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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W05 |
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管理番号 | 1358861 |
異議申立番号 | 異議2018-900390 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-12-26 |
確定日 | 2019-12-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6091273号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6091273号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6091273号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年1月12日に登録出願され、第3類「育毛料(育毛効果のある頭髪用化粧品),化粧品,せっけん類」,第5類「育毛促進用薬剤,薬剤(農薬に当たるものを除く。),サプリメント」及び第35類「育毛料(育毛効果のある頭髪用化粧品)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,せっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,育毛促進用薬剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤(農薬に当たるものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同30年10月1日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の3件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。 1 登録第5431413号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成22年10月27日 設定登録日:平成23年8月12日 指定商品:第5類「栄養補給剤,その他の薬剤,食餌療法用食品及び飲料」並びに第29類,第30類,第32類及び第33類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 2 登録第6094128号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成30年1月22日 設定登録日:平成30年11月2日 指定商品:第5類「栄養補給剤,栄養補助食品,液状の栄養補給剤,液状の栄養補助食品,医療用薬草エキス,ハーブを含有する栄養補給用ドリンク剤,栄養を強化した栄養補給用ドリンク剤,ビタミンを強化した栄養補給用ドリンク剤,アミノ酸を強化した栄養補給用ドリンク剤,その他の栄養補給用ドリンク剤,ハーブを含有する液状のサプリメント,栄養を強化した液状のサプリメント,ビタミンを強化した液状のサプリメント,アミノ酸を強化した液状のサプリメント,その他の栄養補給剤及び栄養補助食品,薬剤,液状のサプリメント,その他のサプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」並びに第29類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 3 登録第6062756号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲4のとおり 優先権主張:2017年9月21日 パキスタン・イスラム共和国 登録出願日:平成30年3月12日 設定登録日:平成30年7月13日 指定商品:第5類「栄養補給剤,栄養補助食品,液状の栄養補給剤,液状の栄養補助食品,医療用薬草エキス,ハーブを含有する栄養補給用ドリンク剤,栄養を強化した栄養補給用ドリンク剤,ビタミンを強化した栄養補給用ドリンク剤,アミノ酸を強化した栄養補給用ドリンク剤,その他の栄養補給用ドリンク剤,ハーブを含有する液状のサプリメント,栄養を強化した液状のサプリメント,ビタミンを強化した液状のサプリメント,アミノ酸を強化した液状のサプリメント,その他の栄養補給剤及び栄養補助食品,薬剤,液状のサプリメント,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品」及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品中、第5類の「全指定商品」について、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第375号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人の使用に係る商標の著名性 (1)申立人による商標の使用 申立人の使用に係る爪の図柄(引用商標1及び引用商標2。引用商標3は爪の図柄を立体的に描いたもの。以下「申立人図形商標」という。)は、申立人が2002年に創設したエナジードリンクの新ブランド「MONSTER」シリーズ製品の出所識別標識として、当該ブランドの創設時から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものである。 「MONSTER」エナジードリンクは、2002年に米国で「MONSTER」シリーズ最初の製品である「MONSTER ENERGY」の販売開始後、我が国では2012年5月から販売を開始し、現在では我が国を含む世界100以上の国及び地域で販売中である。2002年以降、現在まで継続して、申立人の上記ブランドから発売されるエナジードリンクには、「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名に加えて、常に爪の図柄がドリンク缶の中央に最も大きく目立つ態様で付されている。この爪の図柄と「MONSTER」の文字を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2?33、甲51?57、甲58の段落1?18)。 これまでに国内発売された製品は、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER COFFEE」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」、「MONSTER CUBA LIBRE」であり(甲5?7、甲10、甲12?15、甲59?62、甲101?103、甲118、甲127?131、甲252?264、甲274、甲291、甲323?326)、これら各製品全てに爪の図柄が付されている。 (2)広告及び販売促進活動 申立人による「MONSTER」エナジードリンクの広告及び販売促進活動は、世界の有名アスリート、レーシングチーム、スポーツ競技会、アマチュアスポーツ選手、音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供、スポーツ、音楽、ゲームなどの娯楽イベントの開催、米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行、これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン、各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布)、2013年2月から2018年11月までの約5年9月の期間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(MONSTERの頭文字「M」を象った爪の図柄(甲328、甲329)を付したTシャツ、帽子、ダウンジャケット、リストバンド、キーホルダー、ステッカー、ギター、バッグパック、エナジードリンク、クーラーボックス、冷蔵庫、自動車など総計75万点を超えるアイテム)の提供、「MONSTER」の文字を付したポスター、商品ネームプレート、チラシ、陳列棚、冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示、遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース、申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して、2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されている。これらの広告物及び販売促進物には、極めて顕著な表示態様で爪の図柄が継続的に使用されてきた(甲7?17、甲34?57、甲58の段落19?136、甲59?91、甲101?133、甲136?168、甲225?256、甲265?274、甲279?296、甲323?326、甲331?352、別紙2)。 また、申立人は、2002年から、ブレスレット、ラペルピン、キーホルダー、Tシャツ、スウェットシャツ、帽子、レーシングジャケット、手袋などのアパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー等の文房具、傘、ビデオゲームソフトといった「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは、ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」、「Monster」の文字の表示に加えて、爪の図柄を大きく表示して販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は、国内の実店舗のほか、オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47、甲48、甲58の段落124?128、137?138及び同RCS36、甲92?100、甲134、甲135)。 (3)国内の需要者における「MONSTER」ライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25(2013)年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?224、別紙1)。 (4)爪の図柄は、申立人の創作に係る独創的構成からなる創造標章である。申立人は、爪の図柄の世界的規模での継続的使用に基づき、エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について、引用商標を始め、爪の図柄を基調とする様々な構成の商標を我が国及び諸外国で商標出願し、登録を取得しており(甲353?373)、また、米国では、爪の図柄の図案画の作品について著作権登録も行っている(甲374、甲375)。 (5)第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており、それ以降も着実に売上を伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく表示された爪の図柄のロゴマークが人目を惹きつけ、女性層にも知名度、人気を拡大している。この爪の図柄を付した申立人の「MONSTER」エナジードリンクは、実際の市場で「モンスター」と呼ばれ、「モンスター」の表記で認知されている(甲311?322)。 (6)以上の事柄に照らせば、申立人図形商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務の代表的出所識別標識として国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていた。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標は、甲第1号証の1に示すとおりの構成からなるものであり、上端部が連結され縦方向に延びる概ね長さが等しい細長い帯様図形3本を互いに平行に均等間隔で並べた図形とこれに交差する二葉様図形とからなり、当該帯様図形3本は各々の下端部が左右に極小さな突起を有し、両端に位置する帯様図形は各々の上端部がそれぞれ左上方向及び右上方向に延びる小さな爪型の突起を有する。当該構成からは、アルファベットの13番目の文字「M」の小文字「m」の字形の外観印象、並びにアルファベットの「m」の観念が容易に想起連想される。 (2)申立人図形商標は、引用商標1及び引用商標2として示すとおり、左向きに尖った微細な突起部を有する上端部から下方向に向かって延びた細く尖った下端部を有する細長い帯様図形3本を中央に位置するものを僅かに長くし、当該帯様図形3本を概ね互いに平行に均等間隔で並べたものである。当該構成からは、アルファベットの13番目の文字「M」の小文字「m」の字形の外観印象、並びにアルファベットの「m」の観念が容易に想起連想される。 (3)本件商標は、縦方向に細長い帯様図形3本を概ね互いに平行かつ均等間隔で並べた構成を包含する点、並びに、当該帯様図形の上端部又は下端部が小さな突起を有する点で申立人図形商標と基本的構造を共通にし、かつ、当該構成全体がアルファベットの13番目の文字「M」の小文字「m」の字形の外観印象及び「m」の観念を容易に喚起させる点においても一致する。 したがって、両者は、外観及び観念が近似し、商品出所識別標識として類似する印象を需要者に与える。 よって、本件商標と申立人図形商標は類似性の程度が高いというべきである。 (4)本件商標の指定商品は、栄養補給剤・栄養ドリンク剤等を包含する「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」及び「サプリメント」を含む。これらの商品は、申立人が爪の図柄を継続的に使用している「エナジードリンク」と使用目的、原材料、効能、製造部門、販売場所、需要者の範囲が共通又は重複し、極めて密接な関連性を有する。 また、本件商標の指定商品の最終的な需要者は一般消費者を多く含むから、通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。 (5)加えて、先に詳述したとおり、爪の図柄は、「MONSTER」エナジードリンクをはじめとする申立人の取り扱いに係る商品、役務及び申立人会社を直観させる申立人の代表的商品出所識別標識として認識されるに至っており、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者、需要者の間で広く認識されていた。 さらに、爪の図柄は、申立人の商品及び役務の代表的出所識別標識として、その製造販売に係るすべての各種エナジードリンクに使用されていることに加えて、申立人から商標使用許諾を受けた者の製造販売に係る各種ライセンス商品、申立人の支援を受けている世界的に有名なアスリート及びチームが競技会で着用又は使用するスポーツウエア、運動用具、自動車、オートバイなどに付されており、これらの大量の模倣品が水際で輸入差止めされる程度まで国内外で高い人気を獲得するに至っている。このような事情の下で、爪の図柄を容易に想起連想させる本件商標が使用された場合は、2002年から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されるに至っている爪の図柄の出所表示力が希釈化するおそれがある。 これらの事柄を総合して考察すれば、本件商標が本件商標の指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人がその商品及び役務の出所識別標識として長年継続使用している爪の図柄と申立人会社を想起連想し、当該指定商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者(例えば、申立人から商標使用許諾を受けたライセンシー)の取り扱いに係るものであると誤信することにより、その出所について混同を生じるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人の使用に係る商標の周知性について ア 申立人の主張及び同人提出の証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、米国の飲料メーカーであり、2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国において販売を開始した(甲7)。 (イ)申立人のエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)は、我が国においては、2012年5月8日から「Monster Energy」(モンスターエナジー)及び「Monster KHAOS」(モンスターカオス)の販売が開始され(甲7、8)、その後、2013年5月7日から「モンスター アブソリュートリー ゼロ」(甲10)、2014年8月19日から「モンスターエナジー M3」(甲59)、同年10月7日から「モンスターコーヒー」(甲60)、2015年7月21日から「モンスター ウルトラ」(甲101)、2017年6月27日から「モンスターロッシ」(甲257)、2018年4月24日から「モンスター キューバリブレ」(甲323?326)が販売されている。 そして、上記各商品のうち、「Monster KHAOS」は、「果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」、「モンスターコーヒー」は、「コーヒー飲料」であり、そのほかの商品は、全て「炭酸飲料」である。また、上記各商品の容器の側面には、飲料の種類により色彩が相違し(緑色、赤色、青色、黄土色、白色が確認できる。)、一部構成要素が追加されているものがあるものの(「モンスターエナジー M3」には爪の図柄の右上に「3」の数字が表示されている。)、申立人図形商標と構成上の特徴を共通にする爪の図柄が、顕著に表示されている。 (ウ)申立人商品は、我が国において、2012年5月の発売開始以降、2012年末までの約8か月で157万箱販売された(甲9)。 (エ)申立人の最高経営責任者の宣誓供述書(甲58)によれば、申立人商品は、我が国において、2012年5月の販売開始から2015年6月30日までの約3年間で、約2億3,600万缶販売され、その総販売額は1億7,500万米ドル以上、日本円で170億円以上であるとされる。 (オ)上記供述書(甲58)によれば、申立人は、申立人商品の広告、マーケティング及び販売促進活動のために、全世界では、2002年以来、30億米ドル以上を支出しているが、「モンスター社のマーケティング戦略は、従来の方法とは異なり、MONSTER商標及び爪の図柄を広めるための広告を、直接テレビやラジオで行わない」とされ、広告などの予算の多くは、「競技選手への支援及び競技大会やその他イベントへのスポンサー活動」に当てている。特に、マーケティングの焦点は、「主要なターゲットとする若年成人層、主に男性が多くの時間を費やすインターネット上で、ネット配信されるイベント」であり、具体的には、ロードレース世界選手権グランプリ(MotoGP)、MotoGPレーシングチーム、F1レーシングチーム、モトクロスチーム、アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)、音楽祭、音楽イベント、ミュージシャン及びビデオゲームチームへのスポンサー活動及び促進活動などである。 ただし、我が国においては、2012年5月及び6月に申立人商品の販売開始を支援するために、主要テレビ局のテレビ広告枠を購入し、視聴者に申立人のウェブサイトで更なる情報を得るように促す広告を行い、それに約190万米ドルを支出したとされる。 (カ)2016年3月31日付けのアサヒ飲料株式会社のニュースリリース(甲129)によれば、申立人商品につき、「『モンスターエナジー』ブランドは・・・ブランド力とファッション性で世界中の若者からの圧倒的な支持を背景に、急成長しているエナジードリンクです。」と紹介し、「エナジードリンク市場は、『モンスターエナジー』などの海外ブランドの浸透により、最近では10代、20代が『炭酸の刺激を楽しみたい』や『気分転換』を目的に飲用する傾向」との記載がある。 イ 上記アによれば、申立人図形商標は、2012年5月から我が国においても販売されている申立人商品に係る容器に表示されており、その販売額は、約3年間(2012年5月から2015年6月まで)で1億7,500万米ドル(約170億円)以上とされ、その販売期間は、発売から本件商標の登録出願時までは約5年半程度と長期にわたるものではないが、ある程度継続した販売実績があることがうかがえる。 しかし、申立人は、テレビなどの一般的なメディアを通じた広告宣伝をそもそも行わない方針であることもあり、我が国におけるテレビCMは、2012年の発売当初の1か月程度の短期間であって、その費用も約190万米ドル程度のものであり、また、継続的に行われているスポンサー活動や販売促進キャンペーンについても、我が国における広告宣伝費は明らかではない。そして、その広告宣伝の多くは、主に比較的若い世代が集まるようなモータースポーツ、格闘技、音楽イベントやミュージシャン、ビデオゲームなどと関連したスポンサー活動やプロモーション活動であり、申立人商品の紹介に当たっても、10代や20代の需要者層における支持が言及されていることからすると、申立人商品の主要な需要者層や、広告などを通じて申立人商品を目にする需要者層の範囲も、自ずと若年層を中心としたものとみるのが相当である。 さらに、申立人商品は、エナジードリンクと称されるものではあるが、その実態は専ら「炭酸飲料」又は「コーヒー飲料」であって、清涼飲料の一種というべきものであるところ、我が国で販売されるこれらの飲料における申立人商品のシェアは、明らかとはいい難い。 このように、申立人商品の販売期間は、比較的短く、また、申立人商品について、幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じた広告宣伝の実績は乏しい上、その広告宣伝などを通じた申立人図形商標の露出も、比較的若年層に向けた活動を通じて行われていることから、申立人商品と関連して使用されている申立人図形商標は、本件商標の登録出願日前までには、その取引者や若い世代を中心とした需要者の間では、ある程度知られていたものということができても、幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。 そのため、申立人図形商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者において、申立人商品を表示する商標として、広く認識されているものということはできない。 (2)本件商標と申立人図形商標との類似性 ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、上部を曲線で連ねた三本の多少湾曲した縦線を太く描き、中央の縦線の上端よりやや下の位置から斜め上方向へ左右対称に葉様の図形を重ねて描いた図形(葉様の図形の先端は、左右の縦線のそれぞれ斜め上にかぎ爪様に突出している。)からなるところ、これは何を表したのかが判然としない極めて抽象的な図形というべきものであるから、これより特定の称呼及び観念は生じない。 イ 申立人図形商標について 申立人図形商標は、別掲2ないし4のとおり、いずれも下向きに幅が徐々に細くなる不規則な凹凸状の輪郭を有するかぎ裂き状の線状図形であって、その上端に左向きの突起を設けてなるものを3本縦方向に平行に配置(中央に位置するものは、その左右に位置するものよりやや長めに描かれている。)してなる図形(緑色を着色したもの(別掲3 引用商標2)及び縁取りや陰影を施したもの(別掲4 引用商標3)を含む。)であり、その構成態様には独創性があるとはいえるものの、特定の事物を表してなるものと認識されるとはいい難いため、これより特定の称呼及び観念は生じない。 ウ 本件商標と申立人図形商標との比較 本件商標と申立人図形商標を比較すると、両者は、外観において、共通する点は見いだせないものであって、その態様が顕著に相違するものであり、明瞭に区別し得る。 また、両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないため、称呼及び観念において比較できない。 したがって、本件商標と申立人図形商標とは、称呼及び観念において比較できないものであるとしても、外観においては、明瞭に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合的に考察すれば、両商標は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (3)本件登録異議の申立てに係る指定商品と申立人商品との比較 本件登録異議の申立てに係る指定商品である第5類「育毛促進用薬剤、薬剤(農薬に当たるものを除く。)、サプリメント」と申立人商品とを比較すると、前者において、薬剤とは治療その他の目的で薬品を調合したものであり、サプリメントとは体に欠乏しやすいビタミン・ミネラル・アミノ酸・不飽和脂肪酸などを、錠剤・カプセル・飲料などの形にしたものであるから、病気などの治療又は栄養を補助するビタミン等の摂取を目的とする商品であるのに対し、後者は清涼飲料の一種であって、清涼飲料とは喉の渇きをいやし、清涼感をおぼえさせる非アルコール性飲料であるから、喉の渇きをいやすことを目的とするものである。 そうすると、本件登録異議の申立てに係る指定商品と申立人商品とは、その用途において異なるものといえる。 また、両商品の需要者は、いずれも一般消費者を含むものであるから、その一部が共通するとしても、両商品を生産、販売する事業者並びに両商品の原材料及び品質が一致するというべき事情は見いだせない。 これらの事情を総合的に考慮して判断すれば、両商品は類似しない商品というのが相当である。 なお、申立人は、本件商標の指定商品は、栄養補給剤・栄養ドリンク剤等を包含する「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」及び「サプリメント」を含み、これらの商品は、申立人が爪の図柄を継続的に使用している「エナジードリンク」と使用目的、原材料、効能、製造部門、販売場所、需要者の範囲が共通又は重複し、極めて密接な関連性を有する旨を主張するが、上記のとおり、両商品は類似しない商品というのが相当であって、需要者において、一部が共通するとしても、その商品の原材料、品質、製造者、販売者等の観点から、必ずしも密接な関連性があるとはいい難く、また、両商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の具体的な証拠はないため、その主張を採用することはできない。 (4)出所の混同について 申立人図形商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示する商標として、若い世代を中心とした需要者の間ではある程度知られていたといえるとしても、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標とはいえないばかりか、上記(2)のとおり、独創的な図形からなるとしても、本件商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、さらに、本件登録異議の申立てに係る指定商品と申立人商品とは、上記(3)のとおり、相互に密接な関連性があるとはいえないことからすれば、これらを総合勘案した場合、本件商標をその指定商品に使用したときに、これに接する需要者が、申立人図形商標を連想又は想起するようなことは考え難い。 そうすると、本件商標は、これを本件登録異議の申立てに係る指定商品について使用しても、その取引者、需要者をして、当該商品が申立人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく、また、当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 2 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、本件登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1) 別掲3(引用商標2)(色彩は、原本参照。) 別掲4(引用商標3) |
異議決定日 | 2019-12-17 |
出願番号 | 商願2018-3296(T2018-3296) |
審決分類 |
T
1
652・
271-
Y
(W05)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浦辺 淑絵 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
小松 里美 金子 尚人 |
登録日 | 2018-10-19 |
登録番号 | 商標登録第6091273号(T6091273) |
権利者 | アンドビューティジャパン株式会社 |
代理人 | 柳田 征史 |
代理人 | 香原 修也 |
代理人 | 古井 かや子 |