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審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09
審判 一部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09
管理番号 1358806 
審判番号 無効2017-890087 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5590686号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成30年11月6日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10176号,令和元年5月30日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 登録第5590686号の指定商品中,第9類「再起動器を含む電源制御装置」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5590686号商標(以下「本件商標」という。)は,「リブーター」の文字を標準文字で表してなり,平成25年2月8日に登録出願,第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電気通信機械器具,測定機械器具,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として,同年5月27日に登録査定,同年6月14日に設定登録されたものである。その後,当該商標権は,令和元年8月5日受付で放棄による商標権の登録の抹消がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲29号証及び甲第35号証ないし甲第40号証を提出した。
なお,上記甲第35号証ないし甲第40号証については,甲第30号証ないし甲第35号証と読み替える。
1 無効の理由
本件商標は,商標法第3条第1項第1号,同項第3号又は同法第4条第1項第16号に該当するから,その登録は同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
(1)利害関係について
請求人は,被請求人より,平成27年6月3日付けの「お尋ね書」と題する書簡(甲2)を受け取った。この「お尋ね書」は,請求人の販売する商品の一部が,本件商標の権利範囲に重なっている可能性があることを指摘するものである。したがって,請求人による商品の販売の自由が,本件商標によって制限されるおそれがあり,請求人は,本件商標に対して無効審判の請求をすることについて利害関係を有している。
(2)商標法第3条第1項第1号について
本件商標の「リブーター」という語は,英語の動詞「reboot」の語尾に,「er」が付加された「rebooter」の片仮名表記であることは明らかである。英語の動詞「reboot」は,日本語で再起動を意味する語である(甲11?甲15)。また,「リブーター」は,語尾の長音符「ー」を省略した形「リブータ」と標記される場合もある。
「リブーター/リブータ/rebooter」は,本件商標の登録査定日より以前から,電源を一度落して再度起動させる「電源制御装置」の意味で使用されていた(甲4?甲7)。
したがって,「リブーター」は,商品「電源制御装置」の普通名称である。
また,仮に「リブーター」が普通名称であるとまではいえないとしても,以下の理由により,情報技術の分野では,「リブーター」は普通名称と同視されるものである。
「-er」は,「動詞または名詞から種々の意味の動作主名詞(agent noun)を造る」ものであり,「-er」が付加された動詞又は名詞は,「・・・する物(器具・機械など)」を意味するようになる(甲8)。本件商標の登録査定日より前から,情報技術の分野において,様々な動詞にer又はorを付加して動作主名詞を造ることは一般的に行われている。例えば,「コンピュートするもの」としての「コンピューター」があり,「プリントするもの」としての「プリンター」等が広く知られている。このことは,「エンコーダー/encoder:符号器」,「カウンタ/counter:人力パルスの数を計算する回路」,「加算器/adder」,「計算器/calculator」,「計算機/computer」及び「コンバータ/converter:ある信号またはデータを目的の形式に変換すること等」等がある。このように,「動詞」と「er/or」とを組み合わせた語が多数掲載されている(甲9)。
したがって,情報技術の分野では,「動詞」と「er/or」とを組み合わせると,「動詞(動作の内容)するもの」の意味として用いられていることは,周知である。
そして,動詞「リブート/reboot」は,本件商標の登録査定日より前から,情報技術の分野において,再起動を意味する言葉として広く用いられている(甲10?甲28)。したがって,本件商標の登録査定日より前から,情報技術の分野に属する取引者,需要者は,動詞「リブート/reboot」に「-er」が付加された「リブーター」を,「リブート(再起動)するもの」であると解釈するのが常識であったといえる。すなわち,「リブーター」は,普通名称と同視されるものである。
以上説明したように,「リブーター」は,商品「電源制御装置」の普通名称あるいは普通名称と同視されるものであり,商品「電源制御装置」について使用する「リブーター」は,自他商品の識別力を発揮することはできない。また,本件商標は標準文字にて表されてなるものであることから,「普通に用いられる方法で表示する標章」に該当するといえる。すなわち,本件商標は,普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなり,商標法第3条第1項第1号に該当する。
(3)商標法第3条第1項第3号について
上記のとおり,動詞に「-er」又は「-or」を付加することにより,動作主名詞を造ることは一般的に行われている(甲8,甲9)。また,動詞「リブート/reboot」は,情報技術の分野において,再起動を意味する言葉として広く用いられている(甲10?甲28)。したがって,本件商標の登録査定日より前から,情報技術の分野に属する取引者,需要者は,動詞「リブート/reboot」に「-er」が付加された「リブーター」を,「リブート(再起動)するもの」であると解釈するのが常識であったといえる。
よって,「リブーター」を,電源を一度落して再度起動させる「電源制御装置」に使用することは,単に,商品の機能,用途の表示にすぎない。また,本件商標は標準文字にて表されてなるものであることから,「普通に用いられる方法で表示する標章」に該当するといえる。
したがって,本件商標は,商品の機能,用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなり,商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお,「Cap」に「-less」が付加された「Capless」を,商品「キャップのない万年筆,その他のキャップのない筆記用具」に使用することは,単に商品の品質を表すにすぎないことが示されている(甲29)。
(4)商標法第4条第1項第16号について
上記のとおり,「リブーター」は,商品「電源制御装置」の普通名称又は単なる「機能,用途の表示」に該当する。つまり,「リブーター」の語は,電源を一度落して再度起動させる「再起動器」を意味する語として,情報技術の分野に属する取引者,需要者に普通に認識される。
したがって,「リブーター」を本件商標の指定商品のうち,「再起動器」以外の「電源制御装置」に使用する場合には,商品の機能,用途について誤認を生じるおそれがあり,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)証拠について
請求人は,平成29年12月27日付け提出の審判請求書における無効理由(商標法第3条第1項第1号及び同項第3号)の証拠として,甲第4号証ないし甲第29号証を挙げた。被請求人は,答弁書においてこれらの証拠の成立の認否を行っていない。
(2)商標法第3条第1項第1号について
ア 被請求人は,答弁書において「なお,『リブーター』全体としての使用に関する証拠について,甲第5号証については,被請求人の製品を購入して使用した内容のものであり,甲第6号証については,被請求人のお願いにより現在使用を中止している。」と述べている。
甲第5号証(応用地質技術年報No.29 2009)の63頁には,「遠隔電源制御装置(リブータ)」と記載されており,74頁には「電源制御機器(リブータ)」と記載されている。すなわち,甲第5号証では,電源を一度落して再度起動させる「電源制御装置」の意味で,「リブータ」が使用されている。答弁書記載のとおり,この甲第5号証に記載された「リブータ」が被請求人の販売製品であるならば,甲第5号証は,被請求人が「電源制御装置」として「リブーター」を販売していた証拠に他ならない。
また,商標法第3条第1項第1号ないし第6号に該当するか否かの判断時期は査定時である(商標法審査基準)。本件商標は,平成25年5月27日に登録査定となっている。したがって,甲第6号証に記載された製品が現在使用を中止されていたとしても,これは,本件商標が商標法第3条第1項第1号に該当するか否かの判断に何ら関係するものではない。
さらに,被請求人は,「したがって,『リブーター』全体としての使用証拠としては,甲第4号証,及び甲第7号証の2点のみであり」と述べている。
しかしながら,本件商標の登録査定時における「リブーター」の使用証拠を多数挙げることは困難である。これは,「電源制御装置」の取引が頻繁に行われる情報技術の分野は,ここ数十年の間の進歩が著しい分野であること,また,情報技術の分野では,インターネットを介した情報発信が主流であることによる。インターネットを介した情報は,日々更新されるものである。すなわち,過去の情報は次々に消去されていくため,現在から本件商標の登録査定時に遡って,「リブーター」の使用証拠を集めることは困難である。
したがって,使用証拠の数が少ないからといって,本件商標の登録査定時に,電源制御装置として「リブーター」が使用されていなかったということはできない。
さらには,上記したように,甲第5号証及び甲第6号証からは,被請求人が本件商標の登録時前に,「電源制御装置」として「リブータ」を使用していたことがうかがえる。
イ 被請求人は,「たとえば,一般的な言葉である『チーター』という語が,『cheat』+『er』なのかといわれればまったくもっておかしいというのと同様である。他にも,『ター』で終わる用語は,シアター,モーター,ギター,ガーター,バター,ビター,ベター,レター,インター,シスターなど数知れず,これらも『○○t』+『er』の語なのかといわれればそういうことはまったくない。」と述べている。
また,被請求人は,「たとえば,中学生レベルの単語である『rise』という動詞に『er』を付けて『ライザー』という語が一般的であるかといわれれば必ずしもそうとはいえないことと同義である。他にも,『admit』という動詞に『er』を付けて『アドミッター』,『exhaust』という動詞に『er』を付けて『エキゾースター』,『expect』という動詞に『er』を付けて『エクスペクター』などいくらでも例をあげることができる。」と述べている。
しかしながら,上記の用例は,本件商標が第3条第1項第1号に該当するか否かを判断するための用例になり得ない。
商標法第3条第1項第1号は「その商品又は役務の普通名称」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるときには,商標登録を受けることができないことを規定している。すなわち,本件商標の指定商品について使用される「リブーター」が普通名称に該当するとき,本件商標が第3条第1項第1号に該当する。上記「チーター」及び「ライザー」などの語は,指定商品「電源制御装置」の取引が行われる情報技術の分野の語に該当しない。
被請求人の主張は,本件商標の指定商品と全く異なる分野の語の用例を示し,「リブーター」が「reboot」+「er」ではなく,また,「rebooter」が一般的でないと結論付けるものである。
したがって,この主張は受け入れられるものではない。
なお,被請求人は,「さらに,『reboot』という語自体が一般的な辞書には載っておらず,用語辞典にしか載っていないような一般的とまではいえないような語であれば,さらにそれに『er』を付加した『rebooter』という語が一般的であるということは到底いえないことも明らかである。」と述べているが,この主張も,商標法における標章と指定商品との関係を無視した主張であり,受け入れられるものではない。
また,被請求人は,「たとえば請求人が主張するように『コンピューター』を『コンピュートするもの』と認識しているかといわれればそうでないといわざるを得ない。」と述べている。
すなわち,被請求人は,「コンピューター」は「コンピュートするもの」と認識されていないと主張しているが,答弁書では,被請求人が,何を判断基準にこの主張を行っているのか,全く不明である。
被請求人が「コンピューター」は「コンピュートするもの」と認識されていないと主張する証拠を示されたい。
ウ まとめ
上記ア及びイで述べたように,被請求人による答弁書の内容を考慮しても,「リブーター」は,商品「電源制御装置」の普通名称あるいは普通名称と同視されるものであり,商品「電源制御装置」について使用する「リブーター」は自他商品の識別力を発揮することはできないことは明らかである。
よって,本件商標は,普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなり,商標法第3条第1項第1号に該当する。
(3)商標法第3条第1項第3号について
「リブーター」を,電源を一度落して再度起動させる「電源制御装置」に使用することは,単に,商品の機能,用途の表示にすぎない。よって,本件商標は,商品の機能,用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなり,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第16号について
上記(2)及び(3)で説明したように,「リブーター」は,商品「電源制御装置」の普通名称又は単なる「機能,用途の表示」に該当する。つまり,「リブーター」の語は,電源を一度落して再度起動させる「電源制御装置」を意味する語として,情報技術の分野に属する取引者,需要者に普通に認識される。
したがって,「リブーター」を本件商標の指定商品のうち,「電源制御装置」以外の商品に使用する場合には,商品の機能,用途について誤認を生じるおそれがあり,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当する。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,答弁の理由を要旨以下のように述べた。
1 請求人は,本件商標の「リブーター」を,「reboot」+「er」の「rebooter」の片仮名表記であることが明らかであると述べており,それを前提に,本件商標「リブーター」に係る商標登録が無効にされるべき旨を主張しているが,そもそも「リブーター」という語から「reboot」+「er」の片仮名表記であることが明らかであるという主張自体が失当である。
商標は全体観察を基本とするところ,「リブーター」という語から「リブー」+「ター」と分離して観察すること自体も不自然であるところ,「reboot」+「er」と分けると解釈するのは暴論がすぎる。
たとえば,一般的な言葉である「チーター」という語が,「cheat」+「er」なのかといわれればまったくもっておかしいというのと同様である。
他にも,「ター」で終わる用語は,シアター,モーター,ギター,ガーター,バター,ビター,ベター,レター,インター,シスターなど数知れず,これらも「○○t」+「er」の語なのかといわれればそういうことはまったくない。
以上より,「リブーター」という語から「reboot」+「er」の片仮名表記であることが明らかであるという主張自体が失当であり,それを前提に主張する請求人の主張はまったく考慮の余地はなく,本件商標「リブーター」に係る商標登録は無効理由を有さないことは明らかである。
2 仮に本件商標「リブーター」が「reboot」+「er」の結合語だと認識したとしても,「○○」+「er」の結合語である「○○er」という語のうち,「○○」が一般的な語だからといって,「er」を付加した「○○er」の語が一般的であるとは必ずしもいえないことも明らかである。
さらに,「reboot」という語自体が一般的な辞書には載っておらず,用語辞典にしか載っていないような一般的とまではいえないような語であれば,さらにそれに「er」を付加した「rebooter」という語が一般的であるということはいえないことも明らかである。
また,請求人は,エンコーダー等を例に挙げているが,たしかに語源をひもとけば動詞+erということになろうが,あくまで結合語それ自体が辞書に載っている一つの意味を感得できるものであって,たとえば請求人が主張するように「コンピューター」を「コンピュートするもの」と認識しているかといわれればそうではないといわざるを得ない。
逆をいえば,「コンピューター」等の結合語それ自体が一般的であり,その他にも動詞+erという結合語で一般的な語が多く存在することはあっても,動詞+erという結合語すべてが一般的であるとはいえない。
たとえば,中学生レベルの単語である「rise」という動詞に「er」を付けて「ライザー」という語が一般的であるかといわれれば必ずしもそうとはいえないことと同義である。
他にも,「admit」という動詞に「er」を付けて「アドミッター」,「exhaust」という動詞に「er」を付けて「エキゾースター」,「expect」という動詞に「er」を付けて「エクスペクター」などいくらでも例を挙げることができる。
このように一般的な辞典に載っているような動詞であっても「er」を付加すると一般的な用語になるとはいえないにもかかわらず,上述のように用語辞典のいくつかに載っているにすぎない語に「er」を付けたものが一般的であるという主張はとても容認できるものではない。
なお,「リブーター」全体としての使用に関する証拠について,甲第5号証については,被請求人の製品を購入して使用した内容のものであり,甲第6号証については,被請求人の願いにより現在使用を中止している。
したがって,「リブーター」全体としての使用証拠としては,甲第4号証及び甲第7号証の2点のみであり,甲第4号証が2000年の証拠であることから,およそ20年間で2点しか使用している形跡がないといえる。
3 むすび
以上より,本件商標「リブーター」は,商標法第3条第1項第1号,同項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しないことは明らかである。

第4 当審の判断
1 請求人が提出した甲各号証によれば,以下の事実が認められる。
(1)「リブート」に関する記載
ア 「ビジネス技術実用英語大辞典」(平成10年6月26日,日外アソシエーツ株式会社発行。甲10)
「reboot(コンピュータなど)をブーストし直す〔再起動する〕」
イ 「情報技術用語大事典」(平成13年3月25日 株式会社オーム社発行。甲11)
「リブート reboot システム起動中に,いったんシステムを完全に終了し,再び起動する一連の動作。またはそれを指令するコマンド。・・・マイクロソフト社のWindowsでは,スタートメニューの『Windowsの終了』で『再起動する』を選択する。」
ウ 「日経BP デジタル大事典 2001-2002版」(平成13年2月5日,日経BP社発行。甲12)
「リブート [reboot]→再起動」
エ 「日経パソコン用語事典2002版」(平成13年9月19B,日経BP社発行。甲13)
「リブート reboot→再起動」
オ 「IT用語カタカナ・略語辞典」(平成14年,株式会社集英社発行。甲14)
「リブート[reboot]・・・再起動。ソフトウェア,特にOSを起動し直すこと。・・・」
カ 「キーマン’sネット」(平成9年7月31日,株式会社エーピーシー・ジャパン発行。甲17)
「サーバーのシャットダウンとリブートのスケジュール運転」,「UPSのテスト,システムのシャットダウンやリブートのカレンダー登録によるスケジュール運転機能」
キ 「日経Windowsプロ 2002年3月号」(平成14年3月,日経BP社発行。甲20)
「マシンが不意にリブートする。なかなか解決しなかったが,ServicePackを適用することで,すぐ収まった。」
ク 「日経Windowsプロ 2002年4月号」(平成14年4月,日経BP社発行。甲21)
「お?っと,トラブルかい?そんなの,とりあえずリブートしてみればいいんだよ。調べるのは時間の無駄だよ・・・」
ケ 「日経NETWORK 2002年9月号」(平成14年9月,日経BP発行。甲22)
「あれ,つながらないです。サーバーが落ちてますね。早速リブートしに行ってきます。」
「サーバーをリブートするような場合,その旨をどう全ユーザーに伝えるのか悩ましいところ。」
コ 被請求人のウェブサイト(平成14年12月24日,甲23)
「遠隔リブートができます。
LAN/WAN環境でWeb画面から簡単にネットワーク機器の電源の状態取得や制御できます。」
「自動リブートができます。(死活監視)
指定のアドレスにPINGを定期的に送出し,設定した回数応答が無い場合に電源を自動的にOFF/ONさせることができます。」
サ Software Factoryのウェブサイト(平成21年,甲25)
「電源オンは,すべてWake On LANテクノロジを用いてUDPによりMagic Paketを送信しています。一方,電源オフやリブートなどは,操作対象毎に対応したモジュールを用意することで,操作対象毎に異なる方法で機能を実現しています。」
シ 特開2013-16911号公報(公開日平成25年1月24日,甲28)
【請求項1】
設定情報の保存と配布を管理する管理サーバと,該管理サーバから配布される設定情報を受信する監視対象の映像を蓄積,保管,モニタする装置とを備えたカメラ監視システムにおいて,・・・・前記映像を蓄積,保管,モニタする装置の各モジュールの稼働状態を確認し,該装置が稼働状態にないと確認できたとき,前記リロード実行部のリロード指示に基づき前記蓄積,保管,モニタする装置の各モジュールをリブートする代理モジュールと,
を備え,
前記代理モジュールにより該代理モジュールの配下にある各モジュールをリゾートすることを特徴とするカメラ監視システム。
【発明が解決しようとする課題】【0007】
しかし,従来のカメラ監視システムは,例えばカメラの増設に伴い,システムの動作に必要な設定情報のリロード(再装填:最新の設定情報更新)やリブート(再起動)の実行の効率化までは考慮されていなかった。
(2)「リブーター」に関する記載
ア 甲第4号証(文献)
「USB搭載マック用の自動リブーター『Kick-off!』USBポートを監視し,システムやアプリケーションの予期せぬクラッシュ時にマックを再起動する自動リブーター」
イ 甲第5号証(文献)
「観測システム・・・システムを構成する主な機器は,地震計,データロガー,時刻校正用のGPSアンテナ及び電源である。テレメータ観測を行う場合は,このほかにルーター及び遠隔電源制御装置(リブータ)を使用する。」
「テレメータ監視機能は,ネットワークを介して各機器に定期的に診断信号を発信し,その応答内容で各機器の動作状況を監視する。さらに,データの収録状況なども監視し,ルーター,データロガー,電源制御機器(リブータ),GPS,データ収録欠落数及びネットワークの状況などに異常が発生した場合に,関係者のパソコン及び携帯電話へ異常内容をメールする。」
ウ 甲第6号証(ウェブサイト)
「ジリオン・ネットワークス株式会社は,リブーターの新モデル『NetMoni.One』を発売」
「フリーズしたルータを自動的にリブート(電源のON/OFF)するリブーター『NetMoniシリーズ』を販売しておりますが,このたび新モデルとして抜群のコストパフォーマンスを実現した低価格リブーター『NetMoni.One』を発売いたします。」
エ 甲第7号証(文献)
「製品概要 小型遠隔電源制御キット2(以下「本製品」という。)は,WEBカメラ等の機器へLANケーブル1本でネットワーク接続と同時に電源を供給するPoE(Power over Ethernet)インジェクターと,遠隔からインジェクターの電源制御を行うことができるリブーターを内蔵しております。
無人拠点に設置されたWEBカメラがフリーズした場合,WEBカメラを設置している拠点に出向いてリセットする必要がありましたが,本製品では遠隔からリゾートを行うことができるので,WEBカメラの復旧までの時間を大幅に短縮することが可能です。」
「リブーター機能により電源オン・オフ・リブートなどの制御を行うことができます」
オ 甲第32号証(文献)
「明京電機 河川監視等の屋外監視システムに役立つリブーターを提案。PING監視機能,電源制御機能の利用により,遠隔地からフリーズした装置の復旧が可能。ルータやカメラのシステムダウン時間を最小限に抑制する。」
カ 甲第33号証(文献)
「アレクソン
・・・緊急地震速報アダプター『EEW100』とインテリジェント・サーバラック『ISR100』を展示。
インテリジェント・サーバラック『ISR100』は,キャビネット,UPS(バッテリー).電源リブーターから成る3点セットにより,機器を想定される様々なトラブルから守るシステム。・・・電源リブーターは,停電復旧後のシステム起動不良からガードする。」
キ 甲第34号証(文献)
「明京電機は従来からIPカメラシステム運用の問題とされるカメラ,ルーターのフリーズを自動検出する『リブーター』製品を紹介。」
ク 甲第35号証(文献)
「明京電機は,万一のフリーズ発生時でも自動リブート,遠隔リブートによってシステムダウンを最小限に抑止できる『リブーター』を紹介(=写真11)。」(「11」は丸付き数字。)
(3)リブート装置に関する記載
ア 「日経コンピュータ 2002年1月14日号」(平成14年1月14日,日経BP社発行。甲19)
「新製品ファイル・・・電源装置 FULLBACK NetAgentII(審決注:「II」はローマ数字の2を表す。) サンケン電気コンピュータやルーターの電源管理専用ボード
ネットワークを介して,コンピュータやルーターなどのシャットボタンや起動を制御するためのボード。ボードを同社の無停電電源に差し込み,そのボードと制御した機器をケーブルで接続して使用する。
停電が継続した場合,無停電電源からも電力を供給できなくなる。システム管理者が不在の場合にコンピュータのシャットダウン処理を実施できないこともある。このような事態に備え,ネットワーク経由で遠隔地から,あるいはあらかじめ設定した手順通りに自動でシャットダウンや起動する場合に利用する。ハングアップしたコンピュータのリブートの実施にも利用できる。」
イ 「Network&Cabling Magazine 2004年4月号」(平成16年4月,Penn Well社発行。甲24)
「E1プラスなどLittle starシリーズのUPSとサーバの間にリモートパワーコントローラ『PDU-5115S』を設置すると,遠隔地のサーバの電源監視までが行えるようになる。例えばネットワーク機器がバングした際,遠隔から負荷装置のリブートを行うことができる。」
(4)その他の記載
ア「新英和大辞典 第五版」(平成6年,株式会社研究社発行。甲8)
「er・・・1動詞または名詞から種々の意味の・・・名詞・・・を造る:・・・b『・・・する物(器具・機械など)』」
イ 「わかりやすいコンピュータ用語辞典」(平成元年,株式会社ナツメ社発行。甲9)
「エディタ editor・・・コンピュータの世界ではテキスト・エディタのことを指す。エディタはプログラムやデータの作成・修正に使われる。文字の挿入/削除,移動/複写,特定の文字列の検索/置き換えなどの機能をもち,効率よくプログラムやデータの作成・修正ができる。・・・」
「エンコーダ encoder 符号器。複数の入力端子,出力端子を持ち,入力端子に信号が入力されるとそれに対応する出力端子に信号が出力される装置。・・・」
「カウンタ counter 入力パルスの数を計算する回路のこと。・・・」
「計算器 calculator 算術演算を行うためのデータ処理装置。・・・」
「計算機 computer 算術演算のみではなく,複雑な論理演算までも処理することができるデータ処理装置。・・・」
「光学式マーク読取り装置 optical mark reader
・・・マークシートなどの用紙に鉛筆やペンでマークを記入したものを,光学的に読み取って電気信号に変換する装置。・・・」
「デコーダ decorder 解読器のこと。送られてきたコード信号を解読して,次の機器または人に理解できる形に直して送り出している。・・・」
「プリンタ printer 印字装置。プログラムやデータ,帳票などの処理結果を紙に印刷するための装置。・・・」
「プロセッサ processor 一般にはCPU(中央処理装置)と同義として使われるが,プロセスという言葉が処理,加工という意味であることから分かるように,処理を行うもの,たとえばコンピュータ・システム全体のことやプログラムのこともプロセッサということがある。」
「ローダ loader 制御プログラムの一構成要素であり,実行のためにプログラムをライブラリから取り出して,主メモリ領域に配置するものである。」
ウ 山之内総合研究所が開設しているウェブサイトの「テクニカルライティングの知識」のページ(甲30)
「技術文書での長音記号の扱い方 カタカナ表記の際に『つづりの終わりの-er,-or,-arあるいは-y』に対応して語尾の音に長音記号を付けるのが原則です。これに対し,技術分野によっては長音記号を省く慣例があります。」
「電気・電子,情報・通信および機械分野の慣例 とりわけ,電気・電子,情報・通信および機械分野では一部の語で語尾の長音記号を省く慣例があります。」
エ 文部科学省の開設しているウェブサイトの「外国語の表記」のページ(甲31)
「3 長音は,原則として長音符号『-』を用いて書く。
注3 英語の語末の-er,-or,-arなどに当たるものは,原則としてア列の長音とし長音符号『-』を用いて書き表す。ただし,慣用に応じて『-』を省くことができる。
〔例〕エレベーター ギター コンピューター マフラー エレベータ コンピュータ スリッパ」
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)上記1のとおり,「リブート」は,「reboot」という英語を片仮名で表した語であるところ,「reboot」は,再起動するという意味の動詞であり,また,「リブート」は,コンピュータなどを再起動することを意味する語として,各種の用語辞典(用語事典)に掲載されており,さらに,多くの雑誌やウェブサイト,さらには公開特許公報にも,上記の意味で使用されていることからすると,「リブート」という語は,再起動することを意味する普通名称であると認められる。そして,上記1(4)で認定した事実からすると,情報・通信の技術分野では,英語を片仮名で表した言葉が非常に多く存在すること,一般的に,英語の動詞の語尾に「er」,「or」等を付することにより,当該動詞が表す動作を行う装置等を意味する名詞となり,「エディタ」,「エンコーダ」,「カウンタ」,「デコーダ」,「プリンタ」,「プロセッサ」等,動詞を名詞化した語も多数存在することが認められるから,情報・通信の技術分野に属する者は,「リブーター」から,「reboot」の語尾に「er」を付した語である「rebooter」を容易に思い浮かべるものと認められる。
さらに,上記1(2)及び(3)で認定した各事実からすると,コンピュータやルーター等の機器を再起動する装置の需要があり,実際にそのような装置が販売されていることが認められるところ,上記1(2)のとおり,このような再起動装置を「リブーター」又は「リブータ」と呼ぶ例があることが認められる。これに対し,本件証拠上,「リブーター」の語が,他の意味を有するものとして使用されているという事実は認められない。
なお,上記1(4)ウ及びエで認定したウェブサイトの記載によると,情報・通信の技術分野においては,英語を片仮名表記した場合は,語尾の長音符号を省く慣例があるものと認められるから,語尾の長音符号を有するか否かで別の語になるということはできず,上記の「リブータ」も「リブーター」も同一の語であるということができる。
以上からすると,情報・通信の技術分野においては,通常,「rebooter」及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解されるものというべきである。
したがって,「リブーター」は,再起動装置の品質,用途を普通に用いられる方法で表示する語と認められるから,指定商品が再起動装置又は再起動機能を有する電源制御装置である場合は,本件商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
一方,再起動機能を有さない電源制御装置が指定商品である場合は,本件商標は,同号の商標には該当しない。
(2)被請求人の主張について
被請求人は,「チーター」を,「cheat」に「er」を加えた言葉とはいえず,これと同様に,「リブーター」を,「reboot」に「er」を加えた言葉と解することはできないと主張する。
しかしながら,動物である「チーター」の英語は,「cheetah」であるから,語尾に「er」を加えた言葉ということはできない。
したがって,被請求人の上記主張は,採用することができない。
(3)小括
以上のとおり,本件商標は,指定商品が再起動装置又は再起動機能を有する電源制御装置である場合は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 商標法第4条第1項第16号該当性について
上記2のとおり,情報・通信の技術分野においては,通常,「rebooter」及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解されるところ,再起動機能を有さない電源制御装置に,「リブーター」という語を使用すると,需要者,取引者は,当該電源制御装置が再起動機能を有しているものと誤解するおそれがあるというべきである。
したがって,指定商品が再起動機能を有さない電源制御装置である場合は,本件商標は,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり,商標法第4条第1項第16号の商標に該当するというべきである。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから,その余の無効事由について判断するまでもなく,同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-11-13 
結審通知日 2019-11-15 
審決日 2019-11-28 
出願番号 商願2013-8272(T2013-8272) 
審決分類 T 1 12・ 13- Z (W09)
T 1 12・ 272- Z (W09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 渡邉 あおい
平澤 芳行
登録日 2013-06-14 
登録番号 商標登録第5590686号(T5590686) 
商標の称呼 リブーター 
代理人 駒津 啓佑 
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所 

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