• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W30
管理番号 1357920 
異議申立番号 異議2018-900237 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-20 
確定日 2019-12-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第6046851号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6046851号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第6046851号商標(以下「本件商標」という。)は,「株式会社総本家駿河屋」の文字を標準文字により表してなり、平成29年7月17日に登録出願、同30年4月25日に登録査定、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」を指定商品として,同年5月25日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の2件であり、いずれも登録商標として現に有効に存続しているものである。
(1)登録第553169号商標(以下「引用商標1」という。)は、「駿河屋」の文字を横書きしてなり、昭和26年9月17日に登録出願、第43類「羊羹」を指定商品として、同35年7月21日に設定登録され、その後、平成13年2月14日に指定商品を第30類「羊羹」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第553170号商標(以下「引用商標2」という。)は、「駿河屋」の文字を横書きしてなり、昭和26年10月22日に登録出願、第43類「羊羹」を指定商品として、同35年7月21日に設定登録され、その後、平成12年10月4日に指定商品を第30類「羊羹」とする指定商品の書換登録がされたものである。
以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
和菓子の著名な「駿河屋」は、駿河屋一門の「駿河屋会会則」によってその屋号と商標について厳格に使用が定められ今日まで会則のとおりに一門により結束維持管理されてきたものである。
そして、商標権者は、正統駿河屋一門の「駿河屋会」の共通財産である「駿河屋」が、著名で信用力の価値ある屋号であり、商標であることを知って、そのフリーライドを企てたものであることから、係る一連の詐称占有商標に係る出願は、商道徳に反するのみならず明らかに世人をあざむくものであり商標登録による独占などもってのほか許される筋合いのものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、「和歌山市小倉25番地の株式会社総本家駿河屋」(甲4)の他人の名称と同一であって同他人の承諾を得たものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、和菓子で著名な駿河屋一門の「駿河屋」に、「おおもとの本家」であることを表すにすぎない「総本家」の文字を付加した「総本家駿河屋」の文字に、法人の種別を表す「株式会社」の文字を前置したものであり、本件商標が、「菓子・パン」、特に「和菓子」に使用された場合は、上記、著名な「駿河屋」の屋号及び商標と同一の出所を表示する商標に属する商標と理解され、著名な正統「駿河屋」に属する出所を表示するための「スルガヤ」及び「駿河屋」の称呼及び観念を生じるほか、著名な「駿河屋」に属するおおもとの本家の屋号及び商標認識の下に「ソウホンケスルガヤ」の称呼と「著名な駿河屋の総本家」の観念を生じるものである。
イ 引用商標
引用商標は、前記2のとおりの「駿河屋」の文字からなるところ、当該文字から、正統「スルガヤ」及び「駿河屋」の顕著な称呼観念を生じる著名商標である。
ウ 本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標の比較において、両商標は「株式会社」及び「総本家」の有無の差異があるとしても、いずれも「スルガヤ」及び「駿河屋」の顕著な称呼観念を生じる正統駿河屋一門の著名な「駿河屋」と同一の出所表示に係る商標であることの認識を共通にする極めて混同が生じるおそれのある類似する商標であり、また、両商標の指定商品も抵触するものである。
エ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、京都伏見で初代岡本善右衛門が「鶴屋」の屋号で営業を開始した後、「駿河屋」と号した「駿河屋一門」の「駿河屋会」が今日まで永年にわたり守り続けてきたのれん信用の化体した和菓子で著名な「駿河屋」商標である。
そして、上記著名商標「駿河屋」に「おおもとの本家」を表す「総本家」の文字を冠した名称「総本家駿河屋」は、前記「駿河屋会」の和歌山の直系駿河屋のみが名乗ってきた著名な名称であり、これに法人の種別を表す「株式会社」の文字を前置したにすぎない本件商標とは、「ソウホンケスルガヤ」及び「総本家駿河屋」の顕著な称呼観念を生じる類似商標であると同時に、正統「駿河屋」の著名商標と同一の出所表示に係る商標認識を共通にする極めて混同するおそれのある類似の商標であり、また、両商標の指定商品も抵触する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、著名な商標である「駿河屋」の文字を含み、かつ、そのおおもとの本家であることを表すにすぎない「総本家」の文字を冠してなるところ、これが「羊羹その他の和菓子」を含む本件商標の指定商品に使用された場合は、取引者、需要者は、あたかも正統駿河屋一門の著名な「駿河屋」の「羊羹その他の和菓子」等の商品であるかのごとくその出所について混同を生じるおそれがあり、また、そのおおもとの本家の「駿河屋」の「羊羹その他の和菓子」等の商品であるかのごとくその出所について混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号について
本件商標が、正統駿河屋一門に帰属する著名商標「駿河屋」と混同するおそれのある類似する商標であること上述のとおりであり、商標権者は、正統駿河屋一門と全く無関係の者であって、正統「駿河屋会」に無断で、「消滅した総本家駿河屋」(審決注:甲第1号証の「株式会社駿河屋」。)の登記地に、本件商標と同一の偽「株式会社総本家駿河屋」を2度にわたり登記し、最初の偽「株式会社総本家駿河屋」を詐称して、第30類に出願し商標登録第5943016号(甲13)を得たことを奇貨とし、「駿河屋」に「総本家」「本家」等の文字を冠し、又は後接した架空の駿河屋商標を14件も乱造し、これを商標登録しようと企み駿河屋の本家を詐称占有せんがための商標出願(甲14)をし、更に、2度の成りすまし登記した「株式会社総本家駿河屋」の商号自体の商標登録独占を企み本件商標の商標出願を行ったことは疑いの余地は無く、永年正統駿河屋一門が結束して大切に維持してきた「駿河屋」の著名商標に化体した信用名声を棄損する目的をもって出願し登録をしたことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 本件商標に対する取消理由
審判長は、令和元年7月26日付け取消理由通知書をもって、商標権者に対し、本件商標は、本件商標の登録出願時及び査定時のいずれにおいても存在していた、他人の名称と同一であって、その他人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する旨通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

5 商標権者の意見
前記4の取消理由に対し、商標権者は、要旨以下のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出している。
(1)商号「株式会社総本家駿河屋」についての登記の経緯
ア 経緯1:平成26年5月16日
民事再生の担当弁護士の指示のもと、「会社法人等番号/1400-01-055122」「千鳥屋宗家株式会社」「本店/兵庫県尼崎市塚口町三丁目26番地の4」から「株式会社総本家駿河屋」「本店/和歌山市駿河町12番地」に商号を変更し登記(甲2の1・2)(審決注:上記法人は、甲第2号証の3によれば、平成28年8月1日付けで合併により解散している。)。
イ 経緯2:平成26年5月26日
民事再生の担当弁護士の指示のもと、「会社法人等番号/1700-01-013389」「株式会社駿河屋」「本店/和歌山市駿河町12番地」の商号を登記(甲3)。
ウ 経緯3:平成26年11月7日
本件の取消理由通知書の中で指摘している「会社法人等番号/1700-01-013571」「商号/株式会社総本家駿河屋」「本店/和歌山市小倉25番地」(以下「引用駿河屋」という。)が登記(甲4)。
エ 経緯4:平成28年5月11日
上記イの商号を「株式会社総本家駿河屋」(以下、ア及びエの「株式会社総本家駿河屋」「本店/和歌山市駿河町12番地」をまとめて、「商標権者駿河屋」という。)に変更(甲3)。
(2)経緯から明らかな事実
引用駿河屋は、「株式会社総本家駿河屋」の商号が「和歌山市駿河町12番地」に既に登記してあることによって、乙第1号証に記載されているように、破産管財人弁護士が「『株式会社総本家駿河屋(経緯1で登記したもの(甲2の1))』及び『株式会社駿河屋(経緯2で登記したもの(甲3))』が『駿河屋』の名称を付した事業を再開する支障となる」と指摘していることを知りながら、住所が異なるということだけで、全く同じ商号を登記し、営業を開始している。
破産者株式会社駿河屋(甲1)の破産管財人弁護士から株式会社千鳥屋宗家代表取締役社長へ宛てた文書の写し(乙1)に記載してあるように、破産管財人弁護士は、「本店所在地の中に『和歌山市駿河町』、商号の中に『駿河屋』を含む会社が登記されている事実は、任意売却業務に支障を生ずるおそれがあります。」と指摘している。
そうとすれば、引用駿河屋は、商標権者駿河屋が先に登記されているので、「総本家駿河屋」を含む商号を登記することに支障があることを知りながら、登記したことになる。
この行為は、「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあっては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない(商業登記法第27条)」及び「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない(会社法第8条第1項)」に明らかに違反するものである。
特に、引用駿河屋は、商標権者駿河屋の登記が既に存在することも、何故存在するのかを熟知していながら、完全に同一の場所でないという法の盲点を突いて、同一商号を同一市内に登記し、商標権者駿河屋が登記してある住所に駿河町本舗を置き、営業している。
さらに、引用駿河屋は、先に登録された登録商標第5943016号商標「総本家駿河屋」が出願されて審査に継続していることを知りながら、登記を行っており、また、上記登録商標の登録後も「総本家駿河屋」の商標を不正に使用している。
引用駿河屋は、先に登記されている商標権者駿河屋の存在によって、本来使用できない商号であり、さらに、上記登録商標によってその使用を制限されている商号である。
(3)申立人の認識について
本件異議申立書に記載の駿河屋会のメンバーが、商願2014-38998号(総本家 駿河屋)に対して平成28年1月29日に提出した上申書(乙2)によれば、引用駿河屋が商号として使用中の商標「総本家駿河屋」は、駿河屋会とは全く関係のない商標の使用であることが明白であり、引用駿河屋の使用は何ら正当な権原のない使用、すなわち商標権侵害行為に該当すると、申立人(駿河屋会のメンバー)も指摘している。
(4)小括
以上のように、引用駿河屋が、平成26年11月7日に設立され、2018年(平成30年)8月20日において存続していることが認められ、本件商標の登録出願時である平成29年7月17日及び査定時である同30年4月25日のいずれにおいても存在していたとしても、引用駿河屋は、不正の目的をもって、登記されたものであり、登録商標第5943016号商標「総本家駿河屋」の存在によって、その使用が制限されている。
したがって、仮に本件商標が、登録出願時及び査定時に存在していた、他人(引用駿河屋)の名称と同一であって、その他人の承諾を得ていないものであるとして拒絶されるとすれば、屋号や会社名を登録商標として所有する会社は、後に登記された他人の商号の存在によって、その後、当該屋号や会社名について登録を取得することができなくなる。
しかも、この商号の登記については、何ら審査を得ることなく、誰でも登記が可能であることを考慮すれば、不正の目的を持って登記された商号によって商標の登録が制限されることは、商標法の趣旨に反すると共に商業登記法及び会社法の趣旨にも反するものである。
(5)まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号該当性について
商標法第4条第1項第8号は、「その括弧書以外の部分に列挙された他人の肖像又は他人の氏名、名称、その著名な略称等を含む商標は、括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないとする規定である。その趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される。」(最高裁平成15年(行ヒ)第265号平成16年6月8日第三小法廷判決)上、また、「法4条1項は、商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが、需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号、15号等の規定とは別に、8号の規定が定められていることからみると、8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。」(前掲最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決)(平成21年(行ケ)第10005号)。
そこで、上記観点を踏まえて、本件商標について検討するに、本件商標は、前記1のとおり、「株式会社総本家駿河屋」の文字からなるものである。 そして、申立人が提出した甲第4号証によれば、「会社法人等番号/1700-01-013571」「商号/株式会社総本家駿河屋」「本店/和歌山市小倉25番地」が、平成26年11月7日に設立され、2018年(平成30年)8月20日において存続している。
そうすると、本件商標は、その構成中に、本件商標の登録出願時及び査定時に存続していた、他人(株式会社総本家駿河屋/和歌山県小倉25番地)の名称と同一であって、その他人の承諾を得ているとは認められないものである。
したがって、本件商標は、他人の名称からなる商標であって、かつ、当該他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)商標権者の主張について
商標権者は、「引用駿河屋は、不正の目的をもって、登記されたものであり、登録商標第5943016号商標「総本家駿河屋」の存在によって、その使用が制限されている。したがって、仮に本件商標が、登録出願時及び査定時に存在していた、他人(引用駿河屋)の名称と同一であって、その他人の承諾を得ていないものであるとして拒絶されるとすれば、屋号や会社名を登録商標として所有する会社は、後に登記された他人の商号の存在によって、その後、当該屋号や会社名について登録を取得することができなくなる。しかも、この商号の登記については、何ら審査を得ることなく、誰でも登記が可能であることを考慮すれば、不正の目的を持って登記された商号によって商標の登録が制限されることは、商標法の趣旨に反すると共に商業登記法及び会社法の趣旨にも反するものである。」旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号は、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商標をもって商標登録を受けることは、そのこと自体によって、その氏名、名称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし、その他人の承諾を得ている場合を除き、商標登録を受けることができないとする趣旨に解されるべきものなのであり、同号の規定上、商標における使用制限や商号登記の目的などのその他の要件を加味して、その適否を考える余地はないというべきである。
したがって、商標権者の上記主張は、採用することができない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-10-23 
出願番号 商願2017-95259(T2017-95259) 
審決分類 T 1 651・ 23- Z (W30)
最終処分 取消  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2018-05-25 
登録番号 商標登録第6046851号(T6046851) 
権利者 株式会社総本家駿河屋
商標の称呼 ソーホンケスルガヤ、スルガヤ 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
代理人 高橋 浩三 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ