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審決分類 審判 一部無効 商標の周知 無効としない W25
管理番号 1358724 
審判番号 無効2019-890019 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-03-27 
確定日 2019-12-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第5905585号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5905585号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年7月6日に登録出願、第25類「アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い」を始めとする第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年11月28日に登録査定され、同年12月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する商標は、次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも請求人が「着圧ハイソックス」について使用し需要者の間に広く認識されているとするものである。
1 別掲2のとおりの商標(以下「引用商標1」という。)
2 「アティーボ・ハイソックス」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)
3 「ATTIVO HIGH SOCKS」の文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第25類「アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い」(以下「請求商品」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第201号証を提出した(令和元年8月26日付けの審判事件弁駁書に添付の甲第194号証ないし甲第197号証を、順に甲第198号証ないし甲第201号証と読み替える。)。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中請求商品について商標法第4条第1項第10号に違反して登録されているものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(1)請求人及び引用商標について
ア 請求人について
請求人は、平成17年に設立された株式会社であり、衣料品、栄養補助食品、化粧品の製造・販売等を主な業務としており、平成18年4月頃から「Attivoハイソックス」との商品名で「着圧ハイソックス」の製造・販売を開始した。
イ 請求人の商標(引用商標)について
請求人は、平成18年4月から、自己の業務に係る商品「着圧ハイソックス」(以下「請求人商品」という。)について引用商標の使用を継続し、本件商標の出願の時点において、引用商標は、日本国内の着圧ハイソックスの需要者・取引者の間において、広く認識されていたものである。
ウ 引用商標の自他商品識別力及び周知性について
(ア)引用商標の自他商品識別カ
引用商標に含まれる「Attivo」及び「アティーボ」の語は、広辞苑や一般的な英和辞典には掲載されていない語である。「Attivo」との語はイタリア語で「活動的な」という意味を有する語であるが、我が国において親しまれたイタリア語の単語ではなく、商品「着圧ハイソックス」について、商品の品質等を直接的かつ具体的に表示するものではないから、「Attivo」及び「アティーボ」の語は商品「着圧ハイソックス」について、十分な自他商品識別力を具備する語である。
これに対して、引用商標に含まれる「Hi-SOCKS」「HIGH SOCKS」及び「ハイソックス」の語は、「膝下まである長めのソックス」(広辞苑第六版)という意味を有する語であって、我が国において広く親しまれた和製英語であるから、商品「着圧ハイソックス」については、商品の品質等を表示する語であるといえる。
(イ)引用商標の使用実績等
前述のとおり請求人は、平成18年4月頃から「Attivoハイソックス」との商品名で着圧ハイソックスの製造・販売を開始し、そのパッケージ、カタログ等に引用商標を使用して、現在に至るまで広く着圧ハイソックスを製造・販売している。
a 商品パッケージ及びその印刷履歴
請求人は、引用商標を使用した商品パッケージを平成18年4月26日に初めて3,000枚印刷し(甲1)、それ以降、継続してパッケージを印刷している(甲1?甲115)。これらパッケージは、2足入りの紙箱タイプ(甲116、甲117)のものと、ファスナーで密封できるビニル袋タイプ(甲118)がある。
b カタログ及びその印刷履歴
請求人は、請求人商品について引用商標を使用し、その広告である「総合カタログ」を平成19年12月7日に初めて印刷し(甲9)、それ以降、必要に応じて改訂・修正を重ねて増刷し(甲10?甲115)、第1版から第78版まで版を重ねて発行している(甲119?甲183)。また、近年は中国や欧米からも引き合いがあるため、中国語版(甲182)、英語版(甲183)を発行するなどして、幅広い需要者・取引者に対応している。
このような請求人による引用商標が使用されたカタログは、本件商標の出願の時点において、23万7,000冊印刷されており(甲9?甲92の合計)、その後も現在まで継続して印刷されて(甲93?甲115)、商品「着圧ハイソックス」の需要者・取引者に対して頒布されている。
c その他の資料・広告・雑誌等
上記のとおり請求人は、請求人商品のパッケージ及び商品カタログに広く引用商標を使用しているが、パッケージやカタログ以外にも、例えばポストカードタイプのリーフレット(甲184)は、引用商標の下に着圧ハイソックスに関する商品の特徴や価格等が記載されており、平成18年8月10日に初めて印刷し(甲3)、以降も継続して印刷し(甲7、甲11、甲24、甲31、甲35、甲39)、需要者・取引者に頒布して宣伝広告活動を展開した事実がある。
また、二つ折りの小冊子(甲185)においても、引用商標の下に着圧ハイソックスに関する商品の特徴や取扱い方法が記載されており、平成24年2月24日に2,000冊印刷し(甲46)、需要者・取引者に頒布して宣伝広告活動を展開した事実がある。
さらに、請求人商品は、請求人が最終需要者に対し直接販売する方法以外にも、クリエーターと呼ばれる販売代理店を通じて販売する方法をも採用しており、この販売代理店に対して商品内容を説明する資料(甲186)を作成し、平成26年10月6日に2,000冊印刷し(甲72)、以降も継続して印刷し(甲83、甲86)、取引者である販売代理店に頒布して宣伝広告活動を展開した事実がある。
上記のような請求人による引用商標を使用した商品「着圧ハイソックス」(以下「使用商品」という。)に係る積極的な宣伝広告活動の結果、遅くとも平成28年頃までには、引用商標は、請求人商品の需要者・取引者の間において広く認識されるに至っており、平成28年9月ないし10月の日本航空の機内販売雑誌「JAL SHOP」に請求人商品が掲載され、「アティーボ・ハイソックス」との引用商標が使用された事実がある(甲187)。
また、請求人商品は、平成27年に「理学診療用器具」の「弾性ストッキング」として医療機器製造販売届がなされ(届出は、製造業者である株式会社エル・ローズ名義でなされている。甲188)、販売名として「アティーボ・ハイソックス」と明記されている。そして、その結果、一般医療機器として添付文書(甲189、甲190)を作成し、商品に同梱しており、当該添付文書には上段に大きく「アティーボ・ハイソックス」と記載され、改訂第2版(甲190)の末尾には販売者(発売元)として、請求人の名称が明記されている。
(ウ)引用商標を使用した商品の販売数量、売上金額
前述のとおり、請求人は平成18年4月頃から「Attivoハイソックス」との商品名で着圧ハイソックスの製造・販売を開始し、現在まで継続している。
また、請求人商品は、クリエーターと呼ばれる販売代理店を通じて販売する方法をも採用しており、これらの販売代理店から請求人に対して注文書(甲193)が送付されて商品の注文がなされている。
これら販売代理店からの注文と請求人による直販を合計すると、本件商標の出願日直前の平成28年6月末までの間において、合計37万2,177個であり(甲191)、その売上金額は約36億4,700万円以上となっている(甲192)。
(エ)小括
以上のようなところ、請求人商品は、2足入りで約10,000円(例えば甲184)と一般的なハイソックスに比べて非常に高額であるが、前記のとおり一般医療機器として添付文書(甲189、甲190)が同梱されるような商品であり、その需要者・取引者は、特に足の疲れ、冷え、むくみの改善やエコノミークラス症候群への対策を目的として、非常に高い注意力をもって商品を取捨選択するものであり、そのような需要者・取引者の間において、引用商標は、遅くとも本件商標の出願日の時点において、請求人の業務に係る商品「着圧ハイソックス」を表示するものとして広く認識されるに至っていたものである。
(2)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、中央部分に「ヒマワリの花」や「太陽」、「(雪などの)結晶」を思わせるような幾何学図形を大きく書し、その下部にやや小さく「Attivo」と横書きしてなるものである。
そして、本件商標について、特許庁審査官は「構成中の『Attivo』の文字部分も独立して自他商品の識別標識としての機能を有し、これより『アティーボ』の称呼が生じ、かつ『活動的な』程の親念が生じるものと認める」旨判断している(甲195、甲196)。
してみれば、本件商標よりは、その構成中の文字部分に相応して、「アティーボ」の称呼及び「活動的な」程の観念が生じる。
イ 引用商標
(ア)引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、手書き文字風の書体により中央に大きく「Attivo」と書し、その下部に小さく「Hi-SOCKS」と書してなるところ、「Hi-SOCKS」の部分は、引用商標1が使用されている商品「着圧ハイソックス」との関係においては商品の品質表示であって、自他商品識別力を具備しない文字部分であるといえる。そうとすれば、引用商標1よりは、「アティーボ」の称呼及び「活動的な」又は「活動的なハイソックス」程の観念が生じるといえる。
(イ)引用商標2
引用商標2は、片仮名にて「アティーボ・ハイソックス」と横書きしてなるところ、これと同様の「アティーボ・ハイソックス」との構成を有する商標登録出願に係る拒絶査定謄本(甲195)によれば、その構成中「ハイソックス」の文字部分は引用商標2が使用されている商品(着圧ハイソックス)との関係において自他商品の識別標識として機能を果たし得ず、自他商品の識別機能を有するのは「アティーボ」の文字部分にあり、該文字部分から単に「アティーボ」の称呼、「活動的な」程の観念を生じるといえる。
(ウ)引用商標3
引用商標3は、欧文字にて「ATTIVO HIGH SOCKS」と横書きしてなるところ、これと同様の「ATTIVO HIGH SOCKS」との構成を有する商標登録出願に係る拒絶査定謄本(甲196)によれば、その構成中「HIGH SOCKS」の文字部分は引用商標3が使用されている商品(着圧ハイソックス)との関係において自他商品の識別標識として機能を果たし得ず、自他商品の識別機能を有するのは「ATTIVO」の文字部分にあり、該文字部分から単に「アティーボ」の称呼、「活動的な」程の観念を生じるといえる。
ウ 本件商標と引用商標との類否
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観において幾何学図形の有無という差異を有する。
しかし、上記商標登録出願に係る商標は本件商標と類似すると判断(行政判断)されている事実があるから(甲195、甲196)、本件商標と引用商標は互いに類似する商標というべきである。
(3)本件商標と引用商標の商品の類否について
請求人の使用商品「着圧ハイソックス」は、本件商標の指定商品中の「靴下」に類似する商品である。
また、特許庁による類似商品・役務審査基準(甲197)によれば、「靴下」は本件指定商品中の「靴下」以外の請求商品に類似する商品である。
したがって、請求商品と引用商標が使用されてきた商品「着圧ハイソックス」とは、互いに類似する商品である。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の指定商品中請求商品については、請求人の業務に係る商品(着圧ハイソックス)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であって、その商品に類似する商品について使用をするものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中請求商品について商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の答弁に対する弁駁
ア 請求人の所在地について
請求人は、平成17年に福井市西開発を本店として設立登記された株式会社であり、その後、平成20年に福井市大宮に、平成22年に福井市新田塚町に、本店を移転して現在に至るものである(甲198、甲199)。また、請求人の商号は「株式会社グラント・イーワンズ」であり、その欧文字表記については「Grant E One’s」との表記を用いている(例えば甲119等)。
したがって、被請求人の求釈明に係る「福井市西開発のGrant E One’sという会社」及び「福井市大宮の株式会社グラント・イーワンズ」は、いずれも請求人と同一である。
イ 甲第116号証の版下について
甲第116号証は、パッケージの版下であるが、これは例えば甲第117号証の写真のようにその他のシールやバーコード等が貼付された上で、商品として販売されている。
ウ 甲第119号証の総合カタログに関する求釈明について
(ア)発行年月日は、平成19年12月頃である。この総合カタログが印刷されたのは平成19年12月頃であり(甲9)、翌年1月16日にも5,000部増刷している(甲10)ことから、何ら矛盾はない。
最終頁の記載のとおり、発行者は請求人である(住所の表示については、請求人の平成19年12月当時の住所が表示されている)。
立証趣旨は、審判請求書の記載から明らかである。
(イ)甲第9号証の「総合カタログ」の箇所に「Attivo」との記載が無くとも、「ZaZa GRANT」というブランド展開の中の「Attivo」ハイソックスとして掲載されており、甲第119号証と甲第9号証には整合性が認められるから、甲第9号証は甲第119号証の印刷に関する請求書であるといえる。
エ 商品パッケージの印刷について
甲第1号証ないし甲第115号証の内、どれがパッケージに関する請求明細書であるのかについて明らかにする(例えば、甲1の1枚目、サインペンで囲んだ箇所など、列挙する)。
オ 総合カタログ等について
甲第9号証については、上記ウ(イ)の主張のとおりである。
甲第10号証ないし甲第115号証については、該当箇所をサインペンで囲んで表示している。
甲第119号証ないし甲第183号証については、請求人の手元に残っている過去の総合カタログをできる限りを証拠として提出したものであり、全ての版が揃っていなくては証拠価値が認められないということはない。また、住所が鮮明とまではいえない部分もあるが、請求人の名称は読み取れるし、住所についても読み取れる3つの請求人住所は、請求人の本店所在地の移転履歴に合致するものである。
甲第119号証、甲第147号証ないし甲第181号証の総合カタログには発行年月日の記載がないが、例えば甲第156号証(第44版)については,甲第73号証に「11.05/総合カタログ(NO44)/3,000冊」とあることから、同請求明細書が発行された平成26年11月30日前後に発行されたものであるといえる。同様に、それぞれ列挙したように対応している。
カ その他の資料・広告・雑誌等について
各種印刷物の印刷年月日については、例えば甲第185号証の記載と、これに対応する甲第46号証の記載は、対応しているといって差し支えなく、この請求明細書(甲46)は請求人以外の第三者(印刷業者)によって作成されたものであることなどから、合理的疑義を差し挟む余地はないものといえる。
「JAL SHOP」(甲187)については、請求人はこれのみによって引用商標の周知性の獲得を主張しているわけではなく、引用商標の周知性の獲得を裏付ける証拠のうちの一つである。また、その発行部数について、例えば2010年12月の資料では国内線版約75万部、国際線版約45万部とあり(甲200)、別の資料では「【1号あたりの閲読可能者数】国内版約548万人、国際線版約138万人」と記載されているものがある(甲201)。このように、「JAL SHOP」は,請求人が自ら発行、頒布する総合カタログ(甲119?甲183)等と異なり、これまで引用商標に接したことが無く、請求人の業務に係るハイソックスを知らない需要者に対して、非常に広く、有効に宣伝広告できるメディアであることは疑いを挟む余地はなく、引用商標の周知性の獲得を裏付ける重要な証拠であることは間違いない。
キ 販売数量、売上金額について
請求人商品は、需要者に対して直接販売する方法以外にも、クリエーターと呼ばれる販売代理店を通じて販売する方法(注文書:甲193)をも採用しており、これらを合計すると、本件商標の出願日(平成28年7月6日)の直前の平成28年6月末までの間の数量は合計37万2177個であり(甲191)、売上金額は約36億4700万円以上に上っている(甲192)。
したがって、被請求人が指摘する平成19年1月の売り上げについていえば、甲第193号証から読み取れる販売個数が38個であったとしても、その他に請求人による直接販売もあるため、合計が328個となったとしても不自然な部分はない。ただし、甲第193号証は、請求人商品の販売実績の内、代理店販売に係る全ての注文書という訳ではない点を付言する。
(2)請求人の主張
ア 引用商標の需要者・取引者について
請求人商品は、2足入りで約10,000円(例えば甲184)と一般的なハイソックスに比べて非常に高額であるが、医療機器であり、その需要者・取引者は、高額な料金を支払ってでも「アティーボ・ハイソックス」を購入したいと思う非常に意識の高い需要者・取引者である。限定された需要者・取引者を対象とする引用商標の周知性の認定に関しては、広く一般の需要者・取引者を対象とする安価な大量消費物品と同一に語ることは不適当であり、被請求人が主張するように広告物の数量・販売数量のみを論難しても意味をなさない。
高い意識と注意力を有する限定された需要者・取引者に対して、請求人が主張しているような総合カタログの頒布数、売上数量・金額、広告媒体を総合して検討すれば、引用商標は、遅くとも本件商標の出願日の時点において、請求人商品を表示するものとして、その需要者・取引者の間において広く認識されるに至っていたものといえる。
イ まとめ
引用商標は、遅くとも本件商標の出願日の時点において、請求人商品(着圧ハイソックス)を表示するものとして、その需要者・取引者の間において広く認識されるに至っていたものである。そして、本件商標は引用商標に類似し、請求商品(アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い)と引用商標が使用されてきた商品「着圧ハイソックス」とは、互いに類似する商品である。
したがって、本件商標の指定商品中、請求商品については、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 認否
(1)請求人について
請求人が、平成17年に設立された株式会社であり、衣料品、栄養補助食品、化粧品の製造・販売等を主な業務としている点については、不知である。
株式会社典沃(大阪市阿倍野区)という会社が、福井市西開発3-410のGrant E One’sという会社に、甲第1号証ないし甲第8号証に記載の請求書を発行したこと自体については争わないが、請求人と前記Grant E One’sという会社とが同一であるか否かについては、不知である。もし、住所変更や事業譲渡等の事由があるのであれば、請求人において、明らかにされたい。
甲第116号証に洗濯表示がなされていることについては、認めるが、同号証はデザイン画であり、実際に商品パッケージとして使用されたか否かについては、不知である。
甲第119号証には、福井市西開発3丁目410番地の(株)グラントイーワンズとの記載があり、同号証が請求人の総合カタログであるか否かについては不知である。また、同号証には、発行年月日が記載されておらず、本件商標の出願日よりも前に発行されたものであるかについては、争う。
なお、甲第119号証として提出されている証拠は、写しを原本として提出するのか、発行年月日はいつであるのか、発行者は誰であるのか、立証の趣旨は何であるのかなど、不明な点が多く、これらの点を明らかにされたい。この点、本件審判請求の証拠全般にいえることではあるが、総合カタログやパッケージなど他の証拠についても同様のことがいえる。
甲第9号証は、株式会社典沃という会社が、福井市西開発3-410のGrant E One’sという会社に発行した請求書であること自体は争わないが、同号証には、商品パッケージ(ハイソックスAttivo)の表示があるにすぎず、総合カタログに関する請求書であるとの請求人の主張については不知である。
総合カタログが、改訂を重ねて現在まで継続して印刷・頒布されているという点については、不知である。
(2)請求人の商標(引用商標)について
現在、引用商標を請求人が使用しているという点に限っては認めるが、使用の開始時期、周知性など、その余の点については、争う。
(3)引用商標の自他商品識別カ
「Attivo」がイタリア語であり、「活動的な」という意味を有するものであること、イタリア語の日本国内での認識の度合いについては認める。
被請求人は、引用商標が周知性を獲得していないことを答弁の主たる根拠とするので、引用商標の自他商品識別力については、現時点においては、認否の必要がないと考えるので、認否しない。
(4)引用商標の使用実績等
請求人は、平成18年4月頃から「Attivoハイソックス」との商品名で圧着ソックスの製造・販売を開始し、パッケージ、カタログ等に引用商標を使用し、現在に至るまで広く圧着ハイソックスを製造・販売していると主張するが、使用の開始時期及び現在までの継続使用の状況について、争う。
ア 商品パッケージ及びその印刷履歴
請求人は、甲第116号証ないし甲第118号証のパッケージを甲第1号証ないし甲第115号証の請求明細書において、印刷したと主張するが、後者の請求明細書によって、前者のパッケージが印刷されたことが、立証されておらず、後者の請求明細書が前者のパッケージに対応するものであるとする点については、不知である。
甲第1号証ないし甲第115号証には、パッケージ以外の品名も記載されており、これら全てがパッケージに関する請求明細書ではない。同号証の内、どれがパッケージに関する請求明細書であるのか、明らかにされたい。
甲第1号証ないし甲第10号証は、福井市西開発3-410のGrant E One’sに対する請求明細書であり、甲第11号証ないし甲第34号証は、福井市大宮大宮5丁目13番24号の株式会社グラント・イーワンズに対する株式会社典沃からの請求明細書である。
福井市新田塚町305番の株式会社グラント・イーワンズが表記されているのは、平成22年10月31日発行の甲第35号証からである。
したがって、甲第1号証ないし甲第115号証が、全て請求人宛に発行された請求書であるとする点については、不知である。
イ カタログ及びその印刷履歴
甲第9号証には、総合カタログに関する記載はなく、平成19年12月7日に総合カタログを初めて印刷したという点については、不知である。
甲第10号証ないし甲第115号証には、総合カタログ以外の請求明細書が含まれており、これら全てが総合カタログの印刷履歴を示すものではない。
甲第119号証ないし甲第183号証において、総合カタログが第1版から第78版まで発行されていると主張しているが、全ての版が証拠として提出されているわけではなく、不知である。
また、住所表示が不鮮明な写しが提出されており、請求人が発行した総合カタログであるか不知である。
さらに、甲第119号証及び甲第147号証(第34版)ないし甲第181号証(第77版)には、発行年月日が記載されておらず、本件商標の出願日よりも前に発行されたものであるとする点については不知である。
中国語版(甲182)及び英語版(甲183)の第63版が存在することは、争わないが、発行年月日が記載されておらず、本件商標の出願日よりも前に発行されたものであるとする点については不知である。また、第63版以外に、中国語版及び英語版が存在するという点については、不知である。
幅広い需要者・取引者に対応しているという点については、争う。
請求人は、甲第9号証ないし甲第92号証の合計として、総合カタログを23万7,000冊印刷していると主張するが、同号証には、総合カタログ以外の品名も存在し、どの証拠が総合カタログの印刷を示すものであるのか、請求人において明らかにされたい。
また、甲第93号証ないし甲第115号証において、その後も現在まで継続して総合カタログが印刷されていると主張するが、同号証に、総合カタログ以外の品名(パッケージ等)も存在し、どの証拠が総合カタログの印刷を示すものであるのか、主張を整理されたい。
なお、甲第93号証ないし甲第115号証は、本願出願日である平成28年7月6日以降の請求明細書であり、本願出願日以降の使用事実を立証したところで、商標法第4条第1項第10号の無効理由の立証とはならない点を付言しておく。
ウ その他の資料・広告・雑誌等
甲第184号証のリーフレット自体が存在することは争わないが、同号証には、発行年月日が記載されておらず、本件商標の出願日よりも前に発行されたものであるか否か不知である。
甲第3、7、11、24、31、35、39号証が、甲第184号証の印刷発注に対応するか否かは、提出された証拠からは、把握できず、平成18年8月10日に印刷後、継続して印刷されていたという点については、不知である。
甲第185号証の小冊子自体が存在することは争わないが、同号証には、発行年月日が記載されておらず、本件商標の出願日よりも前に発行されたものであるか否か不知である。
甲第46号証が、甲第185号証の印刷発注に対応するという点については、提出された証拠からは両者を対応付ける根拠が見いだせず、平成24年2月24日に印刷されたという点については不知である。
甲第186号証は、いわゆるトンボが付けられた状態であり、実際に印刷されたものであるかという点について争う。
さらに、甲第72、83、86号証が、甲第186号証の印刷発注に対応するという点については、提出された証拠からは両者を対応付ける根拠が見いだせず、平成26年10月24日に印刷され、その後継続して印刷されたという点については、不知である。
遅くとも、平成28年頃までには、引用商標は請求人商品の需要者・取引者において広く認識されたという点については、争う。
甲第187号証の機内販売雑誌が存在すること、同号証に2016年9月?10月号である旨の表示があること自体は争わないが、同号証によって、周知性が獲得されたという点については争う。
株式会社グラント・イーワンズという会社を発売元として、「アティーボ・ハイソックス」という商品が一般医療機器として届け出されているという点については、争わない。
(5)引用商標を使用した商品の販売数量、売上金額
甲第193号証の注文書が存在すること自体は争わないが、同号証には、請求人の住所とは異なる住所である福井市西開発3丁目410番地の株式会社グラント・イーワンズによるものも散見される。繰り返しになるが、主体の同一性については、請求人において一度整理されたい。
甲第191号証及び甲第192号証が、アティーボ・ハイソックスの売上個数及び金額を集計したものであるとのことであるが、請求人から提出されているのは、クリエーターと呼ばれる販売代理店からの注文書(甲193)のみであり、同号証が、真にアティーボ・ハイソックスの売上個数及び金額を集計したものであるかは不知である。例えば、甲第191号証によると、平成19年1月の売上合計は328個となっているが、甲第193号証の1頁から16頁までの平成19年1月期の注文個数を集計すると38個のようであり、その差が極めて大きい。
甲第193号証に記載されている個数と、甲第191号証に記載されている個数との整合性について、明らかにされたい。
(6)小括
本件商標の出願日の時点において、引用商標が、請求人商品(圧着ハイソックス)を表示するものとして広く認識されるに至っていたものであるという点について争う。その余については、不知である。
(7)本件商標と引用商標との類否
被請求人は、引用商標が周知性を獲得していないことを答弁の主たる根拠とするので、本件商標及び引用商標の外観・称呼・観念、本件商標と引用商標との類否については、現時点においては、認否の必要がないと考えるので、認否しない。
(8)本件商標と引用商標との商品の類否について
被請求人は、引用商標が周知性を獲得していないことを答弁の主たる根拠とするので、本件商標と引用商標との商品の類否については、現時点においては、認否の必要がないと考えるので、認否しない。
(9)むすび
否認ないし争う。
2 請求人の主張
(1)主張の概要
請求人は、引用商標は商品「着圧ハイソックス」について使用する商標であるとして、需要者の間に広く認識されているものであると主張する。
周知性の立証責任は請求人にあるところ、請求人が提出した証拠からは、引用商標の周知性は立証されない。
よって、本件商標の出願時において、引用商標は、商品「着圧ハイソックス」について使用する商標であるとして需要者の間に広く認識された商標ではなく、商標法第4条第1項第10号の要件を満たさない。以下、具体的に理由について述べる。
(2)周知性について
請求人が提出した証拠については、発行年月日や不鮮明な記載、住所の不一致などがあり、請求人の使用する商標の周知性の立証という点では、厳密性に欠けるところがあり、詳細は上記1で述べたとおりである。
仮に、請求人が主張するような使用実績が、提出された証拠から認められたとしても、これらの証拠だけでは、周知性が立証されないという点について、以下に主張する。
ア 甲第1号証ないし甲第115号証
請求人からは、甲第1号証ないし甲第115号証として、請求明細書が提出されているが、そもそも、甲第93号証ないし甲第115号証は、本件商標の出願日よりも後の請求明細書である。
よって、甲第93号証ないし甲第115号証は周知性を獲得したことを立証する証拠として、使用することはできない。
甲第1号証ないし甲第92号証は、パッケージ、ポストカード、冊子、総合カタログ等の主に印刷物に関する請求明細書であるところ、同号証によって、立証されるのは、総合カタログ等を、同号証に記載の数量だけ、印刷会社に発注したということだけであり、需要者の間に引用商標が広く認識されるものに至ったことの立証とはならない。
イ 甲第193号証
甲第193号証は、販売代理店からの注文書であり、上記1(5)で述べたとおり、請求人が主張する売上数と同号証に記載の売上数との間には、あまりに、大きな隔たりがある。
よって、本号証に記載の注文書の数量だけでは、需要者の間に引用商標が広く認識されるものに至ったことの立証とはならない。
ウ 使用実績
仮に、請求人の主張する使用実績が実際に存在したとして、使用実績を時系列でまとめると以下のとおりである。
(ア)平成18年4月26日
商品パッケージ 3,000枚。
その後継続して印刷していると主張しているが、数量については、明らかにされていない。
(イ)平成19年12月7日ないし平成28年7月6日の103か月間
総合カタログ 237,000冊。月平均約2,300冊。
(ウ)平成24年2月24日
小冊子 2,000冊
(エ)平成26年10月6日
販売代理店向け資料 2,000冊。
その後継続して印刷していると主張しているが、数量については、明らかにされていない。
(オ)平成28年9月ないし10月
機内販売雑誌「JAL SHOP」掲載。
機内販売雑誌「JAL SHOP」の発行部数については、明らかにされていない。
(カ)平成27年
医療機器製造販売届。
(キ)平成18年4月ないし平成28年7月6日の123か月
販売個数 372,177個。売上金額約36億4,700万円。
月平均で、約3,025個、2,965万円が販売されている。しかし、月3,000個程度の販売個数によって、商標法第4条第1項第10号による周知性が獲得できたとは、到底考えられない。
エ 請求人による広告
需要者において広く認識されたといえるためには、第三者が、引用商標を認識していることが当然必要であり、そのためには、当然、広告が必要となるのである。
請求人が提出した証拠によると小冊子、総合カタログ及び機内販売雑誌「JAL SHOP」が広告に該当すると思われるが、月平均でたった2,300冊程度発行されている総合カタログ、初回に2,000冊印刷した小冊子、たった一度掲載された機内販売雑誌「JAL SHOP」だけでは、引用商標が多くの需要者に触れたということなどあり得ない。
したがって、請求人による広告活動だけでは、需要者において広く認識されたということに至らない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標の出願時において、引用商標は、商品「着圧ハイソックス」について使用する商標であるとして需要者の間に広く認識された商標ではなく、商標法第4条第1項第10号の要件を満たさない。
(4)予備的主張
仮に、引用商標の周知性が認められた場合に限って、被請求人は、本件商標と引用商標とが非類似であることを主張する。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
なお、被請求人は、甲第1号証ないし甲第34号証及び甲第119号証に記載の「Grant E One’s」や「グラント(・)イーワンズ」という会社が請求人と同一か否かは不知である等を述べるが、履歴事項全部証明書(甲198)及び閉鎖事項全部証明書(甲199)に徴すれば、当該会社が請求人と同一人であると認めることができる。
ア 甲第1号証ないし甲第115号証は、「株式会社典沃」が平成18年4月ないし平成30年6月頃に発行した請求人宛の「請求書」及び「請求明細書」(写し)であり、それらには「品番・品名」欄又は「商品コード/商品名」欄に「パッケージ (ZaZa Attivoハイソックス)」「ポストカード(ZaZaハイソックス Attivo)」「商品パッケージ(ハイソックスAttivo)洗濯表示入り」「総合カタログ<全種掲載>冊子24P」などの記載のほか、日付、数量などの記載がある。
イ 甲第119号証ないし甲147号証は、請求人が遅くとも2008年(平成20年)6月から、2013年(平成25年)8月までに発行した(ただし、甲第119号証及び甲第147号証は発行時期が確認できない。)総合カタログ(写し)の第1版ないし第34版であって、それらには引用商標1の表示(外観において同一視できるものを含む。)並びに「強力段階圧縮と遠赤外線効果のダブルアクション。」及び「アティーボ・ハイソックス(2足組)」の記載とともにハイソックスの写真が掲載されている。
ウ 甲第148号証ないし甲第181号証は、請求人が発行した総合カタログ(写し)の第35版ないし第77版であって、それらには「強力段階圧縮と遠赤外線効果のダブルアクション。」や「強力段階着圧と遠赤外線のダブルアクション。」といった記載並びに「Attivo Hi-SOCKS」及び「アティーボ・ハイソックス(男女兼用)」の文字とともにハイソックスの写真が掲載されている。
エ 甲第193号証は、請求人が作成した様式に、クリエーター(販売代理店)など請求人以外の者が記載したと推認でき、「申込日」を平成19年1月ないし平成23年4月とする「クリエーター用 商品・用品注文書」(写し)などであって、「商品名」欄に「アティーボハイソックス」の記載並びに数量、カラー及びサイズの記載があるものが多数ある。
(2)上記(1)からすれば、請求人は、「アティーボハイソックス」という商品を平成19年1月頃から販売していること(上記(1)エ)、及び該商品に平成20年6月頃から引用商標1及び引用商標2を使用していること(上記(1)イ、ウ)が認められる。
しかしながら、引用商標を使用した商品(使用商品)の販売数、売上額など販売実績を裏付ける証左、及びポストカードや総合カタログなどの頒布先、頒布方法など宣伝広告の実情が確認できる証左はいずれも見いだせないから、引用商標は、他人(請求人)の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
なお、請求人は、販売代理店からの注文と請求人による直販を合計すると、平成18年4月ないし平成28年6月における使用商品の販売数は372,177個、売上額は約36億4,700万円である旨主張し、その証拠として甲第191号証ないし甲第193号証を提出しているが、受注数推移(甲191)及び売上推移(甲192)は容易に作成できる一覧表であり、また、受注推移の数値と「クリエーター用 商品・用品注文書」(甲193)における注文数には大きな隔たりがあって、かつ、請求人による直販数を裏付ける証左は見いだせないから、請求人の主張する販売数、売上高を採用することはできないし、仮に主張の売上があったとしても、その数量の多寡を推し量ることはできない。
さらに、使用商品が「JAL SHOP 平成28年9/10月号」に掲載されたことがあるとしても(請求人の表示は見あたらない。甲187)、他の商品と共に取扱商品の1つとして掲載されているにすぎず、使用商品が印象付けられるとはいえない。その他、引用商標3が使用されたことがうかがえること(甲118)及び引用商標のほか「Attivo Hi-SOCKS」の文字が使用されていること(甲148?甲181)を考慮しても、使用商品の販売実績などが確認できないから、上記判断を覆し得ない。
2 本件商標と引用商標の類否
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり幾何図形を上段に、「Attivo」の文字を下段に表してなるものである。
そして、本件商標は、その構成態様から幾何図形部分と「Attivo」の文字部分がそれぞれ独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって、該「Attivo」の文字部分からは、その文字に相応し「アティーボ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、別掲2のとおり「Attivo」の文字を大きく筆記体で表し、その下に小さく「Hi-SOCKS」の文字を配してなるものである。
そして、引用商標1は、その構成態様から、及び「Hi-SOCKS」の文字が使用商品の品質を認識させるものであり、「Attivo」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって、該文字に相応し「アティーボ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標2は、上記第2 2のとおり「アティーボ・ハイソックス」の文字からなり、その構成中「ハイソックス」の文字が使用商品の品質を認識させるものであり、「アティーボ」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって、該文字に相応し「アティーボ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 引用商標3は、上記第2 3のとおり「ATTIVO HIGH SOCKS」の文字からなり、その構成中「HIGH SOCKS」の文字が使用商品の品質を認識させるものであり、「ATTIVO」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって、該文字に相応し「アティーボ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア まず、本件商標の構成中、それ自体独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得る(以下「要部」という。)「Attivo」の文字部分と、引用商標の要部「Attivo(ATTIVO)」及び「アティーボ」の文字部分の類否について、以下検討する。
(ア)本件商標の要部「Attivo」と引用商標1及び3の要部「Attivo」及び「ATTIVO」を比較すると、両者は外観において、書体の差異はあるものの「Attivo(ATTIVO)」の綴りを共通にし、称呼において「アティーボ」の称呼を共通にし、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのある類似のものと判断するのが相当である。
(イ)本件商標の要部「Attivo」と引用商標2の要部「アティーボ」を比較すると、両者は外観において、欧文字と片仮名との差異を有し、称呼において「アティーボ」の称呼を共通にし、観念において比較できないものである。
そして、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、かつ、同一の称呼を生じる範囲内で商標の構成文字を平仮名、片仮名及びローマ字相互に変更することが一般に行われている取引の実情を考慮すれば、両者の外観が相違するとしても、観念において区別することができず、称呼を共通にする両者は、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似のものと判断するのが相当である。
イ そうすると、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。
3 むすび
上記2のとおり本件商標と引用商標は類似の商標であるが、上記1のとおり引用商標は他人(請求人)の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、仮に請求商品と使用商品(着圧ハイソックス)とが類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえない。
したがって、本件商標の指定商品中、本件審判の請求に係る商品である第25類「アイマスク,工プロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い」についての登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)



審理終結日 2019-10-11 
結審通知日 2019-10-16 
審決日 2019-11-07 
出願番号 商願2016-72862(T2016-72862) 
審決分類 T 1 12・ 255- Y (W25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 拓哉 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 板谷 玲子
山田 啓之
登録日 2016-12-16 
登録番号 商標登録第5905585号(T5905585) 
商標の称呼 アティーボ、アッティーボ 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 
代理人 ▲高▼山 嘉成 

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