• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 W05
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 W05
管理番号 1359640 
審判番号 不服2019-8029 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-17 
確定日 2020-02-10 
事件の表示 商願2017-116947拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成29年9月4日に立体商標として登録出願され、その後、本願の指定商品については、当審における令和元年6月17日付け手続補正書により、第5類「貼付剤」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標を構成する立体的形状は、ありふれた形状の一つである直方体であり、該形状は、本願の指定商品に含まれる『薬剤』などの包装容器として多数採択され、その商品の包装の形状を表すものとして認識されるにすぎないものであるから、自他商品の識別力を有さないものといえる。また、商品を販売するに当たって、その商品の包装容器に商品名及び製造販売業者名等の表示をする場合に、その表示文字を際立たせることによって、需要者の注意をひくために、もしくは、包装容器の美感を向上させることによって、需要者の購買意欲を高めるために、商品の包装容器に色彩を用いた装飾的又は背景的図形を施して使用することは、薬剤などの包装容器では、一般的に行われているものである。さらに、本願商標に描かれた図形部分は、四角形、三角形などの簡単な図形と色彩の組合せからなるものであって、これが本願商標の立体的形状に使用されたとしても、薬剤などの包装容器において、通常採用し得る範囲での美感を高めるためのデザインと認識されるというのが相当である。したがって、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その指定商品の包装容器の一形態を表したものと理解、認識するにとどまることから、本願商標は、単に商品の包装容器の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、その指定商品「貼付剤」に係る立体商標であって、別掲のとおり、縦長の直方体からなる立体的形状を斜視図により表してなるところ、その正面には青色、黄色及び緑色の直線帯状図形の左上隅に赤色の三角形が付された図形が配され、その右側面には青色、黄色及び緑色の直線帯状図形が配され、その上面は緑色で塗りつぶされているものである。
ところで、商品「薬剤(「貼付剤」を含む。)」の多くは、直方体状の包装容器に収納されて取引に資されており、通常、それらの包装容器には、その商品の美感を発揮させるため、また、需要者の関心をひくなどといった目的のため、様々な図形や色彩を装飾的に付すことが一般に広く行われている実情がある。
上記実情を踏まえて、本願商標に係る立体的形状を考察すると、その形状は、指定商品「貼付剤」を収納する包装容器そのものを表したものと認識されるものであり、該容器の正面、右側面、上面に配された図形及び色彩は、需要者をして、その商品を収納する容器の美感上の理由による装飾等と予想し得る範囲のものであるというべきであって、商品の包装容器の美感に資する目的のために採用されたものと認められるものである。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、需要者は、商品を収納する容器の形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、前記第1のとおり、当審において指定商品を第5類「貼付剤」と補正したうえで、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるとしても、同法第3条第2項に規定する要件を具備する旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。)を提出しているので、以下、本願商標が同法第3条第2項の要件を具備するものであるかについて検討する。
(1)請求人及び請求人商品について
請求人は、1847年(弘化4年)に創業以来、貼付剤を始めとする医薬品、医療補助品、医療用具、化粧品等の製造販売事業を展開している製薬会社である。
請求人は、1934年(昭和9年)に、貼付剤「サロンパス」を販売し、該貼付剤は、現在では世界各国で販売され、2016年(平成28年)から3年連続で、「Salonpas」は、鎮痛消炎貼付剤市場における販売シェア世界No.1ブランド(以下「サロンパスブランド」という。)の地位を獲得した(甲22)。
さらに、請求人は、第5類「貼付剤」を指定商品として、本願商標を構成する直方体の正面に配された図形と同一といえる図形を、貼付剤の包装用箱の正面上部の位置に配してなる位置商標(登録第6142242号商標)を有していることが認められる(甲19、甲20)。
(2)本願商標の使用状況について
ア 使用開始時期及び使用期間について
請求人は、2010年11月頃に、本願商標の立体的形状と同一と認められる形状の容器に収納した貼付剤「サロンパスAe」(以下「サロンパスAe」という。)の販売を開始し、それ以降9年以上の期間、本願商標を使用している(甲23?甲32)。
イ 使用地域について
サロンパスAeは、日本全国のドラッグストア及びそのオンラインストアにおいて販売されている(甲33?甲35)。
ウ 販売シェア及び生産数等について
請求人の主張によれば、サロンパスブランドの商品の売上高は、2017年3月から2018年2月までの1年間で約78億円、2018年3月から2019年2月までの1年間で約83億円であり、前者の市場占有率は約42%、後者の市場占有率は約45%である。
エ 広告宣伝について
請求人は、継続的に、サロンパスAeを表示したテレビコマーシャルによる広告を全国的に行っており、当該コマーシャルにおいては、本願商標の立体的形状と同一と認められる形状の容器を画面に大きく表示する等したものが放映されている(甲36?甲38)。
オ その他
当審においてした職権調査によっては、商品「薬剤(「貼付剤」を含む。)」について、本願商標のように直線帯状図形と三角形とを組み合わせた図形に4種類の色彩を施した容器を請求人以外の者が使用している事実は発見できなかった。
(3)小括
上記(2)によれば、請求人は、2010年以降、継続して本願の指定商品である「貼付剤」に、本願商標の立体的形状と同一と認められる商標を使用しているものであり、テレビコマーシャル等を通じて宣伝広告され、かつ、全国的に販売され、一定程度の売上、市場占有率を有するといえることからすれば、相当程度、需要者の間に広く知られたものとなっていることが認められるものである。
そうすると、本願商標は、その指定商品について、請求人により9年以上にわたり継続的に使用された結果、需要者が、請求人の業務に係る商品を表示する商標として認識されるに至ったものとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものというべきである。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同法第3条第2項の要件を具備するものであり、商標登録を受けることができるものであるから、原査定は取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標(色彩は原本参照)



審決日 2020-01-23 
出願番号 商願2017-116947(T2017-116947) 
審決分類 T 1 8・ 13- WY (W05)
T 1 8・ 17- WY (W05)
最終処分 成立  
前審関与審査官 旦 克昌高野 和行 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 小田 昌子
石塚 利恵
代理人 加藤 あい 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 黒川 朋也 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ