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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35
管理番号 1368318 
審判番号 無効2019-890018 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-03-26 
確定日 2020-09-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5966185号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5966185号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5966185号商標(以下「本件商標」という。)は、「唯品会」の文字を横書きしてなり、平成28年12月26日に登録出願、第35類「広告,インターネットによる広告,交通広告,屋外広告物による広告,街頭及び店頭における広告物の配布,広告宣伝物の企画及び制作,インターネットを通じたオンラインによる商品の通信販売の取り次ぎ,オンラインウェブサイト上での広告及び商品販売契約の代理」を指定役務として、同29年5月19日に登録査定、同年7月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、「唯品会」の文字を横書きしてなり、中国において、2010年9月28日に登録された商標(中国商標登録第6923149号)であって、請求人の業務に係る役務「販売促進のための企画及び実行の代理」に使用して、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、中国及び日本において広く知られた商標(以下「引用商標」という。)であると主張するものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2 具体的理由
(1)請求人について
請求人は、2008年8月22日に設立された中国法人であって(甲3)、中国三大ECサイトの一つである「唯品会」(英語名:「vip.com」)(以下「請求人サイト」という。)を運営している(甲4)。請求人サイトは、中国最大のフラッシュセールスサイト(期間限定で、割引価格などの特典が付いた商品を販売するサイト)であり、各分野の人気ブランドと提携して、ファッション、化粧品等を常に手ごろな価格で顧客に提供している(甲5)。
また、2016年末に中国国内の総会員数が2億人を突破し、2015年の年間売上高は402億元(日本円でおよそ7,501億円)を超え、オーダー数は2億を達成するなど、中国の三大ECサイトの一つとして認知されるに至った(甲5)。
請求人は、本件商標の登録出願前から、請求人サイトのPRイベントや看板広告など、中国国内における認知度向上のための施策を積極的に行っており(甲6?甲10)、遅くとも2013年からは、中国で人気の俳優を起用したテレビコマーシャルを継続的に展開することで、中国の幅広い層の需要者に対して、請求人サイトのサービスを訴求させている(甲11?甲13)。
(2)引用商標について
引用商標「唯品会」は、辞書等に掲載されていない造語であって、請求人の代表者が2008年に独自に考案したものである。実際、「唯品会」の文字は、請求人及び請求人の関連会社(唯品会(中国)有限公司)(以下「唯品会(中国)社」という。)の商号に含まれ、かつ、請求人サイトの名称として、その開設以降、一貫して使用されている。また、引用商標は、本件商標の登録出願時において、中国及び我が国の需要者の間で請求人の役務(販売促進のための企画及び実行の代理)を示す商標として一定程度認知されていた。
(3)被請求人について
被請求人は、請求人とは何ら関係のない第三者(自然人)であって、中国に住所を持つことから、中国における請求人サイトの周知性にかんがみるならば、本件商標の登録出願当時、当然に本件商標が請求人サイトの名称と同一であることを知っていたものと推認される。
また、本件商標の指定役務(「インターネットを通じたオンラインによる商品の通信販売の取り次ぎ、オンラインウェブサイト上での広告及び商品販売契約の代理」など)は、請求人サイトにおける請求人の役務(「販売促進のための企画及び実行の代理」)の一環として行われるものであって、請求人の役務と同一又は類似するものであることから、被請求人は、請求人サイトに関する請求人の活動を意識して、本件商標を出願したものとうかがわれる。
さらに、過去に被請求人が行った商標登録出願を検索すると、海外の周知商標を冒認した出願が他にも確認され、海外の周知商標との関係で商標法第4条第1項第19号又は同第15号を理由に拒絶されていることが判明した(甲28?甲31)。
このように、被請求人が他人の周知商標を冒認して出願していることから、本件商標についても同様に、請求人の周知商標を冒認して出願したものと推察され、被請求人による本件商標の登録出願には、請求人が引用商標を商標として使用することを選択し、やがて我が国においても登録出願されることを予想した上で、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推定される。
(4)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、本件商標の登録出願時において、中国及び我が国における取引者、需要者の間で、少なくとも「販売促進のための企画及び実行の代理」について、請求人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と同一である。また、被請求人による本件商標の登録出願行為には、請求人に対して本件商標を買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推定される。
したがって、本件商標は、その登録出願時において、我が国又は外国で周知の引用商標と同一又は類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものと認められるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者、需要者の間で、少なくとも「販売促進のための企画及び実行の代理」について、請求人の商標として広く知られていたと推認され、本件商標は、引用商標と同一である。また、本件商標の指定役務は、「販売促進のための企画及び実行の代理」の一環として行われるものであって、請求人の上記役務と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、その登録出願時において、周知の引用商標と同一の商標であって、同一又は類似の役務に使用されるものと認められるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、本件商標の登録出願時において、我が国の需要者の間で、少なくとも「販売促進のための企画及び実行の代理」について、請求人の商標として広く知られていたと認められ、本件商標は、引用商標と同一である。また、引用商標を構成する「唯品会」の文字は、請求人が独自に考案した造語であって、請求人及び唯品会(中国)社の商号に含まれ、かつ、請求人サイトの名称として、その開設以降、一貫して使用されている。さらに、請求人は、請求人サイトにおいて、「販売促進のための企画及び実行の代理」を行っているところ、本件商標の指定役務は、「販売促進のための企画及び実行の代理」の一環として行われるものであって、役務の需要者を共通にする場合がある。
そうすると、本件商標の登録出願時において、被請求人によって、本件商標が使用された場合には、その役務に接する需要者は、取引上要求される一般的な注意をもってしても、その役務が請求人による役務であるとか、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生ずることが当然に予想される。
したがって、本件商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、造語である引用商標と同一である。また、引用商標が中国及び我が国の需要者の間で請求人の商標として認知されている状況において、被請求人が本件商標の登録出願を行っている。そして、被請求人は本件商標以外にも、他人の周知商標を冒認した商標登録出願を行っている。加えて、被請求人には、請求人に対して、本件商標を買い取らせたり、請求人の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制するなどの不正の目的が推認される。
そうすると、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に出願されたものと認められるから、公序良俗に反することは明らかであり、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 請求人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)請求人及び「唯品会」の周知性について
ア 請求人は、2008年(平成20年)8月22日に中華人民共和国(以下「中国」という。)において設立された法人であり(甲3)、唯品会(中国)社と共にオンラインショッピングサイト「唯品会」(英語名:「vip.com」)を運営していることが推認できる(甲4)。
イ 2017年(平成29年)に「JETRO」(日本貿易振興機構(ジェトロ))が作成したと思われる資料において、唯品会(中国)社は、2008年(平成20年)に中国・広東省で設立され、請求人サイトを運営していること、請求人サイトは、中国最大の期間限定で、割引価格などの特典が付いた商品を販売するウェブサイト(ECサイト)であり、各業界の人気ブランドメーカーと提携し、ファッション、化粧品等を手ごろな価格で顧客に提供していること、2016年(平成28年)末には、中国国内に2億人を超える会員を有していること、唯品会(中国)社の2015年(平成27年)の年間売上高は402億元(日本円でおよそ7,501億円)を超えていること、請求人サイトは、中国第3位のECサイトであるが、日本での知名度は高いとはいえないのが現状であること、唯品会(中国)社は、2016年(平成28年)1月に日本法人VIPSHOP日本株式会社(以下「VIPSHOP社」という。)を東京に設立し、VIPSHOP社は、請求人サイト向け商品の仕入れ、同サイトへ参入する日本企業への支援を行っている旨の記載が認められると共に、同資料中に、本件商標と同一の構成文字からなる「唯品会」の文字が表示されている(甲5)。
ウ 請求人は、2015年(平成27年)に、請求人サイトのPRイベント(甲6)、2016年(平成28年)に「12時間サバイバルチャレンジ!(和訳)」と称するイベント(甲7)、「ファッションバイヤーコンテスト(和訳)」と称するイベントを中国で開催したこと(甲8)がうかがわれ、各証拠中に、本件商標と同一の構成文字からなる「唯品会」の文字が表示されている。また、中国におけるバス乗り場の看板やトラックの荷台の広告と思われる写真に、本件商標と同一の構成文字からなる「唯品会」の文字が表示されている(甲9、甲10)。
エ 請求人サイトのテレビCMが、YouTubeにおいて配信され、2013年(平成25年)に998回(甲11)、2015年(平成27年)に219回(甲12)、2016年(平成28年)に1,699回視聴されていること(甲13)が認められる。
オ 請求人サイトに関するウェブサイトにおいて、「中国人+通販+偽物は嫌だ=【唯品会】で買う」の見出しの下、「数多くのブランドとライセンス契約を交わし、また保険会社最大手の太平洋保険公司と提携し、商品がニセモノであった場合全額を補償するサービスを展開しています。」との記載(甲14)や「中国でシェアNo.3のECサイト『唯品会』とは?|ECサイト構築No.1 ecbeing」の見出しの下、「唯品会(Vipshop)は2008年に中国・広東省広州市で設立され、4年後の2012年にはアメリカにて上場、中国市場におけるアクセサリー・アパレルのジャンルで4位を獲得するなど、急成長を遂げている企業です。現在では天猫、京東と共に中国3大サイトに数えられる程の規模となり、中国国内で2億人もの会員を有しており、女性顧客を中心に高いリピート率を誇っています。2016年1月には東京に日本法人VIPSHOP日本株式会社を設立、出店日本企業の支援や商品の調達などメーカーとの協力関係を築き、ECビジネスの更なる加速を狙っています。」、「唯品会は海外のブランドメーカーと提携し、ファッションや香水、化粧品、皮革製品などを販売しています。」との記載がある(甲15)。
カ 我が国のウェブサイト等において、請求人サイトが、「中国フラッシュセール大手EC企業VIPSHOP-唯品会」(甲18)と紹介されており、また、「流通ニュース」のウェブサイトにおいて、2016年(平成28年)に「キリン堂ホールディングスは、・・・インターネット販売で中国第3位の唯品会・・・と資本・業務提携をすると発表した」(甲25)の記載や「impress BUSINESSMEDIA」のウェブサイトにおいて、2016年(平成28年)11月9日の記事として、「アイスタイル、唯品会と戦略的パートナーシップ契約締結、中国越境ECを強化」の記載がある(甲26)。
キ 以上によれば、「唯品会」の文字からなる引用商標は、少なくとも2008年(平成20年)8月頃から、請求人の業務に係る役務「販売促進のための企画及び実行の代理」について使用が開始されたことが推認でき、2015年(平成27年)以降、中国で請求人サイトに関するイベントが開催され、2013年(平成25年)から2016年(平成28年)にかけて、請求人サイトのテレビCMによる広告宣伝が行われ、その状況がYouTubeにおいて配信され、視聴されていること、請求人サイトがインターネット販売で中国第3位に位置付けられていること等を踏まえれば、引用商標は、本件商標の登録出願前において、請求人の業務に係る役務「販売促進のための企画及び実行の代理」を提供するウェブサイト(請求人サイト)の名称として、中国における需要者の間に広く認識されていたものと判断するのが相当であり、当該認識は、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても継続していたものと推認できる。
しかしながら、我が国においては、唯品会(中国)社が2016年(平成28年)にVIPSHOP社を東京に設立し、請求人サイト向け商品の仕入れや、同サイトへ参入する日本企業への支援を行っていること、ウェブサイト等において、請求人サイトが中国におけるインターネット販売企業である旨紹介されているものの、我が国における引用商標の使用開始時期、使用期間等の使用実績、引用商標の宣伝広告の回数や広告費の額等の広告実績に関する証拠を何ら提出しておらず、引用商標が、請求人の業務に係る役務「販売促進のための企画及び実行の代理」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、上記第1のとおり、「唯品会」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「ユイヒンカイ」の称呼を生じるものである。
また、観念については、「唯品会」の文字は、辞書に載録のない語であり、特定の意味を有する語として認識されているものともいい難く、一種の造語としてみるのが相当であることからすれば、特定の観念を生じないものである。
一方、引用商標は、「唯品会」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「ユイヒンカイ」の称呼を生じ、本件商標と同様に、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標を比較すると、両者は、外観においては「唯品会」の構成文字を共通にし、称呼においては「ユイヒンカイ」の称呼を共通にするものである。
また、両者は、ともに特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼を共通にするものであるから、これらを総合的に判断すると、両者は類似する商標というべきである。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、中国における需要者の間に広く認識されていたものであり、本件商標は、引用商標と類似の商標である。
また、被請求人は、請求人と同じ中国広東省所在の中国人(自然人)であり、引用商標は、中国で広く認識されていたものであるから、被請求人は、少なくとも、本件商標の登録出願を行った平成28年12月26日時点において、請求人及び引用商標の存在を認識していたといえる。
さらに、「唯品会」の文字が、特定の意味を有する既成の語ではなく造語であり、かつ、請求人及び唯品会(中国)社の商号に使用されているものであること等を併せて考慮すれば、被請求人が、引用商標と外観及び称呼において類似する本件商標を偶然に採択したとはいい難く、むしろ、本件商標の登録出願当時、引用商標の存在を認識した上で、引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、引用商標と類似する本件商標を登録出願し、設定登録を受けたものと推認せざるを得ない。
そして、被請求人は、被請求人が他人の周知商標を冒認出願している旨の請求人の主張に対して何ら反論していない。
したがって、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、中国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものというべきであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標及び引用商標は、前記第1及び第2のとおり、いずれも「唯品会」の文字からなるものであるから、類似する商標と認められる。
しかしながら、引用商標は、前記1(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そうすると、本件商標に係る指定役務と引用商標に係る役務が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、他人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は、前記1(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであるから、本件商標と引用商標の類似性が高く、また、本件商標に係る指定役務と引用商標に係る役務に共通性があり、需要者を共通にする場合があるとしても、本件商標をその指定役務について使用した場合に、これを請求人又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるとはいえない。
また、その他に、本件商標と引用商標とが取引者、需要者において出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件において、請求人は、引用商標が中国及び我が国の需要者の間で請求人の商標として認知されていることを前提として、本件商標は、不正の目的をもって剽窃的に出願されたものと認められるから、公序良俗に反することは明らかである旨主張する。
しかしながら、引用商標は、前記1(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務「販売促進のための企画及び実行の代理」を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであるから、これを前提とする主張は採用できない。
また、不正の目的をもってなされる出願・登録については、従来、商標法第4条第1項第7号又は同15号に該当するとの解釈・運用を行ってきたが、平成8年の商標法の一部改正において、内外の周知・著名商標と同一又は類似の商標を不正の目的で使用する出願・登録を排除することを立法趣旨とする同第19号の規定が新たに設けられたものである。
そして、本件商標が、外国(中国)における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるか否かの判断については、商標法第4条第1項第7号の該当性を検討するよりは、同第19号の該当性を検討すべきものである。
また、本件商標を、その指定役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、本件商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に該当しないものの、同第19号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

審理終結日 2020-04-23 
結審通知日 2020-04-28 
審決日 2020-05-21 
出願番号 商願2016-147117(T2016-147117) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W35)
T 1 11・ 271- Z (W35)
T 1 11・ 222- Z (W35)
T 1 11・ 25- Z (W35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 山田 正樹
小田 昌子
登録日 2017-07-28 
登録番号 商標登録第5966185号(T5966185) 
商標の称呼 ユイヒンカイ、イヒンカイ、ユイヒン、イヒン 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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