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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201815972 審決 商標
不服201815721 審決 商標
不服201713410 審決 商標
不服20186450 審決 商標
不服20146769 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W141825
管理番号 1360626 
審判番号 不服2018-7529 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-01 
確定日 2020-03-17 
事件の表示 商願2017-69467拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲のとおりの構成からなり,第14類「貴金属製置物,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),ペンダント,バングル,指輪,ブローチ,ネックレス,チェーン(宝飾品),ブレスレット,ピアス,貴金属製のベルト飾り,カフスボタン,身飾品用留め金具,時計,宝飾品用チャーム」,第18類「かばん金具,がま口口金,蹄鉄,かばん類,袋物,財布,カード入れ,かばん用ベルト,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,革ひも」及び第25類「男性用・女性用及び子供用の被服,カフス,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として,平成29年5月23日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は,その構成中に「KEN KIKUCHI」の文字を有しているが,これは下記所在の他人の氏名(審決注:記として名前「菊池 健」とその者の住所を多数記載しているが,その記載は省略する。)をローマ字表記したものと認められるものであり,かつ,その他人の承諾を得ているものとは認められない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号の趣旨
商標法第4条第1項第8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護すること,すなわち,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決,最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決)。そうすると,ある氏名を有する他人にとって,その氏名を同人の承諾なく商標登録されることは,同人の人格的利益を害されることとなると考えられる。(知財高裁平成28年(行ケ)第10065号同28年8月10日判決)
(2)商標法第4条第1項第8号の該当性
本願商標は,別掲のとおり,翼を広げた鷲又は鷹を黒色のシルエットで表した図形内に,「KENKIKUCHI」の欧文字を白抜きで表してなるものである。
「KENKIKUCHI」の文字部分は,途中に区切りを表す空白はないものの,語頭の「K」の文字の右斜め下に向かう線が2・3文字目の「EN」の文字の下部に沿って伸びていること,他方,語尾の「I」の文字の終端から伸びた横線が4?9文字目の「KIKUCH」の文字の下部に沿って伸びていることから,視覚的に「KEN」の文字部分と「KIKUCHI」の文字部分とに分けて理解,認識される外観を呈しており,前半の「KEN」の文字部分からは「ケン」の称呼が,後半の「KIKUCHI」の文字部分からは「キクチ」の称呼がそれぞれ生じるものであって,文字部分全体として「ケン・キクチ」との称呼が生じる。
ところで,我が国においては,例えば,パスポートやクレジットカードなどには,本人の氏名がローマ字表記されるなど,氏名をローマ字表記することは少なくない。さらに,氏名を英語で表記する場合は通常「名」「姓」の順で表記し,クレジットカードなどにおいては「名」「姓」の順で表記されているものが少なくないなど,氏名をローマ字表記する場合,「名」「姓」の順で記載することは,社会一般に行われているといえる。
そうすると,上記のとおりの構成からなる本願商標は,これに接する取引者,需要者をして,その構成中「KENKIKUCHI」の文字部分を,「キクチ(姓)ケン(名)」を読みとする氏名を「名」「姓」の順にローマ字表記したものと容易に認識するものと判断するのが相当である。
そして,「キクチ・ケン」と読まれる「菊池 健」という氏名の者が,原審説示のうち,少なくとも,以下アないしケのとおり,各地域のハローページに掲載されていることからすれば,これらの者は,いずれも本願商標の出願時から現在に至るまで現存している者であると推認できる。
ア 北海道小樽市において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年12月版(掲載情報は2016年8月24日現在)及び2018年12月版(掲載情報は2018年8月16日現在)の「ハローページ(小樽市版)」に掲載されている。
イ 北海道留萌市において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年5月版(掲載情報は2016年1月28日現在)及び2018年5月版(掲載情報は2018年1月23日現在)の「ハローページ(留萌地方版)」に掲載されている。
ウ 秋田県由利本荘市において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年9月版(掲載情報は2016年6月13日現在)及び2018年9月版(掲載情報は2018年6月11日現在)の「ハローページ(秋田県 由利本荘・にかほ地域版)」に掲載されている。
エ 青森県上北郡六ヶ所村において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年6月版(掲載情報は2016年3月10日現在)及び2018年6月版(掲載情報は2018年3月8日現在)の「ハローページ(青森県 青森・外ヶ浜・野辺地地域版)」に掲載されている。
オ 青森県南津軽郡大鰐町において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年6月版(掲載情報は2016年3月10日現在)及び2018年6月版(掲載情報は2018年3月8日現在)の「ハローページ(青森県 弘前・黒石地域版)」に掲載されている。
カ 岩手県釜石市において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年1月版(掲載情報は2015年10月8日現在)及び2019年1月版(掲載情報は2018年10月10日現在)の「ハローページ(岩手県 釜石・遠野地域版)」に掲載されている。
キ 宮城県宮城郡松島町において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年10月版(掲載情報は2016年7月7日現在)及び2018年10月版(掲載情報は2018年7月9日現在)の「ハローページ(宮城県 県中(塩釜・多賀城・富谷・黒川郡・宮城郡)版)」に掲載されている。
ク 愛媛県宇和島市において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年7月版(掲載情報は2016年4月1日現在)及び2018年7月版(掲載情報は2018年4月2日現在)の「ハローページ(愛媛県宇和島・北宇和地区版)」に掲載されている。
ケ 愛媛県八幡浜市において住所を同じくする「菊池 健」氏は,2016年7月版(掲載情報は2016年4月1日現在)及び2018年7月版(掲載情報は2018年4月2日現在)の「ハローページ(愛媛県八西地区版)」に掲載されている。
加えて,請求人と上記の者とは他人であると認められるから,本願商標は,その構成中に他人の氏名を含むものといわなければならず,かつ,少なくとも上記他人の承諾を得たものとは認められない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は,(ア)本願商標の構成中,「KENKIKUCHI」の欧文字は,氏と名の間に空白を入れていないから氏と名を判別できない態様であり,本願商標の構成中「KENKIKUCHI」の欧文字に触れた一般需要者は,デザイナー「菊池健」ないしその商品を想起するため,当該文字は一種の造語のような意味を持つから,「氏名」を記載したものといえない旨,(イ)商標法第4条第1項第8号にいう「氏名」に該当するか否かは,特定人を認識させるに足りる表記であるか,あるいは本願商標がブランドとして一定の周知性を有するかという観点から総合的に判断されるべきであるから,本願商標の構成中,「KENKIKUCHI」の欧文字は,仮に氏名と捉えても,「菊地 健」か「菊池 健」であるのかも特定できず特定人の同一性を認識できないため,「氏名」に該当しないものであるし,商標法第4条第1項第8号で商標ないし商品と全く無関係ないし無名の第三者まで保護することは行きすぎである旨及び(ウ)審査・審決例を挙げて,本願商標も同様に取り扱われるべきである旨主張し,本願商標は商標法第4条第1項第8号に該当しない旨述べている。
しかしながら,(ア)については,上記(2)のとおり,本願商標に接する取引者,需要者をして,その構成中「KENKIKUCHI」の文字部分を,「キクチ・ケン」を読みとする氏名を「名」「姓」の順にローマ字表記したものと容易に認識するものと判断するのが相当である。
(イ)については,氏名を「名」「姓」の順にローマ字表記することは,我が国において社会一般に行われており,氏名のローマ字表記に対応する漢字等による表記が複数あるとしても,読み方を同じくする氏名はこれをローマ字表記する場合,同一のローマ字で表記せざるを得ないものであり,雅号,芸名若しくは筆名とは異なり,恣意的に選択する余地がない。さらに,氏名のローマ字表記は特定の氏名とは結び付かないものではなく,そのローマ字表記による氏名に接した者は,それと読み方を同じくする者を認識するのであり,また,それと同じ読み方をする者は当該表記を自己の氏名と認識するのである。そうすると,氏名のローマ字表記であっても,他人がそれを商標として,採択使用することは,そのローマ字表記された氏名の者の人格的利益を害するものといわなければならず,人格的利益の保護という商標法第4条第1項第8号の趣旨からも氏名のローマ字表記も本号にいう「氏名」に該当するというべきである。
そして,本願商標については,上記(2)のとおり,これに接する取引者,需要者をして,その構成中「KENKIKUCHI」の文字部分を,「キクチ・ケン」を読みとする氏名を「名」「姓」の順にローマ字表記したものと容易に認識するものと判断するのが相当であり,加えて,請求人と上記の者とは他人であると認められるから,本願商標は,その構成中に他人の氏名を含むものといわなければならず,かつ,少なくとも上記他人の承諾を得たものとは認められない。
なお,「他人の名称を含む商標については,他人の承諾を得ているものを除いては,商標登録を受けることができないというべきであって,出願人と他人との間で事業内容が競合するかとか,いずれが著名あるいは周知であるといったことは,考慮する必要がないというべきである。」(知財高裁平成20年(行ケ)10309号同21年2月26日判決)と判示されていることからすれば,商標法第4条第1項第8号該当性の判断において,本願商標の周知性や指定商品との関係は考慮する必要がないと解釈すべきである。
(ウ)については,請求人が挙げる審査・審決例は,商標の構成態様が異なり事案を異にするものであり,かつ,具体的事案の判断においては,過去の判断に拘束されることなく判断されるべきであるから,上記判断に影響するものではない。
したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
(4)むすび
以上のとおり,本願商標は,その構成中に他人の氏名を含む商標であり,かつ,上記他人の承諾を得ているとは認められないものであるから,商標法第4条第1項第8号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)

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審理終結日 2019-01-09 
結審通知日 2019-01-18 
審決日 2019-01-30 
出願番号 商願2017-69467(T2017-69467) 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (W141825)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 庄司 美和
田村 正明
商標の称呼 ケンキクチ、キクチケン 
代理人 高松 薫 

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