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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W44
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W44
管理番号 1361676 
審判番号 不服2019-3978 
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-26 
確定日 2020-03-30 
事件の表示 商願2017-87973拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「健診結果データバンク」の文字を標準文字で表してなり,第44類に属する願書に記載のとおりの役務を指定役務として,平成29年6月29日に登録出願されたものである。
そして,その指定役務については,原審における平成30年3月13日付けの手続補正書において,第44類「健康診断情報又は医療情報の管理及び分析,健康診断情報又は医療情報の分析結果の提供」に補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は,「本願商標は,『健診結果データバンク』の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の『健診』は『健康診断の略。』の意味を有する語であり,『結果』は『原因によって生み出されるもの。また,ある行為によって生じたもの。』等の意味を有する語であり,また,『データバンク』は,『データベースのこと。また,それを扱うサービスや事業』の意味を有する語であるから(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店),本願商標は,全体として『健康診断の結果に関するデータベース』ほどの意味合いを容易に認識・理解させる。そうすると,本願商標を補正後の指定役務中の「健康診断情報の管理及び分析,健康診断情報の分析結果の提供」に使用しても,これに接する需要者等は役務の質を表したものと理解するにとどまる。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記役務以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるので,商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋
当審において,請求人に対し,令和元年11月20日付けで,別掲のとおりの事実を示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の審尋を発し,相当の期間を指定して,これに対する意見を求めた。

4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
請求人は,上記3の審尋に対して,令和元年12月10日付けの回答書において,「本願商標構成中の『データバンク』は一義的な用語ではなく,多義的な用語であり,本願商標は請求人が考えた造語である。インターネット上でも本願商標と完全に一致するサービス名称は使用されていない事実があり,また本願商標の指定役務の分野と同じサービスが広く行われている事実はなく,『データバンク』の文字がサービスの名称として使用されている事実もない。よって,本願商標はその指定役務について自他役務識別力を有している。」旨の意見を提出した。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
商標法第3条第1項第3号が,「その役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格又は提供の方法若しくは時期」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録の要件を欠くと規定しているのは,このような商標は,指定役務との関係で,その役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。そうすると,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,審決の時点において,本願商標がその指定役務との関係で役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標がその指定役務に使用された場合に,将来を含め,指定役務の取引者,需要者によって役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(知財高裁平成26年(行ケ)第10056号,平成26年8月6日判決参照)。
(2)本願商標は,上記1のとおり,「健診結果データバンク」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「健診」及び「結果」の文字は,各々,「健康診断の略。」及び「原因によって生み出されたもの。」(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)ほどの意味を有する語として,我が国において広く知られていることから,「健診結果」の文字は「健康診断の結果」の意味を容易に理解,認識させるものである。
また,本願商標の構成中,後半の「データバンク」の文字は,辞書及び書籍等によれば「データベースを扱うサービスや事業」,「データベースを用いた情報サービス」ほどの意味を有する語である(別掲1)。
そうすると, 本願商標に接する者は,本願商標の構成全体として「健康診断の結果を収集,整理,保管し検索しやすくしたデータベースを利用した事業(サービス)」ほどの意味合いを理解するものである。
(3)本願商標の指定役務の分野において,健康診断結果のデータをデータベースに構築,保管し,それらのデータを管理,分析し,その結果を提供するというサービスが広く行われている事実が見受けられ(別掲2),また,「データバンク」の文字も「データを預けて他者との共有も設定(指定)」,「データ管理」等のサービスの名称として一般に使用されている(別掲3)。
(4)以上のことからすれば, 本願商標をその指定役務中の「健康診断情報の管理及び分析,健康診断情報の分析結果の提供」に使用したときは,これに接する取引者,需要者は,その役務が「健康診断結果の情報(データ)を管理,分析したり,その分析結果を提供したりする事業(サービス)」つまり単に役務の質を表したものと理解するにとどまり,自他役務の識別標識としては認識し得ないものといわざるを得ない。
してみれば,本願商標は,その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,上記役務以外の指定役務に使用するときは,役務の質の誤認を生ずるおそれがあるものというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

6 請求人の主張について
(1)請求人は,本願商標構成中の「健診結果」は「健康診断の結果」という意味合いだとしても,「データバンク」は「データベース」という一義的な用語ではなく,「特定のものや情報を集め,必要に備えておく機関」の意味を有しており多義的な用語である。さらに,インターネット上でも本願商標と完全に一致するサービス名称は使用されておらず,また,「データバンク」の文字がサービスの名称として使用されている事実もない旨主張する。
しかしながら,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,本件審判の審決時において,本願商標がその指定役務との関係で役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の指定役務に係る事業の取引者,需要者によって本願商標がその指定役務に使用された場合に,将来を含め,役務の特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足り,それが取引上現実に使用されていた事実があったことまで必要とするものではないというべきであるから,「健診結果データバンク」又は「データバンク」の文字が,本願の指定役務の分野においてサービスの名称として実際に使用されていないからといって,本願役務の同号該当性が否定されるものではない。
また,本願商標の構成中の「データバンク」の文字が多義的な用語であるとしても,本願商標の構成全体から理解される意味合い及び本願の指定役務の分野における「データバンク」の文字の使用状況などを勘案すれば,上記5(4)のとおり,本願商標に接する取引者,需要者は,本願商標が「健康診断結果の情報(データ)を管理,分析したり,その分析結果を提供したりする事業(サービス)」ほどの意味合いを理解するものである。
(2)請求人は,本願の指定役務は,健診受診者や企業の人事部に対して「健康診断情報又は医療情報の分析結果の提供」を行うもので,別掲2で示した事例には,本願の指定役務は含まれていない又は関係ないから当該指定役務の分野と同じサービスが広く行われている事実はない旨主張する。
しかしながら,別掲2で示した事例が,健診受診者や企業の人事部に対して「健康診断情報又は医療情報の分析結果の提供」を行うものではないとしても,健康診断結果のデータをデータベースに蓄積,管理し,それらのデータを分析して,企業や健康保険組合等へその分析結果の提供を行うものであることから,別掲2で示した事例は,本願商標の指定役務の範ちゅうの役務であるというのが相当である。
(3)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

7 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲 審尋において示した事実
1 「データバンク 」の文字の意味について
(1)「広辞苑第七版」(株式会社岩波書店)において,「データバンク【data bank】」の見出しの下「データベースのこと。また,それを扱うサービスや事業。」の記載がある。
(2)「コンサイスカタカナ語辞典 第4版」(株式会社三省堂)において,「データバンク[data bank]」の見出しの下「データベースを用いた情報サービス.略してDB.データベース」の記載がある。
(3)「大辞泉 増補・新装版」(株式会社小学館)において,「データバンク【data bank】」の見出しの下,「広範囲のデータを収集・整理・保管し,利用者に必要な情報を即時に提供するシステム。また,それを扱う事業。データベース。」の記載がある。
(4)「イミダス2007」(株式会社集英社)において,「データバンク[data bank]」の見出しの下「情報銀行。多量の情報を集中的に蓄積・保管し,提供する機関。データベースを指す場合もある。」の記載がある。
(5)「最新パソコンIT用語事典2010-11年 第21版」(技術評論社)において,「データ・バンク」の見出しの下「データベースを運用してサービスを行う組織のこと。データの蓄積,検索,参照,更新などを行っている。時には,データベースと同じ意味にも使われる。」の記載がある。
(6)「日本大百科全書(ニッポニカ)の解説」(株式会社小学館)において,「データバンク」の見出しの下「目的に応じたデータを集めたもの,そのようなデータを収集,保守,管理し,利用者の要求に応じた部分を抽出するシステム,さらにそのような情報サービスを行う機関をさす。サービスの対象となるデータを集めたものは,データベースとよばれることが多く,これには株式,人材情報,特許,新聞,薬品,化合物など多様なものがある。」の記載がある。
(https://kotobank.jp/word/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AF-6188)

2 本願商標の指定役務の分野において,健康診断結果を収集,整理,保管し,検索しやすくしたデータベースを利用して,健康診断結果のデータを管理,分析又はそれらの分析結果を提供している事例
(1)株式会社幸書房のウェブサイト中,「最新油脂事情」の項の「企業」のカテゴリーにおいて,「花王と味の素が健康ソリューションで事業提携 花王の健康情報サービス事業に味の素が出資」(2012年5月29日)の見出しの下,「HCC社は,健康保健組合等に対して,健康情報の提供,保健指導,解析・コンサルティング,また生活改善プログラムなどのサービスを提供する会社で・・・同社には加入者130万人の健診結果データベースが蓄積されており,この情報をベースに個別の保健指導も行っている。」の記載がある。
(http://www.saiwaishobo.co.jp/yushi/?time=20120529174219JST&&fnum=2012&&cate%5b%5d=0)
(2)ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社の「平成20年度から始まる『被扶養者(配偶者)健診』の準備はお済みですか?」の見出しの資料に「データの一元化サービス!」,「医療機関からのデータ収集・入力代行により,健診結果データベース構築をサポート」及び「一元化されたデータは,ヘルスサポートシステム利用によりネット上で管理・閲覧可能」の記載がある。
(https://wellcoms.jp/common/frame/plugins/fileUD/download.php?type=news_file&p=news_file_8.pdf&token=9d48b99cd4b784b2ef210a74019d35bbaf1daf4d&t=20170325171542)
(3)「株式会社アドバンテッジリスクマネジメント」のウェブサイトにおいて,「アドバンテッジ健診結果管理システムの導入メリット」の見出しの下,「『アドバンテッジ健診結果管理システム』では健診結果をWeb上で一元管理。医療機関から提出される『健診結果票』をデータベース化し,最新の健診結果から過去のデータまでの管理・分析を実現し,健康経営推進をサポートします。」の記載がある。
(https://www.armg.jp/business/kenshin/)
(4)福島県の「震災等対応雇用支援事業(旧震災等緊急雇用対応事業)計画書(平成27年度)」において,「整理番号」が「645」の欄に,「事業名」として「健診結果データベース作成事務補助事業」及び「事業内容」として「避難により発生・増大している健康被害に対する支援業務(相談・データベース管理等)を行い,生活の向上を図る。」の記載がある。
(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/119869.pdf)
(5)「予防協会 健康管理センター」(公益財団法人香川県予防医学協会)の「平成27年度事業報告」において,「2.調査・研究事業」の「(1)精検追跡調査・がん調査・有症率調査」の見出しの下「各種調査は,当協会の各健診事業の健診結果データに基づき,その後の状況追跡をして情報を収集し,地域の特性を知るためには経年的に継続調査することが重要です。そのため,当協会の健診結果データベースを基にした疫学的課題の検討を進める予定で,データ解析機器により,引き続き,データ取り込み作業並びにデータベース構築作業を行いました。」の記載がある。
また,「(2)健診データの分析・提供」の見出しの下「健診で得られたデータは各部署で分析し,事業報告書の作成・配布により情報提供を行っています。」の記載がある。
(https://www.kagawa-yobouigaku.or.jp/pdf/2017/houkoku.pdf)
(6)「全国健康保険協会の各支部における分析用データベース構築の必要性」の見出しの下,「概要」として「保険者においてデータヘルス計画を効果的に遂行する為には,各保険者が保有する加入者の健診結果やレセプト等の各種データを組み合わせ,分析用データベースを構築することが望ましい。・・・構築した分析用データベースを用いて,健診受診者の健康状態および医療費を分析した結果,健康状態や平均医療費が,特定保健指導の階層毎に異なることに加え,性・年齢階級によっても違いが見られることが明らかになった。」の記載がある。
(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/cat740/houkokusho/h26/h26houkokusyo_06-1.pdf)
(7)「株式会社アルファインターナショナル」のウェブサイトにおいて,「企業向け健康管理サポートシステム」の見出しの下「健診等によって得られた社員の健康情報を時系列に管理し健康状態をフォローアップする事により疾病予防対策を支援したり,集積された健康情報データベースから法令の報告書を作成したり,有所見,管理対象者比率等から客観的な健康度評価を行ない,そのデータをもとに組織の健康改善運動を行なう等企業の抱える課題を解決します。」の記載がある。
(http://www.alpha-inter.co.jp/product/company.html)

3 本願商標の指定役務の分野において,「データバンク」の文字がサービスの名称として使用されている事実
(1)千葉県千葉市の「自治体総合フェア2016(第20回)記念講演資料」の「マイナンバー制度における自治体と企業の連携」(平成27年11月25日)の資料において「マイナポータルのユースケース」(スライド66)の見出しの下「サービス例」として「健診データバンク」,「概要」として「保険者が利用者の健康診断結果等データに応じて健康活動を促すサービス。利用者は,保険者にデータを預けるほか,他者との共有を設定できる。」の記載がある。
また,上記資料中「健診データバンク」(スライド69)の見出しの下「サービス概要」として「保険者が被保険者の健康診断結果等データに応じて健康活動を促すサービス。利用者は,保険者にデータを預けるほか,他者との共有も設定(指定)できる。」の記載がある。
(http://www.noma.or.jp/Portals/0/resources/lgf/2016/setsumeikai/doc_20151125.pdf)
(2)「愛媛県生涯学習センター」のウェブサイトにおいて,「データベース『えひめの記憶』」の「2 新国民健康保険」の見出しの下,「・・・平成一〇年度には,はり・灸の施術料の助成を開始。また,平成一一年度には人間ドックに対する助成を開始し,市民の健康管理の一助となっている。平成一一年度からは健康管理データバンク事業を導入し,保健センターでの健康に関するデータ管理が充実しつつある。」の記載がある。
(http://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:3/35/view/9885)
(3)「医療法人厚生会」の「事業案内」の「巡回健診」の項に「健診オリジナルメニュー」の「ヘルスプロモーション」の見出しの下「多くの健診データを蓄積したデータバンクシステムから有用な情報を活用いただける健康診断データ管理システムです。」の記載がある。
(https://kouseikai-mc.jp/business/circuit.html)
(4)「ユニシス技報(2015年3月発刊 Vol.34 No.4 通巻123号)」中の論文「医療ビッグデータの利活用によるサービス創出の枠組み」(星野隆之)において,「2.4 データ利活用を実現する社会システムモデル」(6ページ)の見出しの下,「個人(疫学研究に参加している住民等)は,医療機関からの診療データや健康診断結果等の健康・医療情報をデータバンクに登録する.研究機関は,データバンクより匿名化された情報を入手し,疫学研究などの健康・医療関連研究を行う.研究機関での成果は,新たな技術として医療機関に提供する他,生活習慣に関わる予測モデルやリスク評価モデルとしてサービス提供者にも提供する.それらの成果は,医療機関,行政からのサービスや,事業/サービス提供者からの個人向けの健康サービスとして,住民に還元される.」の記載がある。
(https://www.unisys.co.jp/tec_info/tr123/12301.pdf)

審理終結日 2020-01-21 
結審通知日 2020-01-23 
審決日 2020-02-13 
出願番号 商願2017-87973(T2017-87973) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W44)
T 1 8・ 272- Z (W44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 勉旦 克昌 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 大森 友子
浜岸 愛
商標の称呼 ケンシンケッカデータバンク、ケンシンケッカ、データバンク 
代理人 特許業務法人コスモ国際特許事務所 

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