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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W414344 |
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管理番号 | 1361627 |
審判番号 | 不服2019-2613 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-08 |
確定日 | 2020-03-27 |
事件の表示 | 商願2017-172193拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「薬膳調理師」の文字を標準文字で表してなり、第41類「薬膳・健康又は美容に関する学術的な内容の知識の教授,資格の認定・資格の付与,資格認定試験及びその模擬試験の実施,セミナー・学会・研修・講座の企画・運営又は開催」、第43類「薬膳料理の提供」及び第44類「薬膳による栄養の指導」を指定役務として、平成29年12月20日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、『薬膳調理師』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の『調理師』の文字は、調理師法(昭和33年法律第147号)第8条により、『調理師でなければ、調理師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。』と規定され、その使用が制限されているものである。そうすると、本願商標は、あたかも調理師の一種あるいは調理師と同様の国家資格であるかのように、需要者、取引者に誤認を生じさせるおそれがあるものと判断するのが相当であるから、これを商標として採択、使用することは、商取引の秩序を乱すおそれがあり、社会公共の利益に反するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号該当性について ア 「調理師」の国家資格について 「調理師」は、「調理の業務にたずさわる人。調理師法により、都道府県知事の免許を必要とする。」の意味を有する語(株式会社岩波書店「広辞苑第6版」)であり、厚生労働省の所管する調理師法(昭和33年法律第147号)に基づく国家資格として広く知られているものである。 そして、調理師法の第8条には「調理師でなければ、調理師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」とする名称の使用の制限に係る規定が置かれている。 また、同法第3条には「調理師の免許は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、その申請に基づいて都道府県知事が与える。」とされ、同法第3条の2には「調理師試験」に関する規定が置かれており、同条2項に「都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、一般社団法人又は一般財団法人であって、調理師試験の実施に関する事務(以下「試験事務」という。)を適正かつ確実に実施することができると認められるものとして厚生労働大臣があらかじめ指定する者(以下「指定試験機関」という。)に試験事務の全部又は一部を行わせることができる。」と規定されている。 イ 「調理師」の文字を含む国家資格等について 「調理師」の文字を含む資格として、厚生労働省による調理技術審査・技能検定試験で得られる、調理師の資質の向上を目的とする日本料理や西洋料理等に精通した国家資格である「専門調理師」(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/hojin/seido/1/2/3.html)や調理師の資格を免許取得資格の要件とする東京都や埼玉県等の地方行政機関等が実施する公的資格である「ふぐ調理師」(東京都福祉保健局:http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hugu/shikaku.html、埼玉県:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0708/fugu/chorishi/index.html)が存在する。 ウ 本願商標について 本願商標は、「薬膳調理師」の文字からなるところ、その構成中の「薬膳」の文字は、「漢方薬と食材とを組み合わせた中国料理。」の意味を有する語(株式会社岩波書店「広辞苑第6版」)であり、「調理師」の文字は、上記アのとおり、「調理の業務にたずさわる人」の意味を有する、厚生労働省の所管する調理師法に基づく国家資格の名称であることから、構成文字全体として「漢方薬と食材とを組み合わせた中国料理に関する調理師」程の意味合いを容易に認識させるものである。 エ 小括 以上のことからすると、日本料理や西洋料理等の専門的な料理に精通した調理師の国家資格として「専門調理師」が、ふぐを調理することができる調理師の資格を要件とする公的資格として「ふぐ調理師」が存在しており、また、上記ウのとおり、本願商標の構成中、「薬膳」の文字は、「漢方薬と食材とを組み合わせた中国料理」を意味する語として調理の内容を看取させるものであることから、「薬膳調理師」の文字からなる本願商標に接する一般の取引者、需要者は、「薬膳(漢方薬と食材とを組み合わせた中国料理)」に関する「調理師」の国家資格の一種又は「調理師」と同様の国家資格を表したものと理解する場合も決して少なくないとみるのが相当である。 さらに、本願商標は、国家資格の名称である「調理師」の文字を含む商標であるところ、請求人は、当該国家資格を認定する機関とは認められないものである。 そうすると、「薬膳調理師」の文字からなる本願商標に接する取引者、需要者は、これを「調理師法」に基づいた国家資格である「調理師」に関連した新たな国家資格であるかのように誤信するおそれがあるといえるものであるから、一私人である請求人が、本願商標をその指定役務について使用することは、「調理師」の国家資格の制度に対する社会的信頼を失わせることになり、社会公共の利益に反するというべきである。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2)請求人の主張について ア 請求人は、「『薬膳調理師』は、『専門調理師』や『ふぐ調理師』と同様に、『調理師法で規定する『調理師』の資質の向上に資する』ことを目的とした非国家資格であり、『調理師法による調理師免許を持っていること』が受験資格の1つである。したがって、『薬膳調理師』は調理師法による調理師免許を持っており、調理師法8条に違反しない。」旨主張し、さらに「当該業界において、『専門調理師』や『ふぐ調理師』が調理師法で規定する『調理師』がそれぞれの専門性を高めて取得する資格であると認識されており、これらの資格が調理師法で規定する『調理師』と混同することはあり得ない。・・・『薬膳調理師』は、『調理師』が薬膳調理というさらに高度な知識と調理技術を習得して取得する非国家資格である。・・・審査官は『一私人である出願人が本願商標を自己の商標としてその指定役務に使用するときは、これに接する、需要者・取引者は、『薬膳調理師』があたかも『調理師』の一種あるいは『調理師』と同様の国家資格であるかのように、需要者・取引者に認識を生じさせるおそれがあるもの』と判断したが、ここでいう需要者・取引者は『調理師法による調理師免許を持っている調理師』であり、この様な誤認は起こり得ない。」旨主張している。 しかしながら、本件は、商標法第4条第1項第7号該当性について、国家資格である「調理師」、さらには「専門調理師」、公的資格である「ふぐ調理師」の存在を前提に、一般の取引者、需要者にとって、本願商標が国家資格の一種と誤信するおそれがあるか否かを判断するべきものである。 そして、請求人は、「需要者・取引者は『調理師法による調理師免許を持っている調理師』であり、この様な誤認は起こり得ない。」旨主張しているところ、本願の指定役務の需要者、取引者は、「調理師法による調理師免許を持っている調理師」のみに限られるものではなく、例えば、本願の指定役務に含まれる「薬膳料理の提供」や「薬膳による栄養の指導」の役務の提供を受ける一般の需要者をも含むとみるのが相当である。 そうすると、「専門調理師」や「ふぐ調理師」の受験者が、「調理師」の国家資格を有する者であり、当該受験者が、これらの資格と「調理師」の資格を誤認することがないとしても、そのことをもって、一般の取引者、需要者が、本願商標を国家資格の一種と誤信するおそれはないということはできない。 イ 請求人は、「具体的に、『管理調理師』及び『栄養専門調理師』の構成態様と本願の『薬膳調理師』の構成態様の相違を検討せずに、拒絶査定の判断をすることは憲法違反である。」旨主張している。 しかしながら、請求人の挙げる「管理調理師」(登録第4401661号商標)の登録例は、指定商品が「雑誌,新聞」であり、本願の指定役務とは相違するものである。 また、「栄養専門調理師」(登録第5289243号商標)の登録例は、商標権者は「公益社団法人調理技術技能センター」であって、当該公益社団法人は、「調理師法」の規定に基づき、厚生労働大臣の委託を受けて調理技術・技能の評価に関する業務等を実施することを目的として設立されたものであり、また、調理師試験の指定試験機関に指定されており、各都県より委任を受け、調理師試験を実施しているものである。 よって、請求人の挙げる上記の登録例は、本願商標の商標法第4条第1項第7号の該当性を判断する上で参考とすべき事例としては適切とはいえず、同号に該当するか否かは、個別かつ具体的に判断されるべきものであるから、上記の登録例の存在によって本件の判断が左右されるものではない。 したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-01-23 |
結審通知日 | 2020-01-31 |
審決日 | 2020-02-12 |
出願番号 | 商願2017-172193(T2017-172193) |
審決分類 |
T
1
8・
22-
Z
(W414344)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉澤 拓也、加藤 優紀、榊 亜耶人 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
木住野 勝也 小田 昌子 |
商標の称呼 | ヤクゼンチョーリシ |