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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12 |
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管理番号 | 1359645 |
審判番号 | 無効2018-890068 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2018-09-05 |
確定日 | 2020-01-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5664068号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5664068号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5664068号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成25年9月13日に登録出願,第12類「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として,同26年1月16日に登録査定,同年4月18日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する商標(以下「引用商標」又は「Bマーク」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,主力製品の「自動車用タイヤ」のほか,「テニス,ゴルフなどのスポーツ用品」等の商品(以下「引用使用商品」という。)に使用しているとするものである。 なお,請求人は,上記と同じ態様の商標又は同じ態様の商標を構成中に含む登録商標(登録第5486521号,登録第4751076号,登録第5818296号,登録第5173890号)を所有している(甲3)。 第3 請求人の主張 請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第59号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同項第19号,同項第7号及び同項第16号に該当し,同法第46条第1項第1号又は同項第5号により,その登録は無効とされるべきものである。 2 具体的な理由 (1)請求人について 請求人は,1931年(昭和6年)設立,資本金1263億5400万円(2017年(平成29年)12月31日現在)のタイヤメーカーである。事業内容は,タイヤ部門のほか,自動車関連部品,ウレタンフォーム及びその関連用品,電子精密部品,工業資材関連用品,建築資材関連用品等の化工品,スポーツ用品,自転車であり,幅広い製品を製造販売している(甲8)。 請求人及び請求人グループは,世界26力国に180以上の生産・開発拠点を持ち,150を超える国々で事業を展開している(甲9)。 世界のタイヤ市場シェアは,2016年(平成28年)には14.6%で,世界トップである(甲10)。タイヤのシェアのランキングについては,請求人のシェアが第1位であることが,インターネット上の情報サイトやタイヤ販売店のサイトに,引用商標を表示とともに記載されている(甲11)。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は引用商標との関係で,出所混同を生ずるおそれがある商標である。 ア 引用商標の著名性について (ア)引用商標の使用について 請求人の「Bマーク」(引用商標)は,ハウスマークの「Bridgestone」の頭字としてのみならず,世界的タイヤメーカーのブランドロゴとして,単独でも様々な場面で顕著に掲示されている(甲12?甲17)。 (イ)CMについて 請求人は,大量かつ広範な広告宣伝を行っている。広告中には「Bマーク」が,ハウスマークの頭字としても,単独でも,必ず表示されていることから,一般需要者に請求人ブランドロゴとして認知されているといえる(甲18,甲19)。 また,請求人関連会社のブリヂストンサイクル株式会社(以下「ブリヂストンサイクル社」という。)の公式チヤンネルでは,製品やCMやプロモーション動画などが視聴できる。請求人関連会社のブリヂストンスポーツ株式会社(以下「ブリヂストンスポーツ社」という。)は,公式Facebookページにおいても,新商品情報,契約選手の最新情報等を配信し,契約選手のファン等はブリヂストン商品の情報を得ることができる(甲20,甲21)。 (ウ)請求人商品について 引用商標は,主力製品のタイヤについて著名であるのみならず,請求人の関連会社,ブリヂストンスポーツ社が製造販売しているスポーツ用品についても著名である(甲22?甲24)。 (エ)請求人商品カタログについて 請求人の商品カタログでは,表紙,商品説明において「Bマーク」が表示されている(甲25)。最新のタイヤカタログにおいても,表紙に大きく「Bマーク」が顕著に表示され,裏表紙にもオリンピックマークと共に「Bマーク」が表示されていることから,一般需要者は請求人企業ロゴを示すものと理解するといえる。また,業界紙「月刊タイヤ」では,請求人タイヤの紹介記事が掲載され,「Bマーク」が表示されている(甲26)。 (オ)インターネット記事について 請求人及び請求人商品の情報を伝えるインターネット上のサイトでは,引用商標が顕著に掲載され,一般需要者に周知されている(甲27?甲32)。 引用商標及び引用商標を含む「Bridgestone」のロゴについては,自動車関係の商品のみならず,広範な商品及び役務について多数の商標登録がされている(甲6)。 (カ)小括 請求人の「Bマーク」は,社名ロゴ「Bridgestone」の「B」の文字を図案化したもので,1984年(昭和59年)制定から30年以上使用されている。請求人の商品,カタログ,インターネット上の企業サイト等において,「Bマーク」は使用され,請求人のブランドロゴとして著名な商標といえる。 イ 本件商標と引用商標の類似性 両商標の「B」の黒塗りの部分は,形状がほぼ同一である。引用商標において「B」の上部の膨らみの部分が若干小さいが,上下二つの膨らみ部分の形状,中央の切り欠き線の形状,当該切り欠き線の下部右側がわずかに丸みを帯びている点,左下からせり上がっている三角形状の傾斜の角度,といった細部に至るまで,本件商標の「B」の黒塗り部分は引用商標と酷似している。 本件商標の「B」の左側上部のグレーの要素は,変形の四角形である点で,引用商標の対応部分が赤色の三角形であるのと相違する。これらの形状の相違により,引用商標の切り欠き部分は,全体として「A」の文字状あるいは「V」の文字を逆さにしたように見えるのに対し,本件商標は「Y」を逆さにしたように見える点で相違している。 しかし,本件商標の逆さ「Y」状の切り欠きの,「Y」の足部分を除いた形状を,引用商標の逆さ「V」の上部の三角形を除いた形状と対比すると,左側の切り欠きの太さが異なるものの,逆さ「V」形状として,ほぼ同一の形状であることがわかる。 よって,両形状の相違点は,ほぼ同一の黒塗り部分の左上に,色彩の異なる要素が載っているという,全体の構成の類似性を凌駕するものではない。 すなわち,本件商標の「B」の部分は引用商標と酷似するといってよい。引用商標の「B」のモノグラム化の態様は,特異性があるものであって,ありふれたものではないので,偶然の一致は考えられない。 本件商標において,「NAGAMOCHI」の欧文字部分は,被請求人の社名の一部であって,その名称の略語ないしはハウスマーク部分と見られるので,その上の「SB」のロゴ部分は分離観察される。本件商標の「SB」は,被請求人のホームページにおいて,本件商標に係るブランドが「SOMA BRAKE」から事業を承継したものであるとの説明がされており(甲4),よって「SB」のロゴを使用しているとしても,だからといって「B」の部分が引用商標と酷似することの説明にはなっていない。 また,本件商標の「S」のモノグラムについても,引用商標と比較すると,上部から約7分の2の部分(「S」において右側上部の要素の下端まで)同士を比較した場合に,「B」と「S」で文字は異なるものの,この部分の形状が酷似している。 引用商標は,請求人「Bridgestone」の頭字であり,「Bマーク」と呼ばれる請求人のブランドを象徴するロゴである (甲2)。「Bマーク」は,1984年(昭和59年)から30年以上使用されてきている(甲5)。2011年(平成23年)の創立80周年を機にブリヂストンシンボルとしてロゴ等を「リファイン」し,デザインは若干変更されているが基本的な構成及び印象は異ならない。 請求人の「Bマーク」のブランドの下,タイヤを中心とした商品が日本において多数量販売されており,かつ,オリンピック関連で更に大規模な広告宣伝活動がされていることから,本件商標の要部である「B」及び引用商標からは,共に「タイヤを中心として展開されている請求人の業務に係る『Bマーク』のブランド」といった観念も生じる。 以上のとおり,本件商標は,欧文字の「SB」と看取できるモノグラム及び欧文字の「NAGAMOCHI」からなり,本件商標の「B」のモノグラム部分は,引用商標と酷似する。 ウ 引用商標がハウスマークである 引用商標は,請求人及び請求人グループを象徴するロゴであって,ハウスマークの機能をも果たすものである。 エ 企業における多角経営の可能性 請求人及び請求人グループは,タイヤの製造及び販売,タイヤ関連用品の販売,リトレッド材料の製造及び販売,自動車整備・補修などを行う「タイヤ部門」と,化工品,スポーツ用品,自転車,その他各種事業を行う「多角化部門」によって構成され(甲8),実際に多角経営を行っているといえる。 オ 商品間,役務間又は商品と役務間の関連性 本件商標の指定商品は,自動車及びタイヤ関係の商品(以下「本件使用商品」という。)であり,実際の本件使用商品は自動車の部品等であって(甲11),引用商標の主力商品と同一の事業分野の商品である。 カ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情 被請求人は,「自動車部品出荷動向調査結果」(乙37)を根拠に,被請求人の商品,例えば,ブレーキパッドは工場などで取り付けられるため,一般ユーザーが購入する事はほとんどない旨述べるが,自動車に興味がある需要者であれば,自身で取り付けることもあり(甲52),ブレーキディスク・パッド,アンチロールバー,サスペンション等の自動車カスタム商品を自らの意思により選択して購入することは十分あり得る。よって,乙第4号証ないし乙第13号証に示されている,被請求人商品又は商品の包装に表示された「B」のモノグラムに一般需要者が接する機会はあるといえる。 以上のとおり,本件使用商品が自動車関連である点で,両商標は,需要者を共通にする。 なお,被請求人は,その商品又はその包装に,引用商標「Bマーク」に類似する本件商標「B」のモノグラムが顕著に表示されていることがわかる。請求人は商品又はその包装に,「Bマーク」を顕著に表示していることから,現実の商品についても少なくとも広義の混同のおそれがあるといえる(乙4?乙13)。 また,被請求人製品の展示会において,引用商標「Bマーク」に類似する「B」のモノグラムが顕著に表示されていることがわかる。請求人は展示会等において「Bマーク」を顕著に表示していることから(甲14ほか),被請求人の展示会と少なくとも広義の混同のおそれがあるといえる(乙22?乙36)。 キ 小括 以上よりすると,本件商標に接した需要者は,本件商標に係る商品の提供主体を請求人と誤認することはないが,本件商標が引用商標と酷似したロゴを含むことにより,被請求人が請求人と業務上何らかの関係があると誤信するおそれがある。 ク 被請求人の主張について 被請求人は,自動車部品メーカーとして挙げられていない(乙39,乙40)としても,請求人は,タイヤ以外の自動車部品の製造販売を行っている(甲54)。タイヤ業界のシェアトップである請求人は,もちろん第一にはタイヤメーカーと需要者に認識されるが,タイヤは自動車部品の一つであること,実際,自動車部品の製造販売を行っていることから,本件商標が自動車部品について使用された場合,自動車部品について出所混同のおそれがあることはいうまでもない。 被請求人は,一般的なビジネスの知識において,ほぼBtoBである自動車部品業界と,BtoBとBtoCが混在するタイヤ業界とは全く性質が異なるものと認識されている旨主張するが,商品選択において専門取引者が一般需要者より高度な注意力を持っているとしても,引用商標と酷似するロゴを取り込んだ本件商標について,少なくとも広義の混同のおそれは否定できない。 そうすると,被請求人は,請求人と同じ自動車関係の事業を行う者として,引用商標を知らなかったはずはないところ,引用商標に酷似した「B」ロゴを採択することにより,著名な引用商標の信用にフリーライドして,不正の利益を得ようとの不正の目的で本件商標について登録商標を受けたものと推認される。 以上より,本件商標は,商標法4条1項15号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第19号について 引用商標は,上記のとおり,請求人の業務にかかる商品及び役務を表示するものとして日本国内のみならず全世界の需要者の間に広く認識されている商標である。 本件商標は,上記のとおり,引用商標と類似し,被請求人は,上記で述べたとおりの不正の目的をもって本件商標を使用するものである。 ここで,商標法第4条第1項第19号の趣旨に鑑み,他人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の聞に広く認識されている商標とそれを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し,希釈化を引き起こすような程度に類似しているか否か,すなわち,容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標を連想(想起)させるほど類似しているか否かを検討すべきものと解するのが相当である。 本件商標に接した需要者は,本件商標が,ブリヂストンの「Bマーク」と酷似する「B」のモノグラムを含むことから,ブリヂストン及びその商品を連想するといえる。そして,本件商標は,需要者の記憶に記銘された「Bマーク」=「ブリヂストン」との一対一の対応関係を崩し,請求人の「Bマーク」の希釈化を引き起こすといえる。本件商標においては,他の称呼が生じる結合部分にかかわらず,通常の「B」の文字とは異なる「Bロゴ」部分が,需要者,取引者に対し,強い印象を与える自他商品識別力を有する形状であると評価できるものである。 よって,「Bロゴ」部分が共通することにより,本件商標は引用商標と類似するとして,商標法第4条第1項第19号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号について 前項までで述べたとおり,本件商標の登録出願の経緯には,その登録出願前に引用商標が請求人によって使用されていることから,それと酷似するロゴを取り込んだ本件商標を採択,使用することについては,多大な信用が化体した引用商標にフリーライドしようとの不正目的がうかがわれるので,本件商標は公序良俗を害するおそれがある商標であるといえる。 被請求人の不正目的は,被請求人関係者が,第三者の商標についても,そのブランドロゴを模倣して採り入れた商標を使用していることに鑑みても,本件商標が,請求人の引用商標を採り入れる意図をもって採択され使用されていることが推認されることからもうかがえる。 そして,請求人がワールドワイドオリンピックパートナーであることにより,その事業は高い公益性を帯びているものであり,需要者の利益に大きく関係する。 よって,請求人と何ら関係がない被請求人が,引用商標と酷似し請求人を想起させる「B」のモノグラムを含む本件商標を使用することは,特に自動車関係の商品について,請求人の取扱商品及び役務との関係で,取引者及び需要者が混乱し取引秩序を乱す結果となる。 したがって,本件商標は後発的にも公序良俗を害するおそれがある商標であり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第16号について 引用商標に係る,特に自動車関連の商品は,請求人の提供する商品として,その品質について需要者の高い信頼を得ているところ,引用商標と酷似する「B」のモノグラムを含む本件商標は,請求人を想起させるので,請求人と何らかの関係がある者により提供される商品であるがごとく,すなわち本件商標に係る商品が引用商標に係る商品の品質(オリンピックの公式スポンサーの商品の品質)を有するがごとく,商品の品質の誤認を生ずるおそれがある。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当する。 第3 被請求人の主張 被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第86号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 被請求人の答弁の理由 (1)被請求人について ア SBブランドの歴史について 1960年(昭和35年)に相馬四朗氏が樫山プレス工業の設立に参画し,1980年(昭和55年)に相馬産業株式会社を設立する。2001年(平成13年)に自動車部品のSBブランドを立ち上げる。2013年(平成25年)に相馬四朗氏の娘である金子徳子氏が社長である株式会社RMP NAGAMOCHI(以下「RMP社」という。)にSBブランドを譲渡した。 イ SBブランドの使用状況について SBブランドは,2001年(平成13年)から使われ,少なくとも請求人がオリンピック公式スポンサーとなる2014年(平成26年)よりも前からSBブランドとして商取引を行なっている。現在,SBブランドは,RMP NAGAMOCHI TECHNOLOGY JAPANのブランドとして日本を始め,各国で事業を展開している(乙2?乙13)。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 本件商標について 本件商標は,大きく書かれた「SB」の欧文字と,その当該欧文字の下に「NAGAMOCHI」の欧文字を書した商標である。本件商標は,これに接した一般的な取引者,需要者は「エスビイナガモチ」,「エスビイ」,「ナガモチ」と称呼する。また,実際の取引者,需要者が用いる取引書類でもSBというブランド名で認識されている(乙2,乙3)。また,「SB」は,被請求人のサイトに記載があるように,SOMA Breakeの略称であり,さらに,「S」には,「Safety:安全性」,「Speed:開発の速さ」といった意味も含ませている(甲4)。また,本件商標は,「B」の部分をあえて強調するなどの構成要素の一部を目立たせるような異常な使用方法を行っていない。被請求人は,本件商標を一体として通常の使用をしている。このため,本件商標の一部を取り出して判断するような特段の事情はない。 イ 引用商標について 引用商標は,イタリック体の欧文字の「B」を2つに分割し,左上部を赤色の略三角形にし,残りの部分を黒色にしている。また,赤い略三角形の部分は,鈍角の部分を曲線にし,さらに,黒い部分の左下部にある左向きの矢印の形状も緩やかな曲線となっている。また,この赤と黒の二つのパーツによって作られる隙間部分は,上に行くほど狭くなり,右向きに上昇する矢印状の形を形成している。この商標に接した者であれば,「ビイ」と称呼する。 ウ 本件商標と引用商標は非類似 (ア)商標の類否判定の原則 本件商標の構成中には,「B」という文字が含まれているが,本件商標は,「SB」の各文字の大きさ,書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「B」の文字部分だけが独立して見るものの注意を引くように構成されているということができない。 また,実際の取引者や需要者の取引書類(乙2,乙3),取引者の陳述書(乙1),商品や展示会や販促品での使用状況から見ても,本件商標の構成部分の一部を抽出し,この部分をだけを他人の商標と比較して商標そのものの類否判断することは許されないものである。 (イ)外観の比較 本件商標は,大きく書かれた「SB」の欧文字と,その下に「NAGAMOCHI」の欧文字を書した商標である。 これに対して,引用商標は,「S」の欧文字も,「NAGAMOCHI」の欧文字も備えておらず,本件商標と引用商標とは外観が大きく異なる。 なお,引用商標の「B」は,左上のパーツが赤色,右下のパーツが黒色という特徴があり,また,2つのパーツの隙間で矢印を形成ことが特徴的であるが,本件商標の「B」の部分は,左上のパーツが赤色,右下のパーツが黒色という組み合わせではないし,2つのパーツの隙間で直線を形成している。 このように,本件商標の「B」の文字部分と,引用商標を仮に比較することがあったとしても,外観が異なっている。 (ウ)称呼の比較 本件商標は「エスビイナガモチ」,「エスビイ」又は「ナガモチ」の称呼が生じ,一方,引用商標は「ビイ」の称呼が生じるから,両商標は,音数も構成音も大きく異なる。 (エ)観念の比較 本件商標も引用商標も造語のため,特定の観念はない。このため,本件商標と,引用商標の観念は同一ではない。 (オ)小括 このように,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念において非類似であり,別個のブランドとして認識されている。 エ 本件商標の使用例 本件商標の使用例として,商品や販促品や国内外の展示会での使用状況を列挙する。使用例を見ればわかるように,本件商標は一体として使用されている。また,一部の商品では,横書きで「SB NAGAMOCHI」として記載されており,取引先又は需要者には「SB」もしくは「SB NAGAMOCHI」というブランド名で認識されている。 (ア)被請求人の商品 被請求人は,自動車部品などの商品に本件商標を使用している(乙4?乙13)。 (イ)本件商標の付された販促商品 被請求人は本件商標をポロシャツ,つなぎ,帽子など様々な販促品に本件商標を使っている。どの使用例においても本件商標の構成要素の一部を不当に強調することなく一般的な方法で使用している(乙14?乙21)。 (ウ)本件商標の展示会での使用 被請求人は,国内での展示会を始め,ベトナム,タイ,パナマ,フィリピン,ミャンマー,メキシコ,ドイツ,ドバイ,オーストラリア,ロシアの展示会に出展するなど海外進出も図っている。その際に,ブースの正面や壁面に本件商標を展示し,本件商標が書かれた広告などを展示している(乙22?乙36)。 オ 取引の実情 (ア)被請求人の業界の取引の実情 指定商品が属する自動車部品業界は,取引先のほとんどが企業である。自動車の事故は人の命に関わるため,商取引の際,注意深く商品を選択している。 被請求人は,自動車部品業界に属している。また,本件商標の指定商品は,自動車並びにその部品及び付属品などである。被請求人の商品,例えば,ブレーキパッドは工場などで取り付けられるため,一般ユーザーが購入する事はほとんどない(乙1)。 さらに,「SBNAGAMOCHI」の付された商品の需要者は,整備工場や,整備工場向けの自動車部品商社であり,多くの当業者が陳述書で述べたように,被請求人の登録商標と,請求人の「Bマーク」は別のものと判断している(乙1,乙60?乙68)。そして,一般需要者と異なり,修理工場などがブレーキホースなどの自動車部品を購入する場合,純正品番で検索し,購入することがほとんどである。 したがって,請求人の需要者は,第一にタイヤを求める者,第二にゴルフクラブなどを求める一般需要者,第三に自動車用防振ゴムと,自動車用ウレタン製品を求める自動車メーカーである。このように,被請求人と,請求人とでは需要者が異なる。 (イ)タイヤ業界と自動車部品業界は異なる 請求人は,タイヤ業界のシェアが業界の最高峰であり,また,一般社団法人日本自動車タイヤ協会の正会員である(乙42)。 そして,自動車部品の兼業メーカーとしては,請求人は挙げられておらず,タイヤ・ゴム産業として挙げられており,自動車部品の業界とは全く異なるものとして扱われている(乙39,乙40)。このように,請求人は自動車部品メーカーとは認識されていない。 一般的なビジネスの知識において,ほぼBtoBである自動車部品業界と,BtoBとBtoCが混在するタイヤ業界とは全く性質が異なるものと認識されている(乙41)。このように,請求人の事業と,本件商標の指定商品に係る事業とは性質が異なり,混同が起きにくい。 (ウ)商品売買について a オンラインでの売買 自動車部品を販売しているインターネットによるショッピングサイトにおいて,請求人は,タイヤ及びタイヤ関係の部品を販売しており,ブレーキパッドなどブレーキ関連部品の自動車部品は販売している事実を発見できなかった(乙46,乙48?乙50)。 b 実店舗での売買 請求人の主力商品である自動車タイヤは,一般需要者(エンドユーザー)が購入するため,目につきやすい屋外にて販売されることが多い。 一方,ブレーキパッドやブレーキホースなどブレーキ関連の自動車部品は,多くの店舗では一般需要者(エンドユーザー)が直接手にとって購入する製品ではない(乙51?乙54)。 カ 本件商標と引用商標とは混同しない 上述したように,本件商標と引用商標はそもそも非類似であるため,本件商標の指定商品の取引先や需要者は混同しない。 自動車部品という指定商品との関係において,一般需要者より高度な注意力を持っている取引者であれば,本件商標と引用商標とで出所の混同のおそれのないことは明白である。 このため,取引先や需要者は,請求人及び被請求人の商品を混同せず,別個のブランドとして認識している。 これは,多くの当業者が,被請求人の登録商標と,請求人の「Bマーク」は別のものと判断していることから明らかである(乙1,乙60?乙68)。 キ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第19号について 上述したように,本件商標と引用商標は,非類似である。 被請求人の顧客は,本件商標を被請求人のブランドと認識し,取引している(乙1?3)。また,被請求人の顧客は,請求人の商品を請求人のブランドとして取引している(乙43)。 このように,本件商標を用いた商行為は,引用商標とは全く関係なく取引が成立しており,不正の目的はない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第7号について 本件商標の出願にあたって請求人と被請求人の間には,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を適用するような特段の事情がないため,私的な領域にまで商標法第4条第1項第7号の規定は適用できない。 また,オリンピックスポンサーの事業は必ずしも公益性の高い事業ではないから,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈するほどの公益性ではない。 さらに,実際の需要者は,被請求人と請求人を別個の会社,ブランドとして認識しており,どちらとも正当に取引をしている。このため,本件商標の使用によって,取引秩序は乱れていない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第16号について 上述したように本件商標と引用商標は非類似である。仮に,引用商標が普通名称化され,出所表示機能を失い品質を表すものになっていたとしても,本件商標は商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。 また,著名商標との関係で品質誤認のおそれがあるとして本号を適用することはできない。 したがって,本件商標は商標法第4条1項16号に該当しない。 2 むすび 以上述べてきたように,本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同項19号,同項7号及び同項16号に該当しない。 第4 当審の判断 1 引用商標の著名性について (1)請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア 請求人は,1931年(昭和6年)に設立された資本金,約264億円(2017年(平成29年)12月31日現在)のタイヤメーカーであり,事業内容はタイヤ部門のほか,自動車関連部品,ウレタンフォーム及びその関連用品,電子精密部品,工業資材関連用品,建築資材関連用品等の化工品,スポーツ用品並びに自転車の幅広い製品を製造販売し,世界26力国に180以上の生産・開発拠点を持ち,150を超える国々で事業を展開しており,我が国においても,50の生産拠点及び35社の関連会社を有する(甲2,甲8?甲10)。 イ 請求人は,自動車用タイヤの世界市場シェアでは2016年(平成28年)に14.6%を占め第1位であり,我が国市場シェア(2015年(平成25年)から2016年(平成26年)に係る売上高によるタイヤのみでなくゴム製品全般)は55.9%を占め第1位である(甲10,甲11)。 ウ 引用商標は,1984年(昭和59年)より(甲5),請求人及び請求人グループの社名のロゴ(ハウスマーク)である「Bridgestone」の頭字として,及び単独でも,以下のように使用されている。 (ア)引用商標は,自社のタイヤカタログ(2002年(平成14年)?2004年(平成16年),2008年(平成20年),2009年(平成21年),2018年(平成30年))において,商品「タイヤ」とともに使用されている(甲25の2?7)。 (イ)引用商標は,自社のテレビコマーシャル及びインターネットのサイトにおいても,商品「タイヤ」とともに,使用されている(甲18,甲19)。 (ウ)引用商標は,請求人のグループ会社であるブリヂストンサイクル社,ブリヂストンスポーツ社等の関係会社のウェブサイト(甲20,甲21)において,これらの関係会社のテニスラケット,テニスボール,ゴルフのキャディバッグ,ゴルフ用品,自転車等の商品に使用されている(甲22,甲25の1)。 エ 2005年(平成17年)8月1日,同年11月1日及び2017年(平成29年)9月1日発行の雑誌「月刊タイヤ」には,その裏表紙の全面に請求人の広告が掲載されており,商品「タイヤ」の紹介とともに引用商標が使用されている(甲26)。 オ 請求人のニュースリリースによれば,請求人は,国際オリンピック委員会(IOC)との間で,東京オリンピックを含む,2024年(令和6年)の夏季オリンピックまでの公式パートナー契約を締結したことが発表され,また,2016年(平成28年)3月10日には,東京2020パラリンピック競技大会のゴールドパートナーとなったことが,引用商標が表示を伴って発表された(甲7の1,甲29)。 (2)以上のことからすれば,引用商標は,1984年(昭和59年)より,請求人及び請求人グループのハウスマークとして使用され,本件商標の登録出願時には既に,その業務に係る自動車用タイヤ等を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名なものとなっており,それは,本件商標の登録査定時及びそれ以降も,継続しているものと認められる。 なお,この点については,当事者間に争いはない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号,平成12年7月11日第三小法廷判決)。 以上の観点から,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて検討する。 (2)引用商標の著名性について 上記1のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に,請求人及び請求人グループの業務に係る自動車用タイヤ等を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名なものとなっているものと認められる。 (3)本件商標と引用商標の構成について ア 本件商標の構成 (ア)本件商標は,別掲1のとおりの構成からなり,上段に大きくデザイン化された「SB」の文字を太字で顕著にデザイン化して表し,その下に小さくゴシック体で「NAGAMOCHI」の文字を配置したものである。 (イ)本件商標は,その構成中,太字で顕著にデザイン化して表した「SB」の文字のうち,「B」の文字部分(以下「本件商標B部分」という。)は,「B」の文字の上部の中央よりほぼ垂直にやや太い白抜きの直線が「B」の文字の中央に配され,また,当該垂直直線の途中から左斜め下に向かってやや細い直線が「B」の文字の下の横線の左端に向かって配されている。 (ウ)本件商標B部分は,その構成中,当該垂直直線と当該左斜直線により,分離された「B」の文字の左上の縦長台形部分は,灰色に着色され,その他の部分は,黒色の着色されている。 (エ)本件商標は,その構成中,太字で顕著にデザイン化して表した「SB」の文字のうち,「S」の文字部分は本件商標B部分と同様のデザインからなるものの,本件商標B部分との間には若干の空間がある。 また,本件商標は,その構成中「NAGAMOCHI」の文字部分は,「SB」の文字部分とは書体及び大きさが異なることから,独立して視認されるものである。 そうすると,本件商標は,上段の「SB」の文字部分に相応して,当該文字が親しまれた特定の語義を生じるものとはいえないから,当該文字部分に相応して「エスビー」の称呼を生じ,特定の観念は生じない。また,本件商標中の「NAGAMOCHI」の文字部分は「長持」の語を欧文字であらわしたものと看取される場合もあるから,当該文字部分に相応して,「ナガモチ」の称呼及び「物が変わらずに長く保たれること」の観念を生じる。 イ 引用商標の構成 (ア)引用商標は,別掲2のとおりの構成からなり,「B」の文字を太字でデザイン化した構成よりなるものである。 (イ)引用商標は,「B」の文字の上部の中央よりほぼ垂直にやや太い白抜きの直線が「B」の文字の中央に配され(上端部分は左斜めに切れている),また,「B」の文字の上部の中央より左斜めにしたに向かってやや細い直線が「B」の文字の下の横線の左端に向かって配されている。 (ウ)引用商標は,その構成中,当該垂直直線と当該左斜直線により,分離された「B」の文字の左上の略三角形部分は,赤色に着色され,その他の部分は,黒色の着色されている。 (エ)引用商標は,「B」の文字を太字でデザイン化した構成よりなるものであるから,「ビー」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。 ウ 本件商標と引用商標との異同 本件商標と引用商標とは,全体としては,外観上「S」の文字や「NAGAMOCHI」の文字の有無の差異を有し,称呼及び観念も異なることから,差異があるものといえる。 他方,本件商標B部分と引用商標とは,共に「B」の文字を太字でデザイン化して表したものである点,「B」の文字の上部の中央よりほぼ垂直にやや太い白抜きの直線が「B」の文字の中央に配されている点,「B」の文字中に左斜め下に向かってやや細い直線が「B」の文字の下の横線の左端に向かって配されている点,「B」の文字の左上の図形部分と,その他の部分が別々の配色で表され,その他の部分は黒色で着色されている点で共通するものであり,左斜直線の始点及び左上の図形部分の配色が異なるとしても,高い類似性を示すものであるということができる。 (4)引用商標の独創性について 引用商標は,「B」の文字をデザインしたものであるが,そのデザインは上記(3)イのとおりの特徴を有し,特異なものといえるから,その独創性は高いものといえる。 (5)取引者,需要者について 本件商標の指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」は,引用商標の使用商品の「タイヤ」を含むものであって,本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品「タイヤ」とは,共に自動車の部品であり,そして,例え被請求人が取り扱う自動車の部品及び附属品と請求人が取り扱う自動車用タイヤが異なる商品であるとしても,自動車用タイヤが自動車メーカー等に販売され,自動車の部品及び附属品も自動車メーカー等に販売されていることからすると,その性質・用途・目的において関連し,商品の取引者及び需要者が共通するというべきである。 (6)混同のおそれ 本件商標は,(ア)全体としては,外観,称呼及び観念において引用商標と差異があるものといえるものの,(イ)引用商標が1984年(昭和59年)より,請求人及び請求人グループのハウスマークとして使用され,その業務に係る自動車用タイヤ等を表示する商標として,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されて周知著名なものであること,(ウ)本件商標B部分が引用商標と高い類似性を示すものであること,(エ)引用商標が高い独創性を有すること,(オ)本件商標の指定商品が引用商標の使用商品「自動車用タイヤ」は共に自動車部品であるから取引場所を共通にし,その性質・用途・目的において関連し,商品の取引者及び需要者を共通にすることを総合的に考慮すれば,本件商標を本件商標権者がその指定商品において使用した場合,本件商標中の本件商標B部分が取引者,需要者に強い印象を与え,請求人及び請求人グループの業務に係る引用商標を連想又は想起させ,その商品が,請求人及び請求人グループと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 (7)以上のことからすれば,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 被請求人の主張について (1)被請求人は,自動車部品業界はほぼBtoBで取引され,BtoBとBtoCが混在するタイヤ業界とは全く性質が異なるものと認識され,請求人事業と本件商標の指定商品に係る事業とは性質が異なり出所の混同は起こりにくい旨主張する。 しかしながら,上記2(5)のとおり,本件商標の指定商品中には,商品「自動車の部品及び附属品」が含まれ,例え被請求人が取り扱う自動車商品と請求人が取り扱う自動車用タイヤが異なる商品であるとしても,自動車用タイヤが自動車メーカー等に販売され,自動車は通常タイヤ付きで販売されていること,請求人も認めるとおり自動車用タイヤもBtoBで取引される場合もあることから,その需要者は共通する場合も少なくないというべきであるから,請求人事業と本件商標の指定商品に係る事業とは性質が異なるものとはいえない。 (2)被請求人は,本件商標の「SB」の文字と引用商標の「B」の文字について,英文字2文字の「SB」と英文字1文字「B」との違いは,当業者の高度な注意力によれば明らかであり,しかも,被請求人と請求人は別ブランドと認識されている旨主張する。 しかしながら,上記2(3)のとおり,本件商標は,その構成中の本件商標B部分が高い類似性を示すものであり,引用商標が請求人及び請求人グループのハウスマークとして使用され,引用商標が周知著名なことを踏まえると,本件商標を本件商標権者がその指定商品において使用した場合,取引者,需要者において,請求人及び請求人グループの業務に係る引用商標を連想又は想起させ,その商品が,請求人及び請求人グループと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 (3)よって,被請求人の上記主張は,いずれも採用できない。 4 むすび 以上によれば,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものであり,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものというべきであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものである。 なお,付言するに,当審は,本件商標の登録は,審判請求人が主張する商標法第4条第1項第19号,同項第7号及び同項第16号には該当しないものと判断する。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標:色彩については,甲第2号証を参照。) |
審理終結日 | 2019-11-21 |
結審通知日 | 2019-11-25 |
審決日 | 2019-12-06 |
出願番号 | 商願2013-72180(T2013-72180) |
審決分類 |
T
1
11・
272-
Z
(W12)
|
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
薩摩 純一 榎本 政実 |
登録日 | 2014-04-18 |
登録番号 | 商標登録第5664068号(T5664068) |
商標の称呼 | エスビイナガモチ、エスビイ、ナガモチ |
代理人 | 鈴木 康介 |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |