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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z30 |
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管理番号 | 1358773 |
審判番号 | 取消2016-300903 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2016-12-26 |
確定日 | 2019-12-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4340262号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 登録第4340262号商標(以下「本件商標」という。)は、「マリオカート」の文字と「MARIO KART」の文字とを上下二段に書してなり、平成10年9月3日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」並びに第14類、第16類、第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同11年12月3日に設定登録されたものであり、その後、商標法第50条第1項の規定に基づく商標権の一部取消し審判の請求(取消2015-300878、取消2015-300879、取消2016-300408、取消2016-300409、取消2016-300726、取消2016-300727及び取消2016-300728)がされた結果、当該各審判の請求に係る第41類に属する指定役務について、それぞれ、その登録を取り消すべき旨の審決が確定し、その確定登録がされているものであって、最終的に、第41類に属する指定役務の全ての登録が取り消されているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成29年1月16日にされたものであるから、商標法第50条第2項にいう「その審判の請求の登録前三年以内」とは、同26年1月16日ないし同29年1月15日(以下「要証期間」という場合がある。)である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品中、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」(以下「本件請求に係る商品」という場合がある。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書、平成29年4月5日差出しの審判事件弁駁書、同年9月5日付け口頭審理陳述要領書及び同年10月27日差出しの上申書において、要旨以下のように述べた。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、本件請求に係る商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用をしていないものであるから、商標法第50条第1項の規定により、その商品についての登録は取り消されるべきものである。 2 平成29年4月5日差出しの審判事件弁駁書 (1)使用許諾契約について 被請求人は、本件商標権者と日本マクドナルド株式会社(以下「日本マクドナルド」という。)との間のライセンス契約書として、乙第1号証を提出しているが、その内容は、各条項の見出しを含め、多岐にわたりマスキングがされているため、乙第2号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)に係る証拠において示された商標の使用が、そのライセンスの範囲内のものであるかが明らかでない。 一般に、商標のライセンス契約においては、ライセンスを認める範囲や態様等についても子細に定めることが普通であり、また、日本マクドナルドにおいては、例えば、販売する商品もハンバーガー以外にいろいろある(本件請求に係る商品以外の商品もある。)ほか、それらの販売も、店内での飲食によるもののほか、持ち帰りのためのものがあるなど、いろいろな業務形態があることを考えると、上記ライセンス契約書(乙1)をもってしては、乙第2号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)に係る証拠において示された商標の使用が、そのライセンスの範囲内のものであるかについて疑念が残る。 (2)使用商品について 被請求人は、本件商標を「ハンバーガー」について使用している旨主張する。 しかし、本件商標は、「ハッピーセット」の「おもちゃ」の出所を表すものであって、「ハッピーセット」の「ハンバーガー」の出所を表すものではない。すなわち、乙第2号証の1及び乙第2号証の2に係る証拠の1葉目にある黄色の枠線内を見ても明らかなとおり、ハンバーガーの写真等について表示されているのは「ハッピーセット」の文字のみであり、「マリオカート8」の文字が表示されているのは、その「ハッピーセット」の「おもちゃ」についてである。 また、乙第3号証に係る証拠においても、「マクドナルドのハッピーセットに『マリオカート8』登場」の見出しの下、「WiiU専用ゲームソフト『マリオカート8』のキャラクターのおもちゃがセットになった『ハッピーセット』」の紹介文と当該おもちゃの写真が掲載されているとおり、「マリオカート8」がおもちゃの出所を表示するものであることは明らかである。 そもそも、日本マクドナルドの「ハッピーセット」は、「マリオカート8」にとどまらず、これまでにもいろいろなアニメ等のキャラクターに関するおもちゃに係るものが登場してきたところであり、そのアニメ等の名称をもって、どのようなおもちゃなのかを表しているといえる。 したがって、上記乙各号証をもってしては、本件商標が「ハンバーガー」について使用されていたということはできない。 (3)商標の同一性について 被請求人は、「マリオカート8」又は「MARIOKART8」の使用商標と本件商標とが社会通念上同一の商標である旨主張する。 しかし、「8」の数字を伴う「マリオカート8」又は「MARIOKART8」によって、初めてWiiUで発売されたゲームソフトを観念させるのであり、「マリオカート」又は「MARIOKART」のみでは当該ゲームソフトとしては認識されないのであるから、上記使用商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標ということができない。 (4)商標の「使用」及びその時期について 被請求人は、乙各号証をもって、商標法第2条第3項各号のいずれの使用に該当することを主張、立証しようとしているのかを明らかにしていないものの、請求人は、乙第2号証及び乙第3号証によって同項第8号の「広告」としての使用を、乙第4号証によって同項第1号又は第2号の「商品の包装」についての使用を、それぞれ、主張、立証しようとしているものと推測する。 しかし、商標法第2条第3項第8号は、広告を展示又は頒布して初めて「使用」に該当するとしているところ、そもそも、乙第2号証の1は、プレスリリースの資料とされるものの、その展示又は頒布がされた事実は立証されておらず、また、乙第2号証の2及び乙第3号証は、ウェブサイト上の記事とされるものの、その「展示」の時期が立証されていない。 また、商標法第2条第3項第1号又は同項第2号は、包装に標章を「付する」又は包装に標章を付した商品を「譲渡」若しくは「引渡し」等することにより、初めて「使用」になるところ、乙第4号証に係る証拠に関し、これらの行為の時期は立証されていない。 したがって、上記乙各号証をもってしては、本件商標は、要証期間に商標法が定める「使用」をされていたということができない。 3 平成29年9月5日付け口頭審理陳述要領書 (1)本件商標の使用許諾について 被請求人は、本件商標権者と日本マクドナルドとのライセンス契約書の写し(乙5)及び本件商標権者の知的財産部部長による本件商標の使用許諾に関する宣誓書の写し(乙6)を提出して、平成26年12月5日から同27年1月1日までの間、日本マクドナルドが通常使用権者であった旨主張している。 しかし、乙第5号証に係る契約書(写し)においては、その第1条第1項で「『ハッピーセット』と称する子供向けハンバーガー類等特定の商品とおもちゃ類等のセット商品の販売・・・」として、「ハンバーガー類等特定の商品」と「おもちゃ類」とを分けて示した上で、同条第2項第3号の「許諾製品」の項には、「(1)ハッピーセットに係る『マリオカート8』のおもちゃ類」と示すことで、「ハンバーガー類等特定の商品」ではなく、「おもちゃ類」のみを許諾の対象としていることから、その文面上、商品「ハンバーガー」について許諾されていたことは確認できない。 また、乙第6号証に係る宣誓書(写し)は、本件商標権者のみが主張するものであるから、日本マクドナルドと合意があった旨を証明するものではないし、さらに、当該宣誓書で宣誓を行っている者と乙第5号証に係る契約書(写し)において契約を行っている者とは異なることから、当該契約を行った者が、その契約時に当該宣誓に係る解釈において契約を行ったことは証明されていない。 (2)本件商標の使用対象商品について ア 被請求人は、本件商標を商品「ハンバーガー」について使用している旨主張し、また、通常使用権者である日本マクドナルドが製造、販売する「ハッピーセット」は、「おもちゃ付きハンバーガー」であって、「ハッピーセット」及び「マリオカート8」の両方が商品「おもちゃ付きハンバーガー」の出所を表示している旨主張する。 しかし、被請求人の提出した乙各号証において示されている「マリオカート8」及び「MARIOKART8」等の表記は、既述のとおり、「ハッピーセット」の「おもちゃ」の出所を示すものであって、「ハンバーガー」の出所を示すものではない。 また、「おもちゃ付きハンバーガー」の出所を表示しているのは、「ハッピーセット」のみであり、「マリオカート8」及び「MARIOKART8」から「おもちゃ付きハンバーガー」の出所を認識、把握する余地はない。 すなわち、日本マクドナルドのウェブサイト及びプレスリリースの写し(乙2、乙9)の1葉目にある黄色の枠線内を見ても明らかなとおり、ハンバーガーの写真等について表示されているのは「ハッピーセット」の文字のみであり、「マリオカート8」の文字が表示されているのは、その「ハッピーセット」の「おもちゃ」についてのみであり、また、当該ウェブサイトの写しの2葉目にある赤色の枠線内では、「【マリオカート8(全8種類)】」の表題の下、カート型のおもちゃの紹介を行っている。 さらに、「J-CAST」(ニュースサイト)の記事の写し(乙3)においても、「マクドナルドのハッピーセットに『マリオカート8』登場」の見出しの下、「WiiU専用ゲームソフト『マリオカート8』のキャラクターのおもちゃがセットになった『ハッピーセット』」の紹介文と当該おもちゃの写真が掲載されていて、「おもちゃ付きハンバーガー」について「ハッピーセット」が出所表示機能を果たす態様で使用される一方、その中の「おもちゃ類」について「マリオカート8」が出所表示機能を果たす態様で使用されている。 そもそも、日本マクドナルドの「ハッピーセット」は、「マリオカート8」にとどまらず、これまでにもいろいろなアニメ等のキャラクターに関するおもちゃに係るものが登場してきたところであり、そのアニメ等の名称をもって、どのようなおもちゃなのかを表しているといえる。 イ 被請求人は、乙第4号証の1、乙第4号証の2、乙第7号証及び乙第8号証に係る包装用箱について、商品「ハンバーガー」の包装に本件商標を付したものを譲渡した行為である旨主張する。 しかし、上記包装用箱は、日本マクドナルドのウェブサイト及びプレスリリースの写し(乙2)等において、「ハッピーセットボックス」の名称の下に紹介されているように、いずれもコンピュータゲームである「MARIOKART8」に登場するキャラクターのゲーム中の画像を大きく掲載し、その下に「MARIOKART8」の題号を表示したものであって、内容物である商品「ハンバーガー」の出所を表示したものではない。そして、「MARIOKART8」の表示が商品「おもちゃ」について付されたものであって、商品「ハンバーガー」について付されたものではないことは、乙第4号証の2に係る写真において、内容物の1つとして入っているおもちゃを紹介する画像の上に「MARIOKART8」の表示がされている一方、包装箱の上部中央の目立つ位置に商品名である「ハッピーセット」の表示がされている態様からみても明白である。 したがって、上記乙各号証をもって、本件商標が「ハンバーガー」及び「おもちゃ付きハンバーガー」について使用されていたということはできない。 (3)本件商標と使用商標との同一性について 被請求人は、「マリオカート」が、1992年(平成4年)以来、約25年の長きにわたって販売されてきたゲームソフトシリーズを形成するものであることからすれば、使用商標からは「マリオカート」及び「MARIO KART」の観念を認識するといえるから、本件商標と使用商標とは、社会通念上の同一性を有する旨主張する。 しかし、本件商標に係る「マリオカート」は、被請求人が主張するように、複数の機種によるゲームソフトシリーズであるが、乙第5号証に係る契約書(写し)により、本件商標権者が日本マクドナルドに許諾しているのは、「甲(本件商標権者)のゲーム機『WiiU』用ゲームソフト『マリオカート8』を構成するタイトル名、登場するキャラクターやアイテムの名称、形状、シンボル、ストーリー、プロット等であって」と、「マリオカート8」に限定したものであって、「マリオカートシリーズ」について許諾したものではない。 そのため、被請求人が提出した乙各号証において示される使用商標は、常に「マリオカート8」として、「マリオカート」と「8」とが一連一体に構成されており、その構成中の「8」の数字は、単なる品番ではなく、WiiUで発売されたゲームソフトを観念させるのであるから、「マリオカート」又は「MARIO KART」と社会通念上同一であるということはできない。 このことは、例えば、「J-CAST」(ニュースサイト)の記事の写し(乙3)において、「マクドナルドのハッピーセットに『マリオカート8』登場」や、「WiiU専用ゲームソフト『マリオカート8』のキャラクターがセットになった・・・」等と記載されているように、乙各号証においては、「マリオカート8」がかぎ括弧で特定されていることからも、「マリオカート8」及び「MARIOKART8」が一体不可分であることが明白である。 したがって、乙各号証における使用商標と本件商標とは、社会通念上の同一性を有するとすることができない。 4 平成29年10月27日差出しの上申書 (1)ライセンス契約書(乙5)における「許諾商標」について ア 被請求人は、本件商標権者と日本マクドナルドとの間で締結されたライセンス契約書(乙5)について、「あくまで本件商標の使用許諾を前提とするもの」と主張した上で、当該契約書の前文に「甲(本件商標権者)が著作権及び商標権を有するゲーム『マリオカート8』の使用等に関し」と記載されていることを根拠として、本件商標について使用許諾がされていた旨主張する。 しかし、商標権の許諾契約とする場合は、その許諾の対象を明らかにすべく、対象となる商標権に係る登録番号や指定商品を特定した上で契約を締結するのが通常であるべきところ、上記契約書(乙5)には、対象となる商標権が何ら記載されていない。特に、被請求人の提出に係る乙第10号証及び乙第11号証に示されるように、少なくとも登録第4222218号、登録第4340262号(本件商標)、登録第4880591号の1、登録第4880591号の2、登録第4939594号及び登録第5156824号の各登録商標は、本件商標と同様の態様を有する商標であり、このような登録商標を複数保有していることを鑑みても、「マリオカート」について許諾をしたとしても、本件商標を対象として許諾契約が締結されたとはいえないことから、当該契約書(乙5)を根拠として、本件商標権者が、本件商標について、日本マクドナルドに使用許諾を行ったことを証明したとはいえない。 また、契約書としての効力を有する本文において、「登録商標」の記載は一切なく、また、第1条第2項中の「許諾商標」の定義規定においても、「許諾著作物に係る商標であって」とあるように、「登録商標」ではなく、単に「商標」と記載されている。これは、契約書の対象となる許諾商標を「登録商標」又は「商標権」とすると、契約当事者である日本マクドナルドが本来許諾を希望する「マリオカート8」が対象から外れてしまうため、あえて「登録商標」の記載を含めずに締結しているのであって、未登録である「マリオカート8」についての使用許諾が認められれば、日本マクドナルドは目的を達成できるため、このような契約となっているものと推察される。 さらに付言すると、商品に関して許諾を受ける側においては、その商標が登録されているか否かについて認識されていない場合も多く、むしろ、許諾をする本件商標権者側が具体的な商標登録番号を提示して契約を締結するものである以上、その許諾をする対象(登録商標)が明示されていない事実は、上記乙第5号証に係る契約について、本件商標権者が登録商標の使用を許諾する契約の形態ではないことを意図したものであるとするのが自然であり、契約当時、本件商標権者においては、本件商標の使用を許諾する意思がなかったことを示す証左といえる。 いずれにしても、被請求人は、自己の解釈のみを前提として、「本件商標権者が所有していない『マリオカート8』に関する登録商標が使用許諾対象であることは、契約当事者である本件商標権者及び日本マクドナルドの認識としてあり得ない」などと主張するが、契約は、両当事者の認識に基づいて締結されるものであり、また、被請求人の解釈の正当性を示す客観的証拠は何ら示されていないことから、本件商標権者が、日本マクドナルドに対し、本件商標の使用許諾をしたことを証明したことにはならない。 イ 被請求人は、乙第7号証及び乙第8号証に係る証拠において「マリオカート」と称されていることを根拠として、日本マクドナルドが使用許諾対象の商標としているのは、「マリオカート8」ではなく、「マリオカート」である旨主張する。 しかし、上記各証拠は、日本マクドナルドが作成した資料ではなく、全く異なる報道機関又は一般の需要者が作成したものであるから、日本マクドナルドが本件商標権者から本件商標の使用許諾を受けていたことを証明したことにはならない。 ウ 被請求人は、「許諾製品」について、契約当事者である日本マクドナルドがハンバーガーを製造、販売する法人であることを根拠に、商品「ハンバーガー」に係る販売及び広告について包括的に本件商標の使用が許諾されているとし、商品「ハンバーガー」は、その使用許諾の対象商品である旨主張する。 しかし、上記主張は、被請求人のみによる自己の解釈であって、契約当事者において、そのような解釈で契約の締結がなされたとする客観的事実を示す証拠は何ら示されていない。 また、乙第5号証に係る契約書では、その第1条第2項第3号の「許諾製品」についての定義規定に「(1)ハッピーセットに係る『マリオカート8』のおもちゃ類」とあるように、許諾製品の範囲を「ハッピーセットに係る商品」といったセット商品とせず、あえて「おもちゃ類」と明示していることから、許諾されている製品は「おもちゃ類」であって、「ハンバーガー」は含まれていないとするのが通常の解釈である。 さらに、実際の取引においても、日本マクドナルドが販売する「ハッピーセット」は、「ハンバーガー等」、「フライドポテトS等」、「ドリンクS」及び「おもちゃ」の4点がセットになって販売されている商品であるところ、「ハッピーセット」の価格と「おもちゃ」以外の3点の単価の合計額とを比較すると、一定程度の価格差が生じることから、その差額が「おもちゃ」の価格となっているものと推測される。この「ハッピーセット」のようなセット商品は、組み合わせることでそれぞれ購入するよりも価格が安くなることが通常であるところ、上記「ハッピーセット」は高い価格設定がされていることからすれば、セットとして販売されている「おもちゃ」はハンバーガー等のセットのおまけではなく、当該「ハッピーセット」は、「ハンバーガー等」と「おもちゃ」を抱き合わせにより販売する商品形態であることがうかがえる。 したがって、被請求人による「商品『ハンバーガー』は、ライセンス契約(乙5)に係る使用許諾対象の商品であった」旨の主張は、乙第5号証に係る契約書の文言及び取引の実情のいずれを考慮したとしても、何らの根拠もない被請求人による自己の主張にすぎず、契約当事者間において、被請求人が主張するような解釈で契約の締結がなされたとする客観的事実を示す証拠が何ら示されていないことからも、日本マクドナルドが、商品「ハンバーガー」について、本件商標権者から本件商標の使用許諾を受けていたことを証明したことにはならない。 (2)商標「マリオカート\MARIO KART」の周知性について 被請求人は、2014年(平成26年)の時点において既に、本件商標がゲームソフトについて周知性を有していたといえること(乙12?乙26)、本件商標と同一の標章に係る防護標章登録出願について登録査定がされていること(乙27)、本件商標権者以外の者による「マリオカート」等の商標登録出願の審査において、商標法第4条第1項第15号等の拒絶理由通知が送付されていること(乙28?乙34)を主張している。 しかし、商標法第50条第1項の規定に基づく本件審判において、本件商標が周知であることは、同条項に係る要件には含まれておらず、被請求人が、本件商標が周知であることを根拠に本件商標の使用を立証したと主張するのであれば、その主張自体、失当である。 また、防護標章登録がされていることや、他人の登録出願に係る同一又は類似の商標が商標法第4条第1項第15号等の規定により出所の混同を生じていると審査で判断されたことを根拠に、本件商標が本件請求に係る商品について使用していることを主張するのであれば、その主張自体、無意味なものであり、失当であるといわざるを得ない。 むしろ、被請求人が主張するように、本件商標が商品「おもちゃ類」に属する「ゲームソフト」において周知であるとするのであれば、被請求人が提出した証拠については、取引者及び需要者において、商品「おもちゃ類」について使用されていると認識させることを裏付けるものである。 すなわち、商品購入者(需要者)のコメント(乙8)においては、「マリオカートのハッピーセット」と記載されており、ハンバーガーセットを「マリオカート」ではなく、「ハッピーセット」と指称した上で、「おもちゃ類」で周知となっている「マリオカート」と表示していることから、当該コメントにおける「マリオカート」及び「マリオカート8」の表示は、「おもちゃ類」についての出所を表示するものであり、需要者においても、同様の認識をしていることがうかがえる。 また、日本マクドナルドによるニュースリリース(乙9)においては、「マリオカート8」のキャラクターが表示されている包装用箱を「ハッピーセットボックス」とし、「マリオカート8」については「デザインが登場します」と紹介されていることから、日本マクドナルドが、「マリオカート8」の表示について、著作物の一部として認識していることがうかがえる。 さらに、商品購入者(需要者)のブログ(乙36、乙37)においては、「今回のおもちゃは『マリオカート8』! 箱もすごい!」(乙36)と記載されていることから、「マリオカート8」を「おもちゃ」と認識していることがうかがえ、また、「大概はおもちゃはいらないって言うのですが今回のおもちゃはこちら・・・ マリオカートシリーズでしたので・・・」(乙37)と記載されていることから、「ハンバーガーセット」が「ハッピーセット」、抱き合わせのおもちゃが「マリオカートシリーズ」と指称されていることがうかがえる。 したがって、被請求人による本件商標が周知であるとする主張は、取引者及び需要者において、商品「おもちゃ類」について使用されていると認識させることを裏付けるものであって、日本マクドナルドが、本件商標権者から許諾を受けて、商品「ハンバーガー」についての本件商標の使用をしていたことを証明したことにはならない。 (3)その他 商標権の許諾契約に係る契約書の作成においては、商標権を登録番号等で特定し、使用の範囲及び対象を明らかにすることが通例であり、また、乙第5号証に係る契約書の当事者である本件商標権者及び日本マクドナルドは、いずれも国際的な企業であるから、商標に関する契約についても、十分に熟知した者が契約書を作成しているといえる。 そうすると、上記契約書に関し、本件商標権者と日本マクドナルドとが商標権も特定せずに契約を締結した背景には、そもそも、契約当時の認識として、「マリオカート8」の商標権が存在していないことを考慮して、当該契約書のような記載により作成したとするのが自然である。そのため、許諾を受けた日本マクドナルドは、契約書の文言に沿って、「マリオカート」と称さずに、「マリオカート8」の表示のみを使用し、また、「ハンバーガーセット」の紹介においては「マリオカート8」の表示を使用せず、「おもちゃ類」の紹介においてのみ「マリオカート8」の表示を使用しているのである。 すなわち、被請求人は、本件審判の請求を受けて、契約当時には本件商標の使用許諾についての合意がなされていない契約書(乙5)について、自らの後付けの解釈を加えて、本件商標の使用に係る証拠として提出したのであって、そのような契約当事者間で合意されていない内容による契約書が、本件商標の使用許諾に係る客観的事実を示す証拠として認められるべきではなく、さらに、被請求人が上申書において主張した内容は、何ら客観的事実をもって証明されていないのであるから、日本マクドナルドが、商品「ハンバーガー」について、本件商標権者から本件商標の使用許諾を受けていたことを証明したことにはならない。 (4)まとめ 以上のとおり、被請求人は、要証期間に、本件商標と社会通念上同一の商標を本件請求に係る商品のいずれかについて使用していたことを立証するに至っていない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を審判事件答弁書、平成29年8月22日付け口頭審理陳述要領書及び同年10月11日付け上申書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第37号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 審判事件答弁書 本件商標の商標権に係る通常使用権者である日本マクドナルドは、同社又は同社のフランチャイジーが運営する店舗において、2014年(平成26年)12月から商品「ハッピーセット『マリオカート8』」を販売していたところ(乙1?乙3)、当該商品は、持ち帰り可能な「ハンバーガー」であって、本件請求に係る商品中の「ハンバーガー」と同一の商品である。 そして、日本マクドナルドは、自己のニュースリリース等の広告において、商品「ハッピーセット」に「マリオカート8」の商標を使用しているところ(乙2の1、乙2の2、乙3)、その商標の要部である「マリオカート」及び本件商標のいずれからも、同一の称呼が生じ、また、「本件商標権者が開発、販売する著名なゲーム作品である『マリオ』シリーズに登場する『マリオ』を始めとするキャラクターがカートレースを繰り広げるアクションレースゲーム」という同一の観念が生じるから、両者は、社会通念上同一の商標といえる。 また、上記商品には、「MARIOKART8」の商標が使用されているところ、その構成中、「MARIOKART」の文字と「8」の数字とは、その字体、色及び大きさにおいて異なり、両者を一体とみるべき事情はない上、上記のとおり、観念も同一であるから、かかる「MARIOKART」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標に当たるものといえる。 2 平成29年8月22日付け口頭審理陳述要領書 (1)本件商標の使用許諾について 乙第1号証に係るライセンス契約書(写し)についてマスキングがされているのは、営業秘密保護の関係上、そのマスキングがされた箇所の開示が困難であることによる。 そこで、被請求人は、新たな証拠として、上記ライセンス契約書(写し)について、マスキングを可能な限り限定したものの写し(乙5)及び本件商標権者の知的財産部部長による本件商標の使用許諾に関する宣誓書の写し(乙6)を提出する。 上記契約書の写し及び宣誓書の写しから明らかなように、本件商標権者は、平成26年4月14日付けで、日本マクドナルドに対し、同年12月5日から平成27年1月1日までの間、本件商標をその指定商品に含まれる「ハンバーガー」の販売及び広告活動について使用することを許諾していることから、日本マクドナルドは、当該期間において、本件商標に係る商標権の通常使用権者であった。そして、このことは、日本マクドナルドが、実際に片仮名からなる「マリオカート8」とローマ字からなる「MARIOKART8」の両方を使用していたという事実によっても裏付けられる。 (2)本件商標の使用行為について 2014年(平成26年)11月28日付け日本マクドナルドのウェブサイトの写し(乙2の2)が示すとおり、通常使用権者である日本マクドナルドは、自己のウェブサイトを用いて、ニュースリリースにより、本件商標を使用した商品「ハンバーガー」に関する広告を行っていた。また、同日付け日本マクドナルドのプレスリリースの資料の写し(乙2の1)は、当該ニュースリリースと同様の内容が記載されているものであり、併せて報道関係者に頒布されたものである。 上記ニュースリリース及びプレスリリースは、商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。 この点について、2014年(平成26年)12月4日付け「J-CAST」(ニュースサイト)の記事の写し(乙3)は、本件商標を使用した商品「ハンバーガー」の発売予定を報じたインターネット記事であって、上記広告の事実の裏付けとなるものであり、同様の証拠としては、同年11月28日付け「ナリナリドットコム」(ニュースサイト)の記事の写し(乙7)が挙げられる。 また、乙第4号証の1及び乙第4号証の2に係る証拠は、本件商標の具体的な使用態様を明確にするため、上記ニュースリリース及びプレスリリースに掲載された包装を個別に撮影した写真である。 さらに、本件商標を使用した商品「ハンバーガー」を購入した需要者が2014年(平成26年)12月9日にその包装の写真とともにツイッターで投稿したものの写し(乙8)は、上記ニュースリリース後に実際に行われた販売行為、すなわち、商品「ハンバーガー」の包装に本件商標を付したものを譲渡する行為(商標法第2条第3項第2号)を裏付けるものである。 (3)本件商標の使用対象商品について 通常使用権者である日本マクドナルドが製造、販売する「ハッピーセット」は、ハンバーガーとおもちゃのセットとはいえ、あくまでハンバーガーが主、おもちゃが従の関係にあるものである。すなわち、当該「ハッピーセット」は、「おもちゃ付きハンバーガー」といい得るものであるところ、1つの商品について複数の商標が使用される又は複数の標章が商標として機能することは、取引上、普通に行われ、又は見られることであって、このような中、需要者は、本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標「マリオカート8」を「ハッピーセット」の「おもちゃ」の出所を表示するものとして必ずしも認識せず、「ハッピーセット」及び「マリオカート8」の両方を商品「おもちゃ付きハンバーガー」の出所を表示するものとして認識すると考えられるから、本件商標は、商品「ハンバーガー」について使用されていたといえる。 (4)本件商標の使用時期等について 2014年(平成26年)11月28日付け日本マクドナルドのウェブサイトの写し(乙2の2)は、その左上にある「2014.11.28」の表示のとおり、同日に、ニュースリリースによる広告が電磁的方法により提供されたものであるところ、被請求人は、その証拠として、2日後の2014年(平成26年)11月30日付けインターネット・アーカイブに係る日本マクドナルドのウェブサイトの写し(乙9)を提出する。乙第9号証は、2014年(平成26年)11月30日に、当該日本マクドナルドのウェブサイトが電子保存されたこと、すなわち、同日に、そのウェブサイトが既に存在していたことを示している。 また、2014年(平成26年)11月28日付け日本マクドナルドのプレスリリースの資料の写し(乙2の1)は、同日付け日本マクドナルドのウェブサイトの写し(乙2の2)と同様の内容及び日付が記載され、「報道関係各位」と表示されていることから、同日に、当該ウェブサイトでのニュースリリースと併せて報道関係者に頒布されたものであることが明らかである。 そして、2014年(平成26年)12月4日付け「J-CAST」(ニュースサイト)の記事の写し(乙3)は、その左上にある「2014/12/4」の表示のとおり、2014年(平成26年)12月4日に電磁的方法により提供されたものであって、時系列的に、日本マクドナルドによる上記ニュースリリース及びプレスリリースを踏まえて行われたものであるから、上述のとおり、当該ニュースリリース及びプレスリリースの事実を裏付けるものである。 なお、乙第4号証の1及び乙第4号証の2に係る証拠(ハッピーセット「マリオカート8」の包装を撮影した写真)は、日本マクドナルドによる上記ニュースリリース及びプレスリリースにおける本件商標の具体的な使用態様を明確にするために商品の包装を個別に撮影したものであるから、譲渡又は引渡し等した時期の立証を要しない。 (5)その他 使用商標である「マリオカート8」及び「MARIOKART8」と本件商標との社会通念上の同一性については、既述のとおり、使用商標の要部である「マリオカート」及び「MARIOKART」と本件商標とは、「マリオカート」という同一の称呼を生じ、また、「本件商標権者が開発、販売する著名なゲーム作品である『マリオ』シリーズに登場する『マリオ』を始めとするキャラクターがカートレースを繰り広げるアクションレースゲーム」という同一の観念を生じることから、使用商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標といえる。 この点について、「マリオカート」及び「MARIOKART」は、WiiUで発売されたゲームソフトのみならず、「Nintendo Switch」、「ニンテンドー3DS」、「Wii」、「ニンテンドーDS」、「NINTENDO64」、「スーパーファミコン」等の複数のゲーム機種のゲームソフトシリーズであり、1992年(平成4年)の第一作の発売以来、約25年の長きにわたって販売されてきたゲームソフトシリーズを形成するものであることからすれば、需要者は、「マリオカート」及び「MARIOKART」から上記観念を認識すると考える。 3 平成29年10月11日付け上申書 (1)ライセンス契約書(乙5)第1条における許諾商標及び許諾製品についての解釈について ア 「許諾商標」について、本件商標権者と日本マクドナルドとの間で締結されたライセンス契約書(乙5)は、あくまで本件商標の使用許諾を前提とするものであり、当該契約書中に「マリオカート8」と記載されているのは、通常使用権者である日本マクドナルドが実施する「ハンバーガー」の販売及び広告宣伝活動に関するキャンペーンにおいて使用される販促物及び広告物が、そのキャンペーン実施当時のマリオカートシリーズ(商標「マリオカート」及び/又は「MARIOKART」を冠したレーシングゲームに係る一連のゲームソフトを指す。)の最新作に関するものであることを表すにすぎず、許諾商標が本件商標であることを否定するものではない。 この点について、上記ライセンス契約書の前文に「甲(本件商標権者)が著作権及び商標権を有するゲーム『マリオカート8』の使用等に関し」とあるように、この使用許諾は、商標権が存在する商標、すなわち、登録商標を対象とするものであるところ、当該契約の締結時(平成26年4月14日)において、本件商標権者は、「マリオカート8」に関する登録商標を所有していなかった(乙10、乙11)。 そうすると、当然のことながら、所有していない登録商標について使用許諾をすることはできず、本件商標権者が所有していない「マリオカート8」に関する登録商標が使用許諾対象であることは、契約当事者である本件商標権者及び日本マクドナルドの認識としてあり得ず、むしろ、両者の認識は、登録商標である本件商標について使用許諾がなされたというものであったと考えることが自然である。そして、実際に、このような認識に基づき、通常使用権者である日本マクドナルドは、商品「ハンバーガー」の包装であり、また、広告物としての役割も果たす「ハッピーセットボックス」において、「MARIOKART」と「マリオカート」とをまとまりよく二段に併記し、その背景に、それとは明らかに種類の異なるレース場を模したような「8」図形を配した態様で本件商標を使用していた(乙8、乙35?乙37)。 さらに、上記商品については、「マリオカート8」ではなく、「マリオカート」と称されている実例もある(乙7、乙8)。 したがって、使用許諾対象の商標は、「マリオカート8」ではなく、本件商標であったといえる。 イ 上記本件商標権者と日本マクドナルドとの間で締結されたライセンス契約書に関する「許諾製品」について、日本マクドナルドは、ハンバーガーを製造、販売する法人であるところ、同法人が商品として製造、販売する「ハッピーセット」は、既述のとおり、「おもちゃ付きハンバーガー」といい得るものであり、すなわち、あくまで商品「ハンバーガー」であるから、それに付随して提供される「おもちゃ類」は、商品「ハンバーガー」の購入を需要者に動機付けさせる目的をもって提供される販促物及び広告物という位置付けにある。そして、実際に、上記契約書の第1条第1項の「販売及び広告宣伝活動」や第1条第2項第3号(2)の「販促物及び広告物一式」等の文言が示すとおり、商品「ハンバーガー」に係る販売及び広告について、包括的に本件商標の使用が許諾されている。 したがって、商品「ハンバーガー」は、上記ライセンス契約に係る使用許諾対象の商品であったといえる。 (2)商標「マリオカート\MARIO KART」の周知性について ア 本件商標権者は、明治22年に創業、昭和22年に設立された日本の株式会社であって、我が国のみならず、世界において、ゲーム機及びゲームソフトを製造、販売する法人である。 そして、本件商標権者は、1992年(平成4年)8月27日以降、商標「マリオカート」及び/又は「MARIOKART」を冠したレーシングゲームに係る一連のゲームソフト(「マリオカートシリーズ」)を製造、販売しており、最新作「マリオカート8 デラックス」は、2017年(平成29年)4月28日に発売された(乙12?乙20)。 マリオカートシリーズの販売本数は、2017年(平成29年)3月末時点又は6月末時点で次の(ア)ないし(オ)に示すとおりであり(乙21?乙25)、また、その全世界での累計販売本数は、2014年(平成26年)12月末時点で1億本を超えている(乙26)ことから、マリオカートシリーズは、世界有数のゲームシリーズである。 (ア)マリオカートDS: 2,360万本 (イ)マリオカートWii: 3,695万本 (ウ)マリオカート7: 1,557万本 (エ)マリオカート8: 835万本 (オ)マリオカート8 デラックス: 354万本 イ 上記アにおいて述べたように、本件商標権者がゲームソフトについて商標「マリオカート」及び/又は「MARIOKART」を使用してきた期間が約25年と長期にわたること及びその膨大な販売数量に鑑みると、本件商標は、現在はいうまでもなく、2014年(平成26年)の時点において既に、周知性を有していたといえる。 そして、本件商標と同一の標章に係る防護標章登録出願について登録査定がされていること(乙27)、「Mario Kart」の文字及び「マリオカート」の文字を構成要素として含む商標に係る登録出願(乙28?乙32)や「マリオカート」をハングル文字又は中国語で表した商標に係る登録出願(乙33、乙34)の審査において、商標法第4条第1項第15号又は同項第19号に該当する旨の拒絶理由が発せられていることも、本件商標の周知性についての証左にほかならない。 なお、上記登録出願のうち、乙第33号証及び乙第34号証に係るものは、本件審判の請求人が代表取締役を務める法人が出願人となっている。 (3)「ハッピーセットボックス」の写真について 被請求人は、乙第2号証の1及び乙第2号証の2に係るプレスリリース及びニュースリリースに掲載されている「ハッピーセットボックス」に付された商標が確認できる写真として、2017年(平成29年)9月15日に、本件商標権者の従業員が、同一性を担保すべく、同じ角度から撮影したもの(乙35)を提出する。 上記写真により、「ハッピーセットボックス」に付された「MARIOKART」の文字及びその文字の下に付記された「マリオカート」の文字が容易に把握可能であると考える。 (4)その他 被請求人は、本件商標を使用した商品「ハンバーガー」を購入した需要者が、2014年(平成26年)12月20日及び同月30日に、その商品の包装であり、また、広告物でもある「ハッピーセットボックス」の写真とともに投稿したブログの写し(乙36、乙37)を提出する。これらは、通常使用権者である日本マクドナルドのニュースリリース(乙2の1、乙2の2)にあるとおり、2014年(平成26年)12月5日から商品販売がされ、実際に、日本マクドナルドによる商品「ハンバーガー」の包装に本件商標を付したものを譲渡する行為(商標法第2条第3項第2号)及び商品「ハンバーガー」に関する広告に本件商標を付して頒布する行為(同法第2条第3項第8号)が行われたことを裏付けるものである。 (5)まとめ 以上の主張及び証拠の提出並びにこれまでの主張及び立証により、要証期間に、日本国内において、通常使用権者である日本マクドナルドが、本件請求に係る商品中の「ハンバーガー」について本件商標の使用(同法第2条第3項第2号及び同項第8号)をしていたことが証明されたと考える。 したがって、本件商標は、その指定商品中の本件請求に係る商品について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消されるべきものではない。 第4 当審の判断 被請求人の主張及び同人の提出に係る乙各号証によれば、本件商標の使用については、以下のとおりである。 1 商品「ハンバーガー」についての使用 (1)本件商標権者と日本マクドナルドとは、平成26年4月14日に、本件商標権者が著作権及び商標権を有するゲーム「マリオカート8」の使用等に関するライセンス契約を締結した。当該契約の概要は、本件商標権者が、日本マクドナルドに対し、日本国内において、契約において定められ、かつ、事前に本件商標権者の許諾を得た「マリオカート8」に係る許諾著作物及びその許諾著作物に係る商標(許諾商標)を、日本マクドナルド又はそのフランチャイジーが運営する店舗における「ハッピーセット」と称する子供向けハンバーガー類等特定の商品とおもちゃ類等のセット商品の販売及び広告宣伝活動に使用する権利を許諾する条件を定めるとするものであり、その有効期間を平成26年1月1日から同27年1月31日までとし、本件商標権者と日本マクドナルドとが合意したときは、その契約期間を延長することができるとするものである(乙5)。 そして、上記契約の第1条第2項の第3号、第5号及び第6号においては、上記「ハッピーセット」と称する商品の販売及び広告宣伝活動に関し、当該契約における用語の定義として、「本キャンペーン」については「日本マクドナルドが実施する『ハッピーセット「マリオカート8」キャンペーン』をいう」旨、「許諾製品」については「本キャンペーンにおいて使用される『ハッピーセットに係る「マリオカート8」のおもちゃ類』、『本キャンペーンに関連する販促物及び広告物一式(電子的に配信等されるものを含む)』をいう」旨、「許諾期間」については「本キャンペーン実施期間中(平成26年12月5日から同27年1月1日までの4週間)をいう」旨定められている。 (2)日本マクドナルドは、2014年(平成26年)11月28日に、自己のウェブサイトにおいて、「親子二世代に人気のゲームキャラクターが今年も登場!/ハッピーセット『マリオカート8』/12月5日(金)から期間限定販売/?専用ボックスにマリオ、ルイージ、ピーチが描かれた3種類のデザイン登場?」の見出しの下、同年12月5日から約1か月を販売期間として、「マリオカート8」のキャラクターのおもちゃがセットになったハッピーセット「マリオカート8」を全国的に販売する旨のニュースリリースを掲載した。当該ニュースリリースには、(a)「ハッピーセット」について、「すきなたべもの1」(「ハンバーガー」、「チーズバーガー」、「プチパンケーキ」又は「チキンマックナゲット」のいずれか1品)、「すきなたべもの2」(「マックフライポテト」又は「スイートコーン」)、「すきなドリンク」(ジュースなど12種類)及び「おもちゃ」がセットになった子供向けのメニューであって、当該「すきなたべもの1」において選択する商品に応じて、「ハンバーガーセット」、「チーズバーガーセット」、「プチパンケーキセット」又は「チキンマックナゲットセット」の名の下に販売されるものであること、(b)「マリオカート」について、1992年に本件商標権者から「スーパーマリオカート」が発売されて以来、世界中で楽しまれているゲームシリーズであり、「マリオカート8」については、2014年5月に発売されたゲームであって、大人も子供も楽しめるものとして注目を集めていること、(c)「ハッピーセット『マリオカート8』」について、そのゲームに登場する主要なキャラクターのフィギュアがカートに乗ったおもちゃが含まれていること、(d)「ハッピーセットボックス」と称する「ハッピーセット」の包装容器に当該キャラクターの絵図等(3種類)が描かれていることなどが記載されている(乙2の2)。 また、日本マクドナルドは、上記ニュースリリースと同日付けで、当該ニュースリリースと同様の内容からなる報道関係者向けの参考資料を作成し、頒布したことがうかがえる(乙2の1、乙3、乙7)。 そして、上記「ハッピーセットボックス」と称する「ハッピーセット」の包装容器のうち、少なくとも1種類のものについては、その正面及び側面に、いわゆる中抜き文字で表された「MARIOKART」の文字(その構成中の2つの「A」の文字は、デザイン化して表されている。)と、その文字に比して小さく、黒色で表された「マリオカート」の文字とを二段に表してなるものの右方に、両文字に比して大きく、青色で表された「8」の数字(当該数字は、「MARIOKART」の文字の語尾にある「RT」の文字部分の後方にあるかのように表されている。)が配されている標章(以下「使用標章」という。)が付されている(乙2の1、乙2の2、乙3、乙4の1、乙4の2、乙7、乙35)。 (3)使用標章は、「MARIOKART」及び「マリオカート」の各文字並びに「8」の数字を上記(2)で述べた構成態様をもって表してなるものであるところ、その構成中、「8」の数字は、その態様及び配置によれば、視覚上、当該「MARIOKART」及び「マリオカート」の各文字と一体不可分のものとしてのみ看取されるとはいい難い一方、「マリオカート」の文字は、そのつづり及び配置によれば、その上方に配置された「MARIOKART」の文字の読みを片仮名表記したものと看取されるといえる。 また、上記「MARIOKART」及び「マリオカート」の各文字は、いずれも、本来、特定の語義を有しない造語というべきものであるが、本件商標権者が、長年にわたり、「マリオカート(MARIOKART)」の名を共通とする一連のカートレースのゲームを国内外で相当数販売してきたこと(乙26)を鑑みれば、本件商標権者の販売に係る当該ゲーム(シリーズ)を想起させ得るものといえる。 そうすると、使用標章は、その構成中、「MARIOKART」及び「マリオカート」の文字部分が上記ゲーム(シリーズ)を想起させ得るまとまりある一体的なものと認識される一方、「8」の数字は、当該文字部分に付加されたものと認識されるとみるのが相当であるから、前者が分離して観察され得るものである。 (4)上記(1)ないし(3)によれば、日本マクドナルドは、本件商標権者との間で締結した本件商標権者が著作権及び商標権を有するゲーム「マリオカート8」の使用等に関するライセンス契約に従い、要証期間である2014年(平成26年)11月28日に、自己の販売に係る「ハッピーセット『マリオカート8』」と称する商品についての広告を頒布し、かつ、自己のウェブサイト上に掲載したといえる。当該商品は、「すきなたべもの1」、「すきなたべもの2」、「すきなドリンク」及び「おもちゃ」を一つのセットとして購入する単一の商品というべきものであり、そのうち、「すきなたべもの1」について「ハンバーガー」を選択したときは、「ハンバーガーセット」の名の下に販売されるものである。 また、上記ライセンス契約においては、許諾商標として、本件商標は明記されていないものの、日本マクドナルドは、自己の販売に係る「ハッピーセット『マリオカート8』」と称する商品の商標として、その包装容器(ハッピーセットボックス)に使用標章(その構成中の「MARIOKART」及び「マリオカート」の文字部分が分離して観察され得るもの)を付していたところ、そのことについて、日本マクドナルドは、当該ライセンス契約に従って、許諾著作物に係る商標として、事前に本件商標権者の許諾を得ていたことがうかがえる。 そして、使用標章の構成において分離して観察され得る「MARIOKART」及び「マリオカート」の文字部分と本件商標とを比較した場合、両者は、書体や「MARIO」の文字と「KART」の文字との間の間隙の有無といった差異はあるものの、実質的に同じ文字からなるものといえ、それぞれから生じる「マリオカート」の称呼も同一である上、本件商標権者の販売に係る「マリオカート(MARIOKART)」と称するゲーム(シリーズ)を想起させ得る点においても共通するといえるから、これらを総合勘案すれば、使用標章は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。 そうすると、本件商標権者は、日本マクドナルドに対し、日本マクドナルドが販売する「ハッピーセット『マリオカート8』」と称する商品について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用することを事前に許諾していたというべきであるから、日本マクドナルドは、本件商標に係る通常使用権者といえる。 そして、日本マクドナルドの販売する「ハッピーセット『マリオカート8』」と称する商品は、上記のとおり、「ハンバーガー」を含む複数の商品を一つのセットとして購入する単一の商品であるから、その商品の包装容器(ハッピーセットボックス)に付された商標は、「ハンバーガー」についての商標としても機能するとみるのが相当である。 したがって、本件商標に係る通常使用権者である日本マクドナルドは、要証期間に、本件請求に係る商品中の「ハンバーガー」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した広告を頒布し、かつ、自己のウェブサイトにより提供したといえ、その行為は、商標法第2条第3項第8号にいう行為に該当する。 2 まとめ 以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標に係る通常使用権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-10-21 |
結審通知日 | 2019-10-24 |
審決日 | 2019-11-08 |
出願番号 | 商願平10-75854 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(Z30)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 正雄 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
田中 敬規 小松 里美 |
登録日 | 1999-12-03 |
登録番号 | 商標登録第4340262号(T4340262) |
商標の称呼 | マリオカート、マリオ、カート |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |