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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W31 審判 全部申立て 登録を維持 W31 審判 全部申立て 登録を維持 W31 審判 全部申立て 登録を維持 W31 審判 全部申立て 登録を維持 W31 審判 全部申立て 登録を維持 W31 |
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管理番号 | 1366324 |
異議申立番号 | 異議2020-900043 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-02-17 |
確定日 | 2020-09-19 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 登録第6200624号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6200624号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6200624号商標(以下「本件商標」という。)は,「もって」の文字を標準文字で表してなり,平成30年11月26日に登録出願,第31類「食用菊,野菜」を指定商品として,令和元年10月28日に登録査定,同年11月22日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 1 登録異議申立人「山形県」(以下「申立人A」という。)の理由 申立人Aは,本件商標は商標法第3条第1項第1号,同項第2号,同項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきものであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第51号証(表記にあたっては,「甲A○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 (1)商標法第3条第1項第1号及び同項第2号該当性 本件商標は,食用菊を含む食品の分野で,取引者,需要者の間で,「食用菊」あるいは,ある種の食用菊を示す愛称若しくは俗称又は慣用的な商標として,「もってのほか」及び「もって菊」の名称とともに,取引者及び一般需要者の間に広く知られ,普通に使用されている事実がある(甲A3?甲A51)。 したがって,本件商標は,その指定商品中「食用菊」の普通名称又は慣用商標にあたるものであるから,商標法第3条第1項第1号及び同項第2号に該当する。 (2)商標法第3条第1項第3号該当性 本件商標は,食用菊のうち,代表的な系統群で,シャキシャキとした触感が特徴の「袋菊」を称する名称として取引者又は需要者の間で使用されており,食用菊のうちのある特定の品質を有する商品を表示すると認識される。 したがって,本件商標は,「食用菊」に使用する場合,商標法第3条第1項第3号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第16号該当性 本件商標は,食用菊を表示する標章として普通に用いられているから,本件商標をその指定商品中「食用菊」以外の商品に使用した場合,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるため,商標法第4条第1項第16号に該当する。 2 登録異議申立人「さがえ西村山農業協同組合」(以下「申立人B」という。)の理由 申立人Bは,本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきものであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証(枝番号を含む。)(表記にあたっては,「甲B○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号該当性 本件商標は,「食用菊」の品種「延命菊」で,山形産のものを「もってのほか」というほか,その略称的な名称として,「もって菊」,「モッテ菊」,「本もって」,「ほんもって」,「長寿もって」,「紅もって」,「草生もって」,「中もって」「黄もって」(以下これらをまとめて「もって菊等」という。)と称して取引されてきているものに共通する「もって」と全く同一の語からなる商標であり,山形県内はもとよりのこと,秋の特別の食用菊として全国的に知れ渡り,使用されてきていることから,他人の周知商標と同一又は類似の商標であって,同一又は類似の商品に使用するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性 食用菊で著名な商標「もって菊」あるいは「菊もって」の商品との間で,本件商標は,その指定商品中「野菜」に使用されると,他人の業務に係る商品と混同を生じさせる商標となる。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 第3 当審の判断 1 申立人A提出の本件商標の登録査定時前の証拠によれば,以下のとおりである。 (1)「花図鑑 野菜+果物」(株式会社 草土出版 平成20年4月10日発行:甲A3)には,食用菊の頁に「延命楽/紅紫色の八重咲き中輪種。・・・山形県下では‘もってのほか’と呼ばれる。」の記載がある。 (2)「家庭菜園全科-栽培と利用のポイント-/葉もの・茎もの類」(社団法人 農山漁村文化協会 2007年3月31日発行:甲A4)には,「キクのこと」の項に「もう1つの代表品種,淡い紫色の『延命楽』は『もってのほか』・・『おもいのほか』・・『かきのもと』・・・と別称される。」の記載がある。 (3)「やまがた街角第26号」(やまがた街角編集室 平成17年10月1日発行:甲A8)には,「独特の香りと風味,味の良さで『食用菊の横綱』と評価されるのが,淡い紫色の『もってのほか』だ。正式には『延命楽』という品種だが,『もってのほか』の愛称の方が広く知られている。」の記載があり,「山形のうまいもの」(おいしい山形推進機構 平成30年3月発行:甲A9)にも同様の内容の記載がある。 (4)「DNA多型Vol.20」(株式会社 東洋書店 2012年5月25日発行:甲A12)には,「山形県の代表的な食用ギクである‘もってのほか’を例に挙げても,晩もって’や‘早生もって ’など多くの同名・類似名系統が存在し,それらの特性が異なっても同じ名称で‘もってのほか’として販売されている現状がある。」の記載がある。 (5)「地域農産物の品質・機能性成分総覧」(株式会社サイエンスフォーラム 2000年5月30日発行:甲A16)には,「第4節 山形県/食用菊」の頁に,「表-1 食用菊の主な異名同種または類似品種」の中に「品種/延命楽」が「延命楽(山形),もってのほか(山形),かしろ(山形),かきのもと(新潟),おもいのほか(新潟)」の記載がある。 (6)「朝日新聞」(1991年10月13日:甲A20)には,「食用菊『もってのほか』考」の見出しの下,「生産者らが『ワセもって』と呼ぶこの菊,染色体を調べてみると,絶品と誉れ高い『もってのほか(本もって)』とは,実はまったくの別物。」の記載及び「読売新聞」(1993年12月10日:甲A21)には,「山形の味」,「もってのほか」の見出しの下,「『もってのほか』の名は,本県のオリジナルだが,由来は諸説紛々。・・・寒河江市農協の『もってのほか』摘み取りツアーは・・・」の記載がある。 (7)「婦人画報(2016年3月号)」(ハースト婦人画報社:甲A22)には,「おいしい花,食用菊のふるさとへ」の見出しの下,「山形では『もってのほか』というユニークな名前で親しまれている食用菊の代表的な存在『延命楽』。」の記載がある。 (8)「日本の野菜文化史事典」((株)八坂書房 2013年9月25日発行:甲A23)には,「袋菊」の項に「品種名は・・・山形県庄内地方では延命楽,村山地方ではモッテノホカ,あるいは茶箋と呼んでいる。」の記載がある。 (9)「山形の自然とおいしい食べものたち」(大原博文著 2018年6月30日発行:甲A25)には,「食用菊」の頁に「薄紫の色合いと独特の歯ごたえの『もってのほか』や『もって菊』という名前で呼ばれる食用菊もあります。・・・淡い紫色の食用菊,『延命楽』『ふくろ菊』という品種もあるようですが,『もってのほか』という愛称の方が有名です。」の記載がある。 (10)「北国の野菜風土誌」((株)東北出版企画 昭和51年12月20日発行:甲A26)には,「袋菊」の項に「山形市や上山市付近のものは『もってのほか』とか『茶箋』と呼ばれ,庄内地方では『延命楽』,新潟県では『カキノモト』と呼んでいる。」の記載がある。 (11)「野菜情報サイト野菜ナビ」(2014年11月1日登録日:甲A29)のウェブサイトには,「食用菊 もってのほか」の見出しの下,「きれいなピンク色の食用菊『もってのほか』。『かきのもと』や『延命楽』などとも呼ばれ・・・」の記載がある。 (12)「東京都青果物商業協同組合 八百屋へ行こう!」のウェブサイト(甲A31)には,「八百屋塾2012」の中に,「2012年10月21日 第7回?商品情報 山形県の食用菊『もってのほか』」の見出しの下,「寒河江で食用菊『もってのほか』を栽培しています。・・・最近は,『もってのほか』というネーミングが面白い,ということで,さまざまなところで取り上げていただけるようになりました。」,「『もって菊』は,管弁といって筒状ですが,9月から平弁の『紅もって』も出しています。」の記載がある。 (13)「丸友中部青果」(2014年1月11日:甲A41)のウェブサイトには,「もって菊」の見出しの下,商品パッケージの中央に「JAやまがた/もって菊」と表示のある商品の写真が掲載され,「『もってのほか』,『延命楽』,『かきのもと』,『おもいのほか』とも呼ばれ,色や香りを楽しむ食材です。」の記載がある。 (14)「JAやまがた 野菜出荷規格集」(JAやまがた広域野菜部会 平成11年12月:甲A42)には,食用菊の頁に,階級の区分の一つとして,「もって系」の記載があり,「令和元年度 山形県青果物等出荷規格集」(山形県農林水産部6次産業推進課:甲A43)の「食用ぎく」の頁にも同様の記載がある。 (15)平成28年1月22日開催の「JAやまがた広域食用菊部会出荷反省検討会」に関する「会議・研修会(出張)報告書」(平成28年1月25日:甲A45)には,「生産・出荷状況,販売実績の報告事項の中に「今年は特に,促成菊『岩風』,夏菊『寿』,もって系『紅もって』『ムラサキ』の減少が目立ち・・・」の記載及び,品種別販売実績表の品種欄には,「紅もって」,「ムラサキ」と「もってのほか」の記載があるものの,この資料は,JAやまがたの関係者のみの目に触れるものというべきである。 (16)「もって(モッテ)」との記載があるのは以下のとおりである。 ア 「平成28年度『全国農林水産祭』販売計画(案)」(平成28年11月11日?12日)には,販売品目中に「食用菊(モッテ)」の記載がある(甲A48)ところ,この資料は,当該全国農林水産祭りの関係者のみの目に触れるものというべきである。 イ 「平成29年度11月10日?11日 第56回農林水産祭 実りのフェスティバル(サンシャインシティ)」の標題とともに表示されている「おいしい山形ペロリンフェアー」の写真内のラベルに,「食用菊(モッテ)」と表示がある(甲A49)ところ,当該フェスティバルの来場者数は不明であって,これをもって「もって(モッテ)」の文字が一般需要者に広く知られていたということはできない。 ウ 「広域食用菊部会『寿』目揃え会」(日時:令和元年7月18日)には,「出荷要領・出荷体制について(夏菊)」の出荷規格の項に「寿」及び「もって」と記載されている(甲A50)ところ,この資料は,当該広域食用菊部会の関係者のみの目に触れるものというべきである。 (17)小括 上記(1)ないし(16)からすれば,山形県内では,食用菊の品種名である「延命楽」を「もってのほか」と称していることは認められる。 しかしながら,食用菊について,「もって(モッテ)」と表示しているのは,わずか3例であって,「もって(モッテ)」が「もってのほか」やその他の食用菊を示すものやそれらの略称として広く知られているともいい難い。また,当審において職権で調査するも,「もって(モッテ)」の文字が「もってのほか」や他の食用菊を示すものやそれらの略称,あるいはそれらの品質を表すものとして,一般に使用されていると認めるべき事情を発見することもできない。 2 商標法第3条第1項第1号,同項第2号及び同項第3号該当性について 上記1のとおり,本件商標の登録査定時前に,食用菊について「もって(モッテ)」と表示している例があるとしても,これが,食用菊の普通名称及び慣用商標を表すものとして,広く使用され知られているとはいい難く,食用菊の品質を表示するものとして一般に用いられているものともいえず,また,本件商標に接する取引者,需要者が,当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第1号,同項第2号及び同項第3号のいずれにも該当するものといえない。 3 商標法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は,上記2のとおり,本件商標の食用菊の品質を表示するものではないから,これを本件商標の指定商品中「食用菊」以外の商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれのないものといわなければならない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。 4 申立人Bは,食用菊の品種名が「延命楽」で,山形県産のものを「もってのほか」というほか,その略称である「もって菊等」と称して全国的に知れ渡っているものと共通する「もって」と本件商標は同一であることから,本件商標は,他人の周知商標と同一又は類似の商標である旨主張しているところ,提出の証拠によれば,以下のとおりである。 (1)検索サイト「Google」において,キーワードとして「もって菊」を入力して検索すると,159件がヒットし,その中に「もって」を含む食用菊に係る情報が125件検出された(甲B2)とするが,本件商標の登録査定前の「もって菊」の使用は,約50件であり,これらからは,「もって」あるいは「もって菊等」の文字が,特定の者の業務に係る商品を表示するものとして使用されているものとはいい難い。 (2)山形県内では,食用菊の品種名である「延命楽」を「もってのほか」と称していることは認められる(甲B3のNo.7-1等)。 (3)食用菊について,山形県立園芸試験場,山形県農業総合研究センター,JAさがえ西村山,山形県農業振興機構,山形大学,鶴岡市等によって,「もってのほか」とともに,「もって」,「もって菊等」の使用が散見される(甲B3)ものの,これをもって,「もってのほか」又は「もって菊等」の略称が「もって」であるともいい難く,また,これらの使用が誰の業務に係る商品であるかは,特定できないものである。 (4)小括 上記(2)のとおり,山形県においては,食用菊の品種名「延命楽」が「もってのほか」と称されているとしても,「もってのほか」又は「もって菊等」の文字が,特定できる他人の業務に係る商品を表示するものとして広く知られているものであると認めるべき事情は見いだせない。また,食用菊について「もって」を表示している例はわずかであって,「もって」の文字が「もってのほか」又は「もって菊等」の略称ともいい難く,特定の者の業務に係る商品を表示するものとして広く知られているというべき事情も見いだせない。 5 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について 上記4(3)のとおり,「もって」,「もってのほか」又は「もって菊等」の文字は,特定の者の業務に係る商品を表示するものとして広く知られているものとはいえないものであって,「もって」の文字が「もってのほか」又は「もって菊等」の略称ともいい難いものであることからすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者が,「もってのほか」又は「もって菊等」や,他人の業務に係る商品を連想又は想起することはなく,その商品が他人の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。 その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項第1号,同項第2号,同項第3号,同法第4条第1項第16号,同項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2020-09-08 |
出願番号 | 商願2018-145766(T2018-145766) |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W31)
T 1 651・ 13- Y (W31) T 1 651・ 12- Y (W31) T 1 651・ 11- Y (W31) T 1 651・ 272- Y (W31) T 1 651・ 271- Y (W31) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 駒井 芳子 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
須田 亮一 平澤 芳行 |
登録日 | 2019-11-22 |
登録番号 | 商標登録第6200624号(T6200624) |
権利者 | 須藤 幸雄 |
商標の称呼 | モッテ |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 佐々木 實 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 小川 護晃 |
代理人 | 高橋 菜穂恵 |