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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y3842
管理番号 1368301 
審判番号 取消2017-300818 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-10-31 
確定日 2020-10-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4957910号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4957910号商標の指定役務中、第38類「電子計算機端末による通信,移動体電話による通信,電子データの伝送交換,コンピュータ通信ネットワークへの接続の提供,その他の電気通信(放送を除く。),電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」及び第42類「コンピュータによる情報処理,コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,通信ネットワークシステムの設計・作成又は保守並びにこれらに関する助言,コンピュータネットワークシステムの環境設定,コンピュータの貸与,コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,通信回線を介した電子商取引の利用者の認証,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,通信技術に関する研究及び開発,機械器具に関する試験又は研究,デザインの考案」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4957910号商標(以下「本件商標」という。)は、「CREPATH」の文字を標準文字で表してなり、平成17年12月5日に登録出願、第38類「電子計算機端末による通信,移動体電話による通信,電子データの伝送交換,コンピュータ通信ネットワークへの接続の提供,その他の電気通信(放送を除く。),電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」及び第42類「コンピュータによる情報処理,コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,通信ネットワークシステムの設計・作成又は保守並びにこれらに関する助言,コンピュータネットワークシステムの環境設定,コンピュータの貸与,コンピュータプログラムの提供,コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,通信回線を介した電子商取引の利用者の認証,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,通信技術に関する研究及び開発,機械器具に関する試験又は研究,デザインの考案」を指定役務として、同18年6月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成29年11月14日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成26年11月14日から同29年11月13日までを以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書、上申書及び意見書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第38類「電子計算機端末による通信,移動体電話による通信,電子データの伝送交換,コンピュータ通信ネットワークへの接続の提供,その他の電気通信(放送を除く。),電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」及び第42類「コンピュータによる情報処理,コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,通信ネットワークシステムの設計・作成又は保守並びにこれらに関する助言,コンピュータネットワークシステムの環境設定,コンピュータの貸与,コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,通信回線を介した電子商取引の利用者の認証,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,通信技術に関する研究及び開発,機械器具に関する試験又は研究,デザインの考案」(以下「取消請求役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)はじめに
被請求人は、「コンピュータプログラムの保守,コンピュータネットワークシステムの環境設定,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」(以下、これらを「使用主張役務」ということがある。)について本件商標が使用されている旨主張している(乙1?乙4)が、本件商標を使用する商品/役務として示されたのは「コンピュータソフトウェア」(以下「ソフトウェア」という。)であって、取消請求役務のいずれでもなく、取消請求役務についての使用が証明されていない。
(2)被請求人の示す証拠について
ア 乙第2号証について
乙第2号証の第1頁には、「CREPATHは、・・・を行う通信パッケージソフトウェアです。」と記載されている(甲2)。すなわち、「CREPATH」は「ソフトウェア」に付けられた名称(商標)であることが明示されている(以下「CREPATH」の名称の通信パッケージソフトウェアを「本件ソフトウェア」という。)。そして、これに続く説明も、ソフトウェアの特長や利用形態としてどのようなものがあるか等が記載され、「CREPATH」がソフトウェアの商標として示された以外には記載がない。
イ 乙第1号証について
乙第1号証には、「CREPATH」はソフトウェアの名称(商標)として示されている。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は、TIS株式会社(以下「TIS社」という。)と甲(乙3において黒塗りとなっている者)との間におけるソフトウェア・プロダクト保守契約書であり、その保守契約の対象となるソフトウェアの名称として「CREPATH」が示されている(甲3)。
しかし、乙第3号証は、本件ソフトウェアの保守業務をTIS社が行うことが示されたものであって、「CREPATH」はあくまでもその保守対象のソフトウェアとして記載されているにすぎない。すなわち、商標「CREPATH」は役務「コンピュータプログラムの保守」に用いられてはいない。
エ 乙第4号証について
乙第4号証における「はじめに」の頁(第2頁)には、「この度は弊社パッケージ『CREPATH』のご提案機会を・・・」と記載されている。
さらに、「CREPATHのご紹介」の章における「CREPATHとは」の頁(第5頁)には、「CREPATHは、・・・を行う通信パッケージソフトウェアです。」、「CREPATHは通信制御パッケージであり、・・・」と記載されている。
また同章の「CREPATHの位置付け」の頁(第6頁)には、「CREPATHは・・・にてご利用いただけるパッケージシステムです。」と記載されている。
これらの記載から、本件商標が「ソフトウェア」について使用されていることは分かるものの、乙第4号証のいずれの箇所においても、取消請求役務には使用されていない。
(3)被請求人の主張への反論
ア 商標「CREPATH」は、あくまでも「ソフトウェア」について使用されているのみであり、使用主張役務には使用されていない。
イ 使用権者が「コンピュータプログラムの保守」の役務を行っていることは分かる(乙3)ものの、「CREPATH」はその保守対象のソフトウェアの名称にすぎない。あるソフトウェアについてその保守という役務を行っても、そのソフトウェアの名称が当該保守自体の商標になる訳ではない。
また、乙第4号証は、使用権者の販売する本件ソフトウェアについて需要者に紹介等している資料であるところ、この紹介等は当該ソフトウェアに付属するものであり、独立した商取引の目的となっていない。
ウ 被請求人は、ソフトウェア自体とソフトウェアの保守を混同し、その上で使用していると主張しており、失当である。
3 口頭審理陳述要領書(平成30年8月20日付け)
(1)乙第5号証について
乙第5号証の1及び乙第5号証の2のいずれにおいても、そこに記載された商標「CREPATH」は、ソフトウェアの名称として使用されているのみであり、使用主張役務には使用されていない。そもそも乙第5号証は、いずれも社内文書であると解され、需要者が目にする書面ではないので、商標使用の証拠になり得ない。
(2)商標法第2条第3項第3号及び同第6号の使用行為に該当するかについて
ア 被請求人は、商標法第2条第3項第3号及び同第6号の解釈を誤っており、乙各号証で示した行為は同第3号及び第6号に該当する行為になり得ない。同第3号ないし同第6号は、無形の財である役務には直接標章を付せないので、その代わりとして有形物(有体物)に標章を付す場合を想定したものであり、無体物は該当しない(甲5、甲6)。
一方、被請求人は、無体物であるソフトウェアに本件商標が使用されていることをもって、同第3号や同第6号の行為であると述べており、当該主張は失当である。
イ 乙第1号証ないし乙第5号証によると、いずれも本件商標が商品「ソフトウェア」の名称としてしか用いられていない。よって、本件商標は商品「ソフトウェア」の商標としての識別力が発揮されるのみであり、使用主張役務の識別標識としては表示されていないから、実質的にも同第3号及び同第6号に該当しない。
(3)被請求人の主張への反論
被請求人は、その口頭審理陳述要領書において、被請求人やTIS社が行っている業務(ネットワーク接続、通信制御等)において使用されるソフトウェアであること、その業務(システム環境構築、保守等)を行う対象となるソフトウェアであることをもって、そのソフトウェアの名称「CREPATH」が使用主張役務についての使用となる旨述べているが、被請求人やTIS社が行っている業務の説明は、商標法第2条第1項第2号の「業として役務を提供し、又は証明する者が」の要件を満たすことを説明したにすぎず、同号の「その役務について使用するもの(前号に掲げるものを除く。)」の要件について満たしたことにはならない。
被請求人は、本件商標の使用としての行為と、被請求人やTIS社が実施している役務(行っている業務)とを混同しており、商品「ソフトウェア」に関連する業務を行っていても、その商品の名称がその業務である役務に使用されている標章とはならない。
被請求人は、被請求人やTIS社が行っている業務(実施している役務)にすぎない行為を、本件商標の使用としての行為と主張しており、失当である。
以上のとおり、需要者には本件商標が使用主張役務に使用されているとは認識され得ず、使用主張役務に対し本件商標は使用されてはいない。
(4)TIS社が本件商標の使用権を有するかの事実確認について
ア 第一に、乙第6号証には本件商標権を特定するための商標登録番号の記載がどこにもない。
第二に、乙第6号証で示された契約は、商品「ソフトウェア」についてのものであり、役務に関するものではなく、本件商標権は商品ではなく役務についてのものであるから、同号証は本件商標の使用主張役務についての使用とは関係ない。
第三に、乙第6号証で示された契約は、プログラムの著作物についての使用許諾であると解され、プログラムの著作物について、著作物の使用を許諾する旨の契約書であり、プログラムを特定するためのプログラムの名称として「CREPATH」を用いたものであって、商標権に係る商標の使用許諾ではない。
したがって、「TIS社が本件商標の使用権を有するか」について立証されていない。
イ 被請求人は、稟議書における別紙3(乙6の1)において、「第8条(知的財産権等)/甲は、ソフトウェア及びその複製物の所有権、著作権、商標権その他一切の知的財産権(以下、『知的財産権等』という。)がすべて乙または丙に帰属することを確認する。」と記載されていることをもって、TIS社が本件商標の使用権を有すると主張するが、当該契約は、商品「ソフトウェア」についてのものである(甲9)から、仮にこの契約書での商標権がTIS社(乙)に帰属していたとしても、その商標権は指定商品を「コンピュータソフトウェア」としたものであり、本件商標権(本件は指定役務のみの権利)ではない。
ウ 被請求人は、被請求人とTIS社が契約関係や提携関係にある旨を述べているが、著作物に関する契約関係にあることや業務提携関係にあることと、本件商標権について使用権を許諾(又は設定)していることとは別である。
また、被請求人は、「被請求人が許諾していることもうかがい知れます。」と述べているが、「うかがい知れる」のような曖昧なことでは、TIS社が使用権を有していたことを証明することにはならない。
エ 上述のとおり、TIS社が本件商標の使用権を有していたことは、証明されていない。
4 上申書(平成30年10月9日付け)
(1)乙第7号証(審決例)について
乙第7号証の審決例において、役務「保守」について商標の使用と認められた理由は、ア)当該プログラム(ソフトウェア)が汎用のものではなく当該病院独自のものとして作成されたソフトウェアであること、イ)保守が当該プログラム(ソフトウェア)の設計・作成の役務に継続する保守であることにあると解される。商標の使用と認められた理由は、単にソフトウェアの名称として当該商標が用いられているからではない。
(2)本件ソフトウェアについて
本件ソフトウェアは、新規に作成されたものではなく、既に作成されたものであって、これを不特定の需要者に提供するというものであり、またCARDNETセンター接続以外の目的での使用もあり得る汎用のソフトウェアである。
(3)被請求人提出の使用証拠について
ア 乙第8号証について
乙第8号証の2(電子メール)における本件商標の記載箇所は2か所であり、それは1葉目最下行の「CREPATHをCARDNET接続でご利用いただく際には」、及び2葉目第7行の「CREPATHはデフォルトでは出力先コレクタが$0である仕様です。」であり(甲13の2(乙8の2))、これらの表現はいずれも、「CREPATH」を商品「コンピュータソフトウェア」の名称と認識した表現である。
そして、乙第8号証の1(注文書)には、本件商標の記載箇所が2か所あり、それは「件名」の欄での「CREPATH(CARDNET接続用)カスタマイズ費用」と、御見積内訳の「品名」の欄での「CREPATH(CARDNET接続用)カスタマイズ費用」である。
乙第8号証の1は、上記メールやり取り後の注文書であり、「CREPATH」を商品「コンピュータソフトウェア」の名称として認識したものである。このように、本件商標は、商品「ソフトウェア」について使用されてはいるが、カスタマイズの役務については使用されておらず、役務の商標であるとは認識し得ない。
イ 乙第9号証について
乙第9号証は、コンピュータプログラム起動の際に出力されるシステムログ画面の写しであるが、タイトルバーにおいて、「CREPATH起動メッセージ.log-メモ帳」とあり、「CREPATH」をソフトウェアの名称として使用している。
ウ 乙第10号証について
乙第10号証の1ないし乙第10号証の6は、TIS社と顧客とのメールやり取りとのことであるが、これらのメールにおいて「CREPATH」(「クレパス」)と記載された箇所は、いずれも「CREPATH」をソフトウェアと認識した記載となっており、TIS社及び顧客はメールやり取りにおいて、互いに「CREPATH」を使用主張役務の対象のソフトウェアであると認識している。
よって、これらのメールのやり取りからは、「保守」、「環境設定」、「環境設定に関する助言」といった役務の識別標識として本件商標が用いられているとは考えられない。
エ 乙第11号証について
乙第11号証には、二段書きで「CREPATH/保守契約書」との記載があり、この部分だけでは、「CREPATH」が役務「保守」の商標として用いられているのか、あるいは保守対象の「ソフトウェア」の名称として用いられているのか判然としない。
しかし、その第2頁における契約書前文において「株式会社ジェーシービー・・・とTIS株式会社・・・は当事者間において平成20年4月28日付で締結した『CREPATH使用権許諾契約書』(以下『原契約』という)に基づき、原契約に規定されたソフトウェアに対する保守に関して」とあることから、「CREPATH」は保守対象の「ソフトウェア」である。
また上記「原契約」は、第6号証の1の別紙3(「CREPATH使用許諾契約書」の案文)で契約締結されたものを指すと推察されるが、この原契約の案文には、第1条に「本契約において『ソフトウェア』とは、『CREPATH』と称するプログラム・・・」と記載され、当該契約書の別表1に「『CREPATH』は・・・を目的とする配信ソフトウェアである。」と記載されている(甲9の2)。
したがって、乙第11号証においても、本件商標は保守対象のソフトウェアの名称として用いられているにすぎず、使用主張役務についての商標とは認識できない。
(4)使用主張役務において本件商標の使用に該当するか否かについて
ア 商標の使用について
(ア)商標法第2条第3項第3号及び同第6号は、「物」(ソフトウェア)の名称として用いていれば良い訳ではなく、「物」(ソフトウェア)を借りて役務の標章を表示する場合をいうのである。本件商標は、商品「ソフトウェア」を示すものでしかなく、使用主張役務の標章としては表示されていない。
(イ)本件商標の使用行為としての商標法第2条第3項第7号「・・・その映像面に標章を表示して・・・」とは、役務の商標として標章を表示することであるが、乙第10号証の1ないし乙第10号証の6は、保守や助言等の役務の中身としての対象ソフトウェアの名称として示されているだけであり、同号には該当しない。
イ 被請求人主張の指定役務について
(ア)「コンピュータプログラムの設計・作成」について
本件ソフトウェアは、既に存在するものであり、これを需要者のシステム等に合わせて調整し、改修等の修正をする作業は「プログラムの設計・作成」には該当しない。なお、本件ソフトウェアは、設計・作成の成果物ではない。
(イ)「コンピュータプログラムの保守」について
被請求人の使用態様は、既に存在するソフトウェアについての保守なので、当該プログラムの「設計・作成」とは継続しない「保守」、換言すると、当該プログラムの「設計・作成」とは切り離された「保守」である。
乙第7号証の事例は、設計・作成に継続する保守であり、その「RaaS商標」は商品名商標というよりは、設計・作成の成果物としてのソフトウェアに付けられた名前であるから、それが役務「保守」の商標の使用として認められた。
一方、本件では、設計作成の成果物ではなく、既に存在するソフトウェアに付けられた名前であり、しかも「保守」は当該プログラムの「設計・作成」とは切り離された役務である。
このように、本件は乙第7号証の事例とは状況が全く異なり、当該事例で商標の使用と認められたからといって、本件とは事例が異なる。
(ウ)「コンピュータネットワークシステムの環境設定」について
被請求人の使用態様は、商品「ソフトウェア」の販売に伴って行われる環境設定であるから、当該「環境設定」は独立した商取引の目的たり得ない。
加えて、本件商標は、環境設定を行う対象のソフトウェアの名称として用いられているにすぎないから、「環境設定」についての本件商標の使用にはならない。
(エ)「ネットワークシステムの環境設定に関する助言」について
TIS社は、商品「ソフトウェア」の販売に付随して「助言」を行っているだけなので、当該「助言」は、独立した商取引の目的たり得ない。また、助言する中身として、その対象ソフトウェアの名称に本件商標が用いられているにすぎないから、役務「助言」についての本件商標の使用にはならない。
(オ)「電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」について
被請求人の示した「紹介及び説明」は商品「ソフトウェア」の販売に当たっての説明等であり、独立した商取引の目的となっていない。また、本件商標は「紹介及び説明」の対象となるソフトウェアの名称として用いられているにすぎないから、役務「紹介及び説明」についての本件商標の使用にはならない。
(カ)被請求人は、「ソフトウェアは売りっ放しではなく設定・保守をも含めた継続的サービスを提供する必要がある」旨主張しているが、その保守サービスを提供すること自体と、その保守サービスの対象のソフトウェアとは別である。
乙第3号証や乙第4号証をみると、役務「コンピュータプログラムの保守」については、「図形」及び「TIS/TIS INTEC Group」文字が使用商標と解する。
(5)TIS社の使用権の証明について
ア 乙第12号証について
乙第12号証は、被請求人とTIS社が業務提携関係にあることを示す契約書であるが、業務提携関係にあっても商標権について使用許諾をしているとは限らず、使用権の証明にはなっていない。
イ 乙第6号証について
乙第6号証で示された契約は、プログラムの著作物についての使用許諾及びその承継であると解され、役務に関する商標権の使用許諾がなされていた旨の証明はされていない。その他の被請求人提出証拠においても、役務に関する商標権の使用許諾がなされていた旨の証明はされていない。
ウ 被請求人は、通常使用権の許諾は黙示の契約によって可能である旨述べ、答弁書等での言及だけで済ませているが、そのようなことでは証明したことにはならない。
(6)結び
以上のとおり、本件商標は使用主張役務について使用されておらず、また取消請求役務のいずれにも使用されていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書及び意見書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標は、商標権者又は使用権者により、要証期間において、取消請求役務について使用されている。
(2)被請求人(商標権者)は、カード決済ネットワークシステム「CARDNET」を運営しており、カード決済取引における与信照会情報、売上等のデータ伝送を、カード取扱加盟店及びカード会社又は金融機関間にてオンラインで行うための「センター間接続サービス」を提供し、そのセンターシステムを「CARDNETオンラインセンター」又は「CARDNETセンター」と称している(乙1、乙2)。
本件商標は、上記「CARDNETセンター」接続用のパッケージソフトウェア(コンピュータプログラム、関連ファイル・資料・マニュアル含む。)に使用されており、被請求人と業務提携関係にあり本件商標の使用許諾を得ているTIS社が、本件商標を使用して、前記ソフトウェアの提供及び保守、同ソフトウェアの機能・環境設定・操作等に関する紹介・説明を行っている(乙1?乙4)。
乙第3号証は、TIS社と需要者間の「ソフトウェア・プロダクト保守契約書」である(2017年3月15日付け及び同年8月22日付け)。
乙第4号証は、TIS社による需要者への「CREPATHご提案資料」(2017年3月22日付け)である。TIS社は「CREPATH」の特徴・機能・動作環境等の紹介・説明の他、需要者の必要に応じて環境構築・動作確認テスト、機能の追加等のサービスも提供している。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標権者又は使用権者により、要証期間において、取消請求役務中、「コンピュータプログラムの保守、コンピュータネットワークシステムの環境設定、電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」について使用されているものである(使用主張役務)。
2 口頭審理陳述要領書(平成30年7月30日付け)
(1)乙第1号証及び乙第2号証は、本件商標が被請求人の提供するカード決済ネットワークへの接続専用のパッケージソフトに関して使用されていることを示す資料であるとともに、被請求人とTIS社が被請求人のネットワークシステム運営において業務提携関係にあることを示す資料である。
(2)乙第1号証は、「センター間接続パッケージ」の標題の下、「・・・弊社センターと直接接続するパッケージソフトをご導入頂きます。・・・多様な加盟店様のシステム環境に対し、柔軟に対応できますので、ぜひご相談下さい。」とあり、下の表に対応メーカー「TIS(株)」、名称「CREPATH」とあることから、「CREPATH」は、被請求人の運営するネットワーク接続専用パッケージソフトに関して使用される商標であり、また、そのソフトウェアは、多様な加盟店のシステム環境に柔軟に対応することを意図されているものであって、市販されている出来合いのソフトウェアでないことは明らかである。また、TIS社が商標「CREPATH」を使用することについて、被請求人が許諾していることもうかがい知れる。
(3)乙第2号証の第1頁の「特長」の記載には「日本カードネットワーク制定のCARDNET接続条件書<ダイレクト接続篇>に準拠した通信パッケージです。売り上げ・オーソリのデータ中継、取引精査のほか、CARDNETセンターとの状態管理を行います。」等あり、ここでも、被請求人の運営するネットワーク接続・通信制御・データ交換等のために使用されるものである。
(4)乙第4号証に記載のとおり「CREPATH」のプログラム群は、一定の動作環境で、伝送制御・オンラインステータス管理・センター間電文中継・セキュリティ機能・取引管理等々の種々の機能を発揮し、24時間・365日連続稼働するものであり、その導入と運用については、比較的高度な専門的知識が必要である。したがって、その導入時には、TIS社が顧客に対し、システムに適合するよう構築・テスト・チューニングを行い、実際に被請求人のネットワークに接続することができるかのテスト等のサービスを行っている。乙第4号証の第23頁、第25頁にも「環境構築・受入テストのご支援等が必要な場合は、内容・期間をお伺いした後に別途ご提案させて頂きます。」とあるとおり、システムの環境構築・動作確認テストなどのサービスは行っている。
また、顧客の要望や利用環境に応じて、プログラムの改変・機能拡張・改修等を行い、動作確認テストの上、納品するなどしており、顧客単位でのソフトウェアの設計・作成、システムの構築、環境設定等のサービスも行っている。
(5)さらに、その導入後も年単位での保守サービスを行っており(乙3)、契約期間も期間満了一定期間前までに書面による特段の意思表示のない限り延長されるものになっている。
役務とは、他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう」と定義されているが、「保守契約書」には、保守料の項目があり、保守サービスが商取引の対価の対象となっている。
請求人は、乙第3号証における「CREPATH」は、保守対象のソフトウェアとしての記載にすぎず、「コンピュータプログラムの保守」について使用されていない旨主張するが、顧客の利用に供する物がコンピュータプログラムであって、そのプログラムについて標章を付して保守サービスを特定・識別しているので、かかる使用は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸渡すものを含む。以下、同じ。)に標章を付する行為(商標法第2条第3項第3号)と解せる。
(6)「CREPATH」は、被請求人の運営するネットワークへの接続手段として使用されており、接続サービスを享受するためのプログラムの改修・機能拡張、環境構築、ネットワークへの接続、保守などの役務の提供と共に商標「CREPATH」が使用されている。
したがって、「CPREPATH」は、そのプログラム群に対するもののみならず、導入に際しての環境構築・受け入れテスト、顧客の利用環境又は要請に応じたソフトウェアの設計・作成・保守についても使用されている。
3 上申書(平成30年8月8日付け)
(1)乙第5号証の「PJ計画書」(TIS社作成)は、システム環境の構築、システムの性能改善など1つのプロジェクト単位で作成する計画書であり、顧客要望を満たすための要件に対する作業工程、作業工程ごとの担当者及び責任者、スケジュール、進捗管理などプロジェクト完結までの道筋が記載されている。
乙第5号証の1は、「CREPATH」の新規導入予定の特定の顧客の依頼により、プログラムの改修(設計、プログラミング、テスト)をして納品、本番リリースするまでのプロジェクト計画書である。決済ネットワークに使用するというプログラム又はプログラミングの性質上、顧客名はマスキングしている。
乙第5号証の2は、既存の顧客に新たな処理要件が発生したために組まれた機能拡張のプロジェクトである。顧客名は、上記と同様、マスキングしている。
このように、TIS社は、顧客の要望や利用環境に応じて、プログラムの改変・機能拡張・改修等を行い、動作確認テストの上、納品しており、顧客からの注文に応じた「CREPATH」プログラムの設計・作成といった役務を提供している。
「CREPATH」は、被請求人の運営するネットワーク「CARDNET」接続のための機能を発揮するためのプログラム群を有しているが、顧客の利用環境・要件に応じてプログラミングされるソフトウェアでもあり、注文によるコンピュータプログラムの設計・作成という役務も提供している。
また、導入前後においてネットワークシステムの環境設定又はこれに関する助言等も行っている。
したがって、本件商標の使用は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為(商標法第2条第3項第6号)といえる。
(2)「CREPATH」のプログラムは、被請求人の運営するネットワークへの接続手段として提供・使用されているといえ、接続サービスを享受するためのプログラムの改修・機能拡張、システム環境構築、ネットワークへの接続補助、保守などの役務の提供も商取引の対象といえる。
したがって、商標「CREPATH」は、そのプログラム群に対するもののみならず、コンピュータプログラムの設計・作成・保守、ネットワークシステムの環境設定又はこれに関する助言などの役務についても使用されている。
(3)乙第6号証は、被請求人が所有するソフトウェア・プロダクト「CREPATH」に関して、TIS社に使用許諾及び販売(再使用許諾、ライセンス付与)を許諾していることを示すものである。当初、他社とTIS社(旧(株)東洋情報システム)との間で締結されたソフトウェア・プロダクト「J-Connect/T」に関する契約の地位を、他社から被請求人が承継し、「ソフトウェア・プロダクト」の名称は、「J-Connect/T」から「CREPATH」へ変更となった。
したがって、「CREPATH」の販売(再使用許諾)及び、必要なプログラムの改造について、被請求人はTIS社に許諾している。
被請求人とTIS社とは、「CREPATH」プログラムの販売(再使用許諾)・同プログラムの改造について契約関係にあり、被請求人のCARDNET接続サービスに関して提携関係にあることは明らかである(乙1、乙2)。被請求人は、TIS社によるコンピュータソフトウェア又はシステムの機能・操作等の説明又は紹介、ソフトウェア導入者の要望によるコンピュータプログラム又はソフトウェアの作成・設計・保守、コンピュータネットワークシステムの環境設定又はこれに関する助言について「CREPATH」の使用を許諾しており、TIS社はこれらの役務について本件商標を使用する権利を有している。
4 上申書(2)(平成30年9月10日付け)
(1)請求人は、商標法第2条第3項第3号及び同第6号の「その提供を受ける者の利用に供する物」、「役務の提供に係る物」は、有体物でなければならないから、本件商標は、商標法第2条第3項各号に規定する役務についての商標の使用に該当しない旨を主張しているが、コンピュータプログラム等の無体物は、従前より媒体(物)に記録されて販売又は利用されており、電子マネー、クレジットカード等も役務の提供の用に供する電子情報が記録された物であり、専用回線のサービスを受けるための設定プログラムが記録された物なども役務の提供に当たりその役務の提供を受ける者の利用に供する物といえるから、商標法第2条第3項第3号及び同第6号の「物」にコンピュータプログラムが記録された物が含まれないということにはならない。
また、役務は無形の財であるから有体物に標章を付した行為を役務についての商標の使用と擬制したことは理解しているが、工業所有権法逐条解説には、商標法第2条第3項第3号ないし同第6号の「物」には無体物は含まれないとの記載も、コンピュータプログラムに標章を付する行為は行えないとの記載もない。
平成14年特許法一部改正においては、商標法において、ダウンロード可能なコンピュータプログラム等の電子情報材が商品として分類され、電子情報財に標章を付するとは「商標の電磁的な情報が当該プログラム起動時や作業時のインター・フェースに顧客が商標として視認できるよう、商標の電磁的な情報を組み込む行為をいう」(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説(第20版))とされており、コンピュータプログラムへ標章を付する行為は、これと同様に解釈できると考えられる。
参考となる審決例(乙7)においては「コンピュータで特定のシステムを起動させる際に、画面上に表示される商標は、当該システムのソフトウェアに付与された商標ということができるものである」とし、「電子計算機プログラムの保守において、電子計算機プログラムを起動し、そのログイン画面に商標を表示させることによって、商標の使用をしているものということができるから、商標法第2条第3項第3号の『役務の提供に当たり・・・利用に供する物に標章を付する行為』と認められるものである。」と判断されている。
(2)乙第5号証の1及び乙第5号証の2は、コンピュータプログラムの改修・機能拡張、つまり、プログラムの設計・作成・納品までの計画書であり、「CREPATH」がカスタマイズされるソフトウェアであって、TIS社がコンピュータプログラムの設計・作成を行っていることを証するものであるが、請求人から需要者が目にする態様にて使用されていないとの主張があったので、乙第5号証の1に示すプログラム改修に関する注文書(乙8の1)及び事前にやりとりされたTIS社と顧客との電子メールを提出する(乙8の2)。注文書には「件名:CREPATH(CARDNET接続用)カスタマイズ費用」と記載されている。まさしく需要者が役務の提供(コンピュータプログラムのカスタマイズ)を依頼する際に、需要者が目にする状態にて「CREPATH」は使用されている。
また、コンピュータプログラムを起動した際に出力されるシステムログにも「CREPATH」が表示されるので、システムログ画面の写しを提出する(乙9)。要証期間内の日付も表示されている。
したがって、当該行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為(商標法第2条第3項第3号)、若しくは、役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為(同第6号)といえる。
(3)次に、TIS社が「CREPATH」をコンピュータ画面に表示して「コンピュータプログラムの保守、あるいは、ネットワークシステムの環境設定又はこれに関する助言」を提供していることを示すものとして、顧客とTIS社間の電子メールを提出する(乙10)。電子メールには「CREPATH」の文字が表示されている。
かかる使用は、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為(商標法第2条第3項第7号)に該当する。
(4)TIS社と顧客との間で交わされた「CREPATH 保守契約書」を提出する(乙11)。TIS社が保守サービスについて「CREPATH」の表示を使用している。なお、契約は延長され現在も有効である(第5条 保守期間)。
(5)以上のとおり、「CREPTATH」の使用は、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為(商標法第2条第3項第3号)」若しくは「役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為(同第6号)」あるいは「電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為(同第7号)」に該当し、「コンピュータプログラムの設計・作成・保守、ネットワークシステムの環境設定又はこれに関する助言」などの役務について、商標「CREPATH」が使用されている。
(6)TIS社が商標「CREPATH」の使用権者であることについては、被請求人とTIS社は「CREPATH」プログラムの販売(再使用許諾)・同プログラムの改造について契約関係にあって(乙6)、被請求人のCARDNET接続サービスのためのコンピュータプログラムの提供に関して、被請求人とTIS社が業務提携関係にあることは明らかであり(乙1、乙2、乙4)、被請求人はTIS社による上記(2)ないし(5)記載の役務提供について承知しており許諾している。
さらに、被請求人とTIS社の「CREPATH」に関する業務提携関係を証するものとして「業務委託個別契約書」及び「見積書」(乙12)を提出する。TIS社は、被請求人の委託により「CREPATH」の開発を行い、顧客へのプログラムの提供、改修、保守等の業務を行っており、被請求人は、TIS社が「コンピュータプログラム又はソフトウェアの作成・設計・保守、コンピュータネットワークシステムの環境設定又はこれに関する助言」等の役務についても「CREPATH」を使用することを許諾している。
また、通常使用権の許諾は明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能である。
よって、TIS社は、被請求人から、これら役務について「CREPATH」商標の使用を許諾されている通常使用権者である。
5 上申書(3)(平成30年9月25日付け)
被請求人の運営するカード決済ネットワーク「CARDNET」センターは、国の重要インフラとして経済産業省よりクレジットCEPTOAR等への参画を要請され一昨年前より参画しており、クレジットカード決済の障害・事故時等の報告義務、24時間365日安定したサービスを提供するセンター運営をメイン事業としている。
したがって、本件サービスの提供を受けた顧客は、当該センターの利用者になり、一貫して継続的・安定的なサービス提供を受ける必要があり、コンピュータソフトウェアは売りっ放し(売り切り)ではなく、当然ながら設定・保守をも含めた継続的サービスを提供する必要がある。よって、本件サービスは顧客の多様なシステム環境から当該センターへのデータ通信を行うため、顧客のシステム次第ではソフトウェアの改修が導入時又は顧客のシステム改修時に発生する場合がある。本件サービスは安定的な利用を実現する、又は顧客の要求に柔軟に応えるための体制を前提とするサービスとして提供している。
6 意見書(令和元年6月10日付け)
(1)審決例(乙7)との比較における請求人の主張について
ア 請求人は、本件の取消請求役務「コンピュータプログラムの保守」に係る「コンピュータソフトウェア」は、「新規に設計・作成されたものではなく、既に作成されたものであって、またCARDNETセンター接続以外の目的での使用もある汎用のソフトウェアプログラムです。」と解釈し、審決例には当てはまらない旨主張しているが、コンピュータプログラムの設計・作成(プログラミング)は、既存のプログラムやモジュールを使用せず、全くの新規にコンピュータソフトウェアを設計・作成する場合にのみ行われるのではなく、コンピュータソフトウェアの変更・追加・改修・改作においても、プログラムの設計・作成は行われ、コンピュータソフトウェアの改修や機能拡張も「コンピュータプログラムの設計・作成」に当たり、「ソフトウェアの開発(保守開発又は追加開発)」に当たる(乙5の1、乙5の2、乙12)。
したがって、特定顧客用にカスタマイズされたコンピュータソフトウェアも特定の客の注文によりコンピュータプログラムの設計・作成がされた成果物である。
イ 請求人は、本件ソフトウェアが汎用ソフトウェアである旨主張しているが、本件ソフトウェアは被請求人が運営する「CARDNET」センターの接続用ソフトウェアであって、それ以外の目的で使用されることは、被請求人が事前に認めた場合に限り、例外である。つまり、本件ソフトウェアは、被請求人の「CARDNET」センター接続その他被請求人所定の通信処理を目的とするソフトウェアであり、ソフトウェア提供者のTIS社が、使用許諾契約期間中、その使用環境を把握しており、ソフトウェア提供者側が把握できない汎用使用は意図されていない。
ウ 「CREPATH使用許諾契約書」(乙6の1)第10条第1項では、顧客であるソフトウェア使用者(甲)によるソフトウェアの一切の改変を禁止し、第2項で「自己使用その他の理由によりソフトウェアの変更又は改作(以下「変更」等という。)する必要が生じた場合には、甲は乙(TIS社)に対し、ソフトウェアの変更等の委託を申し入れることができる」ことが規定され、顧客は、自己使用その他の理由により本件ソフトウェアの改変が必要になった場合、自ら改変することは禁じられているけれども、ソフトウェア提供者(TIS社)にソフトウェアの変更等を委託(注文)できる。
ソフトウェアの改修にも、要件定義から設計・作成(プログラミング)・テスト等の一連の労務の提供を伴うから、改修された本件ソフトウェアは、特定の顧客の要望(注文)に応じて設計・作成された成果物である。本件ソフトウェア導入前の顧客の要請によるソフトウェアのカスタマイズのプロジェクト計画書(乙5の1)により、同様に、設計・プログラミング・テスト等の労務が提供され、カスタマイズされた本件ソフトウェアは、特定の顧客の要望(注文)に応じて設計・作成された成果物である。
したがって、本件ソフトウェアも、特定の客の要望(注文)に応じてプログラムを設計・作成し、出来上がった成果物に商標を付している。そして、この「プログラムの設計・作成」に継続して「プログラムの保守」がTIS社により提供されている。
よって、その成果物である本件ソフトウェアに付与された商標は、これに継続する役務「コンピュータプログラムの保守」の商標としても認められるべきである。
(2)乙第4号証、乙第8号証ないし乙第11号証について
ア 乙第4号証
乙第4号証のタイトルは「『CREPATH』のご提案資料」とあり、ご提案全体には「保守」についても記載され、「ライセンス費用」と「年間保守費用」がそれぞれ記載されている。この提案資料では、ソフトウェアの導入(ライセンス購入)とともに、ソフトウェア保守も「CREPATHのご提案」として申し入れていることが分かる。
イ 乙第8号証
乙第8号証の1は、本件ソフトウェアのカスタマイズの「注文書」であり、件名「CREPATH(CARDNET接続用)カスタマイズ費用」とあり、カスタマイズ、つまり特定客の要望によるソフトウェアの改修「プログラムの設計・作成」の注文書の件名において「CREPATH」の表示が使用されているので、顧客は当該カスタマイズの役務について「CREPATH」にて出所あるいは役務を識別すると考えるのが自然である。
ウ 乙第9号証
請求人より「コンピュータプログラムに商標は付すことができない」との主張があったため、コンピュータプログラムにも商標が付せることの証明に、「CREPATH」が付されている起動時のシステムログ画面の写しを提出した(乙9)。上記のとおり、カスタマイズされたソフトウェアも顧客の注文に応じてプログラムの設計・作成がされた成果物なので、その成果物(役務の提供を受ける者の利用に供する物)に商標を付して役務を提供する行為は商標法第2条第3項第3号に該当する。
エ 乙第10号証及び乙第11号証
乙第10号証は、「CREPATH」に不具合が生じた際の顧客との電子メールのやりとりであり、内容は、本件ソフトウェアの保守に当たる。
乙第11号証は「CREPATH/保守契約書」とのタイトルであり、かかる使用態様から、顧客は「コンピュータプログラムの保守」を「CERPATH」の表示で特定又は識別するといえる。
オ ソフトウェアの改修・保守は、誰がやってもよいというものではなく、通常、ソフトウェアの販売は、使用許諾契約(ライセンス付与)により行われるところ、特にオープンソースではないソフトウェアのプログラムの改修・保守等は、ソフトウェア開発者(著作権者)、又はその者とソフトウェア使用許諾契約関係にあるベンダー等が行うのが通例である。
本件ソフトウェアは、「CARDNET」センターへの接続用の通信ソフトウェアであり、単体では機能しない。「CARDNET」センターとの関係が切断された場合は、その目的を達しないので、本件ソフトウェアには、使用者の使用環境又はその変化に応じた環境設定と保守が必要となる。とりわけ、本件ソフトウェアは、クレジットカード決済のための通信を目的とするものであるから、安全な決済取引のためにも、安定した接続を要し、継続的な保守を前提とし、本件ソフトウェアとその保守とは切り離せるものではない。また、クレジットカード決済ネットワークへの接続は、銀行ネットワークと同様のクロージングな構成であるため、誰でも保守できるというものではない。
本件ソフトウェアの使用は、被請求人と本件ソフトウェアに関して契約関係にあり(乙6の1、乙6の2)、本件ソフトウェア開発も行った(乙12)TIS社による保守サービスを前提としている。
なお、請求人は、ソフトウェアの名称として使用されているので、そのソフトウェアの保守サービスの識別表示として機能しないと主張しているが、ソフトウェア導入前からその使用期間中、ソフトウェア提供者より、ソフトウェア名を使用して、そのソフトウェアの改修・機能拡張・環境設定・保守の役務提供を受けた場合、そのソフトウェア名は、そのソフトウェアの改修・保守の役務の識別標識としても機能すると考える。むしろ、ソフトウェア名とその保守サービス等に使用される表示が同じである方が一般的であり、利用者には分かりやすい。
また、請求人は、本件の保守役務は、ソフトウェア販売のための付随サービスであるとの解釈であるが、決済ネットワークへの安全かつ安定した接続のためには、本件ソフトウェアの保守の重要性は高く必須である。本件ソフトウェアの保守は、別途、ソフトウェア保守契約の上、保守費用の対価も受けており、商取引の対象となっている(乙3、乙4、乙11)。
(3)上記のとおり、本件商標は、TIS社によるコンピュータプログラムの設計・作成・保守といった一連の役務について使用されており、これら役務の出所識別標識としての機能を有している。
(4)TIS社の使用権について
平成12年(2000年)4月1日付けにて株式会社ジェーシービー(以下「(株)JCB」という。)とTIS社間で締結された本件ソフトウェアの使用許諾及び販売に関する契約(「原契約」)は、平成18年(2006年)5月1日に(株)JCBの契約上の地位が株式会社日本カードネットワーク(以下「(株)日本カードネットワーク」という。)に承継され(乙6の2)、平成18年(2006年)6月2日に本件商標が登録された。
被請求人とTIS社は、本件ソフトウェアについての原契約の当事者であり、TIS社は被請求人より、本件ソフトウェア販売、つまり購入者への本件ソフトウェア再使用許諾について、独占的に許諾を受けている(原契約書第2条)。そして、契約上、TIS社は、被請求人の事前の承諾を得て、本件ソフトウェアの改造・変更を行うことになっており、被請求人は、本件ソフトウェアとその保守とは切り離せないこと、そしてTIS社が顧客へ本件ソフトウェアの保守の役務を提供していることを了知している。そうすると、TIS社が本件ソフトウェアの改修・機能拡張(プログラムの設計・作成)・保守について「CREPATH」の商標を使用することに対し、被請求人が許諾していないということは考え難く、各提出資料から判断しても、被請求人はTIS社に、本件ソフトウェアのプログラムの設計・作成又は保守等について、商標「CREPATH」の使用を許諾していたことに疑いの余地はない。被請求人は、TIS社が商標「CREPATH」を指定役務「コンピュータプログラムの設計・作成又は保守」等について使用することを許諾している。
(5)結び
以上のとおり、本件商標は、使用権者により、要証期間において、日本国内で、本件審判請求に係る指定役務中、少なくとも「コンピュータプログラムの設計・作成又は保守」について使用されていたものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証
乙第1号証は、「センター間接続サービス」に係る被請求人のウェブサイト(http://www.cardnet.co.jp/connect/center/)とされるものであり(以下「被請求人ウェブサイト」という。)、第1頁の左上に「C」の文字がデザイン化された「CARDNET(R)」(「(R)」は、「R」の欧文字を小さく○で囲んだもの。)の表示があり、「接続サービスのご案内」のタイトルの下、「サービス概要」として、「クレジットカード・デビットカード・銀聯カードの売上、与信照会情報をリアルタイムでオンラインスイッチングするサービスです。」の記載がある。
また、第2頁の「センター間接続パッケージ」の項に、「加盟店様センターにご用意いただいた『オンライン接続サーバ』上に、ISO規格準拠『CARDNET手順』をサポートし弊社センターと直接接続するパッケージソフトをご導入いただきます。(中略)『接続パッケージ』には各種OS対応の商品があり、加盟店様のマシン構成等によりご選択いただけます。(順不同)」の記載があり、その下の表には、下から2番目の段に「対応メーカー」として「TIS(株)」、「名称」として「CREPATH」及び「対応OS」として「HP Nonstop KERNEL」の記載がある。
さらに、第3頁の末尾には、「Copyright(C)CARDNET All Rights Reserved.」の記載がある。
これらのことから、被請求人は、カード決済ネットワークシステム「CARDNET」の運営者であり、被請求人ウェブサイトには、カード決済ネットワークシステムの加盟店が「CARDNET」センターへ接続するための「接続パッケージ」の名称として「CREPATH」の文字が表示され、その「対応メーカー」はTIS社であることが認められる。
(2)乙第2号証
乙第2号証は、「CREPATH」に関するTIS社のウェブサイト(https://www.tis.jp/service_solution/crepath/)とされるものであり(以下「TIS社ウェブサイト」という。)、「CREPATH」のタイトルの下、第1頁には「CREPATHは、CARDNETセンターを経由したリアルタイムの販売時点与信システムにおいて、通信制御・センター管理を行う通信パッケージソフトウエアです。(中略)CREPATHは単体では機能いたしません。別途、業務アプリケーションなどが必要となります。製品仕様については改良のため、予告なく変更される場合があります。」の記載と共に、「CREPATH」と記載された円図形の表示がある。
第2頁には、「導入のメリット/コストと時間の削減が可能に」のタイトルの下、「CREPATHを導入していただくことで、自社システムで対応するよりも低価格、短期間でCARDNETセンターとの接続を実現することができます。」の記載、「モデルケース」として「CREPATHはカード会社センター、加盟店会社センター、共に稼働しており、多様な業界のお客さまへの導入実績があります。カード会社センター(被仕向け、仕向け)、加盟店会社センター(仕向)のいずれの形態でもご利用いただけるパッケージシステムです。」の記載がある。また、第3頁の末尾には、「Copyright 2018 TIS Inc.」の記載がある。
これらのことから、TIS社ウェブサイトにおいて、カード会社や加盟店がCARDNETセンターに接続し、通信・管理を行うための「パッケージソフトウェア」の名称として「CREPATH」の文字を表示していたことが認められる。
(3)乙第3号証
乙第3号証の1及び乙第3号証の2は、いずれも「ソフトウェア・プロダクト保守契約書」とされるものであり、1葉目には「甲とTIS社とは次の要領および契約条項のとおり、ソフトウェア・プロダクト保守に関する契約を締結する。」旨の記載の下、「要綱」には、「ソフトウェアの名称」の欄に「CREPATH IPオプション」の記載がある。
(4)乙第4号証
乙第4号証は、「CREPATHご提案資料」とされるものであり(以下「提案資料」という。)、表紙には、「2017年3月22日」及び「TIS株式会社」の記載があり、第2頁には、「はじめに」の項目の下、「この度は弊社パッケージ『CREPATH』のご提案機会を賜り厚く御礼申し上げます。」の記載がある。
第5頁には、「CREPATHとは」の項目の下、「CREPATHは、CARDNETセンターを経由したリアルタイムの通信制御及び、センター管理を行う通信パッケージソフトウェアです。」の記載がある。
第6頁には、「CREPATHの位置付け」の項目の下、「CREPATHはカード会社センター(被仕向/再仕向)または、加盟店会社センター(仕向)の形態にてご利用いただけるパッケージシステムです。」の記載がある。
第25頁には、「前提事項」の項目の下、「<ご提案全体>」として「・CREPATH環境構築(インストール)、および動作確認テスト等の弊社作業は、本ご提案に含まれておりません。環境構築・受入テストのご支援等が必要な場合は、内容・期間をお伺いした後に別途ご提案させていただきます。」の記載がある。
第28頁には、「ライセンス費用」の項目の下、オプション別の価格等の記載があり、第29頁には「年額保守費用」の項目の下、「既存の2契約に追加で、以下の費用が発生します。」として、オプション別の価格等の記載がある。
第30頁には、「2017年 著作作成者:TIS株式会社」の記載がある。
これらのことから、TIS社は、2017年3月22日に顧客に対して同社が作成した提案資料に「CREPATH」の文字を記載し、「CREPATH」の提案を行ったこと、その提案資料において「CREPATH」は「通信パッケージソフトウェア」の製品として位置付けられていること、前提事項として、その環境構築(インストール)、及び動作確認テスト等のTIS社が行う作業は、本提案には含まれていないこと、基本ライセンス及びオプションにない機能が必要な場合は、別途の提案になること、保守時間は、現在の契約と同様のものであることを説明したことがうかがわれる。また、費用については、ライセンス費用及び年額保守費用があることが分かる。
(5)乙第5号証
ア 乙第5号証の1は、「金S2『PJ計画書』」とされる書面であり、第1頁には、「金S2 PJ計画書(Major Plan)」、作成者氏名及び「2015/12/15」の記載の下、「0 はじめに/本書の位置付け」として、「本書はCARDNET接続版CREPATHメッセージ出力コレクタ変更対応のPJ計画を記したものである。」の記載、「1 プロジェクト概要/要件概要」として「(中略)CARDNET接続用CREPATHの(中略)カスタマイズ版を作成する。」の記載、「PJの位置付け」として「(中略)からのご依頼にもとづき、CARDNET接続版CREPATHの改修を行う。」の記載、その他作業工程等の記載がある。
イ 乙第5号証の2は、「CS6『PJ計画書』」とされる書面であり、第1頁には、「CS6 PJ計画書(Major Plan)」、作成「2014/10/01」の記載の下、「0 はじめに/本書の位置付け」として、「本書はCREPATH金融IC対応のPJ計画を記したものである。」の記載、「1 プロジェクト概要/PJの位置付け」として「(中略)からの依頼にもとづき、CREPATHの改修を行う。」の記載がある。
ウ これらのことから、TIS社は、2014年10月1日及び2015年12月15日に、「CARDNET接続用CREPATH」ないし「CREPATH」の改修のための部内用の作業計画書を作成したことがうかがわれる。
(6)乙第6号証
ア 乙第6号証の1は、「日本カードネットワーク稟議書」と題する書面であり、1葉目には、「件名」として「株式会社ジェーシービーとのCREPATHの地位承継契約締結について」の記載があり、「1.付議事項」として「(1)ジェーシービー社(以下JCB)、TIS(株)(以下TIS)とCREPATH(※)の地位に関する承継の契約を締結すること。/(※)CEPATH:HP NonstopServer利用ユーザ向けのCARDNETセンター接続パッケージ/旧名称:J-connect/T」の記載及び「(2)TISがJCBと締結するCREPATHに関する仕様許諾契約書内容を承諾すること。」の記載があり、そして、1葉目の下部には、「承認条件」として「承認になりました。」の記載がある。
そして、5葉目の別紙2「『J-connect/T』の使用許諾及び販売に関する契約書」と題する書面には、「株式会社ジューシービー(以下、甲という)と株式会社東洋情報システム(以下、乙という)とは、甲が開発したソフトウェアの使用許諾及び販売に関し、以下の通りの契約を締結します。」の記載がある。
また、「第1条(定義)」として「本契約において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによります。/(1)「本ソフトウェア」/甲が開発した、株式会社日本カードネットワークが運営するCARDNETセンターに接続するための別紙記載のソフトウェア(バージョンアップされたものも含む。)及び関係資料をいいます。」の記載があり、10葉目の「別紙」には、「ソフトウェア」の欄に「J-connect/T(V1.0)及び「J-connect/T(セキュリティオプション)」の記載がある。
さらに、5葉目には、「第2条(使用権)」として、「甲は、乙に対し、本ソフトウェアについて次の各号に定める内容の使用権を独占的に許諾するものとします。/(1)乙が乙の顧客に対し、本ソフトウェアを直接または乙の提携先企業を通じて販売すること。/(2)乙が前号により本ソフトウェアを販売した顧客に対し、本ソフトウェアの譲渡不能かつ非独占的な使用権を再許諾すること。/(3)乙が前各号ならびに保守・良品の維持の目的においてのみ、本ソフトウェアを自ら使用すること・・・。」の記載があり、7葉目には、「第12条(知的財産権等)」として、「1.本契約に基づき、乙が購入者に対して使用許諾する本ソフトウェア及びその複製物の所有権、著作権、商標権その他一切の知的財産権(以下、「知的財産権等」といいます。)等は、全て甲に帰属するものとします。」の記載があり、8葉目には、「第15条(契約期間)」として「1.本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とします。ただし、期間満了の3ヶ月前までに甲、乙いずれからの別段の意思表示のない場合、本契約は同1条件をもってさらに1年間継続するものとし、その後も同じとします。」の記載がある。
そして、9葉目には、「平成12年4月1日」の記載、「甲」として(株)JCBの住所、社名及び取締役社長の氏名の記載並びに押印があり、「乙」として株式会社東洋情報システムの住所、社名及び取締役社長の氏名の記載並びに押印がある。
イ 乙第6号証の2は、「承継契約書」と題する書面であり、1葉目には、「TIS株式会社(以下「甲」という。)と株式会社ジェーシービー(以下「乙」という。)及び株式会社日本カードネットワーク(以下「丙」という。)は甲乙間で締結された別紙記載の契約(以下「原契約」という。)について平成18年5月1日(以下「地位承継日」という。)をもって乙から契約上の地位を丙に承継するための契約を締結する。」の記載があり、「第1条」として「乙は、原契約に基づき、乙が甲に対して取得した契約上の一切の権利義務を丙に承継し、甲はこれを承諾するものとする。」の記載がある。
そして、「平成20年4月28日」の記載、「甲」としてTIS社の住所、社名及び取締役社長の氏名の記載並びに押印があり、「乙」として、(株)JCBの住所、社名及び代表取締役執行役員社長の氏名の記載並びに押印があり、「丙」として(株)日本カードネットワークの住所、社名及び代表取締役社長の氏名の記載並びに押印がある。
また、2葉目には「承継を行う原契約」として「『J-connect/T』の使用許諾及び販売に関する契約書(平成12年4月1日締結)」の記載がある。
ウ これらのことから、平成18年5月1日付けで、(株)日本カードネットワーク(被請求人)及びTIS社は、(株)JCBが開発したCARDNETセンターに接続するためのソフトウェア「J-connect/T」(「CREPATH」の旧名称。)を(株)東洋情報システム(TIS社の前身)に使用許諾すること等を定めた(株)JCBと(株)東洋情報システム間の契約を承継しており、(株)日本カードネットワーク(被請求人)は、TIS社に対し、ソフトウェア「CREPATH」の非独占的使用権を許諾していたことがうかがわれる。
(7)乙8号証
乙8号証の1は、「注文書」と題する書面であり、「注文日」として「2016年1月8日」の記載、左上に「TIS株式会社 御中」の記載、その右側に「株式会社 エムアンドシーシステム」(以下「(株)エムアンドシーシステム」という。)の住所及び社名の記載並びに押印がある。
そして、「下記の通り注文いたします。」の記載の下、「件名」として「CREPATH(CARDNET接続用)カスタマイズ費用」の記載があり、「(御見積内訳)」の表中の「品名」の欄に「CREPATH(CARDNET接続用)カスタマイズ費用/出力先コレクタ変更」の記載がある。
これらのことから、TIS社は、2016年1月8日付けで、顧客より、ソフトウェア「CREPATH」のカスタマイズの注文を受けたことが認められる。
(8)乙第9号証
乙第9号証は、「CREPATH起動メッセージ・システムログ画面」とされるものであり、コンピュータの画面と思われる画像中に「CREPATH起動メッセージ.log-メモ帳」の表示の下、システムログの表示中に「CREPATH.1.V01(中略)プロセス キドウ」、「CREPATH.1.V01(中略)ファイル オープン」等の表示があり、「CREPATH」の文字が起動されるソフトウェアの名称としてコンピュータ画面上に表示されていることがうかがわれる。
(9)乙第10号証
乙第10号証の1ないし乙第10号証の6は、「コンピュータプログラムの保守等に関する顧客とTIS社間の通信文(電子メール)」とされるものであり、TIS社は、2014年から2017年にかけて、顧客より、ソフトウェア「CREPATH」の障害や設定変更等についての質問を受け、担当者がその回答をしていたことが認められる。
(10)乙第11号証
乙第11号証は、「CREPATH 保守契約書」と題する書面であり、2葉目には、「株式会社ジェーシービー(以下『JCB』という)とTIS株式会社(以下『受託会社』という)は、当事者間で平成20年4月28日付で締結した『CREPATH使用権許諾契約書』(以下『原契約』という)に基づき、原契約に規定されたソフトウェアに対する保守に関して以下の通り契約(以下『本契約』という)を締結する。」との記載がある。
そして、「第1条 (保守内容)」として「受託会社は、本契約に基づき、以下のソフトウェア保守業務を保守時間(中略)内にて行い、保守業務の内容は本条の規定するところに限定されるものとし、また、その提供は日本 国内に限るものとする。」の記載、「(1) ソフトウェアを稼働させる使用電子計算機(中略)に於て、関連マニュアル(中略)に従ってソフトウェアを使用したにもかかわらず、問題が発生した場合、及び受託会社からの提供によるソフトウェアの入れ替え作業(以下『アップデイト』という)の実施を含め適切に使用されているソフトウェアについて問題が生じた場合には、受託会社は、その問題の存在を確認したうえ、それが再発する条件を検討し、その結果に応じて次のいずれかの措置をとるものとする。」等の記載がある。
また、3葉目には、「第5条 (保守期間)」として「本契約に基づく保守期間は、平成18年5月1日より平成20年4月30日とする。但し、期間満了日の90日前までにJCB受託会社いずれからも、書面による契約終了の意思表示がないときは、更に1年間延長されるものとし、以後も同様とし、JCB受託会社いずれかより、書面による契約終了の意思表示があった場合はJCB受託会社は誠意をもって協議するものとする。」の記載がある。
さらに、4葉目の末尾には、「契約締結年月日 : 平成20年4月28日」の記載、(株)JCBの住所、社名及び代表取締役執行役員社長の氏名の記載並びに押印があり、「受託会社」としてTIS社の住所、社名及び代表取締役社長の氏名の記載並びに押印がある。
これらのことから、TIS社は、平成20年4月28日付けで(株)JCBとの間でソフトウェア「CREPATH」について使用権許諾契約を結んだことが認められる。
(11)乙第12号証
乙第12号証の1は、「業務委託個別契約書」と題する書面であり、(株)日本カードネットワークとTIS社の間で「CARDNET2014年度第1期開発(外部設計?システムテスト)」の業務についての合意事項が記載され、第2頁には「2014年5月28日」の記載、「甲」として(株)日本カードネットワークの住所、社名及び代表取締役社長の氏名の記載並びに押印、「乙」としてTIS社の住所、社名及び代表取締役社長の氏名の記載並びに押印がある。
また、4葉目には「別紙」として表が掲げられ、「工数/費用」の欄に、「工程」として「CREPATH開発」の記載、「工数(人月)」として「7.00」の記載、「金額(円:税抜)」として「¥7,700,000」の記載があり、「納品」の欄に、「工程」として「CREPATH開発」の記載、「納品物」として「CREPATH製品版CD/CREPATH製品版マニュアル/CREPATHリリースノート」の記載、「納品予定日」として「2014年12月26日」等の記載がある。
乙第12号証の2は、「御見積書」と題する書面であり、「発行日 2014/05/21」の記載、「株式会社日本カードネットワーク 御中」の記載、TIS社の記名、押印があり、「件名」として「CARDNET/2014年度第1期開発(外部設計?システムテスト)」の記載があり、その見積金額の記載がある。そして、見積内訳には「品名」として「1 CREPATH開発」の記載、「金額」として「7,700,000」の記載があり、「1.納品物」として「CREPATH製品版CD/CREPATH製品版マニュアル/CREPATHリリースノート」の記載がある。
これらのことから、TIS社は、2014年5月28日付けで(株)日本カードネットワークとの間で「CARDNET2014年度第1期開発(外部設計?システムテスト)」について業務委託契約を締結し、その内訳として「CREPATH開発」が含まれていたことが認められる。
2 判断
(1)被請求人及びTIS社について
ア 被請求人
被請求人は、我が国において、クレジットカード・デビットカード・銀聯カードの売上、与信照会情報をリアルタイムでオンラインスイッチングするサービスである「CARDNET」を提供する者である。そして、カード決済ネットワークシステムの加盟店が同人の「CARDNET」センターへの接続するためには、同センターと直接接続するパッケージソフトウェアが必要とされる(乙1)。
イ TIS社
上記の接続パッケージソフトウェアには、各種OS対応の複数の商品があり、加盟店のマシン構成等により選択できるところ、「HP Nonstop KERNEL」に対応する製品の名称は「CREPATH」であり、TIS社は、その「対応メーカー」である(乙1、乙2)。
(2)使用商標について
本件商標は、「CREPATH」の欧文字を標準文字で表してなるところ、被請求人ウェブサイト(乙1)、TIS社ウェブサイト(乙2)、TIS社作成の提案資料(乙4)等において、「CREPATH」の欧文字の表示があり、これらは、本件商標と構成文字が同一であり、社会通念上同一の商標であると認められる。
(3)使用者について
TIS社は、ソフトウェア「CREPATH」について、被請求人から非独占的使用権の許諾を受け(乙6)、かつ、業務委託契約を結んでおり(乙12)、その他、乙号証として提出された契約書等を総合すれば、両者はソフトウェア「CREPATH」の提供、保守等の業務において一定の提携関係にあることが認められる。
そして、乙各号証を総合すれば、被請求人は、TIS社がソフトウェアの名称として「CREPATH」の文字を使用していることを認識していたにもかかわらず、それについて異議を述べていないことが認められるから、被請求人は、TIS社に対してソフトウェアの名称として「CREPATH」の文字を使用することについて、黙示の許諾を与えていたことを推認し得るものである。
(4)取消請求役務に係る商標の使用について
ア 「CREPATH」の文字の使用について
被請求人ウェブサイト(乙1)、TIS社ウェブサイト(乙2)、TIS社作成の提案資料(乙4)等において、「CREPATH」の欧文字が表示されているものの、当該「CREPATH」については、「弊社センター(審決注:「CARDNETセンター」のこと。)と直接接続するパッケージソフトをご導入いただきます。(中略)『接続パッケージ』には各種OS対応の商品があり、加盟店様のマシン構成等によりご選択いただけます。」(乙1)との記載があることや、「CREPATHは、CARDNETセンターを経由したリアルタイムの販売時点与信システムにおいて、通信制御・センター管理を行う通信パッケージソフトウェアです。(中略)CREPATHは単体では機能いたしません。別途、業務アプリケーションなどが必要となります。製品仕様については改良のため、予告なく変更される場合があります。」(乙2)との記載があること、「CREPATHの位置付け」の項目の下、「CREPATHは、CARDNETセンターを経由したリアルタイムの通信制御及び、センター管理を行う通信パッケージソフトウェアです。」(乙4)との記載があること等からすれば、「CREPATH」の文字は、いずれも、カード会社や加盟店がCARDNETセンターに接続し、通信・管理を行うためのソフトウェア製品の名称として表示されていることが認められる。
そして、その他、乙第3号証、乙第5号証、乙第6号証、乙第8号証ないし乙第12号証においても、本件商標と同一の文字からなる「CREPATH」の文字が表示されているが、いずれもCARDNETセンターへの接続用ソフトウェアの名称として、当該ソフトウェアを特定するために使用されているものであって、「CREPATH」の文字は、TIS社が提供するコンピュータプログラムの名称として使用されているものというのが相当である。
イ 使用主張役務との関係
してみれば、乙各号証における本件商標の使用は、ソフトウェアの出所を識別する標識として商品「コンピュータプログラム」についての商標の使用といい得るとしても、使用主張役務である「コンピュータプログラムの保守,コンピュータネットワークシステムの環境設定,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」についての商標の使用ということはできない。
ウ その他の役務についての使用
上記のとおり、「CREPATH」の文字は、コンピュータプログラムの名称に使用されているとみるのが相当であり、被請求人提出に係る全証拠をもってしても、取消請求役務のいずれかについて当該文字を使用しているものとは認められない。
エ TIS社の業務に関する主張について
被請求人は、TIS社は、提案資料やコンピュータの映像面等に「CREPATH」の文字を表示し、「CREPATH」の特徴・機能・動作環境等の紹介・説明の他、需要者の必要に応じて、機能の追加、プログラムの改変・機能拡張・改修、質問へ回答等の役務を提供しているから、本件商標は使用主張役務について使用されている」旨主張しているが、TIS社は、第三者との間でソフトウェア保守契約書を締結し(乙3、乙11)、プログラムの設計・作成・保守の業務を行っていることが認められる(乙4、乙5、乙8、乙10)としても、提案資料やコンピュータの映像面等に表示された「CREPATH」の文字は、上記アと同様に、コンピュータプログラムの名称を示すものとして使用され、保守業務等の対象としてのソフトウェア名を認識させるものであり、TIS社の提供する役務の出所を表示したものとはいい難いものである。
そうすると、TIS社が第三者に対して、提案資料やコンピュータの映像面等に「CREPATH」の文字を表示してプログラムの設計・作成・保守等の役務を提供しているとしても、当該表示は、プログラムの設計・作成・保守の提供に当たってその役務の出所を識別するために使用されたものとはいい難く、本件商標を使用主張役務について使用したということはできない。
(5)被請求人の主張について
被請求人は、審決(乙7)を引用し、本件も同様の事例であるから、本件商標について、「電子計算機プログラムの保守において、電子計算機プログラムを起動し、そのログイン画面に商標を表示させることによって、商標の使用をしているものということができるから、商標法第2条第3項第3号『役務の提供に当たり・・・用に供する物に標章を付する行為』と認められるべき」旨主張している。
しかしながら、被請求人が引用する審決は、「システムのログイン画面に使用商標及び著作権表示並びに商標権者名が表示されていること、商標権者から病院に提供されたソフトウェアは、当該病院独自のものとして商標権者により設計・作成されたものであり、汎用性のある商品というより『電子計算機プログラムの設計・作成』において提供されたソフトウェアといえること、また、ソフトウェアの設計・作成の後、保守も商標権者によって、継続して行われていたことから、『電子計算機プログラムの設計・作成』の役務に継続する『電子計算機プログラムの保守』において一連の役務の出所識別標識としての機能を有しているものとみて差し支えない」旨認定、判断したものである。
これに対して、本件においては、「CREPATH起動メッセージ・システムログ画面」(乙9)において、「CREPATH」の文字が表示されているとしても、当該文字は、コンピュータプログラムの名称を記述的に表すものにすぎないこと、また、本件ソフトウェアは、加盟店がクレジットカード等による決済のため「CARDNET」センターへ接続するためものであり、加盟店独自のものとして商標権者により設計・作成されたものとはいえないこと、さらに、本件ソフトウェアは、元々(株)JCBが開発した「J-connect/T」であって(乙6)、TIS社はその保守業務の委託を受けているにとどまるものであり(乙3等)、本件ソフトウェアの設計・作成の後、保守も商標権者によって一連の役務として継続して行われていたとはいい難いことからすれば、本件は、上記審決例とは事情を異にするものというべきであり、当該審決と同様に本件商標の使用を認めることはできない。
よって、かかる被請求人の主張は認めることができない。
(6)小括
以上からすれば、日本国内において、本件商標と社会通念上同一の商標が被請求人ウェブサイト、TIS社ウェブサイト、提案資料等に使用され、また、TIS社は、要証期間内に、プログラムの設計・作成・保守の役務を第三者に提供していたことが認められる。
しかしながら、上記ウェブサイトや提案資料に表示された「CREPATH」の文字及びTIS社がソフトウェアの改修等の役務を提供するに当たってコンピュータ画面等に表示された「CREPATH」の文字は、いずれも、本件ソフトウェアの名称として使用されたものというのが相当であり、本件商標が使用主張役務について使用されたものと認めることはできない。
そうすると、被請求人(商標権者)がTIS社に本件ソフトウェアの名称の使用について黙示の許諾を与えたことを推認し得るとしても、本件商標が、要証期間内に「コンピュータプログラムの保守,コンピュータネットワークシステムの環境設定,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」について使用されたということはできない。
その他、要証期間において、本件商標の指定役務中、取消請求役務のいずれかについて、本件商標に係る商標権者又は使用権者が本件商標の使用をしたことを認めるに足りる証拠の提出はない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の指定役務中、第38類「電子計算機端末による通信,移動体電話による通信,電子データの伝送交換,コンピュータ通信ネットワークへの接続の提供,その他の電気通信(放送を除く。),電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」及び第42類「コンピュータによる情報処理,コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,通信ネットワークシステムの設計・作成又は保守並びにこれらに関する助言,コンピュータネットワークシステムの環境設定,コンピュータの貸与,コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,通信回線を介した電子商取引の利用者の認証,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機・その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,通信技術に関する研究及び開発,機械器具に関する試験又は研究,デザインの考案」について本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により指定役務中「結論掲記の指定役務」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-08-06 
結審通知日 2020-08-12 
審決日 2020-09-16 
出願番号 商願2005-113807(T2005-113807) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y3842)
最終処分 成立  
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 正樹
登録日 2006-06-02 
登録番号 商標登録第4957910号(T4957910) 
商標の称呼 クレパス、クリパス 
代理人 安本 真珠美 
代理人 小島 高城郎 
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