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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
審判 全部申立て  登録を維持 W18
管理番号 1365192 
異議申立番号 異議2019-900364 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-13 
確定日 2020-08-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6181899号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6181899号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6181899号商標(以下「本件商標」という。)は,「B-star」の欧文字を標準文字で表してなり,平成30年12月17日に登録出願,第18類「かばん類,袋物,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,携帯用化粧道具入れ」を指定商品として,令和元年9月5日に登録査定され,同年9月20日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3265453号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:「G-STAR」と「ジースター」の文字を上下2段に横書きしてなるもの
指定商品 :第18類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成6年9月30日
設定登録日:平成9年2月24日
(2)登録第4023406号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定商品 :第18類に属する商標登録原簿に記載の商品
優先権主張日:オランダ王国 1994年(平成6年)8月11日
登録出願日:平成7年2月13日
設定登録日:平成9年7月4日
(3)登録第4562463号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品 :第3類,第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
優先権主張日:オランダ王国 2000年(平成12年)5月23日
登録出願日:平成12年9月20日
設定登録日:平成14年4月19日
(4)国際登録第1150393号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品 :第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品
優先権主張日:Benelux 2013年(平成25年)1月21日
国際商標登録出願日:2013年(平成25年)1月25日
設定登録日:平成26年3月28日
(5) 国際登録第1179861号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:「G-STAR」
指定役務 :第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務
優先権主張日:Benelux 2013年(平成25年)1月16日
国際商標登録出願日:2013年(平成25年)1月22日
設定登録日:平成27年2月27日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,同書同大の「B-star」の欧文字からなり,その構成文字に相応して「ビースター」の称呼のみが生じるが,特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標1は「G-STAR」と「ジースター」とを上下二段に書してなり,引用商標2ないし4は別掲1ないし3のとおりの構成からなり,引用商標5は「G-STAR」の文字を横書きしてなるものであり,いずれもそれらの構成文字又は構成中の文字「G-STAR」,「ジースター」に相応し「ジースター」の称呼が生じるが,特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標と引用商標の指定商品(役務)は,同一又は類似する。
(イ)本件商標と引用商標とを比較すると,本件商標から生ずる「ビースター」の称呼と引用商標から生ずる「ジースター」の称呼は,ともに5音からなるところ,語頭の「ビ」と「ジ」の音は子音が異なるものの母音「i」が同じであり,後続の4音も同一であることから,語調・語感が極めて近似し聴別し難いため,称呼が類似する。
外観においても,本件商標と引用商標は,語頭の「B」と「G」の文字が異なるとしても,「-(ハイフン)」以下,残りの4文字「star(STAR)」が同一のため,商標の構成上,判然と区別することが困難であるから,外観が類似する。
観念においても,本件商標の指定商品の需要者層である一般消費者の平均的な注意力も考慮すれば,特定の観念の生じないアルファベットの「B」と「G」の文字よりも,後続する「-star(STAR)」の単語から「星」の意味を想起し,記憶するから,観念も類似する。
本件商標と引用商標とは,商標全体から生ずる外観,称呼及び観念を総合すれば,その差異は商標全体から生ずる類似の印象を凌駕するものとはいえない。
よって,本件商標と引用商標とは,商標の外観,称呼及び観念が取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,取引者,需要者に商品の出所につき誤認混同を生じさせる,類似の商標である。
(ウ)商品「かばん類」における取引の実情として,バッグと同色の型押しや浮き彫りによるロゴマークが,申立人のみならず,他のブランドにおいてもバックパック,ブリーフケースやフォーマルなバッグ等において用いられている(甲3)。この表示方法においては比較的小さなロゴマークが使用されることも相侯って,一つ一つの文字は視認しにくいものとなる。
かかる取引の実情も考慮すれば,本件商標と引用商標とは,語頭の「B」と「G」の文字の相違があるとしても,残りの部分「-STAR(star)」が同一の記号及び単語からなるため,外観において相当程度,相紛らわしいものといえる。
なお,後述のように,商標「G-STAR」は,欧州連合知的財産庁,ブルガリア共和国特許庁,スペイン特許庁,韓国特許庁及びアメリカ合衆国等において周知性などが認定されている(甲14)。
「G-STAR」が世界的に取引者・需要者に広く認識されている商標であることを考慮すれば,本件商標を付した商品に接した取引者・需要者は,申立人の商品と誤信し,出所の誤認混同を生ずるおそれがある。
エ 小括
以上より,本件商標と引用商標とは,商標の外観,称呼及び観念が取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,取引者,需要者に商品の出所につき誤認混同を生じさせる類似の商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標と引用商標とは,前記(1)に記載のように,商標,商品が互いに同一又は類似し,取引者,需要者を共通にしている。仮に,本件商標と引用商標の類似の程度が商標法第4条第1項第11号に該当しない場合も,引用商標は国内外において取引者・需要者に広く認識されていることから,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
ア G-STARブランド及び各国における商標登録
G-STARブランドは,1989年にオランダ・アムステルダムにおいて創立された。1993年以降,ドイツ,フランス,オーストリア等のヨーロッパ諸国,オーストラリア,日本,米国へと販路を拡大し,現在は世界20か国以上においてジーンズ等の被服,ベルト,帽子,かばん,サングラス等のファッション関連商品の販売を行っている(甲4)。
G-STARは,独自のカッティング技術,素材及び加工,デザイン力に強みを持つデニムブランドである。1996年に発表した「G-STAR Elwood」は,立体デザインを特徴とする同ブランドの代表的ジーンズモデルであり,発売から20年以上のロングセラーを記録している。1996年には,未加エデニム(RAW Denim)のコンセプト及び「G-STAR RAW」も発表し,現在は,グローバルに「G-STAR RAW」ストアを展開している。また,「G-STAR by Marc Newson」,「G-STAR Type C」等の同ブランドを代表する製品ラインを多数有する(甲4)。
商標「G-STAR」は,引用商標2,引用商標4や「G-STAR」の文字商標等が商品に付して使用されているほか,「G-STAR Elwood」,「G-STAR by Marc Newson」,「G-Star Type C」等の「G-STAR」を冠した製品ラインや,女性向け商品の「G-STAR Women」等が同ブランドを表す商標として使用されている(甲5)。G-STAR RAW公式オンラインストアのURLは「G-STAR.COM」であり,キャンペーン広告には,商標「G-STAR RAW」とともに,上記のURLが表示され,引用商標2を含む「G-STAR」商標も使用されている(甲5)。長年の使用を通じて,商標「G-STAR」及び「G-STAR RAW」は,同一ブランドを表す商標として取引者,需要者に認識されるものとなっている。
G-STARブランドの商標は,アルーバ,オーストラリア,バハマ,ベネルクス,ロシア等の多くの国々において商標出願・登録がされている(甲4,甲6)。
イ G-STARブランドの国内外の販売拠点
申立人は,世界の約5,500か所に販売拠点を有し,G-STARブランドの商品を,G-STAR RAWストア及びオンラインショップのほか,有名百貨店や衣料品店等を通じて販売している(甲4,甲7)。
日本においては,2001年に東京に事業所を設立し,2005年に東京,大阪においてモノブランドストアをオープンし,現在は,東京,大阪,京都,神戸,横浜等にG-STAR RAWストアを有するほか,全国の有名百貨店やライトオン,ビッグエムワン,イオンモール,ららぽーと等の店舗やオンラインショップ等の約600か所の販売拠点を通じて商品販売を行っている(甲7)。過去3年間のG-STAR RAW公式オンライン日本語サイトヘのアクセス件数は,2017年が約170万件,2018年が229万件,2019年が264万件あり,高いアクセス数を示している(甲7)。なお,日本におけるG-STARの市場占有率は,1本1万円以上の高価格帯のジーンズの市場において,DIESEL,Levi’sに次ぐ高いシェアを占めている。
ウ G-STARブランドの全世界における売上高
G-STARブランドの2001年から2007年までの全世界における売上高は次のとおりである(甲4)。
a 2001?2002年1億1,500万ユーロ
b 2002?2003年1億4,700万ユーロ
c 2003?2004年1億8,000万ユーロ
d 2004?2005年2億4,400万ユーロ
e 2005?2006年3億2,500万ユーロ
f 2006?2007年4億8,000万ユーロ
エ G-STARブランドの宣伝広告並びに国際的な展示会への出展
(ア) G-STARブランドの2001年から2007年までの全世界における広告宣伝費は次のとおりである(甲4)。
a 2001?2002年570万ユーロ
b 2002?2003年700万ユーロ
c 2003?2004年700万ユーロ
d 2004?2005年670万ユーロ
e 2005?2006年1, 180万ユーロ
f 2006?2007年1, 500万ユーロ
なお,2016?2017年のヨーロッパ市場における販売費予算は約1, 450万ユーロであり,2016,2017及び2018会計年度の世界販売費(オンライン及びオフライン)は年間約3,000万ユーロである(甲4)。
(イ)G-STARブランドは,毎年,世界的規模で春夏及び秋冬キャンペーン広告を行っている。
オランダ国の各都市,日本国東京・大阪,フランス国パリ,スペイン国バルセロナ,ドイツ国ベルリンなどの多くの都市において巨大スクリーン広告等の屋外広告を展示し,商業施設内や駅構内等の人通りの多い場所や電車やバス等の公共交通機関においても広告を行っている(甲4,甲8)。
(ウ)G-STARは,大手ソーシャルメディアのフェイスブック,インスタグラム,ツィッターも積極的に活用して宣伝広告をしている。2020年3月現在において,G-STARのフェイスブックの「いいね!」の件数は248万件,インスタグラムのフォロワー数は56万人,ツィッターのフォロワー数は11万人である(甲9)。
G-STARは,YouTubeにチャンネルも開設しており,コレクションやファッションショー等の動画を多数,配信している(甲9)。例えば,YouTubeでのキャンペーン広告に関する動画は,2012年25万回,2013年551万回,2016年135万回,2017年59万回再生されている。また,2018年のジェイデン・スミスがG-STAR RAW東京 渋谷店の前で撮影したミュージックビデオの再生回数は,約2,900万回である(甲9)。
上記のキャンペーン広告は我が国の多くのファッション誌等にも掲載されている(甲10)。
(エ)G-STARブランドは,パリファッションウィーク(パリコレ)やニューヨークファッションウィークなど多数の服飾関連の展示会に出展し,最新作を発信,披露している(甲11)。我が国においては,2007年に東京デザインウィークに参加し(甲4),G-STAR RAW銀座店においてイベントや,原宿において新キャンペーンのローンチバーティ等を開催している(甲11,甲12)。
(オ)G-STARブランドは欧州の有名デニムブランドとして,我が国においても取引者,需要者に広く認識されているものであり,同ブランドヘの関心も高いものである。我が国のファッション誌等においても同ブランドの特集記事等が掲戟されている(甲12)。
オ 他業種との協業,社会的貢献等
G-STARブランドは,「RAW CROSSOVER」と題して,ライカ(カメラ),ランドローバー(自動車),キャノンデール(自転車),ヴィトラ(家具)等の他業種の有名ブランドとの協業による商品の開発・販売を通じて,相乗効果によるブランドイメージの向上及びブランドの浸透を図っている(甲4,甲12,甲13)。
また,2006年頃から環境問題への取り組みを開始し,国連のMDGs (現SDGs(持続可能な開発目標))とのパートナーシップも締結し,サステナプルデニムの発展に貢献している。古くなったデニムをリサイクルした「リニュードデニム」や海洋プラスチックごみを再生したバイオニックヤーンのコレクション「ロウ・フォー・ザ・オーシャン」等多数のプロジェクトも実現している(甲4,甲12)。2018年には,クレードル・トゥ・クレードル(世界で最も厳しいグローバル環境認証)においてデニムブランドとして初めてゴールド認証を獲得した(甲4,甲12)。
G-STARは,2004年5月に英国のドレーパー・マガジンにおいて,最も売れた若者向けファッションブランドとしてランキングに入り,2006年1月の同誌ではジーンズで1位になる等,オランダ,英国,ドイツ,オーストラリア等において多数の賞を受賞している(甲4,甲13)。2015年には,G-STAR代表がG-Starの業績,GSRD基金の設立や社会への貢献が評価されて,オランダ王国オラニエ・ナッソー勲章のオフィサーに任命されている(甲4)。
カ 各国における名声,周知著名性等の認定
外国の異議申立等の事件において,欧州共同体商標意匠庁(現,欧州連合知的財産庁),ブルガリア共和国特許庁,スペイン国特許庁,韓国特許庁,米国特許商標庁などで,商標G-STARの周知性などが認定されている(甲14)。
アルファベット文字を言語に使用する国において,語頭のアルファベット一文字の相違にすぎない場合は,出所の誤認混同や,商品の関連性を誤信するおそれがあることを示しており,我が国が日本語を母国語としアルファベット文字を日常的に使用する機会がそれらの国より少ないことを考慮すれば,本件商標「B-star」と引用商標「G-STAR」における頭文字「B」と「G」の文字の相違は,他の共通の要素を凌駕し得る程の相違とはいえず,取引者,需要者に申立人の商品であるとの誤認を生じさせるおそれのあるものである。
キ 引用商標の希釈化,申立人の業務上の信用の毀損
申立人の商標「G-STAR」が長年の使用を通じて世界的に取引者,需要者に広く認識されるものとなっていること,本件商標「B-star」が引用商標と商標全体の印象が似通った類似性の程度が高いものであることを考慮すれば,本件商標がその指定商品について使用されれば,引用商標の出所表示機能が希釈化され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては申立人の業務上の信用を毀損させるおそれがある。
ク 小括
以上より,引用商標は,約30年間,世界各国において継続して使用されている商標であり,本件商標の出願の日前に,オランダ国及び欧州などにおいて周知性を認定され,本件商標の登録日以降もその状況は継続しているものである。我が国においても,20年を超える長年の使用を通じて,G-STARは欧州の有名デニムブランドとして広く認識されているものであり,その状況は現在も継続している。
本件商標と引用商標とは,商標が類似又は近似し,商品も同一又は類似し,需要者層が共通すること,また,引用商標は国内外において取引者,需要者に広く認識されるものとなっていることから,本件商標に接した取引者,需要者は,G-STAR商標を連想,想起し,本件商標をG-STARの姉妹ブランドであるかのように,又はG-STARの新しい製品ラインであるかのように誤信し,あるいは本件商標を使用した商品がG-STARブランドと業務上密接な関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤信し,混同を生ずるおそれがある。
(3)むすび
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,申立人(前身を含む。)は,「G-STAR」ブランドを1989年(平成元年)にオランダ国アムステルダムにおいて設立,同国及びベルギー国で同ブランドの商品の販売を開始したこと(甲4),1993年(平成5年)以降ドイツ,フランス等のヨーロッパ諸国,オーストラリア,日本,米国へと販路を拡大し,2019年(令和元年)には20か国を超える国においてジーンズをはじめとする被服等の販売を行っていること(甲4),世界の約5,500か所に販売拠点を有し「G-STAR RAW」ストア及びオンラインショップのほか,百貨店,衣料品店等を通じて販売を行っていること(甲4),申立人の2001年(平成13年)ないし2007年(平成19年)の全世界における売上高は,毎年1億1,500万ユーロないし4億8,000万ユーロであったこと(甲4),及び我が国においては,2001年(平成13年)に東京に「ジースターインターナショナル株式会社」を設立し,事務所及びショールームを開設,2005年(平成17年)に販売店舗を開設し,現在は東京,大阪,京都など主要都市に「G-STAR RAW」ストアを有するほか,全国の百貨店,衣料品店,商業施設等の店舗やオンラインショップ等の約600か所の販売拠点を通じて商品販売を行っていること(甲4,甲7)などがうかがえる。
そして,申立人が取り扱う商品はそのほとんどが被服であり,それら商品及びその広告には「G-STAR RAW」「G-STAR.COM」(小文字を含む。)の文字及び引用商標2と同一と認められる標章が使用されていることが認められるものの(甲5,甲7ほか),「G-STAR」の文字が単独で使用されていると認め得るものは数例(甲5の3)のみであり,また,引用商標がそれらの指定商品及び指定役務について使用されていると認め得る証左,及び商標「G-STAR」が使用された商品の我が国における売上高,シェアなど販売実績を裏付ける証左は見いだせない。
イ 上記アのとおり,申立人の商品は,2001年(平成13年)からオランダ国及びベルギー国で販売が開始され,2019年(令和元年)には20か国を超える国で販売されていること,及び我が国においては2005年(平成17年)から現在まで15年程度継続して販売され,その販売拠点は全国に600か所以上であることなどがうかがえることから,我が国における需要者の間である程度知られているといい得るとしても,申立人の商品に使用される引用商標及び商標「G-STAR」(以下,これらを併せて「申立人商標」という。)は,それらが使用された商品の我が国における販売実績を裏付ける証左は見いだせないから,本件商標の登録出願の時及び登録査定時において,いずれも申立人の業務に係る商品(及び役務)を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
ウ なお,申立人は,G-STARブランドの商標はオーストラリア,バハマ,ロシア,ブラジル,カナダ、中国などの多くの国において商標出願・登録されている,G-STARブランドは世界的規模での春夏及び秋冬キャンペーン広告,各国の多くの都市での屋外広告の展示,商業施設内,公共交通機関における広告を行っている,G-STARはフェイスブック,インスタグラムなどのSNSを活用し宣伝広告している,G-STARブランドはパリファッションウィークやニューヨークファッションウィークなど多数の服飾関連の展示会に出展している,それら広告やG-STARブランドの特集記事は我が国のファッション雑誌で多数掲載されている,外国における異議申立などの事件でG-STAR商標の名声や周知性などが認められているなどとして,引用商標及び商標「G-STAR」(申立人商標)は国内外の取引者,需要者に広く認識されている旨主張,立証している。
しかしながら,申立人提出の証拠によっては,広告,展示会及び雑誌において「G-STAR RAW」,「G-STAR.COM」の文字が被服について使用されていることは確認できるものの,「G-STAR」の文字が単独で使用されていると認め得るものは数例のみであり,また,外国における事情が我が国の需要者の認識に直接反映されるとはいい難いから,上記判断を覆し得ない。
よって,申立人のかかる主張は採用できない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は,上記1のとおり,「B-star」の欧文字を標準文字で表してなり,該文字に相応し「ビースター」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標1は,上記2(1)のとおり「G-STAR」と「ジースター」の文字を上下2段に横書きしてなり,引用商標2ないし引用商標4は,別掲1ないし3のとおりの構成からなり,引用商標5は,上記2(5)のとおり「G-STAR」の文字からなるものである。
そして,引用商標は,いずれもそれらの構成文字又は構成中の文字「G-STAR」,「ジースター」に相応し,「ジースター」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標の類否を検討すると,まず,本件商標と引用商標5との比較において,前者の構成文字「B-star」と後者の構成文字「G-STAR」とは,後半部の「star(STAR)」のつづりを共通にするものの,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「B」と「G」の差異を有し,その差異が共に6文字構成という比較的少ない文字構成である両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく,両者を離隔的に観察しても,外観上,十分区別できるものといえる。
次に,本件商標から生じる「ビースター」と引用商標5から生じる「ジースター」の称呼を比較すると,両者は,後半部において「スター」の音を共通にするものの,称呼の識別上重要な要素である語頭において「ビー」と「ジー」の音の差異を有し,その差異が共に5音構成という比較的短い音構成である称呼全体に与える影響は大きく,両者をそれぞれ一連に称呼しても,称呼上,明瞭に聴別できるものといえる。
さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標5は,外観において区別でき,称呼においも聴別できるものであるから紛れるおそれがなく,観念において比較できないものであるとしても,両者の外観,称呼,観念等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
その他,両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(イ)上記(ア)のとおり,本件商標と「G-STAR」の文字からなる引用商標5が非類似の商標であることからすれば,標準文字からなる本件商標と上下2段書き,図形や他の文字を含む引用商標1ないし引用商標4とは,それらの構成態様が明らかに異なることから非類似の商標といえる。
エ 小括
以上のとおり,本件商標と引用商標は非類似の商標であるから,両商標の指定商品又は指定役務が類似するとしても,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり引用商標及び商標「G-STAR」(申立人商標)は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記(2)のとおり本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
また,本件商標と商標「G-STAR」とは,上記(2)ウ(ア)と同様の理由で非類似の商標といえる。
そうすると,本件商標は,これに接する取引者,需要者が,申立人商標を連想又は想記するものということはできない。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして申立人商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲
別掲1(引用商標2)


別掲2(引用商標3)


別掲3(引用商標4)


異議決定日 2020-07-22 
出願番号 商願2018-154124(T2018-154124) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W18)
T 1 651・ 261- Y (W18)
T 1 651・ 271- Y (W18)
T 1 651・ 263- Y (W18)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和田 恵美 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 小俣 克巳
榎本 政実
登録日 2019-09-20 
登録番号 商標登録第6181899号(T6181899) 
権利者 奥田 康博
商標の称呼 ビイスター、スター 
代理人 佐原 隆一 
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所 

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