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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
管理番号 1362431 
審判番号 無効2017-890079 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-15 
確定日 2020-04-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5931607号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成30年8月23日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10141号、平成31年3月7日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5931607号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5931607号商標(以下「本件商標」という。)は、「BULK AAA」の文字を標準文字で表してなり、平成28年9月20日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き」を指定商品として、同29年2月21日に登録査定、同年3月10日に設定登録されたものである。
その後、本件商標の商標権は、令和元年8月19日受付の商標権の放棄によりその登録が抹消されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の2件である。
1 商標登録第946635号
商標登録第946635号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり、「Barque」及び「バルク」の文字を2段に横書きしてなり、昭和45年4月23日に登録出願、第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く),歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く),香料類」を指定商品として、同47年1月29日に設定登録され、その後、平成13年9月19日に指定商品を第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」とする指定商品の書換登録がされたものである。
なお、引用商標1は、取消2018-300107及び取消2018-300108の審判事件がそれぞれ平成30年8月1日及び同月8日に確定し、引用商標1の商標権は取り消された。
2 商標登録第5738351号
商標登録第5738351号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成26年7月16日に登録出願、第3類「男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯磨き,男性用の香料,男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛」を指定商品として、同27年2月6日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
なお、上記1及び2の登録商標をまとめて、以下「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第133号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判請求書における主張
(1)本件商標を無効とすべき理由
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきものである。
(2)本件商標と引用商標との類否
ア 商標の類否
(ア)本件商標は、「BULK AAA」の欧文字よりなるところ、「BULK」は、「ばら荷、容量、大量」といった意味合いを有する英単語で、「AAA」は、一種の記号又は略号と認識されやすいものであるほか、他の文字と組み合わせて使用する場合には、アルファベットの第1文字を3つ重ねて表示してなる構成から商品の品質、等級を誇称するための一般的、普遍的な表示と理解される。
したがって、本件商標の要部は、「BULK」の文字部分にあり、これより「ばら荷、容量、大量」といった観念と「バルク」の称呼が生じるものである。
(イ)引用商標1は、「Barque」の欧文字を上段に、「バルク」の片仮名を下段に、それぞれ横書きしてなる二段書き商標であり、「Barque」は、それ自体は通常の辞書類に掲載されていない言葉で、「帆船」といった意味合いを有する言葉である。
したがって、引用商標1は、無意味な造語あるいは「帆船」ほどの意味合いを看取させ、片仮名部分の字音どおりの「バルク」の称呼を生じるものである。
(ウ)引用商標2は、上記第2の2のとおりの構成よりなるところ、出所識別標識として認識される構成部分は、上段の「BULKHOMME」の文字部分であり、かつ、太い書体で強調表示された「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与える構成要素であることは明らかである。
また、引用商標2中の「HOMME」の文字部分は、「男性」を意味するフランス語であり、指定商品との関係において「男性用の化粧品」等であることを表示するために必要、かつ、適切な表示として通用しているものであることは経験則上明らかであるから、当該文字部分から単独の出所識別標識としての観念、称呼は生じないものと認められる。
すなわち、つつみのおひなっこや事件最高裁判決の示す判例法理に従えば、引用商標2の要部は「BULK」の文字部分にあり、当該文字部分を抽出して本件商標との類否を比較することが許されることは明らかである。
よって、本件商標の要部「BULK」と引用商標2の要部「BULK」とを比較すると、両者は同一の文字構成よりなるから、これらは互いに類似する商標というべきである。
イ 指定商品の類否
本件商標の指定商品は、「化粧品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き」であるのに対し、引用商標1の指定商品は、「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」、引用商標2の指定商品は、「男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯磨き,男性用の香料,男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛」であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一、類似関係にあることは疑いない。
ウ 市場における混同のおそれ
(ア)請求人は、引用商標2のほか、次の商標を現在出願中であり、かつ、市場において使用している。
a 商願2017-034718
商標:「BULK HOMME」別掲3のとおり
指定商品:男性用の化粧品 ほか
b 商願2017-035737
商標:「BULK\HOMME」別掲4のとおり
指定商品:男性用の化粧品 ほか
(イ)本件商標は、株式会社マツモトキヨシホールディングスのプライベートブランドとして、「導入保湿化粧水、導入保湿美容液、保湿クリーム」に使用されており、本件商標の商標権者は、これらの化粧品類の容器に本件商標を付して株式会社マツモトキヨシホールディングスに販売している(甲7?甲10)。
そして、甲第7号証に明らかなように、本件商標権者の製造に係る上記製品容器には、本件商標の構成中の「AAA」の文字部分を「Bulk」の文字の右上に小さく表示しており(以下「BulkAAA」という。)、かつ、株式会社マツモトキヨシホールディングスのBulkAAAに関するウェブサイト(甲7)中に次の記載がある。
a 1頁
AAA品質 ※5
b 2頁
AAA:トリプルA=評価※5を表現
c 6頁
※5 バルクトリプルA品質基準による評価
d 当該ウェブサイトのURLは次のとおりである。
http://www.matsukiyo.co.jp/mkc/bulkaaa/
e 上記のとおり、本件商標権者は、本件商標「BULK AAA」を「BulkAAA」のように変更使用するとともに、「AAA」の文字部分が品質誇称表示であることを自認している。
(ウ)甲第11号証の容器比較写真に明らかなように、請求人の販売に係る化粧水の容器と本件商標権者の製造販売に係る化粧水の容器とは、一見して同じ形状であり、商標の表示位置もほとんど変わらない。
(エ)請求人が「BULK HOMME」ブランドの男性用化粧品の販売を開始したのは、平成25年(2013年)4月からであり、当該ブランドは、男性用高級化粧品として市場において高い評価を受けているものである。
すなわち、本件商標権者による本件商標に係る商標権の取得は、請求人の「BULK HOMME」ブランドへのフリーライドを正当化するための不正競争目的によるものというべきであり、本件商標に接した需要者がこれを引用商標2のほか、請求人の「BULK HOMME」ブランドと混同するおそれの高いことは多言を要するまでもなく明らかである。
エ 結論
以上のとおり、本件商標は、いわゆる三点観察において互いに類似することの明らかな商標である結果、引用商標との間で商品出所の混同を生じるおそれがあり、指定商品も抵触関係にあるものであるから、本件商標は請求人の所有に係る引用商標と類似関係にあり、また、請求人は、本件商標の有効性を争うことについて明確な利害関係を有するものである。
2 上申書における主張
被請求人が提出した審判事件答弁書における主張に対し、被請求人の主張項目ごとに以下のとおり弁駁する。
(1)「BULK」の意味合いについて
被請求人は、「BULK」は、化粧品の分野においては、一般的な英単語としての意味合いではなく、「化粧品の中身」という意味合いで使用されている取引の実情が存在するから、化粧品との関係において、「BULK」は「化粧品の中身」を意味する語である旨主張している。
しかしながら、被請求人の引用する化粧品製造会社等のインターネットホームページに関する情報は、「化粧品」と「バルク」の検索ワードを入力することで恣意的に収集した情報の引用にすぎないものと推察され、かつ、これらはいずれも化粧品の製造工程に関する情報であり、何ら一般需要者が「BULK」を「化粧品の中身」と認識している事実を示すものではない。
また、全ての引用例において、「バルク」が化粧品の中身を意味する言葉であることを説明、示唆している事実は、逆にこうした説明、示唆がなければ当該意味合いを理解できない取引の実情の存在をうかがわせるものというべきである。
また、仮に、化粧品の製造販売に従事する者が「BULK」の語に接して「BULK」=「バルク」=「化粧品の中身」を連想想起したとしても、商標の使用により出所の混同を生じるおそれがあるのは、主として化粧品のユーザーである一般需要者であるところ、多くの一般需要者が化粧品業界の専門用語を理解しているはずはないから、「BULK」は、化粧品との関係においても出所識別標識として機能し得る文字といえる。
(2)「AAA」の識別力
被請求人は、「AAA」は自他商品識別標識としての機能を果たし得る一種の造語として把握されるべきものと主張している。
しかしながら、「AAA」の語は、例えば、経済界においては企業、政府や発行債券に関する信用力の格付けにおける最上位を意味する等級表示である(例えば、アメリカの格付け会社であるムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズは著名であるが、その他日本の格付機関においても同様の等級表示が用いられている)ほか、プロスポーツ関係では米国の野球チームについてマイナーリーグの最上位であることを意味することは一般需要者間に広く知られた事実と思われる。
また、本件商標は、「BULK」と「AAA」の2つの文字部分を両文字部分の間に一文字分のスペースを空けて配置した構成よりなるところ、前半の「BULK」と後半の「AAA」とに観念上の結び付きはなく、全体として一つの観念を生じることもないから、一般需要者は、後半の「AAA」の文字部分を何らかの格付けや最上位を意味する品質誇称表示のように理解する蓋然性は、仮に化粧品等との関係において一般的な等級表示として使用されている事実がなくとも、経験則に照らして高いものというべきである。
(3)本件商標の要部について
被請求人は、「BULK」は通常の辞書に載っている一般的な英単語であり、これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはない旨主張するが、誤りである。既成語であっても需要者に強く支配的な印象を与えている商標は枚挙にいとまがない。
また、被請求人は、意図的に請求人が示した甲第7号証の第1頁の最終行と第2頁の第1行を分断して、被請求人が明らかな品質誇称表示として使用している「AAA品質」の文字の大々的な使用事実を隠している。
被請求人は、「AAA品質」等の記載は商品についての間接的かつ漠然としたイメージを示すためのものであるとか、かかるページを閲覧した需要者が「Bulk」を要部として認識することはないと主張している。
しかしながら、使用商標「BulkAAA」の外観構成と「AAA品質」の文字を強調した記載に接した需要者は、「BulkAAA」中の「AAA」の文字部分を品質誇称表示の類と捉え、「Bulk」ブランドの最高級品のように認識理解するとみるのが経験則上自然である。
(4)引用商標1の観念及び称呼について
被請求人は、引用商標1の欧文字「Barque」は辞書類に掲載例があるから造語として捉えられことはなく、「帆船」の観念のみを生じ、「Barque」の部分から生ずる称呼は「バーク」であり、引用商標1の全体から直ちに「バルク」の称呼が生じるということはできない旨主張している。
しかしながら、一部の辞書類に掲載されている言葉であれば、常に需要者はその語義を正しく理解しているということはなく、見慣れない欧文字の単語にあえて読み仮名が振られていれば、その読み仮名の字音どおりの称呼が生じることは自明の理であるから、引用商標1からは「バルク」の称呼のみが生じることは明らかである。
(5)本件商標と引用商標1の類否について
本件商標「BULK AAA」中の「AAA」の文字部分は品質誇称表示と認識される結果、「BULK」の文学部分から「バルク」の称呼を生じるのに対し、引用商標1「Barque\バルク」からはその字音どおりの「バルク」の同一称呼を生じる。また、大半の一般需要者がこれら見慣れない英単語の正確な意味合いを理解しているとは思われないから、観念上の同一性を論じる余地はなく、文字構成の相違を考慮しても称呼が同一である点は実際の取引現場における混同のおそれを考慮する際に重視されるべきで、両商標は互いに類似するものと思料する。
請求人は、引用商標2等の登録審査において引用商標1を商標法第4条第1項第11号の先願先登録類似商標として引用されたため、当該拒絶理由を解消するために引用商標1に係る商標権の譲渡を受けたものである。すなわち、引用商標2の主要な構成部分である「BULKHOMME」と引用商標1「Barque\バルク」は類似すると認定されているのであるから、「BULK」を商標の要部とする本件商標も当然に引用商標1に類似するものと認定されるべきである。
(6)引用商標2の要部について
引用商標2の外観構成上、上段の「BULKHOMME」の文字部分が結合商標であることは争わないが、「HOMME」の文字部分が化粧品関係やファッション関係の商品に関して「男性用」を意味する言葉として一般に通用することは明らかであるから、需要者の注意をひく構成部分は太く表示された「BULK」の文字部分にあり、当該文字部分は需要者に出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成要素に該当する。
また、「BULK」が「化粧品の中身」を意味する一般用語として需要者間で通用している事実はなく、仮に需要者がこうした意味合いを認識したとしても、それゆえに出所識別標識として機能しない構成要素とみるべき理由はない。
(7)本件商標と引用商標2の類否について
被請求人による本件商標の使用態様「BulkAAA」をみれば、需要者は「Bulk」の文字部分に注意をひかれることは明らかであり、被請求人の意図もここにあることは明白である。
被請求人は、ブランド・コンセプトの説明として「AAA品質」と謳っているのであるから、「AAA」の文字部分を商標の要部と主張することは事実に反し許されない。
被請求人の使用商標に接した需要者は、「Bulk」ブランド製品ラインの最高級品シリーズをイメージするものと思われる。
他方、引用商標2中の「HOMME」は「男性用」を意味する品質等表示としてしか認識される余地はないから、「BULKHOMME」の文字部分が常に一連一体の造語商標と需要者に認識されるとは限らず、強調表示された「BULK」の文字部分が出所識別機能を発揮する商標の要部として分離観察され得ることは否定できないものと思料する。
したがって、本件商標「BULK AAA」と引用商標2「BULKHOMME\・・・」とは、商標の要部「BULK」を共通にする類似商標である。
(8)「つつみのおひなっこや」事件の判例法理の適用について
本件商標中の「AAA」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるべき理由は、被請求人による本件商標の上記使用態様「BulkAAA」「AAA」「AAA品質」である。
また、本件商標中の「BULK」の文字部分が分離観察されるべき理由は、引用商標2他請求人の「BULK HOMME」商標が周知性を獲得していることの他上記(7)に記載のとおりである。
(9)請求人の後願商標登録出願について
請求人の出願商標、商願2017-034718(登録第6006367号)と商願2017-035737(登録第6006373号)は、本件商標を先願先登録類似商標として引用されることなく商標登録を受けているが、当該事実が直ちに本件商標と引用商標2との類似性を否定する根拠足り得ないことはいうまでもない。
(10)化粧品容器に係る主張について
請求人は、甲第11号証の写真で示した化粧品容器を化粧品とは別に販売している。
被請求人の製造に係る「BulkAAA」の使用対象商品の容器は、市場における先行販売商品である請求人の「BULK HOMME」化粧品専用容器と外形において酷似する他、小さな英文字による商品説明、商標の表示位置など請求人の化粧品専用容器を強く意識したデザインであることは明らかである。
(11)本件商標と引用商標2との混同のおそれについて
引用商標2は男性用化粧品の人気ブランドとして女性を含めて日本国内の一般需要者の間で広く知られていることから、他人が「BULK」を要部とする商標を化粧品類について使用すると商品の出所について混同を生じるおそれが高い。
実際に、被請求人の「BulkAAA」製品を請求人の製造に係る商品と混同して購買してしまった需要者が多数いることが分かっている。
請求人は、引用商標2の周知性を示す情報と、インターネット上に公開されている混同の事実に関する情報の一部を提出する。
(12)「BULK」の独占適応性について
被請求人は、「BULK」化粧品の「中身」を意味する一般用語として使用されている事実があり、「BULK」は一私人に独占させるべきではなく、独占適応性を欠く旨主張している。
他方で、被請求人は、商願2018-021054を化粧品等を指定商品として出願している。
当該出願商標は、一見して「BULK」の文字と図形との結合商標であると認識できる商標であるから、審判事件答弁書における主張に反して「BULK」を商標として使用しようとする意思を有することは明らかである。
被請求人の「BULK」の独占適応性に関する主張はその実際の行動と矛盾している。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を審判事件答弁書及び上申書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、枝番号の全てを引用するときは、以下、枝番号を省略して記載する。
1 審判事件答弁書における主張
(1)「BULK」の意味合いについて
ア 化粧品との関係において、バルクとは化粧品の中身を意味する語として一般に使用されており、請求人のウェブサイト及び請求人商品を取り扱う会社のウェブサイトにおいても明示されている事実がある。例えば、「バルクとは、美容業界で製品の“中身”そのものを指す言葉です。」といった説明がされている。すなわち、請求人自身が「バルク(中身)」と一般用語として使用しているものである(乙1)。
また、大手化粧品ブランドのウェブサイトを始めとして、様々なウェブサイトにおいても同様の意味で使用されている(乙2)。
イ 請求人は、「BULK」が「ばら荷、容量、大量」といった意味合いを有する英単語である旨主張している。
しかしながら、化粧品の分野においては、一般的な英単語としての意味合いではなく、「化粧品の中身」という意味合いで使用されている取引の実情が存在する。
したがって、化粧品との関係において、「BULK」は、「化粧品の中身」を意味する語である。
(2)「AAA」の識別力について
ア 請求人は、本件商標の構成中「AAA」は品質表示である旨主張する。
しかしながら、請求人が同主張の根拠として挙げているのは被請求人製品を紹介するウェブサイトのみであり、本件商標の指定商品において請求人が主張するように品質表示として用いられていることを示す客観的な根拠は何ら示されていない。
請求人が唯一の根拠として提出した甲第7号証のウェブサイトの記載は、商品についての間接的、かつ、漠然としたイメージを示すためのものにほかならず、これをもって本件商標の構成中の「AAA」が商品の特徴を直接的、かつ、具体的に表示するものとして取引者、需要者において、認識、把握されているものとは到底いえない。
そして、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「AAA」が商品のグレード等を表示する語として取引上一般に使用されてはいないのであるから、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質等を直接的、かつ、具体的に表示するものとして理解されるものではない。したがって、「AAA」は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る一種の造語として把握されるべきものである。
イ 「AAA」の文字については、多数の出願、登録例が存在している(乙3)。特に、商願2010-069442(乙3の1?3)は、本件商標と同一、類似の商品を指定して登録査定に至っていることから、「AAA」が本件商標の指定商品との関係においても識別力を有する語であることを示すものである。
したがって、本件商標の構成中の「AAA」の文字が一般的、普遍的な表示であるとする請求人の主張は失当である。
(3)本件商標の要部について
ア 請求人は、本件商標の要部は「BULK」である旨主張している。
しかしながら、「BULK」は、請求人が認めるとおり、通常の辞書に載っている一般的な英単語であり、これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはない。
イ 「BULK」は、「化粧品の中身」を意味する語であり、請求人自身が「バルク(中身)」と一般用語として使用している事実がある。そうすると、特に化粧品との関係においては、「BULK」は、より一層識別力の弱い語であることは明らかである。
ウ 本件商標の構成中「AAA」の文字については、本件商標の指定商品の分野を含め、様々な商品について、それ単体でも登録が認められている識別力のある語である。
請求人は、甲第7号証のウェブサイトにおける「AAA品質」「AAA:トリプルA=評価を表現」「バルクトリプルA品質基準による評価」との表示を証拠としているが、これらの記載は、商品についての間接的、かつ、漠然としたイメージを示すためのものにほかならず、さらに、「Bulk:バルク=化粧品の中身、品質」との説明も記載されており(甲7、2頁)、かかるウェブサイトを閲覧した需要者が「Bulk」を要部として認識することはない。
したがって、本件商標の構成中「BULK」のみが出所識別標識としての機能を有するものではないから、請求人の、本件商標の要部は「BULK」であるとする主張は失当である。
エ 以上より、本件商標は、一連一体の造語として捉えられるものであるから、特定の観念を有するものではなく、「バルクトリプルエー」の称呼を生じるものである。
(4)引用商標1の観念及び称呼について
ア 請求人は、引用商標1の欧文字「Barque」について、それ自体は通常の辞書類に掲載されていない言葉であるものの、「帆船」といった意味合いを有するとし、引用商標1は、無意味な造語あるいは「帆船」ほどの意味合いを有する旨主張している。
しかしながら、小学館発行の「ランダムハウス英和大辞典」において、「Barque」は、「Bark」と同義の語として掲載されており、対応する日本語は、カタカナで「バーク」と表され、また、帆船を示す語である旨の解説がされている(乙4)。
また、一般需要者に多用されるウェブ上の英和辞典「英辞郎」においても「Barque」は掲載されており、「ランダムハウス英和大辞典」と同様に対応する日本語はカタカナで「バーク」であり、帆船を意味する語であることが容易に把握できる(乙5)。
さらに、オンライン百科事典であるウィキペディアにおいては、「バーク(英:barque、barc、bark)は、帆船の1種である。」と紹介されている(乙6)。
イ 以上より、引用商標1の欧文字「Barque」は、造語として捉えられることはなく、「帆船」の観念のみを生じる。また、「Barque」の部分から生じる称呼は、「バーク」であり、引用商標1の全体から直ちに「バルク」の称呼が生じるということはできない。
(5)本件商標と引用商標1の類否について
ア 請求人は、引用商標1について、無意味な造語又は「帆船」の意味合いを看取させるものであり、「バルク」の称呼が生じると述べるにとどまり、本件商標と引用商標1の類否について何ら主張をしていない。
イ 本件商標は、上記(3)で述べたとおり、一連一体の造語として捉えられるものであり、特定の観念を有するものではなく、「バルクトリプルエー」の称呼を生じるものである。
ウ 引用商標1については、上記(4)で述べたとおり、「Barque」の欧文字からは、「帆船」の観念のみを生じる。
エ 本件商標の構成中の「BULK」の部分が分離して観察されることはないが、仮に請求人の主張どおり分離して観察された場合であっても、「BULK」と「Barque」は、共に辞書に掲載されている英単語であり、観念が全く異なる非類似の商標である。また、上記4で詳述したように、「BULK」と「Barque」は、称呼も「バルク」と「バーク」で異なる非類似の商標である。さらに、「BULK」は、「化粧品の中身」を意味する一般用語であり、これに対する権利の主張は認められるものではない。
したがって、本件商標と引用商標1は、観念において比較することはできず、また、外観及び称呼が大きく異なる非類似の商標である。
(6)引用商標2の要部について
ア 請求人は、「HOMME」の文字は「男性」を意味するフランス語であり、指定商品との関係において、出所識別標識としての観念、称呼は生じないため、引用商標2の要部は、「BULK」である旨主張している。
しかしながら、引用商標2は、上段に「BULKHOMME」の文字が配され、下段は罫線で区切られた左に二段で書き表された「SIMPLE\LUXURY」の文字が、右に三段で書き表された「TRUE LUXURY IS ABOUT\SIMPLICITY.THIS IS WHAT\OUR BRAND IS BASED UPON.」の文字が配された構成からなる商標である。下段に「SIMPLE\LUXURY」及び「TRUE LUXURY IS ABOUT\SIMPLICITY.THIS IS WHAT\OUR BRAND IS BASED UPON.」の文字が配されることにより、上段の「BULK」の文字が商標全体に占める割合は1/4程度に留まるものである。
イ 上段の「BULKHOMME」の文字について、「BULK」がやや太字で表されているものの、続く「HOMME」とは同一の書体で均等間隔に記載されており、上段は「BULKHOMME」が一連一体として看取されるのが通常である。
ウ 引用商標2の構成中、出所識別標識として認識される部分が「BULK」ではなく「BULKHOMME」であることは、請求人も、審判請求書における請求の理由中で「次に、引用商標2は上記のとおりの構成よりなるところ、出所識別標識として認識される構成部分は上段の『BULKHOMME』の文字部分であり・・・」と自白している。
エ 請求人は、引用商標2の構成中「BULK」が強く支配的な印象を与えると主張しているが、そのように解すべき特別な事情はなく、取引実情からも請求人の商品は、「バルクオム」と認識されている事実を以下に述べる。
(ア)第一に、前述のとおり、請求人自身が「バルク(中身)」と一般用語として使用している事実があり、一般用語の部分が要部として抽出されないのは明白である。
(イ)第二に、請求人の商品が「BULK」「バルク」との略称で認識されている事実はない。請求人の「BULKHOMME」ブランドの商品の感想等を掲載しているウェブサイトにおいては、一貫して「バルクオム」の記載が使用され、「BULKHOMME」は一連一体の商標として取り扱われている(乙7)。インスタグラムにおける請求人商品に言及した投稿でも、「#バルクオム」「#bulkhomme」と一連一体で捉えたハッシュタグが付されている(乙8)。また、請求人の名称は「株式会社バルクオム」であり、今後、請求人商品が流通するほどにその出所としての請求人略称「バルクオム」として認識され、ますます「BULKHOMME」は、一連一体の造語として「バルクオム」の称呼とともに流通すると考えるのが自然である。さらに、請求人の代表者であるA氏は、請求人代表者であることを明示した自身のツイッターアカウントで「マルチブランド戦略は絶対にとらない」旨を一般需要者に向けて公言している。すなわち、請求人の商品について、ハウスマークとペットネームが同一であり、かつ、同一の出所から「BULKHOMME」以外の商標を使用した商品が一切販売されないことは、一般需要者にとっても当然に知られた事実である(乙9)。
(ウ)第三に、「HOMME」は、「男性」を意味するフランス語であっても、その称呼は「オム」と短い2音であり、前後の言葉とあいまって一連になりやすい語である。
この主張を証明するものとして併存例を示す(乙10)。
(エ)「BULKHOMME」についても、「バルクオム」で5音と短い称呼であり、一連一体として「バルクオム」の称呼のみが生じる。
(オ)請求人の名称は、「株式会社バルクオム」であり、需要者の間で「バルクオム」とカタカナで紹介されている例が多数存在することは前述のとおりである。「HOMME」は、「男性」を意味するフランス語であっても、カタカナの「オム」から「男性」という観念が想起されることはなく、請求人の商標が「バルクオム」と一連で認識されていることは明らかである。
オ 以上より、上段に「BULKHOMME」の文字が配され、下段は罫線で区切られた左に二段で書き表された「SIMPLE\LUXURY」の文字が、右に三段で書き表された「TRUE LUXURY IS ABOUT\SIMPLICITY.THIS IS WHAT\OUR BRAND IS BASED UPON.」の文字が配された構成からなる引用商標2から「BULK」の文字が要部として抽出されることはない。特に化粧品の分野においては、「BULK」が一般用語であることもあいまって要部とされることはあり得ない。
(7)本件商標と引用商標2の類否について
ア 本件商標は、欧文字「BULK AAA」を標準文字で表してなる商標であり、一連一体の造語として捉えられるものであるから、特定の観念を有するものではなく、「バルクトリプルエー」の称呼を生じる。
イ 引用商標2は、上段に「BULKHOMME」の文字が配され、下段は罫線で区切られた左に二段で書き表された「SIMPLE\LUXURY」の文字が、右に三段で書き表された「TRUE LUXURY IS ABOUT\SIMPLICITY.THIS IS WHAT\OUR BRAND IS BASED UPON.」の文字が配された構成からなる商標である。仮に引用商標2の中で比較的大きな文字で表された上段が要部であるとしても、その文字「BULKHOMME」は、一連一体の造語として看取されるべきものであり、特定の観念を生じず、「バルクオム」の称呼を生じるものである。
したがって、本件商標と引用商標2は、観念において比較することはできず、また、外観及び称呼が大きく異なる非類似の商標である。
(8)「つつみのおひなっこや」事件について
ア 請求人は、「つつみのおひなっこや」判決を引用して「BULK」の部分を抽出することが許されると主張しているが、判決の理解に誤りがある。
イ 「つつみのおひなっこや」事件は、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである。」と判示し、全体を一体的に観察するのが原則としている。
ウ 請求人は、この点について「AAA」は、品質、等級を誇称するものと主張しているのみであり、上記判決が示した例外的に分離して観察することが許される特別な事情を何ら証明していない。
前述のとおり、「BULK」は、一般的な英単語であり、さらに、「化粧品の中身」を意味する一般用語でもあることから、本件商標の構成中の「BULK」が出所識別標識として強く支配的な印象を与えることはない。
また、「AAA」は、単独で識別力が認められている商標であり、本件商標の指定商品において請求人が主張するように品質表示として用いられている事実はない。
エ かかる主張を補強するものとして、審決及び判決を有利に援用する(乙11)。
(9)請求人の後願商標登録出願について
ア 請求人は、以下の商標登録出願について言及している。これら2件の出願は、いずれも本件商標の出願日より後に、本件商標の指定商品と同一の類似群の商品を指定して出願されたものである。そして、これら2件の商標は、平成29年12月22日付けで登録に至っている(乙12)。
(ア)商願2017-034718(登録第6006367号)
出願日:平成29年3月15日
商標:「BULK HOMME」別掲3のとおり
(イ)商願2017-035737(登録第6006373号)
出願日:平成29年3月17日
商標:「BULK\HOMME」別掲4のとおり
イ 本件商標と引用商標2は、いずれも「BULK」を要部とするものではないという主張は、上記登録商標の存在によっても裏付けられる。
上記ア(ア)の登録商標は、引用商標2の上段「BULKHOMME」と同一の態様である。また、上記ア(イ)の登録商標は、上段の「BULK」の文字が下段の「HOMME」の文字と比して大きな字体で表された商標である。
これら2件の商標が登録を認められたことは、引用商標2の上段「BULKHOMME」と本件商標とは非類似の商標であり、かつ、「BULK」が「HOMME」と比して大きな字体で表された上記ア(イ)の登録商標と本件商標も非類似の商標であることを示すものにほかならない。
そうとすれば、本件商標の後願として併存が認められた「BULKHOMME」に更に文字を付加してまとまりよく長方形に収めた引用商標2が、本件商標とは非類似の商標であることは疑う余地もない。
(10)化粧品容器に係る請求人の主張について
請求人は、被請求人の製造販売に係る化粧水の容器と請求人の販売に係る化粧品の容器は一見して同じ形状であり、商標の表示位置もほとんど変わらない旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第11号の判断に際しては、出願商標、登録商標そのものの類否が問題となるのであって、請求人が主張する容器の形状や商標を付す位置は商標の類否判断とは全く関係がないものである。
また、両者の容器の形状及び表示位置はごくありふれたものである。
なお、甲第11号証に示された請求人の販売に係る化粧品の容器は、空ボトルとして販売されているものであって、本件商標の指定商品とは非類似の商品であることを念のため申し添える。
(11)本件商標と引用商標2が混同を生じないことについて
ア 請求人は、本件商標の商標登録は請求人の「BULKHOMME」ブランドへのフリーライドを正当化するための不正競争目的によるものであること及び需要者が「BULKHOMME」ブランドと混同するおそれがある旨主張している。
しかしながら、その理由としては「多言を要するまでもなく明らかである」と述べるのみであり、請求人の主張は、何ら根拠のない失当なものである。
イ 被請求人による本件商標の採択及び商標登録は、フリーライドその他の不正競争の目的によるものではない。また、既に述べた本件商標と引用商標2が非類似であるという事実に加え、以下のような取引の実情が存在しており、本件商標は、引用商標2との関係において混同を生ずるおそれがないものである。
(ア)本件商標は、一連一体として捉えられ「バルクトリプルエー」の称呼を生じるものである。実際に、雑誌掲載時のクレジットは、「バルクトリプルA」と掲載され(乙13)、ウェブ媒体への掲載時には「(バルクトリプルエー)」又は「(バルクトリプルA)」という称呼が商標と併せて表記されている(乙14)。
(イ)SNSのインスタグラムにおいて、被請求人の商品について言及した投稿では、「#バルクトリプルA」「#bulkaaa」「#バルクトリプルエー」といった、いずれも本件商標を一連一体で捉えたハッシュタグが付されている(乙15)。インスタグラムは、近年では雑誌やウェブ媒体と同様、あるいはそれ以上に需要者の商品選択及び情報収集に影響を有する媒体であり、そこにハッシュタグとして記載された商品名は、一般需要者に広く浸透しているものといえる。
(ウ)本件商標を付した商品については、出荷明細書や請求書といった取引書類においても、一貫して「バルクトリプルA」、「BULKAAA」と記載されている(乙16)。
すなわち、本件商標は、一般需要者及び取引者の間において、一貫して「バルクトリプルエー」と呼び表され、一連一体の商標として取り扱われているものである。
加えて、上記(6)で述べたように、請求人の商品が「BULK」「バルク」との略称で認識されている事実はなく、かかる状況下において被請求人の商品と請求人の商品との間で混同を生ずるおそれはない。
(12)「BULK」の独占適応性について
上記(1)で述べたとおり、請求人のほか、化粧品業界の多数の第三者によって「BULK」は、化粧品の「中身」を意味する一般用語として使用されている事実があり、「BULK」は、一私人に独占させるべきではなく、独占適応性を欠く。
もし請求人の主張を認めれば、実質的に「BULK」の使用を独占して他人を排除できる結果を生むこととなり、化粧品業界に対する影響は計り知れない。
(13)むすび
以上より、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができず、また、外観及び称呼において非類似であるから、全体として非類似の商標である。被請求人の商品と請求人の商品との間で混同を生ずるおそれもない。
さらに、「BULK」の言葉は、化粧品の「中身」を意味する一般用語として使用されている取引の実情があり、独占適応性を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標ではない。
2 上申書における主張
引用商標1に対する、取消2018-300107及び取消2018-300108の審判事件については、何ら使用証拠の提出はなく、平成30年5月23日付けで引用商標1の全ての指定商品について取り消す旨の審決がされた。
請求人の使用状況が示すとおり、請求人の商品が「BULK」「バルク」との略称で認識されているような事実はなく、上記審決を有利に援用するため提出する(乙17)。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)結合商標の構成部分の一部による類否判断の可否
商標法第4条1項第11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであるが、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部(以下、「特定構成部分」という。)が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、特定構成部分を抽出し、特定構成部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるものと解される。
(2)本件商標について
ア 本件商標の構成態様
本件商標は、前記第1のとおり、欧文字「BULK AAA」の標準文字から成り、「BULK」と「AAA」との間に1文字分の空白があることから、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される。
イ 欧文字「BULK」について
(ア)提出された証拠及び主張によると、欧文字「BULK」について、次のとおり、認められる。
a 欧文字「BULK」と綴りを同じくする「bulk」は、「容積、大きさ、(船の)積み荷、(船荷の包装をしていない)ばら荷」などの意味を有する英単語である(小学館ランダムハウス英和大辞典第2版)。日本語の辞書の一部でも、「バルク【bulk】」は、「ばら荷。粉状や粒状のものが、一塊りになっていること。大量に扱うこと。商品を大量に安値で売買すること。」(大辞林第三版)を意味する語として収載されている。
b(a)平成27年4月頃発行のNile’s NILE(ナイルスナイル)2015年4月号には、請求人の商品に関する記事において、パッケージに「BULK HOMME」と大書された請求人の商品の写真と共に、「バルクオムシリーズ(洗顔料・化粧水・乳液・日焼け止め)は、パッケージコストや広告費なども抑え、あくまでも中身(バルク)重視の製品となっている。」との記載がある(甲64)。
(b)平成28年1月頃発行のGISELe MEN(ジゼル メン)2016年1月号には、請求人の商品の広告が掲載されており、同広告には、引用商標2が記載されているほか、パッケージに「BULK HOMME」と大書された請求人の商品の写真と共に、「バルク(中身)を極めるメンズスキンケア」との記載がある(甲67)。
(c)平成28年9月1日発行のMen’s PREPPY(メンズプレッピー)2016年10月号には、請求人の商品の広告が掲載されており、同広告には、「BULKとは中身のこと」、「BULK(バルク)とは化粧品製造業界の用語で“容器の中の液体” つまり、化粧品の中身そのものを指す言葉です。」との記載がある(甲76)。
(d)請求人のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「ABOUT US」とのページにおいて、「BULK HOMMEを象徴する洗顔料、化粧水、乳液のパウチ容器。・・・それは、安全性と安定性を実現した上で、バルク(中身)で勝負するという私たちの意志の体現であり、アイデンティティなのです。」、「BULKとは英語で『容器の中身』、HOMMEはフランス語で『男性』を表します。・・・異なる言語からなるブランド名には、バルクの研究開発を通して世界中の男性に『ベーシックスキンケア』の答えを示し続けるという、想いと約束が込められています。」との記載がある(乙1の1)。
(e)オムニ7-ロフトのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「BULK HOMME」のページにおいて、「BULKとは英語で『容器の中身』、HOMMEはフランス語で『男性』を表します。・・・異なる言語からなるブランド名には、バルクの研究開発を通して世界中の男性に『ベーシックスキンケア』の答えを示し続けるという、想いと約束が込められています。」との記載がある(乙1の3)。
(f)ロフトのウェブサイトには、平成30年2月19日現在、「メンズコスメブランドBULK HOMME(バルクオム)」のページにおいて、「バルクとは、美容業界で製品の“中身”そのものを指す言葉です。」、「製品の中身(バルク)で期待に答えます」との記載がある(乙1の2)。
(g)「バルクオムの効果が凄い!」と題するウェブサイトには、平成30年2月14日現在、「バルクオムの効果で1番実感できるのは!これだ!」のページにおいて、「男性用の洗顔料・化粧水・乳液として人気のある『バルクオム(BULK HOMME)』ですが、他のメンズコスメと比べると、価格がやや高いという点が気になるところです。・・・『バルクオム』はその製品名が示す通り、バルク(製品の中身)の品質を高めることに主眼を置いています。」との記載がある(乙7の2)。
(h)請求人のウェブサイトには、平成30年11月5日現在、「ABOUT」とのページにおいて、「BULK(中身)を追求した、至高のプロダクト」との記載がある(甲52)。
c(a)マツモトキヨシのウェブサイトには、平成29年11月30日現在、「BulkAAA(AAAの文字は、右上に小さく表示されている。)」のページにおいて、「美しくなるための本質をすべて、バルク(中身・品質)に凝縮し、ついに誕生。」、「Bulk:バルク=化粧品の中身・品質」との記載がある(甲7)。
(b)FACYのウェブサイトには、平成30年2月16日現在、「コスパ最強スキンケアブランドBulk AAAがデビュー!ディープモイスチュアシリーズが10月14日に発売」のページにおいて、「過剰な外装資材の削減、原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑え、浮いた分のコストを『Bulk=中身そのもの』の品質向上に投じることで、肌悩みを抱える女性たちが効果を実感できるクオリティの商品を、使い続けることができる価格でお届けします。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、同ページは、平成29年10月17日に作成されたものと推認される(乙14の1)。
(c)Woman Wellness Onlineのウェブサイトには、平成30年2月16日現在、「マツキヨPB『Bulk AAA(バルクトリプルエー)』は“最高のコスパ”がコンセプト!」と題する記事において、「マツキヨがプライベートブランド『BulkAAA(バルク トリプルA)』シリーズを発売。過剰な外装資材の削減や原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑えることで、そのコストを『バルク(中身)』の品質向上に投じることをコンセプトとした化粧品ブランドです。」、「過剰な外装資材の削減や、原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑え、そのコストを『バルク(中身)』の品質向上に投じるmatsukiyoブランドの化粧品シリーズ。自信がある『バルク』を見て頂くために、3商品すべてクリアボトルを採用しています。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、同記事は、平成29年11月11日に作成されたものと推認される(乙14の4)。
(d)「大人の男女が意識する3473a(みだしなみ)」と題するウェブサイトには、平成30年2月16日現在、「コスパスキンケアの勢力図が変わる!【Bulk AAA(バルク トリプルA)】」と題する記事において、「なんでも過剰な外装資材の削減や、原材料を直接取引することでコストを最小限に抑え、『Bulk(バルク・中身)』の品質向上に投じることをコンセプトとしているそう。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、同記事の表題直下には「11月21日」との記載があり、前記(a)?(c)を併せ考慮すると、平成29年11月21日に作成されたものと推認される(乙14の5)。
(e)VOCEのウェブサイトには、平成30年2月16日現在、「中身・品質(Bulk)にこだわるコスパコスメ!マツキヨのBulk AAA」と題する記事において、上記表題のほか、「中でもBul AAA〔審決注・「Bulk AAA」の誤記と認める。〕は、過剰な外装資材の削減と原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑え、中身(Bulk)の品質向上のためにコストを投じたという素晴らしいアイテムです。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、同記事は、平成29年12月29日に作成されたものと推認される(乙14の6)。
d 三丸機械工業株式会社のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、公式ブログの「化粧品の製造工程って?意外と知らない『化粧品の作り方』」の記事において、「出来上がった製品の中身のことを『バルク』といい、バルクのチェックは1回1回の生産ごとに細かく行われることがほとんどです。」、「バルクは専用の充填機で容器に入れられ、ここでも人の目でチェックしながら包装されていきます。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、同記事は、平成26年11月30日に作成されたものと推認され、また、三丸機械工業株式会社は、化粧品の原料を混合・撹拌する機械である「ホモジナイザー」の「専門メーカー」であると認められる(乙2の4)。
e ナチュラルサイエンスのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「化粧品づくりの現場をご紹介♪ナチュラルサイエンスのこだわり工場」のページにおいて、「化粧品バルク(中身)を作るエリアでは、ホコリの出ない作業着、靴に着替えます。」、「バルク(中身)の製造はもちろん、容器を袋に詰めている工程でも複数の人間で絶えず製品の状態をチェックしています。」との記載がある。このページの表題近傍には、「2015/03/18」と記載されており、平成27年3月18日に作成されたものと推認される(乙2の3)。
f 株式会社ファンケルのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「化粧品の製造管理」のページにおいて、「混ぜ合わせた原材料は真空乳化釜に送られ、ここで化粧品の中身(バルク)がつくられます。出来上がったバルクは、ストレージタンク室にパイプで送られ、貯蔵されます。」、「中身(バルク)をびんに詰めます。」との記載がある(乙2の1)。
g アルビオン(ALBION)のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「熊谷工場見学」のページにおいて、「原料を秤量・混合し、バルクと呼ばれる化粧品の中身をつくります。出来上がったバルクは容器に詰める前に厳しく品質チェックされます。」との記載がある(乙2の2)。
h 工場タイムズのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、平成27年12月19日公開、平成29年9月15日更新の「女性用だけじゃない!肌に触れる化粧品の丁寧な製造工程を知る!」のページにおいて、「次に、決められた分量ごとに原材料を均一に混ぜる作業が行われます。この工程によって『バルク』と呼ばれる化粧品の中身が製造されます。」との記載がある(乙2の5)。
i ジェイオーコスメティックス(JO Cosmetics)のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「採用情報」の「社員インタビュー」のページにおいて、「製造したバルク(化粧品の中身)の検査を行っています。pHや比重などの物性測定や、バルクを腕に塗って色や感触を標準品と比較し、正しいものが製造されているかどうか検査しています。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、上記記載は、2017年入社の社員の発言として記載されており、平成29年4月以降に作成されたものと推認され、また、ジェイオーコスメティックスは、化粧品のOEMメーカー(受託製造業者)であると認められる(乙2の6)。
j ピアスグループのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「新卒採用情報」の「仕事・社員紹介」の「生産技術」のページにおいて、「はじめに、スキンケア製品のバルク(化粧品の中身)を製造する機械の使用方法を学び、目指す質感や使用感に沿った製品を実現するための技術を学びました。・・・目標とするパフォーマンスを確実に実現するために、バルクのツヤやキメ、使用感を確かめながら機械を調整する必要があり、臨機応変に対応する力を身につけていきました。」、「調製グループに所属し、現場でスキンケア製品のバルク(化粧品の中身)の調製技術を学ぶ。」、「スキンケア研究部において、バルクの処方設計を経験。」、「掛川工場に戻り、量産グループでバルクのスケールアップや品質向上について検討する。」、「バルクのツヤやキメ、使用感を確認しながら、量産化に向けた調製を行う。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、ピアスグループは、スキンケアからメイクアップ製品、食品、医療機関向け製品まで、幅広く製品を手がけていると認められる(乙2の7)。
k 株式会社桃谷順天館のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「化粧品 求人 採用 新卒」の「先輩の声 品質管理」のページにおいて、「私は化粧品の中身(バルク)が正しくできているかの分析や検査を行なっています。」、「当日充填を行なうバルクの検査」、「バルク検査」との記載がある(乙2の8)。
l 株式会社ドゥ・ベストのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「商品の安全性、品質管理について」のページにおいて、「アメリカや日本、EU等様々な国で製造された原材料を使用しても、化粧品のバルク(中身)を中国で製造した場合、その製品は“MADE IN CHINA”となります。」との記載がある(乙2の9)。
m 株式会社K&Sのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「化粧品OEMの流れ」のページにおいて、「化粧品のバルク(中身)を製造いたします。容器・化粧箱・バルク等の品質管理の中、生産いたします。」との記載がある(乙2の10)。
n 株式会社ピュールのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「生産体制」のページにおいて、「バルク(化粧品の中身)の製造」、「バルク検査・管理」、「製造したバルクは、保管室で検査・管理します。」、「バルクを充填します。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、株式会社ピュールは、化粧品、ヘアケア・美容健康商品のOEM(受託製造)などを業とするものと認められる(乙2の11)。
o 三粧化研株式会社のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「設備紹介」のページにおいて、「真空乳化装置を使用し、バルク(化粧品の中身)を製造する現場です。」、「【バルク・製品試験とは?】工場で製造したバルク(化粧品の中身)と最終製品の物理試験(pH、比重、粘度等)と微生物試験(細菌、真菌)の試験を実施する事です。」、「バルク保管庫 調製室で生産し、充填前のバルク(化粧品の中身)の保管庫です。」、「バルク製造設備」、「バルク生産能力」との記載がある。上記ウェブサイトによると、三粧化研株式会社は、化粧品のOEM(受託製造)を業とするものと認められる(乙2の12)。
p アイメイトのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「生産管理・品質管理」のページにおいて、「アイブロウ、アイライナー、リップライナー等、バルク(化粧品の中身)の成型状態の確認にX線透視装置による検査を導入しております。これにより、製造したバルクを破壊することなく、選別、或いは製造設備の調整等の対応が迅速に行えることとなり、より効率の良い生産活動の実現が可能となりました。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、アイメイトは、メイクアップ化粧品のOEM(受託製造)を業とするものと認められる(乙2の13)。
q 株式会社アイリードのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「工場案内」のページにおいて、「化粧品のバルク(中身)を製造する工場です。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、株式会社アイリードは、化粧品のOEM(受託製造)を業とするものと認められる(乙2の14)。
r 株式会社ミリオナ化粧品のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「製品開発」のページにおいて、「化粧品のバルク(中身)を製造いたします。」、「容器・化粧箱・バルク等を受け入れ厳しい品質管理の中、生産いたします。」との記載がある。上記ウェブサイトによると、株式会社ミリオナ化粧品は、基礎化粧品・医薬部外品、健康食品の受託製造を業とするものと認められる(乙2の15)。
(イ)前記(ア)によると、欧文字「bulk」は、我が国においても、「船舶のばら積みの貨物」などを意味する英単語として相応に知られていたことが認められる。
また、遅くとも平成30年2月9日には、片仮名「バルク」は、化粧品製造業界において、「化粧品の中身」を意味する用語として使用されていたことが認められ、本件商標の査定日(平成29年2月21日)前の使用例(前記(ア)b(a)?(c)、d、e)が複数存在することを考慮すると、本件商標の査定日においても、片仮名「バルク」は、化粧品製造業界において、「化粧品の中身」を意味する用語として使用されていたものと推認される。しかし、前記(ア)b?rの広告やウェブサイトには、化粧品の受託製造業者のものが少なくなく、これらは必ずしも一般消費者に向けられたものとはいい難い上、欧文字「BULK」が「化粧品の中身」を意味する用語である旨を示したものは請求人及び被請求人の商品に関するもの以外にはなく、また、欧文字「BULK」や片仮名「バルク」という用語を当然に「化粧品の中身」を意味する用語として使用するのではなく、「化粧品の中身」という意味である旨を併記して使用するものがほとんどである。そうすると、本件の全証拠によっても、本件商標の査定日において、欧文字「BULK」が、本件商標の指定商品(化粧品、せっけん類、香料、薫料、歯磨き)の一般消費者を含む取引者、需要者に、「化粧品の中身」を意味する用語として知られていたことを認めるには足りない。このことは、引用商標2の指定商品(男性用の化粧品、男性用のおしろい、男性用の化粧水、男性用のクリーム、男性用の紅、男性用の頭髪用化粧品、男性用の香水類、男性用のせっけん類、男性用の歯磨き、男性用の香料、男性用の薫料、男性用のつけづめ、男性用のつけまつ毛)との関係においても、同様である。
(ウ)前記(イ)によると、欧文字「BULK」は、本件商標の査定日において、本件商標の指定商品の取引者、需要者に、上記指定商品との関係において、出所識別標識として認識されるものということができる。
ウ 欧文字「AAA」について
(ア)提出された証拠及び主張によると、欧文字「AAA」について、次のとおり、認められる。
a 欧文字「AAA」は、広辞苑第六版にも、大辞林第三版にも収載されていない。
また、「エー【A・a】」は、「アルファベットの最初の文字。転じて、第一位。」などを意味する語(広辞苑第六版)、あるいは、「英語のアルファベットの第一字。エイ。第一の、最上の、の意を表す。」などを意味する語(大辞林第三版)として、知られている。
b 金融商品又は企業・政府などについて、その信用状態に関する評価の結果を記号や数字を用いて表示した等級を信用格付けというが、「AAA」又は「Aaa」は、長期格付の最高位を表す格付記号である(甲35、88?91)。
長期格付の最高位を表す格付記号としての「AAA」又は「Aaa」は、本件商標の査定日(平成29年2月21日)前においても、多くの新聞記事において広く用いられており、そこでは、その意味を特に説明することなく、「トリプルA」などと表記することもされていた(甲92、93)。また、生命保険会社であるアリコジャパンにおいては、世界的な二つの格付け会社から保険財務力が最上級の「AAA」又は「Aaa」と評価されていることに基づいて、CMやウェブサイトにおいて、「アリコは、最上級のトリプルA」というキャッチフレーズを用いていた(甲94?96、102)。
c 東洋経済新報社は、平成27年11月24日発売の「CSR企業総覧2016年版」において、上場企業を中心とする有力・先進1325社について、人材活用、環境、企業統治、社会性の4指標を各企業のCSR評価として、成長性、収益性、安全性、規模の4指標を財務評価として、それぞれ「AAA」、「AA」、「A」などの記号で格付けを行った(甲98)。
d 三井住友海上は、平成28年12月現在、最長5年間の研修期間を経て保険代理店経営者として独立後の保険代理店に対する評価制度として、「専属プロ代理店」の上に「プロ新特級代理店」を設け、売上規模、要員体制等に加え、「業務品質」「組織管理」「販売力・増収力」といった質を重視した基準を高いレベルで満たす代理店に対して、「TGA・AAA・AA・A+・A」の5段階の認定を行っていた(甲97)。
e 欧文字「AAA」又は「トリプルA」について、長期格付以外に、次のような使用例がある(甲92、93)。
(a)情報セキュリティー対策の格付け会社は、データセンターに対して情報漏れ対策などのセキュリティー水準の格付けを開始し、第1弾として、富士通の拠点に最上級の「AAA(トリプルA)」を付与した(平成22年2月22日日本経済新聞)。
また、大日本印刷は、上記格付け会社から「AAA」の格付けを取得した(平成22年8月6日日本経済新聞)。
(b)千葉銀行は、農林水産省のプロジェクトに参画して、食の安全を担保する業務ができているかを評価し、石井食品は、17段階中最高位の「AAA(トリプルA)」を取得した(平成22年3月30日日本経済新聞)。
(c)「社内格付け制度」を設け、カンパニー制における各カンパニーを、利益率などを基準にトリプルAからDに分類し、高格付けのカンパニーには投資判断の裁量を与え、低格付けのカンパニーには本社が関与して立て直しを急ぐ(平成22年7月20日日本経済新聞)。
(d)「出馬してくれるなら候補としてはトリプルA。」と語った(東京都知事選挙に関する記事。平成23年2月9日日本経済新聞)。
(e)東京都は、平成23年3月初め、専門家による評価委員会でAAA(トリプルA)とされた事業所を、平成21年度までの5年間の排出量の削減実績が高かった事業所として表彰した(平成23年3月9日日本経済新聞)。
(f)トリプルA(AAA)タイトルといわれる、開発費が数十億円かかるような、まだパッケージが強い「超大型ゲーム」だ(平成24年3月28日日本経済新聞)。
(g)リオネル・メッシという至宝を抱く、格付けでいえばトリプルA級の国である(サッカーに関する記事。平成26年7月5日日本経済新聞)。
(h)プレイステーション4(PS4)について、「高精細で没入感が高く、コントローラーでしか体感できない『トリプルAのゲーム』。それこそがPSのDNAだ。」と語った(平成26年12月18日日本経済新聞)。
(i)72の小工場を、1時間当たりの処理点数や売上高などをもとに「aaa」から「c」まで7段階に格付けし、格付けに応じて報奨金や物品がもらえる「社内格付け制度」を設けた(平成27年2月26日日本経済新聞)。
f マツモトキヨシのウェブサイトには、平成29年11月30日現在、「BulkAAA(AAAの文字は、右上に小さく表示されている。)」のページにおいて、「AAA品質」、「AAA:トリプルA=評価※5を表現」、「※5 バルクトリプルA品質基準による評価」との記載がある(甲7)。
g 欧文字「AAA」について、次の商標登録例・査定例がある。
(a)欧文字「AAA」を標準文字で書して成る商標について、第6類「金属鉱石」、第8類「手動工具」、第20類「家具」等を指定商品とする商標登録第4586559号(乙3の5)、第32類「ビール」等を指定商品とする商標登録第4877584号(乙3の7)、第9類「電子出版物」、第16類「書籍」等を指定商品とする商標登録第5489484号(乙3の8)、第29類「カルシウムを主原料とする錠剤状・粉末状又は液状の加工食品」を指定商品とする商標登録第5522792号(乙3の9・10)
(b)欧文字「AAA」を一般的な書体で横書きして成る商標について、第3類「家庭用帯電防止剤」等を指定商品とする商願2010-069442号(乙3の1?3)
(c)上段に欧文字「AAA」、下段に片仮名「トリプルエー」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について、第4類「工業用油」を指定商品とする商標登録第4585281号(乙3の4)
(d)上段に片仮名「トリプルエー」、下段に欧文字「AAA」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について、第25類「被服」等を指定商品とする商標登録第4840954号(乙3の6)
(イ)前記(ア)によると、欧文字「AAA」は、金融商品又は企業・政府などの信用状態に関する評価である長期格付の最高位を表す格付記号として、一般に知られていることが認められる。
また、欧文字「AAA」は、信用格付けにおける長期格付だけでなく、CSR(企業の社会的責任)に関する人材活用、環境、企業統治、社会性の指標における格付けや、保険代理店における売上規模、要員体制、業務品質、組織管理、販売力・増収力等に基づく格付けにも用いられていたことが認められる。
さらに、欧文字「AAA」は、本件商標の査定日(平成29年2月21日)前において、データセンターのセキュリティー水準の格付け、食の安全を担保する業務の達成度の評価、カンパニー制における各カンパニーや工場に対する社内格付け制度、排出量の削減実績などにおいても、最上級の評価として用いられていたほか、東京都知事選挙の立候補予定者に対する評価や超大型ゲームに対する評価にも用いられていたことが認められる。
(ウ)前記(イ)認定の事実に、我が国の学校の成績や各種評価においても、Aを最上位とするABC評価が一般的な評価手法の一つであることをも考え併せると、最上を意味する「A」を重ねた「AAA」は、本件商標の査定日(平成29年2月21日)において、信用格付けにおける長期格付にとどまらず、一般に、最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されていたものと認められる。
前記(ア)のとおり、本件商標の査定日後には、化粧品の分野においても、欧文字「AAA」を品質の優良性を示す趣旨で使用した、被請求人の商品を含む商品が複数のメーカーから販売されているが、これも、化粧品の取引者、需要者において、「AAA」が最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されることを期待したものであるから、上記認定に沿うものということができる。
エ 本件商標の構成部分の一部による類否判断の可否
前記イ、ウによると、本件商標の構成部分である欧文字「BULK」は、本件商標の指定商品の取引者、需要者に、出所識別標識として認識されるものである一方、欧文字「AAA」は、最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されるものであるから、欧文字「BULK」の部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって、本件商標と引用商標2の類否判断に当たり、本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し、この部分だけを引用商標2と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。
オ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、「BULK」は通常の辞書に載っている一般的な英単語であり、これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはないし、「BULK」は、化粧品分野では、化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されているから、より一層識別力の弱い語であるなどと主張する。
しかし、前記イのとおり、欧文字「BULK」は、「船舶のばら積みの貨物」などを意味する英単語として知られていたのであり、本件商標の指定商品である「化粧品、せっけん類、香料、薫料、歯磨き」に付された本件商標に接した取引者、需要者において、「化粧品の中身」を意味する語として知られていたことを認めるに足りる証拠はないから、本件商標について出所識別標識としての機能を十分に果たすものということができる。
(イ)被請求人は、本件商標の構成中「AAA」の文字は、それ単体での商標登録が認められる識別力のある語であるし、「AAA」が本件商標の指定商品において品質表示として用いられている事実はないなどと主張する。
しかし、欧文字「AAA」が、信用格付けにおける長期格付にとどまらず、一般に、最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されていることは、前記ウのとおりである。
前記ウ(ア)gのとおり、欧文字「AAA」についての商標登録例・査定例も認められるが、本件商標が欧文字「AAA」の前に欧文字「BULK」を組み合わせて成る商標であり、「AAA」による最上位又は優良な評価が「BULK」に対し向けられているものと容易に認識することができるのに対し、上記商標登録例・査定例は、いずれも、欧文字「AAA」のみ又は片仮名「トリプルエー」と組み合わせて成る商標であって、欧文字「AAA」の前に異なる単語を組み合わせた商標ではないから、上記商標登録例・査定例の存在は、前記エの判断を左右するものではない。
(ウ)被請求人は、本件商標は、全体としてまとまりよく一体に表されているし、「バルクトリプルエー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るから、一体不可分の商標というべきものであるなどと主張する。
しかし、前記アのとおり、本件商標は、「BULK」と「AAA」との間に1文字分の空白があるから、「BULK」と「AAA」との複数の構成部分を組み合わせたものと容易に理解されるところ、前記イのとおり、「BULK」は、出所識別標識として認識されるものである一方、前記ウのとおり、「AAA」は、最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されるものであるから、本件商標全体がまとまりよく一体に表されていることや、「バルクトリプルエー」の称呼が無理なく一連に称呼し得ることを考慮しても、本件商標に接した取引者、需要者において、本件商標を一体不可分の商標と認識するものということはできない。
(3)引用商標2について
ア 引用商標2の構成態様
引用商標2は、前記2の3(1)イのとおり、上段に「BULKHOMME」と横書きし(以下、この部分を「上段部分」という。)、下段左側に「SIMPLE/LUXURY」と二段に横書きし(以下、この部分を「下段左側部分」という。)、縦線を挟んで、下段右側に「TRUE LUXURY IS ABOUT/SIMPLICITY.THIS IS WHAT/OUR BRAND IS BASED UPON.」と三段に横書きして(以下、この部分を「下段右側部分」という。)成るものであり、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される。
そして、その構成文字の書体や大きさ等を見ると、上段部分は、同じ大きさで等間隔に記載されているが、「BULK」は「HOMME」に比し線幅が略2倍の太文字で記載されている。また、上段部分と下段左側部分、下段右側部分との縦(上下方向)の幅は略同一であるから、下段左側部分の文字は、上段部分の文字の略2分の1の大きさであり、下段右側部分の文字は、上段部分の文字の略3分の1の大きさである。
上記認定の構成態様によると、上段部分は、引用商標2に接した取引者、需要者に対し、下段左側部分、下段右側部分に比し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
もっとも、上記認定のとおり、上段部分においても、欧文字「BULK」が欧文字「HOMME」に比し線幅が略2倍の太字で記載されているから、上段部分が一体として商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるのか、欧文字「BULK」又は「HOMME」の一方が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるのかを、更に検討する。
イ 欧文字「BULK」について
前記(2)イと同様に、欧文字「BULK」は、本件商標の査定日において、本件商標の指定商品の取引者、需要者に、引用商標2の指定商品(男性用の化粧品、男性用のおしろい、男性用の化粧水、男性用のクリーム、男性用の紅、男性用の頭髪用化粧品、男性用の香水類、男性用のせっけん類、男性用の歯みがき、男性用の香料、男性用の薫料、男性用のつけづめ、男性用のつけまつ毛)に関連する用語として知られていたものではないから、上記指定商品との関係において、出所識別標識として認識されるものということができる。
ウ 欧文字「HOMME」について
(ア)提出された証拠及び主張によると、欧文字「HOMME」について、次のとおり、認められる。
a 欧文字「HOMME」と綴りを同じくする「homme」は、「人間、人類、男、男性」などの意味を有するフランス語である(仏和大辞典)。日本語の辞書にも、「オム【homme】」は、「男性。人間。ファッションで男性用。」を意味する語として収載されており(大辞林第三版)、また、カタカナ語辞典には、「オム【homme】」として、「男性。転じて衣服が男性用であることを示す。」(カタカナ語・略語辞典第三版)、「人間。男。男物。」(コンサイスカタカナ語辞典第3版)の意味を有する語として収載されている。
b 株式会社トップインターナショナル営業企画部において、化粧品類の小売店への販売を担当しているAは、陳述書において、化粧品業界においては男性用化粧品について女性用化粧品と差別化するためにフランス語で「男性」を意味する「HOMME」を商品等に表示することが普通に行われており、一般消費者も「HOMME」を男性用の商品を示す語と理解していると思われる旨陳述している(甲34)。
c(a)請求人は、平成25年4月に、メンズコスメブランドとして「BULK HOMME」というブランドを立ち上げ、平成26年6月までに、東急ハンズ及びLoFtといった店で取り扱われるようになり、平成29年11月1日までに、オンラインストアのほか、全国500店舗以上の小売店、ヘアサロンで提供され、累計100万個以上を販売した(甲52、59)。
(b)請求人のウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「ABOUT US」とのページにおいて、「BULKとは英語で『容器の中身』、HOMMEはフランス語で『男性』を表します。」との記載がある(乙1の1)。
(c)オムニ7-ロフトのウェブサイトには、平成30年2月9日現在、「BULK HOMME」のページにおいて、「BULKとは英語で『容器の中身』、HOMMEはフランス語で『男性』を表します。」との記載がある(乙1の3)。
d 平成26年1月7日発行のSteady.(ステディ.)2014年1月号には、「ステディな彼へのギフト」として、「ジェラートピケ・オムのガウン」が紹介されており、「ジェラートピケ ルミネエスト新宿店」で販売されていることが記載されている。また、同誌には、同じ頁に「BULK HOMME」も掲載されている(甲14)。
e 平成29年8月頃発行のMADURO(マデュロ)2017年8月号には、男性用スキンケア商品として、GUINOT HOMME(ギノーオム)のアイジェルが紹介されており、販売元がギノージャパンであることが記載されている。また、同誌には、同じ頁に「BULK HOMME」も記載されている(甲111)。
f 平成30年6月18日現在、男性向け衣料品のブランドとして、「MICHEL KLEIN homme」、「23区 HOMME」、「agnes b. HOMME」(「e」の文字にはアクサン記号のアクサングラーヴが付されている。)、「TETE HOMME」(2文字目の「E」の文字には、アクサン記号のアクサンシルコンフレックスが付されている。)というブランドが存在する(甲24?27)。
平成30年10月30日現在、オッペン化粧品株式会社の男性用化粧品のブランドとして「OPPEN HOMME(オッペン オム)」、株式会社ユーグレナのメンズスキンケアのブランドとして「B.C.A.D.HOMME」というブランドが存在する(甲81、82)。
平成30年11月5日現在、イオン株式会社のメンズコスメのブランドとして「BEAUTE HOMME」、クリスチャン・ディオールの男性用フレグランスのブランドとして「DIOR HOMME(ディオール オム)」というブランドが存在する(甲83、84)。
g 欧文字「HOMME」について、次の商標登録例・公告例がある。
(a)欧文字「HOMME」を一般的な書体で横書きして成る商標について、第26類「印刷物」等を指定商品とする商標出願公告平2-27814号。
(b)上段に片仮名「オム」、下段に欧文字「HOMME」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について、第30類「コーヒー及びココア」等を指定商品とする商標登録第4782427号。
(c)上段に欧文字「HAGU HOMME」、下段に片仮名「ハグオム」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について、第3類「家庭用帯電防止剤、せっけん類、化粧品、香料」等を指定商品とする商標登録第5894592号(乙10の1)。なお、上段に欧文字「HUG」、下段に片仮名「ハグ」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について、第3類「せっけん類、香料類、化粧品」等を指定商品とする商標登録第4427083号が存在する(乙10の2)。
(イ)前記(ア)によると、欧文字「HOMME」は、「男性」の意味を有するフランス語であるところ、我が国においても、本件商標の査定日(平成29年2月21日)の10年以上前から、日本語の辞書や複数のカタカナ語辞典において、男性用のものを意味する語として収載されていたことが認められる。また、化粧品業界の関係者が、男性用化粧品には女性用化粧品と差別化するために「HOMME」を商品等に表示することが普通に行われており、一般消費者も「HOMME」を男性用の商品を示す語と理解していると思われる旨陳述しているところ、請求人の商品のみならず、多数のメーカーにおいて、男性用化粧品や衣料品のブランドに「HOMME」を付加していること(本件商標の査定日後の事実については、上記陳述の信用性を裏付ける限度で考慮する。)も、上記陳述を裏付けるものである。
そうすると、欧文字「HOMME」は、本件商標の査定日において、化粧品等の分野では、男性用のものを意味する語として知られていたものと認められる。
エ 引用商標2の構成部分の一部による類否判断の可否
前記ア?ウによると、引用商標2の構成部分である「BULK」は、引用商標2の指定商品との関係において、出所識別標識として認識されるものである一方、欧文字「HOMME」は、引用商標2の指定商品が含まれる分野では、男性用のものを意味する語として認識される上、引用商標2の指定商品は男性用のものに限られていること、「HOMME」は、「BULK」よりも細い字体で記載されていることを併せて考慮すると、欧文字「BULK」の部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって、本件商標と引用商標2の類否判断に当たり、引用商標2の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し、この部分だけを本件商標(前記(2)のとおり、本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分)と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。
オ 被請求人の主張について
(ア)被請求人は、化粧品分野では、化粧品との関係において、「BULK」(バルク)との文字列又は呼称は、化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されており、特定の企業を指す語として使用されていないなどと主張する。
しかし、欧文字「BULK」が、本件商標の取引者、需要者に、化粧品の中身を意味する語として知られていたものではないことは、前記イのとおりである。
(イ)被請求人は、引用商標2の上段の「BULK」の文字が引用商標2の全文字数に占める割合は、ごくわずかであるし、面積を基準にしても、上段の「BULK」の文字部分が引用商標2全体に占める割合は1/4未満であるなどと主張する。
しかし、引用商標2の構成文字の書体や大きさ等によると、引用商標2に接した取引者、需要者に対し、上段部分が、下段左側部分及び下段右側部分に比し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることは、前記アのとおりであり、「BULK」と「HOMME」の書体に加え、意味内容等をも考慮すると、「BULK」が引用商標2の要部と認められることは、前記ア?エのとおりである。このことは、商標中の全文字数や面積に占める割合が低いことによって左右されるものではない。
(ウ)被請求人は、引用商標2の構成中、出所識別標識として認識される部分が「BULK」ではないことは、請求人自身も、本件審判の審判請求書における請求の理由中で「次に、引用商標2は、上記のとおりの構成よりなるところ、出所識別標識として認識される構成部分は上段の『BULKHOMME』の文字部分であり・・・」と自認しているなどと主張する。
しかし、結合商標の構成部分の一部による類否判断が認められるか否かは、前記(1)のとおりであって、商標権者の主観的な認識により商標の要部が左右されるものではないし、上記の審判請求書中の記載によって、引用商標2の要部が「BULK」である旨の主張をすることが信義則上許されなくなるものともいえない。
(エ)被請求人は、「HOMME」の称呼は「オム」と短い2音であり、前後の言葉と相まって一連になりやすい語であり、「バルクオム」の呼称も5音と短いこと、請求人の名称は「株式会社バルクオム」であり、フランス語を理解できる者が少ない我が国では片仮名の「オム」から「男性」という観念が想起されることはなく、請求人の商標は「バルクオム」と一連で認識されていることを考慮すると、「BULK」ではなく「BULKHOMME」が要部であるなどと主張する。
しかし、「BULK」と「HOMME」の書体に加え、意味内容等をも考慮すると、「BULK」が引用商標2の要部と認められることは、前記ア?エのとおりであって、このことは、「HOMME」の称呼が短い2音であり、「バルクオム」の称呼も5音と短いことや請求人の名称によって左右されるものではない。
(オ)被請求人は、「BULK」の文字部分が、他の文字部分と比べて太い書体で強調表示されており、「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与える旨の請求人の主張が認められると、自他識別力がないか、特定人に独占させることが不適当であること等の理由により商標登録の要件(商標法第3条第1項各号)を満たさない文字列を太い書体にして、他の文字部分を付加して登録すれば、上記商標登録の要件を満たさない文字列を特定の者が独占して利用できるということになり、商標法第3条第1項の趣旨を没却する不合理な結論になるなどと主張する。
しかし、引用商標2の指定商品との関係において、「BULK」が出所識別機能を有することは、前記イのとおりであるから、被請求人の主張は前提を欠くものである。
(カ)被請求人は、仮に、引用商標2の「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与え、「HOMME」の文字部分から単独の出所識別標識としての観念、称呼は生じないとしても、それらを総合考慮した結果は、請求人が「BULK」部分を太字にした「BULKHOMME」という文字列(造語)を請求人の商品を識別する標識として使用し、需要者はこの「BULKHOMME」をもとに請求人の商品の出所を識別していると評価できるにすぎないから、「BULK」の文字部分が需要者に出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成要素に当たるとはいえないなどと主張する。
しかし、請求人の主張を採用できないことは、前記エのとおりである。
(4)本件商標と引用商標2の類否判断
ア 前記(2)、(3)のとおり、本件商標の要部と引用商標2の要部は、いずれも、欧文字「BULK」であるから、その外観は類似し、観念及び称呼は一致する。したがって、本件商標と引用商標2とは、類似する。
イ そして、前記第2の1のとおり、本件商標の指定商品は、第3類「化粧品、せっけん類、香料、薫料、歯磨き」であり、同3(1)イのとおり、引用商標2の指定商品には、第3類「男性用の化粧品、男性用のせっけん類、男性用の香料、男性用の薫料、男性用の歯磨き」が含まれるから、本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品とは、類似する。
ウ 以上によると、本件商標は、その査定日において、その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標である引用商標2に類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品に類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当し、商標登録を受けることができないものである。
2 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)


別掲3(商願2017-034718)


別掲4(商願2017-035737)



審理終結日 2020-02-13 
結審通知日 2020-02-18 
審決日 2020-03-02 
出願番号 商願2016-102127(T2016-102127) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (W03)
T 1 11・ 261- Z (W03)
T 1 11・ 262- Z (W03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 半田 正人
小田 昌子
登録日 2017-03-10 
登録番号 商標登録第5931607号(T5931607) 
商標の称呼 バルクエイエイエイ、バルクスリーエイ、バルクトリプルエイ 
復代理人 和田 嵩 
復代理人 松川 直樹 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
復代理人 和田 研史 
復代理人 松宮 尋統 
復代理人 浅村 昌弘 
代理人 森 一生 

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