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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない W25
管理番号 1368206 
審判番号 取消2017-300275 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-04-20 
確定日 2020-10-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5903051号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5903051号商標(以下「本件商標」という。)は,「空調風神服」の漢字を標準文字により表してなり,平成28年5月19日に登録出願,第25類「作業服,その他の被服」を指定商品として,同年10月17日に登録査定,同年12月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第51条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第74号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人
請求人は,株式会社空調服との社名により,衣料品等の開発,製造,販売等を行う法人である(甲3)。請求人は,当時全く世の中に存在しなかった着用することにより体温を冷やすという空冷作業服を平成11年に独自開発に着手してこれに成功し,平成16年から現在に至るまで,腰部にファンの付いた作業服を「空調服」なる名称で主力製品として販売する(甲4,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39など)。また,請求人の親会社である株式会社セフト研究所(以下「セフト研究所」という。)は,「空調服」について多数の特許を保有する(甲10)。
2 本件商標権者は,本件商標の指定商品について本件商標と類似する商標を使用したこと
(1)本件商標権者の行為であること
本件商標に類似する商標の使用は,本件商標権者の行為である。
(2)本件商標権者の使用商標
本件商標権者は,自社の製造販売する空冷作業服について,自社のウェブサイト(甲17の1,甲17の14),商品の包装(甲17の4?7,甲17の9?13),商品本体(甲17の3,甲17の8),カタログ(甲17の2),及び雑誌広告(甲17の15)において,「空調風神服」の文字のうち「空調」及び「服」の部分を強調表示した商標を使用している(以下「本件使用商標」という。)。
(3)本件商標と本件使用商標は類似すること
本件商標は,「空調風神服」の文字を横書きしてなるところ,構成各文字は,いずれも同一の書体をもって,同一の大きさで外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく,これより生じる「クウチョウフウジンフク」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。
したがって,本件商標は,構成全体をもって,一体不可分の商標を表したと認識されるとみるのが相当であり,その構成文字に相応して「クウチョウフウジンフク」の称呼を生じる。
他方,本件使用商標は,別掲1のように,「空調風神服」の文字を横書きしてなるところ(甲17の1?15),ゴシック体で「空調服」の文字のみが太字で強調して書され,「風神」の文字は通常のゴシック体で書された構成からなるものである。この構成により,本件使用商標からは「クウチョウフウジンフク」の称呼のほか,その太字で書された「空調服」の文字に相応して「クウチョウフク」の称呼も生じる。
したがって,本件使用商標は,強調太字を有する点で本件商標と外観が異なり,かつ「クウチョウフク」という称呼が生じる点で本件商標と称呼が異なり,本件商標と同一の商標ではない。
また,本件使用商標は,本件商標と「空調風神服」の文字において共通しており,外観上近似しているものであり,「クウチョウフウジンフク」の称呼も共通して生じることから,本件使用商標と本件商標とは,類似の商標である。
以上によれば,本件商標と本件使用商標は,類似する。
(4)指定商品との関係
本件使用商標は,「作業服」について使用されているものであり(甲17の1?4),当該「作業服」は,本件商標の指定商品「作業服」と同一の商品である。
(5)まとめ
以上のように,本件商標権者は,本件商標の指定商品について本件商標と類似する商標を使用した。
3 「空調服」の文字は普通名称化していない
(1)「空調服」の文字は生来的に識別力を有する語である。
ア 請求人に係る商標である「空調服」の文字は,直接的かつ一義的に何らかの特定の観念が生じるものではなく,全体として一種の造語を表してなるものと認識,把握されるものであるから,創造標章であることは明白である。
イ 「空調服」の文字は,請求人が独自開発したそれまで世の中に存在しなかった商品に対して請求人が付した造語である。請求人が開発するまで,当該商品自体も,「空調服」という語自体も世の中に存在していなかった(甲4)。
ウ 広辞苑(第六版)によれば,「空調服」を構成する「空調」の語は「空気調節の略。エアーコンディショニング。」を意味するとされている(甲64)。さらに,「エアーコンディショニング」の語をたどれば,「室内の空気の温度。湿度・清浄度などの調節。」を意味するとある(甲65)。つまり,「空調」は,室内の空気調整に対して使用される語なのであって,「服」の語とは観念的に親和性に乏しく,両語を結合することにその必然性がない。したがって,請求人が生み出した「空調服」の文字構成には強い独創性がある。
エ 「空調服」の文字は,請求人自身が(又はライセンシーが),請求人の商品名か,請求人の企業名を表すものとして,使用している(甲68の1?29)。
オ これを受けて,他社も,「空調服」の文字を,請求人の商品名か,請求人の企業名を表すものとして,使用している(甲69の1?42)。
カ また,メディア等の媒体等も,「空調服」の文字を,請求人の商品名か,請求人の企業名を表すものとして,使用する(甲70の1?143)。「Yahoo!ニュース」(甲70の135)では,電動の扇風機がついたウェアのことを「ファン付きウェア」と称し,「空調服」の文字を請求人の企業名及び商品名として用いている。
キ さらに,本件商標権者自身も,「空調服」の文字を,請求人の商品名として用いている(甲74)。
ク これに対し,被請求人は,「空調服」の文字が小型ファンを取り付けた作業服を意味している旨主張し,証拠を提出している。
しかし,小型ファンを取り付けた作業服との意味を表す用語は,「ファン付き作業服」(甲66の1)とか,「ファン付きウェア」(甲66の2)とか,「EFウェア」(エレクトリックファンウェアの略,甲66の3)との用語が使用されているのであり(甲66の1?199),需要者は,「空調服」の文字が小型ファンを取り付けた作業服を意味していると認識していない。「空調服」の文字は,請求人の商品名・企業名を表すと認識されている。したがって,被請求人の主張は,需要者の認識を表しておらず,誤っている。
ケ 以上から,「空調服」の文字は,その語が誕生してから,現在まで,一度も普通名称化していないし,かつ,自他商品識別力も失ってもいない。
(2)独占期間,後発品が参入してからの期間
請求人は,当時全く世の中に存在しなかった空冷作業服という独自コンセプトを立ち上げ,平成11年に独自開発に着手して試行錯誤の後,製品化に成功し,独力で空冷作業服市場を立ち上げ(甲4,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39),多大なる営業努力等により(甲4,甲5の1?2,甲6の1?4,甲7の1?13,甲8,甲9,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39),10年以上市場を独占し多大な売り上げ実績を誇る現在の地位を確立した(甲4,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39)。このような大ヒットにより,請求人製品が爆発的な売り上げを記録したことから,平成27年以降,後発品が市場に登場した(甲4)。
すなわち,「空調服」なる商品名の請求人商品について,平成16年の市場投入から約10年以上の期間は後発品が登場せず市場を独占してきた(研究開発開始から起算すると約15年間の独占である)。後発品が登場し始めたのは,平成27年であり,後発品が参入してからの期間は約3年である。
したがって,市場独占期間が約10年以上(研究開発開始からすると約15年)もの長期に渡り,後発品が誕生してからの期間が僅かに約3年であるという事実は,「空調服」の普通名称化を妨げる事情である。
(3)請求人による需要者に対する表示
請求人は,「空調服」の文字を,会社名及び請求人の商品名に用いてきた(甲9)。この使用態様は,平成16年以降,現在まで継続して行われており,ウェブページ(甲5の1?甲6の4,甲9,甲19),カタログ(甲7の1?13)等の各種媒体で需要者に向けて表示を行ってきた。
(4)新聞,マスコミ等による表示
空調服が開発に着手された平成11年から,現在に至るまでの間,「空調服」は多くの新聞,マスコミ等において,取り上げられたことは既に述べたとおりである(甲4,甲6の1?4,甲21,甲23の1,甲23の2,甲24の1?72,甲25,甲26の1?147,甲35)。
4 本件使用行為によって他人の業務に係る商品と混同が生じること
(1)請求人の使用する商標
請求人は,世の中に存在しなかった着用することにより体温を冷やすという空冷作業服を平成11年から独自開発を開始し,腰部に備えた2つのファンにより生体を冷却するという独特の形態を有した作業服(甲8)の製品開発に成功し,当該作業服(以下「請求人商品」という)を「空調服」と命名した(甲26の3?5,甲26の21,甲26の39)。そして,平成17年に社名も「空調服」に変更し(甲19),請求人商品を,平成16年から現在に至るまで「空調服」なる名称で販売を継続している(甲5?甲9,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39)。
したがって,請求人は,請求人及び請求人商品を表す商標として「空調服」(以下「請求人商標」という。)を使用するものである。
(2)請求人商標は周知であること
請求人商標は,遅くとも平成28年1月頃までには,全国的に周知性を獲得した。
ア 請求人商品の独自開発及び独占的使用
請求人商品は,平成11年頃に独自に開発が開始され,平成16年に「空調服」との名称で市場に投入され,自社ウェブサイト,インターネット通販サイト,カタログ等に掲載し,販売を継続し(甲4?9,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39),広く知られることとなった。平成16年当時,着用することにより体温を冷やす空冷作業服という分野は存在せず,請求人が請求人商品を市場に投入することで,当該分野が確立した(甲4,甲26の3?5,甲26の21,甲26の39)。その後,平成27年頃まで類似品は登場せず,請求人が約10年間以上に渡り市場を独占し,請求人商品は,現在においても,空冷作業服分野における日本市場における請求人のシェアは圧倒的なトップの地位にある(甲4,甲34)。
イ 売上高
請求人は,平成16年に請求人商品の販売を開始して以来,順調に売上を伸ばしてきた。平成16年度の請求人商品の売上は6000万円であったが,平成17年度は1億2500万円,平成23年度は2億300万円になった。そして,近時においても,平成25年度は4億5800万円,平成26年度は16億8800万円,平成27年は22億8800万円,平成28年は23億100万円となっている。
以上のように,請求人商品の売上は年を追うに従って増加傾向の一途をたどり,発売開始以来,請求人商品の販売合計額は85億1300万円を超えた(甲4,甲29)。
ウ 販売地域
請求人商品は,全国各地にあまねく販売されている。請求人商品はインターネット販売を行っていることもあり,発売以来,平成18年には47都道府県の全てにおいて販売を行い,それ以降,各都道府県における売上を伸ばしている(甲4,甲29)。
エ 広告宣伝
請求人は,平成16年以降現在までインターネットショッピングサイト楽天において広告をする(甲6)ほか,自社ウェブサイト(甲5),カタログ(甲7)に掲載し繰り返し広告を行った。また,折込チラシを2万400件,ダイレクトメールを3万2529件送付した(甲4,甲20)。さらに,請求人は,平成16年から現在に至るまで,全国で,請求人商品を42回展示会に出展した(甲4,甲31)。
請求人は,請求人商品について,人気タレントを起用したウェブCMを平成28年8月に公開(甲4,甲21),同時に注目を集め,多くのメディアで取り上げられた(甲22)。
また,当該CMの動画ウェブサイトYoutubeでの再生回数は,平成29年3月28日時点において,61万5805回(甲4),同29年9月12日現在で,63万2749回である(甲32)。
さらに,請求人は当該CMを映画館でも展開し,全国のユナイテッド・シネマ,シネプレックス30劇場(南古谷・上里・久山・あしかが・熊本の5劇場を除く)で放映することで,全国的な認知度の向上を図った(甲4,甲33)。
このように,人気タレントの起用や,高いCM接触率を期待できる映画館での上映等によって,請求人商標の全国的な認知度は飛躍的に高まったといえる。
請求人がこれまでに請求人商品の広告宣伝費用の総額は,5211万円に上る(甲4)。
オ 新聞,テレビ等による大々的な紹介
(ア)テレビ放送
請求人商品は,テレビ放送の中で紹介され(甲23,甲24),ニュースや情報番組,バラエティー番組等,多岐にわたる番組において,現在に至るまで,全国ネットで合計35回にわたって放送された(甲23の2)。
さらに,地方局においても,読売テレビ放送株式会社,株式会社テレビ西日本,関西テレビ放送株式会社,中京テレビ放送株式会社,九州朝日放送株式会社,四国放送株式会社,株式会社福島中央テレビ,株式会社テレビ金沢等の番組において,現在まで合計35回にわたって紹介された(甲23の2)。
その他に,BS,CS,ケーブルテレビ放送等でも請求人商品発売から現在まで8回にわたり紹介されている(甲23の2)。
(イ)新聞,雑誌等への掲載
請求人商品は,現在まで合計148回,新聞,雑誌等に掲載され紹介された(甲25,甲26)。
(ウ)小括
以上のとおり,請求人商標が商品名とされた請求人商品については,視聴者の範囲が全国に及ぶ全国ネット放送で多数回放送され,読者の範囲が全国に及ぶ全国紙で多数回掲載され,かつその他著名媒体でも多数回放送ないし掲載されたこと自体,請求人商標が周知であることの証左にほかならず,また,かかる放送ないし掲載により,請求人商標の周知性が更に高められたといえる。
カ 小括
請求人商品の名称として用いられる請求人商標は,請求人が同商品を製造販売してから現在に至るまで何ら変更を加えることなく使用されており,その商標自体の特異性とその商品形態の特異性が相まって,商標自体に極めて強い自他識別力がある。しかも,請求人商品は,現在まで日本国内で84億6600万円以上を売り上げ,ほぼ独占に近い国内シェアを有する事情等も相まって,請求人商品は,少なくとも平成28年1月頃までには,その需要者の間で広く認識され,その結果,請求人商品に使用される請求人商標は,請求人及び請求人の商品を示す商標として周知となり,その状況は,現在に至るまで継続しているものといえる。
(3)請求人との出所の混同
上述のとおり,請求人商標は,請求人の商品表示として需要者の間に広く認識されているものである。
一方,本件使用商標は,上述のとおり,わざわざ「空調服」の文字のみを太字で強調しており,請求人の「空調服」商標を想起させる構成となっている。
また,平成29年3月下旬頃,作業服の販売店である会社の担当者から請求人担当者に対し,「『空調風神服』の型番KU97100と型番KU91600は,『空調服』と似ているが,株式会社空調服の製品か?」と問い合わせがあり(甲27),「空調服」と「空調風神服」は出所の問い合わせ事例が発生している。
そうすると,本件使用商標と請求人の商品表示とは少なくとも外観及び称呼上相紛らわしく,全体の印象において近似しており,かつ,出所の問い合わせ事例が発生しており,商標権者の商品が請求人の商品であると混同を生じている。
(4)まとめ
以上により,請求人商品表示と類似する本件使用商標を本件商標権者が商品「作業服」に使用することにより,その需要者に対して,請求人商品であるかのような印象を直ちに与え,その結果,本件商標権者の商品と請求人の商標との間に出所の混同を生じさせるものであったといえる。
したがって,本件使用行為によって他人の業務に係る商品と混同が生じるものである。
5 本件商標権者は故意に本件使用を行っていること
(1)本件商標権者の本件使用に至る経緯
被請求人は,セフト研究所が保有する特許や製造ノウハウ等についてセフト研究所からライセンスを受け(甲12,甲13),「空調服」の構成部材である服の受託製造を行い,また,ライセンシーとして(甲14),請求人商品である「空調服」を販売してきた(甲15)。ところが,本件商標権者は,請求人との間で締結したライセンス契約に規定された販売数量等報告義務違反等の契約違反を生じたので,本件商標権者と請求人との間のライセンス契約は解除された(甲16)。「空調服」について製造,販売する権限を失った本件商標権者は,セフト研究所の保有する特許を回避するために設計変更を行い(甲4),かつ,商品名も「空調風神服」に名称変更して自社製品の販売を継続している(甲17)。
なお,本件商標権者は,「空調服」について専ら受託製造者ないしライセンシーとして活動していたため(甲14,甲15),「空調服」に関し独自開発を行っておらず,「空調服」に関して何ら特許を保有していない(甲18)。
(2)上述の経緯からすると,「空調服」との名称が全国的に周知であることを認識していた本件商標権者は,この名声にフリーライドして自社製品を販売しようとして意図的に本件使用を行ったものであり,かつ,極めて悪質であるといわざるを得ない。
(3)小括
本件商標権者は,故意に本件使用を行ったものである。
6 むすび
以上のように,本件商標は,本件商標権者が故意に本件商標と類似する商標を使用することによって,請求人の業務に係る商品と混同を生じるものをしたことは明らかであるから,商標法第51条第1項の規定により,その商標登録が取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第55号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件使用商標と請求人商標との類似性について
(1)本件使用商標
本件使用商標は,ゴシック体風にて「空調風神服」の漢字を横書きした構成であって,その構成中「風神」の文字をやや細く表しているものの,外観上まとまりよく一体的に記した構成からなるものである。よって,本件使用商標の全体からは「クウチョウフウジンフク」の称呼が生じる。あるいは,上記構成中の「風神」から「フウジン」の称呼が生じる場合もあるかもしれない。また,本件使用商標の構成全体としては特定の意味合いを有さないことから造語として認識されるものである。あるいは,上記構成中の「風神」から「風を司る神」の意味合いが生じる場合があるかもしれない。
(2)請求人商標
請求人商標は,「空調服」の漢字を横書きした構成からなるものである。よって,請求人商標からは「クウチョウフク」の称呼のみが生じる。また,請求人商標は,その構成全体から「通気機能を備えた洋服」といったような観念が生じるものである。
(3)本件使用商標と請求人商標の対比
ア 観念
本件使用商標は,上記構成から全体として特定の意味合いが生じない造語,あるいは「風神」の部分から「風を司る神」の観念が生じる場合があるのに対して,請求人商標は,「通気機能を備えた洋服」なる観念が生じるものである。
よって,本件使用商標と請求人商標は,観念において明らかに相違するものである。
イ 外観
本件使用商標は,上記のとおり,ゴシック体風の漢字にて「空調風神服」と記した構成であるのに対して,請求人商標は漢字にて「空調服」と記した構成である。
そして,本件使用商標の構成中「風神」の文字は他の文字よりやや細く表してはいるものの,その構成全体としては外観上まとまりよく一体的に記した構成である。これに対して,請求人商標は漢字にて「空調服」と記した構成である。
よって,本件使用商標と請求人商標は,外観においても明らかに相違するものである。
ウ 称呼
本件使用商標は,上記構成から「クウチョウフウジンフク」の称呼,あるいは「風神」の部分から「フウジン」の称呼が生じる場合があるのに対して,請求人商標は,上記構成から「クウチョウフク」の称呼のみが生じるものである。
よって,本件使用商標と請求人商標は,称呼においても明らかに相違するものである。
ここで,請求人は,本件使用商標の構成中「空調」の文字と「服」の文字が「風神」の文字よりも太文字で強調して書されていると主張している。確かに,本件使用商標は,「風神」の文字が他の3文字に比べ,やや細く記されてはいるもののそれのみであって,ゴシック体風の同一書体で同一の大きさで記されている。本件使用商標が,例えば「風神空調服」や「空調服風神」といった構成であればともかく,本件使用商標は,左側に「空調」,中央付近に「風神」,右側に「服」の文字を配置してなる構成であることから,殊更「風神」の文字を無視・軽視し,かつ,左側に配置された「空調」と右側に配置された「服」をそれぞれ抽出し,さらにそれらを結合し「空調服」と認識するのは極めて不自然であって,そのように認識する者は皆無である。
よって,本件使用商標に接する需要者・取引者は,「空調風神服」あるいは,「風神」と認識し,かつ,「クウチョウフウジンフク」,あるいは「フウジン」と称呼されるものであるから,請求人が主張するような「空調服」と認識し「クウチョウフク」と称呼されるものではない。
以上のことから,観念,外観及び称呼のいずれの判断要素においても相違する本件使用商標と請求人商標とが非類似であることは明らかであり,同一又は類似する商品に使用した場合であっても,商品の出所につき混同が生じるおそれは全くないものである。
2 請求人商標の周知性について
(1)請求人は,「平成16年から請求人商品の販売を開始して以来,その販売合計は85億1300万円を超え,全国各地にあまねく販売し,インターネットショッピングサイト楽天において広告する他,自社ウェブサイト,カタログに掲載し繰り返し広告を行った。また,折込チラシを2万400件,ダイレクトメールを3万2529件送付した。さらに,人気タレントを起用したウェブCMを平成28年8月に公開し,請求人商品の広告宣伝に費やした費用の総額は,5211万円に上ることにより,請求人商標は周知著名性を獲得してきた。」旨を主張している。
しかしながら,具体的な売上高,販売地域,広告宣伝費等は必ずしも明らかでない上,請求人が提出する証拠では,「空調服」の文字は普通名称として用いられているのであって,「空調服」の文字が商品の出所を表すことを証するものではない。
(2)請求人は,「空調服」の使用例として,平成28年8月に公開されたタレントを起用したウェブCMの画像を提出している(甲21)。しかし,この画像に映し出されている標章は「空調服」単体ではなく,「図形」と「空調服」が一体になっているものであるから「空調服」の文字の使用ではなく,請求人とセフト研究所の共有名義の商標登録第4871177号(乙1)の使用である。また,請求人商品の現物写真(甲8)を提出しており,その左前身頃の裏側下付近に商品タグと思しきものが見受けられる。しかし,ここにプリントされているのは「図形」であって「空調服」の文字はプリントされていないから「空調服」の文字の使用ではなく,請求人とセフト研究所名義の商標登録第5794161号(乙2)の使用である。つまり,請求人商品の現物やCMにおいて「空調服」のみの使用は見受けられない。
よって,請求人商標「空調服」が請求人の業務にかかる商品を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されているということはできない。
(3)需要者,取引者がミツフジ株式会社に係るニュースリリース(乙38)及び「最新空調服購入ガイド」のウェブサイト(乙39)に接した場合,例えば,前者でいえば「冷暖対策の両方を実現する空調服」が「小型ファンを取り付けた作業服」を意味する語で「hamon Air Brave TM」がミツフジ株式会社製「空調服」の商品名であると容易に認識するものである。また,後者でいえば「急速販売された寅壱の空調服」が「小型ファンを取り付けた作業服」を意味する語で「クールジャケット」が寅壱製「空調服」の商品名であると容易に認識するものである。さらに,後者で「空調服(ファン付き作業服)選びはもう迷わない!」と記載されていることから,「空調服」の文字は,「小型ファンを取り付けた作業服」を意味する普通名称ないし自他識別標識としての機能を有しない語であると容易に認識されるものである。そもそも,「空調服購入ガイド」というウェブサイトが存在すること自体「空調服」の文字は,「小型ファンを取り付けた作業服」を意味する普通名称ないし自他識別標識としての機能を有しない語であるということができる。
(4)請求人は,請求人商品の販売シェアを裏付ける証拠として,調査報告書(甲34)を提出し「平成28年の市場シェアは空調服が84%である」と主張しているが,具体的な調査手法が明示されていない。
したがって,請求人商標は,周知著名性を獲得しているまでには至っていない。
3 「空調服」の文字が普通名称ないし自他商品識別標識としての機能を有しないものであることの具体的な事実について
(1)各種新聞には,「体温上昇を防止する空調服を順次現場に導入すると発表した。」(平成28年7月7日付け電気新聞,乙11),「四電工は今夏から,現場の作業環境改善と熱中症対策を目的に『空調服』を本格導入している。空調服は電動の小型ファンによって服の中に風を通す仕組みで,」(平成28年7月13日付け電気新聞,乙12),「作業服の中に風を送り込むための小型ファンが付いた空調服を現場に従事する社員全員に支給している。」(平成28年7月25日付け建設工業新聞,乙13),「検定では,気温30度を超す猛暑の中,全員が安全帯や防暑たれ,空調服などを装着し,」(平成28年7月26日付け建設工業新聞,乙14),「このほか,空調服・ハーネスの購入補助や機材工作所での体験型安全研修施設新設など」(平成28年9月23日付け建設通信新聞,乙15),「低圧感覚や安全帯宙吊りといった安全体感,遮熱ヘルメットと空調服といった熱中症対策に関する展示コーナーを設置。」(平成28年10月3日付け電気新聞,乙16),「作業服にファンを取り付けた空調服を活用することなども要請。」(平成29年7月6日付け電気新聞,乙21)など,「空調服」に関連した記事が掲載されている(乙11?乙23)。
上記各証拠は,作業服の需要者である各企業が,「空調服」の文字を「小型ファンを取り付けた作業服」の一般的な名称であると意識しているものである。
(2)登録実用新案公報等には,「【背景技術】【0002】従来のファン露出型送風装置は,特許文献1で提示されているように空調服の背面にファンを取り付けた構造になっており,ファンに電力を供給して回転させることにより空調服で包まれた体に風を送り冷却していた。」(登録実用新案第3186431号,乙24),「【背景技術】【0003】例えば,特許文献1には,かかる複数のファンが設けられた空調服が開示されている。この特許文献1に記載されている空調服では,衣服の裏面に設けられたポケットに二次電池である電源部を収納し,この電源部とファンとを電源ケーブルで接続することによって,ファンに電力を供給するようになっている。」(登録実用新案第3187092号,乙25),「【背景技術】【0002】特許文献1に空調服に用いられる涼風装置が開示されている。この涼風装置は,本体とファンとモーターとバッテリとを備えている。」(登録実用新案第3195731号,乙26),「【背景技術】【0002】・・・服に付いた小形ファンで服の中に外気を取り入れ風流を起すことにより汗を気化させる空調服等が市販されている。」(登録実用新案第3197081号,乙27),「【発明の名称】空調服用腰ベルト【要約】【課題】空調服(ファン付きジャケット,扇風機付き作業服)を着用してファンを作動させたときに,上半身だけでなく下半身も涼しくなるためのベルトを提供すること。」(特開2016-56467号,乙29)なとど,「空調服」の記載がある(乙24?乙30)。
上記各証拠は,作業服の需要者以外の者も「空調服」の文字を「小型ファンを取り付けた作業服」の一般的な名称であると意識しているものである。
(3)ヨツギ株式会社「そよKAZEIII DX(デラックス)」製品パンフレットには,パンフレット中に「絶縁上衣の下に補助具として着用し,快適に作業ができるインナー型の空調服です。」と「空調服」の記載がある(乙31)。
上記証拠は,同業他社においても「空調服」の文字は「小型ファンを取り付けた作業服」の一般的な名称であると意識しているものである。
なお,本件商標権者は,「空調服」の文字を使用していない。
(4)セフト研究所と請求人が,標準文字で商標登録出願した「空調服」(商願2016-30424号)の拒絶査定において,「『空調服』の文字(語)が『服にファン等を備えたもの』等,通気機能を備えた服を『空調服』と称して一般に多数使用されていることが認められる。そうすると,本願商標は,これをその指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者が,該文字を『通気機能を備えた被服・仮装用衣服・運動用特殊衣服』であることを表示したもの,すなわち商品の品質を表示したものと認識するにすぎず,自他商品識別標識として機能しないものといわなければなりません。」と認定されていることからも明らかである。
4 出所の混同について
本件使用商標は,前述のとおり「風神」の文字が他の3文字に比べ,やや細く記されてはいるもののそれのみであって,ゴシック体風の同一書体で同一の大きさで記されており,かつ,左側に「空調」,中央付近に「風神」,右側に「服」の文字を配置してなる構成であることから,殊更「風神」の文字を無視・軽視し,左側に配置された「空調」と右側に配置された「服」をそれぞれ抽出し,さらにそれらを結合し「空調服」と認識するのは極めて不自然である。
よって,本件使用商標に接する需要者・取引者は,「空調風神服」あるいは「風神」と認識するのであり,請求人が主張するような「空調服」と認識されるものではない。よって,本件使用商標と請求人商標の間で出所の混同は生じないものである。
また,請求人商標は,請求人の商品表示として需要者の間に広く認識されているものであり,平成29年3月下旬頃,作業服の販売店である会社の担当者から請求人担当者に対し,「『空調風神服』の型番KU97100と型番KU91600は,『空調服』と似ているが,株式会社空調服の製品か?」との問い合わせがあり,「空調服」と「空調風神服」は出所の問い合わせ事例が発生している旨を主張している。
しかし,請求人は,請求人商品を全国各地にあまねく販売し,需要者の間に広く認識されていると主張しているにもかかわらず,上記問い合わせはわずか1社であり,しかも,その問い合わせ内容は「型番KU97100と型番KU91600は『空調服』と似ているが」との問い合わせであって,例えば「『空調風神服』は『空調服』と似ているが」といったような商標に関する問い合わせではない。
また,セフト研究所が平成16年2月12日に商標登録出願した「図形と空調服」の構成からなる商願2004-11908号(商標登録第4871177号)にかかる平成17年3月3日起案の拒絶理由通知書(乙3)において,「その構成中に『空調服』の文字を有していますが,該文字部分は,『服に取り付けたファンで服の内部に大量の空気を送り込むことによって汗の蒸発を促進し,気化熱によって体を冷却する構造の服』を指称する語として,また,その用途は工場内の作業服等として出願人のみならず他社においても使用しているところからすれば,これを本願の指定商品中前記意味合いに照応する商品,例えば,『通気機能を備えた洋服』以外の商品について使用するときには,その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがあるものと認めます。」と認定されている。
このことは,「空調服」の文字は,2004年(平成16年)時点で請求人のみならず他社においても使用していることを意味するものである。ちなみに,この拒絶理由通知書での指摘に対し,請求人は,平成17年4月18日付提出の手続補正書(乙4)で,上記出願の指定商品を第25類「通気機能を備えた洋服」に補正している。つまり,「空調服」の文字は,「通気機能を備えた洋服」以外の商品について使用するときには商品の品質につき誤認を生じさせる語であると請求人が認めているものである。
さらに,請求人の親会社(セフト研究所)は,特許請求の範囲に「空調服」の文字を用いた特許出願を行っているのであり,このことからも,「空調服」の文字が普通名称であること,及び,請求人がその旨を認識していたであろうことは明らかである(乙5?7)。このように,「空調服」の文字が請求人の商品を表示するものであるとの請求人の主張は,事実に反するばかりか,親会社をして「空調服」の文字を発明の名称として用いて特許出願を行って特許を取得しようとしていることと矛盾するものである。
特に,特開2015-74852号に関しては,セフト研究所自身が,平成29年3月1日に発明の名称として「空調服」の文字を用いた請求項10を追加補正している(乙8)
したがって,本件使用商標を使用しても請求人商品の出所の混同は生じないものである。さらに,セフト研究所の特許出願であって,平成29年4月27日付で特許査定(乙9)が起案された特願2013-212139号に関し,その発明の名称は「空調服の空気排出口調整機構,空調服の服本体及び空調服」である。このことは,発明の名称に「空調服」を用いることが可能であること,つまり,「空調服」の文字は,そもそも普通名称であることを意味するものである。
さらに,前記のとおり請求人商標は周知著名性を獲得していないし,本件使用商標と請求人商標は類似しない。
以上のように,本件使用商標を使用しても請求人商品の出所の混同は生じないものである。
5 故意について
請求人は,「本件商標権者が・・・(中略)・・・『空調服』に関し独自開発を行っておらず,『空調服』に関して何ら特許を保有していない。上述の経緯からすると,『空調服』との名称が全国的に周知であることを認識していた本件商標権者は,この名声にフリーライドして自社製品を販売しようとして意図的に本件使用を行ったものであり,かつ,極めて悪質であるといわざるを得ないから,本件商標権者は故意に本件使用を行ったものである。」旨を主張している。
しかし,前記のとおり,請求人商品は全国的に周知であるということはできないから,本件使用商標をその指定商品に使用しても請求人商品と混同を生じさせるおそれはなく,請求人提出の証拠によっても,本件商標権者が請求人商品と混同を生じさせることを認識していたとはいえないものである。また,本件商標権者は,商標登録第5887967号「風神」(乙10)を登録しており,本件使用商標「空調風神服」の構成は,この「風神」商標を想起できる構成であるということもできる。
したがって,本件商標権者による本件使用商標の使用は,請求人商標と混同を生じさせるおそれがあることを認識しつつ,故意に使用したものではない。
6 まとめ
以上のとおり,本件商標は,本件商標権者が故意に本件商標と類似する本件使用商標をその指定商品に使用して商品の品質の誤認又は請求人の業務にかかる商品と混同を生じるものをしたということはできないから,商標法第51条第1項の規定には該当せず,本件商標の登録は取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 請求人使用商標「空調服」について
(1)「空調服」の文字の識別性について
ア 請求人使用商標「空調服」の構成中「空調」の語は「空気調節の略」を意味し,また,「服」の語が「身につけるもの」を意味し(いずれも「株式会社岩波書店 広辞苑第六版」),いずれも平易な語であることから,「空調服」の文字全体は,「空気を調節する服」(空調機能を備えた服)程の意味合いを容易に認識させるものである。
イ 「空調服」の文字は,以下のとおり,「上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品」を指称する語として,新聞,雑誌及びウェブサイトに使用されていることが認められる。そして,当該新聞等の記載には,セフト研究所及び請求人に係る記載はない。
(ア)「読売新聞」(2006年(平成18年)8月10日付け)において,「涼しい?『空調服』」の見出しの下,「『空調服』とは,服の左右の腰あたりにファンを取り付け,服の中に風を取り込んで汗の蒸発を促進,体の熱を冷ますのが狙い。」の記載がある(甲26の50)。
(イ)「北海道建設新聞」(2016年(平成28年)6月3日付け)において,「『空調服』で夏を涼しく/送風機付きジャンパー推奨」の見出しの下,「『空調服』など薄い生地の上着内に風を送る電動の送風機付きジャンパーだ。・・・小型の電動送風機が付いており,内側に送り込まれる風が首筋と袖から抜けていく仕組みだ。」の記載がある(甲37)。
(ウ)「電気新聞」(2016年(平成28年)7月7日付け)において,「清水建設/新ヘルメット,空調服導入/熱中症予防へ現場に」の見出しの下,「空調服は既製品をベースにデザインを施した。ジャンパーに内蔵した2機の小型電動ファンで外気を取り入れ,ジャンパー内をドライにすることで汗を乾燥させ気化熱で体を冷やす仕組みとなっている。」の記載がある(乙11)。
(エ)「電気新聞」(2016年(平成28年)7月13日付け)において,「四電工/今夏から空調服導入/外線工事班に800着配備」の見出しの下,「空調服は電動の小型ファンによって服の中に風を通す仕組みで,・・・涼しく過ごすことができる。」の記載がある(乙12)。
(オ)「読売新聞」(2016年(平成28年)7月21日付け)において,「ポリエステル製長袖ブルゾン『空調服バッテリーセット』を抽選で2名様にプレゼント」の見出しの下,「服内部に風が通り抜ける新感覚の涼しさ『空調服』。2基の小型ファンで外気を取り込み,汗を蒸発させることによる気化熱で体を冷やす商品です。」の記載がある(甲26の142)。
(カ)「日刊建設工業新聞」(2016年(平成28年)7月25日付け)において,「建設現場で『水シャン』奨励」の見出しの下,「作業服の中に風を送り込むための小型ファンが付いた空調服を現場に従事する社員全員に支給している。」の記載がある(乙13)。
ウ セフト研究所及び請求人以外の第三者に係る特許及び実用新案おいて「空調服」の文字が「空気を調節する服」(空調機能を備えた服)程の意味合いで普通に使用されていること
(ア)登録実用新案公報(実用新案登録第3186431号,発行日:平成25年10月3日)において,「【考案の詳細な説明】」の「【背景技術】【0002】」には,「従来のファン露出型送風装置は,特許文献1で提示されているように空調服の背面にファンを取り付けた構造になっており,ファンに電力を供給して回転させることにより空調服で包まれた体に風を送り冷却していた。」の記載がある(乙24)。
(イ)登録実用新案公報(実用新案登録第3187092号,発行日:平成25年11月7日)において,「【考案の詳細な説明】」の「【背景技術】【0003】」には,「特許文献1には,かかる複数のファンが設けられた空調服が開示されている。この特許文献1に記載されている空調服では,衣服の裏面に設けられたポケットに二次電池である電源部を収納し,この電源部とファンとを電源ケーブルで接続することによって,ファンに電力を供給するようになっている。」の記載がある(乙25)。
(ウ)登録実用新案公報(実用新案登録第3197081号,発行日:平成27年4月16日)において,「【考案の詳細な説明】」の「【背景技術】【0002】」には,「服に付いた小型ファンで服の中に外気を取り入れ風流を起すことにより汗を気化させる空調服等が市販されている。」の記載がある(乙27)。
(エ)登録実用新案公報(実用新案登録第3206518号,発行日:平成28年9月23日)において,「【考案の詳細な説明】」の「【背景技術】【0002】」には,「空調服は,ファン付き作業服とも呼ばれ,服に付いた小型ファンが扇風機のように回り服の中に外気を取り入れ,体の表面に風を流すことにより汗が蒸発し,その際に発生する気化熱で体温を下げる。服の中を通った空気は,襟元と袖口から排出され涼しく快適な環境を作る仕組みの服として供されている。」の記載がある(乙28)。
(オ)公開特許公報(特開2016-56467,公開日:平成28年4月21日)において,「【発明の詳細な説明】」の「【背景技術】【0002】」には,「近年,モーターの小型化と電池の長寿命化の技術が発展してきたことに伴い,作業服の上着(ブルゾンなど上半身の外側に着衣する服)自体に小型ファン(送風機)を組み込んだ空調服(ファン付きジャケット,扇風機付き作業服などとも呼ばれている。)が普及し始めてきた(例えば,特許文献1)。」の記載がある(乙29)。
エ 小括
以上よりすると,「空調服」の文字は,「空気を調節する服」(空調機能を備えた服)程の意味合いを容易に認識させるものと認められること,セフト研究所及び請求人以外の第三者が「上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品」を指称する語として使用していることが認められ,当該新聞等の記載にはセフト研究所及び請求人に係る記載はないこと,セフト研究所及び請求人以外の第三者に係る特許及び実用新案において「空調服」の文字が「空気を調節する服」(空調機能を備えた服)程の意味合いで普通に使用されていることを踏まえると,請求人商標は,商品「作業服」に使用しても,これに接する需要者をして,当該商品が「空気を調節する作業服」(空調機能を備えた作業服)であることを容易に認識,理解させるというのが相当であって,商品の品質を記述的に表示したものと認識させるものといえ,取引者及び需要者にその出所を表示するものとは認識されないものといえるから,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。
(2)請求人商標「空調服」の周知性について
「空調服」の文字は,上記(1)エのとおり,一般的には自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
しかしながら,請求人は,請求人商標「空調服」が請求人により使用された結果,これが請求人商品の出所を表示するものとして取引者及び需要者に一般に広く認識されるに至った旨主張するので,以下検討する。
なお,請求人は被請求人が本件使用商標を不正に使用した旨主張し,その根拠として提出した被請求人のウェブサイト(甲17の1・14)は平成29年2月22日時点(以下「本件使用商標使用時点」という。)において印刷されたものであるから,当該時点について判断する。
ア 請求人は,腰部にファンの付いた作業服を「空調服」なる名称で販売を開始したのは平成16年であり,請求人が約10年間以上に渡り市場を独占してきた旨主張してその証拠として甲第1号証ないし甲第74号証(枝番号を含む。)を提出している。これらによれば以下のことが認められる。
(ア)請求人について
a 請求人は,会社成立を平成16年2月2日とし,その目的を「ファンを用いた空気流通方式を利用する衣料品等の開発,製造,販売」等とする法人である(甲3)。
b 請求人は,請求人商品の企画及び開発をするセフト研究所の子会社であり,請求人が主として請求人商品の販売を行っている(甲4)。
c 請求人は,請求人商品を2004年(平成16年)6月から製造,販売している(甲26の7?10)。
d 請求人は,請求人商品に関する平成17年度(2005年度)及び同18年度(2006年度)の「『空調服』カタログ」において「『空調服』は,左右の腰の辺りに取り付けられた2個の小型ファンによって,服の中に外気を取り込み,汗を蒸発させることによる気化熱で体を冷やすことによって,涼しく快適にすごして頂くための商品です。」と記載(甲7の1?2),その後も平成21年(2009年)から同29年(2017年)まで総合カタログを作成している(甲7の5?13)。
しかしながら,これらの商品カタログの頒布部数,頒布地域等は明らかでない。
e 請求人のウェブサイトにおいて,平成17年6月18日時点には,同年2月18日にテレビ朝日の番組「スクランブル」にて請求人商品が「空調服」の文字とともに紹介された旨の記載があること(甲5の1),並びに,同23年8月29日時点(甲6の3),同28年3月26日時点(甲5の2)及び同29年4月6日時点(甲9)には,暑さ対策として請求人商品が「空調服」の文字とともに紹介された。
f 請求人が発送したというダイレクトメール「空調服のご案内」(甲20)には,作成日及び頒布日が不明であるが,「2006年2月14日朝日新聞夕刊より」とする新聞記事が掲載され,「主な導入企業」の欄に,「トヨタ自動車株式会社,日産自動車株式会社,株式会社デンソー,株式会社ミサワテクノ,大和ハウス工業株式会社,清水建設株式会社,株式会社神戸製鋼」を含む16社が記載され,また,「製品群とオプション」の欄に,「下図のタイプ以外にも各種作業環境に対応したさまざまな布地や形状の空調服があります。」と記載されている。
(イ)各種新聞記事について
服の内部にファンで空気を送り込み,汗を蒸発させて体温を冷やす仕組みの作業服が「空調服」として紹介され,腰部にファンの付いた作業服の写真が掲載されている(甲26の2・5・7・11・12・17?19等)。
請求人商品は,平成14年8月25日から同28年5月2日において,71回紹介された(甲26の1?11・13・18・21・22・25?27・29・39・40・44・46?53・56・57・59・63・64・66?68等)。
(ウ)各種雑誌等について
服の内部にファンで空気を送り込み,汗を蒸発させて体温を冷やす仕組みの作業服が「空調服」として紹介され,腰部にファンの付いた作業服の写真が掲載されている(甲26の28・30?34・38・41・43等)。
請求人商品は,平成16年8月9日からから同28年2月27日において,57回紹介された(甲26の14・15・19・20・23・24・28・30?36等)。
そして,「戦略経営者」(2016年6月)には,「空調服/文字通り“クールな服”だ!」の見だしの下,「2010年1月期の売上高は1億3000万円に過ぎなかったが,2014年1月期は5億7000万円,そして2015年1月期は17億4000万円と一気に跳ね上がった。」と記載(甲26の139)がある。
(エ)テレビについて
請求人商品は,平成15年夏頃から同27年7月30日において,26回紹介された(甲23の1,甲24の3・6・7・10・11・21・24・26?29等)。
(オ)請求人は,空調服の売上は,平成16年度6000万円,17年度1億2500万円,23年度2億3000万円,25年度4億5800円,26年度16億8800万円,27年度22億8800万円,28年度23億100万円となり,請求人商品の販売合計額は85億1300万円を超えた(甲4,甲29)旨主張するが,これを裏付ける証拠の提出はない。
(カ)請求人は,「空調服」の文字を請求人の商品名か,請求人の企業名を表すものとして使用している証拠として,甲第37号証ないし甲第60号証,甲第68号証ないし甲第70号証を提出するが,甲第37号証,甲第38号証,甲第45号証,甲第66号証の166,甲第68号証の29,甲第70号証の139及び140を除き,これらの証拠は,本件使用商標使用時点以降に作成されたものである。
イ 判断
上記アによれば,<1>請求人は,請求人商品を2004年(平成16年)6月から製造,販売しており,2015年(平成27年)1月期の売上は17億4000万円であるが,その市場における販売シェアは明らかであるとはいえないこと,<2>請求人商品が掲載された商品カタログが作成されているものの,その頒布部数,頒布地域等は明らかでないこと,<3>請求人商品の広告宣伝等については,新聞での掲載は,平成14年から同28年の約14年間で71回,雑誌での掲載は,平成16年から同28年の約12年間で57回,テレビでの広告は,平成15年から同27年の約12年間で26回行われたが,いずれもそれぞれの期間との関係からみて決して多いものとはいえないこと,<4>上記ア(カ)の証拠は,本件使用商標使用時点以降に作成されたものであって,本件使用商標使用時点において「空調服」の文字が,特定人(請求人)の出所を表示するものとして取引者及び需要者に広く認識されるに至っていたか判断する証拠とはなり得ないこと,が認められる。
したがって,「空調服」の文字は,本件使用商標使用時点において,請求人により使用された結果,これが請求人商品の出所を表示するものとして,取引者及び需要者に広く認識されるに至ったものということはできない。
2 本件商標と本件使用商標との類否について
(1)本件商標について
本件商標は,「空調風神服」の漢字を標準文字により表してなるところ,これらの文字は,同一の書体をもって,外観上まとまりよく一体的に表されているものであるから,構成文字全体もって,一体不可分の商標を表したと認識されるとみるのが相当である。
してみると,本件商標は,その構成文字に相応して「クウチョウフウジンフク」の称呼を生じるものであって,構成文字全体として,特定の観念を有しない造語よりなるものと認めることができる。
(2)本件使用商標について
本件商標権者は,自己のウェブサイト(甲17)において,別掲1のとおりの構成からなる本件使用商標を商品「作業服」について使用していたものと認められる。
そして,本件使用商標は,別掲1のとおり,ゴシック体風の書体により,「空調風神服」の漢字を表してなるところ,その構成中「風神」の文字をやや細く表しているものの,外観上まとまりよく一体的に表した構成からなるものである。
してみれば,本件使用商標は,全体の漢字に相応して「クウチョウフウジンフク」の称呼を生じ,特定の観念を有しない造語よりなるものと認めることができる。
(3)本件使用商標の使用に係る商品
上記1(2)のとおり,被請求人は,本件使用商標を自社ウェブサイト(平成29年2月22日(本件使用商標使用時点)出力)において商品「作業服」について使用(甲17の1・14)していることが認められるから,その使用に係る商品は,本件商標の指定商品中の「作業服」であるといえる。
(4)本件商標と本件使用商標との対比
本件商標と本件使用商標とは,外観上,その一部を太文字にしているか否かの差異があるものの,「空調風神服」の構成文字の全てを共通にし,それぞれの構成文字から生じる「クウチョウフウジンフク」の称呼が同一であるから,両者は外観が類似し,称呼を同一にする類似の商標である。また,観念においても相違があるものではない。
(5)小括
以上によれば,本件商標権者は,本件使用商標使用時点において,本件商標の指定商品又はこれに類似する商品について,本件商標に類似する本件使用商標の使用をしていたものと認めることができる。
3 他人の業務に係る商品との混同について
本件使用商標は,ゴシック体風の書体により,「空調風神服」の漢字を表してなるところ,その構成中「空調」及び「服」の文字を太く表し,「風神」の文字をやや細く表してなるものであるから,「空調」及び「服」の文字が需要者に看取される余地があるものといえる。
しかしながら,「空調服」の文字は,上記1(1)エのとおり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり,かつ,上記1(2)イのとおり,本件使用商標使用時点において,請求人により使用された結果,これが請求人商品の出所を表示するものとして,取引者及び需要者に広く認識されるに至ったものということはできないものであるから,自他商品の識別標識の機能を果たすものとはいえない。
そうすると,本件使用商標は,これに接する取引者,需要者が,その構成中「空調」及び「服」の文字に目をとめたとしても,請求人使用商標又は請求人商品を想起するとはいえない。
したがって,本件使用商標は,請求人商品と出所の混同を生じるものということはできない。
4 商品の品質の誤認について
「空調服」の文字は,上記1(1)のとおり,商品「作業服」について使用しても,「空気を調節する作業服」(空調機能を備えた作業服)ほどの意味合いを看取させる語であるところ,本件商標権者は,本件使用商標を「空気を調節する作業服」(空調機能を備えた作業服)に使用しているから,これに接する取引者,需要者をして,商品の品質の誤認を生じるものをしたということはできない。
5 故意について
請求人は,「空調服」との名称が全国的に周知であることを認識していた被請求人は,この名声にフリーライドして自社製品を販売しようとして故意に本件使用を行った旨主張する。
しかしながら,「空調服」の文字は,上記1(1)エのとおり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり,かつ,上記1(2)イのとおり,本件使用商標使用時点において,請求人により使用された結果,これが商品の出所を表示するものとして,取引者及び需要者に広く認識されるに至ったものということはできないから,被請求人による本件使用商標の使用について,商標法第51条第1項所定の「故意」を認めることはできない。
6 請求人の主張について
請求人は,市場独占期間が約10年以上もの長期に渡り,後発品が誕生してからの期間が僅かに約3年であるという事実は,「空調服」の普通名称化を妨げる事情である旨主張する。
しかしながら,そもそも「空調服」の文字は,各種新聞,雑誌による掲載によれば,特定人の出所を表示する商標として認識され得る使用はされておらず,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであったというべきである。そして,セフト研究所及び請求人以外の第三者が,「空調服」の文字を「上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品」を指称する語として使用していたことからしても,たとえ,請求人商品が,その特許権を基に独占されていたとしても,それが直ちに「空調服」という文字を独占使用していたことに繋がるものではない。
しかも,J-PlatPatによる特許検索結果(甲10),特願2013-212139号に係る手続補正書・特許査定の写し(乙8,乙9)及び職権調査によれば,別掲2のとおり,請求人の親会社であるセフト研究所は,平成15年から同26年にかけて,請求人商品に関連して有効な特許を有することが認められるものであり,請求人商品の独占は,請求人の特許権が有効に存続している間,他者による模倣品・類似品の発生を抑制した結果と考えるのが自然である。すなわち,特許権者に一定期間の発明の独占が認められれば,その結果として,その発明の権利範囲に含まれる商品又はこれに類似する商品が,他人の商品に採用されることは少ないと考えざるを得ない。
そうすると,仮に市場独占期間が約10年以上であったとしても,当該市場独占が,特許権による独占とは無関係であるとはいえないから,「空調服」の文字の普通名称化を妨げる事情と解することもできない。
したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。
7 むすび
以上のとおり,本件商標権者による本件商標の指定商品又はこれに類似する商品についての本件商標に類似する商標(本件使用商標)の使用は,故意に他人である請求人の業務に係る商品と混同を生じるものであるとはいうことができず,商品の品質の誤認を生じるものともいえないから,商標法第51条第1項の要件に該当しないものである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第51条第1項により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件使用商標(色彩については原本参照。)


別掲2 セフト研究所の保有する特許について
甲第10号証,乙第8号証,乙第9号証及び職権調査によれば,セフト研究所は平成15年から同26年にかけて,請求人商品に関連して,以下の有効な特許を有することが認められる。
a 請求人を権利者とする特許登録第4399765号公報は,【発明の名称】を「ファン露出型空調服用のファン取付装置及びファン露出型空調服用の送風装置」とするものであり,【特許請求の範囲】【請求項1】・・・実質的にファンと一体化される,服の内側に接して設ける内部取付部品と,・・・前記ガード柱間の開口部を他方の空気出入部とすることを特徴とするファン露出型空調服のファン取付装置。と掲載されている。【請求項2】・・・服の内部に接して設ける,内部取付部品と,を具備し,・・・前記ファン取付用孔部に取り付けことを特徴とするファン露出型空調服用のファン取付装置。と掲載されている。
また,【図1】には腰部にファンの付いた空調服を着衣したときの概略図が表されている。
そして,当該特許は,平成15年6月26日に出願され,その期間満了日を令和5年6月26日とするものである(職権調査)。
b 請求人を権利者とする特許登録第6158675号公報は,【発明の名称】を「空調服の空気排出口調整機構,空調服の服本体及び空調服」とするものであり,【特許請求の範囲】【請求項9】・・・空気排出口調整機構を備えた空調服の服本体。【請求項10】・・・空気排出口調整機構を備えた空調服。と掲載されている。
そして,当該特許は,平成25年10月9日に出願され,その期間満了日を令和15年10月9日とするものである(職権調査)。
c 請求人を権利者とする特許登録第6319714号公報は,【発明の名称】を「空調服」とするものであり,【特許請求の範囲】【請求項1】身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内する服地部と,・・・送風手段に電力を供給する電源手段と,・・・前記空気案内手段の袖口と反対側の端部が開状態となっていることを特徴とする空調服。と掲載されている。
そして,当該特許は,平成26年3月27に出願され,その期間満了日を令和16年3月27日とするものである(職権調査)。

審理終結日 2019-11-29 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-24 
出願番号 商願2016-54136(T2016-54136) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (W25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 板谷 玲子
平澤 芳行
登録日 2016-12-09 
登録番号 商標登録第5903051号(T5903051) 
商標の称呼 クーチョーフージンフク、クーチョーフージン 
代理人 水崎 慎 
代理人 高橋 克宗 
代理人 福田 伸一 
代理人 弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 
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