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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y33
管理番号 1364202 
審判番号 取消2018-300523 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-07-09 
確定日 2020-07-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5001766号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5001766号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5001766号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成17年12月29日に登録出願,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,薬味酒」を指定商品とし,同18年11月10日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成30年7月27日にされている。
以下,本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成27年7月27日ないし同30年7月26日)を「要証期間」という場合がある。
なお,本件商標権は,「有限会社ウイズドクター」を権利者として設定登録されたものであるが,平成29年12月13日受付で特定承継による本件商標権の移転登録がされ,「株式会社SAKE蔵」が権利者となった。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)商標取得の正当性について
被請求人は,本件商標を取得した正当性の経緯を平成15年まで遡及して述べているが,取得したのは被請求人ではなく有限会社ウイズドクター(以下「ウイズドクター社」という。)である。それを立証しようとして乙第1号証ないし乙第5号証を提出しているが,その各乙号証で被請求人はもちろんウイズドクター社が本件商標を取得した正当性が立証されていない。
それどころか,平成15年当時,請求人の監査役だった被請求人代表者の吉村猛氏(以下「猛氏」という。)が,請求人の依頼に反して,請求人名で商標出願せずに,自ら所有するウイズドクター社の名義で出願してしまった。そしてそのことを根拠として請求人に本件商標の買取を要求してきたのである。
(2)対価の請求について
被請求人が譲渡を受けた本件商標の当初の権利者ウイズドクター社は,請求人の登録依頼(当然に請求人名義で出願することを依頼)を奇貨として勝手に自己の所有する法人名で商標登録し,請求人に対して有償で本件商標の譲渡を申し入れた。請求人がその申入れを拒否したのは当然である。
(3)請求人へ商標の無償使用許諾について1
請求人が商標「車坂」の使用を開始したのは平成18年7月31日以前である(甲3)。
請求明細書(甲3)は,請求人が「株式会社かがた屋」に本件商標と類似の商標「車坂」を使用した清酒を販売したものである。したがって請求人が商標「車坂」の使用を始めたのが請求書の日付の平成18年7月31日以前であることが明らかである。
一方,ウイズドクター社は平成17年12月29日に商標出願し,登録されたのが平成18年11月10日である。請求人が本件商標と類似の商標を使用したのが平成18年7月31日以前であることから,本件商標が登録された日よりも5か月も前である。
すなわち,ウイズドクター社の本件商標の登録日よりも請求人の使用の方が先であることから,被請求人はもちろんのことウイズドクター社も,請求人に対して商標法上の通常使用権許諾ができないのであり,使用許諾をしたというのは虚偽であり法的に矛盾する。
(4)請求人へ商標の無償使用許諾について2
前記したように,請求人の使用が,ウイズドクター社により使用許諾を受けることは論理上有り得ないことであり,請求人がウイズドクター社及び被請求人から口頭でも書面でも使用許諾を受けた事実が存在しない。
したがって,請求人の本件商標に類似する商標の使用は,商標法50条2項に規定する通常使用権者ではない。
(5)本件商標の使用の準備について
被請求人は本件商標の使用の準備をしようとしていると主張し,被請求人の履歴事項全部証明書(乙9)と法人市民税受領証書(乙10)を提出しているが,それらのどこが本件商標の使用の準備である証明なのか不明である。
いずれにしても例えそれが証明だとしても領収の日付が平成30年8月27日(乙10)であり,本件審判請求の登録日である平成30年7月27日(甲6)より後であり,取消を免れる証拠となりえない。
(6)被請求人の商標における登録行動の悪意について
被請求人は前述したように,請求人の依頼趣旨に反して猛氏が所有するウイズドクター社名義で商標登録出願してしまったのである。ここに猛氏の悪質性があるが,本件商標以外にも特殊なロゴの「車坂」の商標登録をしている(登録は本件商標と同一のウイズドクター社でその後被請求人に移転)。
当該登録商標「車坂」は,商標公報(甲5)で明らかなように,請求人が10年以上にわたって使用している周知商標「車坂」と全く同一のロゴをコピーして出願し登録したのである。ここに高い悪意性が認められる。
(7)むすび
ア 被請求人は請求人から依頼されたことを奇貨として,監査役の背任行為によって本件商標を猛氏が所有するウイズドクター社名義で取得した。
そして,請求人に買取を要求したり,不使用取消審判を請求されると請求人が使用していることを利用して無償の使用権を設定していると,全く事実でない答弁をしたり,さらに使用の準備をしていると主張しているか,本件商標の類似商標である「車坂」については請求人の使用の方が本件商標の登録より早いのである(甲3)。
イ 請求人が異議申立(甲4)をしている商標登録に至っては,請求人が10数年にわたって使用している周知商標の「車坂」と全く同一のロゴを被請求人は複写盗用して登録してしまったのである。
ウ 被請求人のこれら一連の商標登録行為はすべて請求人と敵対するための悪意に基づいたものであることは明らかである。したがって本件商標の不使用については,商標権者が使用していないことはもちろんのこと,専用使用権者,通常使用権者のいずれもが存在しないのである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 本件商標取得の正当性について
(1)請求人は,平成15年,和歌山地方裁判所に民事再生申立(和歌山地方裁判所平成15年(再)第4号)をし,平成17年6月15日に再生計画認可決定を受けた再建会社である(乙1)。請求人は,猛氏が請求人の依頼に反して,請求人名で商標出願せずウイズドクター社の名義で出願したと主張するが,何の証拠にも基づかない虚偽の主張である。
(2)請求人は,ウイズドクター社が本件商標を登録出願した平成17年12月29日当時は,再生計画案の認可決定が確定した日から6か月も経過していない時期にあり,同再生計画における第1回配当弁済をしなければならない,資金繰りに窮していた時期にあった(乙11,乙12)。
そのため,当時,請求人の資金に全く余力が無かったことから,請求人の取締役であった猛氏が,当時,請求人の部長であった安村勝彦氏(以下「安村氏」という。)と協議した上,猛氏の持ち株会社であり妻が代表取締役を務めるウイズドクター社(乙4)が本件商標の出願及び登録に必要な一切の費用を支出した上,同社名義で出願するに至ったのである。猛氏は,請求人の依頼に反してウイズドクター社名義で本件商標を出願したのではない。
(3)この点,請求人は,被請求人はもちろんウイズドクター社が本件商標を取得した正当性が主張立証されていないと主張するが,本件商標を取得した経緯は以下のとおりである。
ア 猛氏は,請求人の創業者である亡吉村秀雄の孫であり,代表取締役であった亡吉村善雄(以下「善雄氏」という,)の次男であったが,請求人の経営には関与していなかった。
イ ところが,請求人は,経営不振のため和歌山地方裁判所に民事再生手続を申立てざるを得ない状況に陥り,猛氏は,亡善雄氏より,請求人の再建のために協力して欲しいと懇願された。
そこで,猛氏は,平成15年7月25日,1000万円もの私財を提供することにより請求人の債権者(株式会社エスケーインベストメント)から債権譲渡を受けることにより,請求人への経済的支援を行い(乙2,乙13),また,後に請求人の取締役に就任する等,請求人の経営再建に関与することにした(乙3)。
その過程において,請求人は,旧来より使用していた日本酒ブランドである「日本城」では倒産のイメージが強いので,「瓶覗」や「鉄砲隊」のブランドを立ち上げようとした。
ウ ところが,これらのブランドについては既に他社が商標登録を受けていた。そのため,請求人は,他社に販売協力金(実質的には商標使用料)を支払うことによりこれらの商標を使用するか,あるいは独自のブランドを立ち上げるかにつき,選択を迫られていた。
しかしながら,請求人は,上記のとおり,民事再生手続における計画弁済を履行中であったため,新規ブランドを立ち上げるだけの経済的余力が無かった。
そこで,猛氏は,本件商標はウイズドクター社が登録することを条件に,ウイズドクター社が本件商標の出願及び登録に関する費用を全て支出し,平成17年12月29日に商標出願をした上,請求人による無償使用を許諾したのである。この経緯は,請求人の代表取締役である安村氏も承知しているはずである(乙5)。
エ ウイズドクター社が請求人に対して本件商標の無償使用を許諾したのは,当時,猛氏が請求人の取締役であったこともあり,ウイズドクター社と請求人との関係が良好であったからである。ウイズドクター社と請求人との関係が良好であったことは,ウイズドクター社が平成17年ころ,その営業担当者を請求人に出向させていた事実(乙14)からも明らかである。
オ このように,ウイズドクター社と請求人との関係は良好であったことから,ウイズドクター社は請求人に対して本件商標の無償使用を認め続け,他方,請求人がウイズドクター社に対して本件商標の取消を求めることは無かった。
ところが,平成27年ころ,猛氏の兄(吉村敏正氏)が請求人の経営に関与し始めたころより,請求人の株主らにおいて猛氏を請求人内部から追放しようとする動きが生じるようになり,猛氏と請求人との関係が悪化した。
そこで,猛氏は,平成29年10月15日に開催された請求人の取締役会において,請求人がウイズドクター社から無償で使用許諾を受けている本件商標につき,今後はウイズドクター社に対して対価を支払うよう提案した。
これに対し,請求人の代表取締役である安村氏は,同取締役会において,「それまでは杉本特許事務所に約25?30万円でしていたが,取締役吉村猛がネットで2?3万円で簡単に取れるので,ウイズドクター社で商標登録しておこうとの経緯がある。」と発言している(乙5)。この安村氏の発言からも,猛氏と安村氏とが協議してウイズドクター社が本件商標を登録したことは明らかである。
カ ところが,請求人は,猛氏による対価支払いの提案を拒否するとともに,請求人の株主は猛氏を取締役として再任しなかった。これにより猛氏は事実上,請求人の取締役退任を余儀なくされた(乙3)。
キ このように,猛氏は,請求人から事実上追放されたことから,本件商標をウイズドクター社から独自に設立した被請求人に登録変更し,現在,被請求人は,酒類販売免許を取得するため,被請求人の法人府民税を納付し続ける(乙10,乙15)等,販売に向けた準備活動を行っているのである。
(4)以上のとおり,被請求人は,請求人との協議に基づき自己の出捐により本件商標の出願及び登録をしていることや,請求人が被請求人の本件商標を無償で使用し続けている事実は,証拠上明らかである。
2 対価の請求について
請求人はここでも,ウイズドクター社が勝手に自己の所有する法人名で本件商標を登録し,請求人に対して有償で本件商標の譲渡を申し入れたと主張する。
しかしながら,上記1のとおり,ウイズドクター社が自己の出捐により本件商標を出願登録することにつき請求人が了承していることや,請求人がウイズドクター社から本件商標を無償で借り受けて使用している事実(乙5)は明らかである。
3 請求人への商標の無償使用許諾について1
請求人は,本件商標の登録日(平成18年11月10日)よりも前に「車坂」の商標を使用し始めたのであるから,被請求人やウイズドクター社は請求人に対して商標法上の通常使用許諾ができないのであり,使用許諾したのは虚偽であり法的に矛盾すると主張する。
しかしながら,上記1のとおり,ウイズドクター社が自己の名義と出損により本件商標の出願及び登録をすること,及びウイズドクター社が請求人に対して本件商標の無償使用を許諾したことは,ウイズドクター社が本件商標の出願をした平成17年12月19日よりも前に猛氏と請求人とで既に合意していた事実である(乙5)。そのため,ウイズドクター社が請求人に対して本件商標の使用許諾をした事実は,何ら法的に矛盾するものではない。
4 請求人へ商標の無償使用許諾について2
請求人はここでも,請求人の使用がウイズドクター社により使用許諾を受けることは論理上有り得ないと主張する。
しかしながら,上記3のとおり,ウイズドクター社が請求人に対して本件商標の無償使用を許諾したことは,ウイズドクター社が本件商標の出願申請をした平成17年12月19日よりも前に猛氏と請求人とで既に合意していた事実である(乙5)。論理的に有り得ないということなどない。
5 本件商標の使用の準備について
(1)請求人は,法人市民税領収証書(乙10)がどうして本件商標の使用の準備である証明なのか不明であると主張する。
しかしながら,仮に被請求人が本件商標を使用して酒類販売を行う意思を有していないのであれば,わざわざ法人市民税を納付することなどせず,被請求人を解散して清算手続等を行うはずである。しかるに,被請求人が解散や清算手続等を行わず,却って法人市民税の納付を続けているということは,取りも直さず,本件商標の商品を販売すべく,鋭意酒類販売の免許取得の申請準備をしているからに他ならない。
(2)また,請求人は,法人市民税の領収日付は平成30年8月27日であり,本件審判の請求の登録日である平成30年7月27日(甲6)よりも後であるから,取消を免れる証拠となり得ないとも主張する。
しかしながら,被請求人は,平成30年7月27日以前の法人市民税も納付している(乙15)。そのため,請求人による上記主張は失当である。
(3)なお,請求人は,被請求人が本件商標の使用の準備を始めているという主張は取って付けた主張であり,被請求人の商標は取消されるべきであると主張する。
しかしながら,上記1のとおり,ウイズドクター社が請求人に対して本件商標使用の対価を要求するようになったのは,請求人が猛氏との協力関係を解消し,猛氏を請求人から追放しようとしたからである。
猛氏は,請求人が猛氏からの提案を拒否したため,やむを得ず自ら被請求人を設立してウイズドクター社から本件商標を譲り受け,「車坂」の販売を試みようとしていた。ところが,請求人から本件取消審判の請求がなされ,本件商標については目下係争中となったことから「車坂」の販売ができない状態に陥っている。
このように,請求人による不当な本件審判の請求により損害を被っているのは,むしろ被請求人の方である。
6 被請求人の商標における登録行動の悪意について
(1)請求人はここでも,被請求人が請求人の依頼趣旨に反してウイズドクター社名義で商標登録出願してしまったと主張する。
しかしながら,繰り返し述べるとおり,ウイズドクター社が自己の名義と出捐により本件商標の出願登録をすること,及びウイズドクター社が請求人に対して本件商標の無償使用を許諾したことは,猛氏と請求人とで既に合意していた事項である。請求人の依頼に反して実施されたことではない。
(2)請求人は,ウイズドクター社による商標登録を申請した猛氏に高い悪質性がある等主張するが,繰り返し述べるとおり,ウイズドクター社は,経営難に陥っていた請求人に代わり,資金を拠出して本件商標の出願登録をし,しかも請求人に対して無債で本件商標を使用することを許諾しているのである。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは,同条第2項の規定により,被請求人において,その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し,又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り,その登録の取消しを免れない。
すなわち,本件商標の使用をしていることを証明するには,商標法第50条第2項に規定されているとおり,被請求人は,(1)本件要証期間に,(2)日本国内において,(3)商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,(4)その請求に係る指定商品のいずれかについての,(5)本件商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為。)をしていること,をすべて証明する必要がある。
なお,要証期間内における本件商標の商標権者は,平成27年7月27日から同29年12月12日までがウイズドクター社,平成29年12月13日から同30年7月26日までが株式会社SAKE蔵(以下「現商標権者」という。)である。
2 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(1)請求人について
請求人の履歴事項全部証明書(乙3)には,目的として「酒類製造,購入及び販売等」,代表取締役として「吉村久喜」「安村勝彦」,取締役として「吉村敏正」の記載があり,さらに,取締役として「吉村猛」が平成25年12月17日及び同27年12月18日重任の登記が記載され,同29年25日退任の登記が記載されている。
(2)ウイズドクター社について
ウイズドクター社の履歴事項全部証明書(乙4)には,目的として「不動産の取引に関する研究,コンサルタント業,化粧品・医薬部外品・医療器具・医療機器・介護用品のレンタル,リース及び販売業等」,「大阪府豊中市北桜塚三丁目1番33号」の記載があり,代表取締役として「吉村伊里恵」,取締役として吉村姓の2名が記載されている。
しかしながら,ウイズドクター社の代表取締役及び取締役と請求人の役員とを兼務している者は見当たらず,請求人の再生債権者表(乙11)にもウイズドクター社の名称は見当たらない。
その他,ウイズドクター社と請求人との関連を証する証拠は見当たらない。
(3)取締役会議事録(案)について
取締役会議事録(案)(乙5)には,取締役会を平成29年10月15日午後2時から開催したこと,代表取締役会長,代表取締役社長,取締役2名が出席したこと,「車坂」商標について,猛氏がネットで2?3万円で簡単に取れるので,ウイズドクター社で商標登録をした経緯がある,の各記載がある。
しかしながら,当該議事録の最終ページに請求人の代表取締役会長,代表取締役社長及び取締役の署名,押印がなく,作成日の記載もない。
(4)商品写真について
本件商標の商品価値を高めるため,営業及び宣伝に尽力したと被請求人が主張する請求人のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)(乙6の4葉目)には,左側の男性の左手に「車坂」と思しき標章が付された日本酒が写されている。しかしながら,当該商品写真からは,当該商品の製造者や当該商品写真の掲載日は確認できない。さらに,乙第6号証の1葉目ないし4葉目の各書面との関連も不明である。
(5)法人市民税領収証書等について
法人市民税領収証書等(乙10)によれば,平成30年8月27日,現商標権者が大阪府豊能府税事務所に法人市民税を納付したこと,電子申告完了済(乙15)によれば,令和元年5月23日に,現商標権者が平成30年4月1日から同31年3月31日までの市町村民税を申告したことは認められるが,本件商標の使用とは関係しない証拠である。
なお,猛氏は,本件商標をウイズドクター社から独自に設立した被請求人に登録変更し,現在,被請求人は,酒類販売免許を取得するため,被請求人の法人府民税を納付し,販売に向けた準備活動を行っているとも述べている。
3 判断
(1)使用者について
ア 被請求人は,本件商標の登録は,請求人と猛氏の協議によりウイズドクター社が同社名義で行い(乙5),同社が請求人に商標の無償使用を許諾した旨述べるので,請求人が通常使用権者であったのかについて,以下検討する。
上記2(1)ないし(2)のとおり,ウイズドクター社の代表取締役及び取締役は,請求人の役員を兼務している事実はなく,また,ウイズドクター社が請求人の全ての議決権を有する親会社であるといった事実もない。
さらに,上記2(3)のとおり,取締役会議事録(案)(乙5)は,請求人の代表取締役会長,代表取締役社長及び取締役の署名,押印がなく,作成日の記載もない。
そうすると,当該取締役会議事録(案)は,作成案のものであり,取締役会に出席した者の総意により作成,決定されたものということはできず,当該議事録に記載された日付(平成29年10月15日)に当該議事録の議事内容に係る請求人の取締役会が行われたことは明らかとはいえない。
その他,ウイズドクター社が請求人に対して本件商標の使用を許諾したことを裏付ける証左の提出はない。
以上よりすれば,ウイズドクター社は,請求人に対し,本件商標の使用について,黙示の許諾を与えていたものとはいえず,請求人が,本件商標の通常使用権者であると認めることはできない。
イ ウイズドクター社は,「酒類製造及び販売等」を事業の目的とはしておらず,また,被請求人は,本件商標の商品を販売すべく,酒類販売の免許取得の申請準備をしている旨述べていることからすれば,ウイズドクター社及び現商標権者が本件商標の使用者であったと認めることはできず,加えて,いずれか又は両者が本件商標の使用者であったと認めるに足る証拠は何ら提出されていない。
以上,ア及びイよりすれば,請求人が本件商標の通常使用権者であると認めることはできず,その他に,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件商標の使用者であったと認めるに足る証拠は見当たらない。
(2)商品写真について
商品写真(乙6)については,当該商品写真からは,当該商品(日本酒)の製造者や当該写真の掲載日は確認できないし,しかも,被請求人は,当該商品写真が本件要証期間内に撮影されたとする客観的な証拠を提出していないから,当該商品(日本酒)に「車坂」と思しき文字が付されているとしても,当該証拠によっては,本件商標権者(又はその使用権者)が,本件要証期間内に,当該商品(日本酒)に本件商標(本件商標と社会通念上同一のものを含む。以下同じ。)を使用したということはできない。
(3)法人市民税領収証書等について
法人市民税領収証書等(乙10)及び電子申告完了済(乙15)は,法人市民税,市町村民税に関する書面であって,本件商標の使用とは関係しない証拠であり,当該証拠をもって本件商標を使用して酒販販売業を行う準備をしている旨の被請求人の主張は,採用することができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,本件要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標


審理終結日 2020-03-13 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-05-25 
出願番号 商願2005-123789(T2005-123789) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y33)
最終処分 成立  
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 平澤 芳行
大森 友子
登録日 2006-11-10 
登録番号 商標登録第5001766号(T5001766) 
商標の称呼 クルマザカ 
代理人 岡田 充浩 
代理人 杉本 勝徳 

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