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審決分類 審判 査定不服 商4条1項11号一般他人の登録商標 登録しない W30
管理番号 1366230 
審判番号 不服2020-644 
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-17 
確定日 2020-09-02 
事件の表示 商願2018-162887拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「くるくるロール寿司」の文字を標準文字で表してなり,第30類「すし」を指定商品として,平成30年12月26日に登録出願されものである。

2 引用商標
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願の拒絶の理由に引用した登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)引用商標1
登録第1576866号商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,昭和53年12月27日登録出願,第32類「寿し」を指定商品として,同58年3月28日に設定登録され,その後,平成16年2月18日に指定商品を第30類「すし」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)引用商標2
登録第1703638号商標は,別掲2のとおりの構成よりなり,昭和56年6月19日登録出願,第32類「すし」を指定商品として,同59年7月25日に設定登録され,その後,平成16年6月16日に指定商品を第30類「すし」とする指定商品の書換登録がされたものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 本願商標
本願商標は,上記1のとおり,「くるくるロール寿司」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中,「くるくる」の文字は,「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」の意味を有する(株式会社岩波書店 広辞苑第七版)こと,「ロール寿司」の文字部分は,原審において示した例(別掲3)に加えて,別掲4によれば,「具や酢飯で海苔を巻いた寿司」程の意味合いを表す語として広く一般に使用されている実情が認められること,「くるくる」及び「ロール寿司」の各文字は,それぞれ親しまれた既成語であるものの,全体として何らかの意味を看取させないことからすれば,本願商標は,「くるくる」の語と「ロール寿司」の語とを組み合わせた結合商標と容易に理解されるものである。
そして,上記のとおり,本願商標の構成中の「ロール寿司」の文字は,「具や酢飯で海苔を巻いた寿司」程の意味合いを表す語として広く一般に使用されている実情が認められることからすれば,「ロール寿司」の文字部分は,本願指定商品「すし」との関係において,商品の品質(内容)を表すものと理解されて,自他商品を識別する機能を発揮し得ないものである。
他方,上記のような「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」の意味を有する「くるくる」の文字部分は,本願指定商品との関係において,特段,商品の品質等を表示するものではなく,自他商品を識別する機能を十分に果たすものであるから,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として,強く支配的な印象を与えるというべきである。
そうすると,本願商標の「くるくる」の文字部分と「ロール寿司」の文字部分とを,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず,本願商標から「くるくる」の文字部分を要部として抽出し,これと他の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
したがって,本願商標は,その構成中の要部である「くるくる」の文字部分に相応して,「クルクル」の称呼及び「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」等の観念を生ずるものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1について
引用商標1は,別掲1のとおり,6カ所に切れ目のある楕円線からなる図形(以下「輪郭図形」という。)の内部に,ややレタリングの施された「くるくる寿」とおぼしき文字と扇状の図形を上下に2つ表してなるものである。
そして,「くるくる寿」の文字部分は扇状の図形と共に輪郭図形の内部にまとまりよく表示されており,当該文字部分から生ずる「クルクルジュ」の称呼は,一気一連に称呼できるものである。
したがって,引用商標1からは,その構成文字に相応して「クルクルジュ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2
引用商標2は,別掲2のとおり,筆文字風のレタリングを施してなる「くるくる寿司」の文字を横書きして表してなるところ,その構成中,「くるくる」の文字は,上記アのとおり,「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」の意味を有すること,「寿司」の文字部分は,引用商標2の指定商品である「すし」を漢字で表したものであること,「くるくる」及び「寿司」の各文字は,それぞれ親しまれた既成語であるものの,全体として何らかの意味を看取させないことからすれば,引用商標2は,「くるくる」の語と「寿司」の語とを組み合わせた結合商標と容易に理解されるものである。
そして,上記のとおり,引用商標2の構成中の「寿司」の文字は,引用商標2の指定商品である「すし」を漢字で表したものであることから,商品の普通名称を表すものと理解されて,自他商品を識別する機能を発揮し得ないものである。
他方,上記ア同様,「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」の意味を有する「くるくる」の文字部分は,引用商標2の指定商品との関係において,特段,商品の品質等を表示するものではなく,自他商品を識別する機能を十分に果たすものであるから,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として,強く支配的な印象を与えるというべきである。
そうすると,引用商標2の「くるくる」の文字部分と「寿司」の文字部分とを,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められず,引用商標2から「くるくる」の文字部分を要部として抽出することが許されるというべきである。
したがって,引用商標2は,その構成中の要部である「くるくる」の文字部分に相応して,「クルクル」の称呼及び「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」等の観念を生ずるものである。
ウ 本願商標と引用商標との類否について
(ア)本願商標と引用商標1との類否について
本願商標と引用商標1の類否について検討するに,本願商標と引用商標1とは,外観においては,上記ア及びイ(ア)のとおりの構成からなるところ,その全体の構成において,顕著な差異を有するものであるから,両商標は,外観上,明確に区別できるものである。
また,称呼については,本願商標から生ずる「クルクル」の称呼と,引用商標1から生ずる「クルクルジュ」の称呼とは,その音構成及び構成音数において明らかな差異を有するから,明瞭に聴別できるものである。
さらに,観念については,本願商標は「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」の観念を生ずるものであるのに対し,引用商標は特定の観念を生じないものであるから,両者は,相紛れるおそれはない。
そうすると,本願商標と引用商標1とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても,相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
(イ)本願商標と引用商標2との類否について
本願商標の要部である「くるくる」の文字部分と引用商標2の要部である「くるくる」の文字部分とを対比すると,外観において,書体の差異があるものの,その構成文字を共通にするものであって,互いに近似した印象を与えるものである。
また,称呼においては,本願商標と引用商標2とは,いずれもその要部となる「くるくる」の文字部分に相応する「クルクル」の称呼を生ずるものであるから,称呼において共通する。
さらに,本願商標の要部と引用商標2の要部とは,その構成文字から生ずる「ものが軽快に連続して回転したり,輪を描くように移動したりするさま」の観念を同一にするものである。
してみれば,本願商標の要部である「くるくる」の文字と引用商標の要部である「くるくる」の文字とは,外観において互いに近似した印象を与え,称呼及び観念を共通にするものであるから,外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,全体的に考察すれば,本願商標と引用商標2とは相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
エ 本願の指定商品と引用商標1及び引用商標2の指定商品の類否について
本願の指定商品である第30類「すし」は,引用商標1及び引用商標2の指定商品である第30類「すし」と同一の商品であること明らかである。
オ 小括
以上のとおり,本願商標と引用商標1とは,その指定商品が同一であるとしても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
一方,本願商標と引用商標2とは,互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり,かつ,本願商標の指定商品は,引用商標2の指定商品と同一のものである。
したがって,本願商標は,引用商標2と類似する商標であって,引用商標2の指定商品と同一の商品について使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,「くるくる」の語は,擬態語にあっても特異であり,他の語の付着により印象を与える内容が特定されるものであり,単なる指定商品との関連のみで分離して考察されるべきものではないこと,引用商標2は,「くるくる寿司」であり,回転寿司の「台と共に寿司がくるくる回る」「海苔がくるくる巻かれた」(海苔巻き)等の意味合いが想起でき,その頭に浮かぶ状況は「寿司」と一体であり,これを離れた「くるくる」のみが分離して想起されるものではなく,ましてや6音構成で一息に称呼しやすく省略称呼を必要としないものであることなど主張する。
しかしながら,本願商標を構成する「ロール寿司」の文字は,原審において示した例(別掲3)に加えて,別掲4のとおり,「具や酢飯で海苔を巻いた寿司」程の意味合いを表す語として広く一般に使用されている実情が認められることから,本願の指定商品との関係においては,商品の品質(内容)を表すものと理解され,商品の出所識別標識としての機能を発揮し得ないものであるのに対し,本願商標の構成中,「くるくる」の文字が,自他商品の識別標識として,需要者に対し,強く支配的な印象を与えるものであって,当該文字を要部として抽出し,これと引用商標とを比較して,商標そのものの類否を判断することが許されるといえることは,上記(1)アのとおりであるから,引用商標2から連想させる意味合いや称呼の音数によって,上記判断は左右されないというべきである。
イ 請求人は,過去の登録例を挙げて,本願商標も同様に取り扱われるべきである旨主張している。
しかしながら,挙げられた登録例は,本願商標とは,構成文字の違いなど,その構成及び態様等が異なり,事案を異にするものであり,かつ,具体的事案の判断においては,過去の審決例や登録例に拘束されることなく判断されるべきであるから,これらの事例の存在が上記の判断を左右するものではない。
ウ したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

別掲1 引用商標1


別掲2 引用商標2


別掲3 原審において示した例(下線は合議体による。以下同じ)
(1)「東京すしアカデミー」のウェブサイトにおいて,「今やお寿司の仲間入り!海外で人気のロール寿司!」の見出しの下,「皆さんは,ロール寿司をご存じですか?代表的なものはカリフォルニアロールですよね。一般的な細巻きや太巻きとは違い,外側に寿司飯,内側に海苔という巻き方をします。」との記載がある。
https://www.sushiacademy.co.jp/archives/17359(令和2年6月3日最終閲覧)
(2)「LOCARI」のウェブサイトにおいて,「実は簡単!ラップで巻くだけ『ロール寿司』でお祝い事も華やかに・」の見出しの下,「『ロール』したお寿司といえば『巻き寿司』を想像する人が多いかもしれませんね。今回ご紹介する『ロール寿司』は,海苔で具や酢飯を巻く『巻き寿司』とは違い,具や酢飯で海苔を巻くスタイルです。」との記載がある。
https://locari.jp/posts/127344(令和2年6月3日最終閲覧)

別掲4 原審において示した例と同様に,本願指定商品との関係において,「ロール寿司」の文字が「具や酢飯で海苔を巻いた寿司」程の意味合いを表す語として一般に使用されている用例
(1)「観光経済新聞」のウェブサイトにおいて,「【食と観光 日本の新たな魅力61】ロール寿司が日本を席巻 山上徹」の見出しの下,「海外のスシ・バーは外側に寿司飯,内側に海苔という裏巻きスタイルのロール寿司を考案した。」との記載がある。
https://www.kankokeizai.com/%E3%80%90%E9%A3%9F%E3%81%A8%E8%A6%B3%E5%85%89%E3%80%80%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E9%AD%85%E5%8A%9B61%E3%80%91%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%AF%BF%E5%8F%B8%E3%81%8C%E6%97%A5/(令和2年6月3日最終閲覧)
(2)「ニッスイ」のウェブサイトにおいて,「生桜えびのロール寿司」の見出しの下,「焼きのりを内側に巻いた簡単裏巻き寿司です。」との記載がある。
https://www.nissui.co.jp/recipe/00632.html(令和2年6月3日最終閲覧)


審理終結日 2020-06-22 
結審通知日 2020-06-29 
審決日 2020-07-17 
出願番号 商願2018-162887(T2018-162887) 
審決分類 T 1 8・ 26- Z (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒井 芳子古里 唯 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 藤村 浩二
大森 友子
商標の称呼 クルクルロールズシ、クルクルロール、クルクル、ロールズシ 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 

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