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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W3738
管理番号 1368306 
審判番号 不服2019-11279 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-28 
確定日 2020-10-29 
事件の表示 商願2018- 32833拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「技術でみんなを笑顔に」の文字を標準文字で表してなり、第37類「建設工事,電気通信工事,電気工事,建築工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備,電子応用機械器具の修理又は保守,電子計算機の修理又は保守,電気通信機械器具の修理又は保守」及び第38類「電気通信(「放送」を除く。),コンピュータ端末による通信,コンピュータ端末による通信ネットワークへの接続の提供,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与,放送,電気通信に関する情報の提供」を指定役務として、平成30年3月20日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『技術でみんなを笑顔に』の文字を標準文字で表してなり、当該文字は、『技術でみんなを笑顔にする』程の意味合いを容易に認識させるものというのが相当である。そして、『技術でみんなを笑顔にすること』を企業理念・経営方針として掲げている企業がある事実が認められるから、本願商標は、商品又は役務の宣伝広告・企業理念等を表す際に一般的に使用される語句で記述されているものといえる。そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者は全体として『技術でみんなを笑顔にする』という企業理念・経営方針を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識するにとどまり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和2年5月28日付け証拠調べ通知書によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点
請求人は、上記3の証拠調べ通知に対して、以下のとおり意見を述べた。
(1)証拠調べ通知により指摘した証拠のウェブページに係る企業の主な業務は、本願指定役務とは何の関係もない全く別異の業務であり、これらの証拠をもって、本願商標が本願指定役務を取り扱う業界において企業理念・経営方針として多用されているがゆえに自他役務識別力が希薄であるという証拠にはなり得ない。
(2)「・・・を笑顔に」という構成よりなる複数の商標が、それぞれの指定商品・役務を取扱う業界においては自他商品・役務識別力を有するものとして登録されている。
(3)本願商標は、企業の理念や経営方針等を具体的に示すとまではいい難い構成からなるので、仮に似たような構成の文字が複数の者によって使用されているとしても、それらは漠然とした意味合いで各人が使用しているものであって、本願商標が企業理念や経営方針等のみを表したものと認識させるものとはいい難い。そして、本願商標と同一の構成態様の文字が、本願指定役務との関係において、自他役務識別力が認められないといえる程に取引上普通に使用されている事実はない。してみれば、本願商標は、一定の自他役務識別力を具備する商標であるといえるので、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「技術でみんなを笑顔に」の文字からなるところ、その構成中「技術」の文字は「物事を取り扱ったり処理したりする際の方法や手段。また、それを行うわざ。」の意味を、「みんな」の文字は、「皆(みな)」の撥音添加の語として「そこにいる人すべて。全員。また、あるもの全部。」の意味を、「笑顔」の文字は「にこにこと笑った顔。笑い顔。」の意味を有する語であり(いずれも「デジタル大辞泉」株式会社小学館)、その構成態様は、「技術」の文字と「みんな」の文字を格助詞の「で」で、「みんな」の文字と「笑顔」の文字を格助詞の「を」で結合し、語尾に格助詞の「に」を配した構成からなるものである。
ところで、近年、企業は、その活動に際して、企業理念や経営方針等を策定し、企業の宣伝広告の一環として、ウェブサイトや会社案内などにおいて、会社や経営者からのメッセージとして表明することは一般的に行われているところである
そして、当審において職権で調査したところ、別掲のとおり、様々な分野の業種において「〇〇でみんなを笑顔に」の文字が使用されており、例えば、別掲4の「有限会社リハネット」のウェブサイトには、「経営理念」の項に「愛の力でみんなを笑顔に!」の記載があり、別掲6の「レイラボ株式会社」のウェブサイトには、「レイラボ株式会社のビジョン」の項に「健康で、みんなを笑顔に」の記載がある。これらにおいて、「みんな」の文字は、需要者を含めた世間一般の人達を指し、「笑顔に」の文字は、「笑顔にする」すなわち「幸せにする(喜ばせる)」という趣旨が読み取れ、「みんなを笑顔にする」という文字全体の意味合いは、いずれの企業にとっても一つの理想的な目標となり得る意味合いにつながるといえるものである。
そうすると、当該語句を企業が使用した場合には、これに接する需要者は、容易に「企業理念・経営方針」を表した語句と理解するというのが相当である。
してみれば、本願商標は、「技術」の文字と企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句である「みんなを笑顔に」の文字とを記述的に組み合わせたにすぎないものであって、これに接する取引者、需要者は、役務の出所を識別するための標識ではなく、その構成文字全体として「技術で皆を笑顔にする」程の意味合いを容易に認識させる、企業の特性や優位性を記述的に表した企業理念・経営方針等を表す語句として理解、認識するにとどまるものというべきである。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「本願商標を構成する文字を正確に把握すれば『技術でみんなを笑顔に』という抽象的・漠然とした意味合いが認識されるにとどまるものであり、これは省略表現を用いた一種の造語というべきものである。・・・似たような構成の文字が複数の者によって使用されているとしても、それらは漠然とした意味合いで各人が使用しているものであって、本願商標が企業理念や経営方針等のみを表したものと認識させるものとはいい難い。」旨主張する。
しかしながら、別掲のとおり、様々な分野の業種において「〇〇でみんなを笑顔に」の文字が、その企業の企業理念・経営方針等を表す語句の一部に使用されている実情があることからすれば、本願商標は、「技術」の文字と企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句である「みんなを笑顔に」の文字とを記述的に組み合わせたにすぎないといわざるを得ないものである。
そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、これを一種の造語と認識するというよりは、むしろ、役務の出所を識別するための標識ではなく、その構成文字全体として「技術で皆を笑顔にする」程の意味合いを容易に認識させる、企業の特性や優位性を記述的に表した企業理念・経営方針等を表す語句として理解、認識するにとどまるものというのが相当である。
イ 請求人は、「本願商標と同一の構成態様の文字が、本願指定役務との関係において、自他役務識別力が認められないといえる程に取引上普通に使用されている事実はない」旨主張し、証拠調べ通知に対する意見書において、証拠調べ通知書で開示した事実について「それらのウェブページに係る企業の主な業務は本願指定役務とは何の関係もない全く別異の業務であり、これらの証拠をもって、本願商標が本願指定役務を取り扱う業界において企業理念・経営方針として多用されているがゆえに自他役務識別力が希薄であるという証拠にはなり得ない。」旨主張する。
しかしながら、原審でも説示したとおり、本願商標における商標法第3条第1項第6号該当性を判断する上で問題となるのは、本願商標に接した取引者、需要者が、これを自他役務の識別標識として認識するのか、それとも、これを企業理念・経営方針等を表す語句として理解するのかということであり、本願商標が企業理念・経営方針等を表す語句として現に一般に使用されているか否かのみによって決せられるものではない(東京高裁平成13年(行ケ)第45号、平成13年6月28日判決参照)ことからすれば、本願商標と同一の構成態様の文字が、取引上普通に使用されている事実、あるいは、本願商標が、本願指定役務を取り扱う業界において企業理念・経営方針として使用されている事実は、本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性の判断において、必ずしも必要ではない。
そして、上記(1)のとおり、本願商標と似たようなフレーズが企業理念・経営方針等を表す語句として使用されていることを併せ考えれば、本願商標は、企業の特性や優位性を記述的に表した企業理念・経営方針等を表す語句として理解されるといえるものである。
ウ 請求人は、過去の商標の登録例を挙げて、本願商標もそれらと同様に登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、商標の識別性の有無の判断は、過去の登録例に関わらず、商標の構成文字や構成態様等に則して、事案に応じて判断すべきであるから、請求人が主張する過去の登録例によって、本願商標の上記判断が左右されるものではない。
エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲 証拠調べ通知書において開示した事実
企業理念・経営方針等を表す語句として、「〇〇でみんなを笑顔に」の文字が使用されている例。
1 「株式会社NO’s」のウェブサイトにおいて、「食でみんなを笑顔に」の記載がある。
(https://no-s.co.jp/)
2 「株式会社タイナイ」のウェブサイトにおいて、「にいがたのお米でみんなを笑顔に」の記載がある。
(http://61.112.4.176/)
3 「Japan potato有限会社」のウェブサイトにおいて、「さつまいもでみんなを笑顔に。」の記載がある。
(https://japapo.co.jp/our-message/)
4 「有限会社リハネット」のウェブサイトにおいて、「愛の力でみんなを笑顔に!」の記載がある。
(http://www.rehanet.co.jp/company/message/)
5 「株式会社ハンザワ」のウェブサイトにおいて、「『おいしい』でみんなを笑顔に」の記載がある。
(https://www.1cho-me.jp/dada/hanzawa/index.html)
6 「レイラボ株式会社」のウェブサイトにおいて、「健康で、みんなを笑顔に」の記載がある。
(http://www.raylabo.jp/intro/intro.html)
7 「株式会社Smilebits」のウェブサイトにおいて、「ITのしくみで、みんなを笑顔に!」の記載がある。
(https://www.smile-bits.com/)
8 「ADSceramic株式会社」のウェブサイトにおいて、「世界にひとつだけの/喜びをこめた補綴物で/みんなを笑顔に。」の記載がある。
(https://adsceramic.com/)


審理終結日 2020-08-19 
結審通知日 2020-08-25 
審決日 2020-09-09 
出願番号 商願2018-32833(T2018-32833) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W3738)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 滝口 裕子 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 木住野 勝也
小田 昌子
商標の称呼 ギジュツデミンナオエガオニ、ギジュツデミンナオ、ミンナオエガオニ 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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