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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2018890073 審決 商標
不服201810015 審決 商標
不服201810016 審決 商標
無効2018890072 審決 商標
不服20187002 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W28
管理番号 1357913 
異議申立番号 異議2018-900240 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-28 
確定日 2019-11-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6049192号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6049192号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6049192号商標(以下「本件商標」という。)は、「AMBLIN」の欧文字を表してなり、平成29年6月7日に登録出願、第28類「家具のミニチュア模型おもちゃ」を指定商品として、同30年5月7日に登録査定、同年6月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、次の1及び2のとおりであり、これらをまとめて「引用商標」という。
1 「AMBLIN」の欧文字を表してなる商標(以下「引用商標1」という。)。
2 別掲1のとおり、黒塗りの長方形内左上に、月及び月の中央部に自転車とそれに乗車する人と荷物のシルエットを重なるように表された図形を配し(以下「月の図形」という。)、その右に2色の線及び青色の「AMBLIN」の欧文字を配し、下段に2色の線及び赤色の「ENTERTAINMENT」の欧文字を配した構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第47号証(枝番号を含む。)を提出した。以下、証拠については「甲1」のように記載する。
1 商標法第4条第1項第8号該当性について
「AMBLIN」は、世界的に著名な映画監督であるスティーブン・スピルバーグ氏が、1980年(昭和55年)に米国カリフォルニア州で設立した映画制作会社である申立人の著名な略称である。
本件商標は、申立人の上記著名な略称と同一の文字からなるものであって、申立人の承諾を得ていないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、申立人が、その1980年(昭和55年)の設立以来38年間の長きにわたり、申立人の主たる業務である映画の制作やその制作に係る映画作品に加え、申立人の制作に係る映画を題材としたおもちゃや人形等の関連商品について、我が国で一貫して使用し続けた結果、申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、また、映画制作会社である申立人自身を指称するいわゆるハウスマークとして、我が国の需要者、取引者の間に広く認識されている商標「AMBLIN」と同一の文字からなる商標である。
本件商標の指定商品である第28類「家具のミニチュア模型おもちゃ」と申立人の著名商標「AMBLIN」が使用される「おもちゃ、人形」とは、いずれも同一の製造者及び販売者のもとで取り扱われるものであって、かつ、その需要者を共通する場合が多いとの取引の実情が認められる。
よって、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する需要者、取引者は、申立人の著名商標「AMBLIN」及びそれに係る商品を連想、想起して、その商品があたかも申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、誤って認識する可能性が極めて高く、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、世界的に著名な映画監督であるスティーブン・スピルバーグ氏が1980年(昭和55年)に米国カリフォルニア州で設立した映画制作会社である申立人が、申立人自身を指称するいわゆるハウスマークとして、また、申立人の主たる業務である映画の制作やその制作に係る映画作品に加え、申立人の制作に係る映画を題材としたおもちゃや人形等の関連商品について、我が国を含む世界中で一貫して使用し続けた結果、申立人及び同人の業務に係る商品若しくは役務を表す商標として、我が国及び外国における需要者の間で著名となっている商標「AMBLIN」と同一の文字からなる商標であって、商標権者は、申立人の著名商標「AMBLIN」に化体した高い名声・信用・評判にフリーライドすることを意図して、本件商標を取得したことが明らかであって、不正の目的をもって使用をするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審における取消理由
当審において、商標権者に対して、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する旨の取消理由を令和元年6月4日付けで通知した。

第5 商標権者の意見
商標権者は、前記第4の取消理由に対して、要旨以下のように意見を述べた。
1 引用商標2について
引用商標2は商標登録されていないから、取消理由の前提が崩れる。
2 引用商標の2の周知著名性について
スティーブン・スピルバーグ氏と映画名は著名であっても、「AMBLIN」は著名でない。
需要者は、米国の映画制作会社名など知らない。「パラマウント」や「ワーナーブラザース」など映画配給会社は、少しは知名度があるかもしれないが、「AMBLIN」と聞いて理解できる需要者はいない。
欧文字「AMBLIN」が映画で映し出される時間は短く、CD等のジャケットにおける引用商標2の表示はかなり小さいため、需要者が一般の消費者であることからすれば、欧文字「AMBLIN」の商標が需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
スティーブン・スピルバーグ氏とその映画が著名であることや興行収入等については定量的に示されているが、「AMBLIN」の商標が需要者の間に広く認識されていたことは、定量的に示されていない。
3 引用商標2の独創性について
引用商標2の図形部分の独創性を論じる必要はない。
「AMBLIN」の語が一般の辞書に載録がないからスティーブン・スピルバーグ氏の独創である、との結論は認められない。同語は一般の日本人に親しまれた語ではないので米国人のスティーブン・スピルバーグ氏の独創である、との結論も受け入れられない。
「AMBLIN」について、「一般に親しまれた語とも認められない」と「商標として需要者の間に広く認識されていた」とは、一貫性がない。
スティーブン・スピルバーグ氏が「amblin」を商標登録せず、会社名を「AMBLIN」のみにしなかったのは、「AMBLIN」が独創ではなく、普通の語であったからと考えるのが妥当である。
4 本件商標と引用商標2との類似性について
取消理由通知では、「引用商標2は、その構成中「AMBLIN」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許される」としている一方、「引用商標2は、その構成中に大ヒットした映画「E.T.」のワンシーンが描かれた月の図形を有するものであるから、極めて印象に残りやすい。」としており、一貫性がない。
引用商標2の「AMBLIN ENTERTAINMENT」から「AMBLIN」を抜き出して、類似性が極めて高いというのは作為的である。
5 本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務との間の関連性、需要者の共通性その他取引の実情について
「本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務とは一定程度の関連性はある」としているが、「一定程度」とは何か、どの程度なら問題とされるか、説明がない。申立人の商品及び役務と関係なくても、映画に関連した何かを販売していれば、権利を認めるかのようになっており、取消理由として不十分である。
「需要者が一般の消費者であることからすれば、取引の際に払われる注意力はさほど高いとはいえない」とされているが、これは、需要者の注意力がさほど高いとはいえないから、需要者が本件商標を見ても、米国の「AMBLIN ENTERTAINMENT」と結び付けて捉えることはない、と解釈すべきである。
本件商標は、その出願中に特許庁から補正指示があり、その指示に従い指定商品を補正し、登録に至ったにも関わらず、登録異議の申立てがされると判断を覆すのは合理的でない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁判所 平成10年(行ヒ)第85号判決)。
(2)引用商標2の周知著名性について
申立人の提出に係る証拠、職権による調査(別掲2)及び申立人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、米国の映画監督であるスティーブン・スピルバーグ氏らが設立した米国の映画制作会社である(甲2及び甲3)。
イ 申立人は、1982年に公開の「E.T.」を始め(甲4)、これまで多くの映画作品を制作し(甲2)、高い興行収入を上げている作品も多く(甲11)、これらのうち、1983年に「E.T.」、1990年に「バック・トゥ・ザ・フューチャーPart2」、1993年に「ジュラシック・パーク」、2015年に「ジュラシック・ワールド」がそれぞれ年間映画興行収入ランキング(歴代国内年間)1位となっている(甲13)。
ウ 引用商標2の構成中、月の図形部分は、映画「E.T.」のワンシーンを描いたものである(甲2、甲30の20、甲30の22及び甲30の23)。
エ 映画「E.T.」は、我が国では1982年12月に公開された(甲4)。前売り券の販売数は、約170万枚と当時としては記録的なものであって(甲4)、各地の映画館で徹夜組まで続出する事態となり(甲5)、パンフレットも200万冊を売り上げ(甲4)、「E.T.人形」など関連商品も飛ぶように売れた(甲5)。そして、我が国での興行収入は135億円に達し、また、配給収入は96億円で、「もののけ姫」(1997年公開)に抜かれるまで歴代1位であった(甲4)。
オ 1984年に我が国で公開された申立人の映画「グレムリン」(別掲2)以降、申立人が制作した全ての映画作品のオープニングタイトル又はエンディングタイトルにおいて、引用商標2がスクリーン上に大きく映し出された(甲6の1ないし甲6の7及び申立人の主張)。
カ 申立人の映画「ジュラシック・ワールド」が2016年の年間映画DVDレンタルランキングにおいて、洋画で年間1位となった(甲14)。
キ 申立人の映画「E.T.」及び「ジュラシック・ワールド」の光ディスクのパッケージには、引用商標2が表示されており(甲15及び甲16)、申立人の他の映画作品のDVD等のパッケージにも引用商標2が表示されている(申立人の主張)。
ク 申立人の映画「E.T.」、「ジュラシック・パーク」及び「グレムリン」のサウンドトラック音楽のCD又はレコードのジャケットには、引用商標2が表示されている(甲21ないし甲23)。
ケ 映画のテーマパークである「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」では、申立人の映画「ジュラシック・パーク」に関連したおもちゃ等が販売されており、当該おもちゃ等又はそのパッケージに「Amblin」の欧文字が表示されている(甲28の1ないし甲28の23)。
コ 前記アないしケによれば、申立人は、我が国における年間映画興行収入ランキング1位となった作品を含め、多くの映画作品を制作しており、1984年以降、これらの映画作品のオープニングタイトル又はエンディングタイトルには、引用商標2がスクリーン上に大きく映し出されていたことが認められる。また、申立人の映画のDVD等のパッケージやサウンドトラック音楽のCD等のジャケットにも、引用商標2が表示されていることが認められる。
そして、引用商標2は、その構成中に大ヒットした映画「E.T.」のワンシーンが描かれた月の図形を有するものであるから、引用商標2に接する者に対して、極めて印象に残りやすいものといえる。
また、申立人の映画に関連したおもちゃ等が販売されており、当該おもちゃ等又はそのパッケージに「Amblin」の欧文字が表示されている。
そうすると、たとえ、映画の上映においてオープニングタイトル又はエンディングタイトルが映し出される時間が短く、また、映画のDVD等のパッケージやサウンドトラック音楽のCD等のジャケットにおける引用商標2の表示が小さいとしても、申立人は多くの映画作品を制作しており、ヒット作も多いことから、引用商標2に接する者や機会が極めて多いといえ、申立人の映画に関連したおもちゃ等により「Amblin」の欧文字に接する者や機会も相当程度あるといえること、また、引用商標2は、これに接する者に対して極めて印象に残りやすいことをも踏まえれば、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る映画関連の商品及び役務、すなわち、「映画の上映」及び「映画を記録したDVD等」を表示する商標として需要者の間に広く認識されていたというのが相当である。
(3)引用商標2の独創性について
引用商標2は、別掲1のとおりの構成からなるものである。
引用商標2の構成中、月の図形部分は、大ヒットした映画「E.T.」のワンシーンが描かれたものであり、その構成態様において独創性の程度が高いといえる。
また、引用商標2の構成中、中央に大きく表された「AMBLIN」の文字(語)は、一般の辞書に載録がなく(甲34)、一般に親しまれた語とも認められないものであるから、該文字部分についても、独創性の程度が高いといえる。
したがって、引用商標2の独創性の程度は、全体としても高いといえる。
(4)本件商標と引用商標2との類似性について
本件商標は、「AMBLIN」の欧文字を表してなるものであり、これより「アンブリン」の称呼を生じるものであり、該文字(語)は、一般の辞書に載録がなく、一般に親しまれた語とも認められないものであるから、特定の観念を生じないものである。
一方、引用商標2は、別掲1のとおり、黒塗りの長方形内左上に、月の図形を配し、その右に2色の線及び「AMBLIN」の欧文字を配し、下段に2色の線及び「ENTERTAINMENT」の欧文字を配した構成からなるものである。
そして、引用商標2は、その構成中「AMBLIN」の文字部分がやや中央に大きな文字で顕著に表されているものであるから、当該部分が取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
そうすると、引用商標2は、その構成中「AMBLIN」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
そして、引用商標2の構成中「AMBLIN」の文字部分は、これより「アンブリン」の称呼を生じるものであり、該文字(語)は、一般の辞書に載録がなく、一般に親しまれた語とも認められないものであるから、特定の観念を生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標2の構成中「AMBLIN」の文字部分とを比較すると、両者はいずれも特定の観念を生じないため、観念において比較できないとしても、「AMBLIN」のつづりを共通にするため、外観が近似し、かつ、「アンブリン」の称呼を共通にするものであるから、両者の類似性の程度は極めて高いといえる。
したがって、本件商標と引用商標2との類似性の程度は、極めて高いといえる。
(5)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務との間の関連性、需要者の共通性その他取引の実情について
本件商標の指定商品は「家具のミニチュア模型おもちゃ」であり、一方、申立人の業務に係る商品及び役務は、「映画の上映」及び「映画を記録したDVD等」である。
ところで、映画においては、一般に、映画に登場する人物やキャラクターの人形、映画で登場人物が使用するグッズなど、その映画に関連した各種の商品が販売されている実情が認められる。
申立人制作の映画においても、「ジュラシック・パーク」に関連したおもちゃ等が販売されていることが認められる。
そうすると、本件商標の指定商品「家具のミニチュア模型おもちゃ」と申立人の業務に係る「映画の上映」及び「映画を記録したDVD等」とは、映画に登場する人物やキャラクターの人形など、その映画に関連した各種の商品が販売されている実情があることからすると、一定程度の関連性はあるものといえる。
また、本件商標の指定商品の需要者と申立人の業務に係る商品及び役務の需要者とは、いずれも一般の消費者であるといえるため、需要者は共通している。
そして、需要者が一般の消費者であることからすれば、取引の際に払われる注意力はさほど高いとはいえない。
(6)混同を生ずるおそれについて
前記(2)ないし(5)のとおり、引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものであり、その独創性が高いこと、本件商標と引用商標2との類似性の程度が極めて高いこと、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務とは、一定程度の関連性があり、その需要者を共通にすること、取引の際に払われる需要者の注意力はさほど高いとはいえないことからすると、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者は、引用商標2を連想、想起して、当該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標というべきである。
(7)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標権者の主張について
(1)引用商標2について
商標権者は、引用商標2は商標登録されていない旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号は「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」と規定されており、他人の業務に係る商品又は役務を表示する商標が商標登録されていることは、同号の適用の要件とはされていない。
(2)引用商標の2の周知著名性について
商標権者は、引用商標2の周知著名性について、前記第5の2のとおり、種々主張している。
しかしながら、たとえ、映画の上映においてオープニングタイトル又はエンディングタイトルが映し出される時間が短く、また、映画のDVD等のパッケージやサウンドトラック音楽のCD等のジャケットにおける引用商標2の表示が小さいとしても、映画の最初と最後(オープニングタイトル及びエンディングタイトルの部分)は印象に残りやすい部分であること、月の図形を含む引用商標2は極めて印象に残りやすいこと、申立人は多くの映画作品を制作しており、ヒット作も多いため、引用商標2に接する者や機会が極めて多いことからすると、引用商標2は需要者の間に広く認識されているというのが相当である。
(3)引用商標2の独創性について
商標権者は、引用商標2の独創性について、前記第5の3のとおり、種々主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、前記1(1)のとおり、他人の表示の独創性の程度などに照らし、総合的に判断されるものであるが、ここでいう「独創性」とは、文字においては、当該文字(語)が既成の語であるか造語であるか、又は一般に親しまれた語であるか否か、ということであり、図形においては、ありふれた図形であるか特徴のある図形であるか、又は一般的に使用されている図形であるか否か、ということである。商標権者が主張するような、商標として需要者の間に広く認識されたかということではなく、また、誰の独創であるかということでもない。
そして、引用商標2は、その構成中「AMBLIN」の文字(語)は、一般の辞書に載録がなく、一般に親しまれた語とも認められないものであり、また、その構成中、月の図形部分は、大ヒットした映画「E.T.」のワンシーンが描かれたものであるから、特徴のある図形であって、一般的に使用されている図形ではない。
そうすると、引用商標2の独創性の程度は、全体として高いというべきである。
なお、商標権者は、スティーブン・スピルバーグ氏が「amblin」を商標登録せず、会社名を「AMBLIN」のみにしなかった旨主張するところがあるが、これらの事情は、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性に関係するものではない。
(4)本件商標と引用商標2との類似性について
商標権者は、本件商標と引用商標2との類似性について、前記第5の4のとおり、種々主張している。
しかしながら、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されないが、他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである(知的財産高等裁判所 平成22年(行ケ)第10139号判決)。
引用商標2は、別掲1のとおり、左上に、月の図形を配し、その右に2色の線及び「AMBLIN」の欧文字を配し、下段に2色の線及び「ENTERTAINMENT」の欧文字を配した構成からなるものである。
そして、引用商標2は、その構成中「AMBLIN」の文字部分がやや中央に色彩を異にした大きな文字で顕著に表されているものであるから、その構成上、当該文字部分は、他の部分に比して、見る者がより注意を引くものであるといえる。
そうすると、引用商標2は、その構成中、月の図形部分が大ヒットした映画「E.T.」のワンシーンを描いたものであって、極めて印象に残りやすいものであるとしても、引用商標2の構成からして、「AMBLIN」の文字部分もなお取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとみるのが相当である。
そうすると、引用商標2は、その構成中「AMBLIN」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
(5)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務との間の関連性、需要者の共通性その他取引の実情について
商標権者は、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務との間の関連性、需要者の共通性その他取引の実情について、前記第5の5のとおり、種々主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、前記1(1)で示した各事項を総合的に判断するものであり、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務との間の関連性のみによって判断するものではないから、当該関連性がどの程度なら問題とされるかというものではない。
また、本件商標の指定商品の需要者と申立人の業務に係る商品及び役務の需要者とは、いずれも一般の消費者であるといえるため、取引の際に払われる注意力はさほど高いとはいえないことからすると、前記1において認定した引用商標2の周知著名性及び独創性の程度、本件商標と引用商標2との類似性の程度、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品及び役務との間の関連性並びに需要者の共通性を踏まえると、当該需要者が本件商標と引用商標2とを明確に区別するのは困難であるといわなければならない。
なお、商標権者は、本件商標は、その出願中に特許庁からの指示に従い指定商品を補正し、登録に至ったにも関わらず、登録異議の申立てがされると判断を覆すのは合理的でない旨主張することころがあるが、審査の過程において職権による調査では探知できなかった証拠が登録異議の申立てにおいて新たに提出され、これに基づいて審査における判断とは異なる判断が当審においてなされたとしても、このこと自体が合理的でないというものではない。
(6)したがって、商標権者の主張は、いずれも採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 引用商標2(色彩については原本参照。)


別掲2
「ウィキペディア」のウェブサイトにおいて、「グレムリン(映画)」の見出しの下、「製作会社」の欄に「アンブリン・エンターテインメント」の記載があり、「公開」の欄に日本の国旗の図形と「1984年12月8日」の記載がある。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/グレムリン_(映画))



異議決定日 2019-09-30 
出願番号 商願2017-82217(T2017-82217) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W28)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小林 大祐内田 直樹福田 洋子 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 小出 浩子
山田 啓之
登録日 2018-06-08 
登録番号 商標登録第6049192号(T6049192) 
権利者 田中 啓嗣
商標の称呼 アンブリン、アムブリン 
代理人 小林 奈央 
代理人 田中 克郎 
代理人 伊藤 亮介 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 佐藤 俊司 

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