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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X35
管理番号 1356935 
審判番号 取消2018-300332 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-05-25 
確定日 2019-10-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5413492号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5413492号商標(以下「本件商標」という。)は、「Violet」の欧文字を横書きし、その上段に、やや小さく「ヴィオレ」の片仮名を併記した構成からなり、平成22年9月10日に登録出願、「印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を「小売等役務」ということがある。)を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同23年5月20日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成30年6月6日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、同27年6月6日ないし同30年6月5日(以下「要証期間内」という場合がある。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、「印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第35類「印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「本件役務」ということがある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから、上記役務について、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用役務について
ア 被請求人の提出した証拠について
被請求人が提出したフローチャート(乙2)によれば、「ギフト購入者」から受注した「代理店」から「受取り手」の注文に応じて商品をその「受取り手」に発送する一連の流れがあるかのように見えるが、当該フローに関して、被請求人が提出した証拠は、(A)被請求人と「代理店」との取引関係を示す、被請求人宛の注文書(乙5他)と「代理店」宛の請求書(乙6他)、(B)「受取り手」が送付したと思われる「ギフト券」(乙7他)だけである。
すなわち、被請求人は、1)「ギフト購入者」が「代理店」に発注した事実、2)「代理店」が「ギフト購入者」へ納品した事実、3)「ギフト購入者」が「受取り手」へ贈答した事実、4)被請求人が「受取り手」に商品を送付した事実を示す直接的な証拠を提出していない。
つまり、上記(A)の取引書類は、被請求人が「代理店」と取引していることを示す。ちなみに、上記請求書には、カタログ代の他、カタログギフトシステム料、カタログギフトツール代が含まれている(乙6他)。被請求人は、カタログギフトについて、「代理店」から利益を上げている。したがって、「代理店」への発注、「代理店」から「ギフト購入者」への納品といった「代理店」が取り扱うことに関与する必要性に乏しい。このため、その事実を直接証明するような書類を持つ必要性もない。まして、「ギフト購入者」が「受取り手」にカタログを贈呈したかどうかについては関知できない。
被請求人は、「ギフト券」が送られてきて初めて「受取り手」の存在を知る。その「ギフト券」を送った「受取り手」と、その「受取り手」のために「ギフト購入者」がカタログギフトを発注した、という繋がりを証明することは困難であろう。被請求人が提出した証拠にその事実を示すものはない。
要するに、被請求人はフローチャートで示す一連の流れをコントロールしていない。被請求人と最終的に商品を受取る「受取り手」との間には一連の取引形態が成立していない。かかる状況において、被請求人が「受取り手」に対して「本件役務」を提供したとはいえない。被請求人が商取引を行っている相手は「代理店」である。
イ カタログギフトの目的・役割について
(ア)「ギフト購入者」に対して
カタログギフトの目的は、「ギフト購入者」が贈答品を「受取り手」に渡すことを代行する役務を提供することである。
「ギフト購入者」は、本来、そのカタログを受取る「受取り手」に対して、冠婚葬祭への参列に対する感謝等の意味合いで特定の贈答品を選んで手渡したいところであるが、その贈答品を気に入るかどうか、本当に必要なものかどうかは「ギフト購入者」にはわからない。そこで、「ギフト購入者」は、「受取り手」が商品を選べるようにカタログを贈呈する。「ギフト購入者」は、多種多様な商品(役務提供も含む)が掲載されたカタログを贈呈するだけでよく、カタログに「受取り手」が気に入った商品があれば選んでもらうことができる。
「ギフト購入者」はそのためにカタログギフトというサービスを利用するのであり、カタログギフト業はカタログに掲載された個々の商品を販売するものではない。
ちなみに、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」(平成28年4月(平成30年11月改定)国税庁消費税軽減税率制度対応室作成)において、食品を掲載したカタログギフトの販売に適用される税率について「カタログギフトの販売は、贈与者による商品の贈答を貴社が代行すること(具体的には、様々な商品を掲載したカタログを提示するとともに、受贈者の選択した商品を手配する一連のサービス)を内容とする『役務の提供』を行うものですので、『飲食料品の譲渡』には該当せず、軽減税率の適用対象となりません。なお、食品のみを掲載するカタログギフトの販売であっても、同様の理由から『役務の提供』を行うものであり、『飲食料品の譲渡』には該当しない」、「百貨店等から購入者(贈与者)に対するカタログギフトの販売も、軽減税率の適用対象とはなりません。」旨の記載がある(甲3)。
すなわち、カタログギフトを被請求人や「代理店」が販売することは、カタログに掲載された商品を売るものではなく、商品を売るものではないということは、カタログギフトによって小売役務は提供されていないこととなる
被請求人又は「代理店」が提供している行為は、「本件役務」ではない。
(イ)「受取り手」に対して
カタログギフト業は、カタログを用いて「受取り手」に対して「商品を選択する機会を与える」という役務を提供することであるとも考えられる。
カタログには極めて多種多様な商品が掲載されている。このカタログは、その「受取り手」がその中から気に入った商品を選択するという行為によって利用に供される。
「受取り手」は、気に入った商品があれば、「ギフト券」を送る(フローチャートのB(甲2))。気に入った商品がなければ、「ギフト券」を送らない(フローチャートのBと反対の矢印方向(同号証))等、カタログの贈呈を受けた後の処理は「受取り手」次第であり、「受取り手」がカタログの中から商品を選ぶことは必然ではない。
しかしながら、「受取り手」がどのようにカタログを処分したとしても、「ギフト購入者」が「受取り手」のためにカタログギフトのカタログを用意した、どれか気に入った商品があれば選んで欲しい、という「ギフト購入者」の気持ちは伝わる。したがって、「受取り手」にカタログが贈呈された時点で「商品を選択する機会を与える」という役務が提供されている。
カタログ通信販売業を行う原告が出願の際に指定した役務は、「多数の商品を掲載したカタログを不特定多数人に頒布し、家庭にいながら商品選択の機会を与えるサービス」である旨判示されている(「シャディ事件」(平成12年8月29日判決、平成11年(行ケ)390号))。
結果としてカタログの中から「印刷物」が選ばれたとしても、それは「本件役務」が提供されたからではなく、「商品選択の機会を与える」役務が提供されたことによるものであり、被請求人又は「代理店」が提供する役務は、「本件役務」ではない。
(ウ)カタログに掲載された「印刷物」について
カタログに掲載された「印刷物」は雑誌「Pen」だけであり、それは「体験型商品」の中にある(乙4)。「受取り手」は体験型商品の頁をめくって、初めて雑誌「Pen」を「発見」し、「受取り手」が雑誌「Pen」を「発見」できなかった場合、「受取り手」に「印刷物」という商品を選択する余地はなかったことになる。「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」(商標法第2条第3項第3号)に該当するかどうかは偶然に左右される。そうであれば、カタログは、「受取り手」にとって「本件役務」の利用に供されたものではない。カタログに掲載されただけで、「本件役務」の利用に供されたことの証拠にはならない。
なお、被請求人は、「ギフト券」による雑誌「Pen」の注文事実及び被請求人による雑誌「Pen」の送付事実を示していない。
(エ)上述のとおり、被請求人又は「代理店」が行った行為は、「ギフト購入者」に対して「ギフト購入者」による商品の贈答を代行する役務又は「受取り手」に対して「商品を選択する機会を与える」という役務である。
よって、被請求人が「本件役務」を提供した事実は示されていない。
(3)使用商標について
被請求人は、「ギフト購入者」のために「TOWANY」という文字が大きく表示され、多数多様の商品が掲載された複数のコースのカタログを作成し、それぞれのカタログに名称(以下「コース名称」という。)を付けている。
「ギフト購入者」は、国内に多数存在するカタログギフトから「TOWANY」にするかどうかを判断し、さらに「TOWANY」に設定された複数のコースの中から一つを選ぶ。このコースの値段は、大きく異なっており、「ギフト購入者」にとってコース名称は、予算や「受取り手」に応じて「TOWANY」のどのランクにするかを決める際に利用される。
すなわち、コース名称として用いられる「Violet[ヴィオレ]」、「VIOLET」又は「ヴィオレ」の文字(以下「Violet」という。)は、「ギフト購入者」が「TOWANY」の中のどれにするかを特定するための記号、品番である。それが数字やローマ字の1文字や2文字ではなく、英語やフランス語の単語であったとしても、「ギフト購入者」にとって、記号、品番である。
この記号、品番は他者のカタログギフトを区別するものではないから「TOWANY」の文字の下に小さく表示するだけでよい。あるいは、皿の上のカードのように見せれば十分である。「ギフト購入者」等がカタログギフトの識別標識として認識できるような使用態様にする必要はない。
カタログギフトのカタログの「受取り手」がそのカタログの名称を記憶するとしても、カタログに大きく表示された「TOWANY」であってコース名称、つまり記号、品番である「Violet」の文字ではない。
上述のとおり、本件商標は、「TOWANY」に設定された複数のコースを特定する記号、品番であって、役務の識別標識として機能したり、被請求人が提供する役務と他者が提供する役務とを区別したりする機能を有していない。
よって、被請求人は「本件役務」について本件商標を使用していない。
(4)まとめ
被請求人が提出した証拠によれば、被請求人は「本件役務」を提供しておらず、「Violet」の文字は「TOWANY」というカタログを値段等のランクで特定するための記号、品番としてのみ使用されたものである。
よって、被請求人が本件商標を「本件役務」について要証期間内に使用したとする事実はない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第23号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 総論
被請求人は、我が国において、カタログギフト業(結婚内祝い等の際の贈答商品等をギフト用カタログに掲載し、当該カタログの受け取り手が好みの品物を選べる形式にて商品を販売する事業)を営み、当該カタログ名称あるいはカタログコース名称に使用する商標について、取扱商品に係る小売等役務を指定役務とする商標登録を行い、カタログギフト業に係る被請求人の信用の維持を図っている。
本件商標は、その代表的な商標の一つであり、カタログギフト「TOWANY」シリーズのコース名称として使用され、「印刷物」を含む、結婚式の引き出物や、その他贈答品の選択に供されている。そして、当該カタログギフト「TOWANY」用カタログ(以下「本件カタログ」という。)には、本件商標と社会通念上同一とされる「Violet[ヴィオレ]」「VIOLET」「ヴィオレ」がカタログコース名として付されており、各暦年ごとに発行され、そのいずれにおいても、贈答用商品として「印刷物」に属する商品が取り扱われている。
したがって、本件役務を受ける者の利用に供されるカタログに、本件商標と社会通念上同一の商標が付されており、また、かかるカタログを用いて被請求人が小売等役務を提供しているのであるから、商標法第2条第3項第3号及び同第4号に規定された「使用」がなされている。
そして、その使用は、遅くても平成28年(2016年)から現在に至るまで各暦年ごとに発行される本件カタログを利用に供することにより行われており、要証期間内においても、その「使用」が継続している。
2 被請求人の営むカタログギフト業
「被請求人の営むカタログギフト業に係るフローチャート」(乙2)は、エニシル(被請求人)、代理店、カタログギフト購入者(贈答品を贈る者)、受取り手(贈答品の受取者)の4者間でのギフト用カタログとカタログ掲載商品のギフト券を一体とした進物品であるカタログギフト(乙3)の流れを表したものである。
フロー(1)(審決注:乙第2号証の数字は○の中に数字が表示されているところ、これを(1)?(5)として表示する。)は、「受取り手」の性質や人数に従って、「ギフト購入者」が、カタログを選んだ上で、カタログギフトを「代理店」に発注し、「エニシル」がこれを受注する流れを示している。
フロー(2)は、「エニシル」が受注に係るカタログギフトを「代理店」を介して「ギフト購入者」に納品する流れを示している。
フロー(3)は、催し物等に際し(あるいは、その後に)、「ギフト購入者」が「受取り手」にカタログギフトを贈答ないし配布する流れを示している。
フロー(4)は、「受取り手」が、ギフト用カタログに掲載された商品を選んで、カタログギフト中のギフト券により「エニシル」に注文する流れを示している。
フロー(5)は、「エニシル」が、注文を受けた商品を「受取り手」に送付する流れを示しており、当該送付により、一連の業務が完了する。
このように、被請求人は、まさしく、「小売の業務において行われる顧客に対する便益」を提供する役務を営むものであるが、かかる役務にあって、ギフト用カタログは、その提供を受ける「受取り手」が、商品を選択して注文するに際して、必須の存在であり、本件役務の提供を受ける者の利用に供する物に該当することが明らかである。
3 本件カタログ2018年版による使用の証明
(1)乙第4号証は、ギフト用カタログ「TOWANY」、「Violet/ヴィオレ」コース用の2018年版であり、その表紙には「TOWANY」と共に「Violet[ヴィオレ]」商標が付され、裏表紙には「AEO/ヴィオレコース」の表示が付されている。
また、カタログギフトの受取り手が選べる商品として当該カタログ内に、「(雑誌の)定期購読 23冊」(097頁)の「印刷物」に属する商品が掲載されている。
そして、裏表紙には、「お問い合わせは/株式会社エニシル」「〈発行者〉株式会社エニシル」と明示され、このギフト用カタログが被請求人の発行に係るものであることが示されている。
さらに、裏表紙の下方にバーコードと共に「18-8905-091」の記載があり、冒頭の「18」の部分が西暦2018年の「18」を表示し、2018年用のギフト用カタログであり、当該カタログが2018年の1年間有効であることを示している。冒頭の「18」を除く「8905-091」の部分は、被請求人に係る社内管理番号で、当該カタログの有効期間等を表示するものではない。
(2)乙第5号証の1は、「代理店」(取扱店)である「株式会社カメリア」から「エニシル」に対して、納品日(出荷日)を2018年2月7日と指定して、カタログコース「ヴィオレ」のカタログギフトの発注があり、受領印から「エニシル」が2018年2月2日に申込書を受け取ったことが示されている。
乙第5号証の2も、同様に、「代理店」から「エニシル」への発注書であり、代理店「大和リゾート株式会社」から、2018年2月5日「ヴィオレ」等の発注があり、納品日(出荷日)を2018年2月10日と指定されていることが示されている。
乙第6号証は、「エニシル」の「代理店」である「第一印刷株式会社」への請求書で、2018年3月22日に納品したカタログギフト「18トワニーAEOヴィオレ」について、締日付を2018年3月31日として請求したことを示している。カタログギフト名は、商品欄に「18トワニーAEOヴィオレ」で示されているが、これは、乙第4号証の表紙に表示されたカタログ名「TOWANY」の片仮名表示「トワニー」と、裏表紙の「AEO/ヴィオレコース」から取った「AEO」と、ヴィオレコースを示す「ヴィオレ」を連ね、さらに2018年版カタログであることを示すために冒頭に「18」を付した略称であるから、乙第4号証に係る2018年版の「TOWANY」シリーズ、コース名「Violet/ヴィオレ」カタログギフトを指すものに相違ない。
したがって、乙第4号証に係るカタログギフトが、少なくとも2018年3月22日には流通に供されていたことが明らかである。
乙第7号証は、本件役務中のフロー(5)プロセス(審決注:フロー(4)の誤記と思われる。)において、受取り手から「エニシル」に対して、商品注文のあった事例を示すものである。
本件役務において、「受取り手」からの商品注文はギフト券により行われるものであるが、乙第7号証は、2018年3月1日に発行されたギフト券によって、カタログコース「ヴィオレ AEO」(乙4)から選ばれたお申込み号「8339-273」の商品「新潟県産コシヒカリ」を「受取り手」が注文したことを示している。
乙第8号証は、乙第7号証と同様に、本件役務中のフロー(5)のプロセス(審決注:フロー(4)の誤記と思われる。)において、「受取り手」から「エニシル」に商品注文のあった事例で、乙第4号証の本件カタログより選ばれた商品に係るものであることを示しており、2018年2月22日に発行されたカタログギフト券によって、ヴィオレコースに使用される本件カタログ(乙4)のお申込番号「8330-994」の商品「印伝手提げバッグ」が注文されたことが示されている。
ギフト券は、本件役務のフロー(2)のプロセスにあって、「エニシル」からカタログギフトが納品される時に発行され、以後1年間の申込有効期限が設けられており、ギフト券に同封されるギフト用のカタログは、ギフト券発行日の年度のものが用いられるので、例えば、2018年の末日に発行されたギフト券には2018年版のギフト用カタログが同封され、2019年末日までの有効期限が定められることとなり、2018年版のギフト用カタログは実質2018年と2019年の2年にわたって、当該役務の提供を受ける者の利用に供されるのである。
一方、ギフト用カタログと、当該カタログに掲載される商品は、流行や消費者の好みの変化に応じて選択され、その年度ごとに、申込番号が付与されており、前年度と同じ商品が掲載されていても申込番号は相違していることから、乙第4号証の本件カタログが2018年に発行され、本件役務の提供を受ける者の利用に供されていたことが明らかである。
4 本件カタログ2017年版による証明
(1)乙第9号証は、ギフト用カタログ「TOWANY」「Violet/ヴィオレ」コース用の2017年版であり、その表紙には「TOWANY」と共に「Violet[ヴィオレ]」商標が付され、裏表紙には「AEO/ヴィオレコース」の表示が付されている。
また、当該カタログ内には、本件カタログ2018年版と同様に、「(雑誌の)定期購読 23冊」(150頁)の「印刷物」に属する商品が掲載されている。
そして、裏表紙に「〈発行者〉株式会社エニシル」と明示され、このカタログが被請求人の発行に係るものであることが示されている。
さらに、裏表紙の下方の「AEO/ヴィオレコース」表示の下方に「17-8905-226」の記載があり、冒頭の「17」の部分が西暦2017年の「17」を表示し、2017年版カタログであることを示している。
(2)乙第10証は、「代理店」である「日商産業株式会社」から「エニシル」宛にカタログギフト「ヴィオレ」コースが発注されたもので、発注日が2017年9月8日、「エニシル」の受取日が2017年9月13日、納品日が2017年9月19日であることが示されており、乙第11号証は、2017年7月31日に「代理店」である「大和リゾート株式会社」から「エニシル」宛に「ヴィオレ」のカタログギフトの発注があり、2017年8月2日に「エニシル」がこれを受け取ったことが示されている。
乙第12号証は、締日付を2017年6月30日とする「エニシル」から「代理店」の「クラシエホームプロダクツ販売株式会社」宛への請求書であり、当該請求書中、2頁ないし6頁において、6月23日に納品したカタログギフトが「トワニー/ヴィオレカタログ2017年版」であることを示す「17トワニーAEOヴィオレ」の記載が商品名欄にある。
乙第13号証は、本件役務のフロー(5)のプロセス(審決注:フロー(4)の誤記と思われる。)において使用されたギフト券の実例で、2017年2月8日に発行され、2018年2月8日まで有効なもので、乙第9号証の本件カタログ「TOWANY/ヴィオレカタログ2017年版」に掲載された商品から、お申込番号「8337-627」に係る商品「ティファール グレージュ・プレミア5点セット」が選択され注文されている。
このように、乙第9号証の本件カタログ2017年版が2017年に発行され、本件役務の提供を受ける者の利用に供されていたことが明らかである。
5 その他の補強証明
(1)乙第14号証は、カタログギフト「TOWANY」の「Jacinthe[ジャサント]」商標を配し、裏表紙に「BO/ジャサントコース」の表示があり、当該ギフト用カタログの発行年度を示す「18-8905-016」の記号を付している。
乙第15号証は、カタログギフト「TOWANY」の「Sapin/サパン」コースに係るもので、表紙には「TOWANY」の右下に「Sapin/サパン[サパン]」のコース名が表され、さらに裏表紙に同コース名を明示すべく「EO/サパンコース」の表示が付されており、2018年版を表示する「18-8905-067」の記号も付されている。
乙第16号証ないし乙第18号証も、各々、カタログギフト「TOWANY」における「Brique[ブリック]」コース、「Ocre[オークル]」コース、「Palme[パルム]」コースのギフト用カタログの表紙、裏表紙の抜粋写しであり、いずれも乙第4号証、乙第14号証及び乙第15号証と同様の形式で作成されており、各々「AOO/ブリックコース」「BOO/オークルコース」「COO/パルムコース」の表示が施されている。
このことから、本件カタログの「Violet/ヴィオレ」は、他のカタログギフトコースと同様にカタログギフト「TOWANY」のカタログギフトコースを表わすものであることが、より明らかになる。
ちなみに、前記した乙第6号証の請求書には、「商品名欄」に乙第4号証に係る「18トワニーAEOヴィオレ」と共に「18トワニーBOジャサント」「18トワニーBOOオークル」の記載があり、このことを参酌すれば、前記した「『18』が2018年版を表し、『トワニー』が『TOWANY』を表し、『AEO』及び『ヴィオレ』がコース名を表わす」ことが、より明確になる。
(2)乙第19号証は、2016年9月19日に、「代理店」である「株式会社ぶつだんのもり」から「エニシル」宛に「ヴィオレ」コースカタログギフトが発注され、2016年9月20日に「エニシル」が受け取ったことが示されている。
また、乙第20号証は、「エニシル」から「代理店」である「ゼリア商事株式会社」宛の請求書の写しであり、23頁から24頁に記載されているように、2016年2月29日に納品されたカタログギフト「16トワニーAEOヴィオレ」について請求するものである。
さらに、乙第21号証及び乙第22号証は、それぞれ2016年1月5日及び2016年2月19日に発行され商品注文に供されたギフト券の実例を示すもので、「ヴィオレ AEO」のコース記号によって、2016年に発行された「TOWANY」の「ヴィオレコース」ギフト用カタログが商品の選択に利用されていたことが分かる。
このように、乙第19号証ないし乙第22号証によって、カタログギフト「TOWANY」の「Violet/ヴィオレ」コース用2016年版ギフト用カタログが存在し、本件役務の提供を受ける者の利用に供されていたことは明らかとなるのであり、このことからも、乙第4号証及び乙第9号証の本件カタログが、2018年、2017年に発行されたものであることが明確になる。
6 まとめ
被請求人の営むカタログギフト業の各プロセスで実際に使用された取引書類を参酌しても明らかなように、乙第4号証及び乙第9号証は、各々2018年版、2017年版のギフト用カタログである。
そして、いずれも「Violet[ヴィオレ]」あるいは「Violet/[ヴィオレ]」コースの商標が付され、当該カタログ中に「印刷物」に属する商品「雑誌」が掲載されているので、「『印刷物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』役務の提供を受ける受取り手(顧客)の利用に供するカタログギフト用カタログに『Violet[ヴィオレ]』商標を付する行為」が行われていたことに相違はなく、また、「Violet[ヴィオレ]」の表示又は「Violet/[ヴィオレ]」の表示は、本件商標と社会通念上同一のものであるから、本件商標に関し、商標法第2条第3項第3号及び同第4号に規定する「使用」行為が行われていたことが明らかである。

第4 当審の判断
1 本件商標の商標権者
本件商標の商標権者は、商標登録原簿によれば、株式会社エニシルから、合併による商標権の移転登録により、シャディ株式会社に移転(受付年月日:令和元年8月14日)しているところ、要証期間内における商標権者は、株式会社エニシルである。以下、これを前提に判断する。
2 被請求人の提出に係る乙各号証及びその主張によれば、以下のとおりである。
(1)乙第2号証は、「被請求人の営むカタログギフト業に係るフローチャート」であるところ、被請求人の主張によれば、被請求人の業務は、結婚内祝い等の贈答商品の贈り主等(以下「贈り主」という。)が、被請求人の代理店に、ギフト用カタログと当該カタログ掲載商品の「ギフト券による進物品」(以下「カタログギフト」という。)の購入を申し込むと、代理店が被請求人にカタログギフトを発注し、被請求人から代理店を通じ、カタログギフトが贈り主、すなわちカタログギフトの購入者に送付され、その後、カタログギフトは、結婚内祝い等の内祝いを受け取る者(受取り手)に渡され、受取り手は、ギフト用カタログに掲載された商品から商品を選択し、ギフト券を使用して被請求人に商品を注文すると、被請求人は受取り手に商品を配送する業務を内容とする、というものである。
(2)乙第4号証は、被請求人発行の2018年版ギフト用カタログの抜粋の写しとされるものであるところ、その表紙の上部には、「TOWANY」の文字が大きく表示され、その右下部には、「Violet[ヴィオレ]」の文字が表示されている。
そして、そのカタログの97頁には、「定期購読 23冊(特典付)」の表示及び「Pen」というタイトルの雑誌の写真並びにその申込番号、商品説明が記載されている。
また、G30頁には、「こしひかり」と表示された袋の写真の下部に「1 新潟県産/コシヒカリ(18kg)/お申込み番号 8339-274」の表示、25頁には、「バッグ」の写真の下部に「5 印伝手提げバッグ/お申込み番号 8330-994」の表示、177頁には、フライパン、鍋等の写真の下部に「7 ティファール グレージュ5点セット/お申込み番号 8336-372」の表示がある。
さらに、裏表紙には、問い合わせ先として「株式会社エニシル」の表示及びその電話番号が記載されており、また、右下方には、「〈発行者〉株式会社エニシル」の表示があり、左下方には、「AEO/ヴィオレコース」の表示、その右部には、「18-8905-091」の表示がある。
(3)乙第5号証の1は、被請求人の代理店である「(株)カメリア」から被請求人へのカタログギフトの発注書の写しとされるものであり、上部中央に「カタログギフト発注書・仕様指示書」の表示があり、右上部には、「発注日 2018/1/29」の記載、「カタログ出荷日」の項目には「2018年2月7日」、「コース名」の項目には「ヴィオレ」、「数量」の項目には「1」の記載がある。また、下部には、印影とおぼしき輪郭内に「エニシル近畿/’18.02.02」の表示が確認できる。
乙第5号証の2は、被請求人の代理店である「大和リゾート(株)」から被請求人へのカタログギフトの発注書の写しとされるものであり、上部中央に「カタログギフト発注書・仕様指示書」の表示、さらに、その表示に重ねるように「FAX済み」の印影とおぼしき表示があり、右上部には、「発注日 2018年2月5日」の記載、「カタログ出荷日」の項目には「2018年2月10日」、「コース名」の項目には「ヴィオレ」、「数量」の項目には「1」の記載がある。また、下部には、印影とおぼしき輪郭内に「エニシル近畿/’18.02.05」の表示が確認できる。
(4)乙第6号証は、被請求人から、被請求人の代理店である「第一印刷株式会社」に宛てた「請求書」の写しとされるものであるところ、上部中央に「請求書」の表示、左側には、郵便番号、住所の表示とともに「第一印刷株式会社様」の表示、右側には、郵便番号、住所、電話番号の表示とともに「株式会社エニシル」の表示があり、上部の表中の「締日付」の項目には「2018/03/31」の記載があり、下部には「商品CD」、「商品名/備考」、「日付」、「伝票No.」、「区分」、「数量」、「単価」、「御買上金額」の項目からなる表があり、その4行目には、「商品名/備考」欄に「18トワニーAEOヴィオレ」の記載がある。
(5)乙第7号証は、カタログギフトの受取り手から、被請求人へ送付されたエニシルカタログギフト券(以下「カタログギフト券」という。)の写しとされるものであるところ、右側には、「松原郵便局私書箱30号/株式会社エニシル/商品受付センター宛」の宛先の表示とともに「30.3.2」の消印があり、左側の上部には「エニシルカタログギフト券」の表示、「お申込み有効期限」欄には「2019年03月02日まで」の表示がある。
また、当該カタログギフト券の下部の「コース名/コース記号」欄には「ヴィオレ AEO」の記載、「ご希望商品の申込番号」欄には「8339-274」の記載、及び「商品名」欄には「新潟県産コシヒカリ」の記載がある。
乙第8号証は、カタログギフトの受取り手から、被請求人へ送付されたカタログギフト券の写しとされるものであるところ、右側には、「松原郵便局私書箱30号/株式会社エニシル/商品受付センター御中」の宛先の表示とともに「30.3.○(○部分は不鮮明で確認することができない。)」の消印があり、左側の上部には「エニシルカタログギフト券」の表示、「お申込み有効期限」欄には「2019年02月22日まで」の表示がある。
また、当該カタログギフト券の下部の「コース名/コース記号」欄には「ヴィオレ AEO」の記載、「ご希望商品の申込番号」欄には「8330-994」の記載、及び「商品名」欄には「印伝手提げバッグ」の記載がある。
(6)乙第9証は、被請求人発行の2017年版ギフト用カタログの抜粋の写しとされるものであるところ、その表紙の上部には、「TOWANY」の文字が大きく表示され、その下部には、「Violet/[ヴィオレ]」の文字が表示されている。
そして、そのカタログの150頁には、「定期購読 23冊(特典付)」の表示及び「Pen」というタイトルの雑誌の写真並びにその申込番号、商品説明が記載されている。
また、69頁には、「バッグ」の写真の下部に「5 印伝手提げバッグ/お申込み番号 8330-923」の表示、225頁には、フライパン、鍋等の写真の下部に「3 ティファール/グレージュ・プレミア5点セット/お申込み番号 8337-627」の表示がある。
さらに、裏表紙には、「〈発行者〉株式会社エニシル」の表示があり、その電話番号が記載されており、また、「AEO/ヴィオレコース」の表示の右部には、「17-8905-226」の表示がある。
(7)乙第10号証は、被請求人の代理店である「日商産業株式会社」から被請求人へのカタログギフトの発注書の写しとされるものであり、上部中央に「カタログギフト発注書・仕様指示書」の表示があり、右上部には、「発注日 2017年9月8日」の記載、「カタログ出荷日」の項目には「2017年9月19日」、「コース名」の項目には「ヴィオレ AEO」、「数量」の項目には「1」の記載がある。また、下部には、印影とおぼしき輪郭内に「エニシル近畿/’17.09.13」の表示が確認できる。
乙第11号証は、被請求人の代理店である「大和リゾート(株)」から被請求人へのカタログギフトの発注書の写しとされるものであり、上部中央に「カタログギフト発注書・仕様指示書」の表示、さらに、その表示に重ねるように「再」の印影とおぼしき表示があり、右上部には、「発注日 2017年7月31日」の記載、「カタログ出荷日」の項目には「2017年8月5日」、「コース名」の項目には「ヴィオレ」、「数量」の項目には「1」の記載がある。また、下部には、印影とおぼしき輪郭内に「エニシル近畿/’17.08.02」の表示が確認できる。
(8)乙第12号証は、被請求人から、被請求人の代理店である「クラシエホームプロダクツ販売株式会社」に宛てた「請求書」の写しとされるもので、全部で16葉からなるものであるところ、上部中央に「請求書」の表示、左側には、郵便番号、住所の表示とともに「クラシエホームプロダクツ販売株式会社様」の表示、右側には、郵便番号、住所、電話番号の表示とともに「株式会社エニシル」の表示があり、1葉目の上部の表中の「締日付」の項目には「2017/06/30」の記載があり、下部には「商品CD」、「商品名/備考」、「日付」、「伝票No.」、「区分」、「数量」、「単価」、「御買上金額」の項目からなる表があり、2葉目ないし6葉目には、「商品名/備考」欄に「17トワニーAEOヴィオレ」の記載がみられる。
(9)乙第13号証は、カタログギフトの受取り手から、被請求人へ送付されたカタログギフト券の写しとされるものであるところ、右側には、「松原郵便局私書箱30号/株式会社エニシル/商品受付センター御中」の宛先の表示とともに「29.2.28」の消印があり、左側の上部には「エニシルカタログギフト券」の表示、「お申込み有効期限」欄には「2018年02月08日まで」の表示がある。
また、当該カタログギフト券の下部の「コース名/コース記号」欄には「ヴィオレ AEO」の記載、「ご希望商品の申込番号」欄には「8337-627」の記載、及び「商品名」欄には「ティファール グレージュ プレミアセット」の記載がある。
3 判断
(1)使用者
ギフト用カタログ(乙4、乙9)の裏表紙に、問い合わせ先又は発行者として「株式会社エニシル」の表示が記載されていることからすれば、当該カタログの作成者は、商標権者といえる。
(2)使用商標
ギフト用カタログ(乙4、乙9)の表紙には、「Violet[ヴィオレ]」又は「Violet/[ヴィオレ]」の文字が記載されているところ、本件商標は、「Violet」の欧文字と「ヴィオレ」の片仮名を二段に併記してなるものであって、その構成文字を同じくするものであるから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
(3)使用時期
乙第7号証は、その記載内容から、被請求人が主張する「カタログギフト券」であると認められるところ、これには、「30.03.02」の消印があり、これに記載の商品名及び申込番号とギフト用カタログ(乙4)のG30頁に掲載されている商品の商品名及び申込番号「8339-274」は一致している。
また、乙第8号証も、具体的な日付は不鮮明であるものの、「30.03.○(○部分は不鮮明で確認することができない。)」の消印があり、これに記載の商品名及び申込番号とギフト用カタログ(乙4)の25頁に掲載されている商品の商品名及び申込番号「8330-994」は一致している。
さらに、乙第13号証も、「29.2.28」の消印があり、これに記載の商品名及び申込番号とギフト用カタログ(乙9)の225頁に掲載されている商品の商品名及び申込番号「8337-627」も一致している。
してみれば、被請求人が主張する「カタログギフト券」は、あらかじめ、被請求人が宛先として印刷された郵便物(はがき)の形体からなるものであって、被請求人に郵送されたものであると推認できることから、受取り手は、「30.03.02」及び具体的な日付は不鮮明であるものの、「30.03.○(○部分は不鮮明で確認することができない。)」の消印がある「カタログギフト券」(乙7、乙8)を使用して、商品の申込みをしており、当該商品の申込番号、商品名及びカタログギフト券の下部に記載のコース名「ヴィオレAEO」からして、当該商品が掲載されたギフト用カタログは、同一の商品の申込番号、商品名、コース名が掲載され、年度も合致する乙第4号証のギフト用カタログであると認められる。
また、同様に、受取り手は、「29.2.28」の消印がある「カタログギフト券」(乙13)を使用して、商品の申込みをしており、当該商品の申込番号、商品名及びカタログギフト券の下部に記載のコース名「ヴィオレAEO」からして、当該商品が掲載されたギフト用カタログは、同一の商品の申込番号、商品名、コース名が掲載され、年度も合致する乙第9号証のギフト用カタログであると認められる。
そうすると、本件商標と社会通念上同一の商標が表示された当該カタログは、要証期間内である平成30年3月又は平成29年2月頃には受取り手に渡っていたといえるものである。
(4)使用役務
ギフト用カタログ(乙4、乙9)には、「定期購読 23冊(特典付)」の表示及び「Pen」というタイトルの雑誌の写真並びにその申込番号、商品説明が記載されているところ、当該商品は、「印刷物」の範ちゅうの商品である。
そして、被請求人が事業として行っていると主張する「カタログギフト業」とは、各種商品をカタログに掲載し、当該カタログの受取り手が好みの商品を選べる形式で商品を販売する事業であって、カタログギフトの受取り手、すなわち、需要者は、各種の商品が取りそろえられ、掲載されたギフト用カタログを見るだけで商品の選択及び注文ができるようになっているものである。
上記1の流れをみるに、受取り手は、ギフト用カタログ(乙4、乙9)に掲載された商品を被請求人に注文していることが優に認められるものであるから、被請求人は、需要者に対して商品の選択の便宜のために、販売する商品が掲載されたカタログの提供を行っているということができるものであり、これは、商品の小売又は卸売の業務において小売業者が顧客に対して行う便益の提供に該当する行為といえるものである。
してみれば、被請求人は、「印刷物」の範ちゅうの「雑誌」についての小売等役務を提供したものといえ、被請求人の提供する上記小売等役務に使用される当該ギフト用カタログは、カタログギフトの受取り手、すなわち、当該役務の需要者が商品の選択及び注文を行うために利用するものであるから、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」というのが相当である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標の商標権者は、要証期間内にその請求に係る指定役務に含まれる「雑誌の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、その役務を提供するためのギフト用カタログ(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物)に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものと認められ、また、これを用いて役務を提供する行為を行ったものと認めることができ、これらは商標法第2条第3項第3号及び同第4号の使用に該当するものである。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「被請求人が提出した証拠は、(A)被請求人と『代理店』との取引関係を示す、被請求人宛の注文書(乙5他)と『代理店』宛の請求書(乙6他)、(B)『受取り手』が送付したと思われる『ギフト券』(乙7他)だけであり、被請求人は、1)『ギフト購入者』が『代理店』に発注した事実、2)『代理店』が『ギフト購入者』へ納品した事実、3)『ギフト購入者』が『受取り手』へ贈答した事実、4)被請求人が『受取り手』に商品を送付した事実を示す直接的な証拠を提出していない」旨主張している。
しかしながら、被請求人の提出した乙第5号証ないし乙第8号証に係るカタログギフトの流れを勘案すれば、受取り手が乙第4号証のカタログをみて、商品を選択し、カタログギフト券を用いて被請求人に商品を注文したこと、また、これと同様に、乙第10号証ないし乙第13号証に係るカタログギフトの流れを勘案すれば、受取り手が乙第9号証のカタログをみて、商品を選択し、カタログギフト券を用いて被請求人に商品を注文したことが認められるものであって、被請求人の業務をフローチャート(乙2)全体で捉えてみれば、「ギフト購入者」が商品代金を含んだギフト用カタログを被請求人から購入し、「受取り手」が当該カタログから商品を選び、被請求人に申込みをし、被請求人から商品を受け取るという一連の流れは優に認められるものである。
(2)請求人は、「カタログギフトの目的は、『ギフト購入者』が贈答品を『受取り手』に渡すことを代行する役務を提供するものであり、カタログギフト業はカタログに掲載された個々の商品を販売するものではなく、カタログを用いて『受取り手』に対して『商品を選択する機会を与える』という役務を提供するものであるから、被請求人又は代理店が提供する役務は、『本件役務』ではない」旨主張している。
しかしながら、被請求人の業務をフローチャート(乙2)全体で捉えてみれば、「ギフト購入者」が商品代金を含んだギフト用カタログを被請求人から購入し、「受取り手」が当該カタログから商品を選び、被請求人に申込みをし、被請求人から商品を受け取るという内容のものであり、「ギフト購入者」と商品の受取り手が異なり、商品の受取り前に「ギフト購入者」が商品代金を支払っているとしても、全体としてみれば、顧客は、被請求人が作成したギフト用カタログから商品を選び被請求人から商品を購入しているといえるものであって、被請求人は、顧客による商品の選択の便宜を図るため、商品が掲載されたカタログを作成し、顧客に提供しているとみるのが相当である。
そうすると、前記2(4)のとおり、被請求人が事業として行っていると主張する「カタログギフト業」とは、各種商品をカタログに掲載し、当該カタログの受取り手が好みの商品を選べる形式で商品を販売する事業であって、カタログギフトの受取り手、すなわち、需要者は、各種の商品が取りそろえられ、掲載されたギフト用カタログを見るだけで商品の選択及び注文ができるようになっていることから、被請求人は、需要者に対して商品の選択の便宜のために販売する商品が掲載されたカタログの提供を行っているということができるものであり、これは、商品の小売又は卸売の業務において小売業者が顧客に対して行う便益の提供に該当する行為といえるものであるから、被請求人又は代理店が提供する役務は、本件役務に当たるというべきである。
(3)請求人は、「カタログに掲載された『印刷物』は雑誌『Pen』だけであり、『受取り手』がこれを『発見』できなかった場合、『受取り手』に『印刷物』という商品を選択する余地はなかったことになるから、カタログは、『受取り手』にとって『本件役務』の利用に供されたものではなく、カタログに掲載されただけで、『本件役務』の利用に供されたことの証拠にはならない」旨主張している。
しかしながら、商標法において保護対象となっている「小売等役務」とは、商品の品揃え、陳列、接客サービス、通信販売における顧客の商品選択のために販売するカタログの提供等といった最終的に商品の販売により収益をあげる小売業者等の提供する総合的なサービス活動全体を一括りにして一つの小売等役務として保護されるものであるところ、上記(2)のとおり、被請求人の業務を全体で捉えてみれば、被請求人は、小売業を営んでいるとみるのが相当であり、その際に、顧客による商品の選択の便宜を図るため、商品が掲載されたカタログを作成し、顧客に提供しているものであって、これは、商品の品揃え、陳列、通信販売における顧客の商品選択のために販売する商品が掲載されたカタログの提供に相当するものといえる。
そうすると、雑誌が掲載されているカタログを顧客に提供する行為は、商標法において保護対象となっている「小売等役務」を構成するサービス活動とみるべきである。
(4)請求人は、「本件商標は、『TOWANY』に設定された複数のコースを特定する記号、品番であって、役務の識別標識として機能したり、被請求人が提供する役務と他者が提供する役務とを区別したりする機能を有していないから、『本件役務』について本件商標を使用していない」旨主張している。
しかしながら、ギフト用カタログ(乙4、乙9)の表紙に表示された「Violet[ヴィオレ]」又は「Violet/[ヴィオレ]」の文字は、一般的に品番等に使用されるローマ字の1字又は2字からなるものや数字とローマ字の1字又は2字を組み合わせたもの等ではなく、それ自体が、自他商品役務の識別標識としての機能を十分に果たし得るものとみるのが相当である。
(5)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
5 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者がその請求に係る指定役務に含まれる「雑誌の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について本件商標の使用をしていることを証明したといえる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-08-13 
結審通知日 2019-08-15 
審決日 2019-09-13 
出願番号 商願2010-71584(T2010-71584) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X35)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2011-05-20 
登録番号 商標登録第5413492号(T5413492) 
商標の称呼 ビオレ、ビオレット、バイオレット 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 貴答 信介 
代理人 小林 克行 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 並川 鉄也 

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