は,さほど高いものではない。 エ 出所の混同のおそれ 上記のとおり,引用各商標の周知・著名性の程度が極めて高いこと,本件商標と引用各商標との類似性の程度が高いことなどを踏まえ,本件指定商品の取引者,需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すると,本件商標の登録出願時及び査定時において,本件商標は,これを商標権者が本件指定商品に使用するときは,その商品があたかもキリングループと経済的又は組織的に何らかの関係がある者の製造販売に係る商品であるかのごとく,商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものである。 オ 小括 以上のとおり,本件商標は,仮に商標法第4条第1項第11号に該当しない場合においても,キリングループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であり,少なくとも,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は,別掲1のとおり,キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)が描かれた縦長図形内にやや小さく「キリンの」の文字と「なが?いポテト」の文字を2列に縦書きしてなるところ,「キリン」の文字は,図形とも相まって動物のキリンを表したものと容易に理解されるものであって,「なが?いポテト」の文字が「長いポテト」の意味合いを暗示させる場合があるとしても,構成文字は図形内にまとまりよく一体に表され,これから生じる「キリンノナガーイポテト」の称呼も,格別冗長というべきものでもなく,無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、かかる本件商標の構成にあっては,これに接する取引者,需要者が,殊更に「のなが?いポテト」の文字部分を省略して,「キリン」の文字部分のみに着目するというよりは,むしろ,構成文字全体をもって一体不可分の一種の造語を表したものと認識し,把握するとみるのが自然である。 したがって,本件商標は,その構成文字に相応して,「キリンノナガーイポテト」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標1,引用商標4及び引用商標8は「キリン」の文字,引用商標2,引用商標5,引用商標6及び引用商標11は「KIRIN」の文字,引用商標3,引用商標7及び引用商標9は「麒麟」の文字並びに引用商標10は「きりん」の文字からなるものであり,いずれも各文字に相応して,「キリン」の称呼を生じ,「(キリン科の動物である)キリン」,「(想像上の動物である)麒麟」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標との類否を検討すると,両者は,外観においては,図形の有無に加え,「のなが?いポテト」の文字の有無において明らかな差異を有するものである。また,本件商標の構成中「キリン」の文字と引用商標2,引用商標5,引用商標6及び引用商標11の「KIRIN」の文字,引用商標3,引用商標7及び引用商標9の「麒麟」の文字とは,構成態様を異にするものであるから,外観上,明確に区別できるものである。 次に,称呼においては,本件商標から生じる「キリンノナガーイポテト」と,引用商標から生じる「キリン」とは,後半部における「ノナガーイポテト」の音の有無に明確な差異を有するものであるから,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。 また,観念においては,本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し,引用商標が「(キリン科の動物である)キリン」,「(想像上の動物である)麒麟」の観念を生じるものであるから,観念上,相紛れるおそれのないものである。 そうすると,両商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。 (4)小括 以上のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,たとえ,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務とが同一又は類似するものであるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知著名性について ア キリンホールディングス株式会社の平成31年1月1日から令和元年12月31日までの有価証券報告書(抜粋)によれば,キリングループは,キリンホールディングス株式会社及び連結子会社152社,持分法適用関連会社32社によって構成される多角経営企業であり,その主な事業は,ビール,清涼飲料等を含む総合飲料,乳製品,医療用医薬品の製造,販売である。そして,キリンホールディングス株式会社の2018年12月期の売上収益は,約1兆9305億円,2019年12月期の売上収益は約1兆9413億円である(甲21)。 イ 「KIRIN」の文字からなる登録第4433606号の1防護第1号及び登録第5325099号防護第1号,「麒麟」の文字からなる登録第4486902号の1防護第1号,「キリン」の文字からなる登録第4498171号の1防護第1号は,いずれも申立人を商標権者とするものであって,指定商品中に第29類「冷凍野菜,加工野菜及び加工果実」を含み,かつ多数の区分に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として防護標章登録がなされており,また,それらに係る権利は現在も有効に存続している(甲22?甲25)。 ウ 過去の判決において,「KIRIN」の標章は,キリングループの商品又は役務を示すものとして取引者及び需要者の間で周知著名になっていると認められる旨の判断がされている(甲26?甲29)。 エ 以上によれば,「KIRIN」,「麒麟」及び「キリン」の文字(以下「使用商標」という。)は,キリンホールディングス株式会社の業務に係る商品である「ビール,清涼飲料」等を表示する標章として,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認められる。 (2)本号の判断基準 ア 商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は,ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度,イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日判決)。 (ア)本件商標と使用商標の類似性の程度 本件商標は,別掲1のとおり,キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)が描かれた縦長図形内にやや小さく「キリンの」の文字と「なが?いポテト」の文字を2列に縦書きしてなるのに対し,使用商標は,「KIRIN」,「麒麟」及び「キリン」の文字からなるものである。 そこで,両商標を比較すると,本件商標と使用商標とは,上記1(3)の本件商標と引用商標と同様に,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。 (イ)使用商標の周知著名性及び独創性の程度 使用商標の周知著名性は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,キリンホールディングス株式会社の業務に係る商品である「ビール,清涼飲料」等を表示する標章として,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認められる。 しかしながら,使用商標は,本件商標の指定商品「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」については,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたとはいえない。 また,使用商標は,一般に親しまれたキリン科の哺乳類の「麒麟」の文字,又はそのローマ字表記,片仮名表記であるところ,その独創性の程度は低いというべきである。 (ウ)本件商標の指定商品と引用商標に係る商品等との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品は,上記1のとおり,「フライドポテト,フレンチフライポテト,ポテトフライ,冷凍したフレンチフライポテト,冷凍ポテト」であるところ,これは,ジャガイモを油で揚げた料理であり,使用商標に係る主な商品は,上記(1)のとおり「ビール,清涼飲料」であるから,両者の性質,用途又は目的における関連性の程度は低いものであり,その取引者においても共通性は少ないものといえる。 イ 出所の混同のおそれ 上記(1)のとおり,使用商標が,キリンホールディングス株式会社の業務に係る商品である「ビール,清涼飲料」等を表示する標章として,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認められるとしても,本件商標の指定商品の分野までは周知著名性を認めることはできない。 そして,両商標の類似性の程度については,非類似の商標であって,別異の商標であること,引用商標の独創性,商品の関連性,取引者の共通性の程度はいずれも低いことに照らし,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標は,その登録出願の時及び査定時において,商標権者がこれをその指定商品に使用しても,これに接する需要者が使用商標を想起,連想し,当該商品を申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 まとめ 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標(色彩は,原本参照。) ![]() 別掲2 引用商標2,引用商標5,引用商標6,引用商標11 ![]() 別掲3 引用商標3 ![]() 別掲4 引用商標4 ![]() |
異議決定日 | 2020-10-28 |
出願番号 | 商願2018-144130(T2018-144130) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W29)
T 1 651・ 261- Y (W29) T 1 651・ 271- Y (W29) T 1 651・ 262- Y (W29) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 太野垣 卓、古橋 貴之 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 半田 正人 |
登録日 | 2020-04-10 |
登録番号 | 商標登録第6244603号(T6244603) |
権利者 | 株式会社エフエンタープライズ |
商標の称呼 | キリンノナガーイポテト、キリンノ、ナガーイポテト、ナガーイ、キリン |
代理人 | 飯島 紳行 |
代理人 | 松嶋 さやか |
代理人 | 木村 満 |
代理人 | 山野 有希子 |
代理人 | 吉松 こず恵 |
代理人 | 榊原 靖 |
代理人 | 竹中 一宣 |
代理人 | 藤森 裕司 |