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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
審判 全部申立て  登録を維持 W35
管理番号 1363311 
異議申立番号 異議2019-900342 
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-24 
確定日 2020-06-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第6174997号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6174997号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6174997商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年6月18日に登録出願、第35類「リサイクル商品又は中古品を含む商品の売買に関する情報の提供,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,二輪自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,建具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,葬祭用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器・手動工具及び金具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,燃料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,写真機械器具及び写真材料の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,たばこ及び喫煙用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ろうそくの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ガラス製の置物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、令和元年7月29日に登録査定、同年8月30日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下、まとめていうときは「引用商標」という。)は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3147464号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成5年1月19日
設定登録日:平成8年4月30日
最新更新登録日:平成28年3月22日
指定商品:第3類「シャンプー,せっけん,その他のせっけん類,ヘアーコンディショナー,ヘアートリートメント,セッティングローション,ヘアースプレー,ヘアームース,ヘアージェル,パーマネント用液,コールドパーマ用液,染毛剤,その他の頭髪用化粧品,皮膚用化粧品,オーデコロン,香水類,その他の化粧品,香料類」
(2)登録第4009559号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年12月9日
設定登録日:平成9年6月6日
最新更新登録日:平成29年6月13日
指定商品:第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,紙製幼児用おしめ,荷札,印刷物,書画,遊戯用カード,文房具類(「昆虫採集用具」を除く。),事務用又は家庭用ののり及び接着剤」
(3)登録第4009560号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年12月9日
設定登録日:平成9年6月6日
最新更新登録日:平成29年6月13日
指定商品:第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜き,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,魚ぐし,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,家事用手袋,化粧用具,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),ねずみ取り器,はえたたき,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴」
(4)登録第4034713号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成7年10月3日
優先権主張:1995年(平成7年)4月4日 ドイツ連邦共和国
設定登録日:平成9年7月25日
最新更新登録日:平成29年6月13日
指定商品:第6類「鉄及び鋼,非鉄金属及びその合金,金属鉱石,建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製金具,金属製建造物組立てセット,金属製貯蔵槽類,金属製の滑車・ばね及びバルブ(機械要素に当たるものを除く。),金属製包装用容器,金属製荷役パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製人工魚礁,金属製の可搬式家庭用温室,金属製の吹付け塗装用ブース,金属製養鶏かご,金属製航路標識(発光式のものを除く。),金属製道路標識(発光式又は機械式のものを除く。),てんてつ機,キー,金属製管継ぎ手,金属製フランジ,コッタ,いかり,金属製ビット,金属製ボラード,かな床,金属製締付け金具,はちの巣,金網,ワイヤロープ,犬用鎖,金属製家庭用水槽,金属製工具箱,金属製貯金箱,金属製のきゃたつ及びはしご,金属製のネームプレート及び標札,金属製タオル用ディスペンサー,金属製帽子掛けかぎ,金属製郵便受け,金庫,金属製靴ぬぐいマット,金属製立て看板,金属製彫刻,金属製ブラインド,金属製の墓標及び墓碑用銘板,金属製のバックル,つえ用金属製石突き,アイゼン,カラビナ,金属製あぶみ,金属製飛び込み台,拍車,ハーケン」
(5)登録第4285287号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成6年12月9日
設定登録日:平成11年6月18日
最新更新登録日:令和元年6月25日
指定商品:第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,化粧品,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布」
(6)国際登録第754177号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
国際商標登録出願日:2001年(平成13年)2月8日
優先権主張:2000年8月11日 Germany
設定登録日:2002年(平成14年)7月19日
指定商品及び指定役務:第16類、第35類、第36類、第39類ないし第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、緑色の矢印と白抜きの矢印の2本を太極図のように巴形に配した図形の左から右に向かう白抜きの矢印の中に緑色で「REuse」の欧文字(以下「本件商標上段部分」という。)を配し、この下段に緑色で「メガチャンス」の片仮名(以下「本件商標下段部分」という。)を配してなる図形と文字との結合商標である。
そして、本件商標の指定役務との関係から、「REuse」の欧文字は、「地球環境にやさしい」、「資源の再利用に適した」、「資源の再利用に寄与する」といった意味合いを暗示させる一種の品質表示的な文字として認識されており、本件商標全体から見ると識別力がないか、あるいは極めて低いものとして理解され認識されるものである。
また、本件商標下段部分は、本件商標上段部分とは、視覚的に分離して看取されるだけでなく、観念的にも何ら結びつきのないものである。
したがって、本件商標上段部分と本件商標下段部分とは常に一体不可分のものとして認識されるものではなく、それぞれが独立して自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
イ 引用商標
引用商標1ないし引用商標5は、黒色の矢印と白抜きの矢印の2本を太極図のように巴形に配した特徴的な図形から構成されるものであって、引用商標6は、全体として「PRO EUROPE」(プロヨーロッパ)の文字を想起させるものではあるが、当該図形が世界的に著名な商標であることからして、図形部分のみによっても独立して自他商品・自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであり、図形部分は視覚的に文字部分と分離して看取されるものである。
また、引用商標1ないし引用商標5及び引用商標6の図形部分は、申立人が使用し、世界的に著名な商標と同一の図形である(甲11?甲20)。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、いずれも着色した矢印と白抜きの矢印の2本を太極図のように巴形に配したところに特徴を有する点で共通であり(ただし、着色矢印と白抜き矢印の位置は逆転している)、左から右に向かう(本件商標では白抜きの)矢印の中に書された欧文字「REuse」は、一種の品質表示的な文字で、本件商標全体から見ると識別力がないか、あるいは極めて低いものとして理解され認識されるものであることから、その図形部分において構成の軌を一にする類似のものである。
したがって、これらを時と処を異にして隔離的に観察した場合、前記差異は微差として印象が薄れ、あるいは捨象されて、これらより受ける印象は共通性の強いものとなるというのが相当であり、彼此相紛れるおそれがあるというべきものである。
そして、本件商標及び引用商標の全体構成から対比しても図形部分と文字部分とを常に一体不可分のものとして捉えられるものではないことから、上記の外観における共通性は、商標全体における相違点を優に凌駕し得るものというべきであり、また、その称呼や観念においても共通している。
エ 本件商標の指定役務には、引用商標の指定商品・指定役務と同一又は類似の役務が包含されている。
オ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標1ないし引用商標5は、申立人が使用する世界的に著名な商標であり、特にドイツ連邦共和国(以下「ドイツ」という。)をはじめとする欧州ではリサイクルを推奨するマークとしても広く知られている(甲11?甲20)。
また、ドイツをはじめとする欧州向けに当該マークが付された商品は、我が国にも多数輸入されており、欧州の商品を取り扱う小売店では、当該マークが付された商品が多数販売されていることから(甲21?甲24)、リサイクル業界だけでなく我が国における一般の需要者及び取引者をして著名な商標と認識されるに至っている。
なお、引用商標1ないし引用商標5に示されるリサイクルを推奨するマークには、申立人の名称の略称でもある「Der Grune Punkt」(中央の「Grune」の中の「u」には、ウムラウトが付されている。以下同じ。)の文字を上部に組み合わせて使用している例もある。
また、「Reuse(リユース)」と「Recycle(リサイクル)」とが世間一般で同義語的に使用されていることが、本件商標と、欧州においてリサイクルを推奨するマークとしても良く知られた申立人の引用商標1ないし引用商標5との間で誤認・混同を一層生じやすくしている。
さらに、本件商標は、全体を緑色で描かれているが、申立人の引用商標1ないし引用商標5も、実際の使用に当たっては緑色で描かれることも多く、「Der Grune Punkt」(邦訳:「緑の点」、「グリーンドット」)あるいは「緑のマーク」、「グリーンマーク」とも愛称されていることからも(甲11?甲14、甲16?甲20)、全体を緑色で描かれている本件商標と引用商標1ないし引用商標5とは誤認・混同を生じやすい。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人が使用する世界的に著名な商標である引用商標1ないし引用商標5は、同時にドイツをはじめとする欧州においてリサイクルを推奨する公的な要素を含むマークである(甲11?甲20)から、当該マークと関係のない我が国の一民間企業に対して、これと類似する図形を含む商標に商標登録を認めることは、欧州、特にドイツ国民の感情を害し、我が国とドイツの国際信義に反するものであって、両国の公益を損なうおそれが高いものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、緑色で左側から円弧を描くように下に向かって徐々に太くなる矢印状の図形(以下「矢印図形」という。なお、当該図形の内側の輪郭は、これと対照的に反対向きの矢印図形を表した形状をしている。)の内側に緑色で「REuse」の欧文字を表し、その下に緑色の「メガチャンス」の片仮名を配してなるものである。
そして、図形と文字を組み合わせた本件商標上段部分と文字のみからなる本件商標下段部分とは、視覚的に分離して看取されるものである上、本件商標は、その構成全体をもって、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情は見いだせないものであるから、本件商標上段部分と本件商標下段部分は、それぞれが独立して自他役務の識別標識としての機能を果たし得るというのが相当である。
そこで、本件商標上段部分についてみるに、同部分は、矢印図形と「REuse」の欧文字とを一体的に表した構成からなるところ、その構成中の矢印図形のみが着目されるというべき事情は見いだせない。また、同「REuse」の欧文字は、「再利用する、再利用」を意味する英単語であり(「新英和中辞典」研究社)、商品のリサイクルに関して「資源の再利用」等の意味を表す際に一般的に採択される語であることからすれば、それ自体、識別力の弱いものである。
そうすると、本件商標上段部分は、矢印図形から特定の称呼及び観念を認識させるとみるべき事情は見いだせない上、構成中の「REuse」の欧文字に相応して、出所識別標識として機能する称呼及び観念が生じるとはいい難いことからすれば、その全体をもって、特定の称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。
一方、本件商標下段部分についてみるに、当該部分からは、その構成文字に相応して、「メガチャンス」の称呼を生じるものであり、当該文字は辞書等に載録された語でないことから、特定の観念を生じるとはいえないものである。
してみれば、本件商標は、本件商標下段部分の「メガチャンス」の文字に相応して、「メガチャンス」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1ないし引用商標5
引用商標1ないし引用商標5は、別掲2のとおり、円輪郭図形内の右上部から下方円輪郭に沿って左上に向かう黒色の矢印及び左下部から上方円輪郭に沿って右下に向かう白抜きの矢印を巴状に配した図形からなるものである。
そして、引用商標1ないし引用商標5は、その構成全体をもって、特定の称呼及び意味合いを有するものとして認識されているというような事情は見いだせないものであるから、特定の称呼及び観念を生じるとはいえない。
(イ)引用商標6
引用商標6は、別掲3のとおり、その構成中に引用商標1ないし引用商標5と似通った図形が含まれているものの、当該図形は、他の構成文字との組合せからして、欧文字の「O」を図案化したものと容易に認識され、構成全体として「PRO EUROPE」の文字を表したものと看取されるというべきである。
そして、当該図形のみに着目されるというような事情は見いだせないものであるから、引用商標6は、その構成文字に相応して「プロヨーロッパ」の称呼を生じるものであり、当該文字は辞書等に載録された語でないことから、特定の観念を生じるとはいえないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標と引用商標1ないし引用商標5との類否について
本件商標と引用商標1ないし引用商標5は、それぞれ上記ア及びイ(ア)のとおりの構成よりなるところ、全体の外観においては、文字の有無の相違、色彩の相違という著しい差異を有することから、明確に区別できるものである。
また、本件商標上段部分と引用商標1ないし引用商標5とを比較するに、本件商標上段部分はその構成全体として一体のものとして認識し、把握されるというべきであるところ、本件商標上段部分と引用商標1ないし引用商標5とは、色彩、矢印の向きが相違していることに加え、「REuse」の文字の有無という明らかな差異を有するものであるから、外観において明確に区別できるものである。
そして、本件商標からは「メガチャンス」の称呼が生じるのに対し、引用商標1ないし引用商標5は特定の称呼を生じないものであるから、称呼において紛れるおそれはない。
また、本件商標と引用商標1ないし引用商標5は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし引用商標5とは、観念において比較することはできないとしても、称呼において紛れるおそれはなく、外観において明確に区別できるものであるから、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。
(イ)本件商標と引用商標6との類否について
本件商標と引用商標6は、それぞれ上記ア及びイ(イ)のとおりの構成よりなるところ、引用商標6は、構成中の「O」の文字を図案化した一体不可分の「PRO EUROPE」の文字からなるものとみるのが相当であり、引用商標6から図形部分を単独で分離し、これと本件商標とを比較して、商標自体の類否を判断することは許されないというべきであって、本件商標と引用商標6は、その外観において顕著に相違するものである。
そして、本件商標からは「メガチャンス」の称呼が生じるのに対し、引用商標6からは「プロヨーロッパ」の称呼が生じるものであるから、称呼において明瞭に聴別できるものである。
また、本件商標と引用商標6は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標6とは、観念において比較することはできないとしても、称呼及び外観において明らかに区別できるものであるから、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。
エ 本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務との類否について
本件商標の指定役務中には、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似の役務が包含されている。
オ 小括
以上のとおり、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似の商品及び役務であるとしても、本件商標と引用商標は、非類似の商標とみるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 引用商標1ないし引用商標5の周知性について
申立人は、メーカーや販売店の回収、分別、再利用義務を代行するために1990年に包装材関連の業者が共同で設立したドイツ法人であって、自治体が行う廃棄物処分とは別に、製造業者から商標の使用に関してライセンス料を徴収し、ゴミ回収、分別、包装材のリサイクルを管理している(甲13?甲15)。
そして、申立人が扱う包装容器には、リサイクルを推奨する引用商標1ないし引用商標5が、申立人の名称の略称でもある「Der Grune Punkt」の文字と共に付されている(甲11?甲15)。
申立人は、我が国にも、引用商標1ないし引用商標5が付された商品が多数輸入され、販売されていると主張し、証拠を提出している(甲21?甲24)が、化粧品の包装、酒の瓶及びトウモロコシの缶詰等に引用商標1ないし引用商標5が付されている写真が掲載されているのみであって、その撮影場所や撮影日時については確認することができない。
以上からすると、引用商標1ないし引用商標5は、包装容器に付され、ドイツにおける「リサイクル推奨マーク」として使用されているとしても、我が国における、引用商標1ないし引用商標5についての広告の方法・範囲・回数等に加え、当該マークが付された商品についての市場シェア、輸入量等について確認できないものであるから、引用商標1ないし引用商標5は、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして我が国において広く知られているということはできないし、また、そもそも「リサイクル推奨マーク」であるなら、商品及び役務の出所識別標識としては認識されないというべきである。
イ 本件商標と引用商標1ないし引用商標5との類似性の程度について
本件商標の上段部分と引用商標1ないし引用商標5とは、矢印をモチーフとした巴状の図形という点においては、ある程度の類似性を有するものといえる。
ウ 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品及び役務の関連性、需要者の共通性について
申立人は、引用商標1ないし引用商標5は、リサイクルを推奨するマークとして、各種商品の包装容器等に付されている等の主張をしているところ、「リサイクル推奨マーク」を各種商品に付す行為(ゴミ回収、分別、包装材のリサイクルの管理)と本件商標の指定役務とは別異のものであるから、両者の間に商品及び役務の関連性や需要者の共通性は見いだせない。
エ 小括
上記アないしウのとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標5とが、ある程度の類似性を有するものであるとしても、何より引用商標1ないし引用商標5は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであって、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る「リサイクル推奨マーク」を各種商品に付す行為との関連性や需要者の共通性は見いだせないものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないとみるのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は、世界的に著名な、公的な要素を含むマークであるから、その登録を認めることは、欧州、特にドイツ国民の感情を害し、我が国とドイツの国際信義に反するものであって、両国の公益を損なうおそれが高い旨主張する。
しかしながら、引用商標1ないし引用商標5は、上記(2)のとおり、各種商品の包装容器に付され、ドイツにおいて、「リサイクル推奨マーク」として使用されているとしても、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえない。
また、申立人は、ドイツにおける自治体等の公的機関に係る事業を行っているのではなく、製造業者から商標の使用に関してライセンス料を徴収し、ゴミ回収、分別、包装材のリサイクルを管理しているものであるから(甲13?甲15)、本件商標が公的なマークであるともいい難い上、ドイツが国家として引用商標1ないし引用商標5に係る「リサイクル推奨マーク」を保護している状況も確認することはできない。
加えて、本件商標と引用商標1ないし引用商標5とは非類似の商標であることからすれば、本件商標の登録が、ドイツ国民の感情を害し、国際信義に反するものであるということはできない。
さらに、本件商標は、他の法律によりその使用等が禁止されているものではなく、その構成自体が、非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出もない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当するということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
【別掲1】
本件商標(色彩については、原本参照。)

【別掲2】
引用商標1ないし引用商標5

【別掲3】
引用商標6



異議決定日 2020-06-08 
出願番号 商願2018-79851(T2018-79851) 
審決分類 T 1 651・ 261- Y (W35)
T 1 651・ 263- Y (W35)
T 1 651・ 22- Y (W35)
T 1 651・ 271- Y (W35)
T 1 651・ 262- Y (W35)
最終処分 維持  
前審関与審査官 滝口 裕子高橋 梨理子堀内 真一 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2019-08-30 
登録番号 商標登録第6174997号(T6174997) 
権利者 株式会社 マルカン
商標の称呼 リユーズメガチャンス、リユーズ、メガチャンス、メガ、チャンス 
代理人 浜田 治雄 
代理人 丸岡 裕作 

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