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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W21
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W21
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W21
審判 全部無効 外観類似 無効としない W21
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W21
管理番号 1368356 
審判番号 無効2018-890094 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-17 
確定日 2020-11-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第6012612号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6012612号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成29年9月1日に登録出願、第21類「大阪市天満地域産の切り子硝子で作ったグラス」を指定商品として、同年12月27日に登録査定、同30年1月19日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、次の引用商標1ないし引用商標3の商標(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)であり、請求人が「切子ガラス製の食器類」について使用し、需要者に広く知られている商標であると主張するものである。
1 大阪市北区南東部の天満地域で製造した切子ガラス製の食器類の包装箱に、「引用商標1」(別掲2のとおり)を付して販売している。
2 「天満切子」の看板「引用商標2」(別掲3のとおり)を工房入口に掲げ、工房内で切子ガラス製食器類の販売等を行っている。
3 「天満切子」の看板「引用商標3」(別掲4のとおり)を請求人を代表とする直営店の店先に掲げ、店内で切子ガラス製食器類の販売等を行っている。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第55号証(枝番号を含む。)を提出した。以下、証拠については、「甲1」のように記載する。
1 無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
2 審判請求書及び弁駁書における主な主張
(1)請求人適格について
「切子工房RAU」は、請求人の叔父・(故)A氏(以下「A氏」という。)が、昭和8年に創業した「宇良硝子加工所」を平成10年に屋号変更したものである(甲2)。A氏は同27年11月12日に死去したことから、遺産分割協議書(甲3)に記載のとおり、請求人が全遺産を相続し、現在に至っている。請求人は、A氏の唯一の適法な相続人(承継人)であり、「切子工房RAU」の代表である(以下、請求人、「A氏」及び「切子工房RAU」をまとめて、「請求人ら」という場合がある。)。
「切子工房RAU」は「天満切子」の名称で切子ガラス製の食器類を製造・販売し、切子教室を開催して切子工芸の教授等を業として営んでいる。
したがって、請求人は、本件商標の存在により業務上不当な制約を受けるおそれがあることから、無効審判を請求することに利害関係があり、商標法第46条第2項に規定する請求人適格を有する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標の周知性について
引用商標は、請求人らに係る商品を表示するものとして関連する特定の需要者層の間では広く認識されており、末登録ではあるが、自他識別機能を備えた周知商標である。
(ア)オリジナルブランド「天満切子」誕生までの経緯
大阪市北区南東部に位置する天満は、「大阪ガラス発祥之地」といわれ、江戸時代よりカットグラスが盛んに作られていたが、昭和の終わりから平成の始め頃には実質的にA氏のみになった。
こうした状況下、A氏は、平成10年に宇良硝子加工所を切子工房RAUに屋号変更し、その後、同12年に新たな切子ガラス製の食器類を開発し、これを「天満切子」と命名した。今日に至るまで「天満切子」のブランド名で切子ガラス製食器類を製造・販売しているのは「切子工房RAU」のみであり、「天満切子」の名称は、A氏が自ら創作した伝統工芸品に命名した「オリジナルブランド」である。
(イ)使用期間、使用地域、広告宣伝、販売数等
「天満切子」と命名した平成12年以降、請求人らは同30年11月現在に至るまでの18年間、継続して引用商標を使用し、切子ガラス製食器類を販売しており、本件商標の登録出願時には、取扱商品の商品形状も多種に及んでいる(甲17)。例えば、平成16年には大丸ホームショッピングで引用商標1を付した切子ガラス製食器類を販売し、平成16年5月25日?同年9月13日の3か月半余りの期間に約300個の商品を販売し、特定の需要者層(切子ガラスの愛好者等)の間ではある程度の周知性を獲得していた(甲18)。また、平成23年11月?12月には、大阪アメニティパークで開催されたイベントに関連し、地酒試飲会用食器及び抽選会賞品用に引用商標に係る商品を100個納品しており(甲19)、主催者側からの依頼で納品していることから、この頃には少なくとも地元大阪を中心に取引者間でも十分に認知され周知性を獲得していた。
また、引用商標に係る切子ガラス製食器類(以下「請求人商品」という。)について平成14年?同27年の間の新聞掲載記事、各種雑誌、個人ブログ等で取り上げられ、掲載されている(甲20?甲23、甲29、甲30)。
さらに、請求人商品は、他者のWebサイトでオンラインショップ等を兼ねた宣伝広告が行われ、また、請求人らは、地元大阪において引用商標に係る商品の広告宣伝活動を活発に行っている(甲25?甲28)。現在では直販に加えてオンラインショップを通じて、請求人商品の販売を行っている(甲32)。また、平成27年3月13日には、請求人商品を、大阪市内のタワーマンションの関係者へ納品した(甲33)。
他方で、請求人商品は、デザインの美しさから記念品や贈答品等に重宝されており、公的機関や法人等の各種団体に納品している(甲34、甲35)。また、平成26年度から大阪市にふるさと納税の返礼品用として納品しているところ、平成27年に総務省が行ったふるさと納税現況調査の調査票において、大阪市は、「『天満切子』は実用的で大阪の伝統工芸品としてゆかりがある。」と回答している(甲36)。さらに、請求人商品は、平成29年11月18日には一般財団法人日本工芸館主催の日本民芸公募展で大阪市長賞を受賞した(甲37)。
請求人商品の平成27年?同30年までの売上高は甲40に示すとおりである。
また、平成29年12月?同30年2月に実施したアンケートにおいては、購入年齢層は男女を問わず20代?60代と幅広く、特色のある伝統工芸品であることから、購入者自身が使用する以外に贈答品としても重宝されていることが定着している(甲41)。
以上の取引の実情を考慮すると、本件商標の登録出願時(平成29年9月1日)には、引用商標は、地元大阪を中心に近畿一円では特定の需要者の間で広く認識されたものとして周知であり、現在では取引者、需要者の間で全国的に広く認識されているものである。
(ウ)被請求人は、販売個数や売上額等を理由に、本件商標の登録出願時において、引用商標は、請求人らの商標として、需要者の間で広く認識されていない旨主張する。
しかしながら、商標として「需要者の間で広く認識されている」とは商品の出荷量や生産量、製造者が自ら行った宣伝、広告のみをもって判断されるものでもなく、標章が付された商品の特殊性をも十分に考慮して判断すべきである。そうすると、本件商標の登録出願時には、引用商標が付された商品は実質的に請求人が経営する「切子工房RAU」のみで生産・販売されており、その希少性ゆえに需要者、取引者の注目を集め、メディアによる取材、紹介等がなされているのが実情であり、手作りで1個ずつ丁寧に作製されるものであるから、請求人らの商品の販売個数が、例えば切子ガラスとして著名な江戸切子や薩摩切子等の販売個数と比較して劣り、請求人らが主体的に行った宣伝広告活動が少なくても、それをもって引用商標の周知性を否定する理由とはなり得ない。
イ 引用商標の自他識別力
(ア)「切子工房RAU」の先代代表であるA氏が、「天満切子」を採択する以前は「天満切子」の名称を使用した者を確認することができず、現在に至るまで、「天満切子」といえば請求人らの商品を表示するものであると関連する特定の需要者層の間では広く認識されている。
引用商標は、「切子工房RAU」の創業者であるA氏が採択した「オリジナルブランド」であり、その商品が伝統工芸品という特殊性を有することから何人も使用を欲するというものではなく、商標としての独占適応性を備えたものであり、かつ永年の継続使用により請求人らには業務上の信用が化体しており、自他識別力を有するものである。
(イ)被請求人は、「天満」の文字は、「ガラス産業の中心地であり、ガラスと縁が深い」天満という地域・地名を表すにすぎず(乙1)、「天満切子」は、単に「天満地域で製造される切子ガラス」という認識をするにとどまると主張する。
しかしながら、今日では「天満」が大阪ガラス発祥之地であったことを知る人は稀有であり、「天神橋筋商店街」で有名である等を連想・想起するものであるから、本件商標の需要者、取引者であれば、「天満」という地名からは、この地で現在も切子ガラスの原材料が生産されていると認識することはあり得ない。
そして、「天満切子」なる標章は、何人も使用するものではなく、請求らのみが使用しているのであり、需要者、取引者はこれらの者が使用していると認識するものであるから、引用商標は自他商品識別力を有するものである。
ウ 引用商標の使用について
被請求人は、引用商標は、請求人らのみの標章ないし商標ではない旨主張し、乙8?乙12を根拠に、天満切子の職人であるB氏が「切子工房RAU」を退去後、請求人らとは無関係に、使用制限や使用許諾を受けることなく、「天満切子」という文字からなる標章を自由に使用することができたと主張する。
しかしながら、B氏は、平成26年10月?11月頃、「切子工房RAU」から退去し、「硝子工房斉久」なる工房を開業しているところ、A氏とB氏とは師匠と弟子との関係にあり、B氏が「切子工房RAU」を退去した後も両者は無関係な存在ではなく、平成29年9月には被請求人と入れ替わる形で「切子工房RAU」に再び戻っている。
さらに、「硝子工房斉久」による切子ガラス製食器類が株式会社相互商会で販売されているものの(乙10)、現在では当該商品は「NARIHISA」ブランドで請求人が経営する「天満切子Gallery」で陳列され、販売されており、B氏の工房のYouTubeの映像(乙11)についても同様のことがいえることから(甲53)、需要者、取引者にとっては、「天満切子」は実質的に「切子工房RAU」のみが使用している標章と認識されるものである。
エ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標は、「天満切子」の文字と「極」の文字とを重ね合わせたものであるが、「天満切子」の文字が前面に浮かび上がるように黒色で表示されていることから、外観からは「天満切子」の文字が際立って認識され、「テンマキリコ」、「テンマキリコキワミ」等の称呼が生じ、「天満地域産」の切子ガラスで作ったグラスの観念が生じる。
一方、引用商標も、外観については、「天満切子」の文字が看者に強い影響を与え、看者の注意を惹き、「テンマキリコ」等の呼称が生じ、関連する特定の需要者層には既に周知の「天満切子」のブランドを有する切子ガラス製の食器類が観念される。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念が共通する類似のものである。
(イ)被請求人は、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標である旨主張する。
しかしながら、引用商標1と本件商標とを全体観察すると、需要者、取引者が普通に注意を払う部分は「天満切子」の文字部分にあり、落款印(商品の製造者自身が署名として押捺し或いは署名に代えて押捺した印影)や「極」に注意を払って商品を購入する可能性は極めて低く、本件商標と引用商標1とを対比すると、両商標は少なくとも外観において相紛らわしいほど類似しており、両商標が市場に流通した場合、商品の出所混同を招く蓋然性は極めて高い。
特に、本件商標は、グレーで薄く書した「極」の文字上に黒色で目立つように「天満切子」の文字を配しており、需要者、取引者は、請求人らのブランドとして周知の「天満切子」の文字を重視し、そのブランドカに依拠して商品を購入することから、本件商標を引用商標1の「極」シリーズのように誤信したり、被請求人は請求人らと経済的・組織的、或いは営業上何らかの繋がりがあると誤信して購入するおそれがある。
オ 本件商標の指定商品と引用商標に係る商品又は役務との類否について
本件商標の指定商品は、「大阪市天満地域産の切り子硝子で作ったグラス」であり、引用商標に係る商品又は役務は、天満で製造した切子ガラス製の食器類、その販売、切子工芸の教授等であり、両者は原材料、品質、用途及び需要者の範囲等が一致する。
カ 請求人の提出に係る証拠等について
(ア)甲32について
甲32の宅配便伝票については、個人情報が含まれているため一部を黒塗り処理しているが発送日は証拠説明書に記載のとおりである。
また、甲32-2は、発送日が平成30年であり、本件商標に係る登録出願後における宅配便伝票であるが、商品の特殊性ゆえに受注生産が多く、受注から商品発送までタイムラグがあるから、出願後の宅配便伝票であっても登録出願時に遡って当該登録出願時に既に周知であったことを推し量る資料となり得る。
なお、甲32-1では、69枚の宅配便伝票中11枚、甲第32-2では221枚の宅配便伝票中13枚が、被請求人が名前入れ加工業者と指摘する「アキツ産業株式会社」向けであるが、周知性の判断に影響を与えるものではない。
(イ)甲18について
甲18は、平成16年の宣伝広告の状況及び同19年の発注明細を示したものある。
また、被請求人は、甲18は、「天満切子」の技法で製造された商品とは別物の「花切子」と称される商品であって、「色被せガラスに蒲鉾「U字彫り」でシンプルかつ万華鏡の如く輝きを引き出すようにした新たな切子ガラス製の食器類」として定義された「天満切子」としての切子ガラス製の食器類ではなく、いわゆる「花切子」と呼ばれる全く別のものであり、「天満切子」の使用を示す証拠ではないと主張するが、「切子工房RAU」では、蒲鉾「U字彫り」の切子ガラス製食器類をメインとしながらも、これに限定されることなく、比較的低価格の「花切子」についても「天満切子」の標章を付して販売しており、「花切子」も切子ガラス製食器類に含まれることから問題はない。
(ウ)甲40について
被請求人は、「・‥販売個数が実質的に0(ゼロ)個になった時期が続いた・・・」、「・・・二重に計上されている・・・」と主張しているが、斯かる主張は何らの根拠もなく事実と異なる。すなわち、甲40のとおり、平成29年の8月、9月及び12月こそ工房での販売及び売上げは「0」であるが、同年4月10日以降は大概、「切子工房RAU」と「天満切子Gallery」の双方で売上及び販売があった。
なお、甲40では、本件商標に係る登録出願後の販売個数及び売上額も掲載しているが、周知性は日常活動の積み重ねによって生じるものであるから、たとえ登録出願後のものであっても、当該登録出願時における周知性を推し量ることができ、周知性の裏付け資料になる。
(エ)引用商標の使用の継続性について
a 被請求人は、「天満切子」に係る「業務」は、18年間継続されていないとし、平成26年10月?11月頃以降は、被請求人が「切子工房RAU」の実質的な経営者として、天満切子を含む切子ガラス製の食器類の資材の発注と管理、顧客からの注文の受注、天満切子を含む切子ガラス製の食器類の製作、品質管理、売買代金の請求、並びに他の職人への指導、監督を含む「業務」を行ったなどの一方的な主張を繰り広げている。
しかしながら、被請求人が「切子工房RAU」時代に業務の遂行上、たとえ資材の発注等を行っていたとしても、「切子工房RAU」の管理下での「業務」であり、工房運営に必要な水道光熱費その他の諸経費はすべて「切子工房RAU」が負担しているのであるから、到底実質的な経営者とは言えない。売買代金や職人の給与支払い等も、そもそも被請求人には財産管理する法的権能がないのであるからあり得ないことである。
b 平成24年の末頃から被請求人が「切子工房RAU」を退去した同29年8月30日までの約4年半の間は、A氏が獲得していた信用は途切れ、A氏による「天満切子」に関する事業は中断されていたことは明らかであると主張している。
しかしながら、たとえ何らかの事情で業務が中断したからといって、直ちに業務上の信用が喪失するものではなく、被請求人が「切子工房RAU」を退去するまで、及び被請求人が「切子工房RAU」を退去した後はB氏により切子ガラス製食器類の製作がと切れることなく業務は継続しているのであるから、A氏が開設し請求人が相続した「切子工房RAU」の業務上の信用は維持されており、信用が喪失することはない。
c 被請求人は、請求人に対しA氏が平成13年に「切子工房RAU」を開設して以降、同29年4月10日に「天満切子Gallery」を開設するまでの約16年間、切子ガラス製の食器類の「業務」を全く行っていないと主張するが、実務的な「業務」を行うことと財産管理とは峻別されるべきものであり、請求人は、遺産分割協議書(甲3)に基づきA氏の全財産を正当に相続している。
キ 小括
したがって、本件商標は、請求人らの業務に係る商品等を表示するものとして関連する特定の需要者層の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、その商品又はこれに類似する商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標とは、上述したように類似性が高く、需要者層も主として切子細工や酒器などに関心のある切子ガラス製食器類の愛好者と考えられることから、本件商標の指定商品は、請求人ら商品と関連性を有し、需要者層も共通する。
本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した特定の需要者層に対し、引用商標を連想、想起させて請求人らと営業上、あるいは経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係わる商品と誤信させ、前記特定の需要者層が出所について混同するおそれがあり、かかる行為は引用商標が有する顧客吸引力へのただ乗りであり、そのような行為を放置することで、その希釈化を招くおそれがある。
イ 請求人商品が、本件商標の登録出願時には現に市場に流通していることからすれば、本件商標を付した切子ガラス製食器類が市場に流通すると、切子ガラスという特殊な市場での具体的な取引状況に基づいて判断すれば、需要者、取引者に、被請求人と請求人らとの間には営業上又は経済的・組織的に何らかの結びつきがあると誤信されるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 被請求人は「切子工房RAU」の元従業員であり、平成29年8月30日付けで退去しているが(甲48)、退去した翌々日の同年9月1日には本件商標に係る登録出願を行い、「早期審査に関する事情説明書」(甲47)において、商標の使用時期として同年10月から使用開始の予定である旨説明しており(甲47)、被請求人は、在籍中から「切子工房RAU」の代表である請求人の許諾を得ることなく無断で本件商標の登録を受けるための準備を着々と進めていたのは明らかである。
また、被請求人の一連の行為は、請求人との間で締結している合意書の趣旨に反するものであり、請求人らは、その商品の製造・販売について不当な制約を受けるおそれ、永年の営業努力により蓄積された請求人らの業務上の信用を毀損するばかりか、関連する特定の需要者層に無用の混乱を招くおそれがある。
さらに、「早期審査に関する事情説明書」(甲47)に添付された「指定商品を収める桐箱及び指定商品の一例を示す写真」に写っている本件商標が付された桐箱は、「極」の印象は極めて薄く、黒色の「天満切子」の文字のみが引き立って看者の注意を惹き、当該部分が需要者に強い印象を与えるのは明らかであるから、「天満切子」の文字が際立って強調されているように看取られ、「極」の文字は捨象されるか、捨象されなくても極めて希薄な印象しか与えない。このように、被請求人は、「天満切子」の名声に便乗したただ乗り行為を行っており、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、あるいは、請求人らが永年築いてきた名声を汚染させるものである。
また、被請求人は、元従業員であることから引用商標が特定の需要者層の間には既に周知であることを知る立場にあり、引用商標が登録されていないことを奇貨として引用商標に類似する商標を出願したと考えられ、被請求人に図利目的や加害目的等の不正の目的があったと断じざるを得ない。
このように被請求人の行為は取引上の信義則に反し、請求人らの業務上の信用を毀損するばかりか、関連する特定の需要者層に対し無用の混乱を招くおそれがある。
イ 被請求人は、合意書において(甲48)「天満切子」に文字を付加した商号によって商品を販売することを、請求人は認めている、と主張する。
しかしながら、「天満切子」に文字を付加した商号によって「併存」を認めたとしても、将来的に請求人らの事業に制約が生じるような強大な独占排他的効力を有する商標権の取得を請求人らに無断で取得することまでも認めたものではない。
また、被請求人は、本件商標の登録出願後及び登録査定後においても、商道徳上、信義則に反すると考えられる不正行為を現に行っており(甲52?甲55)、「不正の目的」をもって権利を取得したと結論付けざるを得ない。
そうすると、本件商標は、請求人らの業務に係る商品等を表示するものとして特定の需要者層には周知の商標と類似する商標であって、不正の目的で使用するものである。
したがって、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第20号証(枝番号を含む。)を提出した。以下、証拠については、「乙1」のように記載する。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標は、自他商品識別力を有しない商標である。
ア 「天満」の文字は、「ガラス産業の中心地であり、ガラスと縁が深い」天満という地域・地名を表すにすぎず(乙1)、「切子」は、切子ガラス製品を表すにすぎない(乙1、乙2)から、引用商標に接する需要者、取引者は、「天満切子」を何人かの業務に係る商品に使用される商標とみるよりも、単に「天満地域で製造される切子ガラス」という認識をするにとどまる。
イ 請求人らとの関連性が記載されずに、「天満切子」という文字が記載されているウェブサイトや動画が多数存在する(甲31、乙3?乙7)。
ウ そうすると、引用商標は、自他商品識別力を有しない商標である。
(2)引用商標は、A氏又は請求人らのみの標章ないし商標ではない。
平成20年6月11日に出願された、A氏による標準文字「天満切子」に係る登録出願(商願2008-45777号)が、商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号を理由とする拒絶査定(乙1)が確定した後は、請求人らによる「天満切子」の標章についての独占的な使用への志向や、第三者による使用を排除するなどの適切なブランド管理がなされた形跡はなく、何人も「天満切子」という文字からなる標章を使える状況であった。
例えば、天満切子の職人の一人であったB氏は、平成26年10月?11月頃に「切子工房RAU」を退去した後、請求人らとは無関係に、また、使用の制限や使用の許諾を受けることなく、「天満切子」の文字からなる標章を自由に使用することができた。B氏は、「切子工房RAU」を退去した後、「天満切子」又は「天満切子 斉久」という文字からなる標章を付した商品を、成田空港内や、大阪市中央区の株式会社相互商会にて販売していた(乙9、乙10)。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 外観の類否
(ア)本件商標
本件商標は、薄めのグレーの極という毛筆書体風の大きい文字の中央付近に重なるように、黒色の天満切子という小さめの文字を同じく毛筆書体風に縦書きにしてなり、全体として外観上まとまりよく一体的に表されている、図形化された商標であるところ、本件商標の構成中、「天満切子」の文字のみを切り出して商標の要部とすることはできない。本件商標は、外観上、大きな「極」の文字に重なるように「天満切子」の文字が配置されていることから、それらが一体的に表された商標である。
そして、その構成中、「天満切子」の文字は、天満で製造販売されている切子ガラスの意味合いが看取される、「単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章」であり、自他商品識別力を有しない又は独占適応性を欠く標章であるから、本件商標の要部ではない(乙13)。
(イ)引用商標
引用商標は、「ガラス産業の中心地であり、ガラスと縁が深い」天満という地域産の切子ガラス、との外観しか看取されない。辞書においては、「天満/てんま」の説明内容は、「大阪市北区南東部、大川(旧淀川、別称天満川)右岸一帯の地区。地名は天暦3(949)年創建と伝えられる天満宮の所在に由来。江戸時代は大坂三郷の1つ、天満組の市街地で、淀川水運を利用して天満青物市場が設けられ、商況活発であった。明治3(1870)年河岸の川崎に造幣寮(現造幣局)が設置され、大阪の近代工業の発祥地となった。周辺には金属、ガラス、繊維などの工業が発達。JR天満駅と天神橋の間は天神橋筋商店街の繁華街をなす。満宮の天神祭は京都の祇園祭とともに、夏祭りの代表として有名。」と記述されている(乙14)。
イ 称呼の類否
本件商標は、全体として外観上まとまりよく一体的に表されていることから、「テンマンキリコキワミ」、「テンマンキリコキョク」、又は「テンマンキリコゴク」との称呼が生じる。
他方、引用商標は、いずれも、「テンマンキリコ」との称呼しか生じない。
ウ 観念の類否
本件商標は、全体として外観上まとまりよく一体的に表されていることから、本件の指定商品の取引者、需要者には、「ガラス産業の中心地であり、ガラスと縁が深い」天満という地域産の切子ガラスで作った、「天満切子のグラスの頂点(最上級)の品」又は「天満切子のグラスの頂点(最上級)を目指すもの」という観念を自然に想起させる。
他方、引用商標は、「ガラス産業の中心地であり、ガラスと縁が深い」天満という地域産の切子ガラス、との観念しか生じない。
エ 本件商標の「極」の文字について
請求人は、本件商標に接した需要者であれば、「天満切子」の文字が際立って強調されているように看取られ、「極」の文字は捨象されるか、捨象されなくても極めて希薄な印象しか与えない旨主張する。
しかしながら、本件商標の出願経過である「早期審査に関する事情説明書」の提出物件の最終頁の写真を見れば(乙15)、「極」の文字は明確に看取されるものであって、捨象されるものではない。そして、甲47は、本件商標における「早期審査に関する事情説明書」の当該頁が白黒でコピーされているとともに、「極」の文字を見づらくさせるものであるため、甲47は、本件商標を認定する証拠として採用されるべきでない。
オ まとめ
本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標である。
(4)引用商標は、少なくとも本件商標の登録出願時において、請求人らの商標として、需要者の間で広く認識されていない。
ア 甲6及び甲13に示される引用商標1が使用されたのは、本件商標の登録出願日より後であるから、少なくとも本件商標の登録出願時の周知性を裏付ける事情とならない。引用商標1は、桐箱の落款が示すように、二代武山(B氏)の製作による切子ガラスを収める桐箱に使用されたものである(甲6、甲13、乙12)ため、被請求人が「切子工房RAU」を退去するまでは使用されていない。
イ 甲7の引用商標2の提灯が納品されたのは、平成19年4月10日である(乙16)から、これが使用されたのは、早くとも、同日以降である。
ウ 甲8の引用商標3は、請求人が開設した「天満切子Gallery」の看板であるから、これが使用されたのは、早くとも、平成29年4月10日以降である(甲10)。
エ 宣伝広告
請求人ら並びに引用商標について周知性を得るための広告宣伝がなされていない。また、請求人らは、自ら積極的に引用商標の広告宣伝活動を行っていない。請求人ら並びに引用商標が、新聞や雑誌等において紹介された記事数も少なく(1年あたり1つ程度)、その紹介された記事のほとんどが、本件商標の登録出願日より5年以上前のものである。新聞記事については、平成14年?同22年の8年間で10紙に取り上げられたにすぎず、雑誌については、同14年?同27年の13年間で14紙にすぎず(甲21、甲22)、さらに、雑誌については、地域が限定されており、その頒布数、頒布先も不明である。
また、「切子工房RAU」という文字が記載されていない記事やウェブサイト、及び「天満切子」という文字が特定人の標章ないし商標であるとは認識されるように記載されていないウェブサイトや宣伝広告が存在する。(甲19、甲22、甲27、乙3?乙7)。
オ アンケート
甲41の「お客様アンケート」は、日付の記載が無く、その実施時期が不明であり、また、「天満切子Gallery」で配布されたことは分かるが、引用商標に関する記載がなく、該アンケートと引用商標との関係は認められない。さらに、該アンケートを誰が実施したのか、どの程度の人数に対してどのように配布されたか等も不明であるから、該アンケートは公平性及び中立性に欠け、該アンケートによっては、「本件商標の登録出願時において、需要者の間で広く認識されている」ことを裏付ける事情とならない。
カ 請求人による「天満切子」の販売総数が不明確
(ア)甲32-1に示された「宅配便伝票(1)」には、「天満切子」の文字がなく、「グラス」、「食器」、又は「ロックグラス(名前入れ)」のみが記載されている伝票や、配送された年が確認できない伝票を12枚以上確認することができる。また、配送先が黒塗りにより隠されており、該宅配便伝票は、請求人が主張する「顧客」に販売するための伝票ではなく、名前入れ加工業者に依頼したときの伝票であると推察されるものも、10枚以上含まれている。
したがって、引用商標の周知性を裏付ける事情としては、少なくとも、「天満切子」との記載がない伝票分、配送された年が確認できない伝票分、及び「京都府乙訓郡」が配送先となっている伝票分を除いて認定されるべきである。
(イ)甲32-2に示された「宅配便伝票(2)」における、本件商標の商標登録出願日より後の日付の該伝票は、本件商標の登録出願時の周知性を裏付ける事情とならず、本件商標の登録査定より後の日付の該伝票は、本件商標の登録査定時の周知性を裏付ける事情とならない。なお、甲32-2に示された「宅配便伝票(2)」にも、上述の名前入れ加工業者と思われる宅配便伝票が10枚以上含まれている。
(ウ)大丸ホームショッピングでの宣伝広告(甲18)及び発注詳細における、宣伝広告は平成16年のものであるが、発注明細は同19年のものであるため、宣伝広告と発注詳細とは「年」単位で整合していない。また、発注詳細における販売総数は、請求人が主張する306個ではなく304個であるとともに、その内の284個は、請求人が引用商標の周知性として主張する、「色被せガラスに蒲鉾『U字彫り』でシンプルかつ万華鏡の如く輝きを引き出すようにした新たな切子ガラス製の食器類」として定義された「天満切子」としての切子ガラス製の食器類ではなく、「花切子」と呼ばれる別の商品である。
(エ)甲34、及び甲35-1?甲35-6は、いずれも、本件商標の商標登録出願日及び登録査定より後であるから、これらは、本件商標の登録出願時及び登録査定時の周知性を裏付ける事情とならない。
(オ)甲40において示す「天満切子」の売上額・販売個数のうち、少なくとも、本件商標の商標登録出願日以降の売上額・販売個数は、本件商標の登録出願時の周知性を裏付ける事情とならず、商標の登録査定以降の売上額・販売個数は、本件商標の登録査定時の周知性を裏付ける事情とならない。
(カ)甲40においては、請求人が平成29年4月10日に、切子ガラスの製作は行わず、販売のみを行う店舗である「天満切子Gallery」(乙18)を開設した後、「小売」と「卸売」とが別々に記載され、それらを合算した「合計」の売上額も記載されているが、この記載は切子ガラスの商品の売上を正確に示していない。少なくとも、被請求人が「切子工房RAU」の職人として切子ガラスを製作していた間は、「切子工房RAU」において被請求人らの職人が製作した切子ガラスの商品が、一旦、「天満切子Gallery」に納品され、その後、該商品が「天満切子Gallery」から需要者に販売されていた。被請求人が「切子工房RAU」を退去した平成29年8月以降、「切子工房RAU」における販売個数が実質的に0個になった時期が続いたにもかかわらず、「天満切子Gallery」による販売個数が計上されているのは、それ以前に「切子工房RAU」から納品された在庫を販売しているからにすぎない。したがって、甲40に示す「天満切子Gallery」の売上額及び販売個数、すなわち平成29年4月10日以降の売上額及び販売個数は、1個の切子ガラスの商品の売上額が二重に計上されていることになるから、「天満切子Gallery」の売上額及び販売個数と「切子工房RAU」の売上額及び販売個数のいずれか一方は、本件商標の登録出願時の引用商標の周知性、及び本件商標の登録査定時の引用商標の周知性を裏付ける事情として認定されるべきではない。
キ 甲25のAmazonにおける商品の販売、及び甲26のYahoo!ショッピングにおける商品の販売が、本件商標の商標登録出願日より前に行われていたか否かが不明である。
ク 甲27、並びに甲28-1及び甲28-2においては、「天満切子」という文字が特定人の標章ないし商標であると需要者、取引者に認識されるように記載されておらず、むしろ、需要者、取引者には、「大阪ガラス発祥の地」である天満界隈で作られた伝統工芸品としての切子ガラスと看取されるにとどまる。
甲30は、本件商標の登録出願日より約10年前の個人ブログが1件示されているにすぎない。また、「天満切子」という文字が特定人の標章ないし商標であるとは認識されるように記載されていない。
ケ 「天満切子」に係る商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号における「業務」は、18年間継続されていない。
(ア)被請求人は、天満で製造販売されている切子ガラスである「天満切子」の職人の一人であって、遅くとも平成27年2月19日にA氏に後見人が選任された後は、「切子工房RAU」の従業員ではない(乙19)。
また、甲48に示すように、被請求人が「切子工房RAU」の従業員であったとの記載はない。
(イ)平成27年11月12日に死去したA氏は、被請求人が記憶するかぎり、同23年の後半から天満切子を含む切子ガラス製の食器類の製作が困難になり始め、平成24年末頃には、天満切子を含む切子ガラス製の食器類をほとんど製作しなくなった。
(ウ)A氏が天満切子を含む切子ガラス製の食器類をほとんど製作しなくなった平成24年末頃、特にB氏が「切子工房RAU」を退去した同26年10月?11月頃以降は、天満切子の職人としての被請求人が実質的な経営者として、天満切子を含む切子ガラス製の食器類の資材の発注と管理、顧客からの注文の受注、天満切子を含む切子ガラス製の食器類の製作、品質管理、売買代金の請求、並びに他の職人への指導、監督を含む「業務」を行った。
(エ)A氏が死去した平成27年11月12日の6日後の同年同月18日以降は、被請求人が製作した天満切子を含む切子ガラス製の食器類の売買代金は、被請求人の名義の銀行の預金口座に振り込まれて、該預金口座から資材の仕入れ費用を含む各種費用が支払われていた。
(オ)一方、請求人は、A氏が平成13年に「切子工房RAU」を開設(甲20-2、甲20-4)して以降、同29年4月10日に「天満切子Gallery」を開設するまでの約16年間、天満切子を含む切子ガラス製の食器類の資材の発注と管理、顧客からの注文の受注、天満切子を含む切子ガラス製の食器類の製作、品質管理、売買代金の請求、並びに他の職人への指導、監督を含む「業務」を行っていない。
(カ)したがって、A氏が天満切子を含む切子ガラス製の食器類をほとんど製作しなくなった平成24年の末頃から被請求人が「切子工房RAU」を退去した同29年8月30日までの約4年半の間は、A氏が獲得していた信用は途切れ、A氏による「天満切子」に関する事業は中断されていたことは明らかである。
(キ)したがって、引用商標が、過去に新聞・雑誌に紹介されていたとしても、その掲載数は非常に少なく、また何人かの業務に係る商標として紹介されていたものではないうえに、頒布数、頒布先も不明であること、さらに、少なくとも「切子ガラス」の市場における請求人の市場シェア等の量的規模を、客観的かつ具体的に把握することができないことから、引用商標は、いずれも、本件商標の登録出願時において、請求人らの商標として、需要者の間で広く認識されているとはいえない。
(5)小括
以上から、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものではない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)前記1の商標法第4条第1項第10号の該当性についての主張は、本号においても同様である。
(2)引用商標は、いずれも、本件商標の登録出願時の周知性を有しておらず、また、本件商標と引用商標とは互いに非類似であることから、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
(3)本件商標は、請求人が主張する「特定の需要者」の範囲においては、引用商標とは十分に区別されることから混同を生ずるおそれはない。
ア 「天満切子」の文字からなる標章は自他商品識別力を有しない、又は独占適応性がないものである。
仮に、「天満切子」の文字からなる標章が自他商品識別力を有し、かつ独占適応性のあるものであったとしても、引用商標は、いずれも、本件商標の登録出願時の周知性を有しておらず、また、外観・称呼・観念において、本件商標は、請求人の主張する「特定の需要者」の範囲においても、引用商標とは十分に区別されることから、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
イ 仮に、引用商標が自他商品識別力を有し、かつ独占適応性のあるものであったとしても、本件商標は、引用商標に対する「混同防止」機能を十分に発揮し得るものである。
(4)小括
よって、上述のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)上記1の商標法第4条第1項第10号の該当性についての主張は、本号においても同様である。
(2)自他商品識別力を有しない、又は独占適応性を欠く「天満切子」という文字からなる標章を有する商標(本件商標を含む)を出願することについて、被請求人に「不正の目的」はない。
ア 甲48に示す合意書によれば、最も短期間に解釈されるとしても、該合意書の締結日である平成29年11月27日以降、被請求人が「天満切子」に文字を付加した商号によって商品を販売することを、請求人は認めている。
したがって、被請求人及び請求人からそれぞれ販売される「天満切子」という文字が記載された商品が市場において「併存」することは、該合意書において請求人が認めるべき事情といえる。
イ さらに、A氏が出願した標章「天満切子」に係る登録出願(商願2008-45777)の拒絶査定が確定してから被請求人が「切子工房RAU」を退去するまで、「天満切子」という文字からなる標章について請求人ら又はその関係者によって登録出願がされなかったことから、被請求人は、「天満切子」という文字からなる標章は、自他商品識別力を有しない、又は独占適応性を欠く標章であるとの認識を持っていた。
したがって、自他商品識別力を有しない、又は独占適応性を欠く「天満切子」という文字からなる標章を有する商標(本件商標を含む)を出願することについて、本件商標の登録出願時においては、被請求人に、商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」はない。
(3)小括
よって、上述のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものではない。
4 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではない。

第5 当審の判断
請求人が利害関係人であることについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
1 引用商標等の周知性について
(1)請求人は、別掲2ないし4の構成からなる引用商標を「切子ガラス製の食器類」について使用し、需要者に広く知られている旨主張しているところ、請求人の提出に係る証拠を総合してみても、引用商標の使用を裏付ける証拠はほとんどなく、引用商標は、申立人の業務に係る申立人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)「天満切子」の周知性等について
ア 請求人は、引用商標の構成中の「天満切子」の文字は、自他商品識別力を有するものであり、請求人らが、切子ガラス製の食器類(以下「請求人使用商品」という。)に使用し、需要者の間に広く認識されている旨主張している。
以下、上記請求人の主張する「天満切子」の文字を「使用標章」という場合がある。
イ 使用標章の自他商品識別力について
「天満切子」の文字は、その構成中「天満」の文字は、「大阪市北区、旧淀川と天満堀川(埋め立て)に囲まれた街区」(大辞林 第三版(株式会社三省堂))の意味を有する語であり、後記ウによれば、請求人の業務に係る商品との関係において、生産地を表すと認められ、その構成文字全体として、「大阪市天満地域の切り子硝子」を表すものと認識されるものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有しないものといえる。
ウ 使用標章の周知性等について
(ア)甲2の産経新聞(平成30年2月13日)には、「宇良ガラス加工所」が昭和8年に創業され、平成10年には屋号を「切子工房RAU」に変更し、当該工房の代表であったA氏が切子の制作を始め、同12年にオリジナルブランド「天満切子」の制作・販売を開始、同27年にA氏が亡くなった後、請求人が当該工房の代表を引き継いだこと、及び天満にあるショップ「天満切子Gallery」において「天満切子」の商品が販売されていることが記載されている。
(イ)甲10の「個人事業の開業・廃業等届出書」(平成29年4月10日提出)には、屋号を「天満切子Gallery」、事業概要を切り子ガラスの販売等、開業日を平成29年4月10日と記載されている。また、甲11のパンレットには、「天満切子Galleryは、大阪の伝統工芸である天満切子の展示・販売を行う専門店です」及び「『オープン記念』天満切子グラスをご注文のお客さまに・・・プレゼント(5月7日迄)」と記載されている。
(ウ)甲14の書籍(「江戸切子」(平成5年6月20日発行、株式会社里文出版))には、大阪のカットグラスの変遷が掲載されており、その260ページに「現在、大阪の硝子界にあって、テーブルグラスの分野で代表される企業に、カメイガラスがある。・・・現在、大阪の切子業者の相当数は、カメイガラスの協力工場となっている。宇良硝子加工所をはじめ、林、福岡、吉村、坂本、高橋、森、柴田、柏倉などの工房が数えられ、ここで加工されたカットグラスは、最後の艶出しまで手仕上で完成される。・・・このように、大阪のカットグラスも古い伝統の中に裏書きされるように、多くの職人たちによって優れた製品を世に出してきた。」と記載されている。
(エ)甲16-1のウェブサイト記事(平成28年5月23日)には、「天満切子はその名の通り、大阪の淀川沿いある天満で製作されているカットグラスのことです。命名自体は比較的最近のことですが、大阪のガラス造りの歴史はとても古いものです。・・・カメイガラスが倒産してからは、それまでの仕事で培った技術を活かし、薩摩切子の技法をベースに生地の厚みを利用して蒲鉾形『U字堀り』でシンプル且つ今までにない輝きを引き出す技法を加えた天満切子を開発したというわけです。・・・天満切子はこのような大阪のガラス職人たちの歴史と気風を受け継ごうと、比較的最近になって命名された切子です。」、及び甲16-3の新聞記事(同14年6月26日 毎日新聞)には、「明治時代から大阪造幣局で、ガラス製造に必要なソーダを作っていたこともあり、昭和30年代までは、天満には大きなガラス工場が軒を並べ、切子職人が大勢いた。・・・兄・・・とともに父の跡を継いだ宇良硝子加工所など、天満の切子職人が注文を受けて、薩摩切子を手掛けるようになった。」との記載があり、また、甲16-4の新聞記事(同17年9月15日 産経新聞)には、「かまぼこ型(U字型)の歯で丸みを生み出す『天満切子』」の記載がある。
(オ)甲17の「天満切子Gallery」商品カタログには、「天満切子の由来」について、「大阪の天満は、ガラスと縁が深い地域です。大阪天満宮正門脇に『ガラス発祥の地』の碑があり、江戸時代に長崎のガラス職人、播磨屋久兵衛の指導のもと天満宮近くで作っていたと言われています。数十年前まで、同心・与力町界隈は多くのガラス工場で活気に溢れており、その同心でA氏が切子職人として四十余年の経験をもとに『切子工房RAU』を創業したのが始まりです。そこで、今までにない輝きを引き出す技法で作られた切子を『天満切子』と命名しました。」と記載され、取扱商品として、「ロックグラス」、「タンブラー」、「ぐいのみ」などが掲載されており、販売として「天満Gallery」、製造元として「切子工房RAU」の記載がある。
(カ)甲18の平成16年の大丸ホームショッピングの宣伝広告及び発注詳細とされるものには、「幻の薩摩切子が大阪・天満で復活。 天満切子」として、「匠の技で蘇る天満切子。江戸末期、開発から十余年で途絶えたガラス工芸品、薩摩切子。その幻の美しさが大阪の天満で復刻され、今に蘇りました。復刻に携わった切子職人・A氏の手で誕生した天満切子をご紹介します。」と記載され、「天満切子 タンブラー3個セット」、「天満切子 一口グラス」などの商品が掲載されている。また、「丸ホームショッピング2007 天満切子発注明細」によれば、2007年6月25日?同年9月28日の期間に、グラスやタンブラーなどが約300個納品された。
(キ)平成23年11月?12月に、東日本大震災チャリティの一環として大阪アメニティパークで開催されたイベントに関連し、地酒試飲会用食器及び抽選会賞品用として、請求人は当請求人使用商品を100個納品した(甲19)。
(ク)甲20-2の新聞記事(平成14年11月8日 朝日新聞)には、「工房『RAU』。兄弟で切り子を作っているA氏が昨年8月、・・・自宅1階に開設した。」、及び甲20-4の新聞記事(平成15年10月25日 読売新聞)には、「一昨年一月、工房・切子工房RAUをオープン」の記載があり、請求人使用商品を紹介する記事が、平成14年?同27年の間の新聞記事、各種雑誌、個人のブログ等で合計25回掲載された(甲20?甲23、甲29、甲30)。
また、平成28年9月5日に放映されたテレビ番組において、請求人使用商品がゲスト出演者から当該番組の出演者にプレゼントされた旨の紹介がウェブサイトに掲載された(甲31)。
(ケ)請求人使用商品は、印刷日を平成30年10月26日又は同年11月29日とするAmazon、Yhaoo!ショッピング等のオンラインショップに掲載されている(甲25?甲28)。
また、「切子工房RAU」又は「天満切子Gallery」の名のもと、平成25年1月?同30年11月に宅配便により請求人使用商品を販売した(甲32)。また、平成27年3月13日に請求人使用商品を、大阪市内のタワーマンションの関係者へ430組個(2個で1つの商品)納品している(甲33)。さらに、請求人使用商品を平成30年2月?同年11月の期間に、公的機関や法人等の各種団体に714個納品(甲34、甲35)しており、請求人使用商品の売上額・販売個数(甲40)によれば、平成27年及び同28年の請求人使用商品の売上額及び販売個数は、前者が約1000万円及び約1300万円、後者が約800個及び1100個であり、本件商標の登録出願時前の売上総額は約4100万円、売上個数は約3400個である。
(コ)使用標章に係る請求人使用商品は、平成29年11月18日には、一般財団法人日本工芸館主催の日本民芸公募展で大阪市長賞を受賞した(甲37)。
(サ)ふるさと納税現調査(調査票A)(回答期日平成28年5月24日 甲36)には、返礼品の選定手法や基準についての回答として「天満切子は実用的で大阪の伝統工芸品としてゆかりがある。」との記載があり、また、甲41は、天満Galleryが行ったアンケート(平成29年12月ないし平成30年2月)であり、購入目的の項には、選択肢として「ご自身で使用のため」、「贈答品」及び「その他」の記載がある。
(シ)上記(ア)ないし(サ)によれば、大阪の天満地域は、大阪のガラス造りの発祥の地とされ、ガラスの工場や問屋が軒を並べていたが、その後衰退し、A氏の経営する宇良硝子加工所は、平成10年頃に屋号を「切子工房RAU」に変更し、おそくとも、同13年8月に、「切子工房RAU」を開設し、A氏は、薩摩切子を元に新たな切子硝子製のグラス等を「天満切子」と称し制作、販売を開始したことがうかがわれる。
請求人は、A氏の相続人として、天満地域で「天満切子」の文字を請求人使用商品に使用しており、平成14年?同27年の間の新聞記事、各種雑誌、個人のブログ等で合計25回取り上げられ、少なくとも同16年には大阪を中心に請求人商品の販売を行い、現在まで継続して販売し、本件商標の登録出願時前の売上総額は約4100万円、売上個数は約3400個であるなど、一定程度の事業展開していることがうかがえる。
しかしながら、新聞記事、各種雑誌及び個人ブログ等への掲載回数は多いものとはいえず、かつ、掲載された雑誌はその販売地域が限定されたものが多く、また、テレビ番組において、請求人使用商品が出演者へのプレゼントとされ、そのことが、ウェブサイトにおいて紹介されたとしても、僅か1回にすぎないものであり、さらに、ふるさと納税現調査の選定基準の記載をもって、使用標章に係る請求人使用商品の需要者の認識を表すものとはいい難く、かつ、アンケートは本件商標の登録査定後に行われたものであって、そのサンプル数も多いものとはいえず、加えて、公的機関や法人等の各種団体への納品及び日本民芸公募展での受賞は、いずれも本件商標の登録査定後である。
そして、請求人使用商品の売上額及び販売個数は、その市場シェアも明らかではなく、その他、使用標章に係る請求人の業務に係る商品の広告宣伝の詳細(範囲、回数、費用等)等を示す証左はいずれも見いだせない。
そうすると、請求人の提出した証拠によっては、使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、大阪を始めとする近畿地方においてはもとより、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
前記1(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
また、使用標章は、前記1(2)のとおり、自他商品識別標識としての機能を有しないものであり、かつ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
そうすると、本件商標は、本件商標と引用商標及び使用標章、並びに本件商標の指定商品と引用商標及び使用標章の使用に係る商品との類否について論ずるまでもなく、商標法第4条第1項第10号の要件を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標及び使用標章の周知性について
引用商標は、前記1(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
また、使用標章は、前記1(2)のとおり、自他商品識別標識としての機能を有しないものであり、かつ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標及び使用標章との類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、灰色の毛筆体風の「極」の文字を大きく表示し、該文字上の中央部に黒色で毛筆体風の「天満切子」の文字を縦書きで「極」の文字を縦断するように配した構成よりなるところ、その構成態様から、「極」の文字と「天満切子」の文字を前後に重ねて表記した結合商標とみるのが相当である。
本件商標の構成中、「天満切子」の文字部分は、本件指定商品との関係においては、大阪市天満地域の切り子硝子を表す語、すなわち商品の品質を表す語と認識されるものであって、自他商品の識別標識としての機能を有しないものといえ、他方、本件商標の構成中、「極」の文字部分は、「ゴク」又は「キワ(ミ)」の称呼と「きらびやかなさま」(広辞苑第六版)の観念を生じるところ、その指定商品である「大阪市天満地域産の切り子硝子で作ったグラス」との関係では、格別自他商品の識別力を欠く語であるということはできないものである。
したがって、本件商標は、その指定商品との関係においては、「極」の文字部分が、取引者、需要者をして、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるものであり、「天満切子」の文字部分のみが需要者に強く支配的な印象を与えるとはいえない。
イ 引用商標及び使用標章
(ア)引用商標
引用商標1は、別掲2のとおり、「天満」及び「切子」の文字を2行に縦書きし、その左側に落款と思しき図形を配した構成態様からなり、引用商標2は、別掲3のとおり、提灯の表面上部に円状の図形を表示し、当該円状の図形の直下に「天満切子」の縦書きの文字を配した構成からなり、引用商標3は、別掲4のとおり、青色の縦長の長方形内に白抜きの文字で「天満切子」と縦書きした構成よりなるよりなるものである。
そして、上記構成からなる引用商標は、その構成中の「天満切子」の文字部分が、その使用に係る商品との関係において、前記1(2)のとおり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものといえることから、いずれも、当該文字部分のみが需要者に強く支配的な印象を与えるとはいえない。
(イ)使用標章
使用標章は、「天満切子」の文字よりなるところ、前記1(2)のとおり、その使用に係る商品との関係においては、自他商品識別標識としての機能を有しないものであり、かつ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
ウ 本件商標と引用商標及び使用標章との類似性の程度について
本件商標と引用商標とは「天満切子」の文字を共通にするとしても、これが独立して自他商品の識別標識と認識されるものとはいえないところ、上記のとおりの構成からなる本件商標と引用商標とは、「極」の文字の有無や図形の有無などにより明らかに相違するものであるから、その類似性の程度は高いとはいえないものである。
また、本件商標の構成中の「天満切子」の文字が、その指定商品との関係において、独立して自他商品の識別標識と認識されるものとはいえないことからすれば、本件商標と使用標章とは「天満切子」の文字を共通にするとしても、その類似性が高いとはいい難いものである。
(3)本件指定商品と引用商標及び使用標章の使用に係る「切子ガラス製の食器類」との関連性、需要者の共通性について
上記商品は、いずれも切子硝子商品であることから、関連性を有するものであり、また、当該商品の販売場所や需要者の範囲は共通するものといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
本件商標と引用商標及び使用標章の使用に係る「切子ガラス製の食器類」とは、商品において関連性を有し、需要者を共通にするものである。
しかしながら、引用商用は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、また、使用標章は、自他商品識別標識としての機能を有しないものであり、かつ、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(請求人)の業務に係る商品又は役務であることを表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり、本件商標と引用商標及び使用標章との類似性の程度が高いとはいえないことなどを総合勘案すれば、本件商標に接する需要者が、引用商標ないし使用標章を連想又は想起するものということはできない。
したがって、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用をした場合、これに接する需要者が、引用商標ないし使用標章を連想、想起することはなく、請求人ら又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかと誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
前記1のとおり、引用商標及び使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の取引者、需要者の間で、他人の業務に係る商品を表すものとして、広く認識されていたとは認められないものである。
また、請求人の提出に係る全証拠を勘案しても、本件商標権者が引用商標の顧客吸引力を利用する、又は、顧客吸引力を希釈化させる等、不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けて使用していると認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
そうすると、本件商標は、引用商標の名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 請求人の主張について
(1)請求人は、商標が需要者の間で広く認識されているとは、標章が付された商品の特殊性をも十分に考慮して判断すべきであり、引用商標ないし使用標章が付された商品はその希少性ゆえに需要者、取引者の注目を集め、メディアによる取材、紹介等がなされており、請求人らが主体的に行った宣伝広告活動が少なくても、それをもって引用商標の周知性を否定する理由とはならない旨主張する。
しかしながら、請求人による引用商標ないし使用標章を付した商品の広告宣伝等は、前記1のとおりであり、永年の間、反復継続して行われてきたものではないこと、広告宣伝費用に関する主張や証拠はなく、広告宣伝の規模が明らかではないことから、「切り子硝子」という商品の特殊性によって、その取引者、需要者の範囲が限定されていることを考慮しても、このような広告宣伝により、引用商標ないし使用標章が、我が国の指定商品の需要者の間において全国的に周知に至る程に、その認知度が高まったとは到底認められない。
(2)請求人は、被請求人は、合意書において(甲48)「天満切子」に文字を付加した商号によって商品を販売することを請求人は認めている、と主張するが、「天満切子」に文字を付加した商号によって「併存」を認めたとしても、将来的に請求人らの事業に制約が生じるような強大な独占排他的効力を有する商標権の取得を請求人らに無断で取得することまでも認めたものではない旨等を述べ、「不正の目的」をもって権利を取得したと結論付けざるを得ない旨主張する。
しかしながら、上記合意書(甲48)には、「天満切子」に文字を付加した商号によって、被請求人が商品を製造・販売することを、請求人及び被請求人が確認した旨の記載はあるものの、商標登録出願の是非についての記載はないし、そもそも、前記4のとおり、引用商標ないし使用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間で、請求人らの業務に係る商品を表すものとして、広く認識されていたとは認められないものであり、請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標権者が引用商標の顧客吸引力を利用する、又は、顧客吸引力を希釈化させる等、不正の目的をもって本件商標を出願し、登録を受けて使用していると認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標1:色彩は審判請求書参照。)

別掲3(引用商標2:色彩は審判請求書参照。)

別掲4(引用商標3:色彩は審判請求書参照。)

審理終結日 2020-01-27 
結審通知日 2020-01-31 
審決日 2020-03-31 
出願番号 商願2017-116270(T2017-116270) 
審決分類 T 1 11・ 251- Y (W21)
T 1 11・ 271- Y (W21)
T 1 11・ 252- Y (W21)
T 1 11・ 222- Y (W21)
T 1 11・ 253- Y (W21)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 中束 としえ
庄司 美和
登録日 2018-01-19 
登録番号 商標登録第6012612号(T6012612) 
商標の称呼 テンマンキリコキワミ、テンマキリコキワミ、テンマンキリコ、テンマキリコ、テンマン、キワミ、キョク、ゴク 
代理人 國弘 安俊 
代理人 河野 広明 
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