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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W3536
審判 一部申立て  登録を維持 W3536
審判 一部申立て  登録を維持 W3536
審判 一部申立て  登録を維持 W3536
審判 一部申立て  登録を維持 W3536
審判 一部申立て  登録を維持 W3536
審判 一部申立て  登録を維持 W3536
管理番号 1366319 
異議申立番号 異議2019-900304 
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-18 
確定日 2020-09-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6165207号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6165207号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6165207号商標(以下「本件商標」という。)は、「CLUB ING」の欧文字を横書きしてなり、平成30年8月3日に登録出願、別掲のとおりの役務を指定役務として、令和元年6月7日に登録査定、同年7月26日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第729149号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ING」の欧文字よりなり、1999年11月16日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2000年(平成12年)3月14日に国際商標登録出願(事後指定)、第35類及び第36類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成15年3月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、上記引用商標1のほか、「ING」、「アイエヌジー」の文字を構成中に含む以下のアないしセであり、これらの指定役務、登録出願日(国際商標登録出願(事後指定))及び設定登録日はそれぞれの商標登録原簿又は国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
以下、引用商標1とアないしセをまとめて「引用商標」という。
ア 登録第3331047号商標
イ 登録第3331048号商標
ウ 登録第3064807号商標
エ 登録第3086722号商標
オ 登録第3086723号商標
カ 登録第4115610号商標
キ 登録第4115611号商標
ク 登録第4558360号商標
ケ 登録第4558361号商標
コ 登録第5190388号商標
サ 登録第5190389号商標
シ 国際登録第769167号商標
ス 国際登録第769169号商標
セ 国際登録第770076号商標
(3)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するとして引用する商標は、「ING」の欧文字よりなり、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表す商標として、広く知られていると主張するものである(以下「ING商標」という。)。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、その指定役務中、第35類「全指定役務」及び第36類「全指定役務」(以下「申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号及び第43条の3第2項によって取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標は、欧文字の「CLUB」と「ING」を組み合わせた、「CLUB ING」の文字をサンセリフ体で書してなるところ、本件商標からは、「クラブアイエヌジー」、「クラブイング」、「アイエヌジー」又は「イング」の称呼が生じる。「CLUB」は、「クラブ、同好会、会員制組織」を意味し、「ING」は、特定の意味合いを認識し得ない、いわゆる造語と認められるか、金融、保険、資産運用を業務とする分野において広く知られている申立人(以下「ING社」という場合がある。)を観念させるものである。
したがって、本件商標は、全体として特定の意味合いを生じないか、「ING社の同好会、会員制組織」といった観念を生じる。
イ 引用商標は、「アイエヌジー」及び「イング」の称呼、又は全体の文字に相応した称呼以外に「アイエヌジー」の称呼、「ING社」を観念させる。
ウ 以上から、本件商標と引用商標とは、「アイエヌジー」、「イング」の称呼、「ING社」の観念を共通にする類似の商標であり、本件商標の指定役務中、第35類及び第36類の役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 「ING商標」の周知・著名性について
申立人(アイエヌジー グループ エヌ.ヴィ.(ING GROEP N.V.)」は、アムステルダムに本社を置く、オランダ発祥の総合金融機関として1991年に誕生し(甲17)、1845年設立の世界的な保険会社「ナショナーレ・ネーデルランデン」と、オランダの大手銀行「NMBポストバンク」との合併により誕生しており、「ING商標」を用いて、保険業と銀行業が融合された世界的な金融コングロマリットとして発展してきた。
1997年にニューヨーク証券取引所に上場し、M&Aも積極的に行い、その後、世界金融危機からの再建として、保険部門(資産運用業務を含む)と米国部門(ING U.S.)を売却し、現在は、ベネルクスを主な拠点に、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、アジア・パシフィック、南北アメリカで、「ING商標」を用いて、主に銀行業務を行っている。
日本においては、「アイエヌジー バンク エヌ・ヴィ 東京支店」がホールセール・バンキングを行っており、法人などの大口顧客を対象に営業している(甲18)。
また、申立人は、スポンサー活動にも積極的に参加している(甲19)。
こうした長年の営業努力や広報活動を通じて、申立人及び「ING商標」の知名度・認知度は、世界中に拡大するに至り、需要者・取引者数は増大を続け、2018年には、1兆ドル以上の資産を持つ世界の巨大銀行トップ28行にランクインしている(甲20)。特に、オランダ国内の民間商業銀行セクターでは、グループ総資産額、個人預金残高、企業向け貸出残高、住宅ローン残高、金融資産残高のいずれにおいても首位に立っている(甲21)。拠点を有する国は、38か国・地域にのぼり、ベネルクス3国、ドイツ、フランスなど欧州(トルコを含む。)9か国及びオーストラリアの計13か国では、個人や中小企業を対象にした小口の預金・貸出、為替取引等を行うリテール・バンキングを主業務にしており、その他の国では、大企業・政府・機関投資家等を相手に大口の預金・貸付、為替取引等を行うホールセール・バンキングを主としている(甲21)。
最近においても、申立人の取り組みがメディアで紹介される機会が多くある(甲22?甲24)。また、申立人自体の活動以外にも、他の金融関連のニュースにコメントを出すなど、業界において大きな影響を与えている(甲25?甲27)。
日本においては、前身の「ナショナーレ・ネーデルランデン」が1986年4月1日に国内で営業開始し、1995年1月24日には、株式会社設立、1997年1月1日に「アイエヌジー生命保険株式会社」に商号変更したことに始まり、「ING商標」を用いて、1999年には、日本初の変額年金保険を発売開始、2001年にインターネットサービス「ING Link」の提供開始、2004年サービスセンター開設、以降は新規の保険商品を次々とリリースし、逓増型定期保険のパイオニア、法人向け事業保険のエキスパートとして、リーディングポジションを堅持してきた(甲28)。
平成25年度の契約業績によれば、新契約高2兆1,642億円、保有契約高8兆7,663億円、新契約年換算保険料660億円、保有契約年換算保険料4,858億円、保険料等収入3,240億円、当期純利益209億円、総資産3兆3,568億円といった実績を残し、スタンダード&プアーズ社の財務力格付けにおいても、「A」を取得している(甲29)。
2013年に、申立人の保険部門が「NNグループ」となり、ユーロネクスト・アムステルダムに上場したことで、「アイエヌジー生命保険株式会社」も2015年4月1日に「エヌエヌ生命保険」に商号変更し、申立人から分離・独立することとなった(甲28?甲31)ことから、現在日本で活動しているのは、前述の「アイエヌジー バンク エヌ・ヴィ 東京支店」となる。
以上より、「ING商標」は、金融、保険、資産運用の分野において、日本を含む世界約40か国にわたって広く使用されてきており、取引者の間にも広く認識されていること明らかであるから、商標法第4条第1項第10号にいう「需要者の間に広く認識されている商標」であるといえる。
イ 商標及び指定役務の類否について
本件商標において、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たし得る部分は、「ING」の文字部分であり、当該部分に強い注意力が注がれることから、「ING」の部分から称呼、観念が生じ得る。
本件商標の要部と「ING商標」を対比すると、両者は「アイエヌジー」の称呼を共通にし、いずれも金融、保険、資産運用を業務とする分野において広く知られている「ING社」を想起させ得るものである。
そして、本件商標の「CLUB」部分は、申立役務との関係で自他役務識別力を有しないことから、それが付加結合されていない「ING商標」に類似するものである。
したがって、総合的に判断すると、両商標は互いに相紛らわしい類似の商標である。
ウ 以上より、本件商標は、他人の周知・著名商標に類似する商標であり、かつ、その役務又は類似する役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と「ING商標」は、会員制組織等の団体名を表す場合に他の語の前後に付して用いられる、自他役務識別力の弱い「CLUB」部分の有無の差異にすぎないことから、両者は、極めて類似するといえる。
また、「ING商標」は、日本のみならず、世界中で広く知られており、特定の意味を有しない造語からなり、申立人のハウスマークとして使用され、申立人の歩みを考慮すれば、今後も業界の枠を超えて多角経営する可能性が十分考えられる。
本件商標は、「ING商標」と「ING」の文字を共通にしている上、「金融、保険、資産運用」に関連する役務などを指定しており、いわゆる狭義の混同だけでなく、広義の混同も生ずるおそれがある。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、外国で周知な他人である申立人の「ING商標」と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願されたもの、又は申立人の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願されたものと考えられる。
したがって、本件商標を使用した場合、仮に出所の混同のおそれまではないとしても、出所表示機能を希釈化させたり、その周知・著名な「ING商標」に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させたりするおそれがある。
以上より、本件商標が不正の目的をもって使用されること明らかであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
日本において周知・著名な「ING商標」に類似する商標について、登録を受けることは、申立人の名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものと認められるため、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)「ING商標」の周知・著名性について
ア 申立人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)金融情報サイト「iFinance」(甲17)には、「INGグループ」の見出しの下、「オランダのアムステルダムに本社を置く、銀行業を中心とした世界的な金融グループです。」等の紹介、沿革が記載され、「INGグループのロゴマーク」の項には、「発祥の地であるオランダ王国の形を模した『ライオン』がシンボルとなっています。」の記載がある。
また、「ウィキペディア」(甲19)には、「INGグループ」について、前記同様の紹介がされ、「ING」の文字の右横にオレンジ色のライオン様の図形が配されたロゴマーク(以下「使用標章」という。)が表示されている。
(イ)「金融機関コード検索のギンコード.com」(甲18)において、「アイエヌジー バンク エヌ・ヴィ|東京支店」について、使用標章とともに、「金融機関名」として「アイエヌジー バンク エヌ・ヴィ」、「設立:1985年」の記載がある。
(ウ)ビジネスニュースサイト「BUSINESS INSIDER JAPAN」(甲20)には、「世界の巨大銀行トップ28-資産1兆ドル以上」の見出しの下、「26位 INGグループ(ING Group)、オランダ」として、使用標章の写真が表示されている。
(エ)甲第21号証は、申立人が「一般財団法人ゆうちょ財団の貯蓄経済研究」のうち、「個人金融に関する外国調査」の「オランダ」のページからの抜粋(写し)と主張するものであって、そこには、オランダ国内大手銀行の総資産額・個人預金残高・企業向け貸出残高・住宅ローン残高(2014年?2017年)が示され、「グループ総資産額で首位に立つのが民間商業銀行のING銀行」の記事がある。
(オ)申立人の取り組みが紹介されているとする甲第22号証は、ブログ記事である。また、「オランダING銀行 SNS向け簡単決済モバイルアプリ」(甲23)、「オランダING銀行、世界初のサステナビリティ連動デリバティブを提供へ」(甲24)の記事及び、他の金融関連のニュースにコメントを出しているとするもの(甲25?甲27)のうち、甲第23号証は、2019年11月15日に出力されたものとみられ、甲第24号証ないし甲第27号証は、いずれも本件商標の登録出願日後の記事である。
(カ)我が国において、申立人の保険部門は、商号を1997年1月1日に「アイエヌジー生命保険株式会社」に変更(甲28)、2015年4月1日に「エヌエヌ生命保険株式会社」に変更し、申立人から分離・独立していることが認められる(甲28?甲31)。
(キ)一方、これらの申立人の提出に係る甲各号証からは、「ING商標」の使用状況、宣伝広告事実等は確認できない。
イ 以上からすると、申立人である「INGグループ」は、銀行業を中心とした世界的な金融グループであって、ING銀行は、1兆ドル以上の資産を持つ世界の巨大銀行トップ28行にランクインし、オランダ国内の民間商業銀行セクターでは、グループ総資産額、個人預金残高、企業向け貸出残高、住宅ローン残高、金融資産残高のいずれにおいても首位を占める銀行であることがうかがえるものであることからすれば、その営業規模は大きいものと推察される。
しかしながら、申立人の提出に係る証拠は、「ING商標」についての使用状況、宣伝広告事実等に関するものが提出されていないことから、「ING商標」の周知・著名性の程度を推し量ることができない。
また、我が国において、「アイエヌジー バンク エヌ・ヴィ」という名称の金融機関、「アイエヌジー生命保険株式会社」という名称の生命保険会社が存在していたとしても、これらの会社が「ING商標」を使用している証左は見いだせない。
ウ そうすると、「ING」の文字よりなる「ING商標」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国及び外国において、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表すものとして、広く知られていたとはいい難い。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「CLUB ING」の欧文字を書してなるところ、構成中の「CLUB」の語が「クラブ、同好会、会員制組織」を意味するものであるとしても、「ING」の文字は「現在分詞・動名詞を造る接尾辞」にすぎず、これらを合わせた「CLUB ING」の文字は、辞書等に記載のないことから、特定の観念を生ずるとはいえないものである。
そして、当該構成文字に相応して生ずる「クラブアイエヌジー」又は「クラブイング」の称呼は、いずれもよどみなく一連に称呼し得るものである。
また、上記(1)のとおり、「ING」の文字よりなる「ING商標」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国及び外国において、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表す商標として、広く知られていたとはいい難いものであって、他に「ING」の文字部分が取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情、及び、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるに足りる事情は、いずれも見いだせない。
そうすると、本件商標は、「CLUB ING」の構成全体をもって認識され、把握されるというべきものであるから、その構成文字に相応して「クラブアイエヌジー」又は「クラブイング」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1
引用商標1は、上記2のとおり、「ING」の欧文字よりなるところ、「ING」の文字は「現在分詞・動名詞を造る接尾辞」にすぎず、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表すものとして、広く知られていると認めることはできないものである。
そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して「アイエヌジー」又は「イング」の称呼を生ずるものであり、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1の類否について
本件商標と引用商標1を比較すると、両者は、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、外観については、「CLUB」の文字の有無の差異から、明らかに区別できるものである。
次に、称呼については、本件商標から生じる「クラブアイエヌジー」又は「クラブイング」の称呼と引用商標1から生じる「アイエヌジー」又は「イング」の称呼とは、「クラブ」の音の有無の差異により、明瞭に聴別できるものである。
そして、本件商標及び引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、観念において比較することはできないとしても、外観及び称呼において明らかに異なるものであるから、これらを総合的に考慮すれば、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
エ 本件商標と引用商標(引用商標1を除く。)の類否について
申立人は、本件商標から、「アイエヌジー」、「イング」の称呼及び「ING社」の観念が生ずることを前提に、本件商標と引用商標は、称呼及び観念を共通にする類似の商標である旨主張している。
しかしながら、本件商標は、上記アのとおり、「クラブアイエヌジー」又は「クラブイング」の称呼が生ずるものであり、特定の観念を生じないものであるから、仮に、引用商標(引用商標1を除く。)から、「アイエヌジー」、「イング」の称呼及び「ING社」の観念が生じたとしても、本件商標と引用商標(引用商標1を除く。)は、称呼及び観念において紛れるおそれはなく、非類似の商標というべきである。
その他、本件商標と引用商標(引用商標1を除く。)が類似するというべき事情も見いだせない。
オ 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との類否について言及するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と規定されている。
「ING商標」は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国及び外国において、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表す商標として、広く知られていたとはいい難いものである。
また、「ING商標」は、引用商標1と同じ構成文字よりなるものであるから、上記(2)のとおり、本件商標とは非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「ING商標」の周知・著名性について
「ING商標」は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国及び外国において、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表す商標として、広く知られていたとはいい難いものである。
イ 本件商標と「ING商標」との類似性の程度について
本件商標は、「CLUB ING」の文字よりなるものであるから、「ING」の文字よりなる「ING商標」とは、「ING」の文字を含むという点において共通するものの、上記(3)のとおり、本件商標と「ING商標」とは非類似の商標であるから、その類似性の程度はさほど高いとはいえない。
ウ 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定役務と申立人の業務に係る役務とは、同一又は類似の役務であって、その需要者を共通する場合があり、役務の関連性はあるものといえる。
エ 小括
上記アないしウのとおり、本件商標の指定役務は、申立人の業務に係る役務との関連性を有し、その需要者の範囲を共通にする場合があるとしても、「ING商標」は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえず、本件商標と「ING商標」の類似性の程度もさほど高いとはいえない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、「ING商標」を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
「ING商標」は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、我が国及び外国において、申立人の業務に係る金融、保険、資産運用に関連する役務を表す商標として、広く知られていたとはいい難いものである。
また、「ING商標」は、上記(3)のとおり、本件商標とは非類似の商標である。
さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、日本において周知・著名な「ING商標」に類似する商標について、登録を受けることは、申立人の名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものと認められるため、商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為である旨主張する。
申立人は、「ING商標」が周知・著名な商標であることを前提に、上記主張をしているが、「ING商標」は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして広く知られているものとはいい難く、また、本件商標は、上記(3)のとおり、「ING商標」とは非類似の商標である。
そして、申立人からは、他に、商標権者が、本件商標を不正の目的をもって出願したと認め得るような証拠の提出はないから、本件商標の登録出願が、申立人の名声を僭用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正な意図をもってなされたものということはできない。
また、申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
さらに、本件商標を、その申立役務について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、国際信義に反するものでもない。
加えて、本件商標の構成自体が、非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、第35類「全指定役務」及び第36類「全指定役務」について、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
【別掲】
本件商標の指定役務
第35類
「不動産のマーケティング,マーケティング,販売促進のための企画及び実行の代理,役務の提供促進又は商品の販売促進のための企画及び実行の代理又はこれらに関する情報の提供,広告・マーケティング及び販売促進に関する助言及び支援,販売を目的とした、各種通信媒体による商品の紹介,広告業,インターネットによる広告に関する情報の提供,商品の販売促進又は役務の提供促進のためのクーポン若しくはポイントの発行・管理・清算,トレーディングスタンプの発行,入札に対する応札の管理支援,資金を必要とする起業家と潜在的な個人投資家とのマッチングに関する事業の仲介,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,広告場所の貸与,インターネットにおける広告スペースの提供,広告用具の貸与,税務書類の作成に関する指導・助言・相談及びこれらに関する情報の提供,人材の紹介・職業のあっせん,競売の運営,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,求人情報の提供及び求人情報の提供に関するコンサルティング,ニュースクリッピングサービス,新聞記事情報の提供,自動販売機の貸与,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料及び果実飲料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,建具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器・手動工具及び金具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,農耕用品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,花及び木の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,建築材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
第36類
「不動産投資,保険・金融・土地又は建物に関する財務の評価,投資・資金援助及び融資に関する助言,オンラインによる事業資金の調達,財政及び保険に関する報告書の作成,預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,前払式支払手段の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,投資情報の提供,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,保険情報の提供,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,企業の信用に関する調査,税金に関する金融又は財務に関する助言,不動産の税務相談に関する情報の提供,税務相談に関する情報の提供,不動産の税務代理に関する情報の提供,税務代理に関する情報の提供,資金の調達及び募金,募金に関する情報の提供,慈善のための募金」
第41類
「会員制による娯楽の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,書籍の制作,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),オンラインによる音楽の提供(ダウンロードできないものに限る。),音楽の演奏,娯楽施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,交流を目的としたパーティーの企画・運営又は開催に関する情報の提供,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,娯楽情報の提供,教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営,レクリエーション施設の提供」


異議決定日 2020-08-28 
出願番号 商願2018-99424(T2018-99424) 
審決分類 T 1 652・ 261- Y (W3536)
T 1 652・ 222- Y (W3536)
T 1 652・ 271- Y (W3536)
T 1 652・ 25- Y (W3536)
T 1 652・ 263- Y (W3536)
T 1 652・ 22- Y (W3536)
T 1 652・ 262- Y (W3536)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内藤 順子 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2019-07-26 
登録番号 商標登録第6165207号(T6165207) 
権利者 株式会社9GATES
商標の称呼 クラブイング、クラブアイエヌジイ、クラブ、イング、アイエヌジイ 
代理人 特許業務法人アイ・ピー・ウィン 
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所 

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