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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W02 審判 全部申立て 登録を維持 W02 |
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管理番号 | 1357898 |
異議申立番号 | 異議2019-900060 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-02-15 |
確定日 | 2019-12-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6100376号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6100376号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6100376号商標(以下「本件商標」という。)は、「CHINAMATE」の欧文字を標準文字で表してなり、平成30年2月8日に登録出願、第2類「中国で製造又は販売される印刷機用インクカートリッジ,中国で製造又は販売される印刷機用トナーカートリッジ,中国で製造又は販売されるインクジェットプリンター用インクカートリッジ,中国で製造又は販売されるインクジェットプリンター用トナーカートリッジ」を指定商品として、同年11月22日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「CHINAMATE」の欧文字からなり、同人が「トナーカートリッジ、インクカートリッジなど」について使用をしているとするものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同法第3条第1項柱書に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第80号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであること ア 申立人について 申立人(英語名称「CHINAMATE TECHNOLOGY CO.,LTD.」)は、2007年1月に設立され、中国広東省珠海市を拠点とする、プリンタ消耗品の研究開発、製造、販売を専門とする企業であり(甲2?甲7)、毎月100万以上のトナーカートリッジと100万以上のインクカートリッジを生産している。主力製品は、トナーカートリッジ、インクカートリッジ、インクなどであり(甲3?甲7)、HP、キヤノンなど1,000以上のモデルのプリンタをカバーしている。申立人の製品は世界中に輸出され、国内外の顧客に広く受け入れられている。 申立人の製品は、ブラジル、インド、ロシア、日本、アラブ首長国連邦、スペイン、アメリカ合衆国などに輸出されている。日本には、2012年ごろを最初に、現在も継続して輸出されている(甲32?甲37)。 日本において申立人の商品は、取引業者を通じて販売されるほか、申立人はAmazonの日本版に出店及び出品しているので、当該サイトを通じて購入することができる(甲80)。 申立人は、「CHINAMATE」の「C」と「M」を組み合わせた「CM」の文字をリボンのようにデザインした図形と、「CHINAMATE」の文字を自らのハウスマークとして広く使用してきた(甲3?甲8、甲38?甲54、甲56?甲77)。当該ハウスマークの図形部分に関して、アルゼンチン、カナダ、中国、日本、マレーシア、ニュージーランド、南アフリカ共和国などにおいて登録商標を有している(甲9?甲31)。 イ 引用商標の使用 申立人は、自らの商号である「CHINAMATE」商標を、製品カタログ、製品やその包装、社屋や社内、名刺やパンフレット、ホームページ、及び国内外の展示会や雑誌の広告などに広く使用してきた(甲3?甲8、甲38?甲77)。 ウ 本件商標と引用商標との対比 引用商標の「CHINAMATE」の文字は、申立人の英語での社名の主要部であって、申立人を表すハウスマークである。構成は「CHINA」と「MATE」を組み合わせた造語である。 本件商標は、申立人のハウスマークそのものであって、指定商品についても申立人の業務に係る商品と同一である。 エ 商標権者及び本件商標の出願の経緯について 申立人は、日本の取引業者から知らされ本件商標の存在を知るに至った。 商標権者は「トラアークス株式会社」の取締役であり、同社の事業内容の一つに「インク、トナー及びそのカートリッジの輸出入、売買及びリサイクル事業」との記載がある(甲78)。Amazonの日本版で、実際に「トラアークス」の名前でトナーカートリッジが販売されている(甲79)。 申立人は、商標権者と直接的な取引関係にない。しかしながら、上記のことから、商標権者は申立人の業務と同一の分野の業務に属し、インク、トナー及びそのカートリッジの取引について相当熟知する者であるといえる。 上述のように、本件商標は造語であって、申立人のハウスマークそのものの商標である。このような一種の造語である商標を、商標権者が偶然にも採用したということなどはあり得ない。商標権者は、申立人のハウスマークを勝手に商標登録出願したものであり、申立人の商標を知った上で、当該商標が我が国で商標登録されていないことを奇貨として、申立人が我が国へ参入するのを阻止する目的で、剽窃的及び先取り的に出願されたものであり、申立人の商標が日本や諸外国で獲得した顧客吸引力や信頼等の利益を不正に得る目的、又は、先願主義を採用する我が国の法制度を利用して申立人の商標が登録されないようにすることにより、申立人に損害を与える目的で、不正の目的をもって本件商標を使用する若しくは使用しようとするものであることは明白である。 したがって、本件商標の出願の経緯には、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。 オ 商標法第4条第1項第7号に該当するものであること 上記したように商標権者は、引用商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、申立人の商標であることを明白に認識しながら、申立人に何の断りもなく、剽窃的及び先取り的に出願、登録を行ったものといえる。 このように、本件商標は、登録に至る出願の経緯において妥当性を欠くものがあり、本号に係る知財高裁判決(平成17年(行ケ)第10349号)で判示された「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当する。 また、同じく知財高裁判決(平成21年(行ケ)第10297号)で判示されているように、申立人の引用商標が周知・著名であったか否かにかかわらず、本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (2)商標法第3条第1項柱書の規定に違反して登録されたものであること 上記のとおり、本件商標は、申立人の商号の一部であって、申立人を表示するハウスマークである。商標権者は、もし自らの業務を識別するために使用する商標であるならば、他社のハウスマークを登録出願するなどということはまずあり得ない。 したがって、商標権者が本件商標を使用する意思がないことは、現在においてはおろか、将来においても明らかであるから、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の規定に違反して登録されたものである。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号について ア 申立人及び引用商標について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人の英語名称は「CHINAMATE TECHNOLOGY CO.,LTD.」であること、申立人は引用商標を使用し、トナーカートリッジ、インクカートリッジなどの商品の製造、販売を行っていること、及び少なくとも2017年6月頃から2018年9月頃まで我が国に同人の商品を輸出したことなどがうかがえる (甲2?甲8、甲32?甲37)ものの、引用商標を使用した申立人の商品の我が国における売上高、販売数量など販売実績を示す証左は見いだせないから、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 イ 不正の目的について 申立人は、本件商標と引用商標は同一の文字よりなるものであり、商標権者が偶然にも、申立人のハウスマークであり一種の造語である引用商標と同一の文字からなる商標を採用したということはあり得ないから、商標権者は引用商標を知った上で、それが我が国で商標登録されていないことを奇貨として、申立人が我が国へ参入するのを阻止する目的、引用商標の顧客吸引力や信頼にただ乗りする目的又は申立人に損害を与える目的など不正の目的をもって使用するものであるなどとして、本件商標の登録出願の経緯には社会的妥当性を欠くものがあり登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである旨主張している。 しかしながら、本件商標と引用商標は同一の文字からなるものであるが、引用商標(及び本件商標)は、構成文字全体としては既成語ではないものの、我が国で親しまれた英単語「CHINA」と「MATE」を結合してなるものであるから、独創性の程度は高いものではなく、また、提出された証拠によっては、本件商標は申立人が我が国へ参入するのを阻止する目的など不正の目的をもって使用するもの、すなわち本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあると認めるに足りる事情は見いだせない。 また、他に本件商標が公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 ウ 本号における商標権の帰属等をめぐる私的な問題 (ア)本号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」と規定し、商標自体の性質に着目した規定となっているものの、商標が付された商品の主体とはおよそ関係のない第三者が無断で商標登録をしたような場合、その出願経緯等の事情いかんによっては、本号に該当すると評価し得ることはある(主体に着目した公序良俗違反)。 しかしながら、先願主義を採用している我が国の商標法の制度趣旨、及び商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていることなどに照らせば、商標自体に公序良俗違反のない商標が本号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。 そして、本号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」をこのような私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるから、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。 そうすると、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合は、あくまでも、出願人(商標権者)と本来商標登録を受けるべきと主張する者との当事者同士の商標権の帰属等をめぐる私的な問題として解決すべきであって、特段の事情のある例外的な場合にはあたらないというべきである。(参考:東京高裁判決 平成14年(行ケ)第616号、知財高裁判決 平成19年(行ケ)第10391号) (イ)そこで、これを本件についてみると、本件商標の登録出願の日は上記1のとおり平成30年2月8日であり、上記アのとおり申立人は2017年(平成29年)6月頃から我が国に引用商標を使用した同人の商品を相当数輸出していたことがうかがえ、また、申立人は2012年(平成24年)頃から我が国に輸出していると主張していることからすれば、申立人は、本件商標の登録出願の日前に、我が国に引用商標を商標登録出願する機会は十分にあったにもかかわらず、それをしていなかったといえる。 そうすると、本件商標は、かかる観点からもみても「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものといえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。 (2)商標法第3条第1項柱書について 本件商標の指定商品は、上記1のとおり第2類「中国で製造又は販売される印刷機用インクカートリッジ,中国で製造又は販売される印刷機用トナーカートリッジ,中国で製造又は販売されるインクジェットプリンター用インクカートリッジ,中国で製造又は販売されるインクジェットプリンター用トナーカートリッジ」である。 そして、本件商標の商標権者は平成24年2月に設立された「トラアークス株式会社」の代表取締役であり、同社の「目的」に「インク、トナー及びそのカートリッジの輸出入、売買及びリサイクル事業」が含まれていることが認められる(甲78)。 そうすると、本件商標の指定商品は「トラアークス株式会社」の事業に含まれるものといえ、かつ、商標権者は同社の代表取締役であることからすれば、商標権者(出願人)は、自己の業務に係る商品について本件商標の登録出願の日はもとより登録査定時においても本件商標を使用する意思があったものとみるのが合理的である。 また、他に商標権者(出願人)が本件商標を使用する意思がなかったものと認め得る事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反するものといえない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書及び同法第4条第1項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-11-08 |
出願番号 | 商願2018-15948(T2018-15948) |
審決分類 |
T
1
651・
1-
Y
(W02)
T 1 651・ 22- Y (W02) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 早川 真規子 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 石塚 利恵 |
登録日 | 2018-11-22 |
登録番号 | 商標登録第6100376号(T6100376) |
権利者 | 呉 龍涛 |
商標の称呼 | チャイナメート、メート |
代理人 | ▲吉▼川 俊雄 |