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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W01
審判 全部申立て  登録を維持 W01
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審判 全部申立て  登録を維持 W01
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審判 全部申立て  登録を維持 W01
管理番号 1358862 
異議申立番号 異議2019-900119 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-18 
確定日 2019-12-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6117137号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6117137号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6117137号商標(以下「本件商標」という。)は、「DISPER」の欧文字を横書きしてなり、平成30年3月8日に登録出願され、第1類「アクリル樹脂,メタクリル樹脂,未加工合成樹脂,未加工エポキシ樹脂,溶剤,分散剤,高分子乳化剤,湿潤剤,表面調整剤(化学品),高分子界面活性剤,化学剤,化学品」を指定商品として、同年12月28日に登録査定、同31年1月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の2件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
1 登録第822653号商標(以下「引用商標1」という。)は、「DisperbyK」の欧文字を横書きしてなり、昭和42年7月4日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同44年6月20日に設定登録され、その後、指定商品については、平成21年7月22日に、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第1408333号商標(以下「引用商標2」という。)は、「DISPERPLAST」の欧文字を横書きしてなり、昭和51年5月20日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同55年2月29日に設定登録され、その後、指定商品については、平成22年6月16日に、第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
引用商標が「DISPER(Disper)」の部分のみをもって認識、把握される場合、本件商標は引用商標と同一の語を格別特徴のない書体で書してなるから、外観、称呼、観念の全てを共通にする類似の商標であり、本件異議申立てに係る指定商品の一部も同一又は類似である。
したがって、本件商標を指定商品に使用した場合には、引用商標と相紛れるおそれがあり、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
本件商標をその指定商品に使用した場合には、需要者が、引用商標の権利者でありドイツ連邦共和国に本社を有する、ビイク ヘミー ゲゼルシャフト ミツト ベシュレンクテル ハフツング(以下「引用商標権者」という。)の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について引用商標権者と混同するおそれがあるか、仮にこのような狭義の混同を生じるおそれがないとしても、少なくとも本件商標の出願人が引用商標権者と経済的又は組織的に何等かの関係があると誤認し、商品の需要者が商品の出所について混同するという広義の混同のおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
需要者、取引者の間に広く知られていた引用商標権者の製品シリーズ名である引用商標の存在を認識しながら、本件商標の登録出願をしたことは、本件商標の商標権者は、世界的に有名な化学メーカーである引用商標権者の引用商標に蓄積された業務上の信用・名声につき、これを不当に利用、又はこれにフリ-ライドするなどの目的を持っていたと推認される。
かかる目的は公正な取引秩序に違反し信義則に違反する目的というべく、「不正の目的」に該当する。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、引用商標権者の国際的な著名性につき、これを不当利用、これにフリーライドするものと考えられる。
本件商標の商標登録は、公序良俗、社会一般の道徳観念、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神、さらには国際信義の観点からも認められるべきでない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標権者の使用商標について
申立人は、「DISPERBYK」及び「DISPERPLAST」の語は、引用商標権者の湿潤分散剤製品を表示するものとして、国内又は外国における取引者、需要者の間に広く認識されている商標である旨主張するところ、申立人の主張及び証拠から、引用商標権者の使用商標は、「DISPERBYK」の欧文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)及び「DISPERPLAST」の欧文字からなる商標(以下「使用商標2」という。)とし、これらの周知性について、以下、検討する。
2 使用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 引用商標権者は、ドイツに本社を置く、添加剤及び測定機器を中心に製造販売する化学メーカーである「BYK Additives & Instruments」(以下「BYK社」という。)の製造拠点(ドイツ、オランダ、英国、アメリカ、中国)の一つである。
BYK社は、我が国において、1966年に「塗料、インキ用添加剤」の販売を開始し、1984年に日本法人としてビックケミー・ジャパン株式会社を設立した。
ビックケミー・ジャパン株式会社は、2019年1月現在、事業内容を「塗料・印刷インキ・その他コーティング用・プラスチック用添加剤、エフェクトピグメント、計測器の輸出入・販売及び関連するサービス」とするものである(甲11)。
イ ビックケミー・ジャパン株式会社の2007年11月付け「湿潤分散剤」の案内書(甲17)7葉目には、「脱凝集タイプの湿潤分散剤」として「DISPERBYK-108」等の記載、同社の2009年1月付け「BYK新製品ニュースvol.1」(甲15)には、「DISPERBYK-2009 シリカの分散用にデザインされた第三世代の湿潤分散剤。」の記載、同社の2009年5月付け「BYK新製品ニュースvol.2」(甲16)には、「DISPERBYK-2008 コントロール重合によるシリカ用湿潤分散剤」の記載、同社の2010年1月付け「製品ガイド」(甲8)2葉目には、「塗料・インキ用添加剤 湿潤分散剤」として「DISPERBYK-2164」等の記載、同社の2012年10月付け「Data Sheet」(甲12)には、「DISPERBYK-102 高極性から中極性の溶剤型および水系塗料用無溶剤型湿潤分散剤」の記載がある。
また、ビックケミー・ジャパン株式会社の2009年12月付け「DISPERPLAST-1018」の技術情報(甲14)には、「DISPERPLAST-1018は多数の官能基を有するカラーマスターバッチ用分散剤で、・・・」の記載がある。
さらに、同社の2017年10月付け「製品ガイド」(甲9)4葉目には、「塗料・コーティング・インキ用添加剤 湿潤分散剤」として「DISPERBYK-2155」等、同22葉目には、「プラスチック用添加剤 塩ビゾル用添加剤 湿潤分散剤」として「DISPERPLAST-1142」等の記載がある。
(2)上記(1)によれば、以下のとおりである。
引用商標権者は、化学メーカーであるBYK社の製造拠点の一つであって、我が国においては1966年から塗料、インキ用添加剤の販売を開始し、1984年に日本法人(ビックケミー・ジャパン株式会社)を設立した。
ビックケミー・ジャパン株式会社においては、遅くとも2007年11月には使用商標1を、2009年12月には使用商標2を「湿潤分散剤」の名称として使用し、その後も継続して使用していることがうかがえる。
しかしながら、提出された証拠は、いずれも、使用商標1及び使用商標2が「湿潤分散剤」の名称として製品ガイド、案内書及び新製品ニュースなどに記載されたといった証拠のみであって、例えば、我が国及び外国における使用商標1及び使用商標2に係る商品の販売数量や売上高、シェアなど販売実績を示す主張及び証拠、あるいは、宣伝広告の回数や宣伝広告費の額といったものを確認できる客観的な証拠の提出はない。
加えて、申立人は、引用商標権者が2013年に静岡県浜松市で開かれた紙パルプ技術協会の年次大会に参加し、これにおいて「DISPERBYK-2010」に係るポスターを掲示した旨、また、日本での展示会においてブースを設置した旨、さらにセミナーの開催実績もある旨主張し、甲第18号証ないし甲第22号証を証拠として提出しているが、その証拠には上記主張を裏付ける、ポスターの作成日、作成者、作成部数等、又は年次大会、展示会及びセミナーの開催者の名称、開催日程、開催場所等を特定する記載もない。
そうすると、申立人が提出した証拠からは、使用商標1及び使用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「DISPER」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体的に表され、これから生じる「ディスパー」の称呼も、無理なく称呼し得るものである。
そして、該文字は、我が国の一般的な英語の辞書にはその記載がないことから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。
したがって、本件商標は、「ディスパー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1及び引用商標2は、前記第2のとおり、それぞれ「DisperbyK」、「DISPERPLAST」の欧文字を横書きしてなり、その構成文字は、いずれも同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体的に表され、これらの欧文字に相応して生じる「ディスパービイク」、「ディスパープラスト」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、無理なく称呼し得るものである。
そして、該各文字は、我が国の一般的な英語の辞書にはその記載がないことから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。
したがって、引用商標1及び引用商標2からは、それらの構成文字全体に相応した「ディスパービイク」、「ディスパープラスト」の一連の称呼のみを生じ、いずれも特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標「DISPER」と引用商標1「DisperbyK」及び引用商標2「DISPERPLAST」とは、外観において、「DISPER」及び「Disper」のつづりを同じくするものの、それらに続く引用商標1における「byK」と引用商標2における「PLAST」の有無という明確な差異を有するから、この差異が本件商標と引用商標との外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、外観上、相紛れるおそれはない。
次に、本件商標から生じる「ディスパー」と引用商標1から生じる「ディスパービイク」及び引用商標2から生じる「ディスパープラスト」の称呼とを比較すると、両者は前半の「ディスパー」の音を共通にするものの、後半の「ビイク」及び「プラスト」の音の有無により、両称呼全体の構成音数、語調語感が異なり、両者をそれぞれ一連に称呼しても、称呼上、相紛れるおそれはない。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、その外観及び称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両商標が取引者、需要者に与える印象、記憶等を総合してみれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
なお、申立人は、引用商標が「DISPER(Disper)」の部分のみをもって認識、把握される場合、本件商標は引用商標と同一の語を格別特徴のない書体で書してなるから、外観、称呼、観念が全て共通する旨主張しているが、引用商標は、上記のとおり、いずれも一体不可分のものと見るのが相当であり、それらの構成中「Disper」及び「DISPER」の文字部分を分離抽出すべき事情は見いだせないから、申立人のかかる主張は採用することができない。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
本件商標の指定商品中の第1類「溶剤,分散剤,高分子乳化剤,湿潤剤,表面調整剤(化学品),高分子界面活性剤,化学剤,化学品」と引用商標の指定商品中の第1類「化学品」とは、同一又は類似の商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2(2)のとおり、使用商標1及び使用商標2は、引用商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。
また、上記3のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって、別異の商標であるから、引用商標1(「DisperbyK」)を大文字で表した「DISPERBYK」の文字からなる使用商標1及び引用商標2と同一の構成文字からなる使用商標2は、どちらも本件商標と非類似の商標ということができる。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、需要者において、引用商標権者や使用商標1及び使用商標2を連想、想起するということはできず、よって、その商品が引用商標権者あるいは引用商標権者と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある商標とはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記2(2)のとおり、使用商標1及び使用商標2は、引用商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものであり、かつ、上記4のとおり、本件商標は、使用商標1及び使用商標2とは非類似の商標である。
そして、申立人の提出に係る証拠をみても、本件商標権者が、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的な事実を見いだすことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は、引用商標権者の国際的な著名性を前提に、これを不当に利用し、フリーライドするものと考えられる旨主張しているが、上記2(2)のとおり、使用商標1及び使用商標2は、引用商標権者の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。
そして、申立人提出の証拠からは、申立人が主張する、本件商標を不正の目的をもって使用し、使用商標1及び使用商標2が持つ顧客吸引力等にただ乗りしようとする等の事実や本件商標をその指定商品について使用することが、公正な取引秩序を乱し国際信義に反するものとすべき事情も見当たらない。
さらに、本件商標は、前記第1のとおりの構成よりなるものであって、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものでなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものとすべき事由はなく、かつ、他の法律によってその使用が禁止されているものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-12-18 
出願番号 商願2018-27718(T2018-27718) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W01)
T 1 651・ 22- Y (W01)
T 1 651・ 261- Y (W01)
T 1 651・ 222- Y (W01)
T 1 651・ 271- Y (W01)
T 1 651・ 262- Y (W01)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉田 昌史 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 金子 尚人
小松 里美
登録日 2019-01-25 
登録番号 商標登録第6117137号(T6117137) 
権利者 大塚化学株式会社
商標の称呼 ディスパー 
代理人 島田 義勝 
代理人 河内 幸雄 

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