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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W09
管理番号 1359663 
審判番号 不服2019-8073 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-18 
確定日 2020-01-16 
事件の表示 商願2018-23496拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「可能性をカタチにする。」の文字を標準文字で表してなり,第9類「ファクシミリ,電話機,携帯電話機,移動体通信機,その他の電気通信機械器具,電子応用静電複写機,コンピュータ用プリンター,コピー機能・ファクシミリ機能・スキャナー機能付きプリンター,コンピュータ,コンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア,その他の電子応用機械器具及びその部品,電子出版物,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品として,平成30年2月27日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は,「本願商標は,『可能性をカタチにする。』を標準文字で表してなるところ,これは『(想像や仮説段階の)可能性を具現する』のような意味合いを看取させるものといえるものであり,本願商標をその指定商品に使用しても,単に企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表したものと認識させるにとどまり,自他商品を区別するための識別標識として機能するものと理解され得ないものであるから,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といわざるを得ない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年9月13日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の回答の要旨
証拠調べ通知書で提示された引用情報1及び2は,本願商標とは明らかに文字構成が異なり同一又は類似の語句でない。引用情報3ないし5,7ないし9は,単に説明の一部として用いられているにすぎない。引用情報6は,単に説明の一部として用いられているにすぎないことに加え,本願商標とは文字構成が全く異なり,同一又は類似の語句ではない。
したがって,引用情報1ないし9は全て本願商標と同一又は類似の語句を企業理念・経営方針等を表すものとして使用されているとは言えないもののであり,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当すると認定すべき証拠とならない。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第6号該当性
(1)本願商標について
本願商標は「可能性をカタチにする。」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「可能性」の文字は,「論理的に矛盾が含まれていないという意味で,考えうること,ありうること」(広辞苑 第六版 株式会社岩波書店)や「未知の時柄の実現について(絶対に不可能だと判断するだけの根拠を欠き)ある程度(十分に)可能だと予測される状態にあるととらえられること」(新明解国語辞典 第七版 株式会社三省堂)の意味を有するものであり,「カタチ」の文字は,「形」の表音を片仮名で表したものと容易に認識されるものであり,「まとまり整った状態をもって表にあらわれた,物事の姿。物事の結果としての状態。」(大辞泉 第二版 株式会社小学館)の意味を有するものである。そして,構成中の「を」の文字は,「(格助詞)体言またはそれに準ずるものを受ける。対象を示す。」を,「に」の文字は,「(助詞)動作・作用のある状況・背景を示す」を,「する」の文字は,「その状態・状況にある意,また,それをもたらす意を表す。」を,「。」の文字は,句点であり,「文の切れ目に打つ記号。現在は多く『。』を用いる。」をそれぞれ表す語である(いずれも広辞苑 第六版 株式会社岩波書店)。
そうすると,本願商標は,全体として,その構成中の句点の存在が,記述的な文章を表してなるものとの印象を与えることもあり,それぞれの構成文字の語義に相応して,「(現在は実現していないが)考えうることについて,まとまり整った状態(商品化,実現化)をもたらす」程の意味合いを理解させるものである。
(2)取引の実情について
一般に,企業活動に際して,顧客(商品の取引者,需要者)のニーズ(要求。需要。広辞苑 第六版 株式会社岩波書店)を的確に捉え,そのニーズに応えるための新商品の開発や,既存の商品に改良を重ねることが,商品の生産者,販売者等の手によって,普通に行われている。
そして,当審が職権で調査したところ,別掲のとおり,本願商標と類似する「可能性をカタチにする」,「可能性をカタチにしていく」,「可能性をカタチに変えていく」及び「可能性をカタチに」等の文字が,経営方針や活動指針等を表す際に一般的に使用されている実情が認められる。
(3)小括
以上よりすると,本願商標は,これをその指定商品に使用する場合,句点の存在が記述的な文章を表してなるものとの印象を与えること,「(現在は実現していないが)考えうることについて,まとまり整った状態(商品化,実現化)をもたらす」程の意味合いを理解させるものであること,及び本願商標と類似する文字が経営方針や活動指針等を表す際に一般的に使用されていることから,これに接する需要者をして,顧客のニーズを具現化し,満足させることを目標としている企業等であるとの基本理念や姿勢等を示すものの一種と容易に理解させるにすぎず,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は,証拠調べ通知書で提示された各引用情報は,本願商標とは明らかに文字構成が異なり同一又は類似の語句でないものや単に説明の一部として用いられているものにすぎず,第三者が出願商標と同一又は類似の語句を企業理念・経営方針等を表すものとして使用していないことから,本願商標は,自他商品の識別標識としての機能を果たし得る旨主張する。
しかしながら,別掲の引用情報が本願商標とは文字構成が異なり同一又は類似の語句でないものとしても,上記(3)で述べたとおり,本願商標は,全体として,これに接する需要者をして,顧客のニーズを具現化し,満足させることを目標としている企業等であるとの基本理念や姿勢等を示すものの一種と容易に理解させるにすぎないから,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないというべきである。
イ 請求人は,過去の商標の登録例を挙げて,本願商標もそれらと同様に,登録されるべきである旨主張する。
しかしながら,過去の登録例に関わらず,商標の識別性の有無の判断は,商標の構成文字や構成態様等に則して,事案に応じて判断すべきであるから,請求人が主張する過去の登録例によって,本願商標の上記判断が左右されるものではない。
ウ よって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。
(5)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 当審における証拠調べ通知で開示した事実
「可能性をカタチにする」「可能性をカタチにしていく」「可能性をカタチに変えていく」又は「可能性をカタチに」等の文字を,企業理念や経営方針等として表示する事例(下線は合議体で付与)
1 「iSファクトリー株式会社」のウェブサイトのフロントページの上段の見出しに,「モバイルデジタルライフの可能性をカタチにする」の記載がある。
(http://www.isf-c.com/)
2 「繊維学会誌」(1990年46巻4号)の158?159頁の「『我が社の技術革新』特集」の記事において,「技術の可能性をカタチに-株式会社巴川製紙所-」の見出しの下,「無限の可能性をカタチにするR&D」の記載がある。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1944/46/4/46_4_P158/_pdf/-char/ja)
3 「中部グラフィックコミュニケーションズ工業組合」のウェブサイトにおいて,広報誌として会員企業を紹介している「GCC BOOK 2013-2014」の16頁の「株式会社ネットアーツ」の項に,「データベース×システム×デザイン=創造無限」の見出しの下,「インターネットにより企業と人,商品と人の無限の可能性をカタチにする会社を目指しています。」の記載がある。
(https://gcc.sky-inet.ne.jp/public/GCC_BOOK.pdf)
4 「asterisk合同会社」のウェブサイトの「会社概要」のページの上段の見出しにおいて,会社名の直下に「企業の無限大の可能性をカタチにする」の記載がある。
(http://astx.tokyo/%e4%bc%9a%e7%a4%be%e6%a6%82%e8%a6%81/)
5 「シチズン・システムズ株式会社」のウェブサイトにおいて,「事業概要」の見出しの下,「研究開発」の項に,「シチズングループには,人々の期待やあこがれの中に眠る新しい可能性をかたちにしていく,想像力とテクノロジーがあります。」の記載がある。
(https://www.citizen-systems.co.jp/company/outline/profile.pdf)
6 「ローランド ディー.ジー.株式会社」のウェブサイトにおいて,「求める人材像」の項に,当該会社が求める人材像として,「あなたのImagine.が,可能性をカタチに変えていく」の見出しがある。
(https://www.rolanddg.com/ja/recruit/message/imagine)
7 「三共グラフィック株式会社」のウェブサイトにおいて,「事業案内」の見出しの下,「変わる。創る。超える。その先の未来へ。」の項に,「印刷の未来にあるもの。その先の可能性をカタチに。いくぞ。未来。」の記載がある。
(http://www.sankyo-g.co.jp/business/)
8 「サンテクノス株式会社」のウェブサイトにおいて,「製品情報 サンテクノスの技術力と発想力」の見出しの下,「精密プラスチック射出成形」の項に,「プラスチック成形技術を軸に,可能性をカタチにかえています。」の記載がある。
(http://suntechnos-shiga.com/seihin/index.html)
9 「株式会社KOMOJU」のウェブサイトにおいて,「Exposure5 Visualize the Possibilities」の項に,「可能性をカタチに」の見出しがある。
(http://www.komojushop.jp/products/alienskin/exposure-5-old)


審理終結日 2019-11-05 
結審通知日 2019-11-19 
審決日 2019-12-04 
出願番号 商願2018-23496(T2018-23496) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 梨理子小林 裕子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 大森 友子
山根 まり子
商標の称呼 カノーセーオカタチニスル 

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