• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W10
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W10
管理番号 1357026 
審判番号 不服2018-15868 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-29 
確定日 2019-11-07 
事件の表示 商願2017-58653拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「HOME AED」の文字を標準文字で表してなり,第10類「除細動器,自動体外式除細動器」を指定商品として,平成29年4月25日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は,「本願商標の『HOME AED』の文字は,『家庭用のAED(自動体外式除細動器)』程の意味合いを容易に認識させるものであるところ,『AED(自動体外式除細動器)』に関しては,2004年7月から一般市民にも使用が認められ,それとともに公共施設や民間施設への普及が進められることになり,さらに『家庭用のAED(自動体外式除細動器)』が開発されて,実際に販売,レンタルされている事実が認められる。そうすると,本願商標をその指定商品中『家庭用のAED(自動体外式除細動器)』に使用した場合は,これに接する取引者,需要者は,その商品の品質を表示したものとしか理解,認識し得ないものといわざるを得ず,また,前記商品以外の商品に使用するときは,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものというべきである。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和元年6月13日付け証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の回答の要旨
1 証拠調べ通知書の(1)「辞書における載録例」に関しては,特に異論はない。
2 証拠調べ通知書の(2)「本願商標の指定商品を取り扱う業界において『HOME AED』,または,『ホームAED』の文字が使用されている事実について」に関しても,ここで引用された事実への異論はない。しかしながら,ここで引用された4つの事実は,本願商標と,その指定商品の品質を,「直接的かつ具体的」に表示していることや「取引上普通に使用されている」ことを裏付けてはいない。
3 証拠調べ通知書の(3)「本願商標の指定商品を取り扱う業界において,家庭用のAEDが取引されている事実について」に関しても,ここで引用された事実への異論はない。しかしながら,ここで引用された3つの事実は,あくまでも,家庭用のAEDが取引されていることを示したものであって,本願商標「HOME AED」が,識別力が無いことを示すものとはなっていない。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)本願商標について
ア 本願商標は,「HOME AED」の文字を標準文字で表してなるものであるところ,その構成中の「HOME」の文字は,例えば別掲(1)の辞書に記載されているように「家庭」の意味を有する我が国で親しまれている平易な英語であり,また,「AED」の文字は,「自動体外式除細動器」等の意味を有する英語の「Automated External Defibrillator」の略称であり,本願の指定商品との関係において,商品の普通名称を表したものと認められる。
そうすると,本願商標は,「HOME」及び「AED」の文字を組み合わせてなるものと容易に認識,把握されるとみるのが相当であり,これらを一連に表した「HOME AED」の文字からは,各語意に相応して「家庭用の自動体外式除細動器(AED)」程の意味合いを容易に認識させるものと認められる。
イ 当審が職権で調査したところ,本願商標の指定商品の分野において,たとえば,インターネット情報に,「自宅やオフィスでAEDを備えるHome AEDも普及してきている。」の記載(別掲(2)ア),「最近は,自宅用に心肺蘇生法の音声指導とAEDがついたホームAEDも発売されています。」の記載(別掲(2)イ),「三年くらい前から,このホームAEDが普及し出した。」(別掲(2)ウ),「ホームAEDが販売されるなど広範な普及を示している。」(別掲(2)エ)等があるように,「HOME AED」,または,これに通じる「ホームAED」の各文字が,「家庭用の自動体外式除細動器(AED)」を指称するものとして使用されている実情が認められる。
さらに,インターネット情報に,「一般家庭向け専用器として自動体外式除細動器 AED-3101 カルジオライフを発売しました。」の記載(別掲(3)ア),「機器故障や消耗品の交換時期をオンラインで管理する家庭向け自動体外式除細動器(AED)『セコム・MyAED』の販売を始めた。」の記載(別掲(3)イ),「一般家庭向けに自動体外式除細動器(AED)の新製品を発売した。」の記載(別掲(3)ウ)等があるように,家庭で使用するための自動体外式除細動器(AED)が販売されている実情が認められる。
ウ 以上よりすれば,本願商標は,これをその指定商品に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,自動体外式除細動器(AED)の一種としての「家庭用のAED」であること,すなわち,商品の品質を表示したものとして認識させるにとどまり,自他商品の識別標識としては認識し得ないというのが相当である。
したがって,本願商標は,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
また,本願商標は,その指定商品中の「家庭用の自動体外式除細動器」以外の「除細動器,自動体外式除細動器」に使用するときは,これがあたかも「家庭用の自動体外式除細動器」であるかのごとく,商品の品質の誤認を生じるといえるものであるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,別掲(2)の事実は「HOME AED」又は「ホームAED」という文字が,単に使用されたことを示した数少ない事例に過ぎず,本願商標と,その指定商品の品質を「直接的かつ具体的」に表示していることや「取引上普通に使用されている」ことを裏付けてはおらず,また,商標法第3条第1項第3号の適用の有無については,審決時(査定時)に判断をすべきところ,12年も前の事実をもって,本願の識別力を否定する根拠にならない旨を主張する。
さらに,請求人は,別掲(3)の事実はあくまでも,家庭用のAEDが取引されていることを示したものであって,本願商標が指定商品との関係において識別力が無いとの根拠にならない旨を主張する。
しかしながら,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには,我が国の取引者,需要者が商品の品質を表示するものとして認識するものであれば足りるといえるものであり,実際に商品の品質を表示するものとして使用されていることまでは必要としないと解されるところ,上記(1)のとおり,「HOME AED」の文字が「家庭用の自動体外式除細動器(AED)」程の意味合いを容易に認識させるものと認められること,実際の取引においても,「HOME AED」又は「ホームAED」の文字が,本願商標に係る指定商品との関係において,「家庭用の自動体外式除細動器(AED)」を指称する語として,普通に使用されている実情が見受けられること(別掲(2))及び「家庭用の自動体外式除細動器(AED)」が実際に販売されている実情があることからすれば,「HOME AED」の文字は,単に商品の品質を表示するものとして認識されるというべきである。
また,実際に「HOME AED」又は「ホームAED」の文字が掲載されている記事が,12年前のものであったとしても,上記判断が左右されるものではない。
イ 請求人は,過去の商標の登録例を挙げて,本願商標もそれらと同様に,登録されるべきである旨主張する。
しかしながら,登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるか否かの判断は,当該商標登録出願の査定時,または,審決時において,当該商標の構成態様と指定商品との関係や,その商品の分野における取引の実情をも踏まえて,個別具体的に判断されるべきものであるところ,請求人の挙げた登録例は,商標の構成態様が本願商標とは異なるもの,または,本願商標を使用する商品とは異なる商品又は役務である点において,本願とは,事案を異にするものというべきであり,また,過去の登録例が存在することをもって,上記判断が左右されるものではない。
ウ したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 当審における証拠調べ通知で開示した事実
(1)辞書における載録例
ア weblio辞書のウェブサイトの「大辞林」(株式会社三省堂)において,「ホーム【home】」の項に「1 多く他の外来語と複合して用いる。(ア)家庭。家。(イ)故郷。本国。祖国。」の記載がある。
(https://www.weblio.jp/content/HOME)
イ weblio辞書のウェブサイトの「大辞林」(株式会社三省堂)において,「AED 【automated external defibrillator】」の項に「自動体外式除細動器。突然,心停止状態に陥った人に用いる救命装置。心電図を自動計測して,必要な場合は電気ショックを与える。多くの装置は音声指示に従って簡単に操作できる。」の記載がある。
(https://www.weblio.jp/content/AED)
ウ weblio辞書のウェブサイトの「健康用語辞典」(厚生労働省)において,「AED」の項に「読み方:えーいーでぃー 別名:自動体外式除細動器 【英】:Automated External Defibrillator心臓の致死的な不整脈を感知して電流を流し,心臓を正常に戻すことができる器械。」の記載がある。
(https://www.weblio.jp/content/AED)

(2)本願商標の指定商品を取り扱う業界において「HOME AED」又は「ホームAED」の文字が使用されている事実について
ア 「公益財団法人日本心臓財団」の「健康ハート特別号 医師向け AEDの賢い選び方」のウェブサイトの資料の4頁に,「AED普及と日本の動向」の見出しの下,「心臓突然死が年間30万人を超えるといわれる米国では,非医師による除細動(Public Access Defibrillation;PAD)が急速に普及しつつある。・・・AEDの市場も拡大,低価格で一般にも使いやすい新型機種が登場し,自宅やオフィスでAEDを備えるHome AEDも普及してきている。」及び「2004年7月,ようやく日本でも一般市民によるAEDの使用が解禁されたことにより,空港や競技場などへの配備が本格化し,今後は心臓病をもった患者の家庭や学校などへも加速度的に普及するとみられる。」の記載がある。
(https://www.jhf.or.jp/kenkoheart/image/aed/heart_aed.pdf)
イ 2007年3月28日付け「北海道新聞朝刊」の16ページに,「<AED その時どうする?>浅井康文*15*勇気をもって救命処置を」の見出しの下,「・・・AEDは,主に公共機関や大勢の人が集まる場所に設置されるようになりました。しかし,突然の心停止の発生場所をみると,自宅が68%で,公衆の場が8%に過ぎません。そこで,最近は,自宅用に心肺蘇生法の音声指導とAEDがついたホームAEDも発売されています。」の記載がある。
ウ 2005年11月6日付け「日本経済新聞朝刊」の9ページに,「東京都済生会中央病院副院長三田村秀雄氏(3)AED,あるだけではダメ(医師の目)」の見出しの下,「心筋梗塞を患ったことのある七十代後半の男性が,AEDを自宅用に購入した。素人でも使えるように工夫された救命用小型除細動器だ。・・・米国では三年くらい前から,このホームAEDが普及し出した。・・・AEDを自宅だけでなく,会社に用意しておくことも欧米では珍しくない。」の記載がある。
エ 2004年11月16日付け「日刊工業新聞」の3ページに,「視点/救命に効果・自動体外式除細動器-全国に早期普及を」の見出しの下,「突然,心停止した人の救命に威力を発揮するのが自動体外式除細動器(AED)という医療機器。従来は医師など一部にその使用が限られていたが,7月からその場に居合わせた一般市民にも使用が認められ全国的な普及が期待されている。・・・AED先進国の米国では航空機へのAED搭載をはじめ,空港施設やカジノなど不特定多数が集まる場所に設置が進む一方,ホームAEDが販売されるなど広範な普及を示している。」の記載がある。

(3)本願商標の指定商品を取り扱う業界において,家庭用のAEDが取引されている事実について
ア 「日本光電工業株式会社」のウェブサイトの2018年12月7日付けプレスリリースに,「製品情報 一般家庭向け 自動体外式除細動器 AED-3101 カルジオライフを新発売」の見出しの下,「日本光電はこの度,一般家庭向け専用器として自動体外式除細動器 AED-3101 カルジオライフを発売しました。」の記載がある。
(https://www.nihonkohden.co.jp/news/18120701.html)
イ 2018年12月25日付け「日刊工業新聞」の12ページに,「セコム,家庭用AED投入 機器故障などオンライン管理」の見出しの下,「セコムは機器故障や消耗品の交換時期をオンラインで管理する家庭向け自動体外式除細動器(AED)「セコム・MyAED」の販売を始めた。レンタル方式のAEDを各家庭での仕様に合わせてパッケージ化したサービス。AEDを収納するケースに,LTE端末を収納することによってセコムが機器の異常や消耗品の交換時期などを管理する。「セコム・MyAED」は必要最小限の付属品を備えるため,一般向けAEDと比べてコンパクトなケースを採用。家庭でのさまざまな置き場所を想定して,どの向きで収納してもAEDと分かるデザインにした。」の記載がある。
ウ 2018年12月18日付け「化学工業日報」の7ページに,「日本光電,一般家庭向けAED発売,無線LAN機能搭載」の見出しの下,「医療機器メーカーの日本光電は,一般家庭向けに自動体外式除細動器(AED)の新製品を発売した。」の記載がある。



審理終結日 2019-09-03 
結審通知日 2019-09-04 
審決日 2019-09-25 
出願番号 商願2017-58653(T2017-58653) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W10)
T 1 8・ 272- Z (W10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 山根 まり子
大森 友子
商標の称呼 ホームエイイイデイ、ホーム、エイイイデイ 
代理人 猪狩 充 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ